説明

車輪位置検出装置

【課題】簡易な構成で、車輪の数だけアンテナを設置する必要なく、車輪の取付位置を検出することが可能な車輪位置検出装置を提供する。
【解決手段】第1車体側通信機を、車輪側通信機からの応答信号のうち、1つの応答信号の受信強度が予め定められた第1受信強度閾値を上回る第1受信強度帯域に含まれ、かつ残余の応答信号のうち2つの受信強度が第1受信強度閾値を下回る第2受信強度帯域に含まれる位置に取り付け、第1受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した車輪側通信機に第1車輪取付位置IDを付与し、第2受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した2つの車輪側通信機のそれぞれに第2車輪取付位置IDを付与し、これら2つの車輪側通信機のいずれか一方の応答信号の受信強度が第1受信強度帯域に含まれ、かつ第1車輪取付位置IDを付与した車輪側通信機の応答信号の受信強度が第2受信強度帯域に含まれる位置に第2車体側通信機を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪が車両のどの位置に取り付けられているかを検出する車輪位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ空気圧検出装置の1つとして、ダイレクト式のものがある。このタイプのタイヤ空気圧検出装置では、タイヤが取り付けられた車輪側に、圧力センサ等のセンサが備えられた送信機が直接取り付けられている。また、車体側には、アンテナおよび受信機が備えられており、センサからの検出信号が送信機から送信されると、アンテナを介して受信機にその検出信号が受信され、タイヤ空気圧の検出が行われるようになっている。
【0003】
このようなダイレクト式のタイヤ空気圧検出装置では、送信されてきたデータが自車両のものであるかどうか、および送信機がどの車輪に取り付けられたものかを判別できるように、送信機が送信するデータ中に、自車両か他車両かを判別するためと送信機が取り付けられた車輪を判別するためのID情報を付加している。
【0004】
上述の構成では、ユーザがタイヤローテーションなどのように車輪の位置を変えた場合には、ユーザがローテーションさせた車輪のID情報を読み取り、それまでに登録してあったID情報を再度登録し直さなければ、タイヤ空気圧検出装置側で車輪の位置変更に対応できない。
【0005】
このため、ID情報の再登録を行う必要があるが、ユーザ自身では再登録を行うことができないため、ディーラ等で専用ツールを用いてID情報の再登録を行わねばならないが、対象となる施設に専用ツールを用意しておく必要があり、コスト面で不利となる。
【0006】
そこで、タイヤ空気圧検出装置の車両側の制御装置(ECU)において、各車輪からの電波の受信状態に基づいて、車輪の位置を特定してID情報の再登録を行っている。
【0007】
例えば、車輪の数よりも少ないトリガ機を、車輪に取り付けられた各送信機までの距離が異なったものとなるように設置し、各送信機でのトリガ信号の受信強度に基づいて、各送信機が車輪のいずれに取り付けられたものかを特定する車輪位置検出装置,タイヤ空気圧検出装置等が考案されている(特許文献1,2参照)。
【0008】
また、タイヤに備えられた空気圧検出部の電波を受信する受信部が、空気圧検出部と受信部との距離が全て異なる位置に取り付けられ、信号強度の大小関係に基づいてタイヤ取り付け位置を特定するタイヤ位置特定方法が考案されている(特許文献3参照)。
【0009】
また、アレーアンテナ部から放射される電波のビーム方向を切り替えることにより、タイヤ空気圧センサの位置検知を行うことができる車載アンテナ装置が考案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−015491号公報
【特許文献2】特開2008−247388号公報
【特許文献3】特開2008−049875号公報
【特許文献4】特開2009−105614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の従来技術の構成では、車輪の数だけアンテナを設置する必要はないが、以下のような問題がある。
・特許文献1,2の構成ではトリガ機を別途必要とする。
・特許文献3の構成では、車両によっては、受信部を、空気圧検出部と受信部との距離が全て異なる位置に取り付けることができないことがある。
・特許文献4の構成では、アレーアンテナを用いることにより、構成が複雑となり、製造コストが上昇する。
【0012】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、簡易な構成で、車輪の数だけアンテナを設置する必要なく、車輪の取付位置を検出することが可能な車輪位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0013】
上記課題を解決するための車輪位置検出装置は、
複数個の車輪のそれぞれに取り付けられ、トリガ信号を受信する車輪側受信部と、車輪側受信部で受信したトリガ信号に対して、それぞれの車輪を識別するための車輪IDを含む応答信号を生成して送信する車輪側送信部と、を有する車輪側通信機と、車体に取り付けられ、トリガ信号を送信する第1送信部と、応答信号を受信する第1受信部と、を含む第1車体側通信機を有する制御ユニットと、を備え、
第1車体側通信機は、第1受信部が受信する応答信号のうち、1つの応答信号の受信強度が予め定められた第1受信強度閾値を上回る第1受信強度帯域に含まれ、かつ残余の応答信号のうち2つの受信強度が第1受信強度閾値を下回る第2受信強度帯域に含まれる位置に取り付けられ、
制御ユニットは、受信強度が第1受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した車輪側通信機に、車輪の取付位置を識別するための第1車輪取付位置IDを付与する車輪取付位置ID付与部をさらに有することを特徴とする。
【0014】
上記構成によって、1つの車体側通信機によって、3つの車輪の存在を検出することができるとともに、そのうちの1つの車輪の取付位置を特定することができる。
【0015】
また、本発明の車輪位置検出装置における車輪取付位置ID付与部は、受信強度が第2受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した2つの車輪側通信機のそれぞれに、車輪の取付位置を識別するための第2車輪取付位置IDを付与する。
【0016】
上記構成によって、1つの車体側通信機によって、1つの車輪の位置を特定することができるとともに、2つの車輪の取付位置を仮決めすることができる。
【0017】
また、本発明の車輪位置検出装置における制御ユニットは、トリガ信号を送信する第2送信部と、応答信号を受信する第2受信部と、を有する第2車体側通信機を有し、
第2車体側通信機は、第2車輪取付位置IDを付与した2つの車輪側通信機のいずれか一方からの応答信号の受信強度が第1受信強度帯域に含まれ、かつ第1車輪取付位置IDを付与した車輪側通信機からの応答信号の受信強度が第2受信強度帯域に含まれる位置に取り付けられ、
車輪取付位置ID付与部は、受信強度が第1受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した車輪側通信機に、車輪の取付位置を識別するための第3車輪取付位置IDを付与する。
【0018】
上記構成によって、第2車輪取付位置IDを付与した2つの車輪側通信機の一方に新たな第3車輪取付位置IDを付与でき、他方は第2車輪取付位置IDのままであるので、これら2つの車輪取付位置を識別することが可能となる。つまり、2つの車体側通信機によって、3つの車輪の取付位置を特定することができる。
【0019】
また、本発明の車輪位置検出装置における車輪取付位置ID付与部は、受信強度が第2受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した車輪側通信機のうち、第1車輪取付位置IDを付与していない車輪側通信機に、車輪の取付位置を識別するための第4車輪取付位置IDを付与する。
【0020】
上記構成によって、車輪の数よりも少ない2つの車体側通信機(すなわちアンテナ)によって、4つの車輪の取付位置を特定することができる。
【0021】
また、本発明の車輪位置検出装置における第1送信部は、車輪取付位置ID付与部により車輪側通信機に付与した車輪取付位置IDを含む登録要求信号を、該車輪側通信機に送信する。
【0022】
上記構成によって、第1および第2車輪取付位置IDを付与された車輪側通信機は、自身の車輪取付位置IDを把握することができる。
【0023】
また、本発明の車輪位置検出装置における登録要求信号は、車輪側通信機が送信し第1受信部が受信した応答信号の受信強度に関する情報を含む。
【0024】
上記構成によって、車輪側通信機側でも、第1車体側通信機で受信した車輪側通信機からの応答信号の受信強度に関する情報を把握・記憶することができる。
【0025】
また、本発明の車輪位置検出装置における第2送信部は、車輪取付位置ID付与部により車輪側通信機に付与した車輪取付位置IDを含む登録要求信号を、該車輪側通信機に送信する。
【0026】
上記構成によって、第3および第4車輪取付位置IDを付与された車輪側通信機は、自身の車輪取付位置IDを把握することができる。
【0027】
また、本発明の車輪位置検出装置における登録要求信号は、車輪側通信機が送信し第2受信部が受信した応答信号の受信強度に関する情報を含む。
【0028】
上記構成によって、車輪側通信機側でも、第2車体側通信機で受信した車輪側通信機からの応答信号の受信強度に関する情報を把握・記憶することができる。
【0029】
また、本発明の車輪位置検出装置における制御ユニットは、車輪側通信機から受信した車輪IDと、車輪取付位置ID付与部により該車輪側通信機に付与した車輪取付位置IDとを関連付けて記憶する車輪取付位置記憶部を有する。
【0030】
上記構成によって、制御ユニットでは、各車輪の取付位置を常時把握することが可能となる。
【0031】
また、本発明の車輪位置検出装置は、各車輪に取り付けられて該車輪に含まれるタイヤの空気圧を検出する空気圧センサを備え、車輪側送信部が検出したタイヤの空気圧を各車体側通信機に送信し、制御ユニットにおいてタイヤの空気圧が適正であるか否かを判定するタイヤ空気圧検出装置に用いられる。
【0032】
タイヤ空気圧検出装置では、どの車輪のタイヤの空気圧に異常があるかを把握するために各車輪の取り付け位置を特定しておく必要がある。上記構成によって、タイヤ空気圧検出装置においても、車輪の数だけアンテナを設置する必要なく、車輪の位置を検出・特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】車輪位置検出装置・タイヤ空気圧検出装置の構成を示すブロック図。
【図2】各車体側通信機の電波の到達範囲を示す図。
【図3】各車体側通信機の電波の受信強度領域を示す図。
【図4】車輪位置検出処理を説明するフロー図。
【図5】図4に続く、車輪位置検出処理を説明するフロー図。
【図6】車輪位置検出処理における通信シーケンス図。
【図7】車輪位置検出処理での車両取付位置記憶領域の記憶状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の車輪位置検出装置を、タイヤ空気圧監視装置に適用した例を用いて説明する。図1に、タイヤ空気圧監視装置10を備えた車両12の全体構成(車両12の上方から見たもの)を示す。車両12の4個の車輪20a(運転席側前輪),20b(助手席側前輪),20c(運転席側後輪),20d(助手席側後輪)には、それぞれ監視すべきタイヤの空気圧を検出する空気圧センサ30a〜30dと、空気圧センサにより検出されたタイヤ空気圧情報を無線で車体側に送信する車輪側通信機(図では「通信機」と略記)40a〜40dと、アンテナ50a〜50dとが設けられている。
【0035】
空気圧センサ30a〜30dは、車輪のホイール(図示せず)上などに設置され、タイヤ空気室の圧力を検出するように構成され、例えば、歪みゲージ式,ダイアフラム式,または半導体式の圧力センサを使用することができる。空気圧センサ30a〜30dによる空気圧の検出は常時行ってもよいし、指示があったときにのみ行ってもよい。検出されたタイヤ空気圧は車輪側通信機40a〜40dに送られる。車輪側通信機40a〜40dは、それぞれ対応する車輪側送信部41a〜41dおよび車輪側アンテナ50a〜50dを介して、タイヤ空気圧情報を第1車体側通信機71あるいは第2車体側通信機72のアンテナ71c,72cへ無線送信する。なお、空気圧センサ30a〜30d,車輪側通信機40a〜40dは電池(図示せず)を電源として駆動される。
【0036】
また、各車輪20a〜20dには、それぞれメモリ60a〜60dが備えられており、車輪を識別するために割り当てられた固有のIDである車輪IDが記憶されている。後述のように、各車輪20a〜20dには、それぞれA〜Dの車輪IDが割り当てられている。また、メモリ60a〜60dには、空気圧センサ30a〜30dや車輪側通信機40a〜40dの動作に必要なデータを記憶することができる。
【0037】
車輪側通信機40a〜40dは、車体側通信機(71,72)との通信の他に、空気圧センサ30a〜30d,メモリ60a〜60d等を含む車輪側ユニットの全体の動作制御も行っている。
【0038】
制御ユニット70は、車体側に取り付けられ、第1車体側通信機71,第2車体側通信機72,メモリ74,およびこれらが接続された制御部73を含んで構成される。また、制御ユニット70には、操作部75,LCDなどで構成されるディスプレイ78が接続されている。
【0039】
第1車体側通信機71および第2車体側通信機72は、それぞれ車体に設置されたアンテナ71c,72cおよび第1受信部71b,第2受信部72bを介して車輪側通信機40a〜40dからタイヤ空気圧情報を受信し、受信したタイヤ空気圧情報を制御部73に送る。なお、第1車体側通信機71,第2車体側通信機72は、車体が備えるバッテリー(図示せず)を電源として駆動される。
【0040】
制御部73は、CPU,ROM,RAM(いずれも図示せず)等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成される。制御部73では、送信されてきたタイヤ空気圧情報と車輪の装着位置とを結びつけて定期的にタイヤ空気圧を監視しており、タイヤ空気圧情報に基づいて車輪20a〜20dの状態を判断する。そして、タイヤ空気圧が所定の下限値を下回っていた場合には、ディスプレイ78にタイヤ空気圧が低下している旨の警告表示をする。タイヤ空気圧が所定の上限値を上回っていた場合にも警告表示をしてもよい。これらの処理は、CPUが自身のROMに格納される制御プログラムを実行する形で実行される。なお、制御部73が本発明の車輪取付位置ID付与部に相当する。
【0041】
メモリ74は、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体により構成され、タイヤ空気圧監視装置の動作に必要な情報を記憶する。なお、メモリ74が本発明の車輪取付位置記憶部に相当する。
【0042】
操作部75は、ユーザの各種操作入力・設定を行うためのもので、メカニカルスイッチ群として構成してもよいし、ディスプレイ78の表面に備えられたタッチパネルとして構成してもよい。
【0043】
第1車体側通信機71のアンテナ71cは、車輪側通信機40b,40cのアンテナ50bおよび50cから等距離の位置にあり、かつ車輪側通信機40aのアンテナ50aとの距離が、アンテナ50bおよび50cとの距離よりも小さくなる位置に取り付けられる。また、第2車体側通信機72のアンテナ72cは、例えば、アンテナ50aおよび車輪側通信機40dのアンテナ50dから等距離の位置にあり、かつアンテナ50cとの距離が、アンテナ50aおよび50dとの距離よりも小さくなる位置に取り付けられる。
【0044】
すなわち、各車体側通信機のアンテナ(71c,72c)は、以下の全ての条件を満たす位置に取り付けられる。
・各車体側通信機は、4個の車両側通信機のうち3個との通信が可能で、その3個のうちの2個が双方の車体側通信機で通信可能である。
・上述の、双方の車体側通信機で通信可能な2個の車輪側通信機のうち、一方のアンテナは第1車体側通信機71と通信可能な3個の車輪側通信機のうちで、アンテナ71cとの距離が最も短い。
・上述の、双方の車体側通信機で通信可能な2個の車輪側通信機のうち、他方のアンテナは第2車体側通信機72と通信可能な3個の車輪側通信機のうちで、アンテナ72cとの距離が最も短い。
【0045】
図2に、上述のような位置にアンテナ71c,72cを取り付けたときの、送信電波の到達範囲の一例を示す。アンテナ71cからの送信電波の到達範囲S1は、車輪20a,20b,20cの各車両側通信機のアンテナ(50a,50b,50c)を含むが車輪20dの車両側通信機40dのアンテナ50dを含まないように、アンテナ71cの取付位置および第1送信部71aの送信出力が調整されている。また、アンテナ72cからの送信電波の到達範囲S2は、車輪20a,20c,20dの各車両側通信機のアンテナ(50a,50c,50d)を含むが車輪20bの車両側通信機40bのアンテナ50bを含まないように、アンテナ72cの取付位置および第2送信部72aの送信出力が調整されている。
【0046】
図3に、上述のような位置にアンテナ71c,72cを取り付けたときの、第1車体側通信機71および第2車体側通信機72のアンテナ71c,72cで受信する車輪側通信機からの電波の受信強度の領域の一例を示す。第1車体側通信機71における第1受信強度帯域R11は、アンテナ71cを中心とした略円形状で示され、その外縁部が第1受信強度閾値TH11に相当する。第1受信強度帯域R11の外側の領域が、電波強度が第1受信強度閾値TH11を下回る第2受信強度帯域R12に相当する。そして、第2受信強度帯域R12内で車輪20dのアンテナ50dよりも内側(アンテナ71c寄り)に第2受信強度閾値TH12が設定される。
【0047】
車輪側送信部41a〜41dの送信出力は全て同じであるため、第1車体側通信機71のアンテナ71cに最も近い車輪20aからの電波の受信強度が最も大きく、車輪20b,20cからの電波の受信強度はほぼ同じであり、車輪20aからの応答信号の受信強度よりも小さい。そこで、車輪20aからの応答信号の受信強度よりも小さく、かつ車輪20b,20cからの応答信号の受信強度よりも大きい値を第1受信強度閾値TH11とする。
【0048】
また、第2車体側通信機72における第1受信強度帯域R21は、アンテナ72cを中心とした略円形状で示され、その外縁部が第1受信強度閾値TH21に相当する。第1受信強度帯域R21の外側が、電波強度が第1受信強度閾値TH21を下回る第2受信強度帯域R22に相当する。そして、第2受信強度帯域R22内で車輪20bのアンテナ50bよりも内側(アンテナ72c寄り)に第2受信強度閾値TH22が設定される。
【0049】
つまり、第1受信強度帯域(R11,R21)内に設置された車輪側通信機のアンテナからの電波の受信強度は、第1受信強度閾値(TH11,TH21)を上回り、第2受信強度帯域(R12,R22)内に設置された車輪側通信機のアンテナからの電波の受信強度は、第1受信強度閾値(TH11,TH21)を下回る。
【0050】
なお、第1受信強度閾値TH11と第1受信強度閾値TH21、第1受信強度閾値TH12と第2受信強度閾値TH22は、それぞれ同じ値でもよい。これらの閾値は、ROM(図示せず)あるいはメモリ74に記憶される。また、車両の構造や電波の伝播状態に応じて、アンテナ71c,72cの取付位置を、図2の送信範囲および図3の受信強度領域の条件を満たす範囲内で、上記以外の位置に取り付けてもよい。
【0051】
図2および図3の構成において、アンテナ72cを、アンテナ50aおよび50dから等距離の位置にあり、かつアンテナ50bとの距離がアンテナ50aおよび50dとの距離よりも小さくなる位置に取り付けてもよい。
【0052】
図4〜図7を用いて、制御ユニット70における車輪位置検出処理について説明する。なお、本処理は、上述の制御部73に含まれる制御プログラムに含まれ、制御プログラムに含まれる他の処理とともに予め定められたタイミングで繰り返し実行される。図4,図5は、車輪位置検出処理を説明するフロー図を示したものであり、図6は制御ユニット(すなわち、第1車体側通信機71あるいは第2車体側通信機72)と車輪側通信機40a〜40dとの通信シーケンスを示したものであり、図7はメモリ74の車両取付位置記憶領域の記憶状態を示したものである。
【0053】
まず、制御部73は、操作部75の操作状態(スイッチ情報)を取得する(S11)。そして、車両取付位置を検出し車両取付位置IDを付与するためのスイッチ操作(車両取付位置ID付与操作)が行われたか否かを判定する。
【0054】
車両取付位置ID付与操作があったと判定したとき(S12:Yes)、メモリ74の車輪取付位置記憶領域を初期化する(S13)。図7のように、車両取付位置記憶領域は、車両取付位置IDと、各車輪(20a〜20d)から送信されてくる車輪IDと、それぞれの車体側通信機の受信部(第1受信部71b,第2受信部72b)で受信する各車輪からの電波の受信強度とを関連付けて記憶している。また、車両取付位置IDは、例えば、1:運転席側前部,2:助手席側前部,3:運転席側後部,4:助手席側後部のように割り当てられている。この領域が初期化された場合、例えば、図7(a)のようにゼロクリアされる。
【0055】
図4に戻り、車輪取付位置記憶領域の初期化後、第1車体側通信機71(すなわち第1送信部71a)からトリガ信号を送信する(S14,図6のSeq1)。第1車体側通信機71からのトリガ信号の到達範囲は、図2のS1のようになっているので、トリガ信号を受信できるのは車輪20a(運転席側前輪),20b(助手席側前輪),20c(運転席側後輪)のみである。トリガ信号を受信した車輪(20a,20b,20c)は、各自の車輪ID(A,B,C)を含む応答信号を第1車体側通信機71に送信し(図6のSeq2およびSeq3)、第1車体側通信機71はこれを第1受信部71bを介して受信する(S15)。
【0056】
次に、制御部73は、受信した応答信号の電波の受信強度に関する情報(受信強度情報)を第1車体側通信機71(すなわち第1受信部71b)から取得する(S16)。
【0057】
車輪からの応答信号の受信強度が第1受信強度閾値TH11を上回る(すなわち第1受信強度帯域R11に含まれる)ものがあるとき(S17:Yes)、この車輪(すなわち20a)が第1車輪取付位置(運転席側前部)に取り付けられていると判定し、この車輪の車輪ID(A)と第1車体側通信機71での受信強度(図7では、「受信強度1」に相当)とを、メモリ74の車輪取付位置記憶領域に、第1車輪取付位置(1)と関連付けて記憶するとともに(図7(b))、車輪20aに対して、車輪取付位置ID(1)と第1車体側通信機71での受信強度に関する情報とを含む登録要求信号を送信する(S18,図6のSeq4)。車輪20aでは、登録要求信号を受信すると、メモリ60aに車輪取付位置IDと第1車体側通信機71での受信強度とを記憶するとともに、登録が完了したことを示す登録応答信号を送信する(図6のSeq5)。
【0058】
メモリ74の車輪取付位置記憶領域が書き換えられたとき、あるいは車輪からの登録応答信号を受信したときに、車輪取付位置IDの付与が行われた旨のメッセージをディスプレイ78に表示してもよい(以降の該当ステップにおいても同様)。
【0059】
なお、図2の構成では、車輪からの応答信号の受信強度が第1受信強度閾値TH11を上回るものは、車輪20aのみの1個であるが、確実を期すために、ステップS17において、受信強度が第1受信強度閾値TH11を上回るものが1個であるか否かを判定するようにしてもよい。1個もないとき、あるいは2個以上あるにはエラーと判定し、その旨のメッセージをディスプレイ78に表示してもよい。
【0060】
また、車輪側通信機(71,72)から各車輪(20a〜20d)宛のデータには、どの車輪に送信するものかを示す宛先情報(例えば、車輪ID)が含まれているので、宛先以外の他の車輪では、データを受信しても記憶したり、データに基づく処理を行うことはない。
【0061】
次に、制御部73は、車輪からの応答信号の受信強度が第2受信強度閾値TH12を上回る(すなわち第2受信強度帯域R12に含まれる)ものがあるとき(S19:Yes)、これらの車輪(すなわち20b,20c)が第2(助手席側前部)あるいは第3(運転席側後部)車輪取付位置のいずれかに取り付けられていると判定できる。無論、この時点ではいずれの車輪がどの車輪取付位置に取り付けられていることは特定できないが、図2の車輪側通信機のアンテナ(71c,72c)の配置から、後述のように、第3車輪取付位置に取り付けられた車輪は、以降のステップで特定可能であるので、これらの車輪の車輪ID(B,C)と第1車体側通信機71での受信強度とを、車両取付位置記憶領域に、第2車輪取付位置(2)と関連付けて記憶するとともに(図7(c))、車輪20b,20cに対して、車輪取付位置ID(2)と第1車体側通信機71での受信強度に関する情報とを含む登録要求信号を送信する(S20,図6のSeq6)。車輪20b,20cは、登録要求信号を受信すると、メモリに車輪取付位置IDと第1車体側通信機71での受信強度とを記憶するとともに、登録が完了したことを示す登録応答信号を送信する(図6のSeq7)。
【0062】
図2の構成では、車輪からの応答信号の受信強度が第1受信強度閾値TH11を下回り第2受信強度閾値TH12を上回る(すなわち第2受信強度帯域R12に含まれる)ものは、車輪20b,20cのみの2個であるため、ステップS19を実行せずに、応答信号を受信したもののうち、第1受信強度閾値TH11を上回らなかったものに第2車輪取付位置ID(2)を割り当ててもよい。ただし、本来トリガ信号を受信しない車輪20dからも応答信号が返ってくることを想定して、第2受信強度閾値TH12を設定しておいた方が、車輪位置の検出精度が向上する。
【0063】
また、ステップS19において、第2受信強度帯域R12に含まれるものが2個あるか否かを判定し、2個あるときのみ車輪取付位置IDを付与し、2個以外のときにはエラーと判定し、その旨のメッセージをディスプレイ78に表示してもよい。
【0064】
続いて、図5に移り、第2車体側通信機72(すなわち第2送信部72a)からトリガ信号を送信する(S21,図6のSeq8)。第2車体側通信機72からのトリガ信号の到達範囲は、図2のS2のようになっているので、トリガ信号を受信できるのは、先のステップで第1車輪取付位置ID(1)を割り当てた車輪20a(運転席側前輪),第2車輪取付位置ID(2)を割り当てた車輪20c(運転席側後輪),および車輪20d(助手席側後輪)のみである。トリガ信号を受信した車輪(20a,20c,20d)は、各自の車輪ID(A,C,D)を含む応答信号を第2車体側通信機72に送信し(図6のSeq9およびSeq10)、第2車体側通信機72はこれを第2受信部72bを介して受信する(S22)。
【0065】
次に、制御部73は、受信した応答信号の電波の受信強度に関する情報(受信強度情報)を第2車体側通信機72から取得する(S23)。図2からも分かるように、車輪側送信部の送信出力は全て同じであるため、第2車体側通信機72のアンテナ72cに最も近い車輪20cからの応答信号の受信強度が最も大きく、車輪20a,20dからの応答信号の受信強度はほぼ同じであり、車輪20cからの応答信号の受信強度よりも小さい。
【0066】
車輪からの応答信号の受信強度が第1受信強度閾値TH21を上回る(すなわち第1受信強度帯域R21に含まれる)ものがあるとき(S24:Yes)、この車輪(すなわち20c)が第3車輪取付位置(運転席側後部)に取り付けられていると判定し、この車輪の車輪ID(C)と第2車体側通信機72での受信強度(図7では、「受信強度2」に相当)とを、車両取付位置記憶領域に、第3車輪取付位置(3)と関連付けて記憶するとともに(図7(d))、車輪20cに対して、車輪取付位置ID(3)と第2車体側通信機72での受信強度に関する情報とを含む登録要求信号を送信する(S25,図6のSeq11)。つまり、車輪20cに割り当てた車輪取付位置が、第2から第3に変更となる。車輪20cでは、登録要求信号を受信すると、メモリに車輪取付位置IDと第2車体側通信機72での受信強度とを記憶するとともに、記憶が完了したことを示す登録応答信号を送信する(図6のSeq12)。
【0067】
この時点で、2つの車輪(20b,20c)に同一の車輪取付位置IDを付与していた状態は解消され、車輪20bが第2車輪取付位置に取り付けられていることがほぼ確定する。
【0068】
図4のステップS17と同様に、ステップS24において、受信強度が第1受信強度閾値TH21を上回るものが1個であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0069】
次に、制御部73は、車輪からの応答信号の受信強度が第2受信強度閾値TH22を上回る(すなわち第2受信強度帯域R22に含まれる)ものがあるとき(S26:Yes)、これらの車輪(すなわち20a,20d)の一方すなわち車輪20aは、上述のステップS18で車輪取付位置を特定できているため、車輪取付位置IDを付与されていない(S27:Yes)もう一方の車輪20dが、第4車輪取付位置(助手席側後部)に取り付けられていることを特定できる。そして、車輪20dの車輪ID(D)と第2車体側通信機72での受信強度とを、車両取付位置記憶領域の第4車輪取付位置(4)に関連付けて記憶するとともに(図7(e))、車輪20dに対して、車輪取付位置ID(4)と第2車体側通信機72での受信強度に関する情報とを含む登録要求信号を送信する(S28,図6のSeq13)。車輪20dは、登録要求信号を受信すると、メモリに車輪取付位置IDと第2車体側通信機72での受信強度とを記憶するとともに、記憶が完了したことを示す登録応答信号を送信する(図6のSeq14)。
【0070】
ステップS26において、第2受信強度帯域R22に含まれるものが2個あるか否かを判定し、2個あるときのみステップS27に進み、2個以外のときにはエラーと判定し、その旨のメッセージをディスプレイ78に表示してもよい。
【0071】
そして、この時点で、車輪20bが第2車輪取付位置に取り付けられていることが確定し、4個の車輪の取付位置を検出,特定することができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 タイヤ空気圧監視装置
12 車両
20a〜20d 車輪
30a〜30d 空気圧センサ
40a〜40d 車輪側通信機
41a〜41d 車輪側送信部
42a〜42d 車輪側受信部
70 制御ユニット
71 第1車体側通信機
71a 第1送信部
71b 第1受信部
72 第2車体側通信機
71a 第2送信部
72b 第2受信部
73 制御部(車輪取付位置ID付与部)
74 メモリ(車輪取付位置記憶部)
75 操作部
R11,R21 第1受信強度帯域
R12,R22 第2受信強度帯域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の車輪のそれぞれに取り付けられ、トリガ信号を受信する車輪側受信部と、前記車輪側受信部で受信した前記トリガ信号に対して、それぞれの車輪を識別するための車輪IDを含む応答信号を生成して送信する車輪側送信部と、を有する車輪側通信機と、
車体に取り付けられ、前記トリガ信号を送信する第1送信部と、前記応答信号を受信する第1受信部と、を含む第1車体側通信機を有する制御ユニットと、
を備え、
前記第1車体側通信機は、前記第1受信部が受信する前記応答信号のうち、1つの応答信号の受信強度が予め定められた第1受信強度閾値を上回る第1受信強度帯域に含まれ、かつ残余の応答信号のうち2つの受信強度が前記第1受信強度閾値を下回る第2受信強度帯域に含まれる位置に取り付けられ、
前記制御ユニットは、
前記受信強度が前記第1受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した車輪側通信機に、車輪の取付位置を識別するための第1車輪取付位置IDを付与する車輪取付位置ID付与部をさらに有することを特徴とする車輪位置検出装置。
【請求項2】
前記車輪取付位置ID付与部は、前記受信強度が前記第2受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した前記2つの車輪側通信機のそれぞれに、車輪の取付位置を識別するための第2車輪取付位置IDを付与する請求項1に記載の車輪位置検出装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記トリガ信号を送信する第2送信部と、前記応答信号を受信する第2受信部と、を有する第2車体側通信機を有し、
前記第2車体側通信機は、前記第2車輪取付位置IDを付与した2つの車輪側通信機のいずれか一方からの前記応答信号の受信強度が前記第1受信強度帯域に含まれ、かつ前記第1車輪取付位置IDを付与した車輪側通信機からの前記応答信号の受信強度が前記第2受信強度帯域に含まれる位置に取り付けられ、
前記車輪取付位置ID付与部は、前記受信強度が前記第1受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した車輪側通信機に、車輪の取付位置を識別するための第3車輪取付位置IDを付与する請求項2に記載の車輪位置検出装置。
【請求項4】
前記車輪取付位置ID付与部は、前記受信強度が前記第2受信強度帯域に含まれる応答信号を送信した車輪側通信機のうち、前記第1車輪取付位置IDを付与していない車輪側通信機に、車輪の取付位置を識別するための第4車輪取付位置IDを付与する請求項3に記載の車輪位置検出装置。
【請求項5】
前記第1送信部は、前記車輪取付位置ID付与部により前記車輪側通信機に付与した車輪取付位置IDを含む登録要求信号を、該車輪側通信機に送信する請求項1または請求項2に記載の車輪位置検出装置。
【請求項6】
前記登録要求信号は、前記車輪側通信機が送信し前記第1受信部が受信した前記応答信号の受信強度に関する情報を含む請求項5に記載の車輪位置検出装置。
【請求項7】
前記第2送信部は、前記車輪取付位置ID付与部により前記車輪側通信機に付与した車輪取付位置IDを含む登録要求信号を、該車輪側通信機に送信する請求項3または請求項4に記載の車輪位置検出装置。
【請求項8】
前記登録要求信号は、前記車輪側通信機が送信し前記第2受信部が受信した前記応答信号の受信強度に関する情報を含む請求項7に記載の車輪位置検出装置。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記車輪側通信機から受信した前記車輪IDと、前記車輪取付位置ID付与部により該車輪側通信機に付与した車輪取付位置IDとを関連付けて記憶する車輪取付位置記憶部を有する請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の車輪位置検出装置。
【請求項10】
前記車輪位置検出装置は、
前記各車輪に取り付けられて該車輪に含まれるタイヤの空気圧を検出する空気圧センサを備え、前記車輪側送信部が検出した前記タイヤの空気圧を前記各車体側通信機に送信し、前記制御ユニットにおいて前記タイヤの空気圧が適正であるか否かを判定するタイヤ空気圧検出装置に用いられる請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車輪位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183872(P2011−183872A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49205(P2010−49205)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】