説明

軌道上を走行させる移動物体

【課題】外部電源に依存しない電源部を効率的に配置することで、外部電力事情に影響されずコンパクトかつ、操作性、安全性に優れた鉄道模型、自動車模型あるいはキャラクター玩具などの軌道上をモーター駆動で走行する移動物体を提供する。
【解決手段】軌道上をモーター駆動で走行する移動物体において、該移動物体のモーター駆動が軌道に設置された太陽電池から供給された電力で駆動することを特徴とする移動物体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行させる移動物体、特に鉄道模型、自動車模型およびキャラクター玩具のモーターの電力を、軌道より供給する移動物体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道模型、自動車模型およびキャラクター玩具などにおいて、その駆動源であるモーターの電力は別装置の外部電源から供給している。
例えば従来玩具電車用レールは、その電源を一般家庭用電源や乾電池などの外部電源から供給を受け、当該玩具用電車を駆動させている。そのため家庭用電源プラグの位置が遠く離れていたりして、その使用場所が限定されている。また、家庭用電源の不都合たとえば停電時、あるいはコンセント不足などによる電源トラブルもあり使用する上で不都合が生じている。さらに電池による電力供給では、長時間使用による電力消耗が激しく、その時の電池交換費用や充電式での長時間充電を必要としたり、電池購入の費用もかさむなど、電源の問題で鉄道模型、自動車模型あるいはキャラクター玩具による快適な娯楽を楽しむことは、十分ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記問題点に鑑み考案されたものであって、第一の目的は外部電源に依存しない電源部を効率的に配置することで、外部電力事情に影響されずコンパクト、かつ操作性、安全性に優れた鉄道模型、自動車模型あるいはキャラクター玩具などの軌道上をモーター駆動で走行する移動物体を提供することを目的とする。さらに本発明の第2の目的は、家庭用電源のない場所で自由に使用できる軌道上をモーター駆動で走行する移動物体を提供することにある。第3の目的は、安価な電源供給システムを有する軌道上をモーター駆動で走行する移動物体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの課題は、軌道上をモーター駆動で走行する移動物体において、該移動物体のモーター駆動が軌道に設置された太陽電池から供給された電力からなることを特徴とする移動物体、によって達成された。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明の色素増感型太陽電池の構成を示したものである。
【図2】本発明に係わる色素増感型太陽電池の作製プロススを示したものである。
【図3】本発明に係わる光伝教を示したものである。
【図4】本発明に係わる対極フィルムを示したものである。
【図5】本発明に係わる軌道用太陽電池を示したものである。
【図6】本発発明に係わる軌道用太陽電池の側面を示したものである。
【図7】本発明に係わる軌道からの電力の取り出し方法を示したものである
【図8】本発明に係わる軌道パーツの直列接続の形態を示したものである。
【図9】本発明に係わる軌道パーツの並列接続の形態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、さらに下記の特徴を有する態様とすることが好ましい。
(態様1)
軌道上をモーター駆動で走行する移動物体において、該移動物体のモーター駆動が軌道に設置された太陽電池から供給された電力で駆動することを特徴とする移動物体。
(態様2)
移動物体が鉄道模型、自動車模型あるいはキャラクター玩具であることを特徴とする態様1に記載の移動物体。
(態様3)
上記太陽電池が色素増感型太陽電池であることを特徴とする態様1に記載の移動物体。
(態様4)
上記太陽電池がプラスチックを基板とする色素増感型太陽電池であることを特徴とする態様3に記載の移動物体。
【0007】
(態様5)
上記太陽電池が軌道の下側、側面あるいは上面の少なくとも一ケ所に設置されていることを特徴とする態様1〜4に記載の移動物体。
(態様6)
上記太陽電池が光キャパシタを併せ持つ色素増感型太陽電池であることを特徴とする態様3〜5に記載の移動物体。
(態様7)
移動物体が鉄道模型、自動車模型あるいはキャラクター玩具の少なくとも一種から選ばれ、プラスチックを基板とする色素増感型太陽電池でかつ軌道の下側に設置されている太陽電池であることを特徴とする態様1〜6に記載の移動物体。
【0008】
まず、本発明の太陽電池について記述する。本発明の太陽電池は、光を電力に変換する装置であれば特に限定されず、例えば単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、CIGS系太陽電池、有機半導体太陽電池、色素増感型太陽電池などを挙げることができる。それらの基板も特に限定されず、例えば金属、ガラス、プラスチック、木板などを挙げることができる。これらの中でも、特に好ましいのは弱い光でもしかるべき電力を発生することのできる色素増感型太陽電池であり、さらに透明なプラスチック基板からなることが好ましい。
【0009】
以下に、好ましいプラスチック型の太陽電池である色素増感型太陽電池について、詳細に記す。まずプラスチック型の太陽電池は、軽量かつ自由な形に敷設することが可能であることから、その使用において好ましい形態を自由に設計できる。特に模型や玩具は、子供による落下や強打などの過酷な使用で破損しやすい。従来のガラスや金属などの硬い素材は壊れやすくその耐久性アップが要求されており、本発明の好ましい態様であるプラスチック基板は、有用な素材であり落下させても割れることがなく、模型や玩具としての利用に適している。また色素増感型太陽電池は、ロールツーロールなどによる連続生産が可能であり、大量製造による低コスト化であり比較的安価な材料が要求される模型や玩具には有用である。
【0010】
本発明で好ましく利用される色素増感型太陽電池の代表的な構成の例を図1に示す。また、図2に代表的な製法の模式図を示す。その原理は、始めに色素が光エネルギーを吸収して電子を放出し、半導体のチタニア(TiO2)がその電子を受けて電極へと引き渡す。色素に残ったホール(h+)は電解液中のヨウ化物イオンを酸化し、I- を I3- へと変える。この酸化されたヨウ素イオンは対極で再び電子を受けて還元され、両極間をサイクルすることによって電池となるものである。本発明で 好ましく用いられる色素増感型太陽電池は、色素増感された半導体粒子からなる多孔性の光電極層、電解液層および対向電極層をこの順序で有する色素増感型光電変換素子である。
【0011】
また、光電極層が、基板と基板よりも電解液層側に設けられる導電金属層とを有すること、対向電極層が基板と基板よりも電解液層側に設けられる導電金属層とを有すること、導電性透明基板の電解質層側とは反対側の基板表面上に、色素増感型光電変換素子が透明なプラスチックフィルム基材からなる保護用の包装用袋に収納されていること、反射防止膜、水蒸気バリア層、ガスバリア層などが形成されていることなど優れた包装材料であること、などが本発明では推奨される。
【0012】
光電極層は、光電極基板と色素増感多孔質半導体粒子層からなる。光電極基板は、透明基板と透明導電層とからなり、色素増感多孔質半導体粒子層は色素により増感された半導体粒子からなる。対向電極層は、透明基板と透明導電層とからなるものである。透明導電層は電圧損失が少ない金属により形成できる。金属を用いて透明導電層を形成する場合、金属のメッシュや格子状の構造からなる層を形成すればよい。
【0013】
以下、光電極層、電解液層層、そして対向電極層の順序で説明する。
(光電極層)
光電極層は、光電極基板および色素増感多孔質半導体粒子層からなることが好ましい。光電極基板は、透明基板上に透明導電層を有する。透明基板は、ガラス板またはポリマーフィルムが好ましい。ガラス板よりも、屈曲性があるポリマーフィルムの方が好ましい。ポリマーの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)およびポリイミド(PI)を含む。ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)が最も好ましい。
【0014】
透明導電層は、金属(例、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン)、炭素、導電性金属酸化物(例、酸化スズ、酸化亜鉛)または複合金属酸化物(例、インジウム−スズ酸化物、インジウム−亜鉛酸化物)から形成できる。その表面抵抗値は15Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましく、3Ω/□以下がさらに好ましく、1Ω/□以下がさらにまた好ましく、0.5Ω/□以下が最も好ましい。透明基板上に透明導電層を設けた光電極基板の光透過率(測定波長:500nm)は、60%以上が好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%以上が最も好ましい。
【0015】
透明導電層には、集電のための補助リードを配置させることができる。補助リードは、例えば、パターニングにより配置できる。補助リードは、低抵抗の金属材料(例、銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケル)より形成される。補助リードがパターニングされた透明導電層において、補助リードを含めた表面の抵抗値は、1Ω/□以下に制御することが好ましい。
【0016】
色素増感多孔質半導体粒子層は、ナノサイズの細孔が内部に網目状に形成された、いわゆるメソポーラスな半導体膜からなっている。多半導体材料として金属酸化物および金属カルコゲニドを使用することが好ましく、さらにn型の無機半導体が好ましく、TiO、TiSrO、ZnO、Nb、SnO、WO、Si、CdS、CdSe、V、ZnS、ZnSe、SnSe、KTaO、FeSおよびPbSを含む。TiO、ZnO、SnO、WOおよびNbが好ましく、チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物およびこれらの複合体がさらに好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。半導体の一次粒子は、平均粒径が2nm以上、80nm以下であることが好ましく、10nm以、60nm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
多孔質半導体の増感に用いる色素は、各種の有機系、金属錯体系の増感材料と同様の色素を用いることができる。増感色素は、有機色素(例、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素)および金属錯体色素(例、フタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体)を含む。金属錯体色素を構成する金属の例は、ルテニウムおよびマグネシウムを含む。クマリン色素のような有機色素は、「機能材料」,2003年,6月号,P5−18、および「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(J.Phys.Chem.)」,2003年,B第107巻,P597に記載がある。
【0018】
(電解液)
電解液層は、溶媒として5員環環状カーボネート、γ−ラクトン、脂肪族ニトリル、脂肪族鎖状エーテル脂肪族環状エーテルから選ばれる少なくとも1種類の溶媒中に、脂肪族第四級アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、そしてヨウ化物イオンが溶解している電解液からなる色素増感型光電変換素子が好ましい。また、電解液の溶媒中にさらにベンゾイミダゾール化合物やチオシアン酸イオン(S−C≡N)またはイソチオシアン酸イオン(N=C=S)、グアニジウムイオンが溶解していることも好ましい。
【0019】
(対向電極層)
対向電極層は、透明基板および透明導電層からなることが好ましい。透明基板および透明導電層の詳細は、光電極層の透明基板および透明導電層と同様である。
【0020】
(移動物体)
次に、本発明で好ましく用いられる軌道上をモーター駆動で走行する移動物体ついて記述する。本発明においては、本発明の太陽電池特に色素増感型太陽電池で駆動するであれば、特に限定されず各種の玩具(鉄道模型、自動車模型あるいはキャラクター玩具など)や展示用キットを挙げることができる。これらは、例えば電車模型(特開2004-261495)、鉄道車両玩具(特開2004-230187)、走行コース変形自在の車両玩具レースゲーム(特開平08-238385)、軌道装置及び軌道装置の製造方法(特開2008-018028)、レール走行玩具(特開2007-175253)、モノレール玩具(特開2003-010562)、軌道装置(特開2000-271351)、軌道装置(特開2000-262770)、電気式玩具自動車用レーシングトラックのコントローラシステム(特開平10-033838)、走行コース変形自在の車両玩具レースゲーム(特開平08-238385)、に記載されており、その駆動物体の動力であるモーター類の電力供給に利用するものである。
【0021】
電池で駆動できる子供用の鉄道模型・自動車模型のモーター電力を太陽電池から供給する例を示す。一例として子供用の鉄道模型・自動車模型であるタカラ・トミーから発売されているプラレール、トミカなどが挙げられる。その場合、模型への電力供給方法は、Nゲージ、HOゲージの鉄道模型で採用されている軌道からの電力供給方法を採用することができる。電力は、電池から供給されるものである。なお、裏面はスピード調節、あるいは車両基地用の軌道として使用することができる。
【0022】
本発明では、軌道部分に電力取り出し用の導電シールを敷設してあり、さらに軌道の接続部分は模型の進行方向がわかるような記号、デザインを施されていてもよい。更にまた、軌道を一方向にしか接続できないような形状にしてもよい。軌道の接続時に、電力取り出し用の導電シールが並列に接続されるようにされていてもよい。駆動車両の設計に関しては駆動車両には、最高速度を調節できるダイヤルつまみ、あるいは、スライドスイッチを装着していてもよい。軌道パーツの接続は、並列接続することが好ましい。さらに軌道パーツに搭載する太陽電池の電圧は、鉄道模型の駆動に必要な電圧に設定することが推奨される。軌道に設置された色素増感型太陽電池の一部の電力でも、移動物体が作動するよう設定するのが好ましい。移動物体の車輪を導電性の部材にして車輪から得られる電力を、模型内部のモーターに直結させることが好ましい。移動物体に搭載するモーターには、電流のリミット回路を組み込むことも好ましい。
【0023】
軌道パーツは並列に接続するため、接続した軌道パーツの数によっては大電流が流れ、走行スピードが高くなるので、使用者の安全な速度で模型が走行するよう設計に配慮することが必要である。また鉄道模型などのモーターの場合として、携帯電話等に採用されている振動モーターを用いてもよい。携帯電話等に採用されている振動モーターは,0.5V,10mAで駆動するものが採用されており、このような低消費電力モーターを用いた車両を製作することでも、光量の少ない室内でも利用できる。この場合軌道上に色素増感型太陽電池を一個の単セルで設置するだけでもよく、2cmx20cmの大きさがあれば、室内蛍光灯下(500ルクス)であっても容易に2mAの電流供給が可能である。さらに軌道上の色素増感型太陽電池を並列に接続することで、たとえば10枚で、20 mA以上が供給されるため十分に走行させることができる。本発明で使用される移動物体は、その大きさに応じて色素増感型太陽電池の数や面積を調整して、可動させることができる。
【0024】
本発明では色素増感型太陽電池が、軌道上をモーター駆動で走行する移動物体の軌道の間、下側、上面あるいは側面の少なくとも一ケ所に設置されていることを特徴とする。これらの太陽電池は、軌道に接続されていることが特徴である。軌道としては、前述した各種提案の公開情報により、任意な形態をとることができ、その軌道間の距離や軌道の長さなどは限定されない。例えば、直線でもよく、円周形態でもよく、一部が湾曲していてもよい。軌道間の距離としては、例えば0.5〜150cmが挙げられ、より好ましく1〜75cmであり、更には1.5〜30cmであり、特には2〜10cmである。軌道の長さは、周回でも端部を有する軌道でもよく、好ましくは3cm〜100000cmであり、より好ましく10〜5000cmであり、更には30〜1000cmであり、特には50〜500cmである。
以下本発明の具体例について説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
[実施例1]
(1)電解液の調製
N−メチルベンズイミダゾール6.6g、ヨウ化テトラブチルアンモニウム73.8g、1,3−ブチルメチルイミダゾリウムヨウ化物53.2g、グアニジンチオシアネート5.8gを、500mLのメスフラスコに入れ、γ―ブチロラクトンを全量で500mLになるように加えた。超音波洗浄機による振動により1時間撹拌したのち、24時間以上暗所に静置して、ヨウ素を含まない電解液を調製した。
【0026】
(2)色素溶液の調製
ルテニウム錯体色素(N719、ソラロニクス社製)720mgを2Lのメスフラスコに入れた。tert−ブタノール1Lを混合し、撹拌した。その後、アセトニトリル0.8Lを加え、メスフラスコに栓をしたのち、超音波洗浄器による振動により、60分間撹拌した。溶液を常温に保ちながら、アセトニトリルを加え、全量を2Lとした。
【0027】
(3)光電極層の作製
透明導電膜として、酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、厚み200μm、シート抵抗15ohm/sq)を、20cm×100cmにカットした。メタノールでITO面を洗浄後、ITO面を表にして、平滑なガラス台の上に真空ポンプを使って固定した。ポリマー成分を含まないバインダーフリー酸化チタンペースト(PECC−C01−06、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)を、ベーカー式アプリケータを用いて塗布厚み150μmで塗布した。ペーストを常温で10分間乾燥させた後、150℃のホットプレート上で、さらに5分間加熱乾燥して、酸化チタンナノ多孔膜フィルムを作製した。
【0028】
酸化チタンフィルムを放冷後、3×10cmのサイズにカットした。さらに、カットしたフィルムの酸化チタン膜の短辺(3cm)の外側から5mmのふちをけずり、さらに、長辺のふちの一方を、5mm、もう一方のふちの10mmを削り整形した。整形後の酸化チタン膜のサイズは、2cm×9cmとなった(図3)。この酸化チタン電極を、再度110度にて10分間加熱乾燥した後、調製した0.4mMのN719色素溶液に浸した。色素溶液を40℃に保ちながら、軽く攪拌しながら色素を吸着させた。2時間後、シャーレから色素吸着済み酸化チタン膜を取り出し、アセトニトリルにて洗浄して乾燥させた。
【0029】
(4)対向電極層の作製
酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたポリエチレンナフタレートフィルム(ITO−PENフィルム、厚み200μm、シート抵抗15ohm/sq)を、20cm×100cmにカットした。エタノールで50%を希釈したPEDOT−PSS水分散液(ポリサイエンス社製、1.2wt%)をバーコーターによって塗布した。室温で乾燥後、150度で10分乾燥させることで、光透過率が70%の対極用フィルムを作製した。その後、3×10cmのサイズにカットした。フィルムの短辺から1cmの部分に直径1mmの電解液注液用の穴を一箇所あけた(図4)。
【0030】
(5)色素増感光電変換素子の作製
サーリンフィルム(厚さ25μm、デュポン社製)を、3x10cmのサイズに切り取り、さらに、中心部を2×8cmにくり抜き、スペーサーフィルムを作製した。色素吸着させた酸化チタン電極フィルムと、対向電極フィルムを、スペーサーフィルムをはさんで導電面が内側になるように対向させて貼り合せ、110度に加熱した加熱炉で乾燥した。そして電解液注液用の一方の穴から、電解液を注液した。電解液注液用の穴は、サーリンフィルムを用いて、110℃でカバーガラスを接着させることで封じた。カバーガラスの上から110度に加温した半田ごてにより熱を加えることによって、カバーガラスを接着した。作製した色素増感太陽電池の電極の端子には、集電効率を高めるために、導電アルミテープ(No.5805、スリオンテック社製)を、貼った。このとき、太陽電池の両面から電極を取り出せるように、アルミテープを巻き込むようにはった。(図5)
【0031】
(6)色素増感太陽電池素子の評価
光源として、150Wキセノンランプ光源装置にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光源(PEC−L11型、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)を用いた。光量は、1sun(AM1.5G、100mWcm−2(JIS−C−8912のクラスA))に調整した。作製した色素増感太陽電池素子−1をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続した。電流電圧特性は、1sunの光照射下、バイアス電圧を、0Vから0.8Vまで、0.01V単位で変化させながら出力電流を測定し、所定の優れた出力を得ることができた。
【0032】
(7)電車用の軌道パーツの作製
作製した短冊形型の太陽電池の両面に、電車模型の車輪のガイド用に、エポキシ接着剤を使って、車輪ガイドを作った。(図6)
【0033】
(8)プラレール車体の改造
タカラ・トミー製のプラレールの駆動車を分解した。プラレール駆動車には、モータが直結した駆動輪と、ガイド用の車輪がある。まず、ガイド用の車輪を取り出し、車軸を中央で切った。車輪部分と車軸部分は、銀導電ペースト(藤倉化成ドータイト)を塗布し、軌道の電極から電気を取り出せるようにした。また、車軸受けにも同様にドータイトを塗布し、車輪と車軸を導通させた。車軸と駆動用モータの端子を結線することで、軌道からの電力供給を可能とした。
【0034】
(9)色素増感型太陽電池を軌道に設置した自動車模型の作成と駆動
軌道上を走行する移動物体として、子供用の鉄道模型・自動車模型であるタカラ・トミーから発売されているプラレール、トミカを用いた。模型への電力供給方法は、Nゲージ、HOゲージの鉄道模型で採用されている軌道からの電力供給方法を採用したものである(図7)。20cmx4cmの直線軌道の中央の2cmx20cmの範囲に太陽電池を設置する。色素増感型太陽電池の出力電圧は、晴天時の室内において0.8V程度であった。
【0035】
(10)自動車模型の評価
上記軌道上に色素増感型太陽電池を4本直列に配置し、晴天時の室内で最大電圧が2.8Vの電圧を得た(図8)。該玩具における標準の模型を走行させるときには、1.5Vの電力供給で可能であり、本発明の色素増感型太陽電池を設置した場合でも、安定した自動車の走行を確認した。敷設した軌道より供給可能な電流は、模型の走行に十分の電流となり、模型の走行速度は模型に装着したスイッチにより調節化であった。
【0036】
さらにモーターとして携帯電話等に採用されている振動モーターを用いた鉄道模型を作製し、プラレール、トミカの軌道上でその走行性を実施した。ここで、携帯電話等に採用されている振動モーターは,0.5V,10mAで駆動するものであり、安定した鉄道模型の走行を確認した。軌道に設置した色素増感太陽電池は、2cmx20cmの大きさがあれば、室内蛍光灯下(1000ルクス)であっても容易に4mAの電流供給が可能であった。したがって、色素増感太陽電池を設置した軌道を、4枚を並列に接続することで、室内蛍光灯のもとで容易に鉄道模型は走行した(図9)。以上から、本発明の色素増感型太陽電池に代表される太陽電池を設置した軌道上を移動物体が、家庭用電源や電池を使用することなく、快適に走行することが可能となった。これらは、室外でも室内でも移動物体を走行させることができ、本発明の目的を達成することができた。
【0037】
[実施例2]
実施例1のタカラ・トミーから発売されているプラレール、トミカの鉄道模型において、本発明の色素増感型太陽電池のかわりに、プラスチック色素増感型太陽電池と電気二重層キャパシタを組み合わせた色素増感型太陽電池光キャパシタを、軌道に設置した電池として用いた。この場合、晴天下で軌道上を走行していた鉄道模型は、豆電球の明かりに移動させても、かなりの時間鉄道模型は走行している。これは、色素増感型太陽電池光キャパシタに蓄電された電力で鉄道模型が走行したものであり、本発明の色素増感型太陽電池の応用として、更に好ましいものであり、光キャパシタを組み合わせることで、光の照射強度の変化に対して、鉄道模型の走行速度を安定化することができることをしめすものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
乾電池が必要なく、手軽に経済的に楽しむことができる。光の強さで走行速度を調節することができる。プラスチック型の太陽電池を用いることで安全性が向上する。太陽電池がレールに内蔵されているので別に電源設備の接続が不要となり省スペース化と操作性が簡便となる。
太陽電池を使うことで、明るい部屋でのみ遊ぶことができるので、健康、安全のためによい効果を与える。軌道に敷設する太陽電池は、グリッドを配置することで、枕木をイメージすることができるため、デザイン性が高まりよりリアルな軌道パーツを提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1. 導電性基板(FTOガラス、ITOプラスチックなど)
2. 色素吸着酸化チタン膜(厚さ約10μm)
3. 電解質
4. 対極触媒膜
5. 封止剤(20〜50 μm)
6. 集電グリッド
7. マイナス極
8. プラス極
9. ITO-PENフィルム
10. 電解液注液用の穴
11. 集電アルミテープ
12. エポキシ接着剤による車輪ガイド
13. 色素増感太陽電池の光受光面
14. 導通車輪車軸部(−極)
15. 導通車輪車軸部(+極)
16. 絶縁車軸
17. 車両駆動用モーター
18. 集電用車軸受け
19. 太陽電池組み込み軌道パーツ
20. 導線
21. 裏面が絶縁されたアルミテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上をモーター駆動で走行する移動物体において、該移動物体のモーター駆動が軌道に設置された太陽電池から供給された電力で駆動することを特徴とする移動物体。
【請求項2】
移動物体が鉄道模型、自動車模型あるいはキャラクター玩具であることを特徴とする請求項1に記載の移動物体。
【請求項3】
上記太陽電池が色素増感型太陽電池であることを特徴とする請求項1に記載の移動物体。
【請求項4】
上記太陽電池がプラスチックを基板とする色素増感型太陽電池であることを特徴とする請求項3に記載の移動物体。
【請求項5】
上記太陽電池が軌道の間、下側、上面あるいは側面の少なくとも一ケ所に設置されていることを特徴とする請求項1〜4に記載の移動物体。
【請求項6】
上記太陽電池が光キャパシタを併せ持つ色素増感型太陽電池であることを特徴とする請求項3〜5に記載の移動物体。
【請求項7】
移動物体が鉄道模型、自動車模型あるいはキャラクター玩具の少なくとも一種から選ばれ、プラスチックを基板とする色素増感型太陽電池でかつ軌道の間に設置されている太陽電池であることを特徴とする請求項1〜6に記載の移動物体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−252454(P2010−252454A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97139(P2009−97139)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(504345953)ペクセル・テクノロジーズ株式会社 (30)
【Fターム(参考)】