説明

軌道走行可能な作業車両のガイド輪昇降機構

【課題】鉄道用レール案内用のガイド輪を設け、鉄道用レールに沿って走行できるようにしたクローラ式走行装置を有する作業車両においては、前後のガイド輪にそれぞれ昇降機構を設けていた。
【解決手段】クローラ式走行装置3・3の前後両側に鉄道用レール走行用ガイド輪4F・4F、4R・4Rを備える作業車両1において、ガイド輪4F・4F、4R・4Rを支持する前後のアーム29F・29F、29R・29Rの枢軸27F、27Rをクローラ式走行装置3・3の左右のトラックフレーム11・11間に横架し、該前後の枢軸27F、27R間に前後のガイド輪4F・4F、4R・4Rを昇降する昇降機構31を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道(鉄道用レール)上を走行可能な多目的作業車両に関し、より詳細には鉄道用レールに沿って走行できるように案内するためのガイド輪昇降機構に関する。
【0002】
従来からクローラ式走行装置を有するバックホーが鉄道用レール上を走行して作業することは行われており、鉄道用レールに沿って走行できるように、走行装置のトラックフレームより前方及び後方にアームを突出し、該アームの先端の左右両側に鉄道用レール案内用のガイド輪を回転自在に取り付けて、該アームは油圧シリンダ等により昇降可能に構成していた(特許文献1、特許文献2参照)。そして、鉄道用レール上を走行するときにはアームを下降させてガイド輪を鉄道用レール上に沿わせるように載置し、鉄道用レール以外の路上等を走行する場合にはアームを上昇させて、ガイド輪を鉄道用レールから離すようにしていた。
【0003】
【特許文献1】特開2003−63223号公報
【特許文献2】特開昭63−46905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成においては、ガイド輪を昇降させるための油圧シリンダ等の昇降機構は前後それぞれ別々に設けていた。よって、部品点数が多くなり、コストがかかるという不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、クローラ式走行装置の前後両側に鉄道用レール走行用ガイド輪を備える作業車両において、ガイド輪を支持する前後のアームの枢軸をクローラ式走行装置の左右のトラックフレーム間に横架し、該前後の枢軸間に前後のガイド輪を昇降する昇降機構を配置したものである。
【0007】
請求項2においては、前記昇降機構を、前側の枢軸に固定した昇降リンクと、後側の枢軸に固定した昇降リンクと、前後の昇降リンク間に介装する油圧シリンダとで構成したものである。
【0008】
請求項3においては、前記前後の昇降リンクの何れか一方を他方の昇降リンクより長く構成したものである。
【0009】
請求項4においては、クローラ式走行装置の前後両側に鉄道用レール走行用ガイド輪を備える作業車両において、前後のガイド輪をそれぞれ前後のアームにより支持し、前後のガイド輪を一つの昇降機構により昇降可能に構成し、前記前ガイド輪の昇降と後ガイド輪の昇降開始時期に時差を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、ひとつの昇降機構で前後のガイド輪を昇降できるため、部品点数が減少され、コストが削減される。そして、昇降機構の配置スペースも小さくすることができ、ベースとなる機体に後付けも容易にできる。また、操作機構も一つで済み構成を簡単にすることができる。
【0012】
請求項2においては、油圧シリンダとリンクにより昇降機構が構成できるため、構成が簡単となり、製造が容易で組み立ても容易にできる。
【0013】
請求項3の如く構成することにより、前後のリンク長に差があるため、両リンク端に連結する油圧シリンダを伸縮させると、前後のガイド輪が接地するまでに要する時間に差が生じるようになる。よって、鉄道用レールに沿わせて機体を走行するような場合に、機体の運行方向を鉄道用レールの長手方向と平行となるように位置させて、前後一方側のガイド輪を降ろして、ガイド輪が鉄道用レールの位置に合うように作業車両の位置を調整し、更に、前後他方側のガイド輪を降ろし作業車両の位置を調整して、ガイド輪を鉄道用レールに合わせる。よって、前後のガイド輪を同時に降ろすよりもガイド輪を鉄道用レールに沿うように合わせやすくなるのである。
【0014】
請求項4の如く構成することにより、一つの昇降機構により前後のガイド輪を昇降できるので、昇降操作機構も一つで済み、構成を簡単としてコスト低減化が図れるとともに、操作も簡単に行える。そして、前後のガイド輪の一方を先に下降することができるため、先に下降させたガイド輪が鉄道用レールに沿うように容易に機体を調整することができ、他方のガイド輪は、一方のガイド輪を鉄道用レールに沿わせてから後に下降させて沿わせるように位置調整することができて、確実にガイド輪を鉄道用レールに沿わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る作業車両の全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3はフレームの構成を示す平面図、図4は同じく側面図、図5はガイド輪昇降機構を示す側面図、図6は枢軸の支持構成を示す平面図、図7は同じく斜視図、図8はガイド輪とその支持部材を示す平面断面図、図9はガイド輪昇降機構を示す平面図である。
【0016】
本発明の実施例の軌道走行可能な作業車両1は、作業機として除雪装置2を備えるもので、クローラ式走行装置3・3と、軌道(以下鉄道用レール)41走行用のガイド輪4F・4F、4R・4R等を具備する。
【0017】
まず、図1、図2を用いて軌道走行可能な作業車両1の全体構成について説明する。
クローラ式走行装置3上に機体フレーム5を載置し、機体フレーム5より前方に前部作業機装着装置50を介して作業機として除雪装置2を装着し、機体フレーム5より後方に後部作業機装着装置60を配置して作業機を装着可能としている。なお、作業機は除雪機やモア等であり限定するものではない。
前記機体フレーム5上において、前部上に運転部6を配置し、前後中央上部に座席7を配置し、機体フレーム5後部上に原動機となるエンジンを載置してボンネット8で覆っている。エンジンからの動力はトランスミッションを介してクローラ式走行装置3の駆動輪10と、機体フレーム5より前方に突出するフロントPTO軸22と、機体フレーム5より後方へ突出するリアPTO軸23に伝える構成としている。
【0018】
機体のフレーム構成について説明する。
図1、図3に示すように、機体フレーム5は、トラックフレーム11・11、前部横フレーム48F、後部横フレーム48R、前部支持フレーム44・44、前部サイドフレーム45・45、前後支持フレーム46・46、後部支持フレーム47と、ガードフレーム17等により構成される。
前部横フレーム48Fと後部横フレーム48Rは、前後方向に配置された左右一対のトラックフレーム11・11の間に、それぞれ前後に所定間隔を開けて左右方向に横架して固設されている。前部支持フレーム44・44は、前部横フレーム48Fの左右中央部より左右所定間隔を開けて前方へ平行に延出し、該前部支持フレーム44・44の前部外側面と前記トラックフレーム11・11の前部内側面との間に前部サイドフレーム45・45を後外方向へ広がるように斜めに横設して支持している。前後支持フレーム46・46は、前部横フレーム48Fと後部横フレーム48Rとの間に、左右方向に間隔を空けて前後方向に横架して固設している。後部支持フレーム47は、後部横フレーム48Rの上左右中央上面より立設している。
【0019】
そして、ガードフレーム17は平面視略U字状に構成して、前部横フレーム48Fより前上方に立ち上げた前部支持体15と、後部支持フレーム47の上部に立設したガードフレーム17のジョブより後上方に立ち上げた後部支持体16とによりガードフレーム17を固設している。
【0020】
運転部6はハンドル20や座席7や各操作レバー等を配置しており、前記ガードフレーム17の前部上に配置される。前記ガードフレーム17の前部には床部18が張設され、該床部18の前部にハンドルコラム19を立設し、該ハンドルコラム19の上端部にハンドル20を取付け、該ハンドル20の後方位置に座席7を配置している。該座席7の側部に主変速レバーや副変速レバーや作業機操作レバー等を配置している。また、ハンドルコラム19の側部上に前部作業機となる除雪装置2の操作部51が配置されている。
【0021】
前記前部支持フレーム44・44の前部間に図示しないミッションケースが支持され、該ミッションケースから前方にフロントPTO軸22を突出している。また、前部支持フレーム44・44より前ロアリンク52・52を突出し、該前ロアリンク52・52の前端に除雪装置2の取付部を支持している。また、ガードフレーム17の前端左右中央にブラケット53を立設して、該ブラケット53に油圧シリンダからなる昇降シリンダ54の基部側を枢支し、該昇降シリンダ54のピストンロッド先端を前記除雪装置2の取付部に枢支し、該昇降シリンダ54の伸縮により作業機を昇降可能に装着可能としている。前記フロントPTO軸22にユニバーサルジョイントや伝動軸等を介して除雪装置2の入力軸に動力を伝達し、ブロワや掻込オーガ等を駆動する構成としている。
【0022】
また、前記ミッションケースより後方に伝動ケースや伝動軸が延設されて、後部支持フレーム47に支持した伝動ケースから後方にリアPTO軸23が突出され、該リアPTO軸より後方に、後部作業機装着装置60を介して連結する作業機に動力を伝達可能としている。該後部作業機装着装置60はロアリンク61やリフトアーム62やリフトロッド63等よりなり、リフトアーム62の先端とロアリンク61の前後中途部の間にリフトロッド63を枢結し、該ロアリンク61の後端と、後部支持フレーム47の後部に固設したトップリンクブラケット64に連結した図示しないトップリンクとに作業機を連結可能としている。そして、図示しない油圧シリンダによりリフトアーム62を回動することにより作業機を昇降可能としている。なお、本実施例では、前方に除雪装置2等の重い作業機を装着する場合には、後部作業機装着装置60にバランスウェイト26を装着して、前方と後方の重量バランスをとるようにしている。
【0023】
クローラ式走行装置3は、駆動輪10と、前後方向に配設されるトラックフレーム11と、該トラックフレーム11に取り付けられる従動輪12、13と転輪21・21・・・と、履帯14等よりなり、トラックフレーム11の前端に従動輪12を回転自在に支持し、後端に従動輪13を回転自在に支持している。該従動輪12、13の間に転輪21・21・・・とを回転自在に配置している。そして、この従動輪12、13と転輪21・21・・・と駆動輪10とに履帯14を巻回している。
【0024】
次に、本発明のガイド輪4F・4F、4R・4Rの支持構造について説明する。
図1乃至図4に示すように、機体より前方、かつ、前部作業機より後方、つまり、クローラ式走行装置3と除雪装置2の間に左右の前ガイド輪4F・4Fを配置している。また、機体より後方、かつ、後部作業機より前方、つまり、クローラ式走行装置3と後部作業の間に左右の後ガイド輪4R・4Rを配置している。そして、該ガイド輪4F・4F、4R・4Rはそれぞれアーム29F・29F、29R・29Rの先端に回転自在に支持し、クローラ式走行装置3の前後左右に配置している。
【0025】
即ち、前記ガイド輪4F・4F、4R・4Rは略同じ構成として、円環状の接地部の側面に縁部を形成して、円環部の外周が鉄道用レール41上を接地し、縁部が機体内側に配置されて鉄道用レール41の上側部に当接して脱輪しないようにガイドする構成としている。ガイド輪4F・4F、4R・4Rの中心には軸孔を設けて車軸40F・40F、40R・40Rを挿入して固設している。該ガイド輪4F・4F、4R・4Rの円環部の左右中心は前記従動輪12・13と転輪21の左右中心に略一致させて配置している。該車軸40F・40F、40R・40Rはアーム29F・29F、29R・29Rの先端に左右水平方向内側に回転自在に支持されている。該アーム29Fの先端(前端)は前記車軸40Fを支持してガイド輪4Fを回転自在に支持し、基端(後端)は枢軸27Fの外側端部に固設されている。アーム29Rの先端(後端)には前記車軸40R・40Rを支持し、基端(前端)は枢軸27Rの外側端に固設されている。なお、前記アーム29Fとアーム29Rは同じ長さとしている。よって前後左右のガイド輪4F・4F、4R・4Rは同じ構成で支持される。
【0026】
枢軸27F、27Rは、側面視においてクローラ式走行装置3の内側に配置されており、トラックフレーム11・11下側に支持部材43F・43F、43R・43Rを介して回転自在に支持されている。即ち、トラックフレーム11の下面であって、前部サイドフレーム45の後部取付位置の後部で前部横フレーム48Fの下方に支持部材43Fが固定され、転輪21と転輪21の間の上方に支持部材43Fを配置して枢軸27Fを回転自在に支持している。また、トラックフレーム11の下面であって、後部横フレーム48Rの前下方で転輪21と転輪21の間の上方に支持部材43Rを固定し、枢軸27Rを回転自在に支持している。このように、枢軸27F、27Rを剛性の高い横フレーム48F、48Rに近づけて配置することにより枢軸27F、27Rの変形が小さく、回転をスムースに行え、左右のトラックフレーム11・11間に横架することで、左右両側のガイド輪4F・4F(4R・4R)を同時に昇降することができる。そして、前後の枢軸27F、27Rの前後方向の間隔は油圧シリンダを配置できる程度離して配置することができ、後述する昇降リンク36F、36Rを直接駆動することができ、複雑なリンク機構が不要となり、油圧シリンダも一つで済むため、コスト低減化も図れる。
【0027】
前記支持部材43F・43F、43R・43Rの取付構成を詳述すると、図3、図6、図7に示すように、トラックフレーム11の下面にはプレート状のブラケット42F・42F、42R・42Rが固設され、該ブラケット42Fの四隅にはボルト孔が開口されている。図6、図7に示す支持部材43Fは取付プレート43Faと支持パイプ43Fbからなり、取付プレート43Faは正面視略逆コ字状に折り曲げて下側を開放し、上面に前記ボルト孔に位置を合わせてボルト孔を開口しボルト33・33・33・33でブラケット42F固定している。該取付プレート43Faの下面には支持パイプ43Fbを左右方向に横設し、該支持パイプ43Fbに枢軸27Fを挿入して支持する構成としている。支持部材43Rも同じ構成で、ブラケット42Rに固定され、枢軸27Rを支持している。
【0028】
前記枢軸27F、27Rは左右水平方向に配置して、両端はクローラ式走行装置3の左右両外端よりも更に外側方に延設し、該枢軸27F、27Rの両端から前方または後方にアーム29F・29F、29R・29Rを突設している。該アーム29F、29Rの基端部には図7に示すように、パイプ状のボス29Fa、29Raが形成され、該ボス29Fa・29Raが枢軸27F、27Rの両端に外嵌して固定されている。アーム29F、29Rの先端にはボス29Fb、29Rbを設けて、図8に示すように、車軸40F、40Rを軸受を介して回転自在に支持している。ガイド輪4F、4Rの車軸40F、40Rは、アーム29F、29R先端より機体側に突出しており、枢軸27F(27R)とアーム29F(29R)とガイド輪車軸40F(40R)とで、略コの字型のフレームを形成している。但し、前記車軸40F(40R)はアーム29F(29R)先端に横設して、車軸40F(40R)に軸受を介してガイド輪4F(4R)を回転自在に支持する構成とすることもできる。
【0029】
このようにして、アーム29F・29F、29R・29Rはクローラ式走行装置3の外側に配置され、つまり、前側のアーム29Fは前側の従動輪12の外側方に位置し、後側のアーム29Rは後側の従動輪13よりも外側方に配置され、クローラ式走行装置3・3の前後中央、つまり、履帯14の内側から前後外側へ回り込んで配設されるアーム29F・29F、29R・29Rによりガイド輪4F・4F、4R・4Rを支持する構成としている。但し、トラックフレーム11の前又は後に駆動輪が位置する場合も同様の構成とすることができる。
【0030】
このように構成することにより、アーム29F・29F及び前部作業機装着装置50は互いに干渉することがなく昇降することができ、また、アーム29R・29R及び後部作業機装着装置60は互いに干渉することがなく昇降することができ、前部作業機装着装置50及び後部作業機装着装置60は取り外す必要もなく、ガイド輪4F・4F、4R・4Rを取り付けることができ、設計変更の必要もない。また、アーム29F・29F、29R・29Rの基部はトラックフレーム11の下部に取り付けられるため、重心を低くでき安定した走行が可能となり、また、機体が左右揺動した場合などでは、高い位置で29F・29F、29R・29Rの基部を支持するよりも鉄道用レールに対する横方向のずれを抑えることができる。
【0031】
そして、前方の枢軸27Fと後方の枢軸27Rの間にガイド輪4F・4F、4R・4Rを昇降させるための昇降機構31を配置し、該枢軸27F、27Rを支持するトラックフレーム11の外側方にはアーム29F、29Rの最上昇位置を設定するためのストッパ32F、32Rが突設されている。
【0032】
該ガイド輪の4F・4F、4R・4Rの昇降機構31について説明する。
図3、図4に示すように、ガイド輪4F・4F、4R・4Rの昇降機構31は、アクチュエータとなる油圧シリンダ38と、昇降リンク36F・36F、36R・36Rとで構成しており、昇降機構31は側面視で履帯14の内側に配置するとともに、前後の枢軸27F、27R間の上方に配置している。そして、平面視において、昇降機構31は左右一側のトラックフレーム11近傍に配置している。
【0033】
このように、昇降機構31は側面視で前後の枢軸27F、27R間に後述するようにリンク等を介して連動連結して配置することで、昇降アクチュエータとなる油圧シリンダ38は小型化することができ、昇降機構31を小さくしてコンパクトに配置することができ、油圧シリンダ38を上部に配置することで、泥等の跳ね上がりをできるだけ避けることができる。
【0034】
また、左右一側に寄せて油圧シリンダ38を配置することによりメンテナンスがし易くなり、左右中央の車高を低くすることがない。また、昇降駆動機構が一つで前後のガイド輪を昇降できるため、部品点数を少なくし、配管も短くすることができ、コスト低減化を図ることができる。
【0035】
前記昇降リンク36F・36F、36R・36Rは、図4、図9に示すように、略「く」字型に形成され、前方の枢軸27Fに昇降リンク36Fの基部が固設され、該昇降リンク36Fは斜め後上方に延設して先端部に油圧シリンダ38のピストンロッド38a先端を枢支している。後方の枢軸27Rには昇降リンク36Rの基部が固設され、該昇降リンク36Rは前斜め上方に延設して油圧シリンダのボトム側を枢支している。このように、昇降リンク36F、36Rを枢軸27F、27Rから前後中央斜め上方に延設してから上方に延設する構成として、油圧シリンダ38が略水平を向くように配設することで、該油圧シリンダ38が伸縮するときでも略前後水平方向に姿勢が維持できるようになり、一方の昇降リンク等に偏った荷重がかかることを防止している。但し、ピストンロッド38aは昇降リンク36Rに取り付けてもよい。
【0036】
また、前記前ガイド輪4Fの昇降と後ガイド輪4Rの昇降開始時期に時差を設けている。つまり、図4、図5に示すように、前後の昇降リンク36F、36Rのアーム長は、一方が他方より長く構成している。本実施例では、前方の昇降リンク36Fの長さをL1は、後方の昇降リンク36Rの長さL2より長く(L1>L2)構成している。そして、アーム29F、29Rは同じ長さL3であり、ガイド輪4F、4Rも同じ大きさで同じ重さとしている。
また、図4、図6に示すように、棒状に構成したストッパ32F、32Rがトラックフレーム11の側面より外側方に平行に突設されており、該ストッパ32F、32Rは前記アーム29F、29Rと当接するように突出長さが設定されている。前側のストッパ32Fは前記枢軸27Fの斜め前上方に配置し、後側のストッパ32Rは枢軸27Rの斜め後上方に配置し、アーム29F、29Rを上昇回動させて、その上面がストッパ32F、32Rに当たり停止した位置では、ガイド輪4F、4Rの下端が本体の最低地上高と同等程度まで上昇できるようにしている。こうして、ガイド輪4F、4Rを上昇させて路上等を走行するときに邪魔にならないようにしている。
【0037】
このような構成において、ガイド輪4F、4Rを下降させた状態から持ち上げる場合、油圧シリンダ38を縮小させると、前ガイド輪4Fと後ガイド輪4Rは同じ重さでアーム29F、29Rは同じ長さであり、昇降リンク36Fは昇降リンク36Rよりも長いため、持ち上げ力が小さい前側のガイド輪4Fから上昇する。つまり、油圧シリンダ38の縮小により昇降リンク36Fは図4において枢軸27Fを中心に時計回りに回転する。そして、アーム29Fがストッパ32Fに当接すると上昇は停止し、油圧シリンダ38は更に縮小して、後方の昇降リンク36Rは枢軸27Rを中心に反時計回りに回転し、アーム29Rがガイド輪4Rとともに上昇し、アーム29Rがストッパ32Rに当接すると、上昇回転は停止される。こうしてガイド輪4F、4Rは上昇位置に維持される。
【0038】
逆に、ガイド輪4F、4Rを下降させる場合、油圧シリンダ38を縮小させるとアームとガイド輪の自重により下降し、前記と逆の動作で、操作力の大きい後側のアーム29Rから下降回転する。そして、後側のガイド輪4Rが鉄道用レール上面に到達すると、前側のアーム29Fが下降回転し始め、ガイド輪4Fが鉄道用レールに到達して油圧シリンダ38の伸長が停止される。
但し、前後の昇降リンク36F、36Rの長さを前記と逆に前側を短くすることで、油圧シリンダ38を縮小すると、後側のガイド輪4Rから上昇させることができ、油圧シリンダ38を伸長すると、前側のガイド輪4Fから下降させることができる。
【0039】
また、一つの油圧シリンダ38で前後のガイド輪の昇降に時差を持たせるために、アーム29F、29Rの長さを変更することも可能である。つまり、昇降リンク36F、36Rは同じ長さとし、ガイド輪4F、4Rを同じに構成して、前側アーム29Fを後側アーム29Rより短くし、前側から上昇させて、後側から下降させるように構成することもできる。また、昇降リンク36F、36Rは同じ長さとし、後側アーム29Rまたは後側のガイド輪4Rを前側アーム29Fまたは前側のガイド輪4Fよりも重くすることにより、前側から上昇させて、後側から下降させるように構成することもできる。この場合、アームまたはガイド輪自体の重量を変更してもよく、または、ウエイトを取り付ける構成であってもよい。
【0040】
このように構成することにより、路上走行から鉄道用レールに沿って走行するような場合、機体を鉄道用レールに沿うように機体の前後方向を鉄道用レールの方向と平行にして、鉄道用レール上にクローラ走行装置3を位置させる。そして、ガイド輪4F、4Rを下降して鉄道用レールに沿わせるが、前後のガイド輪4F、4Rを同時に下降させると、同時に縁部が鉄道用レールの内側はめることは大変難しい。そこで、機体を鉄道用レールに沿わせた状態として、前述の如く後側のガイド輪4Rを下降させて前側のガイド輪4Fは上昇させた位置で停止することで、機体が鉄道用レールに対して多少ずれていても、鉄道用レールに沿うように走行することで後側のガイド輪4Rを鉄道用レールに沿わせることができる。この状態から更に前側のガイド輪4Fを下降させる。このとき、ガイド輪4Fと鉄道用レールの位置が多少ずれていても、操向操作して容易に補正して前後のガイド輪4F、4Rを鉄道用レールに沿わせることができるのである。
【0041】
なお、本実施例においては、昇降アクチュエータは油圧シリンダを用いているが、電動シリンダを用いることも可能である。この場合昇降制御を簡単に行うことができ、配管が不要となるため、周囲を簡素化できる。また、油圧シリンダの伸縮によって、該油圧シリンダに連結した昇降リンクを回動して前後のアームを昇降回動するように構成しているが、前後の昇降リンクをロッドで連結して、モータ等により昇降リンクを回動してガイド4F・4F、4R・4Rを昇降させるように構成することもできる。また、前後の枢軸上にそれぞれ歯車を固設し、それぞれの歯車に噛合するように歯車を設けて、該歯車をモータ等で回動してガイド輪4F・4F、4R・4Rを昇降するように構成することもできる。また、昇降リンクをワイヤを介して巻上機と連結して、巻上機の回動によりガイド4F・4F、4R・4Rを昇降するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例に係る作業車両の全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】フレームの構成を示す平面図。
【図4】同じく側面図。
【図5】ガイド輪昇降機構を示す側面図。
【図6】枢軸の支持構成を示す平面図。
【図7】同じく斜視図。
【図8】ガイド輪とその支持部材を示す平面断面図。
【図9】ガイド輪昇降機構を示す平面図。
【符号の説明】
【0043】
1 作業車両
3 クローラ式走行装置
4F ガイド輪
4R ガイド輪
11 トラックフレーム
27F 枢軸
27R 枢軸
29F アーム
29R アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ式走行装置の前後両側に鉄道用レール走行用ガイド輪を備える作業車両において、ガイド輪を支持する前後のアームの枢軸をクローラ式走行装置の左右のトラックフレーム間に横架し、該前後の枢軸間に前後のガイド輪を昇降する昇降機構を配置したことを特徴とする軌道走行可能な作業車両のガイド輪昇降機構。
【請求項2】
前記昇降機構を、前側の枢軸に固定した昇降リンクと、後側の枢軸に固定した昇降リンクと、前後の昇降リンク間に介装する油圧シリンダとで構成したことを特徴とする請求項1記載の軌道走行可能な作業車両のガイド輪昇降機構。
【請求項3】
前記前後の昇降リンクの何れか一方を他方の昇降リンクより長く構成したことを特徴とする請求項2記載の軌道走行可能な作業車両のガイド輪昇降機構。
【請求項4】
クローラ式走行装置の前後両側に鉄道用レール走行用ガイド輪を備える作業車両において、前後のガイド輪をそれぞれ前後のアームにより支持し、前後のガイド輪を一つの昇降機構により昇降可能に構成し、前記前ガイド輪の昇降と後ガイド輪の昇降開始時期に時差を設けたことを特徴とする軌道走行可能な作業車両のガイド輪昇降機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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