説明

車輌用前照灯

【課題】 運転者に与える違和感を低減した上で先行車輌等の他の車輌に対する眩惑光の発生を防止する。
【解決手段】 左右方向に並んで配置され点消灯の制御が各別に行われる複数の半導体発光素子13と半導体発光素子の下側に配置され半導体発光素子から出射された光を反射する下側リフレクター14とを有する光源体11と、半導体発光素子から出射された光を投影して照射する投影レンズ17とを備え、遠距離の領域を照射するハイビームの配光パターンP1における上部のパターンTが下側リフレクターで反射され投影レンズから照射される光によって形成され、配光パターンにおける左右方向の中央部を形成する半導体発光素子が消灯されたときに、中央部における上部のパターンを形成するパターン形成手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、配光パターンにおける左右方向の中央部を形成する光源が消灯されたときに中央部における上部のパターンを形成するパターン形成手段を設け、運転者に与える違和感を低減した上で先行車輌等の他の車輌に対する眩惑光の発生を防止する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、カバーとランプボデイによって形成された灯具外筐の内部に複数の光源が配置され、一部の光源がロービームを照射する光源として用いられ、その他の光源がハイビームを照射する光源として用いられたものがある(例えば、特許文献1参照)。ハイビームを照射する光源としては複数の半導体発光素子、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられている。
【0003】
特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、ハイビームを照射する光源のうち、例えば、カメラにより撮影された画像を処理することによって検出された先行車輌等の他の車輌が存在する領域を照射する光源を消灯し、ハイビームの配光パターンを変化させる所謂可変ハイビーム(ADB:Adaptive Driving Beam)の制御が可能な構成にされている。他の先行車輌等は、配光パターンにおける中央部において存在が検出される。このような制御を行うことにより、先行車輌等の他の車輌に対する眩惑光の発生を防止することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2008−37240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、先行車輌等の他の車輌の存在が検出されて配光パターンにおける中央部を形成する光源が消灯されると、ハイビームの配光パターンが左右方向において略等分に分割された状態で形成されてしまい、運転者に違和感を与えてしまう。
【0006】
そこで、本発明車輌用前照灯は、運転者に与える違和感を低減した上で先行車輌等の他の車輌に対する眩惑光の発生を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、左右方向に並んで配置され点消灯の制御が各別に行われる複数の半導体発光素子と前記半導体発光素子の下側に配置され前記半導体発光素子から出射された光を反射する下側リフレクターとを有する光源体と、前記半導体発光素子から出射された光を投影して照射する投影レンズとを備え、遠距離の領域を照射するハイビームの配光パターンにおける上部のパターンが前記下側リフレクターで反射され前記投影レンズから照射される光によって形成され、前記配光パターンにおける左右方向の中央部を形成する前記半導体発光素子が消灯されたときに前記中央部における上部のパターンを形成するパターン形成手段を設けたものである。
【0008】
従って、車輌用前照灯にあっては、配光パターンにおける左右方向の中央部を形成する半導体発光素子が消灯されたときに左右方向において略等分に分割されない配光パターンが形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明車輌用前照灯は、左右方向に並んで配置され点消灯の制御が各別に行われる複数の半導体発光素子と前記半導体発光素子の下側に配置され前記半導体発光素子から出射された光を反射する下側リフレクターとを有する光源体と、前記半導体発光素子から出射された光を投影して照射する投影レンズとを備え、遠距離の領域を照射するハイビームの配光パターンにおける上部のパターンが前記下側リフレクターで反射され前記投影レンズから照射される光によって形成され、前記配光パターンにおける左右方向の中央部を形成する前記半導体発光素子が消灯されたときに前記中央部における上部のパターンを形成するパターン形成手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
従って、運転者の違和感を軽減した上で、先行車等の他の車輌に対する眩惑光の発生を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載された発明にあっては、前記パターン形成手段として、前記下側リフレクターに前記半導体発光素子から出射された光を拡散する拡散部を設けている。
【0012】
従って、拡散部によって左右方向の中央部を形成する半導体発光素子が消灯されたときの配光パターンの左右方向の中央部における上部のパターンが形成されるので、簡素な構成によって上部のパターンを形成することができる。
【0013】
請求項3に記載された発明にあっては、前記下側リフレクターを左右方向に延びる支軸を支点として回動可能として前記下側リフレクターを前記パターン形成手段として用いている。
【0014】
従って、半導体発光素子が全て点灯されたときの配光パターンを明瞭に形成した上で、配光パターンにおける左右方向の中央部を形成する半導体発光素子が消灯されたときの上部のパターンを簡素な構成により形成することができる。
【0015】
請求項4に記載された発明にあっては、前記パターン形成手段として、前記投影レンズに向けて光を出射する上部パターン形成用光源を設けている。
【0016】
従って、配光パターンにおける左右方向の中央部を形成する半導体発光素子が消灯されたときの上部のパターンを形成することを考慮して下側リフレクターを設計する必要がなく、下側リフレクターの設計の自由度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0018】
先ず、第1の実施の形態に係る車輌用前照灯1について説明する(図1乃至図4参照)。
【0019】
車輌用前照灯1は、車体の前端部における左右両端部にそれぞれ取り付けられて配置されている。
【0020】
車輌用前照灯1は、図1に示すように、前方に開口されたランプボデイ2とランプボデイ2の前端部に取り付けられたカバー3とによって構成された灯具外筐4の内部が灯室5として形成され、灯室5にランプユニット6が配置されている。
【0021】
灯室5には保持部材7が光軸調整機構8を介して水平方向及び垂直方向に傾動自在に配置されている。
【0022】
保持部材7は前後方向を向く平板状に形成されている。保持部材7の後面には後方へ突出された放熱フィン9、9、・・・が左右に離隔して設けられている。
【0023】
保持部材7に設けられた放熱フィン9、9、・・・の後面には放熱用ファン10が取り付けられている。
【0024】
保持部材7の前面における中央部には光源体11が取り付けられている。
【0025】
光源体11は、図1及び図2に示すように、回路基板12と回路基板12上に搭載され光を出射する面状光源として機能する複数の半導体発光素子13、13、・・・と半導体発光素子13、13、・・・の下側に配置された下側リフレクター14と半導体発光素子13、13、・・・の上側に配置された上側リフレクター15とを有している。
【0026】
半導体発光素子13、13、・・・としては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられており、半導体発光素子13、13、・・・は発光面を前方に向け左右に並んだ状態で配置されている。半導体発光素子13、13、・・・は各別に点消灯の制御が可能とされている。
【0027】
下側リフレクター14と上側リフレクター15はそれぞれ半導体発光素子13、13、・・・側に位置し略上方を向く面と略下方を向く面を有し、これらの各面がそれぞれ反射面14a、15aとして形成されている。
【0028】
反射面14aは、例えば、放物面に形成され、表面全体に渡ってサンドブラスト等の粗面処理が施されることによって光を拡散する拡散部14b、14b、・・・を有している(図2参照)。従って、反射面14aは拡散反射面として形成されている。反射面15aは、例えば、双曲面に形成されている。
【0029】
尚、上記には、反射面14aにサンドブラスト等の粗面処理が施されて拡散部14b、14b、・・・が設けられた例を示したが、拡散部14b、14b、・・・は、例えば、反射面14aに形成された凹凸形状であってもよい。
【0030】
反射面14a、15aは半導体発光素子13、13、・・・から出射された光を前方に向けて反射する。半導体発光素子13、13、・・・から光が出射されると、図3に示すように、反射面14aで反射される光によって形成されるパターンTと、反射面14a、15aの何れにおいても反射されない光によって形成されるパターンMと、反射面15aで反射される光によって形成されるパターンBとから成るハイビームの配光パターンP1が形成される。
【0031】
パターンTは配光パターンP1の上部のパターンであり、パターンMは配光パターンP1の上下方向における中央部のパターンであり、パターンBは配光パターンP1の下部のパターンである。
【0032】
保持部材7の前面にはレンズホルダー16が取り付けられている(図1参照)。レンズホルダー16は前後方向に貫通した略円筒状に形成され、半導体発光素子13、13、・・・を覆うようにして保持部材7に取り付けられている。
【0033】
レンズホルダー16の前端部には投影レンズ17が取り付けられている。投影レンズ17は前方に凸の略半球状に形成されたレンズ部17aとレンズ部17aの外周から張り出されたフランジ部17bとが一体に形成されて成る。投影レンズ17は後側焦点を含む焦点面上の像を反転して半導体発光素子13、13、・・・から出射された光を前方へ投影する機能を有する。
【0034】
車輌用前照灯1において、上記した保持部材7、放熱フィン9、9、・・・、放熱用ファン10、光源体11、レンズホルダー16及び投影レンズ17によって遠距離を照射するハイビームを出射するランプユニット6が構成される。
【0035】
光軸調整機構8はエイミングスクリュー18、18、18を有している。エイミングスクリュー18、18、18はそれぞれ前後方向へ延び、ランプボデイ2の後端部に回転可能に支持された状態において保持部材7の所定の位置にそれぞれ螺合されてランプボデイ2と保持部材7を連結している。
【0036】
車輌用前照灯1において、エイミングスクリュー18が回転されると、その回転方向に応じた方向へ他のエイミングスクリュー18、18を支点としてランプユニット6が傾動され、ランプユニット6のエイミング調整が行われる。
【0037】
また、車輌用前照灯1には、車載物の重量により傾く光軸の向きを調整する所謂レベリング調整機構が設けられていてもよい。
【0038】
車輌には撮像素子として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)等を有する図示しないカメラが設けられており、ハイビームの照射領域(配光パターンP1)がカメラによって定期的に撮影される。カメラによってハイビームの照射領域が撮影されると、画像データが生成されてハイビームの照射領域に存在する先行車100の存在が画像処理によって検出される。
【0039】
以上のように構成された車輌用前照灯1において、図示しない点灯回路の駆動により光源体11に駆動電圧が印加されると半導体発光素子13、13、・・・から光が出射される。
【0040】
半導体発光素子13、13、・・・から出射された光は前方へ向かうか又は反射面14a、15aで反射され、投影レンズ17の後側焦点を含む焦点面上に集光され、投影レンズ17及びカバー3を透過されてハイビームの照射光として前方へ照射される。このとき、同時に、上記したカメラによりハイビームの照射領域の撮影が行われる。
【0041】
車輌用前照灯1におけるハイビームの照射時に、上記した画像処理によってハイビームの照射領域に先行車100の存在が検出されないときには半導体発光素子13、13、・・・の全ての点灯が維持され、上記したように、配光パターンP1が形成される(図3参照)。一方、ハイビームの照射領域に先行車100の存在が検出されると、配光パターンP1における左右方向の中央部のパターンを形成する半導体発光素子13が消灯される。
【0042】
このように車輌用前照灯1においては、半導体発光素子13、13、・・・の点消灯の制御が各別に行われるが、光源体11には反射面14aを拡散反射面として機能させる拡散部14b、14b、・・・が設けられているため、配光パターンP1における左右方向の中央部のパターンを形成する半導体発光素子13が消灯された場合においても、図4に示すように、反射面14aで反射されて拡散された光の一部が上部のパターンTにおける左右方向の中央部の領域(パターンTa)に照射されている。従って、反射面14aに設けられた拡散部14b、14b、・・・は配光パターンP1における左右方向の中央部のパターンTaを形成するパターン形成手段として機能する。
【0043】
上記したように、配光パターンP1における左右方向の中央部を形成する半導体発光素子13が消灯されたときには、先行車100が存在する領域、即ち、パターンMとパターンBの左右方向における中央部の領域に、光が照射されない暗部Dが形成される(図4参照)。
【0044】
このように、ハイビームの照射領域に先行車100の存在が検出されたときには、図4に示すように、反射面14aで反射される光によって形成されるパターンT(パターンTa+Tb+Tc)と、反射面14a、15aの何れにおいても反射されない光によって暗部Dを挟んで左右に形成されるパターンMa、Mbと、反射面15aで反射される光によって暗部Dを挟んで左右に形成されるパターンBa、Bbとから成る配光パターンP2が形成される。
【0045】
上記したように、光源体11においては、パターン形成手段として、下側リフレクター14に半導体発光素子13、13、・・・から出射された光を拡散する拡散部14b、14b、・・・を設け、拡散部14b、14b、・・・によって配光パターンP2の左右方向の中央部における上部のパターンTaが形成されるので、簡素な構成によってパターンTaを形成することができる。
【0046】
また、パターン形成手段として機能する拡散部14b、14b、・・・が半導体発光素子13、13、・・・から出射された光を反射する下側リフレクター14に設けられており、パターンTaを形成するための専用の手段を設ける必要がなく、車輌用前照灯1及び光源体11の構造の簡素化を図る上でより一層有利である。
【0047】
次に、第1の変形例に係る光源体について説明する(図5及び図6参照)。尚、以下に示す第1の変形例に係る光源体11Aは、上記した光源体11と比較して、下側リフレクターが拡散部を有さず、回動可能とされた下側リフレクターがパターン形成手段として設けられていることが相違する。
【0048】
従って、光源体11Aについては、光源体11と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については光源体11における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略するか、又は、必要に応じて簡単に説明する。
【0049】
光源体11Aは、回路基板12と複数の半導体発光素子13、13、・・・と下側リフレクター14Aと上側リフレクター15を有している(図5参照)。
【0050】
半導体発光素子13、13、・・・の下方には図示しない駆動部が配置されている。
【0051】
半導体発光素子13、13、・・・の下側には半導体発光素子13、13、・・・の並び方向、即ち、左右方向に延びる支軸19が回動可能に支持され、下側リフレクター14Aが支軸19を支点として前端部が略上下方向へ移動する方向へ回動可能とされている。下側リフレクター14Aは上方側の第1の位置Hと下方側の第2の位置Lとの間で回動される。
【0052】
下側リフレクター14Aは略上下方向を向く板状に形成され、半導体発光素子13、13、・・・側に位置する略上方向を向く面が拡散部を有しない反射面14cとして形成され、反射面14cは、例えば、放物面に形成されている。
【0053】
反射面14cは半導体発光素子13、13、・・・から出射された光を前方に向けて反射する。反射面14cで反射された光によってパターンTが形成される(図3参照)。
【0054】
支軸19が駆動部によって回動されると、支軸19の回動に伴って下側リフレクター14Aが第1の位置Hと第2の位置Lの間で回動される(図5参照)。下側リフレクター14Aが第1の位置Hに位置されている状態においては、反射面14cによって形成される像の位置が投影レンズ17の焦点面と一致されパターンTが明瞭に形成される。一方、下側リフレクター14Aが第2の位置Lに位置されている状態においては、反射面14cによって形成される像が投影レンズ17の焦点面からずれて位置され、パターンTがぼやけた状態で形成される。
【0055】
光源体11Aが用いられた車輌用前照灯1におけるハイビームの照射時に、先行車100の存在が検出されないときには下側リフレクター14Aが第1の位置Hに位置されると共に半導体発光素子13、13、・・・の全ての点灯が維持されて配光パターンP1が形成される(図3参照)。一方、先行車100の存在が検出されると、配光パターンP1における左右方向の中央部を形成する半導体発光素子13が消灯されると共に下側リフレクター14Aが第1の位置Hから第2の位置Lに回動される。
【0056】
配光パターンP1における左右方向の中央部を形成する半導体発光素子13が消灯され下側リフレクター14Aが第2の位置Lに回動されると、反射面14cで反射された光の一部が上部のパターンTにおける左右方向の中央部の領域に対して照射されて、パターンTがぼやけた状態で形成されて配光パターンP3が形成される(図6参照)。従って、ハイビームの照射領域における左右方向の中央部の上部以外の部分が暗部Dとして形成される。
【0057】
光源体11Aにおいては、下側リフレクター14Aを回動可能として下側リフレクター14Aをパターン形成手段として用いている。
【0058】
従って、半導体発光素子13、13、・・・が全て点灯されたときの配光パターンP1を明瞭に形成した上で、配光パターンP1における左右方向の中央部を形成する半導体発光素子13が消灯されたときの上部のパターンTを簡素な構成により形成することができる。
【0059】
次に、第2の変形例に係る光源体について説明する(図7及び図8参照)。尚、以下に示す第2の変形例に係る光源体11Bは、上記した光源体11と比較して、下側リフレクターが拡散部を有さず、ハイビームの照射光を出射する半導体発光素子とは異なる光源がパターン形成手段として設けられていることが相違する。
【0060】
従って、光源体11Bについては、光源体11と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については光源体11における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略するか、又は、必要に応じて簡単に説明する。
【0061】
光源体11Bは、回路基板12と複数の半導体発光素子13、13、・・・と下側リフレクター14Bと上側リフレクター15と上部パターン形成用光源20を有している(図7参照)。
【0062】
下側リフレクター14Bは半導体発光素子13、13、・・・側に位置し略上方を向く面が拡散部を有しない反射面14cとして形成されている。
【0063】
回路基板12の下端部にはパターン形成手段として機能する上部パターン形成用光源20が配置されている。上部パターン形成用光源20としては、例えば、面状光源として機能する半導体発光素子が用いられる。上部パターン形成用光源20は発光面が上斜め前方を向く向きで配置されている。上部パターン形成用光源20から出射された光はパターンTにおける左右方向の中央部の領域に照射される。
【0064】
光源体11Bが用いられた車輌用前照灯1におけるハイビームの照射時に、先行車100の存在が検出されないときには半導体発光素子13、13、・・・が全て点灯されて配光パターンP1が形成される(図3参照)。このとき上部パターン形成用光源20は消灯されている。一方、先行車100の存在が検出されると、配光パターンP1における左右方向の中央部を形成する半導体発光素子13が消灯されると共に上部パターン形成用光源20が点灯される。
【0065】
配光パターンP1における左右方向の中央部を形成する半導体発光素子13が消灯され上部パターン形成用光源20が点灯されると、上記したように、上部パターン形成用光源20から出射された光がパターンTにおける左右方向の中央部の領域に対して照射され、配光パターンP4が形成される(図8参照)。従って、ハイビームの照射領域における左右方向の中央部の上部以外の部分が暗部Dとして形成される。
【0066】
光源体11Bにあっては、半導体発光素子13、13、・・・とは異なる光源である上部パターン形成用光源20をパターン形成手段として設けている。従って、配光パターンP1における左右方向の中央部を形成する半導体発光素子13が消灯されたときの上部のパターンTを形成することを考慮して下側リフレクター14Bを設計する必要がなく、下側リフレクター14Bの設計の自由度の向上を図ることができる。
【0067】
また、半導体発光素子13、13、・・・が全て点灯されたときの配光パターンP1を明瞭に形成した上で、配光パターンP1における左右方向の中央部を形成する半導体発光素子13が消灯されたときの上部のパターンTを簡単な構成により形成することができる。
【0068】
尚、上記には、上部パターン形成用光源20を回路基板12の下端部に配置した例を示したが、上部パターン形成用光源20の配置位置は回路基板12の下端部に限られることはなく、上部パターン形成用光源20は回路基板12の上端部や左右両端部等の何れの位置に配置されていてもよい。
【0069】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、配光パターンP1における左右方向の中央部を形成する半導体発光素子13が消灯されても左右方向において略等分に分割されない配光パターンP2、P3又はP4が形成される。
【0070】
従って、運転者の違和感を軽減した上で、先行車等の他の車輌に対する眩惑光の発生を防止することができる。
【0071】
尚、上記には、先行車100がハイビームの照射領域に検出されたときに配光パターンP1の左右方向における中央部を形成する一つの半導体発光素子13が消灯される例を示したが、先行車100がハイビームの照射領域に検出されたときに消灯される半導体発光素子13は一つに限られることはなく、複数であってもよい。
【0072】
上記した最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図2乃至図8と共に本発明車輌用前照灯の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の概略縦断面図である。
【図2】光源体の拡大斜視図である。
【図3】ハイビームの配光パターンを示す図である。
【図4】先行車が検出されたときの配光パターンを示す図である。
【図5】光源体の第1の変形例を示す側面図である。
【図6】光源体として第1の変形例が用いられた場合において、先行車が検出されたときの配光パターンを示す図である。
【図7】光源体の第2の変形例を示す側面図である。
【図8】光源体として第2の変形例が用いられた場合において、先行車が検出されたときの配光パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1…車輌用前照灯、11…光源体、13…半導体発光素子、14…下側リフレクタ、14b…拡散部、17…投影レンズ、P1…配光パターン、P2…配光パターン、T…パターン、11A…光源体、14A…下側リフレクタ、19…支軸、P3…配光パターン、11B…光源体、14B…下側リフレクター、20…上部パターン形成用光源、P4…配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に並んで配置され点消灯の制御が各別に行われる複数の半導体発光素子と前記半導体発光素子の下側に配置され前記半導体発光素子から出射された光を反射する下側リフレクターとを有する光源体と、
前記半導体発光素子から出射された光を投影して照射する投影レンズとを備え、
遠距離の領域を照射するハイビームの配光パターンにおける上部のパターンが前記下側リフレクターで反射され前記投影レンズから照射される光によって形成され、
前記配光パターンにおける左右方向の中央部を形成する前記半導体発光素子が消灯されたときに前記中央部における上部のパターンを形成するパターン形成手段を設けた
ことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】
前記パターン形成手段として、前記下側リフレクターに前記半導体発光素子から出射された光を拡散する拡散部を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
前記下側リフレクターを左右方向に延びる支軸を支点として回動可能として前記下側リフレクターを前記パターン形成手段として用いた
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項4】
前記パターン形成手段として、前記投影レンズに向けて光を出射する上部パターン形成用光源を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−20709(P2013−20709A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150698(P2011−150698)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】