説明

軟骨組織修復用組成物及びその製造方法

【課題】軟骨組織修復用組成物及びその製造方法の提供。
【構成】(a)凍結乾燥したフィブリノーゲンをアプロチニン溶液で溶解する段階と、(b)凍
結乾燥したトロンビンを安定化溶液で溶解させる段階と、(c)濃縮されたコラーゲン溶液
並びにトロンビン及び安定化溶液を混合する段階と、及び欠損した軟骨組織に混合して入
れ込む前に、デュアルシリンジキットの一側には前記(a)のフィブリノーゲン溶液を、そ
して、他側には前記(c)のコラーゲンが含有された溶液を充填する段階と、が含まれる。
本発明は、生体適合物質であるコラーゲンとフィブリンなどを混合して、欠損した軟骨組
織に移植可能な形態で組織修復をはかって再生を効果的に誘導するので、人間や動物に手
術に伴う負担を軽減しながら、より早くて効果的に軟骨修復及び再生を誘導するようにし
たものであり、これにより製品の品質と信頼性を大幅に向上させて、患者が満足すること
ができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟骨組織修復用組成物及びその製造方法に関するものであり、より詳細には
、生体適合物質であるコラーゲンとフィブリンなどを混合して、欠損した軟骨組織に移植
可能な形態で組織修復をはかって、再生を効果的に誘導することで、人間や動物に手術に
伴う負担を軽減しながらより早くて効果的に軟骨修復及び再生を誘導できるようにしたも
のである。この発明により製品の品質と信頼性を大幅に向上させて、患者が満足すること
ができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、関節軟骨は、骨端に付いている極度に滑らかであり、明るい光を帯びる
物質であり、その機能は、関節の運動時に摩擦及び摩耗抵抗を最小化して維持するもので
ある。関節軟骨が損傷すれば、摩擦が増加して次第に摩耗とびらん (erosion)を示して、
臨床的に痛症と機能障害を起こして、時間が経つにつれて関節に生じた関節軟骨損傷は、
次第に骨性関節炎に進行する。
【0003】
関節軟骨損傷の原因としては、転倒や直接打撃または回転力のような外傷と、関節炎、
骨壊死(Osteonecrosis)、炎症性関節炎(inflammatory arthritis)または離断性骨軟骨炎(
Osteochondritis dissecans)などの疾病があり、症状では痛症、むくみと引掛り感(catch
ing)などがある。関節軟骨損傷を治療するために過去数十年間に関節軟骨とその生理学的
な再生能力に対して数多くの研究がなされて来たし、多くの治療方法が試みられた。
【0004】
しかし、今まで報告された研究結果によると、関節軟骨は、損傷後再生しないために関
節軟骨欠損の治療は、薬物や物理治療などを利用した大衆的な治療に焦点が合わせられて
来た。今まで実施された関節軟骨欠損の治療をよく見れば、大きく非手術的療法と手術的
療法に分けることができるが、先ず、非手術的療法として、冷温あんぽうと非ステロイド
系の抗炎症剤(NSAID)などの薬物服用、ステロイドの関節内注射などの方法がある
。これらは、主に症状の緩和を目的としているが、病気の軽減に効果を与えることはでき
なかった。
【0005】
手術的療法としては、病巣清掃術(debridement)、ピックで穿孔する方法(microfrac
ture)、ドリリング/掻爬関節形成術(drilling/abrasion arthroplasty)、自家骨軟骨
移植術(autologous osteochondroal transplantation)のような修復術(reparative pr
ocedure)と軟骨細胞移植術と軟骨関節置換術が実施されている。最近になって手術的療
法として生体適合物質を軟骨の欠損部位に適用しようとする試みが複数ある。生体適合物
質とは、人間の身体中に入れても拒絶反応が起きない物質である。このような生体適合物
質は、損傷した組織及び臓器を正常な組織で取り替えるか、または再生させようとする積
極的な試みに用いられているし、これによって体内に移植可能な物質に対する関心が高く
なっている。
【0006】
人間の身体は、異物が入れば拒絶反応を現わす。このために器官の一部を他の物質で置
き替えることは大変難しい。生体適合物質は、身体との親和性を高めて外科医学の進歩に
大きな貢献をして来た。
【0007】
今まで診断または治療のために体内に挿入されて使用する医療機器の製作に利用されて
いる生体適合物質は、大きく人工材料と天然材料に区分することができる。人工材料は、
金属や無機物、セラミックス、合成高分子などがあって、これらが体内に挿入されて周り
の組織と接触する時に、たとえ、異物反応を起こさないとしても、それは、それ自体が生
命力を持っていることができないためであると言える。天然材料は、フィブリン、コラー
ゲン、ヒアルロン酸、キトサンなど多くの物質が研究開発されて製品化されている。
【0008】
人体の構造を形成して、生命機能を維持する物質は、大部分の場合、細胞と生物学的に
生成された高分子形態で存在する。多糖類やタンパク質は、その代表的な物質であり、こ
れらは人体内に存在する物質であるために、仮に、人工的にこれらを使用する時に免疫に
よる拒絶反応さえなければ最も天然状態に近い形態を付与することは勿論、成長機能まで
備えた人体組織の再生を期待することができる。
【0009】
したがって、天然組織を医療用生体材料として使って、無機物や合成高分子などには欠
けている生物学的機能を提供することで、人体内に挿入された無生物の生体材料と周りの
組織との間に生体適合性を有するように環境を提供するか、または、さらに延いては、天
然組織のような生体組織の役割ができるようにするものである。
【0010】
特に、フィブリンは、天然材料の接着剤/血止め薬として応用されて産業化されている
し、生体適合性及び生分解性を有する。フィブリンは、数週間内に一般的に傷治癒過程で
吸収されて、炎症反応、免疫反応、組織壊死、あるいは線維肥大症などの副作用がないも
のとして知られている。また、フィブリンは、線維芽細胞のための天然足場材などの形態
で傷治療に重要な役割を担当する。フィブリン製品は、1970年代に概念が定立されて
、1982年ヨーロッパで最初の製品が商業化されて現在まで使用されている。最近、多
くの研究でフィブリンは生体組織工学的足場材として立証されているし、整形外科、歯科
、神経外科など多様な分野で最適化のための努力がされている。
【0011】
コラーゲンは構造タンパク質成分であるが、真皮(dermis)、膝蓋腱/靭帯(tendon/ligam
ent)、血管など軟組織、そして骨、軟骨のような硬組織を構成して、哺乳類の場合、全体
タンパク質の1/3程度を占めている。コラーゲンの形態は、20種以上が知られている
し、肌や膝蓋腱/靭帯、骨などを構成するコラーゲンtypeIがコラーゲンのうちで9
0%程度を占めている。
【0012】
コラーゲンの構造は、3本で構成された分子量(molecular weight)300,000ダル
トン(Dalton)(一本100,000Dalton程度)のタンパク質であり、アミノ酸のうちで一
番小さな単位(分子量が一番小さい)であるグリシン(Glycine)が繰り返し的に(-GXY-
:Glycineは続いて繰り返し的に、X、Yは異なる構成)連結されている。よって、グリシ
ン(Glycine)がコラーゲンを構成するアミノ酸で1/3を占めている。そして、特異的に
コラーゲンにヒドロキシプロリン(Hydroxyproline)というアミノ酸がおよそ10%含ま
れていて、このアミノ酸をコラーゲン定量分析方法に活用している。
【0013】
コラーゲンを医療用として現在使っている分野は、血止め薬、創傷被覆剤、人工血管、
しわ改善用などに使用されているし、血止め薬の場合には1974年、子牛の皮(calf s
kin)から抽出したコラーゲン粉末形態である微線維性コラーゲン止血剤であるアビチン
(Avitene)という製品が最初に開発されて現在までも使用されている。
【0014】
コラーゲンを原料として使用する方法は、大きく3種に区分することができるが、純粋
なコラーゲンを分離して製品化する方法、組織自体の非細胞化/脱細胞化工程(acellular/
decellular process)を通じて加工する方法、そして、コラーゲンの特性を変化させて作
る方法などを挙げることができる。
【0015】
作る方法によって特長点があり得るが、純粋なコラーゲンで作る製品の場合には、物性
(引張強度、tensile strength)が弱くて、縫合する手術に使用するのに少し困難があるが
、製品の安全性と純度においては、優秀な製品であると言える。コラーゲンは、他の高分
子より引張強度や裂かれの強度が弱いために、他の物質(GAGや生体適合性合成高分子(
biocompatible synthetic polymer、PGA/PLAなど)のように混合する製品もある。
【0016】
このような、コラーゲンは、低い抗原性/高い生体適合性及び生体吸水性/細胞の付着、
成長及び分化誘導/血液凝固/血止め効果/他の高分子との適合性などの長所を持っている
。しかし、物性特性及び嵩を維持する特性が不足し、純粋なコラーゲンは価格が高いとい
う短所がある。
【0017】
これに、フィブリン糊が持っている嵩/弾性/粘着性の適切な物性とそれ自体が持ってい
る血止め効果を通じて軟骨修復及び再生に卓越な効果を発揮することができる生体適合物
質である。
【0018】
また、関節軟骨は、無血管性、無神経性組織であり、他の間葉系統の組織とは異なり非
常に制限された自家治療能力を持っている。よって、軟骨細胞培養に使用される培地構成
成分を含ませて、軟骨組織再生に使用される栄養分が供給される環境を造成することに目
的がある。
【0019】
一方、前記のような関節の軟骨組織は、一度損傷されれば、正常には生体内で再生され
ないものとして知られている。関節軟骨が損傷した場合、ひどい痛症と共に日常活動に制
限を受けるようになって、慢性化された場合、致命的な退行性関節炎を誘発するようにな
って、正常な生活が難しくなる。アメリカでは、毎年500,000件以上の関節形成術
及び全体関節代替術が行われているし、大略的にヨーロッパでも似ている手術件数が実行
されていると報告されている。
【0020】
したがって、軟骨欠損のための簡単な手術方法が要求されているし、コラーゲンとフィ
ブリン糊など生体適合物質を活用/移植することができる新しい方法が必要である。この
ような軟骨欠損治療方法は、関節損傷の初期段階で一番有用であり、この段階で遂行され
ることで、人工関節手術を要する患者らの数を減少させることができる。このような予防
的な治療方法によって、骨関節炎が発生する患者数がまた減少するものと考えられる。
【0021】
しかし、従来は前記したコラーゲンとフィブリン糊などの生体適合物を活用して軟骨組
織に移植する組成物及び容易に適用することができる方法がないということが大きな問題
点として指摘された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、前記のような従来技術の諸般の問題点を解消するために案出したものであり
、フィブリノーゲンとアプロチニン溶液、トロンビンと安定化溶液、そしてコラーゲン溶
液によって軟骨組織修復用組成物が具備されることを第1目的にしたものである。

【0023】
本発明の第2目的は、前記した技術的構成によって生体適合物質であるコラーゲンとフ
ィブリンなどを混合して欠損した軟骨組織に移植可能な形態で組織修復をはかって再生を
効果的に誘導することで、人間や動物に手術に伴う負担を軽減しながら、より早くて効果
的に軟骨修復及び再生を誘導できるようにしたものである。
【0024】
第3目的は、軟骨欠損を簡単な手術で可能にさせたものである。
【0025】
第4目的は、軟骨欠損治療が初期に可能であるので、関節手術を要する患者らの数を減
少させることができるようにしたものである。
【0026】
第5目的は、前記した予防的な治療方法によって骨関節炎が発生する患者数が減少する
効果を提供するようにしたことである。
【0027】
第6目的は、これらにより製品の品質と信頼性を大幅に向上させて患者が満足すること
ができるようにした軟骨組織修復用組成物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
このような目的達成のために、本発明は、(a)凍結乾燥したフィブリノーゲンをアプロ
チニン溶液で溶解する段階と、(b)凍結乾燥したトロンビンを安定化溶液で溶解させる段
階と、(c)濃縮されたコラーゲン溶液並びにトロンビン及び安定化溶液を混合する段階と
、及び欠損した軟骨組織に混合して入れ込む前に、デュアルシリンジキットの一側には、
前記(a)のフィブリノーゲン溶液を、そして他側には前記(c)のコラーゲンが含有された溶
液を充填する段階と、が含まれることを特徴とする軟骨組織修復用組成物の製造方法を提
供する。
【0029】
また、本発明は、前記した各段階の方法を経て最終軟骨組織修復用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0030】
前記で詳しく説明したように、本発明は、フィブリノーゲンとアプロチニン溶液、トロ
ンビンと安定化溶液、そして、コラーゲン溶液によって軟骨組織修復用組成物が具備され
るようにしたものである。
【0031】
本発明は、前記した技術的構成によって生体適合物質であるコラーゲンとフィブリンな
どを混合して、欠損した軟骨組織に移植可能な形態で組織修復をはかって再生を効果的に
誘導することで、人間や動物に手術に伴う負担を軽減しながら、より早くて効果的に軟骨
修復及び再生を誘導できるようにしたものである。
【0032】
そして、本発明は、軟骨欠損を簡単な手術で可能にさせたものである。併せて、本発明
は、軟骨欠損治療が初期に可能であるので、関節手術を要する患者らの数を減少させるこ
とができるようにしたものである。さらに、本発明は、前記した予防的な治療方法によっ
て骨関節炎が発生する患者数が減少する効果を提供するようになる。
【0033】
本発明は、前記した効果によって、製品の品質と信頼性を大幅に向上させて、患者が満
足することができるようにした非常に有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明に適用された軟骨組織修復用組成物の製造方法を示した構成図である。
【図2】図2は、本発明に適用された軟骨組織修復用組成物をデュアルシリンジキットに適用して使用する図面代用写真である。
【図3】図3は、本発明に適用された軟骨組織修復用組成物を動物(豚)の軟骨欠損部位に適用した図面代用写真である。
【図4】図4は、本発明に適用された軟骨組織修復用組成物を動物(兎) の軟骨欠損部位に適用した実験の肉眼観察結果の図面代用写真である。
【図5】図5は、本発明に適用された軟骨組織修復用組成物を動物(兎) の軟骨欠損部位に適用した実験の組織病理観察結果の図面代用写真である。
【図6】図6は、実施例で製作された固形物(本発明技術)とフィブリン糊製品(従来技術)の図面代用写真である。
【図7】図7は、実施例で製作された組成物内で軟骨細胞の生存率確認実験の結果を示す図面代用顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、このような効果達成のための本発明の望ましい実施例を添付された図面によ
って詳しく説明する。
【0036】
本発明に適用された軟骨組織修復用組成物及びその製造方法は、図1乃至図5に示され
たように構成されるものである。
【0037】
下記で本発明を説明する際に関連する公知機能または構成に対する具体的な説明が本発
明の要旨を却って曖昧にする惧れがあると判断される場合には、その詳細な説明は略する
であろう。
【0038】
そして、後述する用語は、本発明での機能を考慮して設定された用語であって、これは
生産者の意図または慣例によって変わることがあるので、本明細書の全般に亘る内容に基
づいて定義されるべきである。
【0039】
先ず、本発明は、生体適合物質であるコラーゲンとフィブリノーゲンを利用した固形物
を利用するものであり、軟骨再生の環境を造成するための栄養成分である安定化溶液を適
用する製造及び使用方法を提供するものであり、以下の各段階を経て軟骨組織修復用組成
物を製造する。
【0040】
すなわち、(a)凍結乾燥したフィブリノーゲンをアプロチニン溶液で溶解する段階を経
る。(b)以後、凍結乾燥したトロンビンを安定化溶液で溶解させる段階を経る。(c)そして
、濃縮されたコラーゲン溶液とトロンビン及び安定化溶液を混合する段階を経る。
【0041】
引き続き、損された軟骨組織に混合して入れ込む前に、デュアルシリンジキットの一側
には、前記(a)のフィブリノーゲン溶液を、そして、他側には前記(c)のコラーゲンが含有
された溶液を充填する段階と、を経て軟骨組織修復用組成物を製造する。
【0042】
この時、本発明に適用された前記フィブリノーゲンは、35〜55mg/mL、アプロチニ
ン溶液は1,500KIU/mL、トロンビンは29.41IU/mL、安定化溶液は0.65
mg/mL、コラーゲン溶液は13.23mg/mLが含まれることを特徴とする。そして、本発明
に適用された前記安定化溶液には塩化カルシウム0.26mg/mLが含まれる。
【0043】
また、本発明に適用された前記安定化溶液は、軟骨細胞培養に使用される培地であるD
MEM培地に塩化カルシウムを補強したものであり、前記DMEM培地は塩成分、アミノ
酸、ビタミンが含まれる。
【0044】
併せて、本発明に適用された前記安定化溶液の塩化カルシウムの濃度は、最終使用時に
0.1〜0.5mg/mLであることを特徴とする。さらに、本発明に適用された前記軟骨組
織修復用組成物に使用される塩化カルシウムの最終濃度は、2.78〜3.12mg/mLで
あることを特徴とする。
【0045】
また、本発明に適用された前記濃縮されたコラーゲン溶液は、無菌的にコラーゲンを準
備するために、5mg/mL以下のコラーゲンを孔径0.22μmフィルターを利用して、滅菌
処理して無菌操作を通じてコラーゲンを濃縮した溶液であることを特徴とする。
【0046】
最後に、本発明に適用された前記コラーゲンの濃縮度は、5〜100mg/mL濃度である
ことを特徴とする。
【0047】
前記した本発明に適用された安定化溶液の製造をより詳しく説明する。
【0048】
軟骨細胞培養に使用される培地であるDMEM培地に塩化カルシウムを補強した安定化
溶液を製造する。DMEM培地は、塩成分、アミノ酸、ビタミンなどが含まれた成分であ
る。安定化溶液は、塩化カルシウムを補強した溶液としては、濃度は0.2〜6mg/mLに
する。
【0049】
コラーゲンと安定化溶液の塩化カルシウムの濃度は、最終使用で0.1〜0.5mg/mL
にする。安定化溶液の塩化カルシウム濃度は、ゲル化程度の時間及びゲルの最大応力の範
囲として決めたし、ゲル化時間は3分内に完了する範囲とゲルの最大応力が10N以上を
見せる濃度として決めた。
【0050】
安定化溶液の最小範囲は、軟骨細胞培養条件に使用される最小濃度であり、0.5mg/m
Lは安定化のために確認された最大範囲である。常用されているフィブリン糊製品に使用
される塩化カルシウムの最終濃度は、2.78〜3.12mg/mLで細胞に影響を与えるこ
とができる濃度である。
【0051】
また、本発明に適用された濃縮コラーゲン製造をより詳しく説明する。
【0052】
使用されるコラーゲンは、望ましくは、高濃度の濃縮されたコラーゲンを利用する。
無菌的にコラーゲンを準備するために、5mg/mL以下のコラーゲンを孔径0.22μmフィ
ルターを利用して滅菌処理して無菌操作を通じてコラーゲンを濃縮する。
【0053】
フィルターのための濃度条件は、コラーゲンが300,000daltonの分子量を持って
いるし、コラーゲン分子の長さがおよそ300nmであるので、5mg/mL超の濃度ではフィ
ルタリングが難しい。
【0054】
コラーゲンの濃縮度は、5〜100mg/mL濃度範囲である。コラーゲンの濃縮度は、フ
ィルタリングが可能な5mg/mLから溶液として測定可能であり、扱うことができる(溶解及
び測定可能な)濃度である100mg/mLまで実行可能である。
【0055】
コラーゲンを濃縮する方法は、透析(Dialysis)や透析濾過(Diafiltration)または
pHと温度条件を利用して遠心分離などを使用する。濃縮されたコラーゲンは、プレフィ
ルドシリンジに盛って準備する。
【0056】
前記のようなコラーゲン並びにフィブリノーゲン及び安定化溶液の混合は、図2のとお
りである。
【0057】
フィブリン糊製品内に含まれた、凍結乾燥したフィブリノーゲンをアプロチニン溶液(
2cc)に溶解した後、シリンジに盛っておく。凍結乾燥したトロンビンを安定化溶液(2cc
)に溶解させた後、0.4ccシリンジに盛っておく。濃縮されたコラーゲン(3%、3cc)
溶液とトロンビン溶液を混合した後、2ccシリンジに盛っておく。
【0058】
設けられたフィブリノーゲン/アプロチニン溶液とコラーゲン/トロンビン溶液をデュア
ルシリンジキット(Dual kit)に充填して軟骨欠損部位に適用する。
【0059】
本組成に使用されるフィブリノーゲン(フィブリン糊)製品は、国家別に多様に使用され
ているし、国内で使用される製品は次の表1のとおりである。
【0060】
【表1】

【0061】
また、製品名でHemassel(Canada)、Quixil(Israel)、Bolheal(Japan)、Biocol(France)
、Viguard(USA)などの製品が国家別に使用可能である。
【0062】
一方、本発明は、前記の構成部を適用するにおいて、多様に変形されることができるし
、さまざまな形態を取ることができる。
【0063】
そして、本発明は、前記の詳細な説明で言及される特別な形態に限定されるものではな
いものとして理解されなければならないし、むしろ添付された請求範囲によって定義され
る本発明の精神と範囲内にあるすべての変形物と均等物及び代替物を含むものとして理解
されなければならない。
【0064】
前記のように構成された本発明の軟骨組織修復用組成物及びその製造方法の実施例を説
明する。
【0065】
まず、本発明は、生体適合物であるコラーゲンとフィブリンなどを混合して、軟骨組織
を移植可能な形態で組織修復をはかって、再生を効果的に誘導することで、人間や動物に
手術に伴う負担を軽減しながらより早くて効果的に軟骨修復及び再生を誘導できるように
したものであり、以下で実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0066】
コラーゲン及びフィブリン糊製品を利用して動物の軟骨欠損部位に適用する方法(目的:
豚の軟骨欠損部位にコラーゲンとフィブリン糊製品の適用可能性の確認)
【0067】
豚足を据え置き台に固定した後、ドリルを利用しておよそ3cm2(2×1.5cm2)の軟骨
を欠損させる。
【0068】
製品名セラフィール(濃縮コラーゲン)と製品名グリーンプラスト(フィブリン糊)製品を
利用して、軟骨欠損部位を満たす。方法は次のとおりである。
【0069】
1)グリーンプラストを封切りして、フィブリノーゲンをアプロチニン溶液に入れ込ん
で溶解させる。
2)構成品のうち、凍結乾燥しているトロンビンをカルシウム溶液に入れ込んで溶解さ
せる。
3)溶解されたトロンビン/カルシウム溶液0.1ccをセラフィール1ccとアダプダを利
用して混合する。
4)それぞれ混合した1)と3)は、デュアルシリンジキットに充填して軟骨欠損部位に
適用する。
5)適用後、15分間観察する。
【0070】
(結果:軟骨欠損部位にセラフィール/フィブリン糊製品を適用した後、10分内に固形
物が満たされて手術者が好む程度の物性を見せた。図3参照)
【実施例2】
【0071】
コラーゲンとフィブリン糊を兎の軟骨欠損部位に適用した実験(目的:コラーゲンとフィ
ブリン糊製品を使って兎モデルを利用して軟骨再生可否を確認する。)
【0072】
NZW兎 の膝蓋溝(patellar groove)部位に4mmの軟骨欠損を誘発して、コラーゲン
とフィブリン糊を適用して、4週後に肉眼及び組織病理観察(図4と図5)した。コラーゲ
ンは、韓国のセウォンセロンテックの製品名セラフィールを使ったし、フィブリン糊製品
は、バクスター社の製品名ティシールを使った。
【0073】
組織病理は、エマトキシリンエオジン(Hematoxylin-eosin)、サフラニン−O(Safra
nin-O)、アルシアンブルー(Alcian-blue)、マッソントリクローム(Masson's trichro
me)、コラーゲンタイプI/II(Colllagen typeI/II)などの染色方法を使った。
【0074】
(結果:軟骨欠損部位にコラーゲン/フィブリン糊製品を適用した肉眼観察結果、欠損部
位組織が修復されたことを確認することができたし、組織染色結果、軟骨組織が再生され
ていることを確認することができた。)
【0075】
一方、本発明の安定化溶液の塩化カルシウム濃度による物性比較は次のとおりである。
イ.安定化溶液の塩化カルシウムの濃度によるゲル化時間及び物性測定
1)塩化カルシウムの濃度
【0076】
【表2】

【0077】
2)適用方法
コラーゲン(3%、3cc)溶液とフィブリン糊(グリーンプラスト)製品を準備する。
グリーンプラストに含まれたフィブリノーゲンとアプロチニン(1cc)を混合する。
トロンビンと安定化溶液(1cc)を混合する。
コラーゲン溶液(3cc)とトロンビン/安定化溶液(0.4cc)を混合する。
フィブリノーゲン溶液とコラーゲンが混合された溶液をそれぞれ1ccずつデュアルシリ
ンジキットに充填して、円錐模様(Φ12×15mm)の鋳型に盛って固形物を製作する。
【0078】
3)塩化カルシウム濃度/時間によるゲル化程度
【0079】
【表3】

*:液状含み
**:ゲル化進行
***:ゲル化完了
【0080】
4)塩化カルシウム濃度による物性測定
製作された固形物は、レオメータ(Rheo meter、CR-500DX)を利用して物性測定
する。条件は次のとおりである。
測定項目:最大応力、ゲル強度、引張強度
進入距離:サンプル高さの50%、7.5mm
スピード:50mm/min、最大応力:10kg
アダプタ:No.1、 Φ20mm
【0081】
【表4】

【0082】
次は、軟骨欠損部位にコラーゲン並びにフィブリン糊及び安定化溶液を混合する方法及
び物性/分解性確認実験(目的:軟骨は一度損傷すれば栄養供給が遮られる状態である。軟
骨細胞培養に使用されるDMEM成分を添加して、軟骨修復の手助けになって、コラーゲ
ンが含まれた製品は、長年の間に形態を維持させてくれる)である。
【0083】
1)軟骨細胞培養に使用される培地であるDMEM培地に塩化カルシウムを補強した安
定化溶液を製造する。DMEM培地は、塩成分、アミノ酸、ビタミンなどが含まれた成分
である。安定化溶液は塩化カルシウムを補強した溶液であり、濃度は0.2〜6mg/mLに
する。
【0084】
2)コラーゲンと安定化溶液の塩化カルシウムの濃度は、最終使用で0.1〜0.5mg/
mLにする。
【0085】
3)本実験は次のように実行された。
コラーゲン(3%、3cc)溶液とフィブリン糊(グリーンプラスト)製品を準備する。
グリーンプラストに含まれたフィブリノーゲンとアプロチニン(1cc)を混合する。
トロンビンと安定化溶液(1cc)を混合する。
コラーゲン溶液(3cc)とトロンビン/安定化溶液(0.4cc)を混合する。
コラーゲンが含まれないフィブリン糊製品を対照群として使った。
フィブリノーゲン溶液とコラーゲンが混合された溶液を、それぞれ1ccずつデュアルシ
リンジキットに充填して、円錐模様(Φ12×15mm)の鋳型に盛って固形物を製作する。
カルシウム溶液の最終濃度は0.26mg/mLである。
【0086】
4)物性測定実験
製作された固形物は、レオメータ(Rheo meter、CR-500DX)を利用して物性測定
する。条件は次のとおりである。
測定項目:最大応力、ゲル強度、引張強度
進入距離:サンプル高さの50%、7.5mm
スピード:50mm/min、最大応力:10kg
アダプタ:No.1、Φ20mm
【0087】
結果は、図6に示すとおりである。製作されたコラーゲンが含まれた固形物(左;本発
明技術)は、不透明の軟骨と類似な色をたたえているし、フィブリン糊製品(右;従来技
術)は半透明な固形物が作られた。
【0088】
5)分解性確認実験
製作された固形物を培地(DMEM)に含ませて、37℃条件で1ヶ月間観察する。培地
交換は1〜2日単位で実行する。コラーゲンが含まれないフィブリン糊は、2〜3週間内
に分解されるが、コラーゲンが含まれた固形物は、1月以上維持されることを確認するこ
とができた。
【0089】
次は、コラーゲン/フィブリノーゲン組成物での軟骨細胞の細胞生存率実験(図7参照)
である。
【0090】
イ.軟骨細胞が含まれたコラーゲン/フィブリノーゲン組成物の製造
1)フィブリン糊製品(ティシール)を封切りしてフィブリノーゲンをアプロチニン溶液(
2cc)で溶解させる。
2)構成品のうちで、凍結乾燥しているトロンビンを安定化溶液で溶解させる。
3)溶解されたトロンビン/安定化溶液(0.4cc)をコラーゲン(セラフィール、3cc)と
アダプダを利用して混合する。
4)混合したコラーゲン/トロンビン/安定化溶液をシリンジに1.5cc盛って設けられ
た軟骨細胞、0.5cc(6.0×106cells/0.5cc)と混合する。カルシウム溶液の最
終濃度は0.24mg/mLである。
5)それぞれ混合した1)と4)をデュアルシリンジキットに充填して100mm培養皿に
盛る。
【0091】
ロ.組成物内で軟骨細胞の生存率確認実験
1)形成されたゲルは、Bladeで控え目に引き離して35mm培養皿で移して、DMEM培
地3mLを含ませて、37℃の温度条件でCO2培養を実行する。
2)培地は1日2回培地交換を実行して、3日間培養する。培地組成はDMEM/F12
、1%ゲンタマイシン(gentamycin)、5mg/mL ITS+プレミックス(ITS+Premix
)、50μg/mL アスコルビン酸(ascorbic acid)、1mM ピルビン酸ナトリウム(sod
ium pyruvate)、100ng/mL BMP-2である。
3)分析方法はカルセインAM(Calcein-AM)法を使った。
【0092】
カルセインAM分析
方法:生/死細胞生存率希釈標準溶液(Live/Dead cell viability working solution)
を製造する。組成は、10mL リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、5μL 4mM カルセインAM
(calcein-AM)、20μL 2mM エチジウムホモダイマー−1(EthD-1)を混合する。
【0093】
培養中である組成物で培地をとり除いて、3mL生/死細胞生存率希釈標準溶液(Live/De
ad cell viability working solution)を入れて1時間の間に常温で培養した後、硝子ス
ライドに移して蛍光顕微鏡で観察する。生きている細胞は緑色を、死んだ細胞は赤い光で
染色されているのを見て確認する。
【0094】
結果:イ.カルセインAM( Calcein-AM)分析方法を通じた軟骨細胞の生存率の蛍光顕微
鏡写真(左:最初(40×)、右:3日培養(40×))を図7に示す。組成物内で72時間後、
観察結果、90%以上生存するものとして判断される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明の軟骨組織修復用組成物及びその製造方法の技術的思想は
、実際に同一結果を繰り返し実施可能なものであり、特に、このような本願発明を実施す
ることで、技術発展を促進して産業発展に貢献することができて、保護する価値が充分に
ある。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)凍結乾燥したフィブリノーゲンをアプロチニン溶液で溶解する段階と、
(b)凍結乾燥したトロンビンを安定化溶液で溶解させる段階と、
(c)濃縮されたコラーゲン溶液並びにトロンビン及び安定化溶液を混合する段階と、及び
欠損した軟骨組織に混合して入れ込む前に、デュアルシリンジキットの一側には前記(a)
のフィブリノーゲン溶液を、そして、他側には前記(c)のコラーゲンが含有された溶液を
充填する段階と、が含まれることを特徴とする軟骨組織修復用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記フィブリノーゲンは、35〜55mg/mL、アプロチニン溶液は、1,500KIU/mL、
トロンビンは29.41IU/mL、安定化溶液は0.65mg/mL、コラーゲン溶液は13.2
3mg/mLが含まれることを特徴とする請求項1に記載の軟骨組織修復用組成物の製造方法

【請求項3】
前記安定化溶液には塩化カルシウム0.26mg/mLが含まれることを特徴とする請求項2
に記載の軟骨組織修復用組成物の製造方法。
【請求項4】
前記安定化溶液は、軟骨細胞培養に使用される培地であるDMEM培地に塩化カルシウム
を補強したものであり、前記DMEM培地は塩成分、アミノ酸、ビタミンが含まれること
を特徴とする請求項1に記載の軟骨組織修復用組成物の製造方法。
【請求項5】
前記安定化溶液の塩化カルシウムの濃度は、最終使用時に0.1〜0.5mg/mLであるこ
とを特徴とする請求項1に記載の軟骨組織修復用組成物の製造方法。
【請求項6】
前記軟骨組織修復用組成物に使用される塩化カルシウムの最終濃度は、2.78〜3.1
2mg/mLであることを特徴とする請求項1に記載の軟骨組織修復用組成物の製造方法。
【請求項7】
前記濃縮されたコラーゲン溶液は、無菌的にコラーゲンを準備するように、5mg/mL以下
のコラーゲンを0.22μmフィルターを利用して滅菌処理して、無菌操作を通じてコラ
ーゲンを濃縮した溶液であることを特徴とする請求項1に記載の軟骨組織修復用組成物の
製造方法。
【請求項8】
前記コラーゲンの濃縮度は、5〜100mg/mL濃度であることを特徴とする請求項7に記
載の軟骨組織修復用組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1の方法で製造された軟骨組織修復用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−508067(P2013−508067A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535102(P2012−535102)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007188
【国際公開番号】WO2011/049265
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(506204243)セウォン セロンテック カンパニー リミテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】SEWON CELLONTECH CO.,LTD.
【Fターム(参考)】