説明

車輪用軸受装置

【課題】密封性を確保すると共に、部品点数と加工工程の低減をして低コスト化を図った車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】内輪7、8の正面側端部に環状凸部17が形成され、この環状凸部17に連結環9が装着されて内輪7、8が一体に結合されると共に、連結環9が、円筒部19aと、この円筒部19aの両端から径方向内方に延びる鍔部19bとからなる断面略コの字状に鋼板からプレス加工にて形成された芯金19と、この芯金19の軸方向の中央部に加硫接着により一体に接合された合成ゴム製のシール部材20とを備え、環状凸部17の近傍に環状の凹溝21が形成され、環状凸部17の凹溝21側の壁面17aが略垂直面に、内輪7、8の端面7c側の壁面17bが所定の傾斜角αからなるテーパ面にそれぞれ形成されると共に、シール部材20が内輪7、8の端部外周に弾性接触されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、駆動輪を車輪用軸受で支承するフルフローティングタイプの車輪用軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラック等のようにフレーム構造の車体を有する自動車では、駆動輪のアクスル構造として、従来フルフローティングタイプを採用するものが多い。また、最近の駆動輪の支持構造には、組立性の向上、軽量・コンパクト化等を狙って、複列の転がり軸受をユニット化した構造が多く採用されるようになっている。その従来構造の一例として、図12に示すような車輪用軸受装置が知られている。
【0003】
この車輪用軸受装置は、車軸管51の中にデファレンシャル(図示せず)と連結された駆動軸52が挿通され、車軸管51の外径面に複列の円錐ころ軸受53が装着されている。この複列の円錐ころ軸受53により回転自在に支承されたハブ輪54が、ハブボルト55を介して駆動軸52のフランジ56に連結されている。複列の円錐ころ軸受53の内輪57は、左右一対のものが連結環58で結合され、車軸管51の軸部に外嵌されると共に、固定ナット59で締付固定されている。複列の円錐ころ軸受53の外輪60は、ハブ輪54に内嵌され、その両端をフランジ56とブレーキロータ61により挟持された状態で軸方向に固定されている。これら内外輪57、60間の環状空間には、複列の円錐ころ62が保持器63により回転自在に収容され、両端部にはシール64が装着されて軸受内部が密封されている。
【0004】
内輪57の内方端部には環状段部65が形成され、弾性部材からなるシールリング66が装着されている。また、一対の内輪57、57の突合せ部外周面には、環状凹部67が形成され、この環状凹部67に弾性部材からなるシールリング68が装着されている。これにより、外部から車軸管51内への泥水の浸入やデフオイルの外部への漏れを防止し、軸受内部へのデフオイルの浸入も防止している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−99172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の車輪用軸受装置では、外部から車軸管51内への泥水の浸入やデフオイルの外部への漏れを防止するために内輪57の内方端部には環状段部65が形成され、弾性部材からなるシールリング66が装着されると共に、軸受内部へのデフオイルの浸入を防止するために一対の内輪57、57の突合せ部外周面に環状凹部67が形成され、この環状凹部67に弾性部材からなるシールリング68が装着されている。然しながら、これでは部品点数が多くなると共に、内輪57の加工工程や組立工程が多くなってコストが嵩む問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、密封性を確保すると共に、部品点数と加工工程の低減をして低コスト化を図った車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、デファレンシャルと連結する駆動軸が挿通された車軸管と、外周に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、前記駆動軸に連結されたハブ輪と、このハブ輪と前記車軸管の軸部との間に装着され、前記車輪を回転自在に支承する車輪用軸受とを備えた車輪用軸受装置であって、前記車輪用軸受が、前記ハブ輪の内径に圧入され、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外輪と、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された一対の内輪と、これら内輪と前記外輪の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記内輪の正面側端部に環状凸部が形成され、この環状凸部に連結環が装着されて前記内輪が一体に結合されると共に、前記連結環が、鋼板からプレス加工にて形成された芯金と、この芯金の軸方向の中央部に加硫接着により一体に接合された合成ゴム製のシール部材とを備え、このシール部材が前記内輪の端部に弾性接触されている。
【0009】
このように、駆動輪を車輪用軸受で支承するフルフローティングタイプの車輪用軸受装置において、内輪の正面側端部に環状凸部が形成され、この環状凸部に連結環が装着されて内輪が一体に結合されると共に、連結環が、鋼板からプレス加工にて形成された芯金と、この芯金の軸方向の中央部に加硫接着により一体に接合された合成ゴム製のシール部材とを備え、このシール部材が内輪の端部に弾性接触されているので、一対の内輪の芯ズレを修正しつつ、車輪用軸受を容易に組み立てることができると共に、一対の内輪の突き合わせ面から軸受内部にデフオイルが浸入するのを防止し、また、軸受内部のグリースが外部に漏洩するのを確実に防止することができる。したがって、車輪用軸受の密封性を確保すると共に、部品点数と加工工程の低減により低コスト化を図ることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明のように、前記芯金が、円筒部と、この円筒部の両端から径方向内方に延びる鍔部とからなる断面略コの字状に形成され、前記芯金の円筒部の内周に前記シール部材が接合されると共に、前記環状凸部の近傍に環状の凹溝が形成され、前記環状凸部の前記凹溝側の壁面が略垂直面に、前記内輪の端面側の壁面が所定の傾斜角からなるテーパ面にそれぞれ形成されていても良い。
【0011】
また、請求項3に記載の発明のように、前記芯金の鍔部の内径d1が、前記内輪の凹溝の外径D1よりも大径に、かつ前記環状凸部の外径D2よりも小径(D1<d1<D2)に設定されると共に、前記シール部材の内径d2が、前記内輪の端部外径D3よりも小径(d2<D3)に設定されていれば。芯金を環状凸部の壁面に沿って嵌挿させ、鍔部を凹溝に係止させることにより、容易に一対の内輪を一体に結合することができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明のように、前記芯金が、周方向一箇所にスリットを有する有端リング状に形成されていれば、連結環が嵌挿時に容易に拡径して挿入性が向上し、組立作業性を改善することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明のように、前記芯金の鍔部が周方向等配に折り返された複数の舌片で構成されていれば、連結環が嵌挿時に弾性変形し易くなり、その挿入性が一層向上して組立作業性を改善することができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明のように、前記芯金の鍔部の内径が端面側に漸次拡径するテーパ状に形成されていれば、連結環の挿入性が向上し、組立作業性を改善することができる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明のように、前記芯金が円筒状に形成され、周方向等配にコの字状の複数のスリットが形成され、このスリットによって形成された舌片が径方向内方に傾斜して折曲され、前記芯金の内周に前記シール部材が接合されると共に、前記環状凸部の近傍に環状の凹溝が形成され、前記環状凸部の前記凹溝側の壁面が略垂直面に、前記内輪の端面側の壁面が所定の傾斜角からなるテーパ面にそれぞれ形成されていても良い。
【0016】
また、請求項8に記載の発明のように、前記芯金の舌片の内径d3が、前記内輪の凹溝の外径D1よりも大径に、かつ前記環状凸部の外径D2よりも小径(D1<d3<D2)に設定されると共に、前記シール部材の内径d2が、前記内輪の端部外径D3よりも小径(d2<D3)に設定されていれば、芯金の舌片を環状凸部の壁面に沿って弾性変形させながら嵌挿させ、舌片を凹溝に容易に係止させることができる。
【0017】
また、請求項9に記載の発明のように、前記環状凸部の壁面の傾斜角が10〜30°の範囲に設定されていれば、壁面が幅広になって内輪のスペースが拡大されるようなことはなく、連結環の挿入性が向上し、組立作業性を改善させることができる。
【0018】
また、請求項10に記載の発明のように、前記芯金が、円筒部と、この円筒部の両端から径方向外方に延びる鍔部とからなる断面略コの字状で、周方向一箇所に軸方向に延びるスリットを有する有端リングに形成され、前記芯金の円筒部の外周に前記シール部材が接合されると共に、前記環状凸部の近傍に環状の凹溝が形成され、前記環状凸部の前記凹溝側の壁面が略垂直面に形成されていても良い。
【0019】
また、請求項11に記載の発明のように、前記芯金の鍔部の外径D4が、前記内輪の凹溝の内径d4よりも小径に、かつ前記環状凸部の内径d5よりも大径(d5<D4<d4)に設定されると共に、前記シール部材の外径D5が、前記環状凸部の内径d5よりも大径(d5<D5)に設定されていれば、連結環を縮径させた状態で環状凸部に装着し、鍔部を凹溝に容易に係止させることができる。
【0020】
また、請求項12に記載の発明のように、前記芯金が円筒状に形成され、周方向等配にコの字状の複数のスリットが形成され、このスリットによって形成された舌片が径方向外方に傾斜して折曲され、前記芯金の外周に前記シール部材が接合されると共に、前記環状凸部の近傍に環状の凹溝が形成され、前記環状凸部の前記凹溝側の壁面が略垂直面に、前記内輪の端面側の壁面が所定の傾斜角からなるテーパ面にそれぞれ形成されていても良い。
【0021】
また、請求項13に記載の発明のように、前記芯金の舌片の外径D6が、前記内輪の凹溝の内径d6よりも小径に、かつ前記環状凸部の内径d7よりも大径(d7<D6<d6)に設定されると共に、前記シール部材の外径D7が、前記内輪の端部内径d8よりも大径(d8<D7)に設定されていれば、芯金の舌片を環状凸部の壁面に沿って弾性変形させながら嵌挿させ、舌片を凹溝に容易に係止させることができる。
【0022】
また、請求項14に記載の発明のように、前記芯金の表面に調質あるいは焼入れにより40〜55HRCの範囲に硬化処理が施されていれば、所望の強度を確保することができる。
【0023】
また、請求項15に記載の発明のように、前記車輪用軸受が複列円錐ころ軸受からなり、前記ハブ輪が、ハブボルトを介して前記駆動軸のフランジに連結されると共に、当該車輪用軸受の外輪が、前記フランジとブレーキロータにより挟持された状態で軸方向に固定されていれば、軽量・コンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る車輪用軸受装置は、デファレンシャルと連結する駆動軸が挿通された車軸管と、外周に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、前記駆動軸に連結されたハブ輪と、このハブ輪と前記車軸管の軸部との間に装着され、前記車輪を回転自在に支承する車輪用軸受とを備えた車輪用軸受装置であって、前記車輪用軸受が、前記ハブ輪の内径に圧入され、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外輪と、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された一対の内輪と、これら内輪と前記外輪の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記内輪の正面側端部に環状凸部が形成され、この環状凸部に連結環が装着されて前記内輪が一体に結合されると共に、前記連結環が、鋼板からプレス加工にて形成された芯金と、この芯金の軸方向の中央部に加硫接着により一体に接合された合成ゴム製のシール部材とを備え、このシール部材が前記内輪の端部に弾性接触されているので、一対の内輪の芯ズレを修正しつつ、車輪用軸受を容易に組み立てることができると共に、一対の内輪の突き合わせ面から軸受内部にデフオイルが浸入するのを防止し、また、軸受内部のグリースが外部に漏洩するのを確実に防止することができる。したがって、車輪用軸受の密封性を確保すると共に、部品点数と加工工程の低減により低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る車輪用軸受が装着された車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の車輪用軸受を示す縦断面図である。
【図3】(a)は、本発明に係る連結環を示す縦断面図、(b)は、図2の内輪の要部拡大図である。
【図4】(a)は、図3の連結環の変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)の要部拡大図である。
【図5】(a)は、図3の連結環の他の変形例を示す正面図、(b)は、同上、他の変形例を示す正面図である。
【図6】本発明に係る車輪用軸受の第2の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】図6の連結環を示す縦断面図である。
【図8】本発明に係る車輪用軸受の第3の実施形態を示す縦断面図である。
【図9】(a)は、図8の連結環を示す縦断面図、(b)は、(a)の正面図、(c)は、図8の内輪の要部拡大図である。
【図10】本発明に係る車輪用軸受の第4の実施形態を示す縦断面図である。
【図11】(a)は、図10の連結環を示す縦断面図、(b)は、図10の内輪を示す要部拡大図である。
【図12】従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
デファレンシャルと連結する駆動軸が挿通された車軸管と、外周に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、前記駆動軸に連結されたハブ輪と、このハブ輪と前記車軸管の軸部との間に装着され、前記車輪を回転自在に支承する車輪用軸受とを備えた車輪用軸受装置であって、前記車輪用軸受が、前記ハブ輪の内径に圧入され、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外輪と、外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された一対の内輪と、これら内輪と前記外輪の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、前記内輪の正面側端部に環状凸部が形成され、この環状凸部に連結環が装着されて前記内輪が一体に結合されると共に、前記連結環が、円筒部と、この円筒部の両端から径方向内方に延びる鍔部とからなる断面略コの字状に鋼板からプレス加工にて形成された芯金と、この芯金の軸方向の中央部に加硫接着により一体に接合された合成ゴム製のシール部材とを備え、前記環状凸部の近傍に環状の凹溝が形成され、前記環状凸部の前記凹溝側の壁面が略垂直面に、前記内輪の端面側の壁面が所定の傾斜角からなるテーパ面にそれぞれ形成されると共に、前記シール部材が前記内輪の端部外周に弾性接触されている。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受が装着された車輪用軸受装置を示す縦断面図、図2は、その車輪用軸受を示す縦断面図、図3(a)は、本発明に係る連結環を示す縦断面図、(b)は、図2の内輪の要部拡大図、図4(a)は、図3の連結環の変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)の要部拡大図、図5(a)は、図3の連結環の他の変形例を示す正面図、(b)は、同上、他の変形例を示す正面図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
【0028】
この車輪用軸受装置は、車軸管1の中にデファレンシャル(図示せず)と連結された駆動軸2が挿通され、車軸管1の外径面に複列の円錐ころ軸受からなる車輪用軸受3が装着されている。この車輪用軸受3により回転自在に支承されたハブ輪4が、ハブボルト5を介して駆動軸2のフランジ6に連結されている。車輪用軸受3の一対の内輪7、8は後述する連結環9で結合され、車軸管1の軸部に外嵌されると共に、固定ナット10によって締付固定されている。一対の内輪7、8のうちインナー側の内輪8の端部内周には環状凹所13が形成され、弾性部材からなるシールリング14が装着されている。また、車輪用軸受3の外輪11は、ハブ輪4に内嵌され、その両端が駆動軸2に一体形成されたフランジ6とブレーキロータ12のそれぞれの端面により挟持された状態で軸方向に固定されている。
【0029】
車輪用軸受3は、図2に拡大して示すように、内周に外向きに開いたテーパ状の複列の外側転走面11a、11aが形成された外輪11と、この外輪11に内挿され、外周に前記複列の外側転走面11a、11aに対向するテーパ状の内側転走面7a、7aが形成された一対の内輪7、8と、両転走面間に収容された複列の転動体(円錐ころ)15、15と、これら複列の転動体15、15を転動自在に保持する保持器16とを備えている。一対の内輪7、8の内側転走面7aの大径側(背面側)には転動体15を案内するための大鍔7bが形成されている。そして、一対の内輪7、8の正面側(小径側)端面が突き合された状態でセットされ、所謂背面合せタイプの複列の円錐ころ軸受を構成している。外輪11と一対の内輪7、8との間に形成された環状空間の開口部にはシール18、18が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0030】
外輪11、内輪7、8および転動体15は、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。なお、ここでは、転動体15を円錐ころとした複列円錐ころ軸受からなる車輪用軸受3を例示したが、これに限らず転動体にボールを使用した複列アンギュラ玉軸受で構成されていても良い。
【0031】
ここで、本実施形態では、一対の内輪7、8の正面側の端部外周に環状凸部17が形成されると共に、この環状凸部17に連結環9が装着され、一対の内輪7、8が一体に結合されている。この連結環9は、防錆能を有する鋼鈑、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系)、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系)等、あるいは、工具鋼やばね鋼等の鋼板をプレス加工にて形成され、断面が略コの字状のリングからなり、表面に調質あるいは焼入れにより40〜55HRCの範囲に硬化処理が施されている。これにより、所望の強度(せん断力)を確保することができる。
【0032】
そして、図3(a)に拡大して示すように、連結環9は、円筒部19aと、この円筒部19aの両端から径方向内方に延びる鍔部19b、19bとからなる芯金19と、この芯金19の円筒部19aの内周に加硫接着により一体に接合された略円筒状のシール部材20とを備えている。シール部材20はNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなり、軸方向の中央部に突出部20aが形成されている。シール部材20の材質としては、NBR以外にも、例えば、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。
【0033】
一方、連結環9が装着される内輪7、8の正面側の端部外周には、図3(b)に拡大して示すように、環状の凹溝21と、この凹溝21の端面7c側に環状凸部17が形成されている。この環状凸部17の凹溝21側の壁面17aは略垂直面に形成されると共に、端面7c側の壁面17bは10〜30°の傾斜角αからなるテーパ面に形成されている。なお、傾斜角αが30°を超えると後述する連結環9の挿入性が著しく低下すると共に、10°未満では、壁面17bが幅広になって挿入ストロークが長くなり、内輪7、8のスペースが拡大されるだけでなく、連結環9の挿入性が低下し、組立作業性が悪くなって好ましくない。
【0034】
ここで、芯金19の鍔部19bの内径d1は、内輪7、8の凹溝21の外径D1よりも大径に、かつ環状凸部17の外径D2よりも小径に設定(D1<d1<D2)されると共に、シール部材20の突出部20aの内径d2は、内輪7、8の端部外径D3よりも小径に設定されている(d2<D3)。そして、芯金19を環状凸部17の壁面17bに沿って嵌挿させ、鍔部19bを凹溝21に係止させることにより、連結環9によって一対の内輪7、8が一体に結合される。
【0035】
この連結環9によって一対の内輪7、8の芯ズレを修正しつつ、車輪用軸受3を容易に組み立てることができると共に、シール部材20の突出部20aが内輪7、8の端部外周に弾性変形した状態で密着し、一対の内輪7、8の突き合わせ面から軸受内部にデフオイルが浸入するのを防止し、また、軸受内部のグリースが外部に漏洩するのを確実に防止することができる。したがって、車輪用軸受3の密封性を確保すると共に、部品点数と加工工程の低減により低コスト化を図ることができる。
【0036】
図4に、図3の連結環の変形例を示す。この連結環22は、円筒部19aと、この円筒部19aの両端から径方向内方に延びる鍔部23a、23aとからなる芯金23と、この芯金23の円筒部19aの内周に加硫接着により一体に接合された略円筒状のシール部材20とを備えている。
【0037】
ここで、芯金23の鍔部23aの内径が端面側に漸次拡径するテーパ状に形成されている。これにより、連結環22の挿入性が向上し、組立作業性を改善することができる。
【0038】
図5に、図3の連結環の他の変形例を示す。(a)に示す連結環24は、円筒部25aと、この円筒部25aの両端から径方向内方に延びる鍔部25b、25bとからなる芯金25と、この芯金25の円筒部25aの内周に加硫接着により一体に接合されたシール部材20とを備えている。
【0039】
ここで、芯金25は、周方向一箇所にスリット25cを有する有端リング状に形成されている。これにより、連結環24が嵌挿時に容易に拡径して挿入性が向上し、組立作業性を改善することができる。
【0040】
(b)に示す連結環26は、円筒部19aと、この円筒部19aの両端から径方向内方に延びる鍔部27a、27aとからなる芯金27と、この芯金27の円筒部19aの内周に加硫接着により一体に接合されたシール部材20とを備えている。
【0041】
ここで、芯金27の鍔部27aは、周方向等配に折り返された複数の舌片で構成されている。これにより、連結環26が嵌挿時に弾性変形し易くなり、その挿入性が一層向上して組立作業性を改善することができる。
【実施例2】
【0042】
図6は、本発明に係る車輪用軸受の第2の実施形態を示す縦断面図、図7は、図6の連結環を示す縦断面図である。この実施形態は前述した実施形態と基本的には連結環の構成が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
図6に示す車輪用軸受3は、内周に外向きに開いたテーパ状の複列の外側転走面11a、11aが形成された外輪11と、この外輪11に内挿され、外周に前記複列の外側転走面11a、11aに対向するテーパ状の内側転走面7a、7aが形成された一対の内輪7、8と、両転走面間に収容された複列の転動体15、15と、これら複列の転動体15、15を転動自在に保持する保持器16とを備えている。
【0044】
ここで、本実施形態では、一対の内輪7、8の正面側の端部外周に環状凸部17が形成されると共に、この環状凸部17に連結環28が装着され、一対の内輪7、8が一体に結合されている。この連結環28は、防錆能を有する鋼鈑、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑、フェライト系のステンレス鋼鈑等、あるいは、工具鋼やばね鋼等の鋼板をプレス加工にて形成された円筒状のリングからなり、表面に調質あるいは焼入れにより40〜55HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0045】
そして、図7に拡大して示すように、連結環28は、芯金29と、この芯金29の内周に加硫接着により一体に接合された断面略台形状のシール部材30とを備えている。シール部材30はNBR等の合成ゴムからなる。一方、連結環28が装着される内輪7、8の正面側の端部には、環状の凹溝21と、この凹溝21の端面7c側に環状凸部17が形成されている。
【0046】
芯金29の周方向等配にコの字状のスリット31が形成され、このスリット31によって形成された舌片32が径方向内方に傾斜して折曲されている。ここで、芯金29の舌片32の内径d3は、図3(b)に示す、内輪7、8の凹溝21の外径D1よりも大径に、かつ環状凸部17の外径D2よりも小径に設定(D1<d3<D2)されると共に、シール部材30の内径d2は、内輪7、8の端部外径D3よりも小径に設定されている(d2<D3)。そして、芯金29の舌片32を環状凸部17の壁面17bに沿って弾性変形させながら嵌挿させ、舌片32を凹溝21に係止させることにより、連結環28によって一対の内輪7、8が一体に結合される。
【0047】
この連結環28によって一対の内輪7、8の芯ズレを修正しつつ、車輪用軸受3を容易に組み立てることができると共に、シール部材30が内輪7、8の端部外周に弾性変形した状態で密着し、一対の内輪7、8の突き合わせ面から軸受内部にデフオイルが浸入するのを防止し、また、軸受内部のグリースが外部に漏洩するのを確実に防止することができる。したがって、車輪用軸受3の密封性を確保すると共に、部品点数と加工工程の低減により低コスト化を図ることができる。
【実施例3】
【0048】
図8は、本発明に係る車輪用軸受の第3の実施形態を示す縦断面図、図9(a)は、図8の連結環を示す縦断面図、(b)は、(a)の正面図、(c)は、図8の内輪の要部拡大図である。この第3の実施形態は前述した実施形態と基本的には内輪と連結環の構成が異なるだけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
図8に示す車輪用軸受33は、内周に外向きに開いたテーパ状の複列の外側転走面11a、11aが形成された外輪11と、この外輪11に内挿され、外周に前記複列の外側転走面11a、11aに対向するテーパ状の内側転走面7a、7aが形成された一対の内輪34、35と、両転走面間に収容された複列の転動体15、15と、これら複列の転動体15、15を転動自在に保持する保持器16とを備えている。
【0050】
ここで、本実施形態では、一対の内輪34、35の正面側の端部内周に環状凸部36が形成されると共に、この環状凸部36に連結環37が装着され、一対の内輪34、35が一体に結合されている。この連結環37は、防錆能を有する鋼鈑、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑、フェライト系のステンレス鋼鈑等、あるいは、防錆処理された工具鋼やばね鋼等の鋼板をプレス加工にて形成された断面略コの状のリングからなり、表面に調質あるいは焼入れにより40〜55HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0051】
そして、図9(a)に拡大して示すように、連結環37は、円筒部38aと、この円筒部38aの両端から径方向外方に延びる鍔部38b、38bとからなる芯金38と、この芯金38の外周に加硫接着により一体に接合された円筒状のシール部材39とを備えている。芯金38には周方向一箇所に軸方向に延びるスリット38cが形成され、有端リングを構成している。
【0052】
一方、(c)に示すように、連結環37が装着される内輪34、35の正面側の端部内周には、環状の凹溝40と、この凹溝40の端面7c側に環状凸部36が形成されている。この環状凸部36の凹溝40側の壁面36aは略垂直面に形成されている。
【0053】
ここで、芯金38の鍔部38bの外径D4は、内輪34、35の凹溝40の内径d4よりも小径に、かつ環状凸部36の内径d5よりも大径に設定(d5<D4<d4)されると共に、シール部材39の外径D5は、環状凸部36の内径d5よりも大径に設定されている(d5<D5)。そして、連結環37を縮径させた状態で環状凸部36に装着し、鍔部38bを凹溝40に係止させることにより、一対の内輪34、35が一体に結合される。
【0054】
この連結環37によって一対の内輪34、35の芯ズレを修正しつつ、車輪用軸受33を容易に組み立てることができると共に、シール部材39が内輪34、35の端部外周に弾性変形した状態で密着し、一対の内輪34、35の突き合わせ面から軸受内部にデフオイルが浸入するのを防止し、また、軸受内部のグリースが外部に漏洩するのを確実に防止することができる。したがって、車輪用軸受33の密封性を確保すると共に、部品点数と加工工程の低減により低コスト化を図ることができる。
【実施例4】
【0055】
図10は、本発明に係る車輪用軸受の第4の実施形態を示す縦断面図、図11(a)は、図10の連結環を示す縦断面図、(b)は、図10の内輪を示す要部拡大図である。この第4の実施形態は前述した第2の実施形態と基本的には連結環を内挿タイプに変更しただけで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符合を付して詳細な説明を省略する。
【0056】
図10に示す車輪用軸受41は、内周に外向きに開いたテーパ状の複列の外側転走面11a、11aが形成された外輪11と、この外輪11に内挿され、外周に前記複列の外側転走面11a、11aに対向するテーパ状の内側転走面7a、7aが形成された一対の内輪42、43と、両転走面間に収容された複列の転動体15、15と、これら複列の転動体15、15を転動自在に保持する保持器16とを備えている。
【0057】
ここで、本実施形態では、一対の内輪42、43の正面側の端部内周に環状凸部44が形成されると共に、この環状凸部44に連結環45が装着され、一対の内輪42、43が一体に結合されている。この連結環45は、防錆能を有する鋼鈑、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑、フェライト系のステンレス鋼鈑等、あるいは、防錆処理された工具鋼やばね鋼等の鋼板をプレス加工にて形成された円筒状のリングからなり、表面に調質あるいは焼入れにより40〜55HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0058】
そして、図11(a)に拡大して示すように、連結環45は、芯金46と、この芯金46の内周に加硫接着により一体に接合された断面略台形状のシール部材47とを備えている。シール部材47はNBR等の合成ゴムからなる。一方、連結環45が装着される内輪42、43の正面側の端部には、環状の凹溝48と、この凹溝48の端面7c側に環状凸部44が形成されている。この環状凸部44の凹溝48側の壁面44aは略垂直面に形成されると共に、端面7c側の壁面44bは10〜30°の傾斜角αからなるテーパ面に形成されている。
【0059】
芯金46の周方向等配にコの字状のスリット49が形成され、このスリット49によって形成された舌片50が径方向外方に傾斜して折曲されている。ここで、芯金46の舌片50の外径D6は、(b)に示す内輪42、43の凹溝48の内径d6よりも小径に、かつ環状凸部44の内径d7よりも大径に設定(d7<D6<d6)されると共に、シール部材47の外径D7は、内輪42、43の端部内径d8よりも大径に設定されている(d8<D7)。そして、芯金46の舌片50を環状凸部44の壁面44bに沿って弾性変形させながら嵌挿させ、舌片50を凹溝48に係止させることにより、連結環45によって一対の内輪42、43が一体に結合される。
【0060】
この連結環45によって一対の内輪42、43の芯ズレを修正しつつ、車輪用軸受41を容易に組み立てることができると共に、シール部材47が内輪42、43の端部内周に弾性変形した状態で密着し、一対の内輪42、43の突き合わせ面から軸受内部にデフオイルが浸入するのを防止し、また、軸受内部のグリースが外部に漏洩するのを確実に防止することができる。したがって、車輪用軸受41の密封性を確保すると共に、部品点数と加工工程の低減により低コスト化を図ることができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る車輪用軸受装置は、駆動軸と車軸管の開口部に車輪用軸受が装着されたフルフローティングタイプの駆動輪側の車輪用軸受装置に適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 車軸管
2 駆動軸
3、33、41 車輪用軸受
4 ハブ輪
5 ハブボルト
6 駆動軸のフランジ
7、34、42 アウター側の内輪
7a 内側転走面
7b 大鍔
7c 正面側端面
8、35、43 インナー側の内輪
9、22、24、26、28、37、45 連結環
10 固定ナット
11 外輪
11a 外側転走面
12 ブレーキロータ
13 環状段部
14 シールリング
15 転動体
16 保持器
17、36、44 環状凸部
17a、36a、44a 環状凸部の凹溝側の壁面
17b、44b 環状凸部の端面側の壁面
18 シール
19、23、25、27、29、38、46 芯金
19a、25a、38a 円筒部
19b、23a、25b、27a、38b 鍔部
20、30、39、47 シール部材
20a 突出部
21、40、48 凹溝
25c、31、38c、49 スリット
32、50 舌片
51 車軸管
52 駆動軸
53 複列の円錐ころ軸受
54 ハブ輪
55 ハブボルト
56 フランジ
57 内輪
58 連結環
59 固定ナット
60 外輪
61 ブレーキロータ
62 円錐ころ
63 保持器
64 シール
65 環状段部
66、68 シールリング
67 環状凹部
d1 鍔部の内径
d2 シール部材の突出部の内径
d3 舌片の内径
d4、d6 凹溝の内径
d5、d7 環状凸部の内径
d8 内輪の端部内径
D1 凹溝の外径
D2 環状凸部の外径
D3 内輪の端部外径
D4 鍔部の外径
D5、D7 シール部材の外径
D6 舌片の外径
α 壁面の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デファレンシャルと連結する駆動軸が挿通された車軸管と、
外周に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、前記駆動軸に連結されたハブ輪と、
このハブ輪と前記車軸管の軸部との間に装着され、前記車輪を回転自在に支承する車輪用軸受とを備えた車輪用軸受装置であって、
前記車輪用軸受が、前記ハブ輪の内径に圧入され、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外輪と、
外周に前記複列の外側転走面に対向する内側転走面が形成された一対の内輪と、
これら内輪と前記外輪の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体とを備えた車輪用軸受装置において、
前記内輪の正面側端部に環状凸部が形成され、この環状凸部に連結環が装着されて前記内輪が一体に結合されると共に、
前記連結環が、鋼板からプレス加工にて形成された芯金と、この芯金の軸方向の中央部に加硫接着により一体に接合された合成ゴム製のシール部材とを備え、このシール部材が前記内輪の端部に弾性接触されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記芯金が、円筒部と、この円筒部の両端から径方向内方に延びる鍔部とからなる断面略コの字状に形成され、前記芯金の円筒部の内周に前記シール部材が接合されると共に、前記環状凸部の近傍に環状の凹溝が形成され、前記環状凸部の前記凹溝側の壁面が略垂直面に、前記内輪の端面側の壁面が所定の傾斜角からなるテーパ面にそれぞれ形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記芯金の鍔部の内径d1が、前記内輪の凹溝の外径D1よりも大径に、かつ前記環状凸部の外径D2よりも小径(D1<d1<D2)に設定されると共に、前記シール部材の内径d2が、前記内輪の端部外径D3よりも小径(d2<D3)に設定されている請求項2に記載の車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記芯金が、周方向一箇所にスリットを有する有端リング状に形成されている請求項1乃至3いずれかに記載の車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記芯金の鍔部が周方向等配に折り返された複数の舌片で構成されている請求項2または3に記載の車輪用軸受装置。
【請求項6】
前記芯金の鍔部の内径が端面側に漸次拡径するテーパ状に形成されている請求項2乃至5いずれかに記載の車輪用軸受装置。
【請求項7】
前記芯金が円筒状に形成され、周方向等配にコの字状の複数のスリットが形成され、このスリットによって形成された舌片が径方向内方に傾斜して折曲され、前記芯金の内周に前記シール部材が接合されると共に、前記環状凸部の近傍に環状の凹溝が形成され、前記環状凸部の前記凹溝側の壁面が略垂直面に、前記内輪の端面側の壁面が所定の傾斜角からなるテーパ面にそれぞれ形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項8】
前記芯金の舌片の内径d3が、前記内輪の凹溝の外径D1よりも大径に、かつ前記環状凸部の外径D2よりも小径(D1<d3<D2)に設定されると共に、前記シール部材の内径d2が、前記内輪の端部外径D3よりも小径(d2<D3)に設定されている請求項7に記載の車輪用軸受装置。
【請求項9】
前記環状凸部の壁面の傾斜角が10〜30°の範囲に設定されている請求項1乃至8いずれかに記載の車輪用軸受装置。
【請求項10】
前記芯金が、円筒部と、この円筒部の両端から径方向外方に延びる鍔部とからなる断面略コの字状で、周方向一箇所に軸方向に延びるスリットを有する有端リングに形成され、前記芯金の円筒部の外周に前記シール部材が接合されると共に、前記環状凸部の近傍に環状の凹溝が形成され、前記環状凸部の前記凹溝側の壁面が略垂直面に形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項11】
前記芯金の鍔部の外径D4が、前記内輪の凹溝の内径d4よりも小径に、かつ前記環状凸部の内径d5よりも大径(d5<D4<d4)に設定されると共に、前記シール部材の外径D5が、前記環状凸部の内径d5よりも大径(d5<D5)に設定されている請求項10に記載の車輪用軸受装置。
【請求項12】
前記芯金が円筒状に形成され、周方向等配にコの字状の複数のスリットが形成され、このスリットによって形成された舌片が径方向外方に傾斜して折曲され、前記芯金の外周に前記シール部材が接合されると共に、前記環状凸部の近傍に環状の凹溝が形成され、前記環状凸部の前記凹溝側の壁面が略垂直面に、前記内輪の端面側の壁面が所定の傾斜角からなるテーパ面にそれぞれ形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項13】
前記芯金の舌片の外径D6が、前記内輪の凹溝の内径d6よりも小径に、かつ前記環状凸部の内径d7よりも大径(d7<D6<d6)に設定されると共に、前記シール部材の外径D7が、前記内輪の端部内径d8よりも大径(d8<D7)に設定されている請求項12に記載の車輪用軸受装置。
【請求項14】
前記芯金の表面に調質あるいは焼入れにより40〜55HRCの範囲に硬化処理が施されている請求項1乃至13いずれかに記載の車輪用軸受装置。
【請求項15】
前記車輪用軸受が複列円錐ころ軸受からなり、前記ハブ輪が、ハブボルトを介して前記駆動軸のフランジに連結されると共に、当該車輪用軸受の外輪が、前記フランジとブレーキロータにより挟持された状態で軸方向に固定されている請求項1乃至14いずれかに記載の車輪用軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−148409(P2011−148409A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11590(P2010−11590)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】