説明

転倒防止装置

【課題】下側フレームに対する上側フレームの傾倒を抑制し、載置物の転倒や、周辺機器との接触を防止できる転倒防止装置を提供する。
【解決手段】制振装置2に取り付けられ、下架台11に対する上架台12の傾倒を抑制する転倒防止装置13であって、下架台11と、上架台12との間に水平方向に沿って立設され、且つ軸方向が平行となるように水平方向に沿って並設された第1揺動軸64、及び第2揺動軸86と、第1揺動軸64を支点として揺動可能に支持された第1アーム62と、第2揺動軸86を支点として揺動可能に支持された第2アーム84と、を備え、第1アーム62の内側端部と、第2アーム84の内側端部とが回動可能に連結されているとともに、上架台12側に、第1アーム62の外側端部と、第2アーム84の外側端部とがそれぞれ回動可能に支持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、室外機等の載置物である設備機器を構造物(例えば、ビルの屋上の床)等の設置面に設置する際に、設備機器で発生した振動が構造物へ伝播するのを抑制するため、設置面と設備機器との間に防振架台が設けられている。
【0003】
このような防振架台としては、例えば特許文献1に示されるように、設置面に取り付けられる下架台(下側フレーム)と、下架台の上方に間隔を空けた状態で配設され、設備機器が取り付けられる上架台(上側フレーム)と、下架台と上架台との間に配置される防振部材と、を備えている。
この構成によれば、設備機器で発生した振動は、上架台に伝播した後、防振部材で吸収されることで、下架台及び構造物等へ振動が伝播するのを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−7232公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、地震等の大きな振動が発生した場合に、設備機器の水平方向への変位が大きくなると、設備機器が下端部を起点に大きく揺れる。その結果、設備機器が周辺の設備機器や配管、配線等に接触したり、設備機器自体が転倒したりする虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、下側フレームに対する上側フレームの傾倒を抑制し、載置物の転倒や、周辺機器との接触を防止できる転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る転倒防止装置は、設置面側に取り付けられる下側フレームと、前記下側フレームに対して重力方向の上方に配置され、載置物側に取り付けられる上側フレームと、前記下側フレームと前記上側フレームとの間に配設され、少なくとも前記下側フレームと前記上側フレームとを離間させる方向に付勢力が作用する弾性部材と、を有する制振装置に取り付けられ、前記下側フレームに対する前記上側フレームの傾倒を抑制する転倒防止装置であって、前記下側フレームと、前記上側フレームとの間に水平方向に沿って立設され、且つ軸方向が平行となるように水平方向に沿って並設された第1揺動軸、及び第2揺動軸と、前記第1揺動軸を支点として揺動可能に支持された第1アームと、前記第2揺動軸を支点として揺動可能に支持された第2アームと、を備え、前記第1アームにおける前記第2揺動軸側の内側端部と、前記第2アームにおける前記第1揺動軸側の内側端部とが回動可能に連結されているとともに、前記上側フレーム側に、前記第1アームにおける前記第2揺動軸とは反対側の外側端部と、前記第2アームにおける前記第1揺動軸とは反対側の外側端部とがそれぞれ回動可能に支持されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、地震発生時等において、載置物が水平方向に沿って往復振動する際に、載置物が水平方向に沿う一方側に向けて傾動しようとすると、この傾動動作に応じて上側フレームの一方側が弾性部材の付勢力に抗して下方に変位する。すると、第1アーム、及び第2アームのうち、一方側のアームの外側端部が上側フレームを介して押下げられ、その揺動軸を支点として揺動する。
一方側のアームの外側端部が押下げられるように揺動すると、一方側のアームの内側端部が上方に向かって変位する。すると、一方側のアームに回動可能に連結された他方側のアームの内側端部が、一方側のアームによって押し上げられる。このため、他方側のアームを支点とし、他方側のアームが一方側のアームの揺動方向とは逆回りに揺動する。これにより、上側フレームの他方側が、他方側のアームの揺動動作に追従して下方に向けて変位する。したがって、載置物の水平方向への変位に追従して、載置物、及び上側フレームの全体が下方に向けて変位することになる。すなわち、水平方向への振動発生時において、各アームがそれぞれの揺動軸を支点として互いに逆方向に揺動することで、下側フレームに対する上側フレームの傾倒を抑制を抑制できる。
これにより、載置物の水平方向への変位を低減できるので、載置物の転倒や周辺との干渉を防止することができる。
【0009】
また、前記下側フレーム、及び前記上側フレームは、それぞれ水平方向のうち一方向が長く形成されており、前記第1アーム、及び前記第2アームは、それぞれの延在方向が前記下側フレーム、及び前記上側フレームの短手方向に沿うように設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、第1アーム及び第2アームを短手方向に沿うように設けることで、長手方向に比べて傾倒し易い短手方向への傾倒を抑制できる。これにより、載置物の転倒や周辺との干渉を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る転倒防止装置によれば、下側フレームに対する上側フレームの傾倒を抑制し、載置物の転倒や、周辺機器との接触を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における防振架台の斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う図であって、連結部材を示す断面図である。
【図3】図1のB矢視図である。
【図4】図3のC−C線に相当する断面図である。
【図5】転倒防止装置の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(防振架台)
図1は防振架台の斜視図である。本実施形態では、本発明に係る転倒防止装置13が制振装置2に取り付けられた防振架台1について説明する。
同図に示すように、本実施形態の防振架台1は、例えば室外機等のような設備機器(載置物)Wをビルの屋上等、構造物の設置面Gに設置する際に、設備機器Wと設置面Gとの間に配設されるものである。
具体的に、防振架台1は、設置面Gに取り付けられる下架台(下側フレーム)11と、下架台11の上方に間隔を空けた状態で下架台11に接近離間可能に連結されるとともに、設備機器Wが取り付けられる上架台(上側フレーム)12と、下架台11と上架台12との間に配置される防振部材(弾性部材)14と、を有する制振装置2と、この制振装置2に取り付けられ、下架台11に対する上架台12の傾倒を抑制する転倒防止装置13を有している。
【0013】
下架台11は、平面視で矩形枠状の部材であり、角部に配置されたコーナ部材21と、各コーナ部材21間を架け渡す枠構成材22と、を備えている。
まず枠構成材22は、鉄等の角パイプ等からなり、長尺体22a、及び長尺体22aよりも短い短尺体22bを一対ずつ備えている。これら長尺体22a同士、及び短尺体22b同士は、それぞれ平行に配置されるとともに、長尺体22a、及び短尺体22bがそれぞれ直交するように配置されている。したがって、下架台11は、長尺体22aの延在方向を長手方向、短尺体22bの延在方向を短手方向とする長方形状に形成されている。また、以下の説明では、設置面Gと平行な水平面内において、下架台11の長手方向をX方向、短手方向をY方向、X方向及びY方向に直交する上下方向をZ方向として説明する。
なお、各枠構成材22の上下面には、XY方向で重なる位置にZ方向に沿って貫通する図示しない複数の貫通孔が形成され、これら貫通孔に図示しない基礎ボルトが挿通されることで、下架台11が構造物の設置面Gに設置される。
【0014】
コーナ部材21は、互いに直交する2本の枠構成材22、すなわち長尺体22aと短尺体22bの端部同士を接合するためのものであり、X方向の外側、及びY方向の外側に向けて開放された箱型形状に形成されている。そして、コーナ部材21の側面のうち、X方向の内側を向く面に長尺体22aの端部が接合され、Y方向の内側を向く面に短尺体22bの端部が接合されている。
【0015】
上架台12は、上述した下架台11と同等の外形を有する平面視で矩形枠状に形成され、枠構成材23を備えている。具体的に、枠構成材23は、鉄等の角パイプ等からなり、長尺体23a、及び長尺体23aよりも短い短尺体23bを一対ずつ備えている。そして、これら長尺体23a同士、及び短尺体23b同士は、それぞれ平行に配置されるとともに、長尺体23a、及び短尺体23bがそれぞれ直交するように配置されている。そして、これら長尺体23aと短尺体23bの端部同士が接合されている。
また、上架台12は、対向する長尺体23a間を架け渡すようにY方向に沿って延在する複数のブリッジ部24を備えている。各ブリッジ部24は、X方向に沿って間隔をあけて配設されており、これらブリッジ部24、及び枠構成材23の内周側上に設備機器Wが固定されている。
【0016】
防振部材14は、設備機器Wから上架台12に伝播される振動を吸収して下架台11への振動の伝播を軽減するものであり、下架台11、及び上架台12の周方向に沿って間隔を空けて複数配設されている。本実施形態の防振部材14は、例えばコイルばねとゴムを一体成形したものや、樹脂ケース内にコイルばねを内蔵したものが用いられている。そして、防振部材14は、その上端部が上架台12の下面に連結され、下端部が下架台11の上面に連結されることで、下架台11、及び上架台12間で両者11,12を互いに離間する方向に向けて付勢しつつ、水平方向(XY方向)への相対移動を吸収できるようになっている。
【0017】
図2は図1のA−A線に沿う図であって、連結部材を示す断面図である。なお、図2においては、説明を分かり易くするため、転倒防止装置13を省略している。
図1,2に示すように、下架台11と上架台12との間には、両者11,12をZ方向に沿って接近離間可能に連結する連結部材25が設けられている。連結部材25は、下架台11と上架台12を連結する連結ボルト26を有している。連結ボルト26は、下架台11におけるコーナ部材21の上面に形成された下側連結孔27から、上架台12における長尺体23aの端部の下面に形成された上側連結孔28に向けて挿通されている。
【0018】
具体的に、連結ボルト26の基端側は、座金29及びナット30によってコーナ部材21の上面に固定されている。
一方、連結ボルト26の先端側は、長尺体23aの下面を間に挟んで下側には長尺体23aとの間に隙間をあけて減衰材付振れ止め金具31が、上側には長尺体23aとの間に隙間をあけてナット32が螺着されている。これにより、連結ボルト26の先端側は、減衰材付振れ止め金具31とナット32との間で、上側連結孔28内を上架台12に対して摺動可能に配置されている。すなわち、減衰材付振れ止め金具31とナット32とにより上架台12のZ方向への変位量が規制されている。また、ナット32と上架台12の下面との間、及び上側連結孔28内には、ダンパ33が配置されている。
【0019】
(転倒防止装置)
図3は、図1のB矢視図である。
図1,3に示すように、転倒防止装置13は、下架台11及び上架台12におけるX方向の両端部に対をなして取り付けられている。具体的に、転倒防止装置13は、下架台11に連結された下側ブラケット(下側フレーム)41と、上架台12に連結された上側ブラケット(上側フレーム)42と、下側ブラケット41、及び上側ブラケット42に支持された第1リンク機構43、及び第2リンク機構44と、を備えている。なお、各転倒防止装置13は、それぞれ同一の構成からなるため、以下の説明では、一方の転倒防止装置13について説明し、他方の転倒防止装置13については説明を省略する。
【0020】
下側ブラケット41は、例えば3本のL字アングルが組み合わされてZ方向から見てC字状に構成されている。具体的に、下側ブラケット41は、下架台11の各コーナ部材21からX方向の外側に向けて延在する一対の延在部45と、これら延在部45間を架け渡すようにY方向に沿って延在するベース部46と、を備えている。
延在部45は、X方向の内側端部がコーナ部材21の内側に位置しており、コーナ部材21の下面にゴムシート等からなるダンパ37を挟んだ状態でボルト38により締結固定されている。
ベース部46は、Y方向の両端部が延在部45におけるX方向の外側端部にそれぞれ接合されており、下架台11の短尺体22bとの間にX方向に沿って間隔をあけた状態でY方向に沿って延在している。
【0021】
上側ブラケット42は、上架台12における各長尺体23aのX方向の両端部に、それぞれ対をなして連結された板状の部材である。具体的に、各上側ブラケット42は、長尺体23aからY方向の外側に向けて延在する延在部47と、延在部47におけるY方向の外側端部からX方向の外側に向けて延在する取付片48と、を備えている。
延在部47は、Y方向の内側端部が、長尺体23aの上面にゴムシート等からなるダンパ49を挟んだ状態でボルト51により締結固定されている。
取付片48は、Y方向から見て下方に向けて屈曲するL字状に形成されており、延在部47におけるY方向の外側端部に接合されてX方向の外側に向けて延在している。
【0022】
第1リンク機構43は、下側ブラケット41からZ方向の上方に向けて立設された第1ステー61と、第1ステー61に揺動可能に支持された第1アーム62と、を有している。
第1ステー61は、Z方向を長手方向とする板状の部材であり、その下端部が下側ブラケット41のベース部46のうち、Y方向の中央部から一端側寄りでボルト63により締結固定されている。
【0023】
第1アーム62は、X方向を厚さ方向とし、Y方向に沿って延在する板状の部材であり、第1揺動軸64を支点として第1ステー61に対してZ方向に沿って揺動可能に支持されている。具体的には、図4に示すように、上述した第1ステー61の上端部、及び第1アーム62には、それぞれ丸孔65,66が形成されており、これら丸孔65,66内に樹脂等からなるカラー67を介して第1揺動軸64が挿入されている。第1揺動軸64は、X方向に沿って延びる柱状に形成され、丸孔65,66内に配置されて第1ステー61、及び第1アーム62を支持する支持部71と、支持部71の両端部から軸方向(X方向)の外側に向けてそれぞれ突出するネジ部72と、を有している。そして、これらネジ部72にワッシャ73を介してナット74が螺着されることで、第1揺動軸64が第1ステー61、及び第1アーム62に組み付けられている。
【0024】
図1,3に示すように、第1アーム62の外側端部には、第1アーム62の延在方向を長軸方向とする長円形の長孔81が形成されており、この長孔81内に図示しないカラーを介してボルト82が挿通されている。ボルト82は、上側ブラケット42の取付片48に形成された図示しない貫通孔内に挿通され、取付片48に締結固定されている。したがって、第1アーム62は、第1揺動軸64を支点とした揺動運動に応じて、ボルト82を支点にして回動可能に構成されるとともに、ボルト82に対して長孔81の延在方向に沿って移動可能に構成されている。
また、第1アーム62の内側端部にも、第1アーム62の延在方向を長軸方向とする長円形の図示しない長孔が形成されている。
【0025】
一方、第2リンク機構44は、上述した第1リンク機構43と同様の構成からなり、下側ブラケット41からZ方向の上方に向けて立設された第2ステー83と、第2ステー83に揺動可能に支持された第2アーム84と、を有している。
第2ステー83は、Z方向を長手方向とする板状の部材であり、その下端部が下側ブラケット41のベース部46のうち、Y方向の中央部から他端側寄りでボルト85により締結固定されている。
【0026】
第2アーム84は、X方向を厚さ方向とし、Y方向に沿って延在する板状の部材であり、第2揺動軸86を支点として第2ステー83に対してZ方向に沿って揺動可能に支持されている。具体的には、上述した第1リンク機構43と同様に、図4に示すように、上述した第2ステー83の上端部、及び第2アーム84には、それぞれ丸孔65,66が形成されており、これら丸孔65,66内に樹脂等からなるカラー67を介して第2揺動軸86が挿入されている。第2揺動軸86は、第1揺動軸64に対してY方向に間隔をあけた状態で並設されるとともに、軸方向が第1揺動軸64と平行に配置されている。
【0027】
図1,3に示すように、第2アーム84の外側端部には、延在方向を長軸方向とする長円形の長孔91が形成されており、この長孔91内に図示しないカラーを介してボルト92が挿通されている。ボルト92は、上側ブラケット42の取付片48に形成された図示しない貫通孔内に挿通され、取付片48に締結固定されている。したがって、第2アーム84は、第2揺動軸86を支点とした揺動運動に応じて、ボルト92を支点にして回動可能に構成されるとともに、ボルト92に対して長孔91の延在方向に沿って移動可能に構成されている。
また、第2アーム84の内側端部にも、延在方向を長軸方向とする長円形の長孔93が形成されている。
【0028】
そして、上述した第1リンク機構43、及び第2リンク機構44の各アーム62,84の内側端部に形成された長孔(例えば、長孔93)内には、図示しないカラーを介して第3揺動軸95が挿通されている。すなわち、各アーム62,84同士は、第3揺動軸95を支点として回動可能に連結されている。
この場合、各アーム62,84は、それぞれ第1揺動軸64、及び第2揺動軸86を支点とする揺動運動に応じて、第3揺動軸95に対して互いの長孔(例えば、長孔93)の延在方向に沿って移動可能に構成されている。また、本実施形態では、下架台11及び上架台12が防振部材14によって互いに離間する方向に付勢されていることで、第1アーム62、及び第2アーム84は、Y方向の外側から内側に向かうに従い下方に傾斜した初期状態で保持されている。
【0029】
(作用)
次に、上述した転倒防止装置13の作用について説明する。なお、以下の説明では、設備機器Wが地震等の大きな振動によって、水平方向の振動のうち主にY方向へ往復振動する場合について説明する。図5は、転倒防止装置の作用を説明するための説明図である。
図5(a)に示すように、設備機器WがY方向に沿って往復振動する際に、例えば+Y方向(例えば、第1リンク機構43側)に向けて変位すると、設備機器Wは下端部を起点にY方向に沿って揺れ、例えば+Y方向に向けて傾動しようとする。すると、設備機器Wの+Y方向への傾動動作に応じて上架台12の+Y方向側が防振部材14の付勢力に抗して下方に向けて変位する。これにより、第1アーム62の外側端部が押下げられ、第1アーム62が第1揺動軸64を支点として(例えば、反時計回り)に揺動することになる。
【0030】
第1アーム62の外側端部が押下げられるように揺動すると、第1アーム62の内側端部が上方に向かって変位する。すると、第3揺動軸95を介して第1アーム62に回動可能に連結された第2アーム84の内側端部が、第1アーム62によって押し上げられる。このため、第2揺動軸86を支点とし、第2アーム84が第1アーム62の揺動方向とは逆回り(例えば、時計回り)に揺動する。これにより、上架台12のうち、第2アーム84が連結された−Y方向側(第2リンク機構44側)が、第2アーム84の揺動動作に追従して下方に向けて変位する。したがって、図5(b)に示すように、設備機器Wの+Y方向への変位に追従して、設備機器W、及び上架台12の全体が下方に向けて変位することになる。すなわち、Y方向への振動発生時において、各リンク機構43,44がそれぞれの揺動軸64,86回りに互いに逆方向に揺動することで、下架台11に対する上架台12の傾倒を抑制できる。
【0031】
その後、防振部材14の付勢力により、上架台12が下架台11に対して上方に向けて復元するとともに、第1アーム62及び第2アーム84の外側端部が引き上げられることで、上述の揺動動作とは逆方向に揺動して初期状態に復帰する。
【0032】
一方、設備機器Wが−Y方向に変位すると、設備機器Wは下端部を起点に−Y方向に向けて傾動しようとする。すると、この傾動動作に応じて上架台12の−Y方向側が防振部材14の付勢力に抗して下方に向けて変位するとともに、第2アーム84の外側端部が押下げられ、第2アーム84が第2揺動軸86を支点として(例えば、時計回り)に揺動することになる。
そして、第2アーム84の外側端部が押下げられるように揺動すると、第2アーム84の内側端部が上方に向かって変位する。すると、第3揺動軸95を介して第2アーム84に回動可能に連結された第1アーム62の内側端部が、第2アーム84によって押し上げられる。このため、第1揺動軸64を支点とし、第1アーム62が第2アーム84の揺動方向とは逆回り(例えば、反時計回り)に揺動する。これにより、上架台12のうち、+Y方向側が第1アーム62の揺動動作に追従して下方に向けて変位する。その結果、設備機器Wの+Y方向への変位に追従して、設備機器W、及び上架台12の全体が下方に向けて変位することになる。
以上の動作を繰り返すことで、結果的にY方向への変位をZ方向への変位へ変換しながら、防振部材14によりY方向への振動が減衰される。
【0033】
したがって、本実施形態によれば、Y方向への振動発生時において、各リンク機構43,44がそれぞれの揺動軸64,86回りに互いに逆方向に揺動することで、下架台11に対する上架台12の傾倒を抑制できる。
これにより、設備機器WのY方向への変位を低減できるので、設備機器Wの転倒や周辺との干渉を防止することができる。
【0034】
また、本実施形態では、X方向の両側にそれぞれ転倒防止装置13を設けたため、設備機器Wを安定して支持することができる。
さらに、第1アーム62及び第2アーム84を下架台11及び上架台12の短手方向(Y方向)に沿うように設けたため、長手方向(X方向)に比べて傾倒し易い短手方向への傾倒を抑制できる。これにより、設備機器Wの転倒や周辺との干渉を確実に防止することができる。
また、下架台11と上架台12との間に防振部材14を設けることで、下架台11及び上架台12(制振装置2)と、第1アーム62及び第2アーム84(転倒防止装置13)と、をそれぞれ付勢しておくことができる。そのため、それぞれ別々に弾性部材を設ける場合に比べて部品点数の削減を図り、製造コストの増加を抑制できる。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、本発明の下側フレーム、及び上側フレームは、下架台11、及び上架台12のような矩形枠状に限らず、適宜設計変更が可能である。
また、上述した実施形態では、下架台11、及び上架台12にそれぞれブラケット41,42を介して第1アーム62、及び第2アーム84を設ける場合について説明したが、下架台11、及び上架台12に第1アーム62、及び第2アーム84を直接設けても構わない。
【0036】
また、上述した実施形態では、X方向の両側に転倒防止装置13を一対設けた場合について説明したが、これに限られない。例えば、X方向に沿って複数設けたり、X方向の中央部に一つ設けたりすることが可能である。
さらに、上述した実施形態では第1アーム62および第2アーム84をY方向に沿うように設けた場合について説明したが、これに限らずX方向に沿うように設けたり、X方向、及びY方向の両側にそれぞれ設けたりしても構わない。
また、第1アーム62、及び第2アーム84を上述した初期状態に向けて復帰させる方向に付勢する弾性部材を、防振部材14とは別に設けても構わない。
【符号の説明】
【0037】
1…防振架台 2…制振装置 11…下架台(下側フレーム) 12…上架台(上側フレーム) 13…転倒防止装置 14…防振部材(弾性部材) 41…下側ブラケット(下側フレーム) 42…上側ブラケット(上側フレーム) 62…第1アーム 64…第1揺動軸 84…第2アーム 86…第2揺動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面側に取り付けられる下側フレームと、
前記下側フレームに対して重力方向の上方に配置され、載置物側に取り付けられる上側フレームと、
前記下側フレームと前記上側フレームとの間に配設され、少なくとも前記下側フレームと前記上側フレームとを離間させる方向に付勢力が作用する弾性部材と、を有する制振装置に取り付けられ、
前記下側フレームに対する前記上側フレームの傾倒を抑制する転倒防止装置であって、
前記下側フレームと、前記上側フレームとの間に水平方向に沿って立設され、且つ軸方向が平行となるように水平方向に沿って並設された第1揺動軸、及び第2揺動軸と、
前記第1揺動軸を支点として揺動可能に支持された第1アームと、
前記第2揺動軸を支点として揺動可能に支持された第2アームと、を備え、
前記第1アームにおける前記第2揺動軸側の内側端部と、前記第2アームにおける前記第1揺動軸側の内側端部とが回動可能に連結されているとともに、
前記上側フレーム側に、前記第1アームにおける前記第2揺動軸とは反対側の外側端部と、前記第2アームにおける前記第1揺動軸とは反対側の外側端部とがそれぞれ回動可能に支持されていることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
前記下側フレーム、及び前記上側フレームは、それぞれ水平方向のうち一方向が長く形成されており、
前記第1アーム、及び前記第2アームは、それぞれの延在方向が前記下側フレーム、及び前記上側フレームの短手方向に沿うように設けられていることを特徴とする請求項1記載の転倒防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64443(P2013−64443A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203320(P2011−203320)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000224994)特許機器株式会社 (59)
【Fターム(参考)】