説明

軌道周回対物レンズを備える走査システム

【課題】広視野高分解能高効率の回転式顕微鏡または走査装置を提供する。
【解決手段】走査システム100では、静止装置50が固定光路部分LP1に配置され、固定光路部分LP1と中間光路部分LP2と走査光路部分LP3とを含む(破線で示される)光路LPに沿って進む平行光を伝播し、標本60が走査光路部分LP3の少なくとも一部分を遮断する。走査部分LP3は固定部分LP1と平行であり、固定部分LP1からオフセット距離Rだけ間隔を置いて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走査システムに関し、より詳細には、固定光源/受光器と、顕微鏡対物レンズといった軌道周回(回転)要素との間で平行光を伝播させる光走査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高分解能高効率で大面積を走査可能な装置を必要とするいくつかの技術分野がある。かかる技術分野の1つは、希少細胞に選択的に付着する蛍光物質を使用した血液または他の体液中の比較的少数の希少細胞の特定に関与し、その場合、このように処理されたスミアは、光学的に分析されて、スミア中の蛍光物質の有無により標的とする種類の希少細胞が特定される。統計的正確さを期すためには、個々の工程に必要とされるだけの数の細胞を獲得することが重要であり、研究によっては、少なくとも10個の希少細胞が特定されるべきであり、100万個に1個の希少細胞濃度では、少なくとも1,000万個の細胞の標本抽出を必要とする。
【0003】
高分解能高効率で大面積を走査可能な装置を必要とする別の技術分野は、太陽光産業におけるものであり、この分野では、外部回路に相互接続するビアを作るために太陽電池を迅速にアブレーションする必要がある。製造に際して、太陽電池は、上層接合部を絶縁し、保護する窒化物層を有することができる。これらのビアを、レーザスキャナにおけるレーザアブレーションによって迅速に効率よく製造する方法があれば、太陽電池の高スループット生産を実現することができるはずである。いくつかのレーザアブレーション用途では、フェムト秒レーザが必要とされ得る。フェムト秒レーザが適正に機能するには、色収差および他の種類の収差がパルス品質に悪影響を及ぼす可能性がある。これらの収差が生じるのは、走査レンズが走査時にビームを曲げたり、ゆがめたりして、直線運動、平坦なフィールドおよび一定の走査速度を生じるからである。本発明は、中間走査レンズを無くして、走査工程において単純なレンズなしの中間光路を設けることによって、この問題を解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0154396号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、固定光路部分と、前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分からオフセット距離だけ間隔をおいて配置される走査光路部分とを含む光路に沿って平行光を伝播させる走査システムであって、前記固定光路部分と平行な第1の軸を中心に固定された平行関係において回転するように配置された第1の面と第2の面とを含むコンベア部であって、前記平行光が前記固定光路部分に沿って前記第1の面に方向づけられると、前記平行光が前記第1の面によって方向変更されて前記第2の面へ向けられ、次いで、前記第2の面によって方向変更されて前記走査光路部分に沿って進むように、前記第1の面と前記第2の面とが所定の距離だけ間隔をおいて配置されると共に前記第1の軸に対して所定の角度で傾いている、前記コンベア部と、前記固定光路部分と同一直線上にある第2の軸を中心に軌道上を周回すると共に前記第2の軸から前記オフセット距離のところに配置された軌道周回要素を含む回転部と、を備える走査システムが提供される。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、標本の拡大像を生成するための広視野高分解能高効率回転式顕微鏡であって、A.固定光路部分と、前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分からオフセット距離だけ間隔をおいて配置される走査光路部分とを含む光路に沿って平行光を伝播させる多重化走査システムであって、a.コンベア部であって、前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分と同一直線上にない第1の軸を中心に回転するように配置された複数の第1の反射面を含む多面光学素子と、前記多面光学素子と固定された関係において前記第1の軸を中心に回転するように配置された環状構造であって、前記環状構造は、前記多面光学素子を取り囲むと共に前記第1の反射面各々が複数の第2の反射面のうちの関連する第2の反射面と平行に対面するように位置決めされる前記複数の第2の反射面を含み、前記平行光が、前記固定光路部分と前記走査光路部分との間において、前記第1の反射面のうちの1つと該第1の反射面のうちの1つに関連する第2の反射面とによって反射される、前記環状構造と、を備える前記コンベア部と、b.前記固定光路部分と同一直線上にある第2の軸を中心とする円形パターンに配置されると共に前記第2の軸から前記オフセット距離のところに配置された複数の軌道周回顕微鏡対物レンズを備える回転部と、を備える前記多重化走査システムと、B.前記標本を前記回転部の下で移動させるための位置決め機構と、を備える回転式顕微鏡が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、標本の表面から材料をアブレーションするための広視野高分解能高効率レーザアブレーション装置であって、A.固定光路部分に沿って平行光を方向づけるように配置されたレーザと、B.光路に沿って前記平行光を伝播させる多重化走査システムであって、a.コンベア部であって、前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分と同一直線上にない第1の軸を中心に回転するように配置された複数の第1の反射面を含む多面光学素子と、前記多面光学素子と固定された関係において前記第1の軸を中心に回転するように配置された環状構造であって、前記環状構造は、前記多面光学素子を取り囲むと共に前記第1の反射面各々が複数の第2の反射面のうちの関連する第2の反射面と平行に対面するように位置決めされた前記複数の第2の反射面を含み、前記固定光路部分に沿って方向づけられる前記平行光が、前記第1の反射面のうちの1つにより該第1の反射面と関連する第2の反射面へと反射され、前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分からオフセット距離だけ間隔をおいて配置される走査光路部分に沿って前記関連する第2の反射面により反射される、前記環状構造と、を備える前記コンベア部と、b.前記固定光路部分と同一直線上にある第2の軸を中心とする円形状に配置されると共に前記第2の軸から前記オフセット距離のところに配置された複数の軌道周回要素を備える回転部と、を備える前記走査システムと、C.前記標本を前記回転部の下で移動させるための位置決め機構と、を備えるレーザアブレーション装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一例示的実施形態による簡略化された走査システムを示す側面斜視図である。
【図2】図2(A)〜2(E)は、動作時の図1の例示的走査システムを示す簡略化された側面図である。
【図3】図3(A)〜3(E)は、動作時の図1の例示的走査システムを示す簡略化された上面図である。
【図4】本発明の代替実施形態による走査システムを示す簡略化された斜視図である。
【図5】本発明の別の代替実施形態による走査システムを示す簡略化された斜視図である。
【図6】図6(A)、6(B)は、本発明の別の代替実施形態による、コンベア部と回転部とをそれぞれ示す上面斜視図である。
【図7】図6(A)、6(B)のコンベア部と回転部とを含む組み立てられた走査システムを示す上面図である。
【図8A】本発明の別の実施形態による図7の走査システムを含む例示的な広領域高分解能高効率装置を示す側面図である。
【図8B】図7の走査システムの光路に配置された代替のダイクロイック素子またはビーム分割素子を示す簡略化された図である。
【図9A】動作時の図7の走査システムを示す部分上面図である。
【図9B】動作時の図7の走査システムを示す部分上面図である。
【図9C】動作時の図7の走査システムを示す部分上面図である。
【図9D】動作時の図7の走査システムを示す部分上面図である。
【図9E】動作時の図7の走査システムを示す部分上面図である。
【図10】図10(A)〜10(E)は、動作時の図7の走査システムによって生成される集束光路(focused light path)部分がたどる走査パターンを示す部分上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、例えば、広視野高分解能高効率の回転式顕微鏡を製造するのに利用することのできる走査システムにおける改善に関するものである。以下の説明は、当業者が、個々の用途およびその要件の状況において規定されるように本発明を実施し、使用することを可能にするために提示するものである。本明細書で使用する場合、「上方」や「下方」といった方向を示す用語は、説明目的で相対的位置を提示するためのものであり、絶対的な基準系を指定するためのものではない。加えて、「一体連結(された)」、「一体成形(された)」という句は、本明細書においては、単一成形または機械加工された構造の2つの部分の連結関係を記述するのに使用され、例えば、接着剤、ファスナ、クリップ、可動接合部などによって接合される2つの別々の構造を示す、(修飾語である「一体として」のつかない)「連結(された)」または「結合(された)」とは区別される。当業者には、好ましい実施形態に対する様々な改変が明らかになると考えられ、本明細書で定義する一般原理は、他の実施形態にも適用されることができる。したがって、本発明は、図示し、説明する個々の実施形態だけに限定されるべきものではなく、本発明には、本明細書で開示される原理および新規の特徴との整合性を有する最大限の範囲が与えられるべきである。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、固定光路部分に光源/受光器を設け、1つまたは複数の軌道周回要素を通過する光が標本を横切って系統的パターンとして走査されるように回転部の下に標本位置決め機構を設けることによる本明細書で示す走査装置のいずれかを利用した広視野高分解能高効率の回転式顕微鏡または走査装置が製造される。
【0011】
図1は、本発明の第1の簡略化された例示的実施形態による走査システム100を示す簡略化された斜視図である。動作可能な設定において利用されるとき、走査システム100は、固定光路部分LP1と、中間光路部分LP2と、走査光路部分LP3とを含む(破線で示される)光路LPに沿って進む平行光を伝播させるように働き、走査部分LP3は固定部分LP1と平行であり、固定部分LP1からオフセット距離Rだけ間隔を置いて配置されている。走査システム100に加えて、図1には、固定光路部分LP1に配置された一般化された静止装置50と、走査光路部分LP3の少なくとも一部分を遮断するように走査システム100の下に配置された標本(目標物、サンプル)60も示されている。装置50と標本60とは、説明のために示すものであり、添付の特許請求の範囲において特に指定されない限り、特許請求される走査システムの部分とされるべきものではない。
【0012】
図1の上部を参照すると、走査システム100は、固定された(静止した)第1の軸Z1を中心に回転するように配置されたコンベア部110を含む。コンベア部110は、一般に、平行関係に固定して維持され、所定の距離Sだけ間隔をおいて配置される第1の平坦な(平面的な)面130と、第2の平坦な面140とを含む。第1の面130と第2の面140とは、軸Z1に対して傾斜角θ(例えば、45°)で配置され、第1の面130と第2の面140とが第1の軸Z1を中心にひとまとまりとして回転するように、固定された回転軸またはその他の固定構造に回転可能に係合している。図2および図3を参照して後述するように、第1の面130と第2の面140とは、傾斜角θが軸Z1と第1の面130と第2の面140との間で維持されるように(すなわち、図1に示すように、第1の面130上の選択点Pが軸Z1を中心とする円形路C1をたどるように)、軸Z1を中心に回転するように配置されている。この構成では、例えば、固定光路部分LP1に沿って第1の軸Z1と平行に方向づけられる、装置50から発せられる平行光が、第1の面130から屈折され(方向変更され)、次いで、第2の面140によって再度屈折されて、固定部分LP1と平行であり、固定オフセット距離Rだけ変位されている光路の走査光路部分LP3上へと進む。本発明の一態様によれば、結果的に生じる構成は低費用のものである。というのは、コンベア部110の光学面(すなわち、第1の面130及び第2の面140)が、平板光学系を使用して実施され、そのため、湾曲した光学面に伴う高製造経費および低品質(すなわち、収差またはゆがみ)が回避されるからである。さらに、平板な表面130、140を使用して固定光路部分LP1から走査光路部分LP3へと光が方向変更されるため、走査システム100は、さらに後述するように、湾曲した光学面によって生じる収差またはゆがみなしで、静止装置50と可動要素との間の平行光の伝達を円滑に行わせる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、第1の面130と第2の面140とは、一体成形された、または別のやり方で一体連結された構造として製造される、低鉄ガラスや透明プラスチックなどを含む固体光学素子120の対向する面上に形成されている。光学素子120をこのように使用することにより、いくつかの利益が実現される。まず、光学素子120が固体であるために、第1の面130と第2の面140とが、永続的に、相互に望ましい固定された平行関係に位置合わせされた状態のままであり、よって、組立費用および保守費用が最小限に抑えながら、最適な光学的動作が維持される。さらに、気体/固体界面における光の損失も最小限に抑えられる。というのは、第1の面130と第2の面140との間には固体光学素子材料(例えば、低鉄ガラス)だけが位置するからである。代替実施形態では、第1の面130と第2の面140とを提供するために1つまたは複数の固体光学素子が組み立てられてもよいが、そのような複数部分構成は、最適な性能を確保するために余分な組立ておよび定期的保守を必要とする場合もある。
【0014】
当業者は、(固定光路部分LP1などに沿って)軸Z1と平行な方向で面130に当てて伝播される平行光ビームが、光学素子120内部で、光学素子120の屈折率、光学素子外部の媒体(空気)の屈折率、および傾斜角θによって決定される屈折角αで、第2の面140に向けて(すなわち、中間光路部分LP2に沿って)屈折され、次いで、第2の面140によって再度屈折され、入力方向と平行であるが、屈折角αと、第1の面130と第2の面140との間隔距離Sとによって決定されるオフセット距離R分だけずれた方向に(すなわち、走査光路部分LP3に沿って)進む平行光として光学素子120から現れることを理解するであろう。
【0015】
図1の下部を参照すると、走査システム100は、第2の軸Z2を中心に回転するように配置された軌道周回要素160(フィルタ、レンズ、別の反射もしくは屈折面、または顕微鏡対物レンズなど)を有する回転部150も含む。本発明の一態様によれば、第2の軸Z2は、第1の軸Z1と平行であり、第1の軸Z1から間隔をおいて配置されており(すなわち、同一直線上にはなく)、特に、固定光路部分LP1と同軸上に位置合わせされている。加えて、軌道周回要素160も、固定オフセット距離R(すなわち、固定光路部分LP1と走査光路部分LP3との距離)と等しい、第2の軸Z2からの固定半径方向距離のところに維持される。本発明の別の態様によれば、平行光が固定光路部分LP1に沿って第1の面130に当てて伝播されると、軌道周回要素160が、走査光路部分LP3上で伝播される平行光を受ける(すなわち、軌道周回要素160は、走査光路部分LP3と交差するように構成されている)ように、コンベア部110は第1の軸Z1に対して回転可能に位置決めされており、回転部150は第2の軸Z2に対して回転可能に位置決めされている。前述の構成では、このようなやり方での軌道周回要素160の位置決めは、図1に示すように、走査光路部分LP3が軌道周回要素160と交差する(例えば、軌道周回要素160を通過する)まで、第2の軸Z2を中心に(すなわち、コンベア部110を軸Z1に対して静止位置に維持しながら)軌道周回要素160を回転させることによって容易に行われる。
【0016】
本発明の別の態様によれば、コンベア部110と回転部150とには、コンベア部110と回転部150とを共通の回転速度で回転させるために、公知の技法を使用して、ある機構(例えば、モータ180)が動作可能に連結されている(例えば、コンベア部110と回転部150とが、どちらもが毎分100回転で回転するような同期回転として固定される)。軌道周回要素160を走査光路部分LP3と位置合わせした後、コンベア部110と回転部150とを共通の回転速度で回転させることにより、走査光路部分LP3上を伝播される光は、軌道周回要素160と共に軸上にあり続ける(例えば、通過し続ける)。すなわち、軌道周回要素160は、オフセット距離Rのところで第2の軸Z2を中心に軌道上を周回し(すなわち、図1に示す円形路C2に沿って進み)、走査光路部分LP3上を伝播される平行光は、同軸から半径Rのところの固定光路部分L1を中心に同一軌道をたどるため、回転部150が第2の軸を中心に回転するのと同じ回転速度でコンベア部110を第1の軸Z1を中心に回転させることにより、走査光路部分LP3に沿って方向づけられる平行光は、軌道周回要素160と共に軸上に(交差した状態に)ある。このようにして、本発明は、平行光を1つまたは複数の軌道周回要素160の光軸に沿って方向づけさせるように、固定装置50(例えば、レーザなどの光源、イメージセンサなどの受光器)まで/から平行光を伝達することのできる走査システムを提供する。
【0017】
図2(A)〜2(E)および図3(A)〜3(E)は、第1の面130と第2の面140とが、軌道周回要素160が第2の軸Z2を中心に回転されるのと同じ(共通の)回転速度で第1の軸Z1を中心に回転されるときに、走査光路部分LP3がどのようにして軌道周回要素160と共に軸上にあるかを示す簡略化された図である。図2(A)〜2(E)は、様々な回転位置における側方から見た走査システム100を示す簡略化された図であり、図3(A)〜3(E)は、同じ回転位置における上方から見た走査システム100を示す簡略化された図である。添え字「tx」(「x」は数)は、第1の面130と第2の面140とが第1の軸Z1を中心に回転され、軌道周回要素160が第2の軸Z2を中心に回転される際の増分時間経過を示すのに使用されている。例えば、図2(A)の参照符号「120(t0)」は、初期の時間t0に第1の位置にある光学素子120(図1参照)を指示し、図2(B)の参照符号「120(t1)」は、時間t0に続く時間t1に第2の位置にある光学素子120を指示する。
【0018】
図2(A)と図3(A)には、初期位置にあるコンベア部110(t0)と回転部150(t0)とが示されている。平行光は、光学素子120(t0)を通る破線で示されており、固定光路部分LP1は第1の面130(t0)と交差し、走査光路部分LP3(t0)は第2の面140(t0)と交差する。図3(A)の上面図に示されるように、コンベア部110(t0)は、点P(t0)が3時の位置に位置するように第1の軸Z1に対して回転により位置決めされている。加えて、回転部150(t0)は、第2の軸Z2が固定光路部分LP1と同一直線上にあるように位置決めされ、軌道周回要素160(t0)は、最初に、走査光路部分LP3(t0)が軌道周回要素160(t0)と交差するように回転によって位置決めされている。
【0019】
図2(B)と図3(B)には、コンベア部110(t1)と回転部150(t1)とが反時計回り方向に1/4回転だけ回転した後の時間t1におけるコンベア部110(t1)と回転部150(t1)が示されている。固定光路部分LP1、第1の軸Z1および第2の軸Z2は、図2(A)と図3(A)とに示すのと同じ位置のままであり、したがって、時間添え字を含まないことに留意されたい。図3(B)の上面図に示すように、コンベア部110(t1)は、点P(t1)が第1の軸Z1に対して12時の位置に位置するように、第1の軸Z1に対して回転により位置決めされている(すなわち、点Pは第1の軸Z1を中心とする円形路に沿った部分C1(t1)を進んだ)。その結果、第1の面130(t1)と第2の面140(t1)とは、光を、固定光路部分LP1から軸Z2に対して12時の位置に位置する走査光路部分LP3(t1)へと屈折させる(すなわち、走査部分LP3は、第2の軸Z2を中心とする円形路に沿った部分C2(t1)を進んだ)。同時に、軌道周回要素160(t1)は、走査部分LP3と同じオフセット距離のところで軸Z2を中心に回転するように配置されるため、軌道周回要素160(t1)は、走査部分LP3(t1)が軌道周回要素160(t1)と交差するように、軸Z2に対して同じ12時の位置に回転により位置決めされている。
【0020】
図2(C)〜2(E)および図3(C)〜3(E)には、各部が引き続き軸Z1と軸Z2とを中心に回転する際の後続の回転位置が順次示されている。図2(C)と図3(C)には、コンベア部110(t2)と回転部150(t2)とが反時計回り方向に半回転だけ回転した後の時間t2におけるコンベア部110(t2)と回転部150(t2)とが示されており、図3(C)には、第1の軸Z1に対して9時の位置への点P(t2)の進行が示されており、軌道周回要素160(t2)と走査部分LP3(t2)とは、走査部分LP3(t2)が軌道周回要素160(t2)と交差するように、軸Z2に対して同じ9時の位置に位置決めされている。図2(D)と3(D)には、コンベア部110(t3)と回転部150(t3)とが反時計回り方向に3/4回転だけ回転した後の時間t3におけるコンベア部110(t3)と回転部150(t3)とが示されており、図3(D)には、第1の軸Z1に対して6時の位置への点P(t3)の進行が示されており、軌道周回要素160(t3)と走査部分LP3(t3)とは、軸Z2に対して同じ6時の位置に位置決めされている。最後に、図2(E)と3(E)には、コンベア部110(t4)と回転部150(t4)とが反時計回り方向にまるまる360°回転した後の時間t4におけるコンベア部110(t4)と回転部150(t4)とが示されており、図3(E)には、その元の位置にある点P(t4)が示されており、軌道周回要素160(t4)と走査部分LP3(t4)とは、軸Z2に対して同じ3時の位置に位置決めされている。
【0021】
図4は、本発明の代替の実施形態による走査システム100Aを示す簡略化された斜視図である。(図1〜3を参照して前述した)一般化された走査システム100と同様に、走査システム100Aは、第1の軸Z1を中心に回転するように配置された第1の面130Aと第2の面140Aとを含むコンベア部110Aと、固定光路部分LP1と同一直線上にある第2の軸Z2を中心に回転するように配置された回転部150Aとを含む。前述し、また光源/受光器50Aから延在する平行線で示すように、第1の面130Aと第2の面140Aとによって作られる平板光学系は、固定光路部分LP1と走査光路部分LP3との間の平行光の伝播を円滑に行わせる(すなわち、光は、光源/受光器50Aと回転部150Aとの間に延在する光路の各部分LP1、LP2およびLP3に沿って平行のままである)。
【0022】
本実施形態によれば、走査システム100Aは、回転部150Aの軌道周回要素が、顕微鏡対物レンズ160Aの光軸OAが走査光路部分LP3と同一直線上に配置されると共に、顕微鏡対物レンズ160Aが、走査部分LP3の平行光を、標本60Aの表面上で円形走査路C3をたどる合焦点領域LP4内に合わせるように、適切な回転構造(例えば、プレート170A)上に取り付けられた、40倍対物レンズなどの顕微鏡対物(microscope objective)レンズ160Aを備えるという点で一般化された走査システム100と異なる。すなわち、前述の実施形態と同様に、顕微鏡対物レンズ160Aは、固定光路部分LP1と走査光路部分LP3との間の横方向のオフセット距離と等しい第2の軸Z2からの半径方向距離Rのところに配置され、顕微鏡対物レンズ160Aは、第1の面130Aと第2の面140Aとが同じ速度で第1の軸Z1を中心に回転される間に、第2の軸Z2を中心に回転され、顕微鏡対物レンズ160Aは、顕微鏡対物レンズ160Aが第2の軸Z2を中心として進む円形路C2の少なくとも一部分の間、顕微鏡対物レンズ160Aの光軸OAと同一直線上にあるように位置合わせされる。この構成は、高効率高分解能で、しかもすべての顕微鏡を損なうことがなく、顕微鏡の大面積への拡張を可能にする。すなわち、固定光路部分と走査光路部分との間の光の伝達が完全に平板光学系を用いて達成される(すなわち、元来の顕微鏡光路において色収差または分散収差を導入するはずのレンズまたは曲面がない)ため、光コリメーション、偏光、位相、スペクトル成分、軸方向性能、および標準的顕微鏡のための事実上すべての目的が、本発明の走査システムの影響を受けずにすみ、そのため、標準的顕微鏡に利用できるすべての画像化方法を、本発明の走査システムを利用する回転式顕微鏡においても利用することができる。特に、本発明は、いくつもの蛍光チャネルを可能にし、共焦点分解能を含む、オイルエマージョンを伴わないすべての顕微鏡分解能をサポートし、自己蛍光問題の低雑音除去を示し、ケーラー(Kohler)、暗視野、ラインベルク(Rheinberg)、位相差、偏光、DIC、スペクトルといったあらゆる種類の顕微鏡照射技術を可能にし、最終的には、画像取込み速度が電子サブシステムの容量とスループットによってしか制限されない、光捕捉効率の非常に高い広い走査野を円滑に実施する広視野顕微鏡の製造を容易にする。さらに、走査システム100Aは、従来のシステムにおいて必要とされる中間走査レンズを無くして、走査工程におけるレーザと目標物基板との間に単純で変化しない光路を設けることによって、従来のレーザアブレーション装置に伴う問題に対処するレーザアブレーション装置を製造するのに利用することもできる。
【0023】
図5は、本発明の代替実施形態による走査システム100Bを示す簡略化された斜視図である。(図4を参照して前述した)一般化された走査システム100Aと同様に、走査システム100Bは、第1の軸Z1を中心に回転するように配置された第1の面130Bと第2の面140Bとを含むコンベア部110Bと、固定光路部分LP1と同一直線上にある第2の軸Z2を中心に回転するように配置された軌道周回要素160Bを含む回転部150Bとを含む。
【0024】
本実施形態によれば、走査システム100Bは、第1の面130Bと第2の面140Bとが、屈折面ではなく反射(すなわち、鏡)面であるという点で、前述の走査システムとは異なる。特に、第1の鏡面130Bと第2の鏡面140Bとはどちらも軸Z1に対して45°の角度で平行に配置され、支持構造120Bによって固定された平行関係において支持されており、支持構造120Bは、第2の鏡面140Bによって中間光路部分LP2から走査光路部分LP3へと反射される平行光の通過を可能にするための開口122Bを備える。前述の屈折光実施形態と同様に、第1の鏡面130Bと第2の鏡面140Bとによって作り出される平板光学系は、(光路に沿った平行線で示すように)固定光路部分LP1と走査光路部分LP3との間の平行光の伝播を円滑化する。
【0025】
走査システム100Bは支持構造120Bを利用して第1の鏡面130Bと第2の鏡面140Bとを維持するが、他の構成も可能である。例えば、平行な鏡面130Bと140Bとは、図1を参照して前述したのと同様に固体光学素子(例えば、プリズム)の対向する面上に(すなわち、鏡面130Bと140Bとが素子内部を向くように)形成され、それによって、前述の自己整合の利益が提供されてもよい。
【0026】
図6(A)および6(B)は、それぞれ、本発明の別の実施形態によるコンベア部110Cと回転部150Cとを示す斜視図である。
【0027】
図6(A)を参照すると、コンベア部110Cは、多面光学素子120Cと環状構造125Cとを含む。多面光学素子120Cは、第1の軸Z1を中心に連続して配置された所定数(この実施形態では8個)の第1の鏡(反射)面130C−1〜130C−8を含み、隣接する第1の鏡面の各対(例えば、130C−1と130C−8)は、角度の付いた角(角132C−18など)によって隔てられている。環状構造125Cは、環状ベース構造126C上に配列され、多面光学素子120Cの周りに配置されたブロック127C−1〜127Cー8上にそれぞれ配置された同じ所定数(すなわち、本実施形態では8個)の第2の鏡(反射)面140C−1〜140C−8を含む。多面光学素子120Cと環状構造125Cとは、多面光学素子120Cと環状構造125Cとの間に空間122Cがあり、多面光学素子120Cと環状構造125Cとが固定的関係において第1の軸Z1を中心に回転するように配置されるように、スポーク(不図示)や他の連結機構などによって一体連結されている。特に、多面光学素子120Cと環状構造125Cとは、各第1の鏡面130C−1〜130C−8が、関連付けられる第2の鏡面140C−1〜140C−8と平行に対面するように配置されている(例えば、第1の鏡面130C−1は、関連付けられる第2の鏡面140C−1と平行に対面し、第1の鏡面130C−2は関連付けられる第2の鏡面140C−2と平行に対面する)。さらに、多面的光学素子120Cと環状構造125Cとの一体連結により、関連付けられる鏡対(例えば、第1の鏡面130C−1と関連付けられる第2の鏡面140C−1)は、多面光学素子120Cと環状構造125Cとがひとまとまりとして軸Z1を中心に回転されるとき、この固定された平行配置にある。
【0028】
図6(B)を参照すると、回転部150Cは、円形支持板170C上に、第2の軸Z2を中心とする円形パターンとして、固定的関係において配置された、同じ所定数(すなわち、この実施形態では8個)の軌道周回顕微鏡対物レンズ(要素)160C−1〜160C−8を含み、各顕微鏡対物レンズ160C−1〜160C−8は、第2の軸Z2と平行に位置合わせされた関連付けられる光軸を有する。
【0029】
図7は、組み立てられた状態の走査システム100Cを示す上面図であり、回転部150Cはコンベア部110Cの下方に配置されており、軸Z1と軸Z2とは、回転部150Cとコンベア部110Cとが対応する回転された位置にあるときに、各軌道周回要素(例えば、軌道周回要素160C−1)が対応する第1の鏡面(例えば、第1の鏡面130C−1)とその関連付けられる第2の鏡面(例えば、第2の鏡面140C−1)とから平行光を受光するように動作可能に位置決めされるように、固定的に位置決めされている。詳細には、上記平行光が軸Z2と同一直線上の方向で(すなわち、図7のシート内に)第1の鏡面130C−1に当てて伝播されると、平行光が第1の鏡面130C−1によって関連付けられる第2の鏡面140C−1へと反射され、次いで、第2の鏡面140C−1により走査光路部分LP3に沿って、軌道周回顕微鏡対物レンズ160C−1の貫通光軸OAと同一直線上の方向に反射されるように、コンベア部110Cは、軸Z1を中心に回転するように配置されており、回転部150Cは、軸Z2を中心に回転するように配置されている。
【0030】
図8Aに、(前述の)多重化走査システム100Cを、光源/受光装置50C(レーザやイメージセンサなど)と、集束光路部分LP4上を伝播される集束光が標本60Cの表面に当たるよう方向づけられるように標本60Cを走査システム100Cの下方で位置決めするように働く位置決め装置(例えば、X−Yテーブル)190Cと組み合わせた、簡略化された広視野高分解能高効率装置200(例えば、回転式顕微鏡やレーザアブレーション装置)を示す。例えば、動作時のある選択された時点において、装置50Cによって生成されるレーザ(平行)光は、固定光路部分LP1に沿って方向づけられ、第1の鏡面130C−1により中間光路部分LP2に沿って第2の鏡面140C−1へと反射され、次いで、第2の鏡面140C−1はこの光を走査光路部分LP3に沿って顕微鏡対物レンズ160C−1へと反射し、顕微鏡対物レンズ160C−1は受け取った平行光を集めて、標本60Cの表面上に焦点の合った集束光路部分LP4を形成する。これとは逆に(または同時に)、ある選択された時点において顕微鏡対物レンズ160C−1によって捕捉された標本60Cの表面の拡大像は、走査光路部分LP3に沿って第2の鏡面140C−1に方向づけられ、第2の鏡面140C−1はその光を中間光路部分LP2に沿って第1の鏡面130C−1へと反射し、次いで第1の鏡面130C−1はその光を受光器(例えば、装置50Cや、ビームスプリッタまたは他の装置によって固定光路部分LP1に光学的に結合された別の装置など)へと反射する。以下の説明で示すように、コンベア部110Cと回転部150Cとを、モータ180Cを使用して前述のように軸Z1と軸Z2とを中心に回転させながら、所望の標本上に集束光路部分LP4を当てると共に、X−Yテーブル190Cを使用して標本60Cの位置を周期的に移動させることによって、標本60Cの表面を、広視野高分解能高効率顕微鏡を実現するために、または、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる「SOLAR CELL PRODUCTION USING NON-CONTACT PATTERNING AND DIRECT-WRITE METALLIZATION」という名称の本発明の譲受人に譲渡された同時係属の米国特許出願第11/336,714号明細書に記載されているような表面アブレーションを実行するために系統的に走査することができる。
【0031】
入力または出力走査用の光マルチプレクサとして使用されるとき、中間光路LP2は複数の光路に分割することができる。例えば、図8Bの簡略化された図に示すように、ビームスプリッタ136と137とは、複数のLP2光路を生じさせるように光路内に配置することができる。この構成では、光は、上部光路LP2Aまたは下部光路LP2Bの2つの経路を経由してLP1からLP3まで横切ることができる。代替として、ビームスプリッタ136と137とは、周波数または偏光依存とし、光を上部経路の一方向と下部経路の他方向とに進ませることもできる。明らかに、3つ以上の経路を利用することもできる。最終的には、矢印で示される各光透過方向に固有の任意選択のフィルタ、偏光子、または他の光学素子138、139を、上部光路LP2Aと下部光路LP2Bとに配置して、光処理を円滑化することができる。
【0032】
開口部ごとに異なる光品質が必要とされる用途では、装置の各アーム(LP2またはLP3)を固有のものとすることができる。共通の光品質が必要とされる用途では、光限定(qualifier)光学系を共通光路LP1に配置することができる。
【0033】
図9A〜9Eおよび図10(A)〜10(E)には装置200の動作が示されており、図9A〜9Eは、6つの連続する時間周期における走査システム100Cの動作位置を示す部分上面図であり、図10(A)〜10(E)は、同じ6つの時間周期における標本60Cを示す上面図である。添え字「tx」(「x」は数)は、コンベア部110Cが第1の軸Z1を中心に回転し、回転部150Cが第2の軸Z2を中心とする円形路に沿って回転する際の増分時間経過を示すのに使用されている。
【0034】
図9Aには、時間t0において初期位置にあるコンベア部110C(t0)と回転部150C(t0)とが示されている。固定光路部分LP1に沿って方向づけられる平行光は、上面図において、第1の鏡面130C−1の第1の領域と交差する円として示されており、中間光路部分LP2(t0)においては、第1の鏡面130C−1(t0)から第2の鏡面140C−1(t0)まで延在する破線で示されており、第2の鏡面140C−1(t0)から平行光は、走査光路部分LP3(t0)に沿って顕微鏡対物レンズ160C−1(t0)を通るように方向づけられる。図9Aの上面図に示すように、コンベア部110C(t0)と回転部150C(t0)とは、中間光路部分LP2(t0)が、顕微鏡対物レンズ160C−1(t0)と交差するように第1の角度β1で第1の鏡面130C−1によって反射されるように、回転により位置決めされている。
【0035】
図10(A)には、図9Aに示すのと同じ時点において標本60C(t0)上に顕微鏡対物レンズ160C−1によって生成される集束光路部分LP4(t0)の位置が示されている。前の走査路62Cは参考として破線で示されている。
【0036】
図9Bには、時間t0後の短い周期である時間t1におけるコンベア部110C(t1)と回転部150C(t1)とが示されている。この時点において、コンベア部110C(t1)と回転部150C(t1)とは、固定光路部分LP1が第1の鏡面130C−1(t1)の中央領域に当てて方向づけられるように軸Z1と軸Z2とを中心に回転により再位置決めされており、第1の鏡面130C−1(t1)と第2の鏡面140C−1とは、中間光路部分LP2(t1)が、走査光路部分LP3(t1)が顕微鏡対物レンズ160C−1(t1)の光軸OA(t1)と同一直線上にあるように同じ速度で回転している顕微鏡対物レンズ160C−1(t1)と交差するように第2の角度で(すなわち、図においてほぼ水平に)反射されるような角度を有する。走査光路部分LP3(t0)に沿って進む光は、多面光学素子120C(t0)と環状構造125C(t0)との間の開口122Cの対応する部分を通過することに留意されたい。
【0037】
図10(B)には、図9Bに示す時点において顕微鏡対物レンズ160C−1によって生成される集束光路部分LP4(t1)の位置が示されている。詳細には、時間t0と時間t1の間に、集束光路部分LP4(t1)は、破線矢印で示される領域を走査しており、この時点においては、標本60C(t1)の中央部分上に配置されている。
【0038】
図9Cには、後続の時間t2におけるコンベア部110C(t2)と回転部150C(t2)とが示されている。この時点において、コンベア部110C(t2)と回転部150C(t2)とは、固定光路部分LP1が第1の鏡面130C−1(t2)の上部領域に当てて方向づけられるように軸Z1と軸Z2とを中心に回転によって再位置決めされており、第1の鏡面130C−1(t2)と第2の鏡面140C−1(t2)とは、走査光路部分LP3(t2)が光軸OA(t2)と同一直線上にあるように同じ速度で回転している顕微鏡対物レンズ160C−1(t2)と交差するように、中間光路部分LP2(t1)が第3の角度β2で(すなわち、図において下方に)反射されるような角度を有する。
【0039】
図10(C)には、図9Cに示す時点において顕微鏡対物レンズ160C−1によって生成される集束光路部分LP4(t2)の位置が示されている。詳細には、時間t0と時間t2の間に、集束光路部分LP4(t2)は、破線矢印で示される領域を走査しており、この時点においては、標本60C(t2)の表面全体を横切って走査される。
【0040】
図9Dおよび図10(D)には、コンベア部110C(t3)と回転部150C(t3)とが、固定光路部分LP1が第1の鏡面130C−1と130C−2とを隔てる角132C−12に当てて方向づけられるように、軸Z1と軸Z2とを中心に回転によって位置決めされる時点t3が示されている。この転移点において、光は、第2の鏡面のいずれへも確実に反射されないが、一部の光が、2つの隣接する対物レンズまたは開口を通って伝播され、走査効率を制限する。すなわち、走査光路部分の「スポット」が第1の鏡面130C−1と130C−2の間にある(すなわち、角132C−12に当てて方向づけられている)転移周期においては、一部のエネルギーだけが隣接する顕微鏡対物レンズ160C−1と160C−2とから与えられ/受け取られ、それによって潜在的に、標本60(t3)の側端部に隣接して(例えば、対物レンズ160C−1によって生成される完了直後の走査路の最後部や、対物レンズ160C−2によって生成される、後述する次の走査路の先頭などにおいて)2つの「部分エネルギー」(アーチファクト)領域を生じる可能性がある。図10(D)に示すように、この転移周期は、例えば、標本60C(t3)を1増分距離X1だけ移動させて後続の走査のために標本60C(t3)を位置決めするのに利用されてもよい。
【0041】
図9Eには、コンベア部110C(t4)と回転部150C(t4)とが、固定光路部分LP1が第2の鏡面130C−2(t4)の領域に当てて方向づけられるように、軸Z1と軸Z2とを中心とする回転により再位置決めされた後の、後続の時間t4とt5とにおけるコンベア部110C(t4)と回転部150Cとが示されており、第1の鏡面130C−2(t4)と関連付けられる第2の鏡面140C−2(t4)とは、この場合、中間光路部分LP2(t4)が、走査光路部分LP3(t4)は顕微鏡対物レンズ160C−2(t4)の光軸OA(t4)と同一直線上になるように必要な位置まで回転している顕微鏡対物レンズ160C−2(t4)と走査光路部分LP3(t4)が交差するような角度で反射されるような角度を有する。図10(E)には、後続の走査路の開始点を示す図9Eに示す時点において顕微鏡対物レンズ160C−2によって生成される集束光路部分LP4(t4)の位置が示されている。
【0042】
図9A〜9Eおよび図10(A)〜10(E)を参照して説明した動作を繰り返すことにより、当業者は、どのようにして多重化走査システム100Cを利用して広視野高分解能高効率レーザアブレーション装置を製造することができるかを理解するであろう。
【0043】
本発明は、いくつかの具体的実施形態を参照して説明されているが、本発明の進歩的特徴が他の実施形態にも適用することができ、それらの実施形態はすべて本発明の範囲内に該当すべきものであることが、当業者には明らかであろう。
【0044】
例えば、この多重化走査顕微鏡は、8個の顕微鏡対物レンズを参照して説明されているが、何個(例えば、2、10、25個)の対物レンズが利用されてもよい。
【0045】
加えて、図7を参照すれば、すでに説明した位置の間に配置される中間開口部または対物レンズのために、ロータ部上に空間が設けられることができることが明らかである。これらの位置には、追加の対物レンズ、開口部または装置のセットを取り付けることができる。ロータ部に対するコンベア部の固定された相対位相角を事前調整することによって、走査のためにこれら代替の装置セットを使用することができる。例えば、40倍対物レンズのセットを前述のように位置決めすることができ、別の10倍対物レンズのセットを、中間に配置することもできる。40倍像を獲得するために第1の位相角で1回転または複数回転の走査を行うことができ、次いで、この位相角を10倍対物レンズと符合するように調整することができ、さらに走査を行って10倍対物レンズからの像を獲得することができる。
【0046】
さらに、走査システムは、広視野動画顕微鏡を製造するのに利用することもできる。これは、カメラをドリフト走査モードまたは(当分野で周知の)時間遅延イメージング(TDI)でLP1に設定すること、および1回転の間にアーム長を変位させて(stagger)広視野像の隣接部分を走査することを含むことになる。次いで、毎秒30回転で回転することにより、動画による表示または記憶に適した、高分解能で広視野の1組のリアルタイム画像を作成することができる。
【0047】
本発明に対する別の可能な改変は、広視野インターレース共焦点顕微鏡を製造することとすることができる(空隙イメージングだけに限る、オイルエマージョンなし)。この構成は、分解能を60倍、0.95NAで約0.3umまで拡張するはずである。像をピンホールに通して共焦点顕微鏡を生じさせることができる。アームを変位させると共に、個々のアームの焦点も変位させることによって、3次元体積を定義し、画像化することもできる。
【0048】
さらに、0.3umピンホールの2次元配列を定義し、固定光路LP1の戻り部分に配置することもできる。これらのピンホールは、低速の方向に0.15um間隔に配置されて、ナイキスト基準を達成するが、高速の方向に千鳥状に配置されて、任意の隣接する穴間に少なくとも穴直径10個分の間隔を維持することになる。1024穴の配列が、低速の走査方向で標本の154umをカバーすることになる。結果として生じる光は、読出しのためにドリフト走査またはTDIモードで1024×1280ビデオCCDの面上に画像化されることもできる。
【0049】
回転式顕微鏡の別の可能な用途は、半導体およびPC基板検査顕微鏡である。
【0050】
本発明の別の可能な用途は、下から、ケーラー照射特性を有する2次的同期的下部構造コンベア/回転子を取り付けることによって、回転式顕微鏡のためのケーラー照射系を提供することである。
【0051】
本発明の別の可能な用途は、下から、微分干渉コントラスト(DICM)照射特性を有する2次的同期的下部構造コンベア/回転子を取り付けることによって、回転式顕微鏡のためのDICM照射系を提供することである。
【0052】
本発明の別の可能な用途は、空間分解スペクトル分析回転式顕微鏡である。この用途では、多陰極PMT上に光を配列して走査される各点ごとのスペクトルを取得するために、光路の固定部分において回折格子を使用することになる。
【0053】
回転式顕微鏡の別の可能な適応は、広視野走査プロフィルメータ(Profilimeter)である。これは、回転部の外周の周りに各対物レンズのZ軸焦点高さを互い違いに配置する(stagger)ことによって実現することができる。1回転でいくつかの焦点深度を取り込み、複数回転ではより多くの深度を取り込むことができる。画像処理により広視野にわたるピークコントラスト対深度が取得され、深度情報対位置が獲得されることになる。
【0054】
回転式顕微鏡の別の可能な用法は、回転部の外周の周りに各対物レンズのZ軸焦点高さを互い違いに配置して、試料の異なるスライスを画像化することによって、焦点顕微鏡の拡張深度を実現することである。1回転でいくつかの焦点深度を取り込み、複数回転ではより多くの深度を取り込むことができる。画像処理により広視野にわたるピークコントラスト対深度が取得され、深度にかかわらず合焦点画像が表示されることになる。
【0055】
本発明に対する1つの可能な改変は、回転部の出力のところに45度の鏡を配置し、回転軸から外に向かって半径方向に光路を方向変更することを伴う。かかるシステムは、ガルボスキャナ(galvo−scanner)の特性に似るが、現在のガルボスキャナをはるかに超える効率と走査速度を有するものになるはずである。
【0056】
本発明に対する別の可能な改変は、顕微鏡対物レンズを、投影光学系と適合する光学系と、カラー表示と適合する単色または多色の光源と置換することを伴う。かかる組み合わせは、従来のガルボベースの設計のものを超える光学的効率と多重化柔軟性とを提供する可能性がある。
【0057】
本発明に対する別の可能な改変は、顕微鏡対物レンズを望遠鏡光学系で置換することを伴う。かかる入力装置は、従来のガルボベースの設計のものを超える光学的効率と多重化柔軟性とを提供することができる。
【0058】
本発明に対する別の可能な改変は、出力経路内にビームスプリッタを配置すること、およびわずかな光を方向変更して、画像バッファに出入りするデータをクロック制御するのに使用することのできる回折格子クロックに送ることを伴う。これは、多くのラスタシステムを悩ますモータの乱調、走査の非線形性、または走査線ジッタを無くすのに役立つことができる。
【0059】
本発明の別の可能な用法は、回転する光路の入力開口部に方向づけられた回転部の走査の弧に沿って光源を配置することを伴う。光路の固定部分は、高速、高スループットで出されるオーダにおいてこれらの光源に繰り返し接近する。光源が変調される場合、それもまた単一の光路に伝達される。光源は、光ファイバまたは光学繊維束ならびにレーザの出力とすることができる。
【0060】
本発明に対する別の可能な改変は、回転部の回転を停止し、これを静止光路として使用することである。これは、例えば、高品質顕微鏡と回転式顕微鏡とを同じフォームファクタとして使用することを可能にする。
【0061】
本発明に対する別の可能な改変は、軸Z1の周りの代替点における関連付けられる回転式光学系と共に2本以上の軸Z2を配置することである。2本の軸Z2は、例えば、ステレオスキャナや、コンベア部の外周の周りに2つの標本検査部を設置することを可能にする。
【0062】
本発明の別の可能な用途は、本発明を、希少細胞を見つけるための走査サイトメータに使用することである。例えば、488nmで照射されるレーザを、ダイクロイックミラーを用いて固定光路に挿入して、8マクロメートルのスポットを有する顕微鏡対物レンズを通して標本をラスタパターンで照射することができる。続いて希少細胞目標物から発せられる蛍光が顕微鏡対物レンズによって同時に集められ、ダイクロイックスプリッタと蛍光フィルタとを通して光電子増倍管(PMT)に送り返されて、希少細胞が検出される。標準蛍光顕微鏡技術を使用して複数の目標物からの複数の発光周波数を捕捉するために数本のPMTを使用することができる。このシステムは、光学繊維束捕捉技術によって生じる自己蛍光を無くし、フローサイトメータよりずっと高速のはずである。
【0063】
さらに、LP1においていくつかの異なるレーザ周波数を挿入し、個々のアーム上に固有の刺激および反応フィルタを配置することにより標本上の刺激および反応周波数を選択的に許容/阻止することによって、複数レーザ刺激および発光蛍光回転式顕微鏡を実施することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定光路部分と、前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分からオフセット距離だけ間隔をおいて配置される走査光路部分とを含む光路に沿って平行光を伝播させる走査システムであって、
前記固定光路部分と平行な第1の軸を中心に固定された平行関係において回転するように配置された第1の面と第2の面とを含むコンベア部であって、前記平行光が前記固定光路部分に沿って前記第1の面に方向づけられると、前記平行光が前記第1の面によって方向変更されて前記第2の面へ向けられ、次いで、前記第2の面によって方向変更されて前記走査光路部分に沿って進むように、前記第1の面と前記第2の面とが所定の距離だけ間隔をおいて配置されると共に前記第1の軸に対して所定の角度で傾いている、前記コンベア部と、
前記固定光路部分と同一直線上にある第2の軸を中心に軌道上を周回すると共に前記第2の軸から前記オフセット距離のところに配置された軌道周回要素を含む回転部と、
を備える走査システム。
【請求項2】
標本の拡大像を生成するための広視野高分解能高効率回転式顕微鏡であって、
A. 固定光路部分と、前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分からオフセット距離だけ間隔をおいて配置される走査光路部分とを含む光路に沿って平行光を伝播させる多重化走査システムであって、
a. コンベア部であって、
前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分と同一直線上にない第1の軸を中心に回転するように配置された複数の第1の反射面を含む多面光学素子と、
前記多面光学素子と固定された関係において前記第1の軸を中心に回転するように配置された環状構造であって、前記環状構造は、前記多面光学素子を取り囲むと共に前記第1の反射面各々が複数の第2の反射面のうちの関連する第2の反射面と平行に対面するように位置決めされる前記複数の第2の反射面を含み、前記平行光が、前記固定光路部分と前記走査光路部分との間において、前記第1の反射面のうちの1つと該第1の反射面のうちの1つに関連する第2の反射面とによって反射される、前記環状構造と、
を備える前記コンベア部と、
b. 前記固定光路部分と同一直線上にある第2の軸を中心とする円形パターンに配置されると共に前記第2の軸から前記オフセット距離のところに配置された複数の軌道周回顕微鏡対物レンズを備える回転部と、
を備える前記多重化走査システムと、
B. 前記標本を前記回転部の下で移動させるための位置決め機構と、
を備える回転式顕微鏡。
【請求項3】
標本の表面から材料をアブレーションするための広視野高分解能高効率レーザアブレーション装置であって、
A. 固定光路部分に沿って平行光を方向づけるように配置されたレーザと、
B. 光路に沿って前記平行光を伝播させる多重化走査システムであって、
a. コンベア部であって、
前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分と同一直線上にない第1の軸を中心に回転するように配置された複数の第1の反射面を含む多面光学素子と、
前記多面光学素子と固定された関係において前記第1の軸を中心に回転するように配置された環状構造であって、前記環状構造は、前記多面光学素子を取り囲むと共に前記第1の反射面各々が複数の第2の反射面のうちの関連する第2の反射面と平行に対面するように位置決めされた前記複数の第2の反射面を含み、前記固定光路部分に沿って方向づけられる前記平行光が、前記第1の反射面のうちの1つにより該第1の反射面と関連する第2の反射面へと反射され、前記固定光路部分と平行であると共に前記固定光路部分からオフセット距離だけ間隔をおいて配置される走査光路部分に沿って前記関連する第2の反射面により反射される、前記環状構造と、
を備える前記コンベア部と、
b. 前記固定光路部分と同一直線上にある第2の軸を中心とする円形状に配置されると共に前記第2の軸から前記オフセット距離のところに配置された複数の軌道周回要素を備える回転部と、
を備える前記走査システムと、
C. 前記標本を前記回転部の下で移動させるための位置決め機構と、
を備えるレーザアブレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−180592(P2011−180592A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39667(P2011−39667)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】