説明

車輌用前照灯

【課題】 運転者の視認性の向上を確保した上で歩行者に対する眩惑光の発生を防止する。
【解決手段】 左右方向に並んで配置された複数の半導体発光素子15と半導体発光素子から出射された光を反射し半導体発光素子の下側に配置された下側リフレクター18とを有する光源体13と、半導体発光素子から出射された光を投影して照射する投影レンズ32とを備え、遠距離の領域を照射するハイビームの配光パターンP1における上部のパターンH2が下側リフレクターで反射され投影レンズから照射される光によって形成され、半導体発光素子から出射され下側リフレクターに入射される光の入射状態が制御されてハイビームの配光パターンにおける上部のパターンの形成状態が変化されるようにした。従って、ハイビームの配光パターンにおいては歩行者における上部側に光が照射されないように制御されるため、運転者の視認性の向上を確保した上で、歩行者に対する眩惑光の発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、光源から出射され下側リフレクターに入射される光の入射状態を制御しハイビームの配光パターンにおける上部のパターンの形成状態を変化させて、運転者の視認性の向上を確保した上で歩行者に対する眩惑光の発生を防止する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、カバーとランプボデイによって形成された灯具外筐の内部に複数の光源が配置され、一部の光源がロービームを照射する光源として用いられ、その他の光源がハイビームを照射する光源として用いられたものがある(例えば、特許文献1参照)。ハイビームを照射する光源としては複数の半導体発光素子、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられている。
【0003】
特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、ハイビームを照射する光源のうち、例えば、カメラにより撮影された画像を処理することによって検出された対向車及び歩行者が存在する領域を照射する光源を消灯し、ハイビームの配光パターンを変化させる所謂可変ハイビーム(ADB:Adaptive Driving Beam)の制御が可能な構成にされている。このような制御を行うことにより、対向車及び歩行者に対する眩惑光の発生を防止することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2008−37240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、歩行者の存在する領域を照射する光源が消灯された場合には、当該領域内に存在する歩行者を運転者が視認し難くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明車輌用前照灯は、運転者の視認性の向上を確保した上で歩行者に対する眩惑光の発生を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、左右方向に並んで配置された複数の半導体発光素子と前記半導体発光素子から出射された光を反射し前記半導体発光素子の下側に配置された下側リフレクターとを有する光源体と、前記半導体発光素子から出射された光を投影して照射する投影レンズとを備え、遠距離の領域を照射するハイビームの配光パターンにおける上部のパターンが前記下側リフレクターで反射され前記投影レンズから照射される光によって形成され、前記半導体発光素子から出射され前記下側リフレクターに入射される光の入射状態が制御されて前記ハイビームの配光パターンにおける前記上部のパターンの形成状態が変化されるようにしたものである。
【0008】
従って、歩行者の存在が検出されたときに歩行者における上部側に光が照射されないように制御される。
【発明の効果】
【0009】
本発明車輌用前照灯は、左右方向に並んで配置された複数の半導体発光素子と前記半導体発光素子から出射された光を反射し前記半導体発光素子の下側に配置された下側リフレクターとを有する光源体と、前記半導体発光素子から出射された光を投影して照射する投影レンズとを備え、遠距離の領域を照射するハイビームの配光パターンにおける上部のパターンが前記下側リフレクターで反射され前記投影レンズから照射される光によって形成され、前記半導体発光素子から出射され前記下側リフレクターに入射される光の入射状態が制御されて前記ハイビームの配光パターンにおける前記上部のパターンの形成状態が変化されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
従って、運転者の視認性の向上を確保した上で歩行者に対する眩惑光の発生を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載された発明にあっては、前記下側リフレクターを遮蔽する遮蔽位置と前記下側リフレクターに対する遮蔽状態を解除する退避位置との間で移動され前記下側リフレクターに入射される光の入射状態を制御する可動シェードを設けている。
【0012】
従って、下側リフレクターに入射される光の入射状態の制御を簡素な構成によって確実に行うことができる。
【0013】
請求項3に記載された発明にあっては、前記下側リフレクターが移動されて前記下側リフレクターに入射される光の入射状態が制御される。
【0014】
従って、下側リフレクターに入射される光の入射状態を制御する専用の部分が不要となり、部品点数の削減及び構成の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
車輌用前照灯1は、車体の前端部における左右両端部にそれぞれ取り付けられて配置されている。
【0017】
車輌用前照灯1は、図1に示すように、例えば、前方に開口されたランプボデイ2とランプボデイ2の前端部に取り付けられたカバー3とによって構成された灯具外筐4の内部が灯室5として形成され、灯室5にランプユニット6が配置されている。
【0018】
灯室5には保持部材7が光軸調整機構8を介して左右方向及び前後方向に傾動自在に配置されている。
【0019】
保持部材7は熱伝導性の高い金属材料によって形成され、前後方向を向くベース部9を有している。
【0020】
ベース部9の上下両端部には被支持部10、10、10が設けられている(図1に二つの被支持部10、10のみを示す。)。ベース部9の後面には後方へ突出された放熱フィン11、11、・・・が左右に離隔して設けられている。
【0021】
ベース部9に設けられた放熱フィン11、11、・・・の後面には放熱用ファン12が取り付けられている。
【0022】
ベース部9の前面における中央部には光源体13が取り付けられている。
【0023】
光源体13は、図2に示すように、回路基板14と複数の半導体発光素子15、15、・・・と給電コネクタ16と分岐コネクタ17と下側リフレクター18と上側リフレクター19を有している。
【0024】
回路基板14は、図2に示すように、T字状に形成され、上側部20と上側部20より横幅の小さい下側部21とから成る。回路基板14には上側部20の左右両側部における下縁と下側部21の左右両側縁とによってそれぞれ下方及び側方に開口された切欠14a、14aが形成されている。
【0025】
回路基板14には、上側部20に給電コネクタ16と分岐コネクタ17が配置され、下側部21に半導体発光素子15、15、・・・、上側リフレクター19及び下側リフレクター18が配置されている。
【0026】
半導体発光素子15、15、・・・は光を出射する面状光源として機能し、発光面が前方を向く状態で左右方向に並んで設けられている。
【0027】
給電コネクタ16は上側部20の上端部に配置され、回路基板14の配線パターン14b、14b、・・・によって半導体発光素子15、15、・・・に接続されている。
【0028】
給電コネクタ16には図示しない制御回路に接続された図示しない配線コードのコネクタ部が接続される。従って、制御回路から配線コード、給電コネクタ16及び配線パターン14b、14b、・・・を介して半導体発光素子15、15、・・・に電源が供給される。
【0029】
分岐コネクタ17は上側部20の側部に配置され、回路基板14の配線パターン14c、14c、・・・によって給電コネクタ16に接続されている。
【0030】
下側リフレクター18と上側リフレクター19は、図2に示すように、それぞれ半導体発光素子15、15、・・・を挟んだ下側と上側に配置されている。下側リフレクター18と上側リフレクター19は半導体発光素子15、15、・・・側に位置しそれぞれ略上方を向く面と略下方を向く面を有し、これらの各面がそれぞれ反射面18a、19aとして形成されている。反射面18aは、例えば、放物面に形成され、反射面19aは、例えば、双曲面に形成されている。
【0031】
反射面18a、19aは半導体発光素子15、15、・・・から出射された光を前方に向けて反射する。
【0032】
回路基板14の下側部21の側方には、切欠14aによって形成された空間にシェード駆動機構22の一部が配置されている。シェード駆動機構22は駆動モーター23と駆動ギヤ24と伝達ギヤ25とフラットケーブル26を有している。
【0033】
駆動ギヤ24は駆動モーター23の出力軸に固定され、伝達ギヤ25に噛合されている。駆動モーター23はフラットケーブル26によって分岐コネクタ17に接続されている。従って、制御回路から配線コード、給電コネクタ16、配線パターン14c、14c、・・・、分岐コネクタ17及びフラットケーブル26を介して駆動モーター23に駆動電圧が供給される。
【0034】
上記したように、半導体発光素子15、15、・・・に電源を供給するための給電コネクタ16は分岐コネクタ17等を介して駆動モーター23に接続され、駆動モーター23に駆動電圧を供給するコネクタとしても機能し、給電コネクタ16は半導体発光素子15、15、・・・への電源の供給用及び駆動モーター23への駆動電圧の供給用のコネクタとして一体化されている。
【0035】
従って、制御回路から半導体発光素子15、15、・・・に電源を供給するための配線コード及びコネクタと、制御回路から駆動モーター23に駆動電圧を供給するための配線コード及びコネクタとを各別に設ける必要がなく、車輌用前照灯1の構造の簡素化、小型化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0036】
また、車輌用前照灯1にあっては、回路基板14に切欠14aを形成し、切欠14aによって形成された空間にシェード駆動機構22の一部を配置している。
【0037】
従って、シェード駆動機構22が側方へ大きく突出して配置されることがなく、その分、車輌用前照灯1の小型化を図ることができる。
【0038】
回路基板14の下端部には左右方向に延びる支点軸27が回動自在に支持されている。支点軸27の一方の端部は伝達ギヤ25に連結されている。支点軸27には可動シェード28が取り付けられている。
【0039】
可動シェード28は、左右に延びる遮蔽面部29と、遮蔽面部29の左右両端部から直交する同じ方向へそれぞれ突出された被支持面部30、30とが一体に形成されて成る。
【0040】
可動シェード28は被支持面部30、30の先端部がそれぞれ支点軸27に取り付けられている。駆動モーター23が回転されると、駆動ギヤ24及び伝達ギヤ25を介して支点軸27が回動され支点軸27の回動に伴って可動シェード28が駆動モーター23の回転方向に応じた方向へ回動される。
【0041】
可動シェード28は後方側の位置である下側リフレクター18に入射される光を遮蔽する遮蔽位置Cと前方側の位置である下側リフレクター18に対する遮蔽状態を解除する退避位置Oとの間で回動される。可動シェード28の位置に応じて半導体発光素子15、15、・・・から出射され下側リフレクター18に入射される光の入射状態が制御される。
【0042】
遮蔽面部29は外方へ凸の緩やかな円弧面状に形成されている。可動シェード28が遮蔽位置Cに位置されている場合には、遮蔽面部29によって下側リフレクター18の反射面18aが覆われた状態とされる。一方、可動シェード28が退避位置Oに位置されている場合には、半導体発光素子15、15、・・・から出射され反射面18aに向かう光が遮蔽面部29によって遮蔽されない状態とされる。
【0043】
ベース部9の前面にはレンズホルダー31が取り付けられている(図1参照)。レンズホルダー31は前後方向に貫通した略円筒状に形成され、半導体発光素子15、15、・・・を覆うようにしてベース部9に取り付けられている。
【0044】
レンズホルダー31の前端部には投影レンズ32が取り付けられている。投影レンズ32は前方に凸の略半球状に形成されたレンズ部32aとレンズ部32aの外周から張り出されたフランジ部32bとが一体に形成されて成る。投影レンズ32は後側焦点を含む焦点面上の像を反転して半導体発光素子15、15、・・・から出射された光を前方へ投影する機能を有する。
【0045】
車輌用前照灯1において、上記した保持部材7、放熱フィン11、11、・・・、放熱用ファン12、光源体13、シェード駆動機構22、可動シェード28、レンズホルダー31及び投影レンズ32によって遠距離を照射するハイビームを出射するランプユニット6が構成される。
【0046】
光軸調整機構8はエイミングスクリュー33、33(図1に一方のエイミングスクリュー33のみを示す。)とレベリングアクチュエーター34を有している。
【0047】
エイミングスクリュー33、33は灯室5の上部において左右に離隔して位置され、回転操作部35、35と回転操作部35、35からそれぞれ前方へ突出された軸部36、36とから成り、軸部36、36の前端部がそれぞれ螺軸部36a、36aとして設けられている。
【0048】
エイミングスクリュー33、33は回転操作部35、35がそれぞれランプボデイ2の後端部に回転自在に支持され、螺軸部36a、36aがそれぞれ保持部材7の上側の被支持部10、10に螺合されている。
【0049】
レベリングアクチュエーター34は駆動部37と駆動部37から前方へ突出された軸部38とから成り、軸部38に螺軸部38aが設けられている。レベリングアクチュエーター34は螺軸部38aが保持部材7の下側の被支持部10に螺合されている。
【0050】
車輌用前照灯1において、回転操作部35が操作されて被支持部10に連結されたエイミングスクリュー33が回転されると、その回転方向に応じた方向へ他の被支持部10、10を支点として保持部材7が傾動され、ランプユニット6の光軸調整(エイミング調整)が行われる。
【0051】
また、駆動部37の駆動力によって被支持部10に連結された軸部38が回転されると、その回転方向に応じた方向へ他の被支持部10、10を支点として保持部材7が上下方向へ傾動され、ランプユニット6の光軸調整(レベリング調整)が行われる。
【0052】
車輌には撮像素子として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)等を有する図示しないカメラが設けられており、ハイビームの照射領域(図3の配光パターンP1参照)がカメラによって定期的に撮影される。カメラによってハイビームの照射領域が撮影されると、画像データが生成されてハイビームの照射領域に存在する対向車輌や歩行者100の存在が画像処理によって検出される。
【0053】
尚、上記には、図2において、回路基板14の上側部20、上側部20に配置された各部、シェード駆動機構22及び支点軸27を示したが、図3以降の各図においては、これらの各部を省略して示すものとする。
【0054】
以上のように構成された車輌用前照灯1において、図示しない点灯回路の駆動により光源体13に駆動電圧が印加されると半導体発光素子15、15、・・・から光が出射される。
【0055】
半導体発光素子15、15、・・・から出射された光は前方へ向かうか又は反射面18a、19aで反射され、投影レンズ32の後側焦点を含む焦点面上に集光され、投影レンズ32及びカバー3を透過されてハイビームの照射光として前方へ照射される。このとき、同時に、上記したカメラによりハイビームの照射領域の撮影が行われる。
【0056】
ハイビームの配光パターンP1は、図3に示すように、半導体発光素子15、15、・・・から出射された光のうち、反射面19aで反射される光によって形成されるパターンH1と、反射面18aで反射される光によって形成されるパターンH2と、反射面18a、19aの何れにおいても反射されない光によって形成されるパターンH3とから成る。
【0057】
パターンH1は配光パターンP1の下側の部分である。パターンH2は配光パターンP1の上側の部分であり、歩行者100における上部側に照射される光によって形成される。パターンH3は配光パターンP1の上下方向における中央部である。
【0058】
車輌用前照灯1においてハイビームの照射時に、上記した画像処理によってハイビームの照射領域に歩行者100の存在が検出されないときには可動シェード28が退避位置Oに位置される(図4参照)。一方、ハイビームの照射領域に歩行者100の存在が検出されると可動シェード28が退避位置Oから遮蔽位置Cに回動され、歩行者100の存在が検出されている間は、遮蔽位置Cに可動シェード28が保持される(図5参照)。
【0059】
遮蔽面部29が退避位置Oに位置されている場合には、反射面18aが遮蔽面部29によって遮蔽されないためパターンH1、パターンH2及びパターンH3によって構成される配光パターンP1が形成される(図4参照)。一方、遮蔽面部29が遮蔽位置Cに位置されている場合には、反射面18aが遮蔽面部29によって遮蔽されるためパターンH2が形成されず、パターンH1及びパターンH3によって構成される配光パターンP2が形成される(図5参照)。従って、歩行者100の存在が検出された場合には配光パターンP2が形成され、歩行者100における上部側に光が照射されない。
【0060】
光源体13においては、下側リフレクター18を遮蔽する遮蔽位置Cと下側リフレクター18に対する遮蔽状態を解除する退避位置Oの間で移動される可動シェード28を設けて下側リフレクター18に入射される光の入射状態を制御している。従って、下側リフレクター18に入射される光の入射状態の制御を簡素な構成によって確実に行うことができる。
【0061】
また、可動シェード28が回動されて退避位置Oと遮蔽位置Cの間で移動されるため、可動シェード28の前後方向における移動スペースが小さくて済み、車輌用前照灯1の小型化を図ることができる。
【0062】
尚、上記には、車輌用前照灯1において支点軸27が回路基板14の下端部に支持された例を示したが、図6に示すように、支点軸27が下側リフレクター18の前方に支持される構成とすることも可能である。
【0063】
但し、支点軸27が下側リフレクター18の前方に支持される構成にすると、遮蔽面部29の回動軌跡T1(図6の破線部参照)の一部が半導体発光素子15、15、・・・の発光面の前方に存在する。従って、可動シェード28が回動される途中において半導体発光素子15、15、・・・から出射され反射面18aに向かわない光の一部が遮蔽面部29によって遮蔽されるため、可動シェード28の回動時に配光パターンの面積が一旦減少してから増加するように変化してしまい、運転者に対する違和感を生じるおそれがある。
【0064】
そこで、上記したように、支点軸27を回路基板14の下端部に支持して遮蔽面部29の回動軌跡T2を遮蔽位置Cより下方に位置させることにより(図7参照)、可動シェード28の回動時に半導体発光素子15、15、・・・から出射され反射面18aに向かわない光を遮らないようにし、車輌の運転者における違和感の発生を防止することができる。
【0065】
また、遮蔽面部29の回動軌跡T2が、遮蔽位置Cより下方に位置され可動シェード28の回動時に遮蔽面部29が一旦遮蔽位置Cの上方に移動されてから下方に移動されることがないので、可動シェード28における退避位置Oと遮蔽位置Cの間の回動角度を小さくすることができる。
【0066】
なお、上記には、車輌用前照灯1において可動シェード28が回動されて退避位置Oと遮蔽位置Cの間で移動される例を示したが、可動シェード28は回動される構成に限られることはなく、例えば、図8に示すように、可動シェード28が矢印で示す方向に沿って退避位置Oと遮蔽位置Cの間で直線的に移動される構成にすることも可能である。
【0067】
次に、光源体の変形例について説明する(図9参照)。
【0068】
なお、以下に示す変形例に係る光源体13Aは、上記した光源体13と比較して、可動シェードによって光の制御が行われず、下側リフレクターが上下方向に移動されて光の制御が行われることが相違する。
【0069】
従って、光源体13Aについては、光源体13と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については光源体13における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略するか、又は、必要に応じて簡単に説明する。
【0070】
光源体13Aは回路基板14と複数の半導体発光素子15、15、・・・と下側リフレクター18Aと上側リフレクター19とを有している。
【0071】
回路基板14の下方には図示しない垂直駆動部が配置されている。
【0072】
下側リフレクター18Aは、下側リフレクター18と同じ構成の反射面18aを有し、回路基板14の前面側において、垂直駆動部によって上下方向へ移動される。
【0073】
下側リフレクター18Aは、半導体発光素子15、15、・・・に反射面18aが隣接して位置される第1の位置Hと、第1の位置Hよりも下方とされ半導体発光素子15、15、・・・と離隔して位置される第2の位置Lとの間で移動される。
【0074】
下側リフレクター18Aが第1の位置Hに位置されているときには、半導体発光素子15、15、・・・から出射され反射面18aによって反射される光によって配光パターンP1におけるパターンH2が形成される(図3参照)。一方、下側リフレクター18Aが第2の位置Lに位置されているときには、半導体発光素子15、15、・・・から出射された光が反射面18aによって反射されないためパターンH2が形成されず、パターンH1及びパターンH3によって構成される配光パターンP2が形成される(図5参照)。
【0075】
下側リフレクター18Aが上下方向に移動されるように構成された車輌用前照灯1においてハイビームが照射されたときに、歩行者100の存在が検出されないときには下側リフレクター18Aが第1の位置Hに位置される。一方、歩行者100の存在が検出された場合には下側リフレクター18Aが第1の位置Hから第2の位置Lに移動される。歩行者100の存在が検出されている間は、第2の位置Lに下側リフレクター18Aが保持され配光パターンP2が形成される。従って、歩行者100の存在が検出された場合には配光パターンP2が形成され、歩行者100における上部側に光が照射されない。
【0076】
光源体13Aにおいては、下側リフレクター18Aが移動されて下側リフレクター18Aに入射される光の入射状態が制御されている。従って、下側リフレクター18Aに入射される光の入射状態を制御する専用の部材が不要となり、部品点数の削減及び構成の簡素化を図ることができる。
【0077】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、半導体発光素子15、15、・・・から出射され下側リフレクター18、18Aに入射される光の入射状態を制御してハイビームの配光パターンP1、P2における上部のパターンH2の形成状態を変化させるようにしている。
【0078】
従って、歩行者100の存在が検出されたときに歩行者100における上部側に光が照射されないように制御されるため、運転者の視認性の向上を確保した上で歩行者100に対する眩惑光の発生を防止することができる。
【0079】
上記した最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図2乃至図9と共に最良の実施の形態に係る車輌用前照灯を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の概略縦断面図である。
【図2】光源体の拡大斜視図である。
【図3】ハイビームの配光パターンを示す図である。
【図4】可動シェードが退避位置に位置されている状態において、光源体とハイビームの配光パターンを比較して示す図である。
【図5】可動シェードが遮蔽位置に位置されている状態において、光源体とハイビームの配光パターンを比較して示す図である。
【図6】支点軸が下側リフレクターの前方に位置されたときの可動シェードの動作を説明するための拡大断面図である。
【図7】支点軸が回路基板の下端部に位置されたときの可動シェードの動作を説明するための拡大断面図である。
【図8】可動シェードが直線的に移動される光源体を示す拡大断面図である。
【図9】光源体の変形例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1…車輌用前照灯、13…光源体、15…半導体発光素子、18…下側リフレクタ、32…投影レンズ、26…可動シェード、H1…パターン、H2…パターン、H3…パターン、13A…光源体、18A…下側リフレクタ、P1…配光パターン、P2…配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に並んで配置された複数の半導体発光素子と前記半導体発光素子から出射された光を反射し前記半導体発光素子の下側に配置された下側リフレクターとを有する光源体と、
前記半導体発光素子から出射された光を投影して照射する投影レンズとを備え、
遠距離の領域を照射するハイビームの配光パターンにおける上部のパターンが前記下側リフレクターで反射され前記投影レンズから照射される光によって形成され、
前記半導体発光素子から出射され前記下側リフレクターに入射される光の入射状態が制御されて前記ハイビームの配光パターンにおける前記上部のパターンの形成状態が変化されるようにした
ことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】
前記下側リフレクターを遮蔽する遮蔽位置と前記下側リフレクターに対する遮蔽状態を解除する退避位置との間で移動され前記下側リフレクターに入射される光の入射状態を制御する可動シェードを設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
前記下側リフレクターが移動されて前記下側リフレクターに入射される光の入射状態が制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−20831(P2013−20831A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153661(P2011−153661)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】