説明

転写シート

【課題】 本発明は、転写時に安定した剥離性を得るために必要な保護層の耐摩耗性、耐薬品性、透明性、硬度を満足しつつ、転写シートの転写層表面に高い表面光沢や平滑性を付与し、微細凹凸を精度よく形成することも併せて達成する転写シートを提供する。
【解決手段】 基材シート上に剥離層及び転写層を設けてなり、転写層を剥離層から剥離して被転写体に転写するための転写シートにおいて、該転写層は少なくとも保護層及び接着層を有し、該剥離層は、長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化して形成されたことを特徴とする転写シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐磨耗性、耐薬品性、装飾性等に優れた表面を持つ成形品を低コストで得ることができる良好な転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐摩耗性、耐薬品性、装飾性等に優れた表面を持つ成形品を得るための成形品の表面改質方法として転写シートを成形品表面に転写する方法がある。具体的には、剥離性を有する基材シート上に形成した保護層および装飾層を成形品表面に接着させたあと、基材シートを剥離する方法がある。転写シートの転写手段として、熱プレス転写方式、真空加圧転写方式、射出成形金型内成形同時転写方式などがある。
転写シートの基材シートは剥離性を有するシートが用いられる。特に成形品表面に転写される転写層と基材シートの剥離性を適度に制御する必要がある。転写シートを製造する際、剥離が軽すぎると転写層が取り扱い中にこぼれ落ちて転写シートを得ることが出来ない。一方、剥離が重すぎると、転写シートの基材シートを剥離する際、基材シートと転写層の界面で上手く剥離できず、剥離不良となる。適度な剥離性に制御するため、基材シートの表面に、基材シートと一緒に剥離される剥離層が設けられる。従来、基材シートとしてはポリエチレンテレフタレート(以降PETと略す)フィルム、剥離層としてはアクリルメラミン樹脂(特許文献1〜3)やアルキッドメラミン樹脂(特許文献4)を熱硬化させた樹脂層が主に用いられている。
【0003】
しかし、表面に凹凸のあるエンボス成形品や板材表面、立体形状を有する成形品への転写シートの転写において、基材シートにPETフィルムを用いた場合、基材シートの耐熱性が高いため曲面や凹凸などの3次元形状を有する部分で基材シートが成形品へ形状追随できず、転写不良が起こる場合があった。こういった場合、PETよりも熱的に柔軟性の高いフィルム、例えば塩化ビニルシート、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂シート、ポリスチレン系樹脂シート、アクリロニトリル系樹脂シート、ABS系樹脂シートなどを用いるが、基材シート単独では適度な剥離性を得ることが難しかった。
【0004】
また、熱的柔軟性の高いフィルム上に剥離層として実績のあるアクリルメラミン樹脂やアルキッドメラミン樹脂を用いることが考えられるが次の理由で用いることができない。これらの剥離層に用いられる樹脂は130〜160℃の温度で熱硬化させて、はじめて適度な剥離性を発現する(特許文献1〜2)。
しかし、上記熱的柔軟性の高いフィルムはその耐熱性の弱さから、この熱硬化処理温度に耐えることができず、基材シートに皺やカール、収縮などが発生し、良好な転写面を得ることが困難であった。また、転写層としての保護層に剥離性を制御する成分を含有させる方法(特許文献5〜6)が用いられているが、保護層の耐摩耗性、耐薬品性、透明性、硬度などの機能に悪影響を与えることがあった。
また、剥離層に用いられる樹脂は、特許文献7では放射線硬化可能な多官能アクリレートを剥離層に用いることが記載され、また、特許文献8では長鎖脂肪族ペンダント構造を有する活性エネルギー線硬化型ウレタンアクリレート樹脂が賦形層転写箔材料として記載されている。しかし、この樹脂層は転写層として基材シートから外れて転写されることから、剥離層とは機能・効果が異なる保護層である。
【0005】
また、工程剥離シートの分野では、低温で硬化できる樹脂を剥離層に用いたものがある。例えば、低温熱硬化型シリコーン樹脂や非硬化型長鎖アルキルペンダント型ポリマー樹脂(特許文献9)、紫外線および電子線硬化型シリコーン樹脂(特許文献10〜12)などである。これらの樹脂を転写シートの剥離層に用いた場合、剥離性不良や剥離不安定、転写面の光沢平滑性が低かったり、転写面が荒れたりするなどの問題が発生する。特にシリコーン樹脂は脱落を完全に防ぐことが困難なため、印刷や塗工などの製膜工程のラインを汚染してしまう虞れがあった。
【0006】
また、近年転写シートの転写層表面となる保護層表面は、光沢・平滑性に優れるものや、マット調、皮革調、ロゴやホログラムなどの意匠性付与、低反射や防眩などの光学機能を付与など、様々な表面状態にすることが求められている。メラミン系樹脂の剥離層は容易に光沢・平滑性を得ることができ、転写層表面に光沢・平滑性を付与することが容易である。
また、1)予め熱エンボス加工などで凹凸を形成した基材シート上に剥離層を形成したり、2)剥離層を積層した基材シートに剥離層ごと熱エンボス加工したり、3)剥離層中に炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ポリエチレンワックス、ガラスビーズ、有機フィラーなどの微粉末を含有させて艶消し状の表面凹凸を形成したり、4)剥離層と同様な樹脂を剥離層上に部分印刷して凹凸形成することによって、表面賦型・凹凸を有する剥離層を得ることができ、転写層表面に、マット調、皮革調、ロゴなどの意匠性や、防眩など光学機能を付与することができる(特許文献13〜14)。
しかし、これらの方法では、転写層表面にホログラムや低反射などの光学機能を付与するための微細な凹凸を精度よく形成することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−282000号公報
【特許文献2】特開平1−320196号公報
【特許文献3】特開平2−198827号公報
【特許文献4】特開2000−84977号公報
【特許文献5】特開平10−297192号公報
【特許文献6】特開平10−297193号公報
【特許文献7】特表2009−509813号公報
【特許文献8】特開2004−123831号公報
【特許文献9】特開平11−293203号公報
【特許文献10】特開平11−158443号公報
【特許文献11】特開平6−64106号公報
【特許文献12】特開平5−169595号公報
【特許文献13】特開平11−123897号公報
【特許文献14】特開2003−154798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記で提案されている手法では、成形品の平面部、曲面および凹凸部においても良好な転写面を形成できたとしても、転写時に安定した剥離性を得るために必要な保護層の耐摩耗性、耐薬品性、透明性、硬度などの機能に悪影響を与える可能性があった。
また、転写シートの転写層表面に高い表面光沢や平滑性を付与すること、及び微細凹凸を精度よく形成することを両立できる転写シートを得ることが難しかった。
そこで、本発明は、転写時に安定した剥離性を得るために必要な保護層の耐摩耗性、耐薬品性、透明性、硬度を満足しつつ、転写シートの転写層表面に高い表面光沢や平滑性を付与し、微細凹凸を精度よく形成することも併せて達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の[1]〜[5]の構成を採用することによって、上記課題を解決することができる本発明を見出した。
【0010】
[1]基材シート上に剥離層及び転写層を設けてなり、転写層を剥離層から剥離して被転写体に転写するための転写シートにおいて、該転写層は少なくとも保護層及び接着層を有し、該剥離層は、長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化して形成されたことを特徴とする転写シート。
[2]前記長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートは、長鎖脂肪族基が、アクリル酸エステルのエステル基側鎖にウレタン結合を介して結合していることを特徴とする、[1]に記載の転写シート。
[3]保護層と接着層の間に装飾層を有する、[1]または[2]に記載の転写シート。
[4]剥離層が、凹凸構造を有する[1]〜[3]のいずれかに記載の転写シート。
[5]基材シートが、ポリオレフィン系樹脂からなる[1]〜[4]のいずれかに記載の転写シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、成形品の平面部、曲面および凹凸部においても良好な転写面を形成でき、転写時に安定した剥離性を得るために必要な保護層の耐摩耗性、耐薬品性、透明性、硬度などの機能に優れた転写シートを得ることができる。また、転写シートの転写層表面に高い表面光沢や平滑性を付与すること、及び微細凹凸を精度よく形成することを両立できる転写シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の転写シートの一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の転写シートの他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図示に従って実施形態の一例を説明する。
図1は、本発明に係る転写シートの一例を示す模式断面図であり、図2は本発明に係る転写シートの他の例を示す模式断面図である。
【0014】
<転写シート>
まず、図1に示した本発明の転写シート6について説明する。
(基材シート)
基材シート1としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいは以上の各シートの複合体などを用いることができる。
【0015】
基材シート1として好ましいものは、耐溶剤性があり、基材シート中の低分子量成分が剥離性を不安定にするので可塑剤や不純物成分の含有量が少ないフィルムがよいことから、二軸延伸PETフィルム、無延伸PETフィルム、二軸延伸ポリオレフィンフィルム、無延伸ポリオレフィンフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、無延伸ナイロンフィルム、ウレタンエラストマーフィルム、ウレタンエラストマーフィルムとポリオレフィンフィルムの積層体などが好ましい。さらに好ましくは被転写体である成形品への転写形状追随性に優れ、コスト面でも有利なことから、二軸延伸ポリオレフィンフィルムおよび無延伸ポリオレフィンフィルムである。さらに好ましくは、ポリプロピレン系フィルムである。
【0016】
(剥離層)
剥離層2は、基材シート1から転写層5の剥離性を適度な強度に安定させるため、基材シート1上に転写層5を形成する前に形成する。剥離層2は、転写後に基材シート1を剥離した際に、基材シート1とともに転写層5から離型する。
転写層が転写した成形品(すなわち最終製品)の表面は、剥離層表面の形状をほぼそのまま反映するため、剥離層表面は非常に重要なファクターである。最終製品表面はその用途によって高光沢・高平滑が求められたり、マット調および皮革調が求められたり、ホログラムや防眩、低反射などの光学機能を持つことが求められたり、様々な表面賦型をすることが望まれる。よって剥離表面に様々な表面賦型を行う必要があるため、剥離層設計として、まず高光沢・高平滑な表面を容易に得られることが重要になる。
高光沢・高平滑な表面が得られた上で初めて微細凹凸も含めた様々な表面賦型を行うことが可能となるからである。一般にアクリレート樹脂は優れた表面平滑性を容易に形成できるが、その脆さゆえ転写および剥離の際に剥離表面のひび割れ、剥離層の基材シートからの剥がれなどにより、転写不良を起こしていた。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は表面平滑性に優れた剥離層表面を形成することが容易であり、ウレタン構造を有することによって基材シート1との優れた密着性を発現し、その適度な柔軟性によって良好な転写を実現することができる。
なお、本明細書では、アクリレートとメタクリレートの総称として「(メタ)アクリレート」と表現する。
【0017】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート樹脂には一液ポリマー型および二液熱硬化型のものがある。一液ポリマー型の場合、架橋構造がないため高温での剥離安定性にかけたり、耐溶剤性がないため転写層5の形成時に剥離層/転写層界面が、荒れたり剥離不可能になる。
二液硬化型の場合、これらの問題を解決できる十分な硬化を得るためには120〜160℃の高温が必要なため、使用できる基材シート1が耐熱性のある材質、例えばPETなどに限定されていた。曲面や凹凸など3次元形状を有する成形品へ転写追随性に優れる、熱的柔軟性の高い材質では、基材シートの耐熱性の乏しさから熱皺やカールが発生してしまうため適用できなかった。そこで、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化物からなる剥離層を用いることが考えられる。
また、転写シートの保護層には、表面平滑性、耐摩耗性、耐薬品性、硬度、耐擦傷性に優れる活性エネルギー線硬化型ウレタン(メタ)アクリレートが主成分として使われた場合、同質な活性エネルギー線硬化型ウレタンアクリレートを剥離層として使用すると良好な剥離性を得ることが難しい。そのため、剥離層に活性エネルギー線硬化型ウレタン(メタ)アクリレートを用いることが通常困難であった。
【0018】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、転写シートにおいて、長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化して形成された硬化物を剥離層として用いることによってこれらの課題を解決できることを見いだし、本発明に至った。
【0019】
本発明の長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂の製造方法について例示する。
長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、長鎖脂肪族ペンダント構造によって良好な剥離性を実現することができ、ウレタン(メタ)アクリレートを用いることで塗膜として表面平滑性に優れた剥離層表面を形成すること、基材シートとの優れた密着性を発現すること、適度な柔軟性によって良好な転写を実現することができると考えられる。
【0020】
<ウレタン(メタ)アクリレートについて>
ウレタン(メタ)アクリレートとは、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させたウレタン結合を有するものである。
要求される塗膜物性によっては、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレートに加えて、ポリオール化合物、さらには一分子あたり1個以上のアリルエーテル基および1個以上の水酸基を有する化合物を原料に加えて反応させたものでも良い。
【0021】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、多価カルボン酸と多価アルコールをエステル化反応させて得られるものである。多価カルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等公知慣用のものが挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等公知慣用のものが挙げられる。
本発明のポリエステルポリオールは40℃で非結晶であるのが好ましく、常温で非結晶であるのがより望ましい。40℃で結晶性があるポリエステルポリオールは得られる光硬化性樹脂組成物が結晶化しやすいため、塗料安定性、作業性が悪くなり硬化塗膜の物性が低下する。本発明のポリエステルポリオールの数平均分子量は500〜3500であることが好ましく、1000〜3000であるのがより望ましい。数平均分子量が500未満だと硬化塗膜が脆くなり、3500を超えると硬化性及び硬化塗膜の強度が不充分であり、塗膜が脆くなる。
【0022】
ポリカプロラクトンポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール,ビスフェノールAのエチレンオキサイド,もしくはプロピレンオキサイド付加物、グリセリン,トリメチロールプロパン、トリメチロールメタンペンタエリスリトール等公知慣用の多価アルコールのε−カプロラクトン付加物等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールなどを用いることができ、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランをカチオン重合して造られる公知慣用のものが挙げられる。
1分子当り1個以上のアリルエーテル基及び1個以上の水酸基を有する化合物は、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等公知慣用のものが挙げられる。1分子当り1個以上のアリルエーテル基及び1個以上の水酸基を有する化合物は活性エネルギー線硬化物の黄変等の着色を抑えたい場合に添加することが好ましい。その場合の添加量は活性エネルギー線硬化物成分全体の1〜20質量%、好ましくは5〜10質量%の割合で添加するのがよい。添加量が少ないと着色抑制効果が小さく、添加量が多いと剥離層としての柔軟性が低下したり、高価になったりする。
【0023】
水酸基を含有する(メタ)アクリレートは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等公知慣用のものが挙げられる。
【0024】
また、イソシアネート化合物としては、単官能または多官能のイソシアネート化合物を用いることができる。多官能イソシアネート化合物はトリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物が例示できる。さらには、上記の各種ジイソシアネート化合物と水とを反応させて得られるビュレット型ポリイソシアネート化合物、または上記の各種ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の多価アルコールとを反応させて得られるアダクト型ポリイソシアネート化合物、または上記の各種ジイソシアネート化合物をイソシアヌレート化せしめて得られる多量体等も例示できる。
【0025】
<長鎖脂肪族ペンダント構造について>
【0026】
本明細書で言う長鎖脂肪族ペンダント構造とは、以下の(A)または(B)の手段により形成された構造を意味する。
(A)アクリル酸と反応してエステルを形成するアルコールとして、長鎖脂肪族アルコールを用いる。長鎖脂肪族アルコールは、炭素数5以上、好ましくは12以上、30以下であり、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。
(B)アクリル酸と反応するアルコールとしてジオールを用い、残っているアルコール末端に長鎖脂肪族基を有するイソシアネートと反応させる。この場合、該アルコール末端に、多官能イソシアネートとポリオールを結合し、その末端のアルコールに長鎖脂肪族基を有するイソシアネートを結合するなどの方法を用いても良い。いずれにしろ、アクリル酸エステルの側鎖に、ウレタン結合を介して、長鎖脂肪族基が結合している。
【0027】
上記(A)の手段を用いた場合、長鎖脂肪族ペンダント構造を有するアクリル酸エステルと別のウレタン(メタ)アクリレートを混合することにより、本発明の「長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂」が製造される。
【0028】
上記(B)の手段を用いた場合、長鎖脂肪族基を有するイソシアネートは、下記式(1)で示される長鎖脂肪族イソシアネート化合物が好ましい。これによって適度な剥離性を安定させる点から本発明の形態として好ましい長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂を得ることができる。
1−NCO(R1:長鎖脂肪族基)・・・式(1)
上記式(1)において、R1は長鎖脂肪族基であり、炭素数5以上のアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数12以上で、上限は特に制限がないが、炭素数が大きくなると溶剤への溶解性が悪く、融点が高く、結晶化しやすくなる傾向にあるため炭素数30以下が良い。具体的にはアミルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、ミリスチルイソシアネート、パルミチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート、テトラコシルイソシアネート、オクタコシルイソシアネートなどが好ましい例示として挙げられる。
【0029】
<長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂>
以下に、長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂を具体的に例示する。
上記(A)の手段を用いた場合、最も代表的な長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂として、下記式(2)、(3)の(メタ)アクリレート混合物で示される。
CH2=C(R2)COOR3−O−CO−NHR4 ・・・式(2)
CH2=C(R2)COOR1 ・・・式(3)
上記式(2)、(3)において、R2は水素またはメチル基、R3、R4は夫々独立に任意の炭化水素基、R1は長鎖脂肪族基である。
【0030】
上記(B)の手段を用いた場合、最も代表的な長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂として、下記式(4)のものが例示される。
CH2=C(R2)COOR3−O−CO−NHR1 ・・・式(4)
上記式(4)において、R1、R2、R3は前記と同様である。
【0031】
更に、上記(B)の手段を用いた場合のより好ましい例として、多官能イソシアネート化合物、上記式(1)で示される長鎖脂肪族イソシアネート化合物、水酸基を含有する(メタ)アクリレート及びポリオール化合物を原料として合成された下記式(5)または式(6)に示す長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
CH2=C(R2)COO−I−P−CO−NH−R1 ・・・・・式(5)
CH2=C(R2)COO−I−P−I−CO−NH−R1 ・・・・・式(6)
(I:多官能イソシアネート由来残基、P:ポリオール由来残基、R1、R2、は前記と同様)
この構成では、ポリオールおよび多官能イソシアネート由来残基によって柔軟性や密着性などの塗膜の機能性を制御することが可能となる。
【0032】

また、剥離層には、効果を阻害しない範囲で上記2種類以上を混合してもよいし、他の材料を添加しても良い。
他の材料としては、マット剤、耐候性改善剤、着色剤などが上げられる。マット剤としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ポリエチレンワックス、ガラスビーズなどの公知の充填材が使用できる。マット剤の粒径は1〜10μm程度のものを、1〜20質量%程度添加する。耐候性改善剤としては紫外線吸収剤、光安定剤のどちらか一方、または両方を添加することができ、その添加量は紫外線吸収剤、光安定剤とも通常0.5〜10質量%程度である。
一般的には紫外線吸収剤と光安定剤を併用するのが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系等の有機系紫外線吸収剤のほか、粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物を用いることができる。光安定剤としては、ビス(2,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル補足剤を用いることができる。
【0033】
本発明の長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレート樹脂を合成するには、多官能イソシアネート化合物およびポリオール化合物を反応させて末端イソシアネートオリゴマーとし、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させた後、長鎖脂肪族イソシアネートを反応させる方法、多官能イソシアネート化合物、長鎖脂肪族イソシアネートおよびポリオール化合物を反応させて末端イソシアネートオリゴマーとし、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法、多官能イソシアネート化合物およびポリオール化合物を反応させた後、長鎖脂肪族イソシアネートを反応させて末端イソシアネートオリゴマーとし、水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法、多官能イソシアネート化合物およびポリオール化合物を反応させて末端イソシアネートオリゴマーとし、水酸基含有(メタ)アクリレートおよび長鎖脂肪族イソシアネートを反応させる方法などがあげられる。
【0034】
活性エネルギー線による着色を抑えたい場合に1分子当たり少なくとも1個以上のアリルエーテル基および1個以上の水酸基を有する化合物をウレタン(メタ)アクリレートの合成原料として反応する方法としては、多官能イソシアネート化合物およびポリオール化合物成分を反応させて末端イソシアネートオリゴマーとし、1分子当たり少なくとも1個以上のアリルエーテル基および1個以上の水酸基を有する化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレート成分を反応させる方法、多官能イソシアネート化合物と、ポリオール化合物及び1分子当たり少なくとも1個以上のアリルエーテル基および1個以上の水酸基を有する化合物成分を反応させて末端イソシアネートオリゴマーとし、水酸基含有(メタ)アクリレート成分と反応させる方法、1分子当たり少なくとも1個以上のアリルエーテル基および1個以上の水酸基を有する化合物成分をポリオール化合物成分の原材料として組み込み、ポリオールとして、前述の方法と同様に合成する方法があげられる。
ここで、多官能イソシアネート化合物とポリオール化合物を反応させて末端イソシアネートオリゴマーを得る際に、必要に応じて2価のポリオール、もしくは2価のポリアミンを鎖伸長剤として使用してもよい。
【0035】
2価のポリオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール,1,6−ヘキサンジオール,3−メチル1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのエチレレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物等公知慣用のものが挙げられる。
2価のポリアミンとしてはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、水添トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン水添ジフェニルメタンジアミン、トリジンアミン、ナフタリンジアミン、イソホロンジアミン、キシレンジアミン、水添キシレンジアミン等公知慣用のものが挙げられる。
【0036】
<その他の成分について>
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂のウレタン(メタ)アクリレートの主成分として、前記式(4)、式(5)、式(6)などを使用する場合、さらに安定した剥離性を得るため、前述の含有成分以外に必要に応じて、前記式(3)で示される長鎖脂肪族基を有する(メタ)アクリレート成分を活性エネルギー線硬化型樹脂に含有することができる。この前記式(3)の成分は、活性エネルギー線硬化型ウレタン(メタ)アクリレートの合成反応の際に添加しても、合成反応の後に添加してもどちらでもかまわない。
【0037】
活性エネルギー線硬化物が長鎖脂肪族ペンダント構造を有するために、式(1)の長鎖脂肪族イソシアネートと、1分子当たり少なくとも1個以上のアリルエーテル基および1個以上の水酸基を有する化合物を反応させ、活性エネルギー線硬化反応に寄与する末端にアリル基を有する長鎖脂肪族構造を有するオリゴマーとして活性エネルギー線硬化型樹脂に含有することが好ましい。
長鎖脂肪族成分は結晶化することがあり、結晶化によって塗料として沈殿物や浮遊物が発生し、塗膜外観や平滑性を大きく損ねる場合がある。結晶化を抑制するために、剥離性を損なわない範囲で、式(7)で示されるエーテル基およびエポキシ基を含有した脂肪族基を有する(メタ)アクリレート成分を含有させることができる。
【0038】
CH=C(R2)COOR5 ・・・式(7)
(R2:水素またはメチル基、R5:エーテル基およびエポキシ基を含有した脂肪族基)
具体的にはグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、エチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ノニルフェノールポリエチレンオキサイドアクリレートなどが例示できる。
エーテル基およびエポキシ基を含有した脂肪族基を有する(メタ)アクリレート成分は、長鎖脂肪族基を有する(メタ)アクリレート成分は、活性エネルギー線硬化型ウレタン(メタ)アクリレートの合成反応の際に添加してもよいし、合成反応の後に添加してもどちらでもかまわない。
これらの反応は溶剤中で溶液重合することができる。溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチル、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレン、ヘキサンなどの芳香族類および炭化水素類など公知慣用の有機溶剤を用いることができる。
【0039】
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と溶剤の質量比は80:20〜10:90、好ましくは70:30〜20:80とするのが望ましい。溶剤がこの範囲より少ないと均一反応が得られなかったり、粘度が高く取り扱い作業性が劣ったりし、この範囲より多いとコスト高となる。
また、これらの反応を反応性希釈剤中で行うこともできる。本発明に使用される反応性希釈剤としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の公知慣用のものが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と反応性希釈剤の質量比は、90:10〜50:50、好ましくは80:20〜60:40とするのが望ましい。反応性希釈剤が、この範囲より少ないと活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が高く塗工しにくくなり、またこの範囲より多いと高価になり、硬化物の物性が低下する。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化型ウレタン(メタ)アクリレートを得るための重合反応に関しては、例えば特許第4171154号、特開2004−307783号公報などに記載されたウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いることができる。
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤としては、ビニル系モノマーを光重合させるために用いられている周知の光重合開始剤を用いることができ、α−ヒドロキシイソブチルフェノンベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)−ジフェニルフォスフィンオキサイド、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物等が挙げられ、光照射装置の吸収特性を考慮した開始剤の選択がなされるが、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンが好ましい。内部硬化性が不十分な場合、未反応成分が時間の経過とともに粘着材の表面に移行してベタつく場合がある。また、上記開始剤の少なくとも1種を主開始剤として、400nm以上の長波長領域に吸収を有する開始剤、例えばビスアシルフォスフィンオキサイド、モノアシルフォスフィンオキサイド等の光重合開始剤を併用すると、厚みを0.3mm以上とする場合の内部硬化性を向上できる場合がある。光重合開始剤の添加量は、活性エネルギー線硬化物成分全体の0.1ないし20質量%、好ましくは0.3ないし10質量%を添加する。
さらに必要に応じて重合禁止剤を添加することもできる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p−t−ブチルカテコール、2,6−ジブチル−4−メチルフェノールなどの公知慣用のものが挙げられる。
また、必要に応じて、上記以外の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、スリップ剤、防汚剤、紫外線吸収剤、顔料などの公知慣用の添加剤を添加することができる。
【0041】
活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させるために用いる活性エネルギー線には、
電子線、紫外線、可視光線、γ線等の電離性放射線などがある。これらの中では紫外線を用いることが好ましい。紫外線を照射する場合は、半導体・フォトレジスト分野や紫外線硬化分野などで一般的に使用されている紫外線ランプを用いることができる。一般的な紫外線ランプとしては、例えば、ハロゲンランプ、ハロゲンヒーターランプ、キセノンショートアークランプ、キセノンフラッシュランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、ディープUVランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、クリプトンアークランプ、エキシマランプなどがあり、極短波長(214nmにピーク)を発光するY線ランプもある。これらのランプには、オゾン発生の少ないオゾンレスタイプもある。ArFエキシマーレーザー、KrFエキシマーレーザーや、非線形光学結晶を含む高調波ユニットを介したYAGレーザーなどに挙げられる種々のレーザーや、紫外発光ダイオードを用いることもできる。紫外線ランプやレーザー、紫外発光ダイオードの発光波長は、硬化反応を妨げないものであれば限定はないが、好ましくは、光重合開始剤の感光波長領域と重なる発光波長が好ましい。さらには、それら発生剤の感光波長領域における極大吸収波長または最大吸収波長と重なる発光波長が、発生効率が高くなるためより好ましい。
これらの紫外線は、散乱光であっても、直進性の高い平行光であってもよい。光重合開始剤によるが、価格やランニングコストの面で、高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプを使用することが好ましい。
紫外線のエネルギー照射強度は、活性エネルギー線硬化型樹脂や光重合開始剤によって適宜決められる。種々の水銀ランプやメタルハライドランプなどに代表される照射強度が高い紫外線ランプを使用する場合は、生産性を高めることができ、その照射強度(ランプ出力)は30W/cm以上で、80W/cm以上が好ましい。紫外線の積算照射光量(J/cm)は、十分な硬化性を有する硬化物を安定かつ連続的に製造する上では、1mJ/cm〜2J/cmの範囲、さらには10mJ/cm〜1J/cmが好ましい。
また、硬化物表面の硬化が酸素阻害により十分に進行しない場合、未反応のアクリロイル基やアリル基が表面に残り、これが保護層の活性エネルギー線硬化の際に保護層樹脂と反応するために剥離性が低下することがある。その場合、照射部を窒素雰囲気にするなどして酸素濃度を低下させることが好ましい。活性エネルギー線硬化型樹脂や光重合開始剤にもよるが、好ましい酸素濃度は10000ppm以下、より好ましくは5000ppm以下、さらに好ましく2000ppm以下である。
【0042】
剥離層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、スプレーコート法、リップコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。また、剥離層2は0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmの厚さに形成する。0.1μmを下回ると十分な剥離性が得られず、10μmを上回ると経済的に不利になる。
【0043】
本発明の剥離層は、安定した剥離性を得るために、ぬれ張力試験用混合溶液(和光純薬工業株式会社製)で測定した表面エネルギーが30mN/m以下、好ましくは25.4mN/m以下となると良い。
【0044】
転写シートの転写層表面となる保護層表面にマット調、皮革調、ロゴやホログラムなどの意匠性付与、低反射や防眩などの光学機能を付与するため、本発明の剥離層表面を賦型することがある。剥離層表面の賦型方法としては、予め熱エンボス加工などで凹凸を形成した基材シート上に本発明の剥離層を形成する方法、活性エネルギー線で硬化済の本発明の剥離層を積層した基材シートを熱エンボス加工して剥離層表面に賦型する方法、剥離層中に炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ポリエチレンワックス、ガラスビーズ、有機フィラーなどの微粉末を含有させて艶消し状の表面凹凸を形成する方法、基材シート上の全面に本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂下塗り層を設け、活性エネルギー線で反硬化させて表面タックがない状態にし、前記活性エネルギー線硬化型樹脂と同様な樹脂を下塗り層上に部分印刷して凹凸層を形成し、活性エネルギー線で下塗り層と凹凸層を同時に完全硬化することによって、表面凹凸を有する剥離層を得る方法が適用できる。未硬化もしくは半硬化状態の本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂を凹凸構造が賦型されている型すなわちスタンパーを加圧密着(必要に応じて加熱も同時に行う)させて凹凸形状を押印し、押印状態で活性エネルギー線を照射して完全硬化させ、スタンパーを剥離する方法は、転写層表面にホログラムや低反射などの光学機能を付与するための微細な凹凸を精度よく形成できるために、本発明に好ましい賦型方法である。本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂は剥離性能に優れるため、押印後のスタンパー剥離の際に表面凹凸形状が変形することなく、微細な凹凸を精度よく形成できる。剥離性能に優れるため特定材質のスタンパーに限定されず、フィルム、樹脂板、金属板など公知慣用のスタンパーを自由に使用することができる。
【0045】
(保護層)
本発明の保護層3は、転写後に基材シート1を剥離した際に基材シート1または剥離層から剥離して転写物の最外層となり、薬品や摩擦から成形品7や装飾層3を保護するための層である。保護層3の材質としては、耐摩耗性や耐薬品性など保護能力に優れる、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂およびこれらの複合材料も用いることができる。中でも活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂を用いる場合、活性エネルギー線としては剥離層形成で用いたものを同様に用いることができる。また、保護層3の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。一般に、保護層3は0.5〜30μm、好ましくは1〜10μmの厚さに形成する。保護層3の厚さが0.5μmを下回ると耐摩耗性、耐薬品性が弱く、30μmを上回るとコスト高となり、また箔切れが悪くなり不必要な部分に保護層3が残ってバリとなる。
【0046】
(装飾層)
本発明の装飾層6は、保護層3の上に、通常は印刷層として形成する(図2参照)。印刷層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。装飾層6の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。
特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法を採用することもできる。装飾層6は、表現したい装飾に応じて、全面的に設ける場合や部分的に設ける場合もある。また、装飾層6は、金属薄膜層からなるもの、あるいは印刷層と金属薄膜層との組み合わせからなるものでもよいし、合成皮革等の凹凸形状を有したり、ソフトな触感が得られる等、装飾機能を持っている層でもよい。
【0047】
(接着層)
本発明の接着層4は、成形品表面に上記の各層を接着するものである。接着層4は、保護層3または装飾層6上の、接着させたい部分に形成する。すなわち、接着させたい部分が全面なら、接着層4を全面に形成する。また、接着させたい部分が部分的なら、接着層4を部分的に形成する。
また、接着層4としては、成形品の素材に適した樹脂を適宜使用する。例えば、成形品の材質がポリアクリル系樹脂の場合はポリアクリル系樹脂を用いるとよい。また、成形品の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩酢ビ系樹脂、これらの混合物や共重合物などを使用すればよい。さらに、成形品の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。接着層4の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。なお、保護層3や装飾層6が成形品に対して充分接着性を有する場合には、接着層4を設けなくてもよい。
【0048】
(その他の層)
本発明の転写シートでは、上記剥離層、保護層、装飾層、接着層以外の層を有しても良い。たとえば、転写層5の構成層間にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、転写層5間の密着性を高めたり、薬品から成形品や装飾層6を保護するための樹脂層であり、例えば、二液硬化性ウレタン樹脂、メラミン系やエポキシ系などの熱硬化性樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。プライマー層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法やスクリーン印刷法などの印刷法がある。
また、反射層を設けてもよい。例えばホログラム構造を有する凹凸を保護層に形成して意匠性の高い転写層とする場合、反射層を保護層と凹凸賦型された剥離層の間に設けるか、成型品に転写された保護層表面に反射層を設けることができる。反射層として光を反射する不透明な金属薄膜を用いると不透明タイプのホログラムとなり、透明な物質でホログラム層と屈折率差がある反射層を設ける場合は透明タイプとなるが、どちらも使用できる。反射層は保護層樹脂と屈折率の異なる材料を用いて形成することができる。
【0049】
この場合の屈折率は、凹凸パターン形成層の樹脂の屈折率より大きくても小さくてもよいが、屈折率の差は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.5以上であり、1.0以上が最適である。
金属薄膜は反射層および装飾層として用いることができ、例えば、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Al、Mg、Sb、Pb、Pd、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、Rb等の金属及びその酸化物、窒化物、硫化物等を単独若しくは2種類以上組み合わせた混合物からなり、化学蒸着や物理蒸着等の真空蒸着、昇華、スパッタリング、反応性スパッタリング、イオンプレーティング、電気メッキ等の公知の方法で形成できる。上記金属薄膜の中でもAl、Cr、Ni、Ag、Au等が特に好ましく、その膜厚は1〜10,000nm、望ましくは20〜200nmの範囲である。
酸化チタン(TiO)、硫化亜鉛(ZnS)等の屈折率が比較的高い金属化合物は、粒子径が小さい場合には透明性も得られるので、透明タイプ反射層として好適に使用される。
【0050】
(転写シートを用いた転写方法)
転写シート6を用いた転写方法には、ロール転写法、プレス転写法、メンブランプレス転写法、射出成形による成形同時転写法などの、公知慣用の加圧および加熱により転写する方法を用いることができる。
ロール転写法は、被接着物である成形品に転写シート6の接着層4側が被着するように接触させた後、転写シート6に熱圧ローラーが接触するように配置し、ローラー回転により、加熱・加圧接着する方法である。
プレス転写法は、被接着物である成形品に転写シート6の接着層4側が被着するように接触させた後、転写シート6に被接着物形状に嵌合されるような形状の熱圧プレス板が接触するように配置し、プレスにより加熱・加圧接着する方法である。
メンブランプレス転写は、吸着盤上に被接着物をセットし、その上に転写フィルムを置き、吸着盤により転写フィルムによって覆われた被接着物と転写フィルム間の空気を減圧し、転写フィルムを被接着物に馴染ませ、その後、シリコンラバーを有するバルーン型加熱プレス盤が降下してシリコンラバーが転写フィルムと被接着物に馴染むように高熱圧縮エアーを注入し、シリコンラバーを形状に馴染ませ、かつ転写に必要な熱と圧力を供給し、加熱・加圧接着する方法である。
射出成形による成形同時転写法は、可動型と固定型とからなる成形用金型内に転写シートを、接着層4を内側にして固定型に接するように転写シートを送り込む。この際、枚葉の転写シートを1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の転写シートの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の転写シートを使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写シートの装飾層6と成形用金型との見当が一致するようにするとよい。
また、転写シートを間欠的に送り込む際に、転写シートの位置をセンサーで検出した後に転写シートを可動型と固定型とで固定するようにすれば、常に同じ位置で転写シートを固定することができ、装飾層6の位置ずれが生じないので便利である。成形用金型を閉じた後、可動型に設けたゲートより溶融樹脂を金型内に射出充満させ、成形品を形成するのと同時にその面に転写シートを加熱・加圧接着させ、樹脂成形品を冷却した後、成形用金型を開いて樹脂成形品を取り出す方法である。転写法については特開2003−72295号などに詳しく書かれている。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の「部」および「%」は各々「質量部」および「質量%」を表わす。
【0052】
<実施例1>
基材シートに50μmの易接着ポリプロピレンフィルム(商品名KMP-122#50、王子特殊紙株式会社製)を用い、コロナ処理面の基材シート上に、長鎖脂肪族ペンダント構造を有するUV硬化型ウレタンアクリレート樹脂系剥離剤(商品名TA37-227A、日立化成ポリマー株式会社製)をバー塗工し、80℃・60秒加熱乾燥後、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス株式会社製)を用いて、160w/cm、ランプ高さ13cm、ベルトスピード15m/min、2pass、窒素雰囲気下で紫外線照射して厚さ1μmの剥離層を硬化形成した。
次に、剥離層の上に紫外線硬化型アクリル樹脂(商品名ユピマーHH0200、三菱化学株式会社製)をバー塗工し、80℃・3分加熱乾燥後、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、80W/cm、ランプ高さ13cm、ベルトスピード29m/minで紫外線照射して厚さ5μmの保護層を形成した。さらに保護層の上に接着層として塩酢ビ・アクリル系樹脂(商品名K539HP接着ワニス)をバー塗工し、80℃・60秒加熱乾燥して厚さ2μmの接着層を形成した。
こうして得られた転写シートを用いて、ロールプレス転写法を利用して被転写体の表面に転写した後、基材シート/剥離層を剥がし、転写された保護層の表面から高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、160w/cm、ランプ高さ13cm、ベルトスピード8m/min、4passで紫外線照射した。転写は、ロール式ホットスタンピングマシン(商品名RT−150DB、ナビタス株式会社製)を用いて、ロール温度220℃、6m/mim、2passで行った。被転写体は、縦100mm、横100mm、厚さ2mmのポリカーボネ−ト樹脂板とした。
【0053】
<実施例2>
UV硬化型ウレタンアクリレート樹脂系剥離剤(商品名TA37−227B、日立化成ポリマー株式会社製)100部に対して、ステアリルアクリレート(商品名ライトアクリレートS−A、共栄社化学株式会社製)を3部、ノニルフェノールポリエチレンオキサイドアクリレート(商品名ライトアクリレートNP-4EA、共栄社化学株式会社製)3部を添加混合し、トルエン/MEK混合溶剤にて30%に調整した塗料を用いて剥離剤を作製した以外は、実施例1と同様にした。
【0054】
<実施例3>
基材シートに25μmのニ軸延伸PETフィルム(商品名E5101、東洋紡株式会社製)を用い、コロナ処理を施した面の基材シート面上に実施例1と同様にして剥離層、保護層を順次積層した後、プライマー層としてアクリル系樹脂(商品名HBAC85、荒川化学工業株式会社製)をバー塗工し、80℃・60秒加熱乾燥して厚さ1μmのプライマー層を形成した。
プライマー層の上に装飾層としてアクリル系インキ(商品名 CAVメイバン710ブラック、株式会社セイコーアドバンス製)をスクリーン印刷法にて形成し、さらにその上に接着層として塩酢ビ・アクリル系樹脂(商品名K539HP接着ワニス、東洋インキ製造株式会社製)をバー塗工し、80℃・60秒加熱乾燥して厚さ2μmの接着層を形成した。それ以外は、実施例1と同様にした。
【0055】
<実施例4>
一軸方向に熱収縮する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製加熱収縮性フィルム(三菱樹脂株式会社製ヒシペットLX−10S)の片面に、アルミニウムを厚さが0.05μmになるように真空蒸着させ、表面平滑硬質層を形成して積層シートを得た。
次いで、その積層シートを100℃で50秒間加熱することにより、加熱前の長さの40%に熱収縮させ(すなわち、変形率60%に変形させ)、硬質層形成面に、収縮方向に対して直交方向に沿って波状の凹凸パターンを有する、異方性散乱性を示す凹凸パターン形成シートを得た。この凹凸パターン形成シートの凹凸パターンが形成された面に、ニッケルめっきを施し、そのニッケルめっきを剥離することにより、厚さ200μmのスタンパーを得た。
実施例1と同様にしてポリプロピレン基材シートに剥離層を塗工乾燥した後、剥離層表面に前記方法で得たスタンパーを押圧し、基材シート側から高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス株式会社製)を用いて、160W/cm、ランプ高さ13cm、ベルトスピード8m/min、2passで紫外線照射して剥離層を硬化させた後、スタンパーを剥離し、凹凸を有する剥離層を形成した。その後の保護層を形成する工程以降は実施例1と同様にした。
【0056】
<実施例5>
ウレタン変性アクリレート(商品名:UF−503LN、共栄社化学株式会社製)30部、ステアリルアクリレート(商品名:ライトアクリレートS-A、共栄社化学株式会社製)35部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:ライトアクリレートDPE-6A、共栄社化学株式会社製)30部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、BASF株式会社製)5部、トルエン780部、メチルエチルケトン60部、メチルイソブチルケトン60部からなるUV硬化塗料をバー塗工、80℃・60秒加熱乾燥後、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス株式会社製)を用いて、160w/cm、ランプ高さ13cm、ベルトスピード15m/min、2pass、窒素雰囲気下で紫外線照射して厚さ1μmの剥離層を硬化形成した以外は、実施例1と同様にした。
【0057】
<比較例1>
アクリルポリマー系樹脂(商品名PW−209−4、日本加工塗料株式会社製)をメタノールにて希釈した塗料をバー塗工し、100℃・60秒加熱乾燥して厚さ1μmの剥離層を形成した以外は、実施例1と同様にした。
【0058】
<比較例2>
長鎖アルキルペンダント型ポリマー系樹脂(商品名ピーロイル1050、一方社株式会社製)をバー塗工し、100℃・60秒加熱乾燥して厚さ1μmの剥離層を形成した以外は、実施例1と同様にした。
【0059】
<比較例3>
アクリルメラミン系樹脂(商品名EX−114DXメジウム、大日精化工業株式会社製)100部に有機酸(商品名PTCNo.7硬化剤)10部を添加し、酢酸エチル/IPA/メタノールの混合溶剤で15%に調整した塗料をバー塗工し、140℃・60秒加熱乾燥して剥離層を硬化形成した。実施例4で使用したものと同様なスタンパーの賦型面を剥離層表面に接触させ、熱プレス機にて180℃・5分、8MPaで加熱プレスし、冷却後スタンパーを取り外した。その後実施例1と同様に保護層、接着層を形成し、実施例1と同様に転写を行った。
【0060】
<評価方法>
【0061】
[剥離強度]
被転写体上の転写シートの剥離層付き基材シートを、巾50mmで速度300mm/分で、180°剥離して剥離力を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
[転写面外観]
剥離強度測定後の転写層が転写された被転写体の転写層表面を目視で観察した。結果を表1に示す。
◎ :平滑・光沢感に特に優れるもの
○ :平滑・光沢感に優れるもの
× :剥離跡、剥離面荒れなど表面光沢が荒れているもの
【0063】
[賦型面構造観察]
電子顕微鏡にて表面凹凸構造を観察した。結果を表1に示す。
○ :転写層表面賦型構造が母型賦型表面と同様な構造のもの
× :転写層表面賦型構造が母型賦型表面と異なるもの
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1〜5および比較例1〜3で作製した転写成形品の剥離強度、転写面外観を評価し、剥離層賦型を行った実施例4および比較例3については賦型面構造観察を行った。
剥離層が長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレート樹脂からなる活性エネルギー線硬化型樹脂を主成分として含む硬化物である実施例1〜3および5の転写シートは剥離強度が良好であり、転写面外観が平滑・光沢感に優れたものであった。同様の硬化物にスタンパーで賦型した実施例4では微細な凹凸表面を有する転写層を得ることができた。
これに対して、剥離層に長鎖脂肪族ペンダント構造を持たないアクリレート樹脂を用いた比較例1および長鎖脂肪族ペンダント構造を有しても活性エネルギー硬化物で無い樹脂を用いた比較例2では転写表面光沢が荒れ剥離性が劣った。また熱硬化物を剥離層に用いた比較例3では剥離層表面に賦型構造を上手く転写できず、それによって転写層表面にも賦型構造を上手く形成することができなかった。
【符号の説明】
【0066】
1基材シート
2剥離層
3保護層
4接着層
5転写層
6転写シート
7装飾層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート上に剥離層及び転写層を設けてなり、転写層を剥離層から剥離して被転写体に転写するための転写シートにおいて、該転写層は少なくとも保護層及び接着層を有し、該剥離層は、長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化して形成されたことを特徴とする転写シート。
【請求項2】
前記長鎖脂肪族ペンダント構造を有するウレタン(メタ)アクリレートは、長鎖脂肪族基が、アクリル酸エステルのエステル基側鎖にウレタン結合を介して結合していることを特徴とする、請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
保護層と接着層の間に装飾層を有する、請求項1または請求項2に記載の転写シート。
【請求項4】
剥離層が、凹凸構造を有する請求項1〜3のいずれかに記載の転写シート。
【請求項5】
基材シートが、ポリオレフィン系樹脂からなる請求項1〜4のいずれかに記載の転写シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−224915(P2011−224915A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98384(P2010−98384)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】