説明

車輪支持用転がり軸受ユニット

【課題】外径側軌道輪部材3bの軽量化と回転フランジ12の基端部の強度及び剛性の確保と、各取付孔15aの形状精度及び寸法精度の確保とを、高次元で並立させられる構造を実現する。
【解決手段】前記回転フランジ12の軸方向内側面の径方向内端部と、前記外径側軌道輪部材3bの外周面に形成した凹入部17の軸方向外端部とを、断面円弧状の凹曲面19bにより滑らかに連続させる。この凹曲面19bの外周縁の直径Dを、前記各取付孔15aの内接円の直径R以下とする。又、前記回転フランジ12の軸方向内側面の径方向内端部と、前記外径側軌道輪部材3bの外周面のうちの前記凹入部17の軸方向外端部との間部分で、前記各取付孔15a、15aを円周方向両側から挟む位置に、それぞれ補強リブ25を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為の車輪支持用転がり軸受ユニットであって、内径側軌道輪部材が回転せずに外径側軌道輪部材が回転する、所謂外輪回転型に関して、この外径側軌道輪部材の軽量化を意図した構造の改良に関する。具体的には、外径側軌道輪部材の軽量化と、この外径側軌道輪部材に車輪を支持する為の回転フランジの基端部の強度及び剛性の確保と、この回転フランジに形成する取付孔の形状精度及び寸法精度の確保とを、高次元で並立できる構造の実現を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットは、懸架装置への取付部の構造を内輪回転型のものに比べて簡単にできる為、一部の自動車で、従動輪(FF車の後輪、FR車及びMR車の前輪)支持用の転がり軸受ユニットとして使用されている。但し、内径側軌道輪部材に比べて直径が大きな外径側軌道輪部材を回転させる為、慣性モーメントが大きくなり、加速性能を中心とする走行性能や燃費性能を確保する面から、内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットに比べて不利になる。この様な不利を低減乃至解消する為には、前記外径側軌道輪部材を軽量化する事が効果的である。
【0003】
車輪支持用転がり軸受ユニットとして必要な性能を確保しつつ、前記外径側軌道輪部材を軽量化するには、次の(1)〜(3)の様な構成を採用する事が効果がある。
(1) 内径側軌道輪部材の外周面と前記外径側軌道輪部材の内周面との間に複列に配置した転動体のうち、軸方向外側(軸方向に関して外とは、車両への組み付け状態で幅方向外側となる側を言う)の列の転動体のピッチ円直径を、軸方向内側(軸方向に関して内とは、車両への組み付け状態で幅方向中央となる側を言う)の列の転動体のピッチ円直径よりも小さくする。
(2) 前記外径側軌道輪部材の軸方向中間部の外径を、同じく軸方向内端寄り部分の外径よりも小さくする。
(3) 前記外径側軌道輪部材に対して車輪を支持固定する為、この外径側軌道輪部材の外周面に設けた回転フランジの軸方向に関する厚さを、必要部分で厚く、それ以外の部分で薄くする。
【0004】
これら(1)〜(3)に示した構成のうち、(1)(2)に関しては、例えば特許文献1に記載されている。
前記(1)の様に、前記軸方向外側の列の転動体のピッチ円直径を小さくする事により、前記外径側軌道輪部材に車輪を結合固定する為、この外径側軌道輪部材の外周面に設けた回転フランジの直径を適正に保てる(過大になる事を防止できる)。又、前記軸方向内側の列の転動体のピッチ円直径を大きくする事により、前記車輪支持用転がり軸受ユニットのモーメント剛性を確保し、この車輪支持用転がり軸受ユニットを組み込んだ車両の走行安定性の確保と、この車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性の確保とを図れる。
又、前記(2)の様に、前記外径側軌道輪部材の軸方向中間部の外径を、軸方向内端寄り部分の外径よりも小さくする事で、この外径側軌道輪部材の径方向に関する厚さが過大になる事を防止できて、前記外径側軌道輪部材の軽量化を図れる。
更に、前記(3)の構成に関しては、例えば特許文献2に記載されている。比較的大きな外径を有し、しかも円板状である前記回転フランジの厚さを、必要部分でのみ厚くする事により、この回転フランジを含む、前記外径側軌道輪部材の軽量化を図れる。
【0005】
図6〜8は、上述した(1)〜(3)の様な構成を備えた、従前の車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示している。この車輪支持用転がり軸受ユニット1は、内径側軌道輪部材2と、外径側軌道輪部材3と、それぞれが転動体である複数個の玉4a、4bとを備える。
このうちの内径側軌道輪部材2は、主部5と、この主部5の軸方向外端部に外嵌した内輪素子6とを、かしめ部7により結合固定して成る。これら主部5及び内輪素子6は、何れも中炭素鋼(主部5の場合)、軸受鋼(内輪素子6の場合)等の、焼き入れ硬化可能な鉄系合金製で、それぞれの外周面に内輪軌道8a、8bを形成している。これら両内輪軌道8a、8bのうち、前記内輪素子6の外周面に形成した、軸方向に関して外側列の内輪軌道8aの外径よりも、前記主部5の中間部軸方向内側寄り部分の外周面に形成した、内側列の内輪軌道8bの外径が大きい。更に、前記主部5の内周面に、この内周面から径方向内方に突出する状態で静止フランジ9を設け、この静止フランジ9の円周方向複数箇所(図示の例では4箇所)に、ねじ孔10、10を設けている。使用状態でこの様な内径側軌道輪部材2は、ナックル等の懸架装置の構成部材側に形成した通孔を挿通したボルトを前記各ねじ孔10、10に螺合し更に締め付ける事により、前記懸架装置に支持固定されて回転しない。
【0006】
又、前記外径側軌道輪部材3は、中炭素鋼等の、焼き入れ硬化可能な鉄系合金製で、前記内径側軌道輪部材2の周囲に、この内径側軌道輪部材2と同心に配置されている。この様な外径側軌道輪部材3には、内周面の一部で前記両内輪軌道8a、8bに対向する部分に複列の外輪軌道11a、11bを、外周面の軸方向外寄り部分に回転フランジ12を、それぞれ有する。これら両外輪軌道11a、11bの内径は、前記両内輪軌道8a、8bの外径に合わせて、軸方向外側列の外輪軌道11aの内径が、同じく軸方向内側列の外輪軌道11bの内径よりも小さい。又、前記回転フランジ12は、車輪及び制動用回転体(ディスク或いはドラム)を支持する為の軸方向外側面を平坦面とする代わりに、軸方向内側面を凹凸形状とし、厚肉部13、13と薄肉部14、14とを、円周方向に関して交互に配置している。そして、このうちの厚肉部13、13に、前記回転フランジ12に車輪を結合固定する為の結合部材を装着する取付孔15、15を、この回転フランジ12を軸方向に貫通する状態で設けている。尚、これら各取付孔15、15は、前記結合部材としてボルトを使用する場合には、このボルトの雄ねじ部を螺合させる為のねじ孔とし、スタッドを使用する場合には、このスタッドの基端部を締り嵌めで嵌合(圧入によりセレーション係合)させる為の通孔とする。何れにしても、前記各取付孔15、15は互いに同径で、それぞれの中心は、前記外径側軌道輪部材3と同心の単一円周上に、円周方向に関して等間隔に存在する。
【0007】
上述の様な外径側軌道輪部材3は、その使用状態で、前記回転フランジ12に結合固定した車輪と共に回転する。又、前記各薄肉部14、14には、軽量化の為の透孔16、16を形成している。又、前記外径側軌道輪部材3の外径を、前記軸方向内側の外輪軌道11bの周囲部分よりも、この周囲部分と前記回転フランジ12との間部分で小さくしている。即ち、この間部分を、軸方向の両側部分よりも外径が小さくなった、凹入部(アンダカット部)17としている。この凹入部17を設ける事により、前記外径側軌道輪部材3の軸方向中間部の径方向に関する厚さが過大になる事を防止して、この外径側軌道輪部材3の軽量化を図っている。尚、前記凹入部17の軸方向両端部は、それぞれ隣接する面と、曲面により連続させている。先ず、この凹入部17の軸方向外端部は前記回転フランジ12の軸方向内側面と、断面形状が四分の一円弧状の凹曲面19により、滑らかに連続させている。又、前記凹入部17の軸方向内端部は、前記外径側軌道輪部材3の外周面のうちで、前記内側列の外輪軌道11bの周囲部分と、断面円弧状の凹曲面20により連続させている。尚、これら両凹曲面19、20は、前記外径側軌道輪部材3の中心軸を含む仮想平面に関する断面形状が凹んでいるが、この中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状が凸円弧である事は勿論である。
【0008】
又、前記各玉4a、4bは、前記両内輪軌道8a、8bと前記両外輪軌道11a、11bとの間に、両列毎に複数個ずつ、それぞれ保持器18a、18bに保持された状態で、転動自在に設けられている。前記各軌道8a、8b、11a、11bの径の相違に伴って、外側列の玉4a、4aのピッチ円直径PCDOは、内側列の玉4b、4bのピッチ円直径PCDIよりも小さい(PCDO<PCDI)。
更に、前記各玉4a、4bを設置した内部空間21の両端開口のうち、軸方向外端側を略有底円筒状のキャップ22により、軸方向内端側を、組み合わせシールリング等のシールリング23により、それぞれ塞いでいる。
【0009】
上述の様な車輪支持用転がり軸受ユニット1は、前述の(1)〜(3)の様な構成を総て備えている為、車輪支持用転がり軸受ユニット1として必要な性能を確保しつつ、前記外径側軌道輪部材3の軽量化を図り易い。但し、これら性能の確保と軽量化とを、より一層高いレベルで両立させる為には、前記回転フランジ12に加わるモーメントに対する、この回転フランジ12の内径側端部と前記外径側軌道輪部材3の本体部分との連続部の強度及び剛性を確保しつつ、前記回転フランジ12の薄肉化を図る必要がある。この為には、次の様な問題がある。以下、この点に就いて説明する。
【0010】
前記回転フランジ12の円周方向複数箇所に形成する、前記各取付孔15、15の径方向位置(これら各取付孔15、15のピッチ円直径)は、前記回転フランジ12に結合固定すべき車輪(ホイール)との関係で、或る程度規制される。又、前記各取付孔15、15の内径は、これら各取付孔15、15に組み付けるべき、前記各結合部材の外径との関係で規制される。又、これら各結合部材の外径は、前記回転フランジ12と前記車輪との結合強度を確保する面から規制される。即ち、前記各取付孔15、15のピッチ円直径及びそれぞれの内径は、前記車輪支持用転がり軸受ユニット1を装着すべき車両が決まればほぼ決定され、設計の自由度は極めて限られる。
【0011】
一方、前記回転フランジ12には、車両の旋回走行に伴って、車輪(タイヤ)の接地面を入力部とする大きなモーメントが加わり、このモーメントを、前記回転フランジ12の内径側端部と前記外径側軌道輪部材3の本体部分との連続部で支承する必要が生じる。従って、この連続部の曲げ強度及び曲げ剛性を十分に高くする必要がある。図6〜8に示した従前の構造の場合には、前記凹入部17の軸方向外端部と前記回転フランジ12の軸方向内側面とを連続させる凹曲面19の曲率半径を大きくする事により、前記連続部の強度及び剛性を確保する様にしている。即ち、この曲率半径が小さいと、前記モーメントにより前記連続部に大きな応力が加わり易くなる。この為、前記車輪支持用転がり軸受ユニット1の信頼性及び耐久性の確保を考慮した場合、前記回転フランジ12の薄肉化による、前記外径側軌道輪部材3の軽量化は限られてしまう。そこで、前記凹曲面19の曲率半径を大きくする事により、前記信頼性及び耐久性の確保と前記薄肉化との両立を図っている。
【0012】
ところが、前記凹曲面19の曲率半径を大きくすると、図7に示す様に、前記各取付孔15、15の一部(前記回転フランジ12の径方向に関して内端寄り部分)が、前記凹曲面19の一部に開口する状態となる。この結果、前記各取付孔15、15の内周面の軸方向長さが、この内周面の全周に亙って均一にならず、前記回転フランジ12の径方向に関して内端寄り部分で、他の部分よりも長くなってしまう。前記各取付孔15、15は、ドリル、リーマ、タップ、転造タップ等の切削工具若しくはねじ加工工具により形成するが、上述の様にこれら各取付孔15、15の内周面の軸方向長さが不均一であると、加工の途中で前記切削工具若しくはねじ加工工具に曲げ方向の力が加わり易い。この結果、得られる前記各取付孔15、15の寸法精度及び形状精度の確保が難しくなるだけでなく、前記切削工具の耐久性確保も難しくなる。切削工具の耐久性低下は、前記外径側軌道輪部材3を含む、前記車輪支持用転がり軸受ユニット1の製造コストの上昇に結び付く。更に、前記各結合部材が、基板部に鍔部を備えたスタッドの場合には、この鍔部との干渉を防止する為、前記凹面部19の一部を削り取る面倒もある。
【0013】
回転フランジの内径側端部と外径側軌道輪部材の本体部分との連続部の強度及び剛性を確保し、しかも各取付孔の軸方向寸法を、これら各取付孔の全周に亙り均一にできる構造として従来から、特許文献3〜5に記載された構造が知られている。図9〜10は、このうちの特許文献4に記載された、従来構造の1例を示している。この従来構造の場合、部分円すい筒状の補強部材24の大径側端部を回転フランジ12の外周縁部に、同じく小径側端部を外径側軌道輪部材3aの外周面でこの回転フランジ12よりも軸方向内方寄り部分に、それぞれ溶接により接合固定している。この様な図9〜10に示した車輪支持用転がり軸受ユニット1aの使用時に、旋回走行に伴って前記回転フランジ12にモーメントが加わると、前記補強部材24がこのモーメントを支承して、この回転フランジ12が前記外径側軌道輪部材3aの本体部分に対し曲がる事を抑える。この為、この外径側軌道輪部材3aを薄肉化し、しかも、凹入部17aの軸方向外端部と前記回転フランジ12の軸方向内側面とを連続させる凹曲面19aの曲率半径を小さくできる。そして、各取付孔15aの軸方向寸法を、これら各取付孔15aの全周に亙り均一にできて、これら各取付孔15aの精度確保と切削工具若しくはねじ加工工具の耐久性確保とを図れる。
【0014】
但し、上述の図9〜10に示した従来構造の場合、前記補強部材24を設ける為、この補強部材24の加工コスト、部品管理コスト、組み付けコストが嵩む。しかも、前記補強部材24を前記外径側軌道輪部材3aに溶接固定するのに伴って、前記回転フランジ12の平面度が悪化したり、内側列の外輪軌道11bの硬度が低下し、この外輪軌道11bの転がり疲れ寿命が低下する可能性がある。
【0015】
一方、特許文献6、7には、外径側軌道輪部材の外周面に形成したフランジの強度を確保する為、これら外径側軌道輪部材の外周面とフランジの側面との間に複数の補強リブを設けた、車輪支持用転がり軸受ユニットの構造が記載されている。前記両特許文献のうちの特許文献6に記載された発明は、内輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットを対象としており、特許文献7に記載された発明は、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットを対象としている。但し、何れの構造の場合も、複列に配置した転動体のピッチ円直径が同じであり、又、前記外径側軌道輪部材の径方向に関して、前記各補強リブの外径側端部が、フランジの外周縁と一致若しくはこの外周縁よりも径方向外方部分に存在する。更に、このフランジの厚さが、前記各補強リブを設けた部分を除いて均一である。この様な特許文献6、7に記載された発明の構造は、本発明の対象となる、前述の図6〜8に示した構造とは大きく異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−275023号公報
【特許文献2】特開2008−55984号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2007 023 661号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2007 060 627号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10 2008 023 588号明細書
【特許文献6】特開2004−36818号公報
【特許文献7】特開2006−105304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外径側軌道輪部材の軽量化と、この外径側軌道輪部材に車輪を支持する為の回転フランジの基端部の強度及び剛性の確保と、結合部材を組み付ける為の取付孔の形状精度及び寸法精度の確保とを、高次元で並立させられる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、内径側軌道輪部材と、外径側軌道輪部材と、複数個の転動体とを備える。
このうちの内径側軌道輪部材は、外周面に複列の内輪軌道を有し、使用状態で懸架装置に支持固定されて回転しない。又、これら両内輪軌道のうちの軸方向外側の内輪軌道の外径が、同じく軸方向内側の内輪軌道の外径よりも小さい。
又、前記外径側軌道輪部材は、前記内径側軌道輪部材の周囲に、この内径側軌道輪部材と同心に配置されている。又、内周面の一部で前記両内輪軌道に対向する部分に複列の外輪軌道を、外周面の軸方向外寄り部分に回転フランジを、それぞれ有する。又、これら両外輪軌道のうちの軸方向外側の外輪軌道の内径が、同じく軸方向内側の外輪軌道の内径よりも小さい。又、前記外径側軌道輪部材の外径が、この軸方向内側の外輪軌道の周囲部分よりも、この周囲部分と前記回転フランジとの間部分で小さくなっている。又、この回転フランジの円周方向複数箇所で径方向に関する位置が互いに同じ位置に、この回転フランジに前記車輪を結合固定する為の結合部材を装着する取付孔が、この回転フランジを軸方向に貫通する状態で設けられている。更に、前記回転フランジの軸方向内側面の径方向内端部と、前記外径側軌道輪部材の外周面のうちの前記間部分の軸方向外端部とが、断面円弧状の凹曲面により滑らかに連続している。そして、前記外径側軌道輪部材は、使用状態で前記回転フランジに結合固定した車輪と共に回転する。
又、前記各転動体は、前記両内輪軌道と前記両外輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ設けられている。そして、前記内径側軌道輪部材の周囲に前記外径側軌道輪部材を、回転自在に支持している。
【0019】
特に、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットに於いては、前記凹曲面の外周縁の直径を、前記各取付孔の内接円の直径以下としている。
そして、前記回転フランジの軸方向内側面の径方向内端部と、前記外径側軌道輪部材の外周面との間で前記各取付孔を円周方向両側から挟む位置に複数の補強リブを、それぞれ前記内側面から軸方向内方に、前記外周面から径方向外方に、それぞれ突出する状態で設けている。
【0020】
上述の様な本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットを実施する場合、より具体的には、請求項2に記載した発明の様に、前記外径側軌道輪部材を、鉄系合金に鍛造加工を施して成るものとする。又、前記回転フランジに厚肉部と薄肉部とを、円周方向に関して交互に配置し、前記各取付孔及び前記各補強リブを、このうちの厚肉部の軸方向内側面と前記外周面との間に設ける。
更に具体的には、請求項3に記載した発明の様に、前記各補強リブの軸方向外端部を、前記回転フランジの内側面と滑らかに連続させる。そして、これら各補強リブの径方向外端部とこの内側面との連続部を、前記各取付孔のピッチ円よりも径方向に関して内側に存在させる。
或いは、請求項4又は請求項5に記載した発明の様に、前記各補強リブの軸方向内端部を、前記外径側軌道輪部材の外周面と滑らかに連続させる。そして、前記各補強リブの軸方向内端部とこの外径側軌道輪部材の外周面との連続部を、前記軸方向外側の外輪軌道の肩部の軸方向内側(請求項4に記載した発明の場合)又は外側(請求項5に記載した発明の場合)に存在させる。
【発明の効果】
【0021】
上述の様に構成する本発明によれば、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外径側軌道輪部材の軽量化と、この外径側軌道輪部材に車輪を支持する為の回転フランジの基端部の強度及び剛性の確保と、結合部材を組み付ける為の取付孔の形状精度及び寸法精度の確保とを、高次元で並立させられる。この理由に就いて、以下に説明する。
【0022】
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外径側軌道輪部材の場合、各取付孔を円周方向両側から挟む位置に補強リブを設けている為、これら各補強リブにより、これら各取付孔を設けた回転フランジのモーメント剛性が向上する。この為、この回転フランジの軸方向に関する厚さを特に大きくせず、しかも、この回転フランジの軸方向内側面と前記外径側軌道輪部材の外周面との連続部に存在させる凹曲面の曲率半径を小さくしても、前記モーメント剛性を確保できる。そして、この凹曲面の外周縁の直径を前記各取付孔の内接円の直径以下として、これら各取付孔の内周面の軸方向長さを、この内周面の全周に亙って均一にできる。この結果、これら各取付孔を加工する切削工具に曲げ方向の力が加わりにくくなり、これら各取付孔の形状精度及び寸法精度を確保すると共に、前記切削工具の耐久性を確保できる。
【0023】
特に、請求項2に記載した発明によれば、前記回転フランジの軽量化を、より高次元で図れる。
又、請求項3に記載した発明によれば、前記各補強リブを不要に嵩張るものにせずに済み、これら各補強リブを含む、前記外径側軌道輪部材の軽量化を、より高次元で図れる。
【0024】
又、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外径側軌道輪部材は、軸方向中間部の外径が両側部分の外径よりも小さくなっている為、この外径側軌道輪部材を鍛造加工により造る場合には、軸方向内端部の直径を拡げる、拡径工程が必要になる。この拡径工程の際、前記外径側軌道輪部材の軸方向中間部乃至内端部の外周面をバックアップ型により抑え付ける場合と、抑え付けない場合とが考えられる。何れにしても、前記拡径工程では、中間素材の軸方向内端部に拡径パンチを押し込んで、この軸方向内端部の直径を拡げる。この様な拡径工程時に前記中間素材には、前記拡径パンチが押し込まれた、拡径すべき部分だけでなく、この拡径すべき部分と軸方向に隣接する、拡径すべきでない部分にも、径方向外方に向いた、余分な力が加わる。この様な余分な力に拘らず、この拡径すべきでない部分の径方向寸法が変化しない様にする為の考慮が必要である。
【0025】
請求項4に記載した発明の様に、前記各補強リブの軸方向内端部と前記外径側軌道輪部材の外周面との連続部の軸方向位置を、軸方向外側の外輪軌道の肩部の軸方向内側に存在させれば、前記バックアップ型を使用しなくても、前記拡径パンチの押し込みに伴って、前記拡径すべきでない部分の寸法が変化する事を抑えられる。
これに対して、請求項5に記載した発明の様に、前記各補強リブの軸方向内端部と前記外径側軌道輪部材の外周面との連続部の軸方向位置を、軸方向外側の外輪軌道の肩部の軸方向外側に存在させれば、前記バックアップ型を使用する場合に、このバックアップ型と前記外径側軌道輪部材との周方向に関する位相を合わせる手間をなくせる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す断面図。
【図2】同じく外径側軌道輪部材を取り出して示す半部断面図。
【図3】同じく図2のA部拡大図。
【図4】同じく外径側軌道輪部材を取り出して軸方向内方から見た状態で示す斜視図。
【図5】中間素材の軸方向内端部を拡径して、凹入部を備えた外径側軌道輪部材とする工程を説明する為の、一部を簡略化して示す半部断面図。
【図6】従前の構造の1例を、軸方向内方から見た状態で示す斜視図。
【図7】同じく断面図。
【図8】同じく外輪軌道部材を取り出して軸方向内方から見た状態で示す斜視図。
【図9】従来から知られている構造の1例を示す断面図。
【図10】同じく、軸方向内方から見た状態で示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜5は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例を含めて本発明の特徴は、外輪回転型の車輪支持用転がり軸受ユニット1bを構成する外径側軌道輪部材3bの軽量化と、この外径側軌道輪部材3bに車輪を支持する為の回転フランジ12の基端部の強度及び剛性の確保と、結合部材を組み付ける為の取付孔15a、15aの形状精度及び寸法精度の確保とを、高次元で並立させるべく、前記外径側軌道輪部材3bの外周面と前記回転フランジ12の軸方向内側面との連続部の形状を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図6〜8に示した従前の構造と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0028】
本例の車輪支持用転がり軸受ユニット1bの場合も、前記従前の構造の場合と同様に、前記外径側軌道輪部材3bの外周面と前記回転フランジ12の軸方向内側面との連続部に、断面形状が四分の一円弧状である、凹曲面19bを形成している。この凹曲面19bの母線の両端部と、前記外径側軌道輪部材3bの外周面の母線及び前記回転フランジ12の軸方向内側面の母線とは、それぞれ前記凹曲面19bの母線の接線方向に、滑らかに連続している。特に、本例の車輪支持用転がり軸受ユニット1bの場合には、前記凹曲面19bの断面形状の曲率半径を、前記従前の構造の断面形状の曲率半径よりも十分に小さくして、前記凹曲面19bの幅寸法(特に、前記外径側軌道輪部材3bの径方向に関する高さh)を小さくしている。そして、前記凹曲面19bの外周縁の直径Dを、前記各取付孔15a、15aの内接円の直径R以下(D≦R)としている。
【0029】
前記外径側軌道輪部材3bは、中炭素鋼等の鉄系合金に鍛造加工を施して成るもので、外周面の軸方向外端寄り部分に、円板状の前記回転フランジ12を形成している。この回転フランジ12は、前記従前の構造と同様に、軸方向外側面を平坦面とする代わりに、軸方向内側面を凹凸形状とし、厚肉部13、13と薄肉部14、14とを、円周方向に関して交互に配置している。円周方向に関する幅寸法に関して、前記各厚肉部13、13は、径方向内端部で最も広く、径方向外方に向かうに従って漸減する。即ち、これら各厚肉部13、13を前記外径側軌道輪部材3bの軸方向から見た形状は、頂部が丸くなった、略二等辺三角形状である。前記各取付孔15a、15aは、この様な厚肉部13、13の円周方向中間部で径方向外端寄り部分(頂部近傍部分)に、前記回転フランジ12を軸方向に貫通する状態で設けている。
【0030】
一方、前記回転フランジ12の軸方向内側面のうち、前記各厚肉部13、13の基端部(この回転フランジ12の径方向内端部)で、これら各厚肉部13、13に形成した、前記各取付孔15a、15aを円周方向両側から挟む位置に、それぞれ補強リブ25、25を形成している。これら各補強リブ25、25はそれぞれ、前記回転フランジ12の軸方向内側面から軸方向内方に、前記外径側軌道輪部材3bの外周面から径方向外方に、それぞれ突出する形状を有する。又、前記外径側軌道輪部材3bの外周面から径方向外方への突出量である高さ寸法が、軸方向内方に向かうに従って漸減する。前記各補強リブ25、25の軸方向外端部は前記回転フランジ12の内側面と、同じく軸方向内端部は前記外径側軌道輪部材3bの外周面と、それぞれ滑らかに連続している。即ち、前記各補強リブ25、25の峰部の形状(周方向から見た形状)は、図2〜3に示す様に、直線部の両端に部分円弧部を配置した形状を有するもので、これら両部分円弧部の端部と、前記内側面及び外周面とが、これら両部分円弧部の接線方向に、滑らかに連続している。
【0031】
前記各補強リブ25、25の径方向外端部と前記回転フランジ12の内側面との連続部は、前記各取付孔15a、15aのピッチ円よりも径方向に関して内側に存在する。尚、前記各補強リブ25、25の径方向外端部と前記回転フランジ12の内側面との連続部とは、前記部分円弧部の端部と前記内側面との接続部を言う。従って、前記各補強リブ25、25の外接円の直径D25は、前記各取付孔15a、15aのピッチ円の直径PCD15以下(D25≦PCD15)である。前記径方向位置は、前記各補強リブ25、25による補強機能を確保でき、且つ、これら各補強リブ25、25の容積が過大にならない範囲で規制する。これら各補強リブ25、25の軸方向内端部の位置に関しては、前記外径側軌道輪部材3bの加工工程との関係で規制する。この点に就いては、後述する。
【0032】
上述の様に本例の車輪支持用転がり軸受ユニット1bを構成する、前記外径側軌道輪部材3bは、前記各取付孔15a、15aを円周方向両側から挟む位置に、これら各取付孔15a、15a毎に1対ずつの補強リブ25、25を設けている。この為、これら各補強リブ25、25により、前記各取付孔15a、15aを設けた、前記回転フランジ12のモーメント剛性が向上する。この結果、この回転フランジ12の軸方向に関する厚さを特に大きくせず、しかも、この回転フランジ12の軸方向内側面と前記外径側軌道輪部材3bの外周面との連続部に存在させる前記凹曲面19bの曲率半径を小さくしても、前記モーメント剛性を確保できる。本例の場合には、前記回転フランジ12を、前記各厚肉部13、13と前記各薄肉部14、14とにより構成しているが、このうちの各厚肉部13、13の厚さ寸法を特に大きくせず、各薄肉部14、14の厚さ寸法をより小さくしても、前記モーメント剛性を確保できる。
【0033】
この為、前記各補強リブ25、25を設ける事を考慮しても、十分な軽量化を図れる。即ち、これら各補強リブ25、25の外接円の直径D25は、前記各取付孔15a、15aのピッチ円の直径PCD15以下である為、前記各補強リブ25、25を不要に嵩張るものにせずに済む。即ち、前記車輪支持用転がり軸受ユニット1bを搭載した車両の旋回走行時に前記回転フランジ12には、前記各取付孔15a、15aに装着した、スタッド或はボルト等の結合部材からモーメントが加わるが、このモーメントに基づいて、前記各取付孔15a、15aのうちの、前記回転フランジ12の径方向に関して内寄り部分に大きな引っ張り応力が加わる。この様な引っ張り応力に拘らず、前記回転フランジ12の一部に亀裂等の損傷が発生するのを防止する為には、前記回転フランジ12の径方向に関して内寄り部分の剛性を確保する必要がある。特に、前記結合部材がボルトであり、前記各取付孔15a、15aがねじ孔である場合には、雌ねじの溝底からの亀裂発生を防止する為に、上記内寄り部分の剛性確保が重要になる。反面、前記各取付孔15a、15aのピッチ円よりも外径側部分まで前記各補強リブ25、25を設けても、それ以上の前記回転フランジ12の耐久性向上効果はあまり期待できない。本例の場合、前記各補強リブ25、25を形成する範囲を上述の様に規制している為、これら各補強リブ25、25の容積を必要最小限に抑えて、前記外径側軌道輪部材3bの軽量化を、より高次元で図れる。
【0034】
上述の様に本例の車輪支持用転がり軸受ユニット1bに組み込む外径側軌道輪部材3bの場合には、前記回転フランジ12のモーメント剛性を確保しつつ、前記凹曲面19bの曲率半径を小さくして、この凹曲面19bの外周縁の直径Dを、前記各取付孔15a、15aの内接円の直径R以下にしている。従って、これら各取付孔15a、15aの両端は、何れも、前記回転フランジ12の軸方向両側面のうち、互いにほぼ平行な、実質的に平坦な部分に開口する。従って、前記各取付孔15a、15aの内周面の軸方向長さを、この内周面の全周に亙って均一にできる。この結果、これら各取付孔15a、15aを加工する、ドリル、リーマ、タップ、転造タップ等の切削工具若しくはねじ加工工具に曲げ方向の力が加わりにくくなり、前記各取付孔15a、15aの形状精度及び寸法精度を確保すると共に、前記切削工具の耐久性を確保できる。
【0035】
尚、前記各取付孔15a、15aをねじ孔とする場合には、前記凹曲面19bの一部にねじ溝の端部が露出しない様にする。この為に、前記各取付孔15a、15aを、雌ねじの溝底径の内径を有する円孔と仮定して、これら各取付孔15a、15aの内接円の直径を設定し、前記凹曲面19bの外周縁の直径を、この設定した内接円の直径以下とする。この理由は、曲率が大きく、応力が集中し易いねじ溝の底部が前記凹曲面19b部分に露出する事を防止して、このねじ溝の底部を起点とする亀裂が発生する可能性を、より低くする為である。
【0036】
又、前記外径側軌道輪部材3bは、軸方向中間部に存在する凹入部17の外径が、両側部分の外径よりも小さくなっている。この為、前記外径側軌道輪部材3bを鍛造加工により造る場合には、軸方向内端部の直径を拡げる、拡径工程が必要になる。この拡径工程の際、図5に示す様に、前記外径側軌道輪部材3bの軸方向中間部乃至内端部の外周面をバックアップ型26により抑え付ける場合と、抑え付けない場合とが考えられる。何れにしても、前記拡径工程では、中間素材28の軸方向内端部に拡径パンチ27を押し込んで、この軸方向内端部の直径を拡げる。この様な拡径工程時に前記中間素材28には、前記拡径パンチ27が押し込まれた部分だけでなく、軸方向に隣接する、拡径すべきでない部分にも、径方向外方に向いた、余分な力が加わる。この様な余分な力に拘らず、前記中間素材28のうちで拡径すべきでない部分(特に、前記外径側軌道輪部材3bの内周面に形成した複列の外輪軌道11a、11bのうちの外側列の外輪軌道11a部分及びこの外輪軌道11aよりも軸方向外側部分)の径方向寸法が変化しない様にする為の考慮が必要である。
【0037】
前記拡径パンチ27の押し込みに伴う有害な変形を最小限に止め、仕上加工時の削り代を少なく抑える為には、前記バックアップ型26を使用する事が好ましい。但し、このバックアップ型26は、加工後に被加工物の周囲から取り外す必要上、周方向に関して複数個の素子に分割可能で、しかも加工時に径方向外方に加わる大きな力を支承できる構造でなければならない為、設備コストが嵩む。この様なバックアップ型26を省略して製造コストを低く抑える為には、前記中間素材28の側の構造を工夫して、前記有害な変形を抑える必要がある。
【0038】
そこで、前記バックアップ型26を省略する場合には、前記各補強リブ25、25の軸方向内端部と前記外径側軌道輪部材3bの外周面との連続部の軸方向位置を、前記拡径パンチ27により拡径する部分に、できるだけ近付ける。具体的には、前記外側列の外輪軌道11aの肩部29の軸方向内側(図5のイ位置若しくはこれよりも同図の右側)に存在させる。この様に、前記各補強リブ25、25の軸方向内端部(前記連続部)を、前記拡径すべき部分に近い、前記肩部29の軸方向内側に存在させれば、前記拡径すべきでない部分の、径方向に関する剛性を高くできる。この結果、前記バックアップ型26を使用しなくても、前記拡径パンチ27の押し込みに伴って、前記拡径すべきでない部分の寸法が変化する事を抑えられる。
【0039】
これに対して、前記バックアップ型26を使用する場合には、前記各補強リブ25、25の軸方向内端部と前記外径側軌道輪部材3bの外周面との連続部の軸方向位置を、前記拡径パンチ27により拡径する部分から少し遠ざける。具体的には、前記肩部29の軸方向外側(図5のロ位置若しくはこれよりも同図の左側)に存在させる。前記バックアップ型26と前記各補強リブ25、25とが径方向に重畳すると、このバックアップ型26と前記外径側軌道輪部材3bとの、円周方向に関する位相を合わせる必要がある。これに対して、前記連続部の軸方向位置を図5のロ位置若しくはこれよりも軸方向外側にすれば、前記バックアップ型26と前記各補強リブ25、25とが径方向に重畳せず、前記位相を合わせる必要がなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明を実施する場合に、各取付孔15a、15aをねじ孔とし、各結合部材をボルトとする事が、本発明の効果を十分に得る面から好ましい。但し、前記各取付孔15a、15aを単なる円孔とし、各結合部材を、それぞれの基端部に鍔部を備えたスタッドとする事もできる。この場合には、この鍔部の形状を単なる円形とせずに、各補強リブ25、25と干渉しない形状とする。
【符号の説明】
【0041】
1、1a、1b 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 内径側軌道輪部材
3、3a、3b 外径側軌道輪部材
4a、4b 玉
5 主部
6 内輪素子
7 かしめ部
8a、8b 内輪軌道
9 静止フランジ
10 ねじ孔
11a、11b 外輪軌道
12 回転フランジ
13 厚肉部
14 薄肉部
15、15a 取付孔
16 透孔
17、17a 凹入部
18a、18b 保持器
19、19a、19b 凹曲面
20 凹曲面
21 内部空間
22 キャップ
23 シールリング
24 補強部材
25 補強リブ
26 バックアップ型
27 拡径パンチ
28 中間素材
29 肩部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複列の内輪軌道を有し、使用状態で懸架装置に支持固定されて回転しない内径側軌道輪部材と、この内径側軌道輪部材の周囲にこの内径側軌道輪部材と同心に配置され、内周面の一部で前記両内輪軌道に対向する部分に複列の外輪軌道を、外周面の軸方向外寄り部分に回転フランジを、それぞれ有し、使用状態でこの回転フランジに結合固定した車輪と共に回転する外径側軌道輪部材と、前記両内輪軌道と前記両外輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ設けられた転動体とを備え、前記両内輪軌道のうちの軸方向外側の内輪軌道の外径が同じく軸方向内側の内輪軌道の外径よりも小さく、前記両外輪軌道のうちの軸方向外側の外輪軌道の内径が同じく軸方向内側の外輪軌道の内径よりも小さく、前記外径側軌道輪部材の外径が、この軸方向内側の外輪軌道の周囲部分よりも、この周囲部分と前記回転フランジとの間部分で小さくなっており、この回転フランジの円周方向複数箇所で径方向に関する位置が互いに同じ位置に、この回転フランジに前記車輪を結合固定する為の結合部材を装着する取付孔が、この回転フランジを軸方向に貫通する状態で設けられており、前記回転フランジの軸方向内側面の径方向内端部と前記外径側軌道輪部材の外周面のうちの前記間部分の軸方向外端部とが、断面円弧状の凹曲面により滑らかに連続している車輪支持用転がり軸受ユニットに於いて、この凹曲面の外周縁の直径は前記各取付孔の内接円の直径以下であり、前記回転フランジの軸方向内側面の径方向内端部と前記外径側軌道輪部材の外周面との間で前記各取付孔を円周方向両側から挟む位置に複数の補強リブを、それぞれ前記内側面から軸方向内方に、前記外周面から径方向外方に、それぞれ突出する状態で設けている事を特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
【請求項2】
前記外径側軌道輪部材が、鉄系合金に鍛造加工を施して成るものであって、前記回転フランジに厚肉部と薄肉部とが、円周方向に関して交互に配置されており、前記各取付孔及び前記各補強リブが、このうちの厚肉部の軸方向内側面と前記外周面との間に設けられている、請求項1に記載した車輪支持用転がり軸受ユニット。
【請求項3】
前記各補強リブの軸方向外端部が、前記回転フランジの内側面と滑らかに連続しており、これら各補強リブの径方向外端部とこの内側面との連続部が、前記各取付孔のピッチ円よりも径方向に関して内側に存在する、請求項2に記載した車輪支持用転がり軸受ユニット。
【請求項4】
前記各補強リブの軸方向内端部が、前記外径側軌道輪部材の外周面と滑らかに連続しており、前記各補強リブの軸方向内端部とこの外径側軌道輪部材の外周面との連続部の軸方向位置が、前記軸方向外側の外輪軌道の肩部の軸方向内側に存在する、請求項3に記載した車輪支持用転がり軸受ユニット。
【請求項5】
前記各補強リブの軸方向内端部が、前記外径側軌道輪部材の外周面と滑らかに連続しており、前記各補強リブの軸方向内端部とこの外径側軌道輪部材の外周面との連続部の軸方向位置が、前記軸方向外側の外輪軌道の肩部の軸方向外側に存在する、請求項3に記載した車輪支持用転がり軸受ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−51393(P2012−51393A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193117(P2010−193117)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】