説明

軌陸兼用移動車装置

【課題】人力操作による軌道上での移動を可とし、左右駆動車輪相互の速度差(設定)による事故の発生を未然に防ぎ、自動二輪車運転免許非保持者では利用できない不便さのない軌道上および陸上兼用移動車を提供する。
【解決手段】互いに並行する一対の軌道レールa上を転動する前後それぞれ一対の車輪5A,5Bによって走行する台車1を備え、該台車1に一対の自転車8の各前輪7Aを載置し、前記一対の自転車8の動力車輪である各後輪7Bを前記軌道レールa上に前記軌道レールaに対応させて載置する。前記一対の自転車8は前記台車1に分離可能にして配置する。さらに前記前輪7A負荷重量に連携する規制片11を前記台車1の車輪5A,5Bの一方に設け、乗員降車時に前記台車1に対し制動力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線、軌道の警備、点検等のための巡回手段として、軌道(レール)上の走行と一般道路の走行を選択的に行うことのできる軌陸兼用移動車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに並行する一対の軌道レール上を前後それぞれ一対の車輪によって走行する台車を備え、該台車の前車輪に前輪を載置し、後輪を前記軌道レール上に載置した一対の自動二輪車を前記軌道レールに対応させて配置し、かつ、分離可能に組付けた構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−264810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例は、互いに並行する一対の軌道レール(鉄道用)上を安定的に走行する台車に、各軌道レールに対応させて既存の自動二輪車(オートバイ)を分離可能に組付け、これを安定的に支持させ、各自動二輪車それぞれに運転者が乗って軌道上を走行し、道路上においては台車より分離させて走行するものであるが、自動二輪車であるため、少しの操作で速度が簡単に変化するため、その分、軌道レール走行時には自動二輪車相互の走行速度を一致させるという煩雑さがある。
【0005】
本発明は、従来例の斯様な欠点を回避した軌道又は一般道路上を選択的に移動するために用いる軌陸兼用移動車装置を提供すべく創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
互いに並行する一対の軌道レール上を転動する前後それぞれ一対の車輪によって走行する台車を備え、該台車に前輪を載置し、動力車輪である後輪を前記軌道レール上に載置した一対の自転車を前記軌道レールに対応させて、かつ、前記台車に分離可能にして配置したことを基本的手段とする。
【0007】
なお、台車の前後車輪の一方に接して回動を規制する規制片を備え、該規制片の規制解除手段を、自転車に対する負荷重量によって降下する縦動材に連けいした構成を用いることにより、軌道上において、自転車から降車すると、自転車に対する荷重の負荷が解除されるので、縦動材は上昇し、この結果、規制解除手段が働いて、規制片が台車側の車輪に接してその動き(回動)を規制して、軌道に沿う移動を規制し、脱線などの無用な事故を回避することができ、また、一方の自転車側に物品を搭載して重量を負荷することにより前記縦動片を降下させて、規制片を台車の車輪から離脱させることができるから、運転者一人でも軌道上での走行が可能な移動車を提供することができる。
【作用効果】
【0008】
本発明によれば、人力操作による軌道上での移動を行うものであるから、自転車相互の走行速度に大きな相違が起ることがなく、従って、自転車相互の速度差(設定)による事故の発生を回避することができる。
【0009】
また、従来例のように自動二輪車であると、一般道路においては所謂免許を必要とすることから無免許者では利用できない不便さがあるが、本発明は左様な不便さがない。
【実施例】
【0010】
図面は、本発明に係る軌陸兼用移動車装置の一実施例を示し、図1は一部を省略して示した正面図、図2は各部の配置関係を示す平面図、図3は図1の一部拡大断面図、図4は図3の一部拡大横断面図、図5は図1の一部拡大平面図である。
【0011】
図中、1は台車で、台車1は、互いに並行する一対の軌道レールa,aのそれぞれに対応させた単位台車1A,1Aを支持材1Bで互いに接続して構成し、各単位台車1Aは、前記軌道レールa上を転動する前後一対の車輪5A,5Bを備えた台枠6の前方側に自転車8の前輪7Aを載置する受支部9を、後方側に前記自転車8の後輪7Bを係合する係合部10をそれぞれ備え、係合部10の後方には、単位台車1A側の前記後輪5Bの回動を規制する規制片11を備え、該規制片11が後輪5Bに圧接して単位台車1Aすなわち台車1の軌道レールaに沿う移動を規制するようにしてある。
【0012】
規制片11は、規制解除手段12によって前記後輪5Bの踏面に対する圧接位置から後退して後輪5B(延いては前輪5A)の軌道レールa上での転動を自由におくもので、規制解除手段12は、前記台枠6の前記後車輪5Bの近傍位置に立設した支持片13に回動片14の中間部を回動自在に枢着し、該回動片14の一端に前記車輪5Bを接離する前記規制片11を装置し、該規制片11を、前記回動片14の他の一端と前記台枠6との間に張設したコイルスプリング15の付勢によって前記後輪5Bに圧接するようにすると共に、この規制片11を備えた前記回動片14の他の一端に、先端を前記台枠6の前後方向の中間部に立設した一対の第二支持片16,16に回動自在に支持させた回動枠17に止着した連けいワイヤー18の後端を止着し、このワイヤー18の先端を止着した前記回動枠17の部片17aが、縦動材19の下端部に設けたピン20で押下されて該回動枠17が回動し、前記の通り、ワイヤー18を引張るようにしたものである。
【0013】
すなわち、規制解除手段12は、縦動材19のピン20によって回動枠17が回動する結果、回動枠17がコイルスプリング15の付勢に抗して連けいワイヤー18を引張り、この結果、回動片14が回動して該回動片14の一端側の規制片11が台枠6側の後輪5B位置より離れ、該後輪5Bの転動規制を解除するものである。
【0014】
前記縦動材19は、前記台枠6に立設した支筒21に、該支筒21の上方から縦動可能に嵌挿し、支筒21に設けた縦長の長孔22を通じて外部に先端側を導出した前記ピン20の基部を下端部に取付け、この下端部と前記支筒21の底部との間には復帰スプリング29を介在させ、また、支筒21より突出する上端部には、前記自転車8の横杆材23に設けた接続片24を接続ピン25で組付けるようにしたものである。
【0015】
自転車8は、市販の自転車に前記接続片24を熔接して構成したもので(横杆材23にボルトとナットで締付けた取付金具に接続片24を設けた構造のものを用いても良い)、ペダルを踏むことによって後輪7B側が動力車輪となって移動し、図示省略したブレーキ装置によって後輪7Bを制動するようにしたもので、軌道レールaに対応させ手配した前記単位台車1Aに前輪7Aを受支部9aに載置する一方、後輪7Bを前記係合部10を通じて軌道レールa上に転動自在に載置するようにしたもので、一対の自転車8,8は、ハンドル杆8aとトップ杆8bとの間に横杆部26aの両端に縦杆部26b,26bを連設して構成した接続材26の縦杆部26bを組外し可能にして組付けて一体的にしたものである。
【0016】
しかして、縦杆部26bをハンドル杆8aとトップ杆8bとの間に介在させるようにして一対の自転車8,8を接続材26を会して互いに一体的にし、軌道レールa,a上に載置した台車1の単位台車1Aに、各自転車8を対応させて、前輪7Aを受支部9に載置する一方、後輪7Bを係合部10を通じて対応する軌道レールa上に載置することによって、一対の自転車8,8は互いに接続され、走行可能状態で軌道レールa上に載置されることとなり、この状態にあっては、規制片11が台車1側の後輪5Bにコイルスプリング15の付勢によって圧接し、台車1乃至自転車8は停止状態が維持される。
【0017】
この状態で乗車すると、運転者の体重が自転車8に負荷されるので(後車輪7Bは沈み)、縦動材19に該体(荷)重が負荷され、そのため、前記の通り、規制解除手段12が機能して、規制片11は車輪5Bとの接触位置から離脱し、その転動を許与することになる。
【0018】
そして、自転車8を常法通り運転することによって軌道レールaに沿って移動することができ、この移動中、自転車8には運転者の重量が常に負荷されるので、規制片11は車輪5Bに圧接してこれを規制することがないのである。
【0019】
現場において必要性があるときは、接続ピン25を外して縦動材19より自転車8,8を取り外し、かつ、接続材26を取り外して自転車8,8を互いに独立させることによって一般道路における移動手段として当該自転車を自在に利用できるのである。
【0020】
なお、実施例のピン20は縦動材19に固定したナット20bに螺合したボルト杆で構成してあるが、要は、回動枠17の部片17aを押下せしめれば良いのであるから、実施例の構成に限定する必要はない。
【0021】
また、図示28は、自転車8は前輪7Aを台枠6の受支部9に組外し可能に組付け、止着する止着手段を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一部を省略して示した正面図。
【図2】各部の配置関係を示す平面図。
【図3】図1の一部拡大断面図。
【図4】図3の一部拡大横断面図。
【図5】図1の一部拡大平面図。
【符号の説明】
【0023】
1 台車
5A 前車輪
5B 後車輪
7A 前輪
7B 後輪
8 自転車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並行する一対の軌道レール上を転動する前後それぞれ一対の車輪によって走行する台車を備え、該台車に前輪を載置し、動力車輪である後輪を前記軌道レール上に載置した一対の自転車を前記軌道レールに対応させて、かつ、前記台車に分離可能にして配置した、軌陸兼用移動車装置。
【請求項2】
台車の前後車輪の一方に接して回動を規制する規制片を備え、該規制片の規制解除手段を、自転車に対する負荷重量によって降下する縦動材に連けいした、請求項1記載の軌陸兼用移動車装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−224797(P2006−224797A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40559(P2005−40559)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591075641)東鉄工業株式会社 (36)
【出願人】(391030125)保線機器整備株式会社 (39)
【Fターム(参考)】