説明

転がり軸受用保持器、及び転がり軸受

【課題】高速回転時においても、転動体と保持器との接触部の不具合の進行を防止することが可能な転がり軸受用保持器、及び転がり軸受を提供する。
【解決手段】冠型保持器11のポケット9は、径方向に延びる中心線Gを有する円筒形状により形成される円筒面9aと、該円筒面9aの内径側又は外径側で円筒面9aと連続し、円筒面9aから径方向に離れるに従って中心線Gに向かって延びるテーパ面9bと、を有し、冠型保持器11の径方向変位は、玉7がテーパ面9bと接触することで規定される。また、玉7がテーパ面9bと接触した状態において、玉7とテーパ面9bとの接触点Pと、玉7の中心Oと、を通過する仮想線Aが、玉7の中心を通過して径方向に対して垂直な仮想垂直平面Bと成す角度αは、玉7とテーパ面9bとの接触点Pの摩擦係数μから設定される摩擦角λより大きくなるように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受用保持器、及び転がり軸受に関し、より詳細には、一般産業機械や工作機械等に使用される駆動モータや、工作機械の主軸装置等、高速回転する部位に適用される転がり軸受、及びそれに用いられる保持器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、一般産業機械や工作機械などで使用される駆動モータにおいて、回転速度が非常に高速のモータが出現している。特に、工作機械の主軸駆動用途のモータでは、工作機械の主軸の高速化に伴い、高速化の傾向が強い。
【0003】
中高速の主軸、例えば、主軸の回転数が10000min−1以下程度であれば、最高回転速度が5000〜8000min−1程度の駆動モータを使い、ギアやベルトを用いて増速させればよい。しかしながら、高速の主軸、例えば、主軸の回転数が15000〜20000min−1程度である場合、ギアやベルトによる増速比が2倍以上となり、適切な駆動力を伝達するためには、ギア径やベルト車径も大きくなり、本伝達部分の周速や回転速度が非常に大きくなる。その結果、ギア駆動の場合では、ギアの噛み合い部の騒音及び歯の磨耗や欠けが生じ易くなり、ベルト駆動の場合では、ベルトの滑り、ばたつき、磨耗、ベルト切れ等が発生し易くなる。
【0004】
このような理由から、主軸の駆動方法は、ギア駆動やベルト駆動からカップリングによる直接駆動方式に変ってきている。カップリング直結駆動方式の場合、カップリングを介して直接駆動トルクが主軸側に伝わるので、駆動モータを支持する軸受には駆動力による荷重成分は発生しない。しかし、駆動モータの回転速度は主軸と同一回転数となるため、これに対応した高速軸受が必要とされていた。
【0005】
従来、通常の4極や2極の汎用モータ(回転数が1500〜3600min−1程度)には、図10に示すような、ポケット111が球面形状の鉄製のプレス成形された保持器100を採用した深溝玉軸受(不図示)を使用していた。より詳細に、保持器100は、互いに軸方向に結合した一対の環状部110,110からなり、環状部110は、互いに軸方向に結合した時に、複数の玉103を転動自在に保持する複数のポケット111と、隣接するポケット111,111の間に設けた複数個の平面部112と、を有している。一対の環状部110,110の平面部112,112は、金属製のリベット113によって固定されている。
【0006】
これに対し、中高速モータ(回転数が5000〜8000min−1程度)の場合、図11に示すように、図10の保持器100と同様にポケット211が球面形状の耐摩耗性に優れた冠型合成樹脂保持器200を採用した深溝玉軸受を使用している。より詳細に、冠型合成樹脂保持器200は、略円環状の基部213と、基部213の軸方向一端側面215から、周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部217と、を有しており、隣り合う一対の柱部217,217の互いに対向する面219,219と基部213の軸方向一端側面215とによって、転動体220を保持するポケット211を形成している。
【0007】
その他の保持器としては、図12に示すように、2枚の環状部301,301に複数の半球状の転動体(不図示)を保持するポケット304を周方向に等間隔に設け、隣接するポケット304間の結合部303に、互いに嵌め合う係合爪306と係合孔305とを設けた合成樹脂製の保持器300が考案されている(特許文献1参照)。
【0008】
また、特許文献2では、図13に示すように、径方向両側に開口部を有したポケット402を複数個備えてなる冠型保持器400において、ポケット402が、直径方向の中心線に沿った周壁404を有するストレート穴405に形成されていると共に、ストレート穴405内径側端縁において、玉413を保持する突起406,406をストレート穴405の軸心方向に向けて相対向せしめて形成している。このように構成することによって、保持器の直径方向の振動を押さえ、耐摩擦及び耐磨耗特性の向上と回転中の保持器音の発生防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−17301号公報
【特許文献2】特開平9−158951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図10に示すような保持器100は、一対の環状部110,110の平面部112,112が、金属製のリベット113によって固定されているので、高速回転の際にも平面部112,112の強度は維持できるが、保持器100が鉄製であるため、玉103の回転によってポケット111内面が磨耗してしまう虞がある。
【0011】
また、図12に示すような特許文献1に記載の保持器300では、鉄製の保持器100(図10参照)に比べて、ポケット304の耐摩擦・耐磨耗特性は向上する。しかしながら、2枚の環状部301,301を組み合わせるための係合爪306の断面肉厚や、係合孔305周辺の断面肉厚が薄いため、高速回転で保持器300に作用する高周波の振動荷重や、転動体から受ける繰り返し荷重によって、係合爪306の根元付近や係合孔305のエッジ部への応力集中によるクラックや破損等の問題が極めて発生し易い。仮に、これらの部分の強度を向上させようとしても、係合爪306や係合孔305周辺の肉厚を大きくするだけのスペースも少ない。
【0012】
また、図13に示すような特許文献2に記載の冠型保持器400は、上述の保持器に比べて、高速用としては最も信頼性が高いが、玉413又は保持器400の変位にともなって、玉413と、ポケット402のエッジ部400Eと、が接触するため、本接触部の面圧が上昇し、すべり摩擦トルクの増加や、本接触部のクリープ変形や、局部磨耗等の不具合が発生する可能性がある。さらに、軸受内部の潤滑剤が、玉413と、ポケット402のエッジ部400Eと、の接触部によって掻き取られて潤滑不足となり、摩擦係数の乱れによって冠型保持器400が自励振動を起こし、保持器音が発生する可能性がある。
【0013】
なお、上述の保持器100,200,300何れにおいても、このような転動体103,220(保持器300について、図12中、転動体は不図示。)とポケット111,211,304のエッジ部100E,200E,300Eとの接触は起こり得るものであり、上述のように様々な不具合が生じる虞がある。
【0014】
本発明は、前述した課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、高速回転時においても、転動体と保持器との接触部の不具合の進行を防止することが可能な転がり軸受用保持器、及びその保持器を有する転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 前記周方向に所定の間隔で設けられ、複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを有する玉案内方式の転がり軸受用保持器であって、
前記保持器のポケットは、径方向に延びる中心線を有する円筒形状により形成される円筒面と、該円筒面の内径側又は外径側で前記円筒面と連続し、前記円筒面から径方向に離れるに従って前記中心線に向かって延びるテーパ面と、を有し、
前記保持器の径方向変位は、前記玉が前記テーパ面と接触することで規定され、
前記玉が前記テーパ面と接触した状態において、前記玉と前記テーパ面との接触点と、前記玉の中心と、を通過する仮想線が、前記玉の中心を通過して径方向に対して垂直な仮想垂直平面と成す角度は、前記玉と前記テーパ面との接触点の摩擦係数から設定される摩擦角より大きい
ことを特徴とする転がり軸受用保持器。
(2) 前記ポケットは、隣接する柱部にそれぞれ設けられ、円周方向に対向する一対の前記テーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記柱部の内径側又は外径側に設けられ、前記中心線に向かって延出する凸部によって形成されることを特徴とする(1)に記載の転がり軸受用保持器。
(3) 前記周方向に所定の間隔で設けられ、複数の円筒ころをそれぞれ保持する複数のポケットを有するころ案内方式の転がり軸受用保持器であって、
前記保持器のポケットは、径方向に延びる中心線と平行な一対の平面と、該平面の内径側又は外径側で前記平面と連続し、前記平面から径方向に離れるに従って前記中心線に向かって延びるテーパ面と、を有し、
前記保持器の径方向変位は、前記円筒ころが前記テーパ面と接触することで規定され、
前記円筒ころが前記テーパ面と接触した状態において、前記円筒ころと前記テーパ面との接触線と、前記円筒ころの中心軸と、を含む仮想平面が、前記円筒ころの中心軸を通過して径方向に対して垂直な仮想垂直平面と成す角度は、前記円筒ころと前記テーパ面との接触箇所の摩擦係数から設定される摩擦角より大きい
ことを特徴とする転がり軸受用保持器。
(4) 前記ポケットは、隣接する柱部にそれぞれ設けられ、円周方向に対向する一対の前記テーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記柱部の内径側又は外径側に設けられ、前記中心線に向かって延出する凸部によって形成されることを特徴とする(3)に記載の転がり軸受用保持器。
(5) 前記保持器は、合成樹脂からなることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1つに記載の転がり軸受用保持器。
(6) (1)〜(5)の何れか1つに記載の保持器を有することを特徴とする転がり軸受。
【発明の効果】
【0016】
本発明の転がり軸受用保持器によれば、保持器のポケットは、径方向に延びる中心線を有する円筒形状により形成される円筒面と、該円筒面の内径側又は外径側で前記円筒面と連続し、円筒面から径方向に離れるに従って中心線に向かって延びるテーパ面と、を有し、保持器の径方向変位は、玉がテーパ面と接触することで規定される。したがって、保持器が径方向に変位した際に、玉はポケットのテーパ面で接触するので、エッジ当たりせず、接触面圧を下げることができると共に、潤滑剤の掻き取りを防止することができる。また、保持器は、玉との接触がテーパ面に限定されて、摩擦係数が安定するので、保持器の自励振動によって保持器音が発生することを防止することができる。
さらに、玉がテーパ面と接触した状態において、玉とテーパ面との接触点と、玉の中心と、を通過する仮想線が、玉の中心を通過して径方向に対して垂直な仮想垂直平面と成す角度は、玉とテーパ面との接触点の摩擦係数から設定される摩擦角より大きくなるように設定される。したがって、玉がポケットのテーパ面に強く押された場合や、くさび効果によって玉がテーパ面に食い込んだ場合であっても、テーパ面への力が解除されると保持器は元の回転中立位置に復帰することができる。この結果、玉とテーパ面との接触点の不具合の進行を防止することが可能となる。
【0017】
また、本発明の転がり軸受用保持器によれば、保持器のポケットは、径方向に延びる中心線と平行な一対の平面と、該平面の内径側又は外径側で平面と連続し、平面から径方向に離れるに従って中心線に向かって延びるテーパ面と、を有し、保持器の径方向変位は、円筒ころがテーパ面と接触することで規定される。したがって、保持器が径方向に変位した際に、円筒ころはポケットのテーパ面で接触するので、エッジ当たりせず、接触面圧を下げることができると共に、潤滑剤の掻き取りを防止することができる。また、保持器は、円筒ころとの接触がテーパ面に限定されて、摩擦係数が安定するので、保持器の自励振動によって保持器音が発生することを防止することができる。
さらに、円筒ころがテーパ面と接触した状態において、円筒ころとテーパ面との接触線と、円筒ころの中心軸と、を含む仮想平面が、円筒ころの中心軸を通過して径方向に対して垂直な仮想垂直平面と成す角度は、円筒ころとテーパ面との接触箇所の摩擦係数から設定される摩擦角より大きくなるように設定される。したがって、円筒ころがポケットのテーパ面に強く押された場合や、くさび効果によって円筒ころがテーパ面に食い込んだ場合であっても、テーパ面への力が解除されると保持器は元の回転中立位置に復帰することができる。この結果、円筒ころとテーパ面との接触点の不具合の進行を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る深溝玉軸受の断面図である。
【図2】(a)は、図1における冠型保持器の部分平面図であり、(b)は、(a)におけるII−II線に沿う部分断面図である。
【図3】第1実施形態の変形例に係る冠型保持器の部分平面図である。
【図4】第2実施形態に係るアンギュラ玉軸受の断面図である。
【図5】(a)は、図4におけるもみ抜き保持器の部分平面図であり、(b)は、(a)におけるV−V線に沿う部分断面図である。
【図6】第3実施形態に係るアンギュラ玉軸受の断面図である。
【図7】第4実施形態に係る深溝玉軸受の断面図である。
【図8】第5実施形態に係る冠型保持器の部分側面図である。
【図9】図8の冠型保持器を示す断面図である。
【図10】従来の保持器の斜視図である。
【図11】(a)は、従来の保持器の斜視図であり、(b)は、(a)における部分断面図である。
【図12】従来の保持器の、部分分解斜視図である。
【図13】(a)は、従来の保持器の断面図であり、(b)は、(a)における部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る転がり軸受用保持器、転がり軸受の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
先ず、本発明の第1実施形態に係る冠型保持器11を有する深溝玉軸受1について説明する。図1に示すように、深溝玉軸受1は、内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3と、外周面に内輪軌道面5aを有する内輪5と、外輪軌道面3aと内輪軌道面5aとの間に転動自在に配設された複数の玉7と、玉7をポケット9内に転動自在に保持して外輪3と内輪5との間に配置された冠型保持器11と、を有する。また、深溝玉軸受1の内部空間には、潤滑剤としてのグリースが封入されている。
【0021】
外輪3の内周面には、外輪軌道面3aの軸方向両側に肩部3bが形成されており、内輪5の外周面には、内輪軌道面5aの軸方向両側に肩部5bが形成されている。また、外輪3及び内輪5の軸方向両側の開口部には、芯金(不図示)がゴム等の弾性体によって覆われて環状に形成されたシール部材13が設けられ、内部からのグリース流出を防止している。
【0022】
図2(a)及び図2(b)も参照して、冠型保持器11は、合成樹脂からなる玉案内方式の保持器であり、環状部15と、環状部15から周方向に所定の間隔で軸方向に延出する複数の柱部17と、を有し、環状部15と隣接する柱部17,17とで玉7を転動自在に保持する複数のポケット9を構成する。冠型保持器11の合成樹脂材料としては、ポリアミド(PA)樹脂にガラス繊維(GF)を添加して強度を向上させたものが用いられている。
【0023】
冠型保持器11のポケット9は、径方向に延びる中心線Gを有する円筒形状により形成され、軸方向一方側が開口した円筒面9aと、該円筒面9aの内径側で円筒面9aと連続し、円筒面9aから径方向に離れるに従って中心線Gに向かって延びる一対のテーパ面9bと、を有する。即ち、ポケット9は、径方向両側に貫通するとともに、軸方向一方側(図2(a)における右側)に開口している。
【0024】
一対のテーパ面9bは、隣り合う柱部17,17にそれぞれ設けられ、円筒面9aから中心線Gに向かって延びる内径側凸部19,19によって形成されており、ポケット9の周方向両側に円筒面9aに沿って配置されている。このように、ポケット9内の軸方向他方側(図2(a)中における左側)には、テーパ面9bを形成する内径側凸部19が設けられていないため、玉7及びポケット9間に隙間ができ、当該隙間から潤滑剤を供給することが可能となる。
【0025】
また、一対のテーパ面9bは、玉7の赤道部(玉7のピッチ円の位置)Eよりも内径側で円筒面9aと連続しており、単一の仮想円すい面上にそれぞれ構成され、径方向からみて略円弧形状を有している。
【0026】
また、内径側凸部19は、テーパ面9bの内径側端部に、面取りによって中心軸Gと略平行に形成されたストレート面9cを有している。このストレート面9cは、冠型保持器11の切削加工時や射出成形加工時のバリやヒゲ等の不具合の発生を防止する。なお、内径側凸部19には、上述のストレート面9cに代えて、R形状の曲面を形成するようにしてもよい。
【0027】
ここで、冠型保持器11の径方向変位は、玉7が内径側凸部19のテーパ面9bと接触することで規定される。つまり、冠型保持器11が径方向外側に移動したとき、すなわち相対的に玉7が径方向内側に移動したとき(図2(b)の実線で記載されている)、冠型保持器11は、玉7との接触がテーパ面9bに限定されるように構成されている。
【0028】
したがって、冠型保持器11が径方向に変位した際に、玉7はポケット9のテーパ面9bで接触するので、エッジ当たりせず、接触面圧を下げることができると共に、潤滑剤の掻き取りを防止することができる。また、玉7との接触がテーパ面9bに限定されて、摩擦係数が安定するので、冠型保持器11の自励振動による保持器音が発生することを防止することができる。
【0029】
また、玉7とテーパ面9bとが接触している状態において、玉7とテーパ面9bとの接触点をPとし、玉7がテーパ面9bに接触する際の玉7の中心をOとし、これら2点P,Oを通る仮想線をAとする。また、玉7の中心Oを通り、径方向に対して垂直である仮想垂直平面をBとする。このとき、これら仮想線Aと仮想垂直平面Bとが成す角度αは、接触点Pにおける摩擦係数μから決定される摩擦角λ(tanλ=μ)よりも大きくなるように設定される。すなわち、角度αは、摩擦角λ及び摩擦係数μに対してtanα>tanλ=μ⇔α>λ=tan−1μを満たすように設定される。
【0030】
例えば、本実施形態の場合、玉7とテーパ面9bとの接触点Pにおける摩擦係数μは0.20〜0.25であるので、α>λ=tan−1μ=11.3〜14(°)となり、αはα>14(°)を満たすように設定すればよい。
【0031】
このように角度αを摩擦角λより大きく設定することによって、玉7がポケット9のテーパ面9bに強く押された場合や、くさび効果によって玉7がテーパ面9bに食い込んだ場合であっても、テーパ面9bへの力が解除されると冠型保持器11は元の回転中立位置に復帰することができる。この結果、玉7とポケット9の内径側凸部19との接触点Pの不具合の進行を防止することが可能となる。
【0032】
また、角度αが大きくなるほど、玉7からテーパ面9bへの径方向の押付力に対する接触面の法線方向の反力が小さくでき、接触面圧をより小さくすることができるので、角度αを大きく設定することで、玉7とテーパ面9bの接触点Pをより玉の赤道部Eから遠ざける(内径側にする)ことが望ましい。
【0033】
また、本実施形態の冠型保持器11のように軸方向片側のみに環状部15を有する保持器の場合、高速回転時に、冠型保持器11の柱部17の先端部は、柱部17の根元部分に比べて、遠心力による径方向の膨張量が大きくなる。この現象によってポケット9の径寸法が大きくなると共に、ポケット9の周方向の開口径が広がるが、テーパ面9bは円周方向に平行移動するのみなので、接触点Pの径方向位置は変化せず、仮想線Aと仮想垂直平面Bとが成す角度αは変化しない。一方で、図10〜13に示した何れの従来例の場合も、転動体はエッジ部と接触するので、高速回転時に同様の変形が生じた際、転動体とエッジ部との接触点が径方向外側にずれ、上述の角度αに相当する値が小さくなってしまう問題がある。つまり、従来例において、仮に設計上、角度αを摩擦角λより大きく設定しても、遠心力によるポケットの変形作用によって、角度αが摩擦角λより小さくなり、転動体の食い込みによる不具合が発生してしまう。特に、使用dmn値が100万を超えると、上記のような不具合が従来例では発生し易い。
【0034】
なお、冠型保持器11の径方向動き量は、冠型保持器11の中立位置における玉7とテーパ面9bとの径方向隙間によって決定される。したがって、上述のような考慮に基づいて求められた角度αを鑑み、テーパ面9bの径方向位置やポケット9の内径側の開口の幅等を選定し、冠型保持器11の適正な動き量が得られるように設計すればよい。
【0035】
このような保持器11は種々の方法で製作可能であり、例えば、切削加工により製作してもよく、射出成形により製作してもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の冠型保持器11によれば、冠型保持器11のポケット9は、径方向に延びる中心線Gを有する円筒形状により形成される円筒面9aと、該円筒面9aの内径側又は外径側で円筒面9aと連続し、円筒面9aから径方向に離れるに従って中心線Gに向かって延びるテーパ面9bと、を有し、冠型保持器11の径方向変位は、玉7がテーパ面9bと接触することで規定される。したがって、冠型保持器11が径方向に変位した際に、玉7はポケット9のテーパ面9bで接触するので、エッジ当たりせず、接触面圧を下げることができると共に、潤滑剤の掻き取りを防止することができる。また、冠型保持器11は、玉7との接触がテーパ面9bに限定されて、摩擦係数が安定するので、冠型保持器11の自励振動によって保持器音が発生することを防止することができる。
【0037】
さらに、玉7がテーパ面9bと接触した状態において、玉7とテーパ面9bとの接触点Pと、玉7の中心Oと、を通過する仮想線Aが、玉7の中心を通過して径方向に対して垂直な仮想垂直平面Bと成す角度αは、玉7とテーパ面9bとの接触点Pの摩擦係数μから設定される摩擦角αより大きくなるように設定される。したがって、玉7がポケット9のテーパ面9bに強く押された場合や、くさび効果によって玉7がテーパ面9bに食い込んだ場合であっても、テーパ面9bへの力が解除されると冠型保持器11は元の回転中立位置に復帰することができる。この結果、玉7とテーパ面9bとの接触点Pの不具合の進行を防止することが可能となる。
【0038】
特に、本実施形態の冠型保持器11のように、ポケット9のテーパ面9bが玉7の赤道部Eよりも内径側に形成された玉案内方式の場合、高速回転時に冠型保持器11の柱部17が遠心力により外径側に膨張するので、玉7とテーパ面9bとの径方向隙間が小さくなり、玉7と内径側凸部19との接触の機会が増加する。さらに、高速回転時には、遠心力による冠型保持器11の振れ回り力が大きくなり、玉7とテーパ面9bとの接触圧や、玉7の押し込み力も増加する。このような場合、本実施形態の構成を採用することは非常に効果がある。
【0039】
また、冠型保持器11を有する深溝玉軸受1を軸及びハウジングに組み込んだ後、内輪5と外輪3間に傾きがあると、各玉7の接触角が異なり、各玉7の公転速度がずれることで、各玉7からポケット9への駆動力(玉7がポケット9の円筒面9aを押す力)が変化し、冠型保持器11が回転中立位置で回転せず、径方向のある方向にずれた状態で回転してしまう。このような場合も、玉7とテーパ面9bの接触の機会及び接触圧が増加するので、本実施形態の構成を採用することは非常に効果がある。
【0040】
なお、本実施形態の冠型保持器11では、ポケット9内の周方向両側に一対の内径側凸部19,19を設けるとしたが(図2(a)参照)、この構成に限定されず、図3に示すようにポケット9内の全周に沿うように内径側凸部19を設ける構成としてもよい。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るもみ抜き保持器11Aを有するアンギュラ玉軸受1Aについて説明する。なお、本実施形態のもみ抜き保持器11A及びアンギュラ玉軸受1Aの説明において、第1実施形態の冠型保持器11及び深溝玉軸受1と同一又は相当部分については、同一符号を用いることによりその説明を省略又は簡略化する。
【0042】
図4に示すように、アンギュラ玉軸受1Aは、内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3と、外周面に内輪軌道面5aを有する内輪5と、外輪軌道面3aと内輪軌道面5aとの間に転動自在に配設された複数の玉7と、該玉7をポケット9内に転動自在に保持して外輪3と内輪5の間に配置されたもみ抜き保持器11Aと、を備える。また、アンギュラ玉軸受1Aの内部空間には、潤滑剤としてのグリースが封入されている。
【0043】
外輪3の内周面には、外輪軌道面3aの軸方向一方側に肩部3bが、軸方向他方側にカウンタボア3cがそれぞれ形成されており、内輪5の外周面には、内輪軌道面5aの軸方向両側に肩部5bが形成されている。また、アンギュラ玉軸受1Aは、静止時において接触角θを有しており、ラジアル荷重及びスラスト荷重を負荷する。
【0044】
もみ抜き保持器11Aは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂に炭素繊維(CF)を添加して強度を向上させた合成樹脂からなる玉案内方式の保持器である。図5(a)及び5(b)も参照して、もみ抜き保持器11Aは、軸方向両側の環状部15,15と、これら環状部15,15を連結する複数の柱部17と、柱部17の内径側面の軸方向中間部から内径側に突設された突部18と、を有した段付構造とされており、これら環状部15,15と隣接する柱部17と突部18で玉7を転動自在に保持する複数のポケット9を構成する。
【0045】
突部18は、内径側に向かうに従って軸方向幅が小さくなる径方向断面台形形状であり、軸方向において内輪軌道面5aと対向する位置に形成されている。また、突部18の内径は、内輪5の肩部5bの外径よりも僅かに大きくなるように設定されており、もみ抜き保持器11Aの組立て時の挿入性が確保されている。
【0046】
また、もみ抜き保持器11Aのポケット9は、径方向に延びる中心線Gを有する円筒形状により形成される円筒面9aと、該円筒面9aの内径側で円筒面9aに連続し、円筒面9aから離れるに従って中心線Gに向かって延びる一対のテーパ面9bと、を有し、径方向に貫通するように形成されている。
【0047】
一対のテーパ面9bは、隣り合う柱部17,17にそれぞれ設けられ、円筒面9a及び一対の突部18,18から中心線Gに向かって延びる内径側凸部19,19によって形成されており、ポケット9の周方向両側に配置されている。このように、ポケット9内の軸方向両側には、テーパ面9bを形成する内径側凸部19が設けられていないため、玉7及びポケット9間に隙間ができ、当該隙間から潤滑剤を供給することが可能となる。なお、必要に応じて、ポケット9の円筒面9a全周に沿うように内径側凸部19を設ける構成としてもよい。
【0048】
また、一対のテーパ面9bは、玉7の赤道部(玉7のピッチ円の位置)Eよりも内径側で円筒面9aと連続しており、単一の円すい上にそれぞれ構成され、径方向からみて略円弧形状を有している。
【0049】
また、内径側凸部19は、テーパ面9bの内径側端部に、面取りによって中心軸Gと略平行に形成されたストレート面9cを有している。このストレート面9cは、冠型保持器11の切削加工時や射出成形加工時のバリやヒゲ等の不具合の発生を防止する。なお、内径側凸部19には、上述のストレート面9cに代えて、R形状の曲面を形成するようにしてもよい。
【0050】
ここで、もみ抜き保持器11Aの径方向変位は、玉7が内径側凸部19のテーパ面9bと接触することで規定される。つまり、冠型保持器11が径方向外側に移動したとき、すなわち相対的に玉7が径方向内側に移動したとき、もみ抜き保持器11Aは、玉7との接触がテーパ面9bに限定されるように構成されている。
【0051】
ここで、第1実施形態と同様にして規定される角度αが、玉7とテーパ面9bとの接触点Pにおける摩擦係数μから決定される摩擦角λ(tanλ=μ)よりも大きくなるように設定される。すなわち、角度αは、摩擦角λ及び摩擦係数μに対してtanα>tanλ=μ⇔α>λ=tan−1μを満たすように設定される。
【0052】
以上説明したように、第2実施形態のアンギュラ玉軸受1A及びもみ抜き保持器11Aによれば、テーパ面9bを有する内径側凸部19が、柱部17の内径側面の軸方向中間部から内径側に突設されて内輪軌道面5aと対向する突部18に設けられているため、もみ抜き保持器11Aと内輪軌道面5aとの接触を防止しつつ、玉7とテーパ面9bとの接触点Pを内径側にずらし、角度αを大きくすることが可能となる。特に、高速回転時や、モータ用軸受など、軸受温度が高い条件下で、潤滑性が一時的に低下して摩擦係数μが大きくなった場合を想定して、角度αを大きくする設計が必要であるとき、本実施形態の突部18を有した段付構造を採用することは、非常に効果がある。
他の効果は、第1実施形態の深溝玉軸受1及び冠型保持器11と同様である。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るもみ抜き保持器11Bを有するアンギュラ玉軸受1Bについて説明する。なお、本実施形態のもみ抜き保持器11B及びアンギュラ玉軸受1Bは、第2実施形態のもみ抜き保持器11A及びアンギュラ玉軸受1Aと基本的構成を同一とするので、同一又は相当部分については、同一符号を付すことによりその説明を省略又は簡略化する。
【0054】
図6に示すように、本実施形態のアンギュラ玉軸受1Bにおいて、内輪5の外周面には、外輪3のカウンタボア3c側に大径肩部5c、外輪3の肩部3b側に大径肩部5cよりも小径の小径肩部5dが設けられている。
【0055】
また、もみ抜き保持器11Bは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂に炭素繊維(CF)を添加して強度を向上させた合成樹脂からなる玉案内方式の保持器であり、その外径を外輪3の内径に合わせて変化させ、その内径を内輪5の外径に合わせて変化させた段付き構造としている。より具体的に説明すると、もみ抜き保持器11Bは、その外径について、「外輪3のカウンタボア3cと径方向に対向する環状部15Aの外径=柱部17の外径>外輪3の肩部3bの内径>外輪3の肩部3bと径方向に対向する環状部15Bの外径」の関係を満たすように形成され、その内径について、「環状部15Aの内径>環状部15Bの内径>内輪5の大径肩部5cの外径>突部18の内径>内輪5の小径肩部5dの外径」の関係を満たすように形成されている。
【0056】
特に、もみ抜き保持器11Bが、内輪5の大径肩部5cの外径>突部18の内径>内輪5の小径肩部5dの外径、となるように構成されることによって、テーパ面9bを有する内径側凸部19が設けられる突部18の位置をさらに内径側にずらすことができるので、玉7とテーパ面9bとの接触点Pを内径側にずらし、角度αを大きくすることが可能となり、接触面圧を小さくすることが可能となる。
他の効果は第2実施形態のアンギュラ玉軸受1A及びもみ抜き保持器11Aと同様である。
【0057】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る冠型保持器11Cを有する深溝玉軸受1Cについて説明する。なお、本実施形態の冠型保持器11C及び深溝玉軸受1Cは、第1実施形態の冠型保持器11及び深溝玉軸受1と基本的構成を同一とするので、同一又は相当部分については、同一符号を付すことによりその説明を省略又は簡略化する。
【0058】
図7に示すように、本実施形態の冠型保持器11Cは、第2実施形態と同様に柱部17の内径側面から内径側に突設された突部18を有した段付構造とされている。突部18は、内径側に向かうに従って軸方向幅が小さくなる断面台形形状であり、軸方向において内輪軌道面5aと対向する位置に形成されている。また、突部18の内径は、内輪5の肩部5bの外径よりも僅かに大きくなるように設定されており、冠型保持器11Cの組立て時の挿入性が確保されている。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の深溝玉軸受1C及び冠型保持器11Cによれば、第2実施形態のアンギュラ玉軸受1A及びもみ抜き保持器11Aと同様の効果を奏することが可能となる。
【0060】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る冠型保持器11Dを有する円筒ころ軸受1Dについて説明する。なお、本実施形態の冠型保持器11D及び円筒ころ軸受1Dは、第1実施形態の冠型保持器11及び深溝玉軸受1と基本的構成を同一とするので、同一又は相当部分については、同一符号を付すことによりその説明を省略又は簡略化する。
【0061】
図8及び図9に示すように、本実施形態の円筒ころ軸受1Dは、転動体として円筒ころ8を有しており、冠型保持器11Dは合成樹脂からなる円筒ころ案内方式の保持器である。
【0062】
冠型保持器11Dは、環状部15と、環状部15から周方向に所定の間隔で軸方向に延出する複数の柱部17と、を有し、環状部15と隣接する柱部17,17とで玉7を転動自在に保持する複数のポケット9を構成する。冠型保持器11Dのポケット9は、径方向に延びる中心線Gと平行な一対の平面9dと、該平面9dの外径側で平面9dと連続し、平面9dから径方向に離れるに従って、すなわち外径側に向かうに従って中心線Gに向かって延びる一対のテーパ面9bと、一対のテーパ面9bの外径側端部にそれぞれ接続し、面取りによって中心軸Gと略平行に形成された一対のストレート面9cと、環状部15の内側面9eと、を有している。
【0063】
一対のテーパ面9b及びストレート面9cは、隣り合う柱部17,17にそれぞれ設けられ、平面9dから中心線Gに向かって延びる外径側凸部20,20によって形成されており、ポケット9の周方向両側に配置されている。
【0064】
ここで、冠型保持器11Dの径方向変位は、円筒ころ8が外径側凸部20のテーパ面9bと接触することで規定される。つまり、冠型保持器11Dが径方向内側に移動したとき、すなわち相対的に円筒ころ8が径方向外側に移動したとき、冠型保持器11Dは、円筒ころ8との接触がテーパ面9bに限定されるように構成されている。
【0065】
また、本実施形態では、円筒ころ8と外径側凸部20のテーパ面9bとの接触線P´と円筒ころ8の中心軸O´とを含む仮想平面をA´とし、円筒ころ8の中心軸O´を通り径方向に対して垂直である仮想垂直平面をB´とする。このとき、これら仮想平面A´と仮想垂直平面B´とが成す角度αは、接触箇所P´における摩擦係数μから決定される摩擦角λ(tanλ=μ)よりも大きくなるように設定される。すなわち、角度αは、摩擦角λ及び摩擦係数μに対してtanα>tanλ=μ⇔α>λ=tan−1μを満たすように設定される。
【0066】
このように構成した冠型保持器11D及び円筒ころ軸受1Dにおいても、第1実施形態における深溝玉軸受1及び冠型保持器11と同様の効果を奏することが可能である。
【0067】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
例えば、本発明の転がり軸受は、工作機械等の主軸装置において、主軸を支持するのに好適に使用されてもよく、或いは、高速モータのモータ軸を支持するのに適用されてもよい。
【0068】
また、保持器の材質は、上述の実施形態において記載した合成樹脂以外にも、ポリイミド(PI)、フェノール樹脂などを母材として使用してもよく、強化材としてアラミド繊維を用いてもよい。また、保持器は合成樹脂からなるものに限られず、銅合金や銀めっきを施した鉄系材料を使用してもよい。このとき、それぞれの保持器材質と転動体との摩擦係数μ(摩擦角λ)に応じた角度αを設定すればよい。
【0069】
また、摩擦係数μとしては、静摩擦係数及び動摩擦係数があるが、軸受が静止状態から回転する場合及び連続回転している場合のいずれの条件でも所望の効果を得られるように、最も大きくなる摩擦係数μに基づいて角度αを設定するのが望ましい。
【0070】
また、第1実施形態〜第4実施形態の玉軸受では、テーパ面9bは円筒面9aの内径側に形成されているが外径側に形成されてもよい。また、第5実施形態の円筒ころ軸受において、テーパ面9bは平面9dの外径側に形成されているが内径側に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1、1C 深溝玉軸受(転がり軸受)
1A、1B アンギュラ玉軸受(転がり軸受)
1D 円筒ころ軸受(転がり軸受)
7 玉
8 円筒ころ
9 ポケット
9a 円筒面
9b テーパ面
9c ストレート面
9d 平面
11、11C、11D 冠型保持器(転がり軸受用保持器)
11A、11B もみ抜き保持器(転がり軸受用保持器)
19 内径側凸部(凸部)
20 外径側凸部(凸部)
A 仮想線
A´ 仮想平面
B、B´ 仮想垂直平面
G 中心線
O 中心
O´ 中心軸
P 接触点
P´ 接触線、接触箇所
α 角度
λ 摩擦角
μ 摩擦係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記周方向に所定の間隔で設けられ、複数の玉をそれぞれ保持する複数のポケットを有する玉案内方式の転がり軸受用保持器であって、
前記保持器のポケットは、径方向に延びる中心線を有する円筒形状により形成される円筒面と、該円筒面の内径側又は外径側で前記円筒面と連続し、前記円筒面から径方向に離れるに従って前記中心線に向かって延びるテーパ面と、を有し、
前記保持器の径方向変位は、前記玉が前記テーパ面と接触することで規定され、
前記玉が前記テーパ面と接触した状態において、前記玉と前記テーパ面との接触点と、前記玉の中心と、を通過する仮想線が、前記玉の中心を通過して径方向に対して垂直な仮想垂直平面と成す角度は、前記玉と前記テーパ面との接触点の摩擦係数から設定される摩擦角より大きい
ことを特徴とする転がり軸受用保持器。
【請求項2】
前記ポケットは、隣接する柱部にそれぞれ設けられ、円周方向に対向する一対の前記テーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記柱部の内径側又は外径側に設けられ、前記中心線に向かって延出する凸部によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受用保持器。
【請求項3】
前記周方向に所定の間隔で設けられ、複数の円筒ころをそれぞれ保持する複数のポケットを有するころ案内方式の転がり軸受用保持器であって、
前記保持器のポケットは、径方向に延びる中心線と平行な一対の平面と、該平面の内径側又は外径側で前記平面と連続し、前記平面から径方向に離れるに従って前記中心線に向かって延びるテーパ面と、を有し、
前記保持器の径方向変位は、前記円筒ころが前記テーパ面と接触することで規定され、
前記円筒ころが前記テーパ面と接触した状態において、前記円筒ころと前記テーパ面との接触線と、前記円筒ころの中心軸と、を含む仮想平面が、前記円筒ころの中心軸を通過して径方向に対して垂直な仮想垂直平面と成す角度は、前記円筒ころと前記テーパ面との接触箇所の摩擦係数から設定される摩擦角より大きい
ことを特徴とする転がり軸受用保持器。
【請求項4】
前記ポケットは、隣接する柱部にそれぞれ設けられ、円周方向に対向する一対の前記テーパ面を有し、
前記テーパ面は、前記柱部の内径側又は外径側に設けられ、前記中心線に向かって延出する凸部によって形成されることを特徴とする請求項3に記載の転がり軸受用保持器。
【請求項5】
前記保持器は、合成樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の転がり軸受用保持器。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の転がり軸受用保持器を有することを特徴とする転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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