説明

軟水化装置及びそれを備えた給湯機

【課題】電気分解によって生成したガスが滞留することを防止し、使用性を向上した軟水化装置を提供すること。
【解決手段】一対の電極19と、前記電極19に挟まれて配置された陽イオン交換体22、陰イオン交換体23からなる水分解イオン交換体20と、前記電極19に電圧を印加して前記水分解イオン交換体20により軟水化処理する処理室8と、前記処理室8と区画形成され、前記各電極19を有する電極室9とを備え、前記電極室9を通過する水は、外部へ排水される構成としたことを特徴とする軟水化装置で、電極19への電圧印加時に、電極室9内に電極表面部で発生したガスは、前記処理室8と隔離されて外部へ排水されるため、軟水化処理した処理室8内の水にガスが混入するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水化装置及びそれを備えた給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯機の配管内のスケール生成を防止する技術として、イオン交換樹脂によって軟水化及び薬剤を用いずにメンテナンスフリーで再生する以下のような技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来配管のスケール生成を防止する給湯機の構成図を示すものである。
風呂給湯機に水を供給する水路となる原水供給パイプ101は、三方弁102を介して電気分解装置103の下部及び軟水化装置113の上部に接続されており、採水時には軟水化装置113に通水し、再生時には電気分解装置103に通水するように三方弁102を切り換える構成となっている。電気分解装置103はポーラスな隔膜104、例えば素焼きの隔膜によって陽極室107と陰極室108に仕切られ、これら極室にそれぞれ電極105及び106を配設している。
【0004】
また、陽極室107の上部には酸性水出口パイプ110が三方弁111を介して、陽イオン交換樹脂112を充填した軟水化装置113の上部及び三方弁118を介して浴槽121への水供給パイプ123に接続されており、再生時には軟水化装置113に通水し、浴槽121で酸性風呂に入浴するときには、浴槽121への水供給パイプ123に通水するように三方弁111を切り換える構成となっている。
【0005】
また、陰極室108の上部にはアルカリ水出口パイプ109が三方弁119を介して排水パイプ122及び飲用水パイプ120に接続されており、アルカリ水飲用時には飲用水パイプ120に通水し、飲用以外のときは排水パイプ122から排水するように三方弁119を切り換える構成になっている。また、軟水化装置113の下部には三方弁114を介して排水パイプ115及びパイプ116を介して風呂給湯機117が接続されている。
【0006】
上記構成において、水は原水供給パイプ101を通り、採水時には三方弁102を切り換えて、陽イオン交換樹脂112の充填してある軟水化装置113上部から供給し、陽イオン交換樹脂112により水中のカルシウム、マグネシウム等の陽イオンは、水素イオンと置換され、軟水がパイプ116、風呂給湯機117を介して、パイプ123により浴槽121に供給される。
【0007】
陽イオン交換樹脂再生時には、水は三方弁102を切り換えて、隔膜104によって陽極室107及び陰極室108を分離形成し、これら極室にそれぞれ電極105、106を配設した電気分解装置103に供給される。電極105、106の両極間に直流電圧を印加し、陽極室107で得られた酸性水を三方弁111を切り換えて軟水化装置113の上部から供給する。このとき、三方弁114を排水パイプ115側に切り換え、水を風呂給湯機117に通水しないようにする。
【0008】
酸性風呂入浴時には、三方弁111及び118を切り換え陽極室107で得られた酸性水をパイプ110、パイプ123を介して浴槽121に供給する。このとき、三方弁118が切り換えられているため、風呂給湯機117に酸性水は通水しない。
【0009】
また、浴室内でアルカリ水を飲用するときには三方弁119を切換える。以上のように、陽イオン交換樹脂で水中のカルシウム、マグネシウム等の硬度成分を除去し、風呂給湯
機配管及び浴槽内へのスケール付着を防止できる。これにより、浴槽掃除の頻度を減らすこともできる。
【0010】
さらに、水の電気分解で得られる酸性水で、陽イオン交換樹脂を再生するため、食塩等の供給が不要になり連続的に軟水を供給することができる。また、酸性水を浴槽に通水することで、酸性風呂を楽しむこともでき、アルカリ水を浴室内で飲用することもできる。
【0011】
一方、軟水化処理する技術として、水分解イオン交換膜を用いた技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
この方式では、一対の電極間に陽イオン交換層と陰イオン交換層の2層から成る水分解イオン交換膜を挟み込んだ構成であり、電極に通電すると水分解イオン交換膜の表面に硬度成分が吸着してイオン交換されて軟水化処理される。また、極性を逆にして電圧を印加すると陽イオン交換層と陰イオン交換層の界面で水が解離し、解離により生成した水素イオン、水酸化物イオンにより水分解イオン交換膜を再生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平7−68256号公報
【特許文献2】特許第4044148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記特許文献1に示した従来の構成では、電気分解装置103と軟水化装置113が別個に備えられているので、装置が複雑となると共に大きな設置スペースを必要となるという課題があった。また、陽イオン交換樹脂を再生する時、電気分解装置3によって電気分解により水を解離させて酸性水を生成しているが、水中で電気分解を行うと、電極表面から水素及び酸素のガスが発生する。そして、この発生したガスがシステム内に溜まり蓄積する可能性があるという課題があった。
【0015】
一方、前記特許文献2に示した水分解イオン交換膜を用いた方式は、水分解イオン交換膜表面に硬度成分を吸着しイオン交換して硬度成分を除去している。そして再生時には、電極に電圧を印加することにより、硬度成分がイオン交換した水分解イオン交換膜の界面で水を解離させて水素イオンと水酸化物イオンを生成して再生する。
【0016】
したがって、軟水化処理と再生処理を1台の装置内で行うことができる為、装置が簡易であり省スペース化が図れ、且つ、薬剤を使わずにメンテナンスフリーで軟水化及び再生することができ、給湯機への応用が期待できる有効な軟水化技術と考えられる。
【0017】
しかし、特許文献1と同様に水中で電気分解が行われる為、給湯機に適用した場合、発生したガスが、貯湯タンク等のシステム内に溜まり蓄積する可能性があるという課題があった。
【0018】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、電気分解によって生成したガスが滞留することを防止し、使用性を向上した軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、本発明の軟水化装置は、一対の電極と、前記電極に挟まれて配置された陽イオン交換体、陰イオン交換体からなる水分解イオン交換体と、前記電極に電圧を印加して前記水分解イオン交換体により軟水化処理する処理室と、前記処理室と
区画形成され、前記各電極を有する電極室とを備え、前記電極室を通過する水は、外部へ排水される構成としたことを特徴とするもので、電極への電圧印加時に、電極室内に電極表面部で発生したガスは、前記処理室と隔離されて外部へ排水されるため、軟水化処理した処理室内の水にガスが混入するのを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電気分解によって生成したガスが滞留することを防止し、使用性を向上した軟水化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯機の構成図
【図2】同軟水処理時の軟水化手段の断面図
【図3】同再生時の軟水化手段の断面図
【図4】同他の給湯機の構成図
【図5】従来の給湯機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の発明は、一対の電極と、前記電極に挟まれて配置された陽イオン交換体、陰イオン交換体からなる水分解イオン交換体と、前記電極に電圧を印加して前記水分解イオン交換体により軟水化処理する処理室と、前記処理室と区画形成され、前記各電極を有する電極室とを備え、前記電極室を通過する水は、外部へ排水される構成としたことを特徴とする軟水化装置で、電極への電圧印加時に、電極室内に電極表面部で発生したガスは、前記処理室と隔離されて外部へ排水されるため、軟水化処理した処理室内の水にガスが混入するのを防止できる。
【0023】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記処理室と前記電極室とを区画する隔離体を備え、軟水化処理時に、陰極となる電極に対向する前記隔離体を陽イオン交換膜、陽極となる電極に対向する前記隔離体を陰イオン交換膜としたことを特徴とするもので、軟水化処理時に電圧印加により処理室の水分解イオン交換体で硬度成分のカルシウムイオンがイオン交換して除去されると共に、隔離体の陽イオン交換膜をカルシウムイオンが透過して電極室内へ移動して外部へ排水されるので、硬度成分の除去性能を向上することができる。
【0024】
第3の発明は、特に第1の発明において、前記水分解イオン交換体で、前記処理室と前記電極室とを区画形成する構成としたことを特徴とするもので、隔離機能を有するとともに硬度成分のカルシウムイオンをイオン交換して除去することができるので、硬度成分の除去性能を向上することができる。また、カルシウムイオンが透過して電極室内がカルシウムの高濃度状態になることがないので、カルシウムスケール付着をも抑制することができる。
【0025】
第4の発明は、特に第1〜第3のいずれかの発明の前記電極室を通過する水は、前記電極室の下方から原水を供給し、前記電極室の上方から排出する構成としたことを特徴とするもので、電圧印加時に電極室の電極表面で発生したガスは上部へ移動することにより、電極室の上部から水を排出することで、電極室内でガスが滞留せずに原水と共に外部へ排出することができる。
【0026】
第5の発明は、特に第1〜第4のいずれかの発明の前記電極室を通過する水量は、前記処理室で軟水化処理する水量よりも小さいことを特徴とするもので、電極室を通過するガス混合水の排水量を低減することができる。
【0027】
第6の発明は、特に第1〜第5のいずれかの発明の軟水化装置を搭載した給湯機で、発生したガスが、給湯システム内に溜まり、蓄積するのを防止できる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1に、本発明の第1の実施の形態の給湯機の構成図を示す。
【0030】
図2には、本発明の第1の実施の形態の軟水化手段の断面図を示す。図3には、本発明の第1の実施の形態の再生時の軟水化手段の断面図を示す。
【0031】
図1において、貯湯ユニット1には、原水と沸き上げられた湯を貯留する貯湯タンク2が設置されている。貯湯タンク2の下部には、水道水から原水を貯湯タンク2へ供給する原水配管3が開口して接続されて設けられている。
【0032】
また、貯湯タンク2の下部及にも水配管4が開口して接続されており、軟水化手段5へポンプ6を介して給水されるようにされるように設けられている。ここで、水配管4は軟水化手段5の上流側で分岐して軟水化手段5で発生するガスを排出する為のガス混合水排出配管7が接続されている。水配管4は軟水化手段5の処理室8に接続されており、ガス混合水排出配管7は電極室9に接続されている。
【0033】
そして、軟水化手段5で軟水化処理された軟水は、水配管4を通じてヒートポンプユニット10で沸き上げられて貯湯タンク2の上部へ供給される。また、軟水化手段5の下流側の水配管4は分岐して排水配管11が接続されており、軟水化手段5で生成した再生時の濃縮水が排水される。その分岐部には三方弁12が設けられており、軟水処理時と再生時に流路が切り換えられる。
【0034】
軟水化手段5から出たガス混合水排出配管7は、合流して排水配管11に接続され、ガス混合水が排水されるように構成されている。ガス混合水排出配管7は水配管4よりも細い配管径となっている。
【0035】
一方、ヒートポンプユニット10内には、圧縮機13、水加熱手段14である水熱交換器、外気の熱を吸熱する空気熱交換器15が冷媒配管16で接続されて構成されたCO等の冷媒を用いたヒートポンプサイクル17を内蔵している。
【0036】
図2において、軟水化手段5は、ケーシング18内に1対の電極19が両端に設けられている。電極19はチタンに白金がメッキされたものであり、電極の耐消耗性を確保している。電極19の間には、1対の水分解イオン交換体20が流路21を挟んで設けられている。
【0037】
水分解イオン交換体20は、強酸性のイオン交換基を持つ陽イオン交換体22と強塩基性のイオン交換基を持つ陰イオン交換体23が1枚に張り合わされた2層構造となっている。そして、陽イオン交換体22と陰イオン交換体23が向き合うように設置されている。
【0038】
ここで、陽イオン交換体22は、−SOHを官能基とする強酸性イオン交換基を含み、陰イオン交換体23は、−NROHを官能基とする強塩基性イオン交換基を含む。
ここで、水分解イオン交換体20は軟水化処理時に陰極となる電極19に対向する側に陰イオン交換体23が配置し、陽極となる電極19に対向する側に陽イオン交換体22が配
置するように配置されている。
【0039】
また、水分解イオン交換体20と電極19は、陽イオン交換膜24aと陰イオン交換膜24bで仕切られ、電極19が収納されている電極室9と水分解イオン交換体20が収納されている処理室8に隔離されている。
【0040】
ここで、陽イオン交換膜24aは軟水化処理時に陰極となる電極19に対向する側に配置し、陰イオン交換膜24bは陽極となる電極19に対向する側に配置されている。陽イオン交換膜24a及び陰イオン交換膜24bはイオンを透過するが、ガス透過性が無い。
【0041】
処理室8の入口及び出口には、軟水処理された水及び再生時の濃縮水が排出される水配管4が接続されており、電極室9の入口及び出口には、ガス混合水を排水するガス混合水排出配管7が接続されている。電極室9の入口は下部、出口は上部に設けられガス混合水排出配管7は電極室9の下部から上部へ流通されるようになっている。
【0042】
以上のように構成された給湯機について、以下その動作について説明する。
【0043】
図1において、まず、原水配管3を通じて、貯湯ユニット1の貯湯タンク2へ原水が供給される。ここで、原水には硬度成分のカルシウムやマグネシウムが含まれており、水源が地下水を利用している地域や温泉地などでは硬度は100ppm以上の硬水となっており、給湯機の加熱手段の配管内にスケールを形成する原因となり得る。
【0044】
通常、ヒートポンプ給湯機の沸き上げは、電気代の安価な深夜電力の時間帯を通じて行われる。深夜電力の開始時刻になると、ポンプ6によって貯湯タンク2内の硬度の高い原水が軟水化手段5へ送られる。
【0045】
ここで、軟水化手段5の処理室8へは水配管4を通じて原水が導入され、電極室9へは水配管4から分岐したガス混合水排出配管7を通じて原水が導入される。軟水化手段5において、原水中には硬度成分の炭酸カルシウムがイオン化した状態で処理室8の流路21の下部から流入し上方へ流れる。
【0046】
このとき、電極室9に設置された電極19には直流電圧が印加され、水分解イオン交換体20の陽イオン交換体22側の電極19にはプラスの電圧が印加され正極となる。一方、陰イオン交換体23側の電極19は負極となる。
【0047】
この結果、原水中のカルシウムイオンは陽イオン交換体22へ、炭酸イオンは陰イオン交換体23へ電気泳動して入り込む。そして、カルシウムイオンは、陽イオン交換体22の強酸性イオン交換基の−SOHの水素イオンとイオン交換し、炭酸イオンは、陰イオン交換体23の強塩基性イオン交換基の−NROHの水酸化物イオンとイオン交換する。
【0048】
こうして、流路21中の硬度成分は除去されて軟水化される。そして、軟水化された水は、処理室8の上部に接続された水配管4を通じて処理水が流出する。
【0049】
一方、電極室9では、電圧印加により正極となる電極19表面から酸素が発生し、陰極となる電極19から水素が発生する。ここで電極室9と処理室8は、ガス透過性の無い陽イオン交換膜24a及び陰イオン交換膜24bで隔離されているので、電極室9で発生したガスは処理室8に混入することなく、ガス混合水は電極室9の上部に設けられたガス混合水排出配管7を通じて排水配管11から外部へ排出される。
【0050】
ガス混合水は電極室9の下部から上部へ排出されるので、発生したガスは上部へ移動することにより、電極室9内でガスが滞留せずに原水と共に外部へ排出することができる。また、ガス混合水排出配管7の管径は水配管4よりも細くしているので、排水流量は軟水処理水の流量よりも小さくなりガス混合水の排水量を低減することができる。
【0051】
また、電極室9と処理室8は陽イオン交換膜24aと陰イオン交換膜24bで隔離されているので、軟水化処理時に電圧印加により処理室8の水分解イオン交換体20で硬度成分のカルシウムイオンがイオン交換して除去されると共に、陽イオン交換膜24aをカルシウムイオンが透過して電極室内へ移動して外部へ排水されるので、硬度成分の除去性能を向上することができる。
【0052】
こうして、軟水化手段5で軟水化処理された水はガスが混入されることなく、水配管4を通じてヒートポンプユニット10の水熱交換器14に流入する。
【0053】
ヒートポンプサイクル17において、圧縮機13の運転により空気熱交換器15内の冷媒が蒸発し外気の熱を吸熱する。そして、冷媒配管16を通じて外気を吸熱した冷媒が高圧に圧縮され水熱交換器14で放熱される。
【0054】
この熱により水熱交換器14内の水が加熱されて原水が沸き上げられる。ここで、加熱された処理水は硬度成分が除去されているので、水熱交換器14の内面で炭酸カルシウムや硫酸マグネシウムといったスケールが付着することを防止することができる。そして、この水熱交換器14で沸き上げられた湯が貯湯タンク2の上部から導入される。
【0055】
このようにして、給湯機の沸き上げ時に、軟水化手段5で原水が軟水化され、処理水は水配管4を通って水熱交換器14で加熱されて軟水化処理された湯が貯湯タンク2に溜められる。使用者が風呂(図示せず)などにおいて湯を使用する時は、貯湯タンク2に溜められた上層の湯が風呂の浴槽へ供給される。
【0056】
次に、沸き上げ運転中あるいは沸き上げ完了後に軟水化手段5の再生工程が行われる。軟水化手段5の再生運転時、三方弁12により流路が排水配管11側へ切り換えられヒートポンプユニット10に処理水は導入されない。
【0057】
図3に示すように、再生工程においては軟水化手段5の電極19には軟水化時とは逆方向の電圧が印加される。陰イオン交換体23側の電極19が正極となり、陽イオン交換体22側の電極19は負極となる。水分解イオン交換体20の両側に電圧を印加すると、陽イオン交換体22と陰イオン交換体23の界面中のイオン成分が減少して抵抗が高くなり、ある時点で水の解離が行われ、水素イオン及び水酸化物イオンが生成する。陽イオン交換体22では、軟水化時にイオン交換されたカルシウムイオンが、生成した水素イオンとイオン交換し再生される。
【0058】
そして、カルシウムイオンは流路21中に放出される。一方、陰イオン交換体23では、軟水化時にイオン交換された炭酸イオンが、生成した水酸化物イオンとイオン交換し再生される。そして、炭酸イオンは流路21中に放出される。そして、処理室8内に放出された濃縮水は水配管4を通じて排水配管11から外部へ排水される。
【0059】
このとき、電極室9では軟水化処理時とは電極19の極性が反転し正極側から酸素が発生し、陰極側から水素が発生する。そして、軟水化処理時と同様に発生したガスは処理室8に混入することなく、ガス混合水は電極室9の上部に設けられたガス混合水排出配管7を通じて排水配管11から外部へ排出される。
【0060】
以上のように、本実施の形態においては、水配管4に、軟水化手段5を設け、軟水化手段5は、ケーシング18の内部に電極19と、電極19に挟まれて配置された陽イオン交換体22と陰イオン交換体23を有した水分解イオン交換体20と、電極19が配置されている電極室9と水分解イオン交換体20が配置されている処理室8を隔離するガス透過性の無い陽イオン交換膜24a、陰イオン交換膜24bを設け、電極19に電圧を印加して水分解イオン交換体20により処理室8内の水は軟水化処理して用いられ、電圧印加時に電極室9を通過する水は外部へ排水されることとしたことにより、電圧印加時に電極19表面部で発生したガスは、陽イオン交換膜24a及び陰イオン交換膜24bにより電極室9内に隔離されて給湯機外部へ排水され、軟水化処理した処理室8内の水にはガスは混入せずに供給されるので、貯湯タンク等のシステム内のガス溜まりを防止することができる。
【0061】
尚、本実施の形態において、隔離体24はイオン交換膜を適用した場合について説明したが、隔離体を陽イオン交換体と陰イオン交換体を有した水分解イオン交換体を用いても良い。水分解イオン交換体を適用すると、隔離体自身でも硬度成分のカルシウムイオンをイオン交換して除去することができるので、硬度成分の除去性能を向上することができる。
【0062】
また、隔離体をカルシウムイオンが透過して電極室内がカルシウムの高濃度状態になることがないので、隔離体のカルシウムスケール付着を抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態において、軟水化手段5は水熱交換器14の上流側に設置した場合について説明したが、他の位置に設置した場合においても同様にシステム内へのガス溜まりを防止することができる。
【0064】
また、本実施の形態において、水分解イオン交換体の陽イオン交換体22は強酸型、陰イオン交換体23は強塩基型のイオン交換体を適用したが、弱酸型、弱塩基型のイオン交換体を用いても同様の効果を得ることができる。
【0065】
図4に、他の給湯機の構成図を示す。図4において、ガス混合水排出配管7は水配管4と同等の配管径としている。そして、軟水化手段5の下流側において、ガス混合水排出配管7の合流後に開閉弁25を設けている。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0066】
以上のように構成された給湯機について、以下その動作について説明する。
【0067】
開閉弁25が閉状態のとき、軟水化手段5の電極室9には水は通過しない。一定時間経過後に開閉弁25は開状態となり、ガス混合水が、ガス混合水排出配管7を通じて排水配管11から排水され、排水後開閉弁25は閉状態となる。
【0068】
このように、間欠ガス混合水を排出することとしたことにより、電極室9を通過するガス混合水の排水量を低減することができる。また、ガス混合水排出配管7の管径を細くする必要がないので、ガス混合水排出配管7内でのスケール析出による配管詰まりを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明にかかる軟水化装置は、電気温水器やヒートポンプ給湯機、ガス燃焼機器等の給湯機や洗濯機等にも適用できる。
【符号の説明】
【0070】
4 水配管
5 軟水化手段
7 ガス混合水排出配管
8 処理室
9 電極室
19 電極
20 水分解イオン交換体
22 陽イオン交換体
23 陰イオン交換体
24a 陽イオン交換膜
24b 陰イオン交換膜
25 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、前記電極に挟まれて配置された陽イオン交換体、陰イオン交換体からなる水分解イオン交換体と、前記電極に電圧を印加して前記水分解イオン交換体により軟水化処理する処理室と、前記処理室と区画形成され、前記各電極を有する電極室とを備え、前記電極室を通過する水は、外部へ排水される構成としたことを特徴とする軟水化装置。
【請求項2】
前記処理室と前記電極室とを区画する隔離体を備え、軟水化処理時に、陰極となる電極に対向する前記隔離体を陽イオン交換膜、陽極となる電極に対向する前記隔離体を陰イオン交換膜としたことを特徴とする請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
前記水分解イオン交換体で、前記処理室と前記電極室とを区画形成する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項4】
前記電極室を通過する水は、前記電極室の下方から原水を供給し、前記電極室の上方から排出する構成としたことを特徴とする請求項1〜3にいずれか1項に記載の軟水化装置。
【請求項5】
前記電極室を通過する水量は、前記処理室で軟水化処理する水量よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の軟水化装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の軟水化装置を搭載した給湯機。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−81373(P2012−81373A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227101(P2010−227101)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】