車輌用灯具の洗浄装置
【課題】ピストンに支持された噴射ノズルが出し入れされる車体の開口部と該開口部に取り付けられるシリンダとの間にガタが生じないようにする。
【解決手段】シリンダに取り付けられ該シリンダを開口部に位置決めするブラケット8と、ブラケットに外嵌状に位置される固定部材9と、ブラケットと固定部材との間に位置される弾発部材とを備え、ブラケットは開口部の開口縁部の前側に係合する複数の係合片83b、84aを有し、固定部材は開口部の開口縁部の後側に当接する複数の当接部93a、94a、95aを有し、ブラケットの複数の係合片と固定部材の複数の当接部とによってそれぞれ開口部の開口縁部を挟持し、且つ、固定部材を開口部側に付勢するように弾発部材がブラケットと固定部材との間に介挿されるようにした。
【解決手段】シリンダに取り付けられ該シリンダを開口部に位置決めするブラケット8と、ブラケットに外嵌状に位置される固定部材9と、ブラケットと固定部材との間に位置される弾発部材とを備え、ブラケットは開口部の開口縁部の前側に係合する複数の係合片83b、84aを有し、固定部材は開口部の開口縁部の後側に当接する複数の当接部93a、94a、95aを有し、ブラケットの複数の係合片と固定部材の複数の当接部とによってそれぞれ開口部の開口縁部を挟持し、且つ、固定部材を開口部側に付勢するように弾発部材がブラケットと固定部材との間に介挿されるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な車輌用灯具の洗浄装置に関する。詳しくは、ピストンに支持された噴射ノズルが出し入れされる車体の開口部と該開口部に取り付けられるシリンダとの間にガタが生じないようにする技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具の洗浄装置、例えば、自動車用前照灯の前面カバー(レンズ)の汚れを洗浄するための洗浄装置が知られている。
【0003】
上記した車輌用灯具の洗浄装置は、シリンダによって駆動されるピストンの先端部に噴射ノズルを備え、ピストンがシリンダから突出された状態で、シリンダ及びピストンの内部を介して供給された洗浄液(水)が噴射ノズルから車輌用灯具に向かって噴射されるようになっている。
【0004】
そして、不使用時には、ピストンはシリンダ内に引込まれ、従って、噴射ノズルは車体の一部、例えば、バンパーに形成された開口部の内側の待機位置に位置されている。そして、使用時に、噴射ノズルが上記開口部から突出されて使用位置に出て行くことになる。従って、シリンダが開口部に対して位置決めされていないと、ピストンの移動に伴う噴射ノズルの移動軌跡が不安定となり、噴射ノズルやピストンが開口部の縁等に干渉してしまう惧れがある。そのために、シリンダを開口部に対して正確に位置決めすることが重要である。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に示された車輌用灯具の洗浄装置では、シリンダの前端部に取り付けたブラケット(38)の係合位置決め部(46)、(46)の先端に形成された爪部(46c)、(46c)を開口部(37)の互いに対向して位置した開口縁部の前面に係合させ、さらに、ブラケット(38)の平らな板状をした片(47)、(47)の先端部を開口部の上記爪部(46c)、(46c)が係合する開口縁と略90゜異なる向きで対向している開口縁に当接させて、ブラケット(38)の前端部を開口部に位置決めし、且つ、ブラケット(38)に形成された取付片(41)、(41)をボルト締めによって開口部(37)から離れた位置で車体に固定している。なお、上記説明において、括弧内の数字は特許文献1の図面において各部に付された符号を示すものである。
【0006】
特許文献1の車輌用灯具の洗浄装置にあっては、上記したように、ブラケット(38)の先端部が開口部(37)に対して位置決めされ、これによって、間接的に、噴射ノズルの開口部(37)に対する位置決めが為される。
【0007】
【特許文献1】特開2003−182536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した特許文献1に示された車輌用灯具の洗浄装置にあっては、ブラケット(38)の前端部と開口部(37)との係合は、前後方向に関しては、爪部(46c)、(46c)が開口縁の前面と係合しているのみであるので、取付片(41)、(41)が固定される位置と開口部(37)の位置とが正確に位置決めされていないと、爪部(46c)、(46c)や係合位置決め部(46)、(46)に無理な力が加わったり、爪部(46c)、(46c)が開口部(37)の開口縁部の前面から前方へ浮き上がって、位置決め状態が崩れると言った問題が生じる。また、係合位置決め部(46)、(46)が開口部(37)の中心方向へと撓んで、爪部(46c)、(46c)の開口縁部との係合が外れてしまう惧れもある。
【0009】
そこで、本発明は、ピストンに支持された噴射ノズルが出し入れされる車体の開口部と該開口部に取り付けられるシリンダとの間にガタが生じないように、しかも、局部的に無理な力がかからないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
車輌用灯具の洗浄装置は、上記した課題を解決するために、シリンダに取り付けられ該シリンダを上記開口部に位置決めするブラケットと、上記ブラケットに外嵌状に位置される固定部材と、上記ブラケットと上記固定部材との間に位置される弾発部材とを備え、上記ブラケットは上記開口部の開口縁部の前側に係合する複数の係合片を有し、上記固定部材は上記開口部の開口縁部の後側に当接する複数の当接部を有し、上記ブラケットの複数の係合片と上記固定部材の複数の当接部とによってそれぞれ上記開口部の開口縁部を挟持し、且つ、上記固定部材を上記開口部側に付勢するように上記弾発部材が上記ブラケットと上記固定部材との間に介挿されるようにしたものである。
【0011】
従って、本発明車輌用灯具の洗浄装置にあっては、車体の開口部と該開口部に取り付けられるシリンダ(シリンダに取り付けられたブラケット)との間にガタが生じることがなく、しかも、構成部材に局部的に無理な力がかかるようなことがない。
【発明の効果】
【0012】
本発明車輌用灯具の洗浄装置は、先端部に洗浄液を噴射する噴射ノズルと該噴射ノズルを前方に対して覆うノズルカバーを有するピストンと、上記ピストンを車体に設けられた開口部に対して出し入れするように駆動するシリンダとを備えた車輌用灯具の洗浄装置であって、上記シリンダに取り付けられ該シリンダを上記開口部に位置決めするブラケットと、上記ブラケットに外嵌状に位置される固定部材と、上記ブラケットと上記固定部材との間に位置される弾発部材とを備え、上記ブラケットは上記開口部の開口縁部の前側に係合する複数の係合片を有し、上記固定部材は上記開口部の開口縁部の後側に当接する複数の当接部を有し、上記ブラケットの複数の係合片と上記固定部材の複数の当接部とによってそれぞれ上記開口部の開口縁部を挟持し、且つ、上記固定部材を上記開口部側に付勢するように上記弾発部材が上記ブラケットと上記固定部材との間に介挿されることを特徴とする。
【0013】
従って、本発明車輌用灯具の洗浄装置にあっては、ブラケットに設けられた係合片と固定部材に設けられた当接部とによって開口部の開口縁部を前後から挟持することによってブラケットの前端部が開口部に対して位置決めされ且つ固定されるので、車体の開口部と該開口部に取り付けられるシリンダとの間にガタが生じず、また、一部の部材や部分に偏った負荷がかかることがない。
【0014】
請求項2に記載した発明にあっては、上記ブラケットには前方を向く平面状の受け面が形成され、上記固定部材の後端部は上記ブラケットの受け面に対してほぼ平行に対向する作用面を有し、上記ブラケットの受け面と上記固定部材の作用面との間に上記弾発部材としてバネが介挿されるようにした。
【0015】
従って、ブラケットの前端部を開口部へ係合したときの係合状態が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明車輌用灯具の洗浄装置を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
先ず車輌用灯具の洗浄装置の概略について説明する。
【0018】
図1はブラケットを取り付けていない状態の車輌用灯具の洗浄装置1の縦断面図である。
【0019】
車輌用灯具の洗浄装置1は、シリンダ2と、該シリンダ2に摺動自在に結合されたピストン3と、ピストン3の先端にチェックバルブ部4を介して連結された噴射ノズル5とを備える。
【0020】
シリンダ2はほぼ円筒状をした主部21と該主部21の後端を閉塞するジョイント部22とを備える。上記主部21の外周面の前端部には複数の係合突起21a、21a、・・・(図3、図8参照)が周方向に間隔を空けて形成されている。
【0021】
ピストン3は上記シリンダ2に摺動自在に結合される。ピストン3はほぼ筒状に形成されている。
【0022】
ピストン3の内部に引張コイルバネ6が配置されており、該引張コイルバネ6の前後に形成されたフック部61、62がそれぞれピストン3の前端部とシリンダ2の後端部とに係止され、これによって、ピストン3はシリンダ2内に引き込まれる方向に付勢されている。
【0023】
上記ピストン3の前端部にはチェックバルブ部4が連結され、該チェックバルブ部4の筐体41内にチェックバルブ42が配置され、また、筐体41に設けられたノズル保持部43、43に噴射ノズル5、5が支持されている。
【0024】
7はチェックバルブ部4の前端に支持されたノズルカバーである。
【0025】
上記車輌用灯具の洗浄装置1において、シリンダ2のジョイント部22に設けられた洗浄液(水)供給管22a(図3、図8参照)を介して、シリンダ2の後端内部に洗浄液(水)が供給されると、該洗浄液はピストン3の内部を通ってチェックバルブ42の手前までを満たし、この洗浄液の圧力によって引張コイルバネ6が伸張して、ピストン3がシリンダ2から突出していく。そして、チェックバルブ42手前での洗浄液の圧力がチェックバルブ42の耐圧を超えると、チェックバルブ42が開き、洗浄液は噴射ノズル5、5にまで達し、噴射ノズル5、5のノズル孔から噴射される。
【0026】
上記シリンダ2はシリンダ2に取り付けられるブラケット8を介して固定部材9によって車体10に設けられた開口部11に位置決めされ、かつ、固定される。なお、ここで車体10はバンパーであることが多いが、バンパーに限るものではなく、例えば、前照灯のリム等、バンパー以外のものであっても良い。
【0027】
ブラケット8は、後端部にほぼ円筒状をした取付部81を備え、該取付部81の前側に位置決め部82が設けられている。
【0028】
上記取付部81の後端には外方に張り出した受け板81bが形成され、該受け板81bの前面81cがシリンダ2の軸にほぼ垂直な平面である受け面とされている。
【0029】
上記取付部81には周方向に間隔をあけて複数の係合孔81a、81a、・・・が形成されている。そして、取付部81がシリンダ2の前端部に外嵌され、該取付部81の係合孔81a、81a、・・・にシリンダ2の係合突起21a、21a、・・・が係合され、これによって、ブラケット8がシリンダ2の前端部に固定される。
【0030】
上記位置決め部82の基部82aは前後方向に見てほぼ長四角の角筒状をしており、上記基部82aの短辺に沿った部分の前端からは2つの係合腕片83、84が前方へ向けて突出され、また、基部82aの長辺に沿った部分の前端の互いに離間した位置には位置決め片85、85、86、86が前方へ向けて突出されている。
【0031】
上記係合腕片83の基部の両側部からは位置決め部82の後端に向かって延びるスリット83a、83aが形成され、これによって、係合腕片83には板厚方向への弾性が付与されている。また、係合腕片83の前端には外方、すなわち、他方の係合腕片84と反対側に突出した係合片83bが形成されている。さらに係合腕片83の前端からやや後方の部分は外方へ突出した突出部83cとされており、該突出部83cの幅方向におけるほぼ中央に前後方向に延びるスリット83dが形成されており、該スリット83dの両側に係合縁83e、83eが形成されている。
【0032】
上記他方の係合腕片84の基部82aからの突出量は僅かであり、従って、該係合腕片84には板厚方向へはほとんど撓むことがない剛性が付与されている。係合腕片84の前端には外方、すなわち、上記一方の係合腕片83と反対側に突出した係合片84aが形成されており、さらに、上記係合片84aより僅かに後方の位置から同じく外方へ突出した挟持片84bが形成されている。なお、上記係合片84aと挟持片84bとの間の間隔は車体10に形成された開口部11の開口縁部の板圧にほぼ等しく形成されている。
【0033】
固定部材9は一の辺のほぼ中央部に前後方向に延びる切欠91aを有するほぼ角筒状をした基部91を有し、該基部91の後端面91bが軸方向にほぼ垂直な平面である作用面とされている。基部91の四隅部から突っ張り部92、93、94、95が前方へ向けて突設され、これら突っ張り部92、93、94、95の前端92a、93a、94a、95aがそれぞれ当接部とされている。突っ張り部92と93との間のほぼ中間の位置からはブラケット8の係合腕片83の撓みを規制する撓み規制部としての撓み規制片96が前方へ向けて突出されている。該撓み規制片96は幅の小さい板状をしており、外側を向いた面の幅方向におけるほぼ中央に前後方向に延びる突条96aが形成され、この突条96aによって撓み規制片96の剛性が高められている。
【0034】
101はクリップバネであり、側方から見てほぼL字状に屈曲された基端部101aから間隔を置いて平行に位置した弾発片101b、101bが突出されている。上記弾発片101b、101bは長さ方向の中央が後方へ突出するように湾曲されている。
【0035】
上記した車輌用灯具の洗浄装置1は車体10の開口部11に以下のようにして取り付けられる。
【0036】
先ず、図2(a)に示すように、ブラケット8の弾性を有しない係合腕片84の係合片84aと挟持片84bとの間で開口部11の長手方向の一端に位置する開口縁部を挟持した状態とする。なお、図2においてはブラケット8及び固定部材9の一部のみを示し、他の部分の図示は省略してある。
【0037】
上記したように、図2(b)に示すように、開口部11の一の開口縁部を係合腕片84の前端部で挟持した状態のまま、弾性を有する係合腕片83を内側に、すなわち、他方の係合腕片84の方へ撓ませた状態で係合片83bを開口部11の前側に通り抜けさせる。
【0038】
図2(b)に示すように、係合片83bを開口部11の前側に通り抜けさせた状態で、係合腕片83を撓ませていた力を除くと、係合腕片83が元の状態、すなわち、特別に力を加えられていない状態へと戻り、図2(c)に示すように、係合片83bが開口部11の長手方向の他端に位置する開口縁部の前側に係合する。
【0039】
図2(c)に示すように、ブラケット8の前端部が開口部11の開口縁部と係合した状態を後方から見た図が図3であり、前方から見た図が図4である。そして、ブラケット8の前端部が開口部11の開口縁部と係合した状態で、ブラケット8の4つの位置決め片85、85、86、86は開口部11の長手方向に沿う開口縁に当接した状態となり、これによって、ブラケット8は開口部11に精確に位置決めされる。なお、本実施の形態において、係合腕片83、84の幅は、それぞれ開口部11の長手方向における両端に位置する縁の長さにほぼ同じに形成され、且つ、4つの位置決め片85、85、86、86は開口部11の長手方向に沿う開口縁に当接した状態となるため、これによって、ブラケット8の前端部の回転が規制される。
【0040】
図3及び図4に示すように、ブラケット8の前端部を開口部11の開口縁部と係合させた状態で、固定部材9をシリンダ2の後方から外嵌して行く。このとき、シリンダ2の洗浄液供給管22aは固定部材9の基部91の切欠91aを通過する。そして、固定部材9の前端、すなわち、4つの突っ張り部92、93、94、95の当接部92a、93a、94a、95aが開口部11の開口縁部の後面に当接し、その状態を図5に示す。
【0041】
固定部材9がシリンダ2に外嵌されてから図5に示す状態になるまでの間に、固定部材9の撓み規制片96の先端がブラケット8の係合腕片83の突出部83cに形成された係合縁83e、83eの内側、すなわち、突出部83cの反突出側に対向し、また、撓み規制片96に形成された突条96aが突出部83cのスリット83dの後端と対向した状態となり(図6参照)、図5に示すように、固定部材9の当接部92a、93a、94a、95aが開口部11の開口縁部の後面に当接した状態では、図7に示すように、撓み規制片96が係合腕片83の係合縁83e、83eの内側に完全に入り込んだ状態となり、且つ、撓み規制片96の突条96aが係合縁83eと83eとの間のスリット83d内に位置する。
【0042】
図7に示すように、撓み規制片96が係合腕片83の係合縁83e、83eの内側に完全に入り込んだ状態となると、図2(d)に示すように、撓み規制片96が係合腕片83の内側に位置して、係合腕片83の内側への倒れを阻止するので、係合腕片83の係合片83bの開口部11の開口縁部の前面との係合が解除されることがない。
【0043】
図5に示すように、ブラケット8の係合片83b、84aと固定部材9の当接部92a、93a、94a、95aとによって開口部11の開口縁部を前後から挟持した状態を固定するために、クリップバネ101を、図5に矢印で示すように、ブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に介挿する。このとき、図8に示すように、ブラケット8の位置決め部82の基部82aと受け面81cとの間のネック部81dをクリップバネ101の弾発片101bと101bとの間に位置させた状態とする。クリップバネ101を、図8に示したように、ブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に介挿すると、弾発片101b、101bの湾曲状態が前後から押しつぶされた状態となり、それによって弾発片101b、101bに生じる反力により、固定部材9が前方へ付勢され、その当接部92a、93a、94a、95aとブラケット8の係合片83b、84aとで開口部11の開口縁部を強固に挟持し、従って、シリンダ2が開口部11において確実に車体10に固定される。
【0044】
なお、ここでブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に介挿される弾発部材として、クリップバネ101を示したが、弾発部材がクリップバネ101に限ることを意味するものではない。しかしながら、弾発部材をクリップバネ101とすることにより、修理の必要等でシリンダ2を車体10から取り外さなければならないときの、作業性が良好になる。また、クリップバネ101等の弾発部材の介挿位置であるが、開口部11から比較的離間した位置とすることが好ましい。すなわち、シリンダ2等に外力が加わった場合、シリンダ2はブラケット8の前端部と開口部11との係合箇所を中心に回動される力を受けるが、その場合、上記係合箇所から離れた位置に弾発部材がある方が、その弾発力が強く作用し、弾発部材が所定の位置から外れ難いからである。また、シリンダ2、ピストン3、チェックバルブ部4及びノズル体5、5を含む構造体のほぼ重心位置に弾発部材が位置していることがさらに好ましい。
【0045】
図9はクリップバネの変形例を示す図である。
【0046】
このクリップバネ102は、板バネ材料を側方から見てほぼ横倒U字状に曲げ、折曲部である基端部102aの上下両端からそれぞれ互いにほぼ平行に延びる弾発片102b、102b及び102c、102cが突出されて形成されている。このクリップバネ102は弾発片102b、102cと102b、102cとの間にブラケット8のネック部81dが位置するように、ブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に介在され、弾発片102b、102bが固定部材9の作用面91bに弾接し、また、弾発片102c、102cがブラケット8の受け面81cに弾接した状態とされる。
【0047】
上記した車輌用灯具の洗浄装置1にあっては、ブラケット8に設けられた係合片83b、84aと固定部材9に設けられた当接部82a、83a、84a、85aとによって開口部11の開口縁部を前後から挟持することによってブラケット8の前端部が開口部11に対して位置決めされ且つ固定されるので、一部の部材や部分に局部的に偏った負荷がかかることが無く、且つ、弾性を有する腕片83の開口縁部との係合を脱する方向への撓みが規制されるため、ブラケット8の先端部が開口部11から位置ずれを起こすことがない。
【0048】
また、ブラケット8の弾性を有する腕片83を他方の腕片84の方へと撓ませた状態で2つの腕片の係合片83b、84aを上記開口部11の開口縁部前側に係合させた後に、固定部材9を後方からブラケット8に外嵌状に位置させて行って、撓み規制部である固定部材の撓み規制片96が弾性を有する係合腕片83の撓みを規制する位置に挿入されるので、ブラケット8の開口部11への位置決め及び固定の作業を容易に行うことができる。
【0049】
さらに、他方の係合腕片84は係合片84aが開口縁部と係脱する方向へはほとんど撓まない剛性を有すると共に、係合片84aと協同して開口部11の開口縁部を前後から挟むために開口縁部の後側に当接する挟持片84bを有するので、係合腕片84の開口縁部への係合が安定し、かつ、ブラケット8の前端部が開口部11の開口縁部から外れ難くなる。
【0050】
さらにまた、固定部材9の後端部はブラケット8に形成された平面状の受け面81cに対してほぼ平行に対向する作用面91bを有し、ブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に弾発部材であるリップバネ101又は102が介挿されるので、ブラケット8の前端部の開口部11への係脱が容易であると共に、ブラケット8の前端部を開口部11へ一旦係合すると、その係合状態が安定する。
【0051】
なお、チェックバルブ部4の前端には噴射ノズル5、5を前方に対して覆うと共に、使用しないときに、開口部11を前方から覆うためのノズルカバー7が支持される。そこで、該ノズルカバー7の上下にそれぞれ左右に離間したリブを形成しておき、ピストン3がシリンダ2内に引き込まれて、ノズルカバー7が開口部11を覆うときに、ノズルカバー7に設けた上記リブがブラケット8の位置決め片85、85、86、86に当接するようにしておくことによって、ノズルカバー7を開口部11に対して位置決めすることができる。
【0052】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図面は本発明車輌用灯具の洗浄装置の実施の形態を示すものであり、本図はブラケット及び固定部材を除いた部分の縦断面図である。
【図2】ブラケットの前端部を開口部に係合する手順を(a)から(d)へ順を追って示す概略図である。
【図3】ブラケットの前端部を開口部に係合させた状態を後方から見て示す斜視図である。
【図4】ブラケットの前端部を開口部に係合させた状態を前方から見て示す斜視図である。
【図5】ブラケットの前端部と固定部材とによって開口部の開口縁部を前後から挟持した状態を後方から見て示す斜視図である。
【図6】固定部材が所定の取付位置に到達する直前の状態を前方から見て示す斜視図である。
【図7】固定部材が所定の取付位置に到達した状態を前方から見て示す斜視図である。
【図8】車輌用灯具の洗浄装置の開口部への取付が完了した状態を後方から見て示す斜視図である。
【図9】クリップバネの変形例を示す斜視図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な車輌用灯具の洗浄装置に関する。詳しくは、ピストンに支持された噴射ノズルが出し入れされる車体の開口部と該開口部に取り付けられるシリンダとの間にガタが生じないようにする技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用灯具の洗浄装置、例えば、自動車用前照灯の前面カバー(レンズ)の汚れを洗浄するための洗浄装置が知られている。
【0003】
上記した車輌用灯具の洗浄装置は、シリンダによって駆動されるピストンの先端部に噴射ノズルを備え、ピストンがシリンダから突出された状態で、シリンダ及びピストンの内部を介して供給された洗浄液(水)が噴射ノズルから車輌用灯具に向かって噴射されるようになっている。
【0004】
そして、不使用時には、ピストンはシリンダ内に引込まれ、従って、噴射ノズルは車体の一部、例えば、バンパーに形成された開口部の内側の待機位置に位置されている。そして、使用時に、噴射ノズルが上記開口部から突出されて使用位置に出て行くことになる。従って、シリンダが開口部に対して位置決めされていないと、ピストンの移動に伴う噴射ノズルの移動軌跡が不安定となり、噴射ノズルやピストンが開口部の縁等に干渉してしまう惧れがある。そのために、シリンダを開口部に対して正確に位置決めすることが重要である。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に示された車輌用灯具の洗浄装置では、シリンダの前端部に取り付けたブラケット(38)の係合位置決め部(46)、(46)の先端に形成された爪部(46c)、(46c)を開口部(37)の互いに対向して位置した開口縁部の前面に係合させ、さらに、ブラケット(38)の平らな板状をした片(47)、(47)の先端部を開口部の上記爪部(46c)、(46c)が係合する開口縁と略90゜異なる向きで対向している開口縁に当接させて、ブラケット(38)の前端部を開口部に位置決めし、且つ、ブラケット(38)に形成された取付片(41)、(41)をボルト締めによって開口部(37)から離れた位置で車体に固定している。なお、上記説明において、括弧内の数字は特許文献1の図面において各部に付された符号を示すものである。
【0006】
特許文献1の車輌用灯具の洗浄装置にあっては、上記したように、ブラケット(38)の先端部が開口部(37)に対して位置決めされ、これによって、間接的に、噴射ノズルの開口部(37)に対する位置決めが為される。
【0007】
【特許文献1】特開2003−182536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した特許文献1に示された車輌用灯具の洗浄装置にあっては、ブラケット(38)の前端部と開口部(37)との係合は、前後方向に関しては、爪部(46c)、(46c)が開口縁の前面と係合しているのみであるので、取付片(41)、(41)が固定される位置と開口部(37)の位置とが正確に位置決めされていないと、爪部(46c)、(46c)や係合位置決め部(46)、(46)に無理な力が加わったり、爪部(46c)、(46c)が開口部(37)の開口縁部の前面から前方へ浮き上がって、位置決め状態が崩れると言った問題が生じる。また、係合位置決め部(46)、(46)が開口部(37)の中心方向へと撓んで、爪部(46c)、(46c)の開口縁部との係合が外れてしまう惧れもある。
【0009】
そこで、本発明は、ピストンに支持された噴射ノズルが出し入れされる車体の開口部と該開口部に取り付けられるシリンダとの間にガタが生じないように、しかも、局部的に無理な力がかからないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
車輌用灯具の洗浄装置は、上記した課題を解決するために、シリンダに取り付けられ該シリンダを上記開口部に位置決めするブラケットと、上記ブラケットに外嵌状に位置される固定部材と、上記ブラケットと上記固定部材との間に位置される弾発部材とを備え、上記ブラケットは上記開口部の開口縁部の前側に係合する複数の係合片を有し、上記固定部材は上記開口部の開口縁部の後側に当接する複数の当接部を有し、上記ブラケットの複数の係合片と上記固定部材の複数の当接部とによってそれぞれ上記開口部の開口縁部を挟持し、且つ、上記固定部材を上記開口部側に付勢するように上記弾発部材が上記ブラケットと上記固定部材との間に介挿されるようにしたものである。
【0011】
従って、本発明車輌用灯具の洗浄装置にあっては、車体の開口部と該開口部に取り付けられるシリンダ(シリンダに取り付けられたブラケット)との間にガタが生じることがなく、しかも、構成部材に局部的に無理な力がかかるようなことがない。
【発明の効果】
【0012】
本発明車輌用灯具の洗浄装置は、先端部に洗浄液を噴射する噴射ノズルと該噴射ノズルを前方に対して覆うノズルカバーを有するピストンと、上記ピストンを車体に設けられた開口部に対して出し入れするように駆動するシリンダとを備えた車輌用灯具の洗浄装置であって、上記シリンダに取り付けられ該シリンダを上記開口部に位置決めするブラケットと、上記ブラケットに外嵌状に位置される固定部材と、上記ブラケットと上記固定部材との間に位置される弾発部材とを備え、上記ブラケットは上記開口部の開口縁部の前側に係合する複数の係合片を有し、上記固定部材は上記開口部の開口縁部の後側に当接する複数の当接部を有し、上記ブラケットの複数の係合片と上記固定部材の複数の当接部とによってそれぞれ上記開口部の開口縁部を挟持し、且つ、上記固定部材を上記開口部側に付勢するように上記弾発部材が上記ブラケットと上記固定部材との間に介挿されることを特徴とする。
【0013】
従って、本発明車輌用灯具の洗浄装置にあっては、ブラケットに設けられた係合片と固定部材に設けられた当接部とによって開口部の開口縁部を前後から挟持することによってブラケットの前端部が開口部に対して位置決めされ且つ固定されるので、車体の開口部と該開口部に取り付けられるシリンダとの間にガタが生じず、また、一部の部材や部分に偏った負荷がかかることがない。
【0014】
請求項2に記載した発明にあっては、上記ブラケットには前方を向く平面状の受け面が形成され、上記固定部材の後端部は上記ブラケットの受け面に対してほぼ平行に対向する作用面を有し、上記ブラケットの受け面と上記固定部材の作用面との間に上記弾発部材としてバネが介挿されるようにした。
【0015】
従って、ブラケットの前端部を開口部へ係合したときの係合状態が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明車輌用灯具の洗浄装置を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
先ず車輌用灯具の洗浄装置の概略について説明する。
【0018】
図1はブラケットを取り付けていない状態の車輌用灯具の洗浄装置1の縦断面図である。
【0019】
車輌用灯具の洗浄装置1は、シリンダ2と、該シリンダ2に摺動自在に結合されたピストン3と、ピストン3の先端にチェックバルブ部4を介して連結された噴射ノズル5とを備える。
【0020】
シリンダ2はほぼ円筒状をした主部21と該主部21の後端を閉塞するジョイント部22とを備える。上記主部21の外周面の前端部には複数の係合突起21a、21a、・・・(図3、図8参照)が周方向に間隔を空けて形成されている。
【0021】
ピストン3は上記シリンダ2に摺動自在に結合される。ピストン3はほぼ筒状に形成されている。
【0022】
ピストン3の内部に引張コイルバネ6が配置されており、該引張コイルバネ6の前後に形成されたフック部61、62がそれぞれピストン3の前端部とシリンダ2の後端部とに係止され、これによって、ピストン3はシリンダ2内に引き込まれる方向に付勢されている。
【0023】
上記ピストン3の前端部にはチェックバルブ部4が連結され、該チェックバルブ部4の筐体41内にチェックバルブ42が配置され、また、筐体41に設けられたノズル保持部43、43に噴射ノズル5、5が支持されている。
【0024】
7はチェックバルブ部4の前端に支持されたノズルカバーである。
【0025】
上記車輌用灯具の洗浄装置1において、シリンダ2のジョイント部22に設けられた洗浄液(水)供給管22a(図3、図8参照)を介して、シリンダ2の後端内部に洗浄液(水)が供給されると、該洗浄液はピストン3の内部を通ってチェックバルブ42の手前までを満たし、この洗浄液の圧力によって引張コイルバネ6が伸張して、ピストン3がシリンダ2から突出していく。そして、チェックバルブ42手前での洗浄液の圧力がチェックバルブ42の耐圧を超えると、チェックバルブ42が開き、洗浄液は噴射ノズル5、5にまで達し、噴射ノズル5、5のノズル孔から噴射される。
【0026】
上記シリンダ2はシリンダ2に取り付けられるブラケット8を介して固定部材9によって車体10に設けられた開口部11に位置決めされ、かつ、固定される。なお、ここで車体10はバンパーであることが多いが、バンパーに限るものではなく、例えば、前照灯のリム等、バンパー以外のものであっても良い。
【0027】
ブラケット8は、後端部にほぼ円筒状をした取付部81を備え、該取付部81の前側に位置決め部82が設けられている。
【0028】
上記取付部81の後端には外方に張り出した受け板81bが形成され、該受け板81bの前面81cがシリンダ2の軸にほぼ垂直な平面である受け面とされている。
【0029】
上記取付部81には周方向に間隔をあけて複数の係合孔81a、81a、・・・が形成されている。そして、取付部81がシリンダ2の前端部に外嵌され、該取付部81の係合孔81a、81a、・・・にシリンダ2の係合突起21a、21a、・・・が係合され、これによって、ブラケット8がシリンダ2の前端部に固定される。
【0030】
上記位置決め部82の基部82aは前後方向に見てほぼ長四角の角筒状をしており、上記基部82aの短辺に沿った部分の前端からは2つの係合腕片83、84が前方へ向けて突出され、また、基部82aの長辺に沿った部分の前端の互いに離間した位置には位置決め片85、85、86、86が前方へ向けて突出されている。
【0031】
上記係合腕片83の基部の両側部からは位置決め部82の後端に向かって延びるスリット83a、83aが形成され、これによって、係合腕片83には板厚方向への弾性が付与されている。また、係合腕片83の前端には外方、すなわち、他方の係合腕片84と反対側に突出した係合片83bが形成されている。さらに係合腕片83の前端からやや後方の部分は外方へ突出した突出部83cとされており、該突出部83cの幅方向におけるほぼ中央に前後方向に延びるスリット83dが形成されており、該スリット83dの両側に係合縁83e、83eが形成されている。
【0032】
上記他方の係合腕片84の基部82aからの突出量は僅かであり、従って、該係合腕片84には板厚方向へはほとんど撓むことがない剛性が付与されている。係合腕片84の前端には外方、すなわち、上記一方の係合腕片83と反対側に突出した係合片84aが形成されており、さらに、上記係合片84aより僅かに後方の位置から同じく外方へ突出した挟持片84bが形成されている。なお、上記係合片84aと挟持片84bとの間の間隔は車体10に形成された開口部11の開口縁部の板圧にほぼ等しく形成されている。
【0033】
固定部材9は一の辺のほぼ中央部に前後方向に延びる切欠91aを有するほぼ角筒状をした基部91を有し、該基部91の後端面91bが軸方向にほぼ垂直な平面である作用面とされている。基部91の四隅部から突っ張り部92、93、94、95が前方へ向けて突設され、これら突っ張り部92、93、94、95の前端92a、93a、94a、95aがそれぞれ当接部とされている。突っ張り部92と93との間のほぼ中間の位置からはブラケット8の係合腕片83の撓みを規制する撓み規制部としての撓み規制片96が前方へ向けて突出されている。該撓み規制片96は幅の小さい板状をしており、外側を向いた面の幅方向におけるほぼ中央に前後方向に延びる突条96aが形成され、この突条96aによって撓み規制片96の剛性が高められている。
【0034】
101はクリップバネであり、側方から見てほぼL字状に屈曲された基端部101aから間隔を置いて平行に位置した弾発片101b、101bが突出されている。上記弾発片101b、101bは長さ方向の中央が後方へ突出するように湾曲されている。
【0035】
上記した車輌用灯具の洗浄装置1は車体10の開口部11に以下のようにして取り付けられる。
【0036】
先ず、図2(a)に示すように、ブラケット8の弾性を有しない係合腕片84の係合片84aと挟持片84bとの間で開口部11の長手方向の一端に位置する開口縁部を挟持した状態とする。なお、図2においてはブラケット8及び固定部材9の一部のみを示し、他の部分の図示は省略してある。
【0037】
上記したように、図2(b)に示すように、開口部11の一の開口縁部を係合腕片84の前端部で挟持した状態のまま、弾性を有する係合腕片83を内側に、すなわち、他方の係合腕片84の方へ撓ませた状態で係合片83bを開口部11の前側に通り抜けさせる。
【0038】
図2(b)に示すように、係合片83bを開口部11の前側に通り抜けさせた状態で、係合腕片83を撓ませていた力を除くと、係合腕片83が元の状態、すなわち、特別に力を加えられていない状態へと戻り、図2(c)に示すように、係合片83bが開口部11の長手方向の他端に位置する開口縁部の前側に係合する。
【0039】
図2(c)に示すように、ブラケット8の前端部が開口部11の開口縁部と係合した状態を後方から見た図が図3であり、前方から見た図が図4である。そして、ブラケット8の前端部が開口部11の開口縁部と係合した状態で、ブラケット8の4つの位置決め片85、85、86、86は開口部11の長手方向に沿う開口縁に当接した状態となり、これによって、ブラケット8は開口部11に精確に位置決めされる。なお、本実施の形態において、係合腕片83、84の幅は、それぞれ開口部11の長手方向における両端に位置する縁の長さにほぼ同じに形成され、且つ、4つの位置決め片85、85、86、86は開口部11の長手方向に沿う開口縁に当接した状態となるため、これによって、ブラケット8の前端部の回転が規制される。
【0040】
図3及び図4に示すように、ブラケット8の前端部を開口部11の開口縁部と係合させた状態で、固定部材9をシリンダ2の後方から外嵌して行く。このとき、シリンダ2の洗浄液供給管22aは固定部材9の基部91の切欠91aを通過する。そして、固定部材9の前端、すなわち、4つの突っ張り部92、93、94、95の当接部92a、93a、94a、95aが開口部11の開口縁部の後面に当接し、その状態を図5に示す。
【0041】
固定部材9がシリンダ2に外嵌されてから図5に示す状態になるまでの間に、固定部材9の撓み規制片96の先端がブラケット8の係合腕片83の突出部83cに形成された係合縁83e、83eの内側、すなわち、突出部83cの反突出側に対向し、また、撓み規制片96に形成された突条96aが突出部83cのスリット83dの後端と対向した状態となり(図6参照)、図5に示すように、固定部材9の当接部92a、93a、94a、95aが開口部11の開口縁部の後面に当接した状態では、図7に示すように、撓み規制片96が係合腕片83の係合縁83e、83eの内側に完全に入り込んだ状態となり、且つ、撓み規制片96の突条96aが係合縁83eと83eとの間のスリット83d内に位置する。
【0042】
図7に示すように、撓み規制片96が係合腕片83の係合縁83e、83eの内側に完全に入り込んだ状態となると、図2(d)に示すように、撓み規制片96が係合腕片83の内側に位置して、係合腕片83の内側への倒れを阻止するので、係合腕片83の係合片83bの開口部11の開口縁部の前面との係合が解除されることがない。
【0043】
図5に示すように、ブラケット8の係合片83b、84aと固定部材9の当接部92a、93a、94a、95aとによって開口部11の開口縁部を前後から挟持した状態を固定するために、クリップバネ101を、図5に矢印で示すように、ブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に介挿する。このとき、図8に示すように、ブラケット8の位置決め部82の基部82aと受け面81cとの間のネック部81dをクリップバネ101の弾発片101bと101bとの間に位置させた状態とする。クリップバネ101を、図8に示したように、ブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に介挿すると、弾発片101b、101bの湾曲状態が前後から押しつぶされた状態となり、それによって弾発片101b、101bに生じる反力により、固定部材9が前方へ付勢され、その当接部92a、93a、94a、95aとブラケット8の係合片83b、84aとで開口部11の開口縁部を強固に挟持し、従って、シリンダ2が開口部11において確実に車体10に固定される。
【0044】
なお、ここでブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に介挿される弾発部材として、クリップバネ101を示したが、弾発部材がクリップバネ101に限ることを意味するものではない。しかしながら、弾発部材をクリップバネ101とすることにより、修理の必要等でシリンダ2を車体10から取り外さなければならないときの、作業性が良好になる。また、クリップバネ101等の弾発部材の介挿位置であるが、開口部11から比較的離間した位置とすることが好ましい。すなわち、シリンダ2等に外力が加わった場合、シリンダ2はブラケット8の前端部と開口部11との係合箇所を中心に回動される力を受けるが、その場合、上記係合箇所から離れた位置に弾発部材がある方が、その弾発力が強く作用し、弾発部材が所定の位置から外れ難いからである。また、シリンダ2、ピストン3、チェックバルブ部4及びノズル体5、5を含む構造体のほぼ重心位置に弾発部材が位置していることがさらに好ましい。
【0045】
図9はクリップバネの変形例を示す図である。
【0046】
このクリップバネ102は、板バネ材料を側方から見てほぼ横倒U字状に曲げ、折曲部である基端部102aの上下両端からそれぞれ互いにほぼ平行に延びる弾発片102b、102b及び102c、102cが突出されて形成されている。このクリップバネ102は弾発片102b、102cと102b、102cとの間にブラケット8のネック部81dが位置するように、ブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に介在され、弾発片102b、102bが固定部材9の作用面91bに弾接し、また、弾発片102c、102cがブラケット8の受け面81cに弾接した状態とされる。
【0047】
上記した車輌用灯具の洗浄装置1にあっては、ブラケット8に設けられた係合片83b、84aと固定部材9に設けられた当接部82a、83a、84a、85aとによって開口部11の開口縁部を前後から挟持することによってブラケット8の前端部が開口部11に対して位置決めされ且つ固定されるので、一部の部材や部分に局部的に偏った負荷がかかることが無く、且つ、弾性を有する腕片83の開口縁部との係合を脱する方向への撓みが規制されるため、ブラケット8の先端部が開口部11から位置ずれを起こすことがない。
【0048】
また、ブラケット8の弾性を有する腕片83を他方の腕片84の方へと撓ませた状態で2つの腕片の係合片83b、84aを上記開口部11の開口縁部前側に係合させた後に、固定部材9を後方からブラケット8に外嵌状に位置させて行って、撓み規制部である固定部材の撓み規制片96が弾性を有する係合腕片83の撓みを規制する位置に挿入されるので、ブラケット8の開口部11への位置決め及び固定の作業を容易に行うことができる。
【0049】
さらに、他方の係合腕片84は係合片84aが開口縁部と係脱する方向へはほとんど撓まない剛性を有すると共に、係合片84aと協同して開口部11の開口縁部を前後から挟むために開口縁部の後側に当接する挟持片84bを有するので、係合腕片84の開口縁部への係合が安定し、かつ、ブラケット8の前端部が開口部11の開口縁部から外れ難くなる。
【0050】
さらにまた、固定部材9の後端部はブラケット8に形成された平面状の受け面81cに対してほぼ平行に対向する作用面91bを有し、ブラケット8の受け面81cと固定部材9の作用面91bとの間に弾発部材であるリップバネ101又は102が介挿されるので、ブラケット8の前端部の開口部11への係脱が容易であると共に、ブラケット8の前端部を開口部11へ一旦係合すると、その係合状態が安定する。
【0051】
なお、チェックバルブ部4の前端には噴射ノズル5、5を前方に対して覆うと共に、使用しないときに、開口部11を前方から覆うためのノズルカバー7が支持される。そこで、該ノズルカバー7の上下にそれぞれ左右に離間したリブを形成しておき、ピストン3がシリンダ2内に引き込まれて、ノズルカバー7が開口部11を覆うときに、ノズルカバー7に設けた上記リブがブラケット8の位置決め片85、85、86、86に当接するようにしておくことによって、ノズルカバー7を開口部11に対して位置決めすることができる。
【0052】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図面は本発明車輌用灯具の洗浄装置の実施の形態を示すものであり、本図はブラケット及び固定部材を除いた部分の縦断面図である。
【図2】ブラケットの前端部を開口部に係合する手順を(a)から(d)へ順を追って示す概略図である。
【図3】ブラケットの前端部を開口部に係合させた状態を後方から見て示す斜視図である。
【図4】ブラケットの前端部を開口部に係合させた状態を前方から見て示す斜視図である。
【図5】ブラケットの前端部と固定部材とによって開口部の開口縁部を前後から挟持した状態を後方から見て示す斜視図である。
【図6】固定部材が所定の取付位置に到達する直前の状態を前方から見て示す斜視図である。
【図7】固定部材が所定の取付位置に到達した状態を前方から見て示す斜視図である。
【図8】車輌用灯具の洗浄装置の開口部への取付が完了した状態を後方から見て示す斜視図である。
【図9】クリップバネの変形例を示す斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に洗浄液を噴射する噴射ノズルと該噴射ノズルを前方に対して覆うノズルカバーを有するピストンと、上記ピストンを車体に設けられた開口部に対して出し入れするように駆動するシリンダとを備えた車輌用灯具の洗浄装置であって、
上記シリンダに取り付けられ該シリンダを上記開口部に位置決めするブラケットと、
上記ブラケットに外嵌状に位置される固定部材と、
上記ブラケットと上記固定部材との間に位置される弾発部材とを備え、
上記ブラケットは上記開口部の開口縁部の前側に係合する複数の係合片を有し、
上記固定部材は上記開口部の開口縁部の後側に当接する複数の当接部を有し、
上記ブラケットの複数の係合片と上記固定部材の複数の当接部とによってそれぞれ上記開口部の開口縁部を挟持し、且つ、上記固定部材を上記開口部側に付勢するように上記弾発部材が上記ブラケットと上記固定部材との間に介挿される
ことを特徴とする車輌用灯具の洗浄装置。
【請求項2】
上記ブラケットには前方を向く平面状の受け面が形成され、
上記固定部材の後端部は上記ブラケットの受け面に対してほぼ平行に対向する作用面を有し、
上記ブラケットの受け面と上記固定部材の作用面との間に上記弾発部材としてバネが介挿される
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用灯具の洗浄装置。
【請求項1】
先端部に洗浄液を噴射する噴射ノズルと該噴射ノズルを前方に対して覆うノズルカバーを有するピストンと、上記ピストンを車体に設けられた開口部に対して出し入れするように駆動するシリンダとを備えた車輌用灯具の洗浄装置であって、
上記シリンダに取り付けられ該シリンダを上記開口部に位置決めするブラケットと、
上記ブラケットに外嵌状に位置される固定部材と、
上記ブラケットと上記固定部材との間に位置される弾発部材とを備え、
上記ブラケットは上記開口部の開口縁部の前側に係合する複数の係合片を有し、
上記固定部材は上記開口部の開口縁部の後側に当接する複数の当接部を有し、
上記ブラケットの複数の係合片と上記固定部材の複数の当接部とによってそれぞれ上記開口部の開口縁部を挟持し、且つ、上記固定部材を上記開口部側に付勢するように上記弾発部材が上記ブラケットと上記固定部材との間に介挿される
ことを特徴とする車輌用灯具の洗浄装置。
【請求項2】
上記ブラケットには前方を向く平面状の受け面が形成され、
上記固定部材の後端部は上記ブラケットの受け面に対してほぼ平行に対向する作用面を有し、
上記ブラケットの受け面と上記固定部材の作用面との間に上記弾発部材としてバネが介挿される
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用灯具の洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−184670(P2009−184670A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96179(P2009−96179)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【分割の表示】特願2005−164063(P2005−164063)の分割
【原出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【分割の表示】特願2005−164063(P2005−164063)の分割
【原出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
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