軟骨再生促進剤
【課題】軟骨の再生を効率的に促進でき、かつ安全性の高い、優れた軟骨再生促進剤、並びに、前記軟骨再生促進剤を利用した医薬及び食品を提供すること。
【解決手段】ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有することを特徴とする軟骨再生促進剤、並びに、前記軟骨再生促進剤を含有する医薬及び食品である。
【解決手段】ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有することを特徴とする軟骨再生促進剤、並びに、前記軟骨再生促進剤を含有する医薬及び食品である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節軟骨の再生を促進する軟骨再生促進剤、並びに、前記軟骨再生促進剤を利用した医薬及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
関節内の骨の両端を覆い、骨と骨との間の衝撃を吸収するクッションの役割を担う軟骨は、通常、日々の磨耗と再生を繰り返しながら健全性を保っている。
しかしながら、例えば、疾患や外傷等により、軟骨は大きく損傷を受ける場合がある。また、加齢に伴う軟骨の磨り減りや弾力性の低下によっても、軟骨は損傷を受け易い状態となる。このような損傷に対して軟骨の再生が追いつかない状態となると、軟骨の機能は損なわれ、関節内の骨と骨との間の衝撃を吸収することができなくなり、関節内に炎症、痛みが発生する。
【0003】
このような軟骨の損傷に対する治療又は予防方法に関しては、従来から広く研究開発が行われており、例えば、軟骨の構成成分又はその前駆体を含む組成物を、経口や静注で体内に投与することにより、体内での軟骨の生合成を促す方法などが開発されてきた。
より具体的には、例えば、関節軟骨の水分を保ち、弾力を与える成分であるプロテオグリカン等の生成を促す、グルコサミンとコンドロイチン硫酸塩とを、それぞれ単独で、又は併用して使用することにより、軟骨損傷に対する治療効果が得られたことが報告されている(例えば、特許文献1参照)。また、グルコサミンと骨髄エキスとを併用することにより、グルコサミンの軟骨再生促進作用がより増強したことなども報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、例えば、前記したような様々な原因から、軟骨損傷を患う患者は多く、したがって、軟骨の再生を効率的に促進でき、かつ安全性の高い、新たな軟骨再生促進剤の開発が、未だ望まれているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特許第2971579号公報
【特許文献2】特開2001−322938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、軟骨の再生を効率的に促進でき、かつ安全性の高い、優れた軟骨再生促進剤、並びに、前記軟骨再生促進剤を利用した医薬及び食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、オリーブ(モクセイ科オリーブ属オリーブ:Olea europaea)等から得ることのできる成分であるヒドロキシチロソールが、優れた軟骨再生促進作用を有するという知見である。
【0008】
前記ヒドロキシチロソール(Hydroxytyrosol:2−(3,4−Dihydroxyphenyl)ethanol)は、後述する構造式(1)で表される化合物であり、従来から、メラニン生成抑制作用や過酸化脂質生成抑制作用を有しており、皮膚外用剤や浴用剤等として使用できることなどが知られていた(例えば、特開2004−26836号公報参照)。また、前記ヒドロキシチロソールとオレウロペインとを含有した処置剤を用い、リウマチ様関節炎等の炎症状態を処置する方法なども提案されている(例えば、特表2005−517033号公報参照)。
【0009】
しかしながら、前記ヒドロキシチロソールが優れた軟骨再生促進作用を有することは従来全く知られておらず、本発明者らの新たな知見である。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有することを特徴とする軟骨再生促進剤である。
<2> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかがオリーブ由来である前記<1>に記載の軟骨再生促進剤である。
<3> ヒドロキシチロソール前駆体がオレウロペインである前記<1>から<2>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<4> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを10質量%以上含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<5> オリーブ抽出物を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<6> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖とを組み合わせてなる前記<1>から<5>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<7> アミノ糖がグルコサミン塩酸塩である前記<6>に記載の軟骨再生促進剤である。
<8> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖との配合剤である前記<6>から<7>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<9> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有する薬剤と、アミノ糖を含有する薬剤とを含むキットである前記<6>から<7>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤を含有することを特徴とする医薬である。
<11> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤を含有することを特徴とする食品である。
【0011】
<12> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有することを特徴とするグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<13> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかがオリーブ由来である前記<12>に記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<14> ヒドロキシチロソール前駆体がオレウロペインである前記<12>から<13>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<15> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを10質量%以上含有する前記<12>から<14>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<16> オリーブ抽出物を含有する前記<12>から<15>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<17> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖とを組み合わせてなる前記<12>から<16>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<18> アミノ糖がグルコサミン塩酸塩である前記<17>に記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<19> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖との配合剤である前記<17>から<18>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<20> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有する薬剤と、アミノ糖を含有する薬剤とを含むキットである前記<17>から<18>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<21> 前記<12>から<20>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤を含有することを特徴とする医薬である。
<22> 前記<12>から<20>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤を含有することを特徴とする食品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、軟骨の再生を効率的に促進でき、かつ安全性の高い、優れた軟骨再生促進剤、並びに、前記軟骨再生促進剤を利用した医薬及び食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(軟骨再生促進剤)
本発明の軟骨再生促進剤は、ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれか(ヒドロキシチロソール及び/又はヒドロキシチロソール前駆体)を含有してなり、必要に応じて更にその他の成分を含有してなる。
【0014】
<ヒドロキシチロソール、ヒドロキシチロソール前駆体>
−ヒドロキシチロソール−
前記ヒドロキシチロソール(Hydroxytyrosol:2−(3,4−Dihydroxyphenyl)ethanol)は、後述する構造式(1)で表される化合物である。
【0015】
【化1】
【0016】
前記ヒドロキシチロソールは、その入手方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学的に合成されたものを使用してもよいし、天然物由来のものを使用してもよい。
前記ヒドロキシチロソールとして天然物由来のものを使用する場合、その由来としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、植物由来であることが好ましく、オリーブ(モクセイ科オリーブ属オリーブ:Olea europaea)由来であることがより好ましい。
【0017】
前記ヒドロキシチロソールは、例えば、前記オリーブの植物体から抽出することにより得ることができ、前記植物体としては、例えば、葉、茎、実などが挙げられる。
前記オリーブの植物体からの前記ヒドロキシチロソールの抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン等の水溶性有機溶媒又は含水有機溶媒を用いて抽出することができる。
【0018】
−ヒドロキシチロソール前駆体−
また、前記ヒドロキシチロソール前駆体とは、生体内の代謝反応によってヒドロキシチロソールへと変換される、ヒドロキシチロソールの前段階の物質をいう。
したがって、前記ヒドロキシチロソール前駆体の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、オレウロペイン(Oleuropein)などが好適に挙げられる。前記オレウロペインは、例えばヒトやラット等の哺乳動物が経口摂取した場合、体内で加水分解され、ヒドロキシチロソールに変換されることが知られている(例えば、Journal of Chromatography B,785(2003)47−56、及び、J.Nutr.132:409−417,2002参照)。したがって、前記ヒドロキシチロソール前駆体は、体内でヒドロキシチロソールへと代謝されることにより、前記ヒドロキシチロソールと同様の軟骨再生促進効果を奏することが可能である。
【0019】
前記オレウロペインの入手方法としても、前記ヒドロキシチロソール同様、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学的に合成されたものを使用してもよいし、天然物由来のものを使用してもよい。
前記オレウロペインとして天然物由来のものを使用する場合、その由来としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、植物由来であることが好ましく、オリーブ(モクセイ科オリーブ属オリーブ:Olea europaea)由来であることがより好ましい。
【0020】
前記オレウロペインは、例えば、前記オリーブの植物体から抽出することにより得ることができ、前記植物体としては、例えば、葉、茎、実などが挙げられる。
前記オリーブの植物体からの前記オレウロペインの抽出方法としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2002−128678号公報、特開2003−335693号公報などに記載の抽出方法を参照して抽出することができる。
【0021】
なお、前記ヒドロキシチロソール、及び、前記ヒドロキシチロソール前駆体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記軟骨再生促進剤中の、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記軟骨再生促進剤100質量%に対して、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。また、前記含有量の上限としては、特に制限はなく、前記含有量が高い程、より強い軟骨再生効果が期待できる。また、前記軟骨再生促進剤は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体そのものであってもよい。
【0023】
<アミノ糖との併用>
また、前記軟骨再生促進剤は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、アミノ糖とを組み合わせて(併用して)なるものであってもよい。
前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなるものであると、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン(中でも、ヒアルロン酸)の産生促進作用を高めることができる点で、有利である。軟骨細胞におけるグルコサミノグリカンの産生促進作用が高まることにより、更なる軟骨再生の促進が期待される。
【0024】
−アミノ糖−
前記アミノ糖としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコサミン(Glucosamine:2−amino−2−deoxyglucose)、マンノサミン(Mannosamine:2−amino−2−deoxymannose)、ガラクトサミン(Galactosamine:2−amino−2−deoxygalactose)、フコサミン(Fucosamine:2−amino−2,6−dideoxygalactose)、キノボサミン(Quinovosamine:2−amino−2,6−dideoxyglucose)、ラムノサミン(Rhamnosamine:2−amino−2,6−dideoxymannose)、これらの薬理学的に許容され得る塩などが挙げられる。また、これらのアミノ糖におけるアミノ基がアセチル化された化合物、及び前記化合物の薬理学的に許容され得る塩も、それぞれ前記アミノ糖の範囲内に含まれる。また、前記薬理学的に許容され得る塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩酸塩、硫酸塩等の無機塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩などが挙げられる。これらの中でも、塩酸塩が、特に好ましい。
中でも、前記アミノ糖としては、グルコサミン、ガラクトサミン、及びこれらの薬理学的に許容され得る塩が好ましく、グルコサミン塩酸塩がより好ましい。
【0025】
前記アミノ糖は、その入手方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学的に合成されたものを使用してもよいし、カニ・エビ等の甲殻から得られる天然物由来のものを使用してもよい。
【0026】
なお、前記アミノ糖は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなるものである場合、前記軟骨再生促進剤中の、前記アミノ糖の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記軟骨再生促進剤100質量%に対して、10〜90質量%が好ましく、15〜85質量%がより好ましく、20〜80質量%が特に好ましい。
【0028】
−含有量比−
前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなるものである場合、前記軟骨再生促進剤中の、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖との含有量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、質量比で、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体:前記アミノ糖=20:1〜1:100が好ましく、1:10〜1:70がより好ましい。
【0029】
−配合剤、キット−
なお、前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなる場合、前記軟骨再生促進剤としては、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とが混合された配合剤の状態であってもよいし、また、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体を含有する薬剤と、前記アミノ糖を含有する薬剤とを含む(前記2種の成分が混合されていない)、キットの状態であってもよい。
【0030】
(医薬)
本発明の医薬は、前記した本発明の軟骨再生促進剤を少なくとも含有してなり、必要に応じて更にその他の成分を含有してなる。
【0031】
前記医薬中の、前記軟骨再生促進剤の含有量としては、特に制限はなく、例えば、後述する前記医薬の剤型や、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。また、前記医薬は、前記軟骨再生促進剤そのものであってもよい。
【0032】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述するような医薬用の添加剤などが挙げられる。また、前記医薬中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
上記医薬としては、前記軟骨再生促進剤をそのまま、又は適当な添加剤を混和し、製剤化したものを使用する。
上記添加剤としては、一般に医薬に使用される、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、吸収促進剤等を挙げることができ、所望により、これらを適宜組み合わせて使用することもできる。
上記賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニトール、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。
上記結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等を挙げることができる。
上記滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール、コロイドシリカ等を挙げることができる。
上記崩壊剤としては、例えば結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等を挙げることができる。
上記着色剤としては、例えば三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カルミン、カラメル、β−カロチン、酸化チタン、タルク、リン酸リボフラビンナトリウム、黄色アルミニウムレーキ等、医薬品に添加することが許可されているものを挙げることができる。
上記矯味矯臭剤としては、例えばココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、メントール、竜脳、桂皮末等を挙げることができる。
上記乳化剤又は界面活性剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
上記溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、エタノール、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド等を挙げることができる。
上記懸濁化剤としては、前記界面活性剤のほか、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子を挙げることができる。
上記等張化剤としては、例えばブドウ糖、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール等を挙げることができる。
上記緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液を挙げることができる。
上記防腐剤としては、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等を挙げることができる。
上記抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等を挙げることができる。
上記安定化剤としては、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、トコフェロール等を挙げることができる。
上記吸収促進剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、トコフェロール、カルシフェロール等を挙げることができる。
【0034】
また、上記製剤としては、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤のような経口剤;坐剤、軟膏剤、眼軟膏剤、テープ剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤のような外用剤又は注射剤を挙げることができる。
上記経口剤は、上記添加剤を適宜組み合わせて製剤化する。なお、必要に応じてこれらの表面をコーティングしてもよい。
上記外用剤は、上記添加剤のうち、特に賦形剤、結合剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤又は吸収促進剤を適宜組み合わせて製剤化する。
上記注射剤は、上記添加剤のうち、特に乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤又は吸収促進剤を適宜組み合わせて製剤化する。
【0035】
なお、前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなる場合、前記医薬としては、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを同時に含んでなるものであってもよいし、また、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体を含有する薬剤と、前記アミノ糖を含有する薬剤との、組合せからなるものであってもよい。
【0036】
前記医薬は、前記した本発明の軟骨再生促進剤を少なくとも含むので、軟骨の再生を促進する効果に優れる。したがって、前記医薬は、軟骨損傷の治療又は予防用途に特に好適である。
【0037】
(食品)
本発明の食品は、前記した本発明の軟骨再生促進剤を少なくとも含有してなり、必要に応じて更にその他の成分を含有してなる。
【0038】
前記食品中の、前記軟骨再生促進剤の含有量としては、特に制限はなく、例えば、後述する前記食品の種類や、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。また、前記食品は、前記軟骨再生促進剤そのものであってもよい。
【0039】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種食品原料などが挙げられる。前記食品原料としても、特に制限はなく、例えば、後述する前記食品の種類等に応じて適宜選択することができる。また、前記食品中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
−食品の種類−
前記食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼリー、キャンディー、チョコレート、ビスケット等の菓子類;緑茶、紅茶、コーヒー、清涼飲料等の嗜好飲料;原料乳、ヨーグルト、アイスクリーム等の乳製品;野菜飲料、果実飲料、ジャム類等の野菜・果実加工品;ハム、ソーセージ、魚肉ソーセージ、かまぼこ等の食肉・魚肉加工品;スープ等の液体食品;パン類、麺類等の穀物加工品;などが挙げられる。これらの食品の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、通常の各種食品の製造方法に応じて、適宜製造することができる。
また、前記食品は、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口固形剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口液剤として製造されたものであってもよい。前記経口固形剤、経口液剤の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記した医薬の経口固形剤、経口液剤の製造方法にならい、製造することができる。
【0041】
なお、前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなる場合、前記食品としては、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを同時に含んでなるものであってもよいし、また、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体を含有する食品と、前記アミノ糖を含有する食品との、組合せからなるものであってもよい。
【0042】
前記食品は、前記した本発明の軟骨再生促進剤を少なくとも含むので、軟骨の再生を促進する効果に優れる。したがって、前記食品は、軟骨損傷の治療、改善、予防目的で摂取される、健康食品、機能性食品(例えば、栄養補助食品(サプリメント))として特に有用である。
【0043】
[使用]
前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品は、例えば、軟骨に損傷を有する患者等への適用に好適であり、これらの患者に投与することにより使用することができる。
前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品の投与対象動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、ハムスター、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サルなどが挙げられる。
また、前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、関節腔内への注入などが挙げられる。
また、前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の投与あたり、有効成分である前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体の量として、0.1〜500mg/kg体重が好ましく、1〜200mg/kg体重がより好ましい。
また、前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品の投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軟骨が損傷を受ける前に、予防的に投与されてもよいし、軟骨が損傷を受けた後に、治療的に投与されてもよい。
【0044】
[効果]
前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品は、軟骨の再生を促進する効果に優れるので、例えば、軟骨損傷を患う患者に投与することにより、前記患者の軟骨再生を効果的に促進することができる。
また、前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品は、その有効成分がオリーブ等の天然物から得ることのできる前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体であることから、安全性の高い点でも、有利である。
【0045】
(グルコサミノグリカン産生促進剤)
また、前記軟骨再生促進剤は、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン産生を促進させることによって、軟骨の再生を促進させていることが考えられる。したがって、本発明は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体を含有する、グルコサミノグリカン産生促進剤にも関する。また、本発明は、前記グルコサミノグリカン産生促進剤を含有する、医薬及び食品にも関する。
【0046】
ここで、前記グルコサミノグリカン(Glycosaminoglycan)とは、軟骨の構成成分の1種であり、その具体例としては、例えば、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)、ケラタン硫酸(Keratan sulfate)、コンドロイチン(Chondroitin)、コンドロイチン硫酸(Chondroitin sulfate)、デルマタン硫酸(Dermatan Sulfate)、ヘパリン(Heparin)、ヘパラン硫酸(Heparan sulfate)などが挙げられる。また、前記コンドロイチン硫酸としては、その構造の型に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、コンドロイチン硫酸Kなどが挙げられる。
【0047】
中でも、前記グルコサミノグリカン産生促進剤は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなることが好ましく、この場合、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン(中でも、ヒアルロン酸)の産生促進作用を高めることができる点で、有利である。
【0048】
なお、前記グルコサミノグリカン産生促進剤、並びにそれを含有する医薬及び食品における、各成分、各成分の含有量、製造方法、使用方法等の詳細は、前記した本発明の軟骨再生促進剤、並びに前記軟骨再生促進剤を含有する医薬及び食品における詳細と同様である。
【実施例】
【0049】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(製造例1:ヒドロキシチロソールの製造)
本発明に係るヒドロキシチロソールを以下の方法で製造した。
オリーブ葉100gを、含水80%エタノール500mL、液温50℃で3時間、3回抽出し、減圧下で200mLまで濃縮後、ろ過した。得られたろ液に塩酸を加え、pH2.0に調整後、液温50℃で24時間、酸分解を行い、冷却後、水酸化ナトリウムを加えて中和した。
次いで、スチレンジビニルベンゼン重合樹脂(三菱化成工業株式会社製、ダイヤイオンHP20)150mLに流速1.25mL/minで通液し、さらに水450mLを流速2.5mL/minで洗浄した。溶出は、含水20%エタノール450mLを流速2.5mL/minで流し、ヒドロキシチロソールを含む溶液を得た。
この溶液を減圧下で一定量まで濃縮し、濃縮液中にヒドロキシチロソールを45%含む抽出固形物を2.86g得た。
次いで、デキストリンを添加してヒドロキシチロソール含量20%に調製した。この調製液を凍結乾燥し、固形物6.43g(ヒドロキシチロソール20質量%含有品)を得た。
【0051】
(実施例1:ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用の検討(1))
前記製造例1で得られたヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用を、実験的に作製したウサギの関節軟骨障害モデルを用いて検討した。
【0052】
<方法>
(1)馴化飼育
雌雄各6例のウサギ(ニュージーランドホワイト、導入時16週齢、体重2.00〜2.55kg)を、1例/ケージ、温度23〜25℃、相対湿度50〜60%、明暗各12時間の照明サイクル、換気回数12回/時間の条件下で、1週間、馴化飼育した。この間、動物には市販の飼料及び殺菌水道水を自由摂取させた。
その後、各群雌雄各3例ずつとなるように、無作為に各2群に群分けを行った。その一方を対照群、残りをヒドロキシチロソール投与群(以下、HT群)とした。
馴化期間終了後、全例のウサギについて、後述の方法によって関節軟骨障害モデルを作製した。
【0053】
(2)関節軟骨障害モデルの作製
Minamiらの方法を参考に、ウサギの関節軟骨障害モデルを作製した(Macromol.Biosci.3,(2003)596−603、Carbohydrate Polymers.48,(2002)369−378、及び、Carbohydrate Polymers.54,(2003)251−262参照)。まず、各動物にペントバルビタールナトリウム(40mg/kg)を腹腔内投与し、麻酔を行った。次に、動物の左後肢膝関節部を剃毛し、0.5%グルコン酸クロルヘキシジン水溶液及び70%エタノール水溶液で消毒した。その後、膝関節部外側の皮膚を、大腿骨中央部付近から脛骨粗面方向に切開し、関節包を露出させ、関節包を切開した。さらに、膝蓋骨を内側方向にずらして、膝関節部分を完全に露出させた。ハンドドリルを使用して、大腿骨関節部の内側滑車稜に1つ、滑車溝に2つ、直径2mm、深さ4mmの穴を形成させた。切開部分を滅菌した生理食塩液で洗浄し、関節包を合成吸収糸で、皮下織・皮膚を同時にナイロン糸で、それぞれ縫合した。その後、1週間、皮膚縫合部をポビドンヨードで、1日1回、消毒し、また、10mg/kgの塩酸オキシテトラサイクリンを、1日2回、皮下投与した。
【0054】
(3)実験飼育
関節軟骨に障害を形成した後、HT群に対しては、前記製造例1で得られたヒドロキシチロソール20質量%含有品を水道水に溶解し、1日当たり500mg/kg(ヒドロキシチロソールとして100mg/kg)、給水瓶を使用して、21日間混水投与した。薬物を全量摂取したことを確認した後、殺菌水道水に切り替えた。対照群に対しては、殺菌水道水を自由摂取させた。
【0055】
―一般状態の観察―
実験飼育期間中、各ウサギの下痢、食欲、毛艶の様子を観察した。また、1週間ごとに体重を測定した。
【0056】
―関節部の肉眼所見―
実験飼育終了後、全ての動物にペントバルビタールナトリウム(80mg/kg)を静脈内投与し、過麻酔で安楽死させた。その後、膝関節部を切開し、肉眼で関節部の状態を観察し、軟骨の傷の治癒の程度を以下の基準で評価した。
[評価基準]
− :治癒の程度が50%未満
+ :治癒の程度が50〜60%
++ :治癒の程度が60〜80%
+++:治癒の程度が80〜100%
更に、上記の評価を数字に割り当て、(−)を0点、(+)を1点、(++)を2点、(+++)を3点として関節軟骨の治癒の程度を数値化し、対照群とHT群との間で、Mann−WhitneyのU検定を行った。
【0057】
―筋重量の測定―
各動物について、左右の外側広筋及び大腿二頭筋をそれぞれ採取し、重量を測定した。軟骨障害を作製した側の筋重量について、反対側の筋重量との比を算出し、対照群とHT群との間で、Studentのt検定を行った。
【0058】
―病理組織学的検査―
各動物について大腿骨を採取し、10%中性緩衝ホルマリン液で固定した。その後、膝関節軟骨の障害形成部、正常部、及び成長帯(骨端線)部分から、それぞれ厚さ5mmの標本を切り出し、5%の蟻酸中で24時間振盪して脱灰した。さらに、5%硫酸ナトリウム水溶液で24時間中和し、流水で10時間洗浄した。常法に従いパラフィンに包埋し、ミクロトームを使用して、厚さ5μmに薄切した。その後、各標本に対して、ヘマトキシリン・エオジン染色を施して、病理組織学的検査に供した。
【0059】
―画像解析―
上記と同様に、サフラニンO染色、アルシアンブルー染色を施した標本を作製し、画像解析に供した。標本の200倍拡大像を、デジタルカメラ(Olympus DP70、オリンパス製)を使用して、コンピュータに取り込んだ。その後、無作為に2カ所(画素数20,000ピクセル)を抽出し、所定の色に染色された部位(サフラニンO染色部位:プロテオグリカンに相当、アルシアンブルー染色部位:グルコサミノグリカンに相当)の密度を計測した。計測値について、対照群とHT群との間で、Studentのt検定を行った。
【0060】
<結果>
―一般状態―
HT群、対照群ともに、一般状態(下痢、食欲、毛艶の様子等)に顕著な変化は見られなかった。また、試験期間中の体重変化において、HT群と対照群との間に有意差は見られなかった(データ示さず)。
【0061】
―関節部の肉眼所見―
軟骨障害を作製した直後の膝関節の様子を、図1の(a)に示した。矢印は上から順に、滑車溝近位の穴、滑車溝遠位の穴、内側滑車稜の穴を示す。
図1の(b)には、実験期間終了後の対照群の膝関節を示した。対照群では軟骨障害は完全には治癒しなかった。図1の(c)には、実験期間終了後のHT群の膝関節を示した。ヒドロシキシチロソールの投与により、軟骨の再生が促進された。
【0062】
下記表1は、手術から3週間後の軟骨障害部の治癒の様子を各個体で肉眼観察した結果をまとめた表である。なお、−〜+++の評価基準は前述の通りである。
【0063】
【表1】
【0064】
上記の結果を数値化して比較したところ、HT群は対照群と比べて、有意に軟骨治癒が促進されていた(p<0.05)。
また、各群の数値化データの平均値は、対照群が4.83であったのに対して、HT群では7.17であった(図2)。
【0065】
―筋重量―
算出した外側広筋と大腿二頭筋の重量比を表2に、対照群とHT群との比較を図3に示した。
【0066】
【表2】
【0067】
対照群では、外側広筋と大腿二頭筋の筋重量の顕著な減少が観察された。一方、HT群では、外側広筋の筋重量はわずかに減少したが、大腿二頭筋の筋重量の減少はほとんど見られなかった。
【0068】
―病理組織学的検査―
対照群及びHT群の病理組織像を図4に示した。
図4の(a)〜(b)は障害形成部位のヘマトキシリン・エオジン染色像を、(c)〜(d)はサフラニンO染色像を、(e)〜(f)はアルシアンブルー染色像を示す。なお、図4の左列(a)、(c)、(e)は対照群を、右列(b)、(d)、(f)はHT群をそれぞれ示す。
対照群では、障害形成部位に、マクロファージ及び破骨細胞の浸潤、毛細血管、繊維芽細胞の増殖が認められたが、軟骨細胞の新生はわずかであった。
一方、HT群では、結合組織はわずかであり、成熟した軟骨細胞が広範囲で認められた。また、破骨細胞及び毛細血管の増殖像が見られなかったことから、軟骨組織の再生は、ほぼ終了しているものと推測された。
【0069】
―画像解析―
対照群及びHT群の画像解析結果を図5〜6に示した。図5はサフラニンO染色の画像解析結果、図6はアルシアンブルー染色の画像解析結果である。
軟骨の障害形成部位では、対照群と比較してHT群では、サフラニンO染色で染色された部位の密度が有意に増加していた。したがって、HT群ではプロテオグリカンの生成が促進されたことが明らかになった。一方、軟骨の正常部位及び成長帯では、対照群とHT群の間に差は認められなかった(図5)。
【0070】
(実施例2:ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用の検討(2))
実施例1と同様の方法で、ヒドロキシチロソール(1日当たり100mg/kg、HT群)、及び、比較対照としてのグルコサミン塩酸塩(1日当たり800mg/kg、以下、GAH群)の軟骨再生促進作用を検討した。なお、対照群は実施例1と同様に設定した。
【0071】
<結果>
―一般状態の観察―
対照群、HT群及びGAH群のいずれにおいても、一般状態に変化はみられなかった。また、体重の推移もHT群及びGAH群ともに、対照群とほぼ同様であった。
【0072】
―関節部の肉眼所見―
軟骨障害を作製した直後の膝関節の様子を、図7の(a)に示した。
図7の(b)には、実験期間終了後の対照群の膝関節を示した。対照群では軟骨障害は完全には治癒しなかった。図7の(c)及び(d)には、それぞれ、実験期間終了後のHT群及びGAH群の膝関節を示した。ヒドロシキシチロソール又はグルコサミン塩酸塩の投与により、軟骨の再生が促進された。
下記表3は、実施例1と同様に、手術から3週間後の軟骨障害部の治癒の様子を各個体で肉眼観察した結果をまとめた表である。
【0073】
【表3】
【0074】
上記の結果を数値化して比較したところ、対照群と比べて、HT群(p<0.01)、GAH群(p<0.05)ともに有意に軟骨治癒が促進されていた。
また、各群の数値化データの平均値は、対照群が5.33であったのに対して、HT群では8.17、GAH群では7.17であり、HT群の方がGAH群よりも、軟骨再生が促進されていた(図8)。
【0075】
―筋重量―
算出した外側広筋と大腿二頭筋の重量比を表4に、対照群、HT群及びGAH群の比較を図9に示した。
【0076】
【表4】
【0077】
対照群及びGAH群では、特に大腿二頭筋の筋重量の顕著な減少が観察され、また、外側広筋についてもやや筋重量の減少が見られたのに対し、HT群では、外側広筋、大腿二頭筋ともに筋重量の減少はほとんど見られなかった。
【0078】
―病理組織学的検査―
対照群、HT群及びGAH群の病理組織像を図10に示した。
図10の(a)〜(c)はヘマトキシリン・エオジン染色像を、(d)〜(f)はサフラニンO染色像を示す。なお、図10の(a)、(d)は対照群を、(b)、(e)はGAH群を、(c)、(f)はHT群をそれぞれ示す。
対照群では、障害形成部位に、マクロファージ及び破骨細胞の浸潤、毛細血管、繊維芽細胞の増殖が認められたが、軟骨細胞の新生はわずかであった。
一方、HT群では、結合組織はわずかであり、成熟した軟骨細胞が広範囲で認められた。また、破骨細胞及び毛細血管の増殖像が見られなかったことから、軟骨組織の再生は、ほぼ終了しているものと推測された。
GAH群では、HT群とほぼ同様の所見が認められた。
【0079】
―画像解析―
対照群、HT群及びGAH群の画像解析結果を図11〜12に示した。図11はサフラニンO染色の画像解析結果、図12はアルシアンブルー染色の画像解析結果である。
対照群と比較してHT群及びGAH群では、軟骨の障害形成部位のサフラニンO染色で染色された部位の密度が有意に増加していた。したがって、HT群及びGAH群ではプロテオグリカンの生成が促進されたことが明らかになった。また、GAH群よりもHT群の方が、プロテオグリカンの生成はより促進されていた。一方、軟骨の正常部位及び成長帯では、対照群とHT群、GAH群の間に差は認められなかった(図11)。
【0080】
以上の実施例1〜2の結果から、本発明の軟骨再生促進剤は、軟骨障害の治癒(軟骨再生)を促進する作用を有することが示された。また、本発明の軟骨再生促進剤による一般状態への有害な作用が観察されなかったことから、本発明の軟骨再生促進剤の安全性も確認された。
【0081】
(実施例3:ヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩の併用効果)
ヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩の、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン産生促進作用及びヒアルロン酸産生促進作用を評価した。
【0082】
ウサギ軟骨細胞(ウサギ関節軟骨初代培養細胞、F−8、セルガレージ社)を、リン酸緩衝生理食塩液で洗浄した後、0.05%トリプシン−EDTA溶液で細胞を単離させた。
単離させた軟骨細胞を、10% FBS、100U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、100μM アスコルビン酸−2−リン酸エステル三ナトリウム(SIGMA社)、及び25mM HEPES(Invitrogen社)を含むDMEM培地で、37℃、5%CO2、湿潤条件下で維持培養した。
コラーゲンでコートした24穴ウェルプレートに、1ウェル当たり2.5×105個(1ml/ウェル)の上記軟骨細胞を播種し、7日間培養後、培地を吸引除去した。
その後、上記培養軟骨細胞に、最終濃度100ng/mlのヒドロキシチロソール(CAYMAN社、純度98%、以下HT群)、最終濃度4μg/mlのグルコサミン塩酸塩(東京健食有限会社、純度99%、以下GAH群)、又は、上記ヒドロキシチロソール及び上記グルコサミン塩酸塩の両者(以下、HT+GAH群)を混合溶解した上記培地2ml/ウェルを添加し、さらに12日間培養を行った。
なお、対照群として、薬物を添加しないで細胞を培養した群を設定した。
【0083】
−生残細胞数の測定、及び各産生量の測定−
12日間培養後の各群について、WST法で生残細胞数の測定を行った。
また、対照群に対する各実験群のグルコサミノグリカン、ヒアルロン酸の産生量の割合は、下記の式によって算出した。
式:((各実験群産生量/各実験群細胞数)×100)/(対照群産生量/対照群細胞数)
【0084】
1)グルコサミノグリカン産生量の測定
上記の培養細胞について、測定用キット(酸性ムコ多糖定量キット、セルガレージ社)を使用して、グルコサミノグリカンの産生量を測定した。
その結果、HT群、GAH群におけるグルコサミノグリカンの産生量は、対照群と比較して、それぞれ119.8%、147.0%であった。また、HT+GAH群における産生量は、対照群と比較して173.4%であり、ヒドロキシチロソールとグルコサミン塩酸塩を併用すると相乗効果が現れることが明らかになった(図13)。
【0085】
2)ヒアルロン酸産生量の測定
各群の培養細胞の上清を採取し、測定用キット(ヒアルロン酸定量キット、生化学工業社)を使用して、ヒアルロン酸の産生量を測定した。
その結果、HT群、GAH群におけるヒアルロン酸の産生量は、対照群と比較して、それぞれ82.9%、127.4%であった。また、HT+GAH群における産生量は、対照群と比較して245.2%であり、ヒドロキシチロソールとグルコサミン塩酸塩を併用すると相乗効果が現れることが明らかになった(図14)。
【0086】
以上の実施例3の結果から、本発明の軟骨再生促進剤は、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン産生を促進する作用を有することが示され、特にヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩の両者を併用する態様において、その作用(中でも、ヒアルロン酸産生促進作用)が相乗的に高まることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の軟骨再生促進剤、医薬、及び食品は、例えば、軟骨損傷を患う患者への適用に、特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用を示した図である。
【図2】図2は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用を示したグラフである。
【図3】図3は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールの筋重量における作用を示したグラフである。
【図4】図4は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用を組織学的に示した組織染色像である(×200)。
【図5】図5は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールのプロテオグリカン生成における作用を示したグラフである。
【図6】図6は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールのグルコサミノグリカン生成における作用を示したグラフである。
【図7】図7は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)の軟骨再生促進作用を示した図である。
【図8】図8は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)の軟骨再生促進作用を示したグラフである。
【図9】図9は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)の筋重量における作用を示したグラフである。
【図10】図10は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)の軟骨再生促進作用を組織学的に示した組織染色像である(×200)。
【図11】図11は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)のプロテオグリカン生成における作用を示したグラフである。
【図12】図12は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)のグルコサミノグリカン生成における作用を示したグラフである。
【図13】図13は、ウサギの軟骨細胞における、ヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩(併用)のグルコサミノグリカン産生促進作用を示したグラフである。
【図14】図14は、ウサギの軟骨細胞における、ヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩(併用)のヒアルロン酸産生促進作用を示したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節軟骨の再生を促進する軟骨再生促進剤、並びに、前記軟骨再生促進剤を利用した医薬及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
関節内の骨の両端を覆い、骨と骨との間の衝撃を吸収するクッションの役割を担う軟骨は、通常、日々の磨耗と再生を繰り返しながら健全性を保っている。
しかしながら、例えば、疾患や外傷等により、軟骨は大きく損傷を受ける場合がある。また、加齢に伴う軟骨の磨り減りや弾力性の低下によっても、軟骨は損傷を受け易い状態となる。このような損傷に対して軟骨の再生が追いつかない状態となると、軟骨の機能は損なわれ、関節内の骨と骨との間の衝撃を吸収することができなくなり、関節内に炎症、痛みが発生する。
【0003】
このような軟骨の損傷に対する治療又は予防方法に関しては、従来から広く研究開発が行われており、例えば、軟骨の構成成分又はその前駆体を含む組成物を、経口や静注で体内に投与することにより、体内での軟骨の生合成を促す方法などが開発されてきた。
より具体的には、例えば、関節軟骨の水分を保ち、弾力を与える成分であるプロテオグリカン等の生成を促す、グルコサミンとコンドロイチン硫酸塩とを、それぞれ単独で、又は併用して使用することにより、軟骨損傷に対する治療効果が得られたことが報告されている(例えば、特許文献1参照)。また、グルコサミンと骨髄エキスとを併用することにより、グルコサミンの軟骨再生促進作用がより増強したことなども報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、例えば、前記したような様々な原因から、軟骨損傷を患う患者は多く、したがって、軟骨の再生を効率的に促進でき、かつ安全性の高い、新たな軟骨再生促進剤の開発が、未だ望まれているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特許第2971579号公報
【特許文献2】特開2001−322938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、軟骨の再生を効率的に促進でき、かつ安全性の高い、優れた軟骨再生促進剤、並びに、前記軟骨再生促進剤を利用した医薬及び食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、オリーブ(モクセイ科オリーブ属オリーブ:Olea europaea)等から得ることのできる成分であるヒドロキシチロソールが、優れた軟骨再生促進作用を有するという知見である。
【0008】
前記ヒドロキシチロソール(Hydroxytyrosol:2−(3,4−Dihydroxyphenyl)ethanol)は、後述する構造式(1)で表される化合物であり、従来から、メラニン生成抑制作用や過酸化脂質生成抑制作用を有しており、皮膚外用剤や浴用剤等として使用できることなどが知られていた(例えば、特開2004−26836号公報参照)。また、前記ヒドロキシチロソールとオレウロペインとを含有した処置剤を用い、リウマチ様関節炎等の炎症状態を処置する方法なども提案されている(例えば、特表2005−517033号公報参照)。
【0009】
しかしながら、前記ヒドロキシチロソールが優れた軟骨再生促進作用を有することは従来全く知られておらず、本発明者らの新たな知見である。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有することを特徴とする軟骨再生促進剤である。
<2> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかがオリーブ由来である前記<1>に記載の軟骨再生促進剤である。
<3> ヒドロキシチロソール前駆体がオレウロペインである前記<1>から<2>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<4> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを10質量%以上含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<5> オリーブ抽出物を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<6> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖とを組み合わせてなる前記<1>から<5>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<7> アミノ糖がグルコサミン塩酸塩である前記<6>に記載の軟骨再生促進剤である。
<8> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖との配合剤である前記<6>から<7>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<9> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有する薬剤と、アミノ糖を含有する薬剤とを含むキットである前記<6>から<7>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤を含有することを特徴とする医薬である。
<11> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の軟骨再生促進剤を含有することを特徴とする食品である。
【0011】
<12> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有することを特徴とするグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<13> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかがオリーブ由来である前記<12>に記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<14> ヒドロキシチロソール前駆体がオレウロペインである前記<12>から<13>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<15> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを10質量%以上含有する前記<12>から<14>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<16> オリーブ抽出物を含有する前記<12>から<15>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<17> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖とを組み合わせてなる前記<12>から<16>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<18> アミノ糖がグルコサミン塩酸塩である前記<17>に記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<19> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖との配合剤である前記<17>から<18>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<20> ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有する薬剤と、アミノ糖を含有する薬剤とを含むキットである前記<17>から<18>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤である。
<21> 前記<12>から<20>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤を含有することを特徴とする医薬である。
<22> 前記<12>から<20>のいずれかに記載のグルコサミノグリカン産生促進剤を含有することを特徴とする食品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、軟骨の再生を効率的に促進でき、かつ安全性の高い、優れた軟骨再生促進剤、並びに、前記軟骨再生促進剤を利用した医薬及び食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(軟骨再生促進剤)
本発明の軟骨再生促進剤は、ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれか(ヒドロキシチロソール及び/又はヒドロキシチロソール前駆体)を含有してなり、必要に応じて更にその他の成分を含有してなる。
【0014】
<ヒドロキシチロソール、ヒドロキシチロソール前駆体>
−ヒドロキシチロソール−
前記ヒドロキシチロソール(Hydroxytyrosol:2−(3,4−Dihydroxyphenyl)ethanol)は、後述する構造式(1)で表される化合物である。
【0015】
【化1】
【0016】
前記ヒドロキシチロソールは、その入手方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学的に合成されたものを使用してもよいし、天然物由来のものを使用してもよい。
前記ヒドロキシチロソールとして天然物由来のものを使用する場合、その由来としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、植物由来であることが好ましく、オリーブ(モクセイ科オリーブ属オリーブ:Olea europaea)由来であることがより好ましい。
【0017】
前記ヒドロキシチロソールは、例えば、前記オリーブの植物体から抽出することにより得ることができ、前記植物体としては、例えば、葉、茎、実などが挙げられる。
前記オリーブの植物体からの前記ヒドロキシチロソールの抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン等の水溶性有機溶媒又は含水有機溶媒を用いて抽出することができる。
【0018】
−ヒドロキシチロソール前駆体−
また、前記ヒドロキシチロソール前駆体とは、生体内の代謝反応によってヒドロキシチロソールへと変換される、ヒドロキシチロソールの前段階の物質をいう。
したがって、前記ヒドロキシチロソール前駆体の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、オレウロペイン(Oleuropein)などが好適に挙げられる。前記オレウロペインは、例えばヒトやラット等の哺乳動物が経口摂取した場合、体内で加水分解され、ヒドロキシチロソールに変換されることが知られている(例えば、Journal of Chromatography B,785(2003)47−56、及び、J.Nutr.132:409−417,2002参照)。したがって、前記ヒドロキシチロソール前駆体は、体内でヒドロキシチロソールへと代謝されることにより、前記ヒドロキシチロソールと同様の軟骨再生促進効果を奏することが可能である。
【0019】
前記オレウロペインの入手方法としても、前記ヒドロキシチロソール同様、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学的に合成されたものを使用してもよいし、天然物由来のものを使用してもよい。
前記オレウロペインとして天然物由来のものを使用する場合、その由来としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、植物由来であることが好ましく、オリーブ(モクセイ科オリーブ属オリーブ:Olea europaea)由来であることがより好ましい。
【0020】
前記オレウロペインは、例えば、前記オリーブの植物体から抽出することにより得ることができ、前記植物体としては、例えば、葉、茎、実などが挙げられる。
前記オリーブの植物体からの前記オレウロペインの抽出方法としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2002−128678号公報、特開2003−335693号公報などに記載の抽出方法を参照して抽出することができる。
【0021】
なお、前記ヒドロキシチロソール、及び、前記ヒドロキシチロソール前駆体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記軟骨再生促進剤中の、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記軟骨再生促進剤100質量%に対して、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。また、前記含有量の上限としては、特に制限はなく、前記含有量が高い程、より強い軟骨再生効果が期待できる。また、前記軟骨再生促進剤は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体そのものであってもよい。
【0023】
<アミノ糖との併用>
また、前記軟骨再生促進剤は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、アミノ糖とを組み合わせて(併用して)なるものであってもよい。
前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなるものであると、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン(中でも、ヒアルロン酸)の産生促進作用を高めることができる点で、有利である。軟骨細胞におけるグルコサミノグリカンの産生促進作用が高まることにより、更なる軟骨再生の促進が期待される。
【0024】
−アミノ糖−
前記アミノ糖としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコサミン(Glucosamine:2−amino−2−deoxyglucose)、マンノサミン(Mannosamine:2−amino−2−deoxymannose)、ガラクトサミン(Galactosamine:2−amino−2−deoxygalactose)、フコサミン(Fucosamine:2−amino−2,6−dideoxygalactose)、キノボサミン(Quinovosamine:2−amino−2,6−dideoxyglucose)、ラムノサミン(Rhamnosamine:2−amino−2,6−dideoxymannose)、これらの薬理学的に許容され得る塩などが挙げられる。また、これらのアミノ糖におけるアミノ基がアセチル化された化合物、及び前記化合物の薬理学的に許容され得る塩も、それぞれ前記アミノ糖の範囲内に含まれる。また、前記薬理学的に許容され得る塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩酸塩、硫酸塩等の無機塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩などが挙げられる。これらの中でも、塩酸塩が、特に好ましい。
中でも、前記アミノ糖としては、グルコサミン、ガラクトサミン、及びこれらの薬理学的に許容され得る塩が好ましく、グルコサミン塩酸塩がより好ましい。
【0025】
前記アミノ糖は、その入手方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学的に合成されたものを使用してもよいし、カニ・エビ等の甲殻から得られる天然物由来のものを使用してもよい。
【0026】
なお、前記アミノ糖は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなるものである場合、前記軟骨再生促進剤中の、前記アミノ糖の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記軟骨再生促進剤100質量%に対して、10〜90質量%が好ましく、15〜85質量%がより好ましく、20〜80質量%が特に好ましい。
【0028】
−含有量比−
前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなるものである場合、前記軟骨再生促進剤中の、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖との含有量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、質量比で、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体:前記アミノ糖=20:1〜1:100が好ましく、1:10〜1:70がより好ましい。
【0029】
−配合剤、キット−
なお、前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなる場合、前記軟骨再生促進剤としては、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とが混合された配合剤の状態であってもよいし、また、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体を含有する薬剤と、前記アミノ糖を含有する薬剤とを含む(前記2種の成分が混合されていない)、キットの状態であってもよい。
【0030】
(医薬)
本発明の医薬は、前記した本発明の軟骨再生促進剤を少なくとも含有してなり、必要に応じて更にその他の成分を含有してなる。
【0031】
前記医薬中の、前記軟骨再生促進剤の含有量としては、特に制限はなく、例えば、後述する前記医薬の剤型や、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。また、前記医薬は、前記軟骨再生促進剤そのものであってもよい。
【0032】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述するような医薬用の添加剤などが挙げられる。また、前記医薬中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
上記医薬としては、前記軟骨再生促進剤をそのまま、又は適当な添加剤を混和し、製剤化したものを使用する。
上記添加剤としては、一般に医薬に使用される、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、吸収促進剤等を挙げることができ、所望により、これらを適宜組み合わせて使用することもできる。
上記賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニトール、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。
上記結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等を挙げることができる。
上記滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール、コロイドシリカ等を挙げることができる。
上記崩壊剤としては、例えば結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等を挙げることができる。
上記着色剤としては、例えば三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カルミン、カラメル、β−カロチン、酸化チタン、タルク、リン酸リボフラビンナトリウム、黄色アルミニウムレーキ等、医薬品に添加することが許可されているものを挙げることができる。
上記矯味矯臭剤としては、例えばココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、メントール、竜脳、桂皮末等を挙げることができる。
上記乳化剤又は界面活性剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
上記溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、エタノール、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド等を挙げることができる。
上記懸濁化剤としては、前記界面活性剤のほか、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子を挙げることができる。
上記等張化剤としては、例えばブドウ糖、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール等を挙げることができる。
上記緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液を挙げることができる。
上記防腐剤としては、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等を挙げることができる。
上記抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等を挙げることができる。
上記安定化剤としては、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、トコフェロール等を挙げることができる。
上記吸収促進剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、トコフェロール、カルシフェロール等を挙げることができる。
【0034】
また、上記製剤としては、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤のような経口剤;坐剤、軟膏剤、眼軟膏剤、テープ剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤のような外用剤又は注射剤を挙げることができる。
上記経口剤は、上記添加剤を適宜組み合わせて製剤化する。なお、必要に応じてこれらの表面をコーティングしてもよい。
上記外用剤は、上記添加剤のうち、特に賦形剤、結合剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤又は吸収促進剤を適宜組み合わせて製剤化する。
上記注射剤は、上記添加剤のうち、特に乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤又は吸収促進剤を適宜組み合わせて製剤化する。
【0035】
なお、前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなる場合、前記医薬としては、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを同時に含んでなるものであってもよいし、また、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体を含有する薬剤と、前記アミノ糖を含有する薬剤との、組合せからなるものであってもよい。
【0036】
前記医薬は、前記した本発明の軟骨再生促進剤を少なくとも含むので、軟骨の再生を促進する効果に優れる。したがって、前記医薬は、軟骨損傷の治療又は予防用途に特に好適である。
【0037】
(食品)
本発明の食品は、前記した本発明の軟骨再生促進剤を少なくとも含有してなり、必要に応じて更にその他の成分を含有してなる。
【0038】
前記食品中の、前記軟骨再生促進剤の含有量としては、特に制限はなく、例えば、後述する前記食品の種類や、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができる。また、前記食品は、前記軟骨再生促進剤そのものであってもよい。
【0039】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種食品原料などが挙げられる。前記食品原料としても、特に制限はなく、例えば、後述する前記食品の種類等に応じて適宜選択することができる。また、前記食品中の前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
−食品の種類−
前記食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼリー、キャンディー、チョコレート、ビスケット等の菓子類;緑茶、紅茶、コーヒー、清涼飲料等の嗜好飲料;原料乳、ヨーグルト、アイスクリーム等の乳製品;野菜飲料、果実飲料、ジャム類等の野菜・果実加工品;ハム、ソーセージ、魚肉ソーセージ、かまぼこ等の食肉・魚肉加工品;スープ等の液体食品;パン類、麺類等の穀物加工品;などが挙げられる。これらの食品の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、通常の各種食品の製造方法に応じて、適宜製造することができる。
また、前記食品は、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口固形剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口液剤として製造されたものであってもよい。前記経口固形剤、経口液剤の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記した医薬の経口固形剤、経口液剤の製造方法にならい、製造することができる。
【0041】
なお、前記軟骨再生促進剤が、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなる場合、前記食品としては、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを同時に含んでなるものであってもよいし、また、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体を含有する食品と、前記アミノ糖を含有する食品との、組合せからなるものであってもよい。
【0042】
前記食品は、前記した本発明の軟骨再生促進剤を少なくとも含むので、軟骨の再生を促進する効果に優れる。したがって、前記食品は、軟骨損傷の治療、改善、予防目的で摂取される、健康食品、機能性食品(例えば、栄養補助食品(サプリメント))として特に有用である。
【0043】
[使用]
前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品は、例えば、軟骨に損傷を有する患者等への適用に好適であり、これらの患者に投与することにより使用することができる。
前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品の投与対象動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、ハムスター、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サルなどが挙げられる。
また、前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、関節腔内への注入などが挙げられる。
また、前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である患者の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の投与あたり、有効成分である前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体の量として、0.1〜500mg/kg体重が好ましく、1〜200mg/kg体重がより好ましい。
また、前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品の投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軟骨が損傷を受ける前に、予防的に投与されてもよいし、軟骨が損傷を受けた後に、治療的に投与されてもよい。
【0044】
[効果]
前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品は、軟骨の再生を促進する効果に優れるので、例えば、軟骨損傷を患う患者に投与することにより、前記患者の軟骨再生を効果的に促進することができる。
また、前記軟骨再生促進剤、前記医薬、及び前記食品は、その有効成分がオリーブ等の天然物から得ることのできる前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体であることから、安全性の高い点でも、有利である。
【0045】
(グルコサミノグリカン産生促進剤)
また、前記軟骨再生促進剤は、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン産生を促進させることによって、軟骨の再生を促進させていることが考えられる。したがって、本発明は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体を含有する、グルコサミノグリカン産生促進剤にも関する。また、本発明は、前記グルコサミノグリカン産生促進剤を含有する、医薬及び食品にも関する。
【0046】
ここで、前記グルコサミノグリカン(Glycosaminoglycan)とは、軟骨の構成成分の1種であり、その具体例としては、例えば、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)、ケラタン硫酸(Keratan sulfate)、コンドロイチン(Chondroitin)、コンドロイチン硫酸(Chondroitin sulfate)、デルマタン硫酸(Dermatan Sulfate)、ヘパリン(Heparin)、ヘパラン硫酸(Heparan sulfate)などが挙げられる。また、前記コンドロイチン硫酸としては、その構造の型に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、コンドロイチン硫酸Kなどが挙げられる。
【0047】
中でも、前記グルコサミノグリカン産生促進剤は、前記ヒドロキシチロソール及び/又は前記ヒドロキシチロソール前駆体と、前記アミノ糖とを組み合わせてなることが好ましく、この場合、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン(中でも、ヒアルロン酸)の産生促進作用を高めることができる点で、有利である。
【0048】
なお、前記グルコサミノグリカン産生促進剤、並びにそれを含有する医薬及び食品における、各成分、各成分の含有量、製造方法、使用方法等の詳細は、前記した本発明の軟骨再生促進剤、並びに前記軟骨再生促進剤を含有する医薬及び食品における詳細と同様である。
【実施例】
【0049】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(製造例1:ヒドロキシチロソールの製造)
本発明に係るヒドロキシチロソールを以下の方法で製造した。
オリーブ葉100gを、含水80%エタノール500mL、液温50℃で3時間、3回抽出し、減圧下で200mLまで濃縮後、ろ過した。得られたろ液に塩酸を加え、pH2.0に調整後、液温50℃で24時間、酸分解を行い、冷却後、水酸化ナトリウムを加えて中和した。
次いで、スチレンジビニルベンゼン重合樹脂(三菱化成工業株式会社製、ダイヤイオンHP20)150mLに流速1.25mL/minで通液し、さらに水450mLを流速2.5mL/minで洗浄した。溶出は、含水20%エタノール450mLを流速2.5mL/minで流し、ヒドロキシチロソールを含む溶液を得た。
この溶液を減圧下で一定量まで濃縮し、濃縮液中にヒドロキシチロソールを45%含む抽出固形物を2.86g得た。
次いで、デキストリンを添加してヒドロキシチロソール含量20%に調製した。この調製液を凍結乾燥し、固形物6.43g(ヒドロキシチロソール20質量%含有品)を得た。
【0051】
(実施例1:ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用の検討(1))
前記製造例1で得られたヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用を、実験的に作製したウサギの関節軟骨障害モデルを用いて検討した。
【0052】
<方法>
(1)馴化飼育
雌雄各6例のウサギ(ニュージーランドホワイト、導入時16週齢、体重2.00〜2.55kg)を、1例/ケージ、温度23〜25℃、相対湿度50〜60%、明暗各12時間の照明サイクル、換気回数12回/時間の条件下で、1週間、馴化飼育した。この間、動物には市販の飼料及び殺菌水道水を自由摂取させた。
その後、各群雌雄各3例ずつとなるように、無作為に各2群に群分けを行った。その一方を対照群、残りをヒドロキシチロソール投与群(以下、HT群)とした。
馴化期間終了後、全例のウサギについて、後述の方法によって関節軟骨障害モデルを作製した。
【0053】
(2)関節軟骨障害モデルの作製
Minamiらの方法を参考に、ウサギの関節軟骨障害モデルを作製した(Macromol.Biosci.3,(2003)596−603、Carbohydrate Polymers.48,(2002)369−378、及び、Carbohydrate Polymers.54,(2003)251−262参照)。まず、各動物にペントバルビタールナトリウム(40mg/kg)を腹腔内投与し、麻酔を行った。次に、動物の左後肢膝関節部を剃毛し、0.5%グルコン酸クロルヘキシジン水溶液及び70%エタノール水溶液で消毒した。その後、膝関節部外側の皮膚を、大腿骨中央部付近から脛骨粗面方向に切開し、関節包を露出させ、関節包を切開した。さらに、膝蓋骨を内側方向にずらして、膝関節部分を完全に露出させた。ハンドドリルを使用して、大腿骨関節部の内側滑車稜に1つ、滑車溝に2つ、直径2mm、深さ4mmの穴を形成させた。切開部分を滅菌した生理食塩液で洗浄し、関節包を合成吸収糸で、皮下織・皮膚を同時にナイロン糸で、それぞれ縫合した。その後、1週間、皮膚縫合部をポビドンヨードで、1日1回、消毒し、また、10mg/kgの塩酸オキシテトラサイクリンを、1日2回、皮下投与した。
【0054】
(3)実験飼育
関節軟骨に障害を形成した後、HT群に対しては、前記製造例1で得られたヒドロキシチロソール20質量%含有品を水道水に溶解し、1日当たり500mg/kg(ヒドロキシチロソールとして100mg/kg)、給水瓶を使用して、21日間混水投与した。薬物を全量摂取したことを確認した後、殺菌水道水に切り替えた。対照群に対しては、殺菌水道水を自由摂取させた。
【0055】
―一般状態の観察―
実験飼育期間中、各ウサギの下痢、食欲、毛艶の様子を観察した。また、1週間ごとに体重を測定した。
【0056】
―関節部の肉眼所見―
実験飼育終了後、全ての動物にペントバルビタールナトリウム(80mg/kg)を静脈内投与し、過麻酔で安楽死させた。その後、膝関節部を切開し、肉眼で関節部の状態を観察し、軟骨の傷の治癒の程度を以下の基準で評価した。
[評価基準]
− :治癒の程度が50%未満
+ :治癒の程度が50〜60%
++ :治癒の程度が60〜80%
+++:治癒の程度が80〜100%
更に、上記の評価を数字に割り当て、(−)を0点、(+)を1点、(++)を2点、(+++)を3点として関節軟骨の治癒の程度を数値化し、対照群とHT群との間で、Mann−WhitneyのU検定を行った。
【0057】
―筋重量の測定―
各動物について、左右の外側広筋及び大腿二頭筋をそれぞれ採取し、重量を測定した。軟骨障害を作製した側の筋重量について、反対側の筋重量との比を算出し、対照群とHT群との間で、Studentのt検定を行った。
【0058】
―病理組織学的検査―
各動物について大腿骨を採取し、10%中性緩衝ホルマリン液で固定した。その後、膝関節軟骨の障害形成部、正常部、及び成長帯(骨端線)部分から、それぞれ厚さ5mmの標本を切り出し、5%の蟻酸中で24時間振盪して脱灰した。さらに、5%硫酸ナトリウム水溶液で24時間中和し、流水で10時間洗浄した。常法に従いパラフィンに包埋し、ミクロトームを使用して、厚さ5μmに薄切した。その後、各標本に対して、ヘマトキシリン・エオジン染色を施して、病理組織学的検査に供した。
【0059】
―画像解析―
上記と同様に、サフラニンO染色、アルシアンブルー染色を施した標本を作製し、画像解析に供した。標本の200倍拡大像を、デジタルカメラ(Olympus DP70、オリンパス製)を使用して、コンピュータに取り込んだ。その後、無作為に2カ所(画素数20,000ピクセル)を抽出し、所定の色に染色された部位(サフラニンO染色部位:プロテオグリカンに相当、アルシアンブルー染色部位:グルコサミノグリカンに相当)の密度を計測した。計測値について、対照群とHT群との間で、Studentのt検定を行った。
【0060】
<結果>
―一般状態―
HT群、対照群ともに、一般状態(下痢、食欲、毛艶の様子等)に顕著な変化は見られなかった。また、試験期間中の体重変化において、HT群と対照群との間に有意差は見られなかった(データ示さず)。
【0061】
―関節部の肉眼所見―
軟骨障害を作製した直後の膝関節の様子を、図1の(a)に示した。矢印は上から順に、滑車溝近位の穴、滑車溝遠位の穴、内側滑車稜の穴を示す。
図1の(b)には、実験期間終了後の対照群の膝関節を示した。対照群では軟骨障害は完全には治癒しなかった。図1の(c)には、実験期間終了後のHT群の膝関節を示した。ヒドロシキシチロソールの投与により、軟骨の再生が促進された。
【0062】
下記表1は、手術から3週間後の軟骨障害部の治癒の様子を各個体で肉眼観察した結果をまとめた表である。なお、−〜+++の評価基準は前述の通りである。
【0063】
【表1】
【0064】
上記の結果を数値化して比較したところ、HT群は対照群と比べて、有意に軟骨治癒が促進されていた(p<0.05)。
また、各群の数値化データの平均値は、対照群が4.83であったのに対して、HT群では7.17であった(図2)。
【0065】
―筋重量―
算出した外側広筋と大腿二頭筋の重量比を表2に、対照群とHT群との比較を図3に示した。
【0066】
【表2】
【0067】
対照群では、外側広筋と大腿二頭筋の筋重量の顕著な減少が観察された。一方、HT群では、外側広筋の筋重量はわずかに減少したが、大腿二頭筋の筋重量の減少はほとんど見られなかった。
【0068】
―病理組織学的検査―
対照群及びHT群の病理組織像を図4に示した。
図4の(a)〜(b)は障害形成部位のヘマトキシリン・エオジン染色像を、(c)〜(d)はサフラニンO染色像を、(e)〜(f)はアルシアンブルー染色像を示す。なお、図4の左列(a)、(c)、(e)は対照群を、右列(b)、(d)、(f)はHT群をそれぞれ示す。
対照群では、障害形成部位に、マクロファージ及び破骨細胞の浸潤、毛細血管、繊維芽細胞の増殖が認められたが、軟骨細胞の新生はわずかであった。
一方、HT群では、結合組織はわずかであり、成熟した軟骨細胞が広範囲で認められた。また、破骨細胞及び毛細血管の増殖像が見られなかったことから、軟骨組織の再生は、ほぼ終了しているものと推測された。
【0069】
―画像解析―
対照群及びHT群の画像解析結果を図5〜6に示した。図5はサフラニンO染色の画像解析結果、図6はアルシアンブルー染色の画像解析結果である。
軟骨の障害形成部位では、対照群と比較してHT群では、サフラニンO染色で染色された部位の密度が有意に増加していた。したがって、HT群ではプロテオグリカンの生成が促進されたことが明らかになった。一方、軟骨の正常部位及び成長帯では、対照群とHT群の間に差は認められなかった(図5)。
【0070】
(実施例2:ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用の検討(2))
実施例1と同様の方法で、ヒドロキシチロソール(1日当たり100mg/kg、HT群)、及び、比較対照としてのグルコサミン塩酸塩(1日当たり800mg/kg、以下、GAH群)の軟骨再生促進作用を検討した。なお、対照群は実施例1と同様に設定した。
【0071】
<結果>
―一般状態の観察―
対照群、HT群及びGAH群のいずれにおいても、一般状態に変化はみられなかった。また、体重の推移もHT群及びGAH群ともに、対照群とほぼ同様であった。
【0072】
―関節部の肉眼所見―
軟骨障害を作製した直後の膝関節の様子を、図7の(a)に示した。
図7の(b)には、実験期間終了後の対照群の膝関節を示した。対照群では軟骨障害は完全には治癒しなかった。図7の(c)及び(d)には、それぞれ、実験期間終了後のHT群及びGAH群の膝関節を示した。ヒドロシキシチロソール又はグルコサミン塩酸塩の投与により、軟骨の再生が促進された。
下記表3は、実施例1と同様に、手術から3週間後の軟骨障害部の治癒の様子を各個体で肉眼観察した結果をまとめた表である。
【0073】
【表3】
【0074】
上記の結果を数値化して比較したところ、対照群と比べて、HT群(p<0.01)、GAH群(p<0.05)ともに有意に軟骨治癒が促進されていた。
また、各群の数値化データの平均値は、対照群が5.33であったのに対して、HT群では8.17、GAH群では7.17であり、HT群の方がGAH群よりも、軟骨再生が促進されていた(図8)。
【0075】
―筋重量―
算出した外側広筋と大腿二頭筋の重量比を表4に、対照群、HT群及びGAH群の比較を図9に示した。
【0076】
【表4】
【0077】
対照群及びGAH群では、特に大腿二頭筋の筋重量の顕著な減少が観察され、また、外側広筋についてもやや筋重量の減少が見られたのに対し、HT群では、外側広筋、大腿二頭筋ともに筋重量の減少はほとんど見られなかった。
【0078】
―病理組織学的検査―
対照群、HT群及びGAH群の病理組織像を図10に示した。
図10の(a)〜(c)はヘマトキシリン・エオジン染色像を、(d)〜(f)はサフラニンO染色像を示す。なお、図10の(a)、(d)は対照群を、(b)、(e)はGAH群を、(c)、(f)はHT群をそれぞれ示す。
対照群では、障害形成部位に、マクロファージ及び破骨細胞の浸潤、毛細血管、繊維芽細胞の増殖が認められたが、軟骨細胞の新生はわずかであった。
一方、HT群では、結合組織はわずかであり、成熟した軟骨細胞が広範囲で認められた。また、破骨細胞及び毛細血管の増殖像が見られなかったことから、軟骨組織の再生は、ほぼ終了しているものと推測された。
GAH群では、HT群とほぼ同様の所見が認められた。
【0079】
―画像解析―
対照群、HT群及びGAH群の画像解析結果を図11〜12に示した。図11はサフラニンO染色の画像解析結果、図12はアルシアンブルー染色の画像解析結果である。
対照群と比較してHT群及びGAH群では、軟骨の障害形成部位のサフラニンO染色で染色された部位の密度が有意に増加していた。したがって、HT群及びGAH群ではプロテオグリカンの生成が促進されたことが明らかになった。また、GAH群よりもHT群の方が、プロテオグリカンの生成はより促進されていた。一方、軟骨の正常部位及び成長帯では、対照群とHT群、GAH群の間に差は認められなかった(図11)。
【0080】
以上の実施例1〜2の結果から、本発明の軟骨再生促進剤は、軟骨障害の治癒(軟骨再生)を促進する作用を有することが示された。また、本発明の軟骨再生促進剤による一般状態への有害な作用が観察されなかったことから、本発明の軟骨再生促進剤の安全性も確認された。
【0081】
(実施例3:ヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩の併用効果)
ヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩の、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン産生促進作用及びヒアルロン酸産生促進作用を評価した。
【0082】
ウサギ軟骨細胞(ウサギ関節軟骨初代培養細胞、F−8、セルガレージ社)を、リン酸緩衝生理食塩液で洗浄した後、0.05%トリプシン−EDTA溶液で細胞を単離させた。
単離させた軟骨細胞を、10% FBS、100U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、100μM アスコルビン酸−2−リン酸エステル三ナトリウム(SIGMA社)、及び25mM HEPES(Invitrogen社)を含むDMEM培地で、37℃、5%CO2、湿潤条件下で維持培養した。
コラーゲンでコートした24穴ウェルプレートに、1ウェル当たり2.5×105個(1ml/ウェル)の上記軟骨細胞を播種し、7日間培養後、培地を吸引除去した。
その後、上記培養軟骨細胞に、最終濃度100ng/mlのヒドロキシチロソール(CAYMAN社、純度98%、以下HT群)、最終濃度4μg/mlのグルコサミン塩酸塩(東京健食有限会社、純度99%、以下GAH群)、又は、上記ヒドロキシチロソール及び上記グルコサミン塩酸塩の両者(以下、HT+GAH群)を混合溶解した上記培地2ml/ウェルを添加し、さらに12日間培養を行った。
なお、対照群として、薬物を添加しないで細胞を培養した群を設定した。
【0083】
−生残細胞数の測定、及び各産生量の測定−
12日間培養後の各群について、WST法で生残細胞数の測定を行った。
また、対照群に対する各実験群のグルコサミノグリカン、ヒアルロン酸の産生量の割合は、下記の式によって算出した。
式:((各実験群産生量/各実験群細胞数)×100)/(対照群産生量/対照群細胞数)
【0084】
1)グルコサミノグリカン産生量の測定
上記の培養細胞について、測定用キット(酸性ムコ多糖定量キット、セルガレージ社)を使用して、グルコサミノグリカンの産生量を測定した。
その結果、HT群、GAH群におけるグルコサミノグリカンの産生量は、対照群と比較して、それぞれ119.8%、147.0%であった。また、HT+GAH群における産生量は、対照群と比較して173.4%であり、ヒドロキシチロソールとグルコサミン塩酸塩を併用すると相乗効果が現れることが明らかになった(図13)。
【0085】
2)ヒアルロン酸産生量の測定
各群の培養細胞の上清を採取し、測定用キット(ヒアルロン酸定量キット、生化学工業社)を使用して、ヒアルロン酸の産生量を測定した。
その結果、HT群、GAH群におけるヒアルロン酸の産生量は、対照群と比較して、それぞれ82.9%、127.4%であった。また、HT+GAH群における産生量は、対照群と比較して245.2%であり、ヒドロキシチロソールとグルコサミン塩酸塩を併用すると相乗効果が現れることが明らかになった(図14)。
【0086】
以上の実施例3の結果から、本発明の軟骨再生促進剤は、軟骨細胞におけるグルコサミノグリカン産生を促進する作用を有することが示され、特にヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩の両者を併用する態様において、その作用(中でも、ヒアルロン酸産生促進作用)が相乗的に高まることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の軟骨再生促進剤、医薬、及び食品は、例えば、軟骨損傷を患う患者への適用に、特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用を示した図である。
【図2】図2は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用を示したグラフである。
【図3】図3は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールの筋重量における作用を示したグラフである。
【図4】図4は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールの軟骨再生促進作用を組織学的に示した組織染色像である(×200)。
【図5】図5は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールのプロテオグリカン生成における作用を示したグラフである。
【図6】図6は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソールのグルコサミノグリカン生成における作用を示したグラフである。
【図7】図7は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)の軟骨再生促進作用を示した図である。
【図8】図8は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)の軟骨再生促進作用を示したグラフである。
【図9】図9は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)の筋重量における作用を示したグラフである。
【図10】図10は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)の軟骨再生促進作用を組織学的に示した組織染色像である(×200)。
【図11】図11は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)のプロテオグリカン生成における作用を示したグラフである。
【図12】図12は、ウサギの膝関節軟骨障害に対する、ヒドロキシチロソール、及びグルコサミン塩酸塩(比較対照)のグルコサミノグリカン生成における作用を示したグラフである。
【図13】図13は、ウサギの軟骨細胞における、ヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩(併用)のグルコサミノグリカン産生促進作用を示したグラフである。
【図14】図14は、ウサギの軟骨細胞における、ヒドロキシチロソール及びグルコサミン塩酸塩(併用)のヒアルロン酸産生促進作用を示したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有することを特徴とする軟骨再生促進剤。
【請求項2】
ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかがオリーブ由来である請求項1に記載の軟骨再生促進剤。
【請求項3】
ヒドロキシチロソール前駆体がオレウロペインである請求項1から2のいずれかに記載の軟骨再生促進剤。
【請求項4】
ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖とを組み合わせてなる請求項1から3のいずれかに記載の軟骨再生促進剤。
【請求項5】
アミノ糖がグルコサミン塩酸塩である請求項4に記載の軟骨再生促進剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の軟骨再生促進剤を含有することを特徴とする医薬。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の軟骨再生促進剤を含有することを特徴とする食品。
【請求項1】
ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかを含有することを特徴とする軟骨再生促進剤。
【請求項2】
ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかがオリーブ由来である請求項1に記載の軟骨再生促進剤。
【請求項3】
ヒドロキシチロソール前駆体がオレウロペインである請求項1から2のいずれかに記載の軟骨再生促進剤。
【請求項4】
ヒドロキシチロソール及びヒドロキシチロソール前駆体の少なくともいずれかと、アミノ糖とを組み合わせてなる請求項1から3のいずれかに記載の軟骨再生促進剤。
【請求項5】
アミノ糖がグルコサミン塩酸塩である請求項4に記載の軟骨再生促進剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の軟骨再生促進剤を含有することを特徴とする医薬。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の軟骨再生促進剤を含有することを特徴とする食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−133254(P2008−133254A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86357(P2007−86357)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(505080585)エーザイフード・ケミカル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(505080585)エーザイフード・ケミカル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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