説明

転写ロールおよび転写ロールを用いた光学シート製造方法

【課題】単純な構造であり、製造が容易でありかつ保守性が良く、簡易な設備で運用できる転写ロールを提供すること。
【解決手段】本発明の転写ロールは、被転写物に外周面形状を転写する転写ロール1であって、外周面上に凹凸形状パターンが形成され、内部に中空部を有する略円筒状の本体と、中空部内に配置され前記本体の内周面に熱媒体を噴射する熱媒体噴射手段10とを備え、熱媒体噴射手段が、少なくとも一端が熱媒体供給装置に接続され、本体外部から中空部内まで延びるように配置された中空管を備え、中空管は、熱媒体供給手段から供給された熱媒体を、所定の回転角度方向に噴射して本体2の内周面に衝突させる複数の噴射手段14を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写ロールおよび転写ロールを用いた光学シート製造方法に関し、詳細には、ロール円周方向にロール外周面温度差を有する温調の転写ロールおよびこのような転写ロールを用いた光学シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺状のフィルムやシートに表面形状を転写する転写ロールにおいて、フィルム等の剥離不良等のトラブルを防止すべく、ロール外周面に円周方向の温度差を発生させることが可能な温調転写ロールが提案されている。
【0003】
このような温調転写ロールとして、外筒3と内筒11との間に円環状の媒体流路13を形成し、この流路に、中央に配置した更に小径の円筒25から2本の放射方向媒体通路29、35から冷媒を流すことによって、ロールの外周面に円周方向の温度差を発生される転写ロールが提案されている。(特許文献1)
【0004】
さらに、中空の外筒40内の空間を複数の転動ラバーロール70によって複数の熱媒体室91、92、93、94に分割し、これらの熱媒体室91、92、93、94に熱媒体を個別に流通させる転写ロールも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−256159号公報
【特許文献2】特開2008−143054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたロールは、ロールをスリーブ3、内筒11、および小径の内筒25とからなる三重構造であり、さらに2本の放射方向媒体通路29、35のそれぞれが隔壁によって形成されるという複雑な内部構造を有するため、製造が容易でなく高価であるという問題がある。
また、表面部材(スリーブ)を、内部構造から取り外すことができない構成であるため、保守性に劣るという問題もある。
【0007】
一方、特許文献2に記載されたロールも、スリーブの内部を転動ラバーロール70によって複数の熱媒体室91、92、93、94に分割するという複雑かつ高い精度が必要な内部構造を有するため、製造が容易でなく高価であるという問題がある。
さらに、油圧供給装置など大規模な設備が必要であるいう問題もある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、単純な構造であり、製造が容易でありかつ保守性が良く、簡易な設備で運用できる転写ロールを提供することを目的とする。
【0009】
本発明はさらに、このような転写ロールを用いた光学シート製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
被転写物に外周面形状を転写する転写ロールであって、
外周面上に凹凸形状パターンが形成され、内部に中空部を有する略円筒状の本体と、
前記中空部内に配置され前記本体の内周面に熱媒体を噴射する熱媒体噴射手段と、を備え、
前記熱媒体噴射手段が、少なくとも一端が熱媒体供給装置に接続され、前記本体外部から前記中空部内まで延びるように配置された中空管を備え、
該中空管は、前記熱媒体供給手段から供給された熱媒体を、所定の回転角度方向に噴射して前記本体の内周面に衝突させる複数の噴射手段を有している、
ことを特徴とする転写ロールが提供される。
【0011】
このような構成によれば、中空管から噴射する熱媒体によって、本体の内周面の所定位置を冷却または加熱できるので、簡単な構成で、円筒状の本体に円周方向の温度差を生じさせることができる。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記本体が、
前記被転写物に転写される前記凹凸形状パターンが外周面上に形成された略円筒状の転写スリーブと、
前記転写スリーブの軸方向の両端に配置され前記転写スリーブを担持する一対の端部材および該一対の端部材を相互に連結する複数のビームを有するマンドレルと、を備え、
前記中空管から噴射された前記熱媒体が、複数のビームの間を通り前記転写スリーブの内周面に衝突する。
【0013】
このような構成によれば、マンドレルが荷重を受け持つ為、転写スリーブを十分に薄くする、低強度かつ熱伝導率の高い材質を用いること等が可能となり、円筒状の本体に生じる円周方向の温度差をより大きくすることができる。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記凹凸形状が、レンズ部転写パターンである。
【0015】
本発明の他の態様によれば、
転写ロールと透光性基材の間に配置された活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線で照射して硬化させ、透光性基材上に微細凹凸形状を賦型する光学シート製造方法であって、
前記転写ロールが、被転写物に外周面形状を転写する転写ロールであって、外周面上に凹凸形状パターンが形成され、内部に中空部を有する略円筒状の本体と、前記中空部内に配置され前記本体の内周面に熱媒体を噴射する熱媒体噴射手段と、を備え、前記熱媒体噴射手段が、少なくとも一端が熱媒体供給装置に接続され、前記本体外部から前記中空部内まで延びるように配置された中空管を備え、該中空管は、前記熱媒体供給手段から供給された熱媒体を、所定の回転角度方向に噴射して前記本体の内周面に衝突させる複数の噴射手段を有し、
前記方法が、前記透光性基材の表面に前記活性エネルギー線硬化性組成物を付与するステップと、前記転写ロールの硬化部で、前記透光性基材を介して前記活性エネルギー線硬化性組成物を前記活性エネルギー線で照射して前記透光性基材上で硬化させるステップと、
温度が、前記硬化部より5℃以上55℃未満だけ低い前記転写ロールの剥離部から、前記活性エネルギー線硬化性組成物が硬化させられた前記透光性基材を剥離するステップと、を備えている、
ことを特徴とする光学シートの製造方法が提供される。
【0016】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記転写ロールの本体が、
前記被転写物に転写される前記凹凸形状パターンが外周面上に形成された略円筒状の転写スリーブと、
前記転写スリーブの軸方向の両端に配置され前記転写スリーブを担持する一対の端部材および該一対の端部材を相互に連結する複数のビームを有するマンドレルと、を備え、
前記中空管から噴射された前記熱媒体が、複数のビームの間を通り前記転写スリーブの内周面に衝突する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単純な構造であり、製造が容易でありかつ保守性が良く、簡易な設備で運用できる転写ロールが提供される。
さらに、本発明によれば、このような転写ロールを用いた光学シート製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施形態の転写ロールの内部構造を示す概略的な断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】転写ロールに取付けられた中空管の上面図である。
【図4】本発明の他の好ましい実施形態の転写ロールの内部構造を示す概略的な断面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態の光学シート製造工程を説明する概略的な図面である。
【図7】本発明の好ましい実施形態の他の光学シート製造工程を説明する概略的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に沿って本発明の第1の実施形態の転写ロール1について説明する。
転写ロール1は、透光性基材の表面に活性エネルギー線硬化樹脂等からなるレンズ部が形成されたプリズムシート、レンチキュラーレンズシート及びフレネルレンズシート等のレンズシートや透光性基材の表面に活性エネルギー線硬化樹脂等からなる微細凹凸部が形成されたモスアイシート等の光学シートを、長尺光学シートとして連続的に製造する光学シート製造で使用される転写ロールである。
【0020】
図1は、本発明の好ましい実施形態の転写ロールの内部構造を示す概略的な断面図であり、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
転写ロール1は、被転写物に外周面形状を転写する転写ロールであって、図1および2に示されているように、略円筒形状を有し、長手方向軸線を中心に回転可能な本体2を備えている。本体2は、外周面上に凹凸形状パターンが形成され、内部に内部空間4を有している。
【0021】
本体2は、一般にロール材料として用いられる機械構造用炭素鋼管等の鉄系材料、純アルミ、アルミ合金、銅合金等の非鉄金属材料、炭素繊維強化プラスティック等の複合材料、石英、ガラス、樹脂、セラミックス等から構成されている。機械加工時の熱により残留応力が解放されて歪まない様に予め熱処理が施された材料を使用することが好ましい。また、錆等の腐食の恐れがある材料を使用する場合は、本体の外周面及び内周面に防錆めっきを行うことが好ましい。
【0022】
本体2は、両端に側板6、7が取付けられている。また、本体2は、公知の転写ロールと同様に、着脱可能な軸受箱8によって回転可能に支持され、機台に設置される。
【0023】
本体2の外周面には、フィルムに転写される微細な凹凸形状パターンが形成されている。転写される微細な凹凸形状パターンは、特に限定されるものではないが、転写ロール1をロール状レンズ型として用いる場合には、凹凸形状パターンの形状は、プリズムレンズ形状、レンチキュラーレンズ形状、フレネルレンズ形状、マイクロレンズ形状、モスアイ型形状等の形成される凹凸形状と相補的な表面形状(凹凸部転写パターン)とされる。このような凹凸形状パターンの形状は、転写ロールの円周方向に沿って同一形状の凹凸パターンが繰り返し形成されたものでも、転写ロールの円筒面全体にわたって凹(または凸)部等が2次元的に配置された形状であってもよい。
【0024】
本体2の外周面に微細な凹凸形状パターンを形成する方法としては、ダイヤモンドバイトによる精密切削、リソグラフィなどがあり、特に限定されない。
【0025】
また、本体2の外周面に微細な凹凸形状パターンを形成する好ましい方法として、アルミニウム基材の表面に、複数の細孔(凹部)を有する陽極酸化アルミナを形成する方法が挙げられる。
【0026】
この方法としては、下記の工程(a)〜(f)を備えた方法が、鏡面化されたアルミニウム基材の表面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパ形状の細孔が周期的に形成され、その結果、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成された微細な凹凸形状パターンを得ることができる点で好ましい。
【0027】
上記工程(a)〜(f)は、
(a)鏡面化されたアルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)細孔発生点が形成されたアルミニウム基材を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、細孔発生点に対応した細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)工程(d)の後、電解液中、定電圧下で再度陽極酸化する工程。
(f)工程(d)と工程(e)を繰り返し行い、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材の表面に形成された微細な凹凸形状パターンを得る工程、である。
なお、高い規則性を有する細孔が得るためには、工程(b)〜(c)を行うことが好ましいが、高い規則性が求められてない場合は、工程(b)〜(c)を省略し、陽極酸化(a)と口径拡大処理(d)とを交互に繰り返す方法を用いてもよい。
【0028】
以下、各工程を詳細に説明する。
工程(a):
鏡面化された円筒状のアルミニウム基材の表面を、電解液中で、定電圧下で陽極酸化することによって、アルミニウム基材の表面に細孔を有する酸化皮膜を形成する。
電解液としては、酸性電解液、アルカリ性電解液が挙げられるが、酸性電解液が好ましい。酸性電解液としては、シュウ酸、硫酸、これらの混合物等が挙げられる。
【0029】
工程(b):
工程(a)により形成された酸化皮膜を除去することによって、除去された酸化皮膜の下にあるアルミニウム基材上に周期的な窪み、すなわち細孔発生点を形成する。
【0030】
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、アルミナを選択的に溶解する溶液によって除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。なお、工程(b)において、工程(a)で形成された酸化被膜を全て除去しても、その一部分を除去してもよい。
【0031】
工程(c):
工程(b)で表面に細孔発生点が形成されたアルミニウム基材を電解液中、定電圧下で再度、陽極酸化し、再び酸化皮膜を形成することによって、細孔発生点に円柱状の細孔が形成された酸化皮膜を形成する。
工程(c)では、工程(a)と同様の条件(電解液濃度、電解液温度、化成電圧等)下で陽極酸化が行われる。
【0032】
工程(d):
工程(c)で形成された細孔の径を拡大させる孔径拡大処理を行う。
孔径拡大処理の具体的方法としては、アルミナを溶解する溶液に浸漬して、工程(c)で形成された細孔の径をエッチングにより拡大させる方法が挙げられる。このようなアルミナを溶解する溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
【0033】
工程(e):
工程(c)と同様な条件で、再度、陽極酸化を行い、工程(d)で拡径された細孔の底部から下に延びる、直径の小さい細孔を形成する。
【0034】
工程(f):
工程(d)と工程(e)を繰り返すことによって、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパ形状を有する細孔を形成する。
【0035】
このようにして得られたアルミニウム基材で転写ロールを構成することによって、テーパ形状の細孔が周期的に形成された陽極酸化アルミナ層が表面に配置された転写ロールを得ることができる。
【0036】
また、転写ロール1が、プラスチックシート等の表面への平滑面の形成や、プラスチックシート等の厚みを制御するための転写ロールとして使用される場合には、外周面が平滑な面であってもよい。
【0037】
本体2の微細な凹凸形状パターンが形成された外周面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、シリコーン系ポリマーやフッ素ポリマーをコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系またはフッ素シリコーン系のシランカップリング剤をコーティングする方法等が挙げられる。
【0038】
転写ロール1は、本体2の内部空間4内に配置された中空管10を備えている。中空管10は、本体2の内周面に熱媒体を噴射する熱媒体噴射手段を構成する。
中空管10は、略円筒状の内部空間4内で、内部空間4の径方向中央位置で長手方向軸線(本体2の中心軸)に沿って延びるように配置されている。中空管10は、一端が開放され、他端が閉鎖されており、開放された一端が、ロータリージョイント12を介して、図示しない熱媒体供給装置に流体連通されている。
【0039】
ロータリージョイント12は、側板6と一体化され、側板6を本体2から取り外すことで、ロータリージョイント12に連結された中空管10も、本体2から取り外すことができるように構成されている。
【0040】
また、中空管10は、回転しないように機台に対して固定されているため、本体2が回転しても、回転しない。
【0041】
中空管10には、多数の噴射手段が設けられている。噴射手段の構成は、特に制限されないが、例えば、中空管に孔を穿ってその孔を噴射手段としても、孔の上方に筒状突起を設けてその先端に噴射口を有する筒状突起噴射口を噴射手段としてもよい。なお、本実施形態では、噴射手段として噴射孔が採用されている。
【0042】
中空管10には、噴射手段として多数の噴射孔14が形成されている。噴射孔14は、中空管10に周方向において不均等に分布しており、熱媒体供給装置から供給された熱媒体Mを、図2に矢印Aで示すように、特定の角度方向に向けて転写ロール1の内周面に噴射し、内周面に衝突させるように構成されている。
【0043】
複数の噴射孔14は、噴射孔からの噴射される熱媒体Mの拡がりが実質的にゼロから最大で約90°の扇状範囲、より好ましくは30°〜60°の扇状範囲に拡がるように、中空管10に形成されているのが好ましい。
本実施形態では、図3の平面図に示されるように、周方向に3つ並んだ噴射孔14が、中空管10の長さ方向全体にわたって設けられ、熱媒体Mを、図2に示すように、鉛直上方から略2時の方向にかけて約60°の拡がりを有する扇状に噴射するように構成されている。
【0044】
各噴射孔14の形状は、円形、楕円形、方形その他任意の形状で、各噴射孔の開口面積は0.1mm2以上5mm2以下が適当である。軸方向配置は、図3の格子状の他、千鳥状等の他の配置でもよい。
【0045】
中空管10に供給される熱媒体としては、例えば水が使用されるが、目的に応じて最適な液体が適宜、選択される。例えば、ロール本体や中空管の腐食等を考慮した場合には、低粘度の油が使用される。
【0046】
本実施形態では、機台に対する中空管10の(本体2の軸線方向における)取り付け角度は変更可能とされ、熱媒体が吹き出す角度方向が調節可能とされている。
【0047】
本実施形態では噴射孔14を設けたが、噴射孔14に代えて中空管10に設けたスプレーノズル、スリットなどによって、熱媒体を所定の角度方向に噴射させる構成でもよい。
【0048】
本体2の中空管10が挿入されている側と逆側の端に取付けられている側板7には、熱媒体排出口16が設けられている。
さらに、本実施形態では、中空管10の噴射孔14から噴射された後、本体2の内部空間4の底部分に溜まった熱媒体Mを排出するための排水管17が設けられ、本体2の内部空間4内に溜まる熱媒体Mの量を調節している。
【0049】
排水管17は、中空管10と同様に機台に対して固定されている。また、排水管17は、先端部が本体2の内部空間4の底部に配置され、基端が外部の排水ポンプ(図示せず)に接続され、本体2の内部空間4の底部に溜まった熱媒体Mを内部空間4外に排出するように構成されている。したがって、内部空間4内における先端の高さ位置を調節することによって内部空間4内での水位調節が可能となる。
【0050】
このような構成を有する転写ロール1によれば、噴射孔14から噴射される温度調節された熱媒体Mは、本体2の内周面の所定角度に位置する部分に衝突し、本体2の内周面のこの部分を部分的に冷却もしくは加熱する。
【0051】
上記第1の実施形態の転写ロールは、凹凸形状パターンが形成された外周面と回転軸が一体であったが、本発明の転写ロールは、本体が複数の部材が組み合わさった組立式のものであっても使用可能であり、図4のような転写ロールが転写スリーブおよびマンドレルによって構成される形態でも実施可能である。
【0052】
図4は、本発明の第2の実施形態の転写ロール20の内部構造を示す概略的な断面図であり、図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。尚、第1の実施形態の転写ロール1と共通する転写ロール20の要素は、図4および図5において図1および図2と同一の参照番号を付し、説明を省略する。
【0053】
転写ロール20は、転写ロール1と同様に、被転写物に外周面形状を転写する転写ロールであって、図4および図5に示されているように、外周面上に凹凸形状パターンが形成された略円筒状の転写スリーブ22と、長手方向軸線を中心に回転可能なマンドレル24とを組み合わせたものである。
【0054】
転写スリーブ22、マンドレル24は、一般にロール材料として用いられる機械構造用炭素鋼管等の鉄系材料、純アルミ、アルミ合金、銅合金等の非鉄金属材料、炭素繊維強化プラスティック等の複合材料から構成されている。機械加工時の熱により残留応力が解放されて歪まない様に予め熱処理が施された材料を使用することが好ましい。また、錆等の腐食の恐れがある材料を使用する場合は、転写スリーブ22、マンドレル24の外周面及び内周面に防錆めっきを行うことが好ましい。
【0055】
転写スリーブ22の外周面には、フィルムに転写される微細な凹凸形状パターンが形成されている。転写される微細な凹凸形状パターンは、図1に記載された転写ロール1の外周面に形成されたものと同様である。
【0056】
マンドレル24は、転写スリーブ22の軸方向の両端に配置され転写スリーブ22を担持する一対の端部材26、26と、一対の端部材26、26を相互に連結する複数のビーム28を備えている。
【0057】
一対の端部材26、26は、転写スリーブ22の両端に対向して配置され、かつ、Oリングを介して転写スリーブ22の両端に取付けられ転写スリーブ22の両端を塞いでいる。
【0058】
複数のビーム28は、一対の端部材26、26の間を転写スリーブ22の軸線方向に、互いに略平行に延び所定の角度間隔をあけるように配置されている(図5)。ビーム28は、一端が一方の端部材26、他端が他方の端部材23に固定され、これにより、端部材22、23は同期して回転するように構成されている。
【0059】
一対の端部材26、26のそれぞれは、軸心に開口貫通部30、32を有し、この開口貫通部30、32を通して、熱媒体を流入あるいは流出させることができるように構成されている。
【0060】
転写スリーブ22は、ビーム28が内側に含まれるようにマンドレル24に同心的かつ着脱可能に装着されている。本実施形態では、転写スリーブ22の内周面とビーム28とが接触しないように構成されている。
【0061】
本実施形態では、転写スリーブ22及び端部材26、26によって囲まれた転写ロール20の内部空間4は、開口貫通部30、32を除き密閉されている。
【0062】
マンドレル24は、軸受箱8に装着された、転写スリーブ20が脱落するのを防止する機構を有する。
本実施形態では、一端側の端部材26(図4左側)に段22aを設け、この段22aに転写スリーブ22の先端を当接され、他端側の端部材26にネジ部22bを設け、このネジ部22bに締め付けナット34を取付けることで、転写スリーブ20が脱落するのを防止しているが、他の方法であってもよい。
【0063】
マンドレル24には、第1の実施形態の転写ロール1と同様に、両端に側板6、7が取付けられている。また、マンドレル24は、転写ロール1と同様に、着脱可能な軸受箱8によって回転可能に支持され、機台に設置される。
【0064】
転写ロール20は、図1に記載された転写ロール1と同様に内部に中空管10及び排水管17を備えている。中空管10は、マンドレル21の内周面に熱媒体を噴射する熱媒体噴射手段を構成する。中空管10から噴射された熱媒体は、複数のビーム28の間を通り転写スリーブ22の内周面に衝突する、
【0065】
次に、上記実施形態の転写ロールを用いた光学シート製造方法について説明する。図6は、本発明の好ましい実施形態の光学シート製造方法を説明する概略的な図面である。
【0066】
本実施形態の光学シート製造方法で使用される光学シート製造装置40は、上記実施形態の転写ロール1または20を使用する点を除き、転写ロールを使用して基材に活性エネルギー線硬化性組成物で表面形状を賦型する従来技術の光学シート製造装置と同様の構成を備えている。
【0067】
図6に示されているように、光学シート製造装置40では、長尺状の透光性基材42が、矢印B方向に回転駆動される円筒状の転写ロール1(20)の外周面に巻回されながら矢印C方向に搬送されるように構成されている。転写ロール1は、上述した転写ロールであり、その外周面には、製造する光学シートの表面形状と相補的な凹凸形状パターン(転写パターン)が形成されている。
【0068】
透光性基材42としては、例えば、可視光、および紫外線、電子線等の活性エネルギー線を透過する、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド系樹脂等の材料をフィルム、またはシート状に加工したものが使用される。
【0069】
表面形状を賦型するために使用される活性エネルギー線硬化性組成物44との密着性を向上させるために、透光性基材42の表面に密着性向上のための表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などからなる易接着層を形成する方法や、粗面化などが挙げられる。また、透光性基材42には、帯電防止、反射防止、基材同士の密着防止などの他の処理を施してもよい。
【0070】
光学シート製造装置40は、活性エネルギー線硬化性組成物44を透光性基材42に塗布する塗布装置46を備えている。
塗布装置46の構造は、特に限定されるものでなく、活性エネルギー線硬化性組成物44の粘度や塗布膜厚に応じて公知の塗布方法の中から選択することができる。
本実施形態では、転写ロール1(20)近傍で転写ロール1と透光性基材42の間に活性エネルギー線硬化性組成物14を供給するノズル46を備えている装置が、塗布装置として使用されている。
【0071】
供給される活性エネルギー線硬化性組成物44の組成としては、紫外線、電子線等の活性エネルギー線で硬化させたものであれば特に限定されるものではない。
【0072】
例えば、ポリエステル類、エポキシ系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられる。(メタ)アクリレート系樹脂がその光学特性の観点から特に好ましい。
【0073】
このような硬化樹脂に使用される活性エネルギー線硬化性組成物としては、取扱性や硬化性等の点で、多価アクリレートおよび/または多価メタクリレート(以下、多価(メタ)アクリレートと記載)、モノアクリレートおよび/またはモノメタアクリレート(未満、モノ(メタ)アクリレートと記載)、および活性エネルギー線による光重合開始剤を主成分とするものが好ましい。
【0074】
代表的な多価(メタ)アクリレートとしては、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上の混合物が挙げられる。
【0075】
また、モノ(メタ)アクリレートとしては、モノアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、後者の場合には、金属型を使用する場合には水酸基の影響であると思われる金属型との離型困難性を低減するために、少量で使用するのがよい。
また、金属型を使用する場合には、(メタ)アクリル酸およびその金属塩についても、高い極性を有していることから、少量で使用するのがよい。
【0076】
ノズル46には、温度調整された熱媒体が流れるジャケット19に覆われたタンクTが接続され、温度調節された活性エネルギー線硬化性組成物44をノズル46に供給するように構成されている。
【0077】
ノズル46とタンクTを結ぶ管路50にも、温度調節装置が設けられ、これらの部分での活性エネルギー線硬化性組成物44の温度が、40℃以上80℃未満の温度範囲内、好ましくは40℃以上70℃以下の範囲内、更に好ましくは40℃以上60℃以下の範囲内になるように制御される。温度調節装置は、特に限定されるものではないが、電熱、熱媒体による温度調節装置が好ましい。
【0078】
図6に示されているように、転写ロール1(20)に対向して、硬化前の活性エネルギー線硬化性組成物44の厚さを均一にさせるためのニップローラ52が配置されている。
【0079】
光学シート製造装置40では、透光性基材42が転写ロール1(20)とニップローラ52の間に挟持され始める領域で、透光性基材42と転写ロール1(20)の間にノズル46から活性エネルギー線硬化性組成物44が供給される。供給された活性エネルギー線硬化性組成物44は、透光性基材42と転写ロール1(20)の間に樹脂だまり54を形成する。
【0080】
ニップローラ52の搬送方向下流側には、活性エネルギー線照射装置56が設けられている。本実施形態では、活性エネルギー線照射装置56は、透光性基材42を介して、透光性基材42と転写ロール1(20)の間に配置された活性エネルギー線硬化性組成物44を、略6時方向の位置(略鉛直下方位置)から、照射するように配置されている。
【0081】
活性エネルギー線照射装置56としては、化学反応用ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、可視光ハロゲンランプ等が用いられる。活性エネルギー線は、例えば、200〜600nm、好ましくは、320〜390nmの波長の波長範囲における積算エネルギーが、例えば、0.1〜10J/cm2、好ましくは0.5〜8J/cm2となるように照射することが適当である。また、活性エネルギー線の照射雰囲気としては、空気、または窒素、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。
【0082】
光学シート製造装置40では、活性エネルギー線照射装置56が略6時方向から活性エネルギー線を活性エネルギー線硬化性組成物44に照射するので、透光性基材42上で活性エネルギー線硬化性組成物44が硬化する硬化部Hは、転写ロール1(20)の下側位置H(略6時方向の位置)となる。また、透光性基材42の剥離部Rは、転写ロール1(20)の外周面の斜め上方(略2時方向の位置)となる。
【0083】
光学シート製造装置40では、転写ロール1(20)の中空管10に形成された噴射孔14が、冷却した媒体を略12時(鉛直上方)から略2時方向(すなわち剥離部R)に向けて扇形状に噴射するように構成されている。この結果、噴射孔14から噴射された、熱媒体Mを略12時(鉛直上方)から2時方向(すなわち剥離部Rの裏側)で本体2の内周面に衝突させて、本体2の外周面の剥離部Rを、硬化部Hと比較して相対的に低い温度に冷却している。
【0084】
光学シート製造装置40による光学シートの製造では、透光性基材42は、略9時の位置で、転写ロール1とニップローラ52に挟持される。
上述したように、光学シート製造装置40では、透光性基材42が転写ロール1(20)とニップローラ52の間に挟持され始める領域で、透光性基材42と転写ロール1(20)の間に活性エネルギー線硬化性組成物44の樹脂だまり54が形成されているので、透光性基材42は、一方の面(転写ロール1(20)側の面)に活性エネルギー線硬化性組成物44が付着した状態で転写ロール1(20)とニップローラ52に挟持される。
【0085】
したがって、透光性基材42は、活性エネルギー線硬化性組成物44が塗布された面を転写ロール1に向け、この面が転写ロール1(20)の外周面に押圧されるようにして、転写ロール1(20)とニップローラ52の間に挟持されることになる。
【0086】
次いで、透光性基材42は、転写ロール1の外周面に巻回され、転写ロール1(20)の回転によって、転写ロール1(20)の回転方向(B方向)に移送されていく。このとき、透光性基材42の一方の面に塗布された未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物44は、転写ロール1(20)の外周面形状が転写され、転写ロール1(20)の外周面形状と相補的な形状となる。
【0087】
次いで、略6時の位置(硬化部H)で、鉛直下方から活性エネルギー線照射装置56から活性エネルギー線が、透光性基材42を通して活性エネルギー線硬化性組成物44に照射され、活性エネルギー線硬化性組成物44が透光性基材42上で硬化させられる。
【0088】
上述したように、未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物44には、転写ロール1(20)の外周面形状が転写されているので、硬化した活性エネルギー線硬化性組成物44によって、転写ロール外周面の転写パターンと相補的な形状のレンズ部が、透光性基材42の表面に形成されることになる。
【0089】
上面で活性エネルギー線硬化性組成物44が硬化した透光性基材42は、転写ロール1(20)の回転によって、さらに、転写ロール1の回転方向に移送され、略2時の位置(剥離部R)で、転写ロール1(20)から剥離される。
【0090】
本実施形態では、熱媒体Mによる温度制御によって、硬化部Hにおいて、転写ロール1または20(本体2または転写スリーブ22)の外周面の温度は、40℃以上80℃未満に制御され、また、本実施形態では、剥離部Rにおいて、転写ロール1または20(本体2または転写スリーブ22)の外周面の温度は、温度が、硬化部Hより5℃以上55℃未満の範囲で低く設定されている。
【0091】
詳細には、本体2または転写スリーブ22の外周面の硬化部Hの表面温度が、好ましくは40℃以上80℃未満、より好ましくは40℃以上70℃以下の範囲内、更に好ましくは40℃以上60℃以下の範囲内になるように熱媒体Mの温度を制御するのが好ましい。
【0092】
温度が40℃未満であると、透光性基材42と活性エネルギー線硬化性組成物44との密着性が向上せず、剥離時に、硬化した活性エネルギー線硬化樹脂が転写ロール1に付着するなどの不具合が生じる場合がある。
【0093】
一方、80℃以上になると、透光性基材42が軟化し、活性エネルギー線硬化性組成物44の粘度、密度が低くなり、重合硬化したときの収縮率が大きく、シートの反りが大きくなるなどの現象が生じる場合があり好ましくない。
【0094】
また、本体2または転写スリーブ22の外周面上側に存在する剥離部Rの温度は、硬化部Hの温度より5℃以上55℃未満の範囲で低く設定される。
【0095】
硬化部Hの温度が40℃以上70℃以下の範囲内であるときには、剥離部Rの温度が硬化部Hの温度より、15℃以上45℃未満だけ低くなるよう制御するのがより好ましい。
硬化部Hの温度が40℃以上60℃以下の範囲内であるとき、剥離部Rの温度が、硬化部Hの温度より、25℃以上35℃未満だけ低くなるように制御するのがさらに好ましい。
【0096】
硬化部と剥離部の温度差が大きいほど剥離性は向上するためには、硬化部Hと剥離部Rの温度差は大きいほど好ましい。しかしながら、剥離部Rの温度が20℃を下回ると結露が生じ、得られる長尺光学シート中の水分が増加するなどの好ましくない現象が生じる。
【0097】
本実施形態によれば、転写ロールを用いた活性エネルギー線硬化性組成物の硬化、活性エネルギー線硬化性樹脂からなるレンズ部の転写ロールからの剥離等を、適切な温度で行うことができる光学シート製造方法が提供される。
【0098】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更又は変形が可能である。
【0099】
上記光学シート製造装置は、活性エネルギー線硬化性組成物44が、転写ロール1(20)とニップローラ52の間に挟持される部分で、透光性基材42の上面に塗布される光学シート製造装置であったが、本発明の転写ロールは、活性エネルギー線硬化性組成物44が透光性基材42の下面に塗布される構成の光学シート製造装置40’(図7)においても使用可能であり、本発明の光学シート製造方法は図7のような光学シート製造装置によっても実施可能である。
【実施例】
【0100】
次に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
φ200mm、長さ600mm、厚さ10mmの鋼製ロールに表面研磨仕上げを行い、外周面に厚さ200μm、ビッカース硬度200Hvの硬質銅めっきを施し、外周面に硬質銅めっきが施されたロール本体に、ピッチ30μm、高さ15μm、頂角90°の断面直角二等辺三角形状のプリズム列を多数並列してなるプリズム部を転写形成するためのプリズム部転写パターンを形成し、プリズム部転写パターン加工部に厚さ3μmの無電解ニッケルめっき処理を施し転写ロールを得た。
【0101】
φ12mm、長さ615mm、厚さ2mmの鋼製中空管に、一端から10mmの範囲にM10のネジをきり、もう一端から軸方向に605mmの範囲においてピッチ5mmで120列、円周方向に30°の範囲で10°おきに3つ、合計360個のφ1mmの穴を設け、ロール本体内部に挿通する中空管とした。ロールに伴った回転を行わない中空管の流路接続として昭和技研製ロータリージョイントRXH3125を用い、中空管を穴から噴射される熱媒体が12時から2時の方向に約30度にわたって拡がる扇形状に指向されるようにロール本体の中心軸上に固定した。また、ロータリージョイントの使用しない流路に関しては封鎖した。
【0102】
以上のように得た転写ロールに近接するように、φ120mm、面長600mmの鋼製ローラ芯にゴムを被覆したゴム硬度20°のNBR製ゴムロール(ニップローラ)を配置した。転写ロールとニップローラとの間に転写ロールより若干幅の広い厚さ125μmの東洋紡製ポリエステルフィルム(透光性基材)を、転写ロールに沿って供給し、NBR製ゴムロールに接続した空気圧シリンダー(圧力調整機構)により、NBR製ゴムロールと転写ロールとの間で東洋紡製ポリエステルフィルムをニップした。
【0103】
この時の空気圧シリンダーの動作圧は0.4MPa(2.65N/mm)であった。空気圧シリンダーとして、エアチューブ直径40mmのSMC製エアシリンダーを使用した。さらに、転写ロールの下方に紫外線照射装置(活性エネルギー線照射装置)を設置した。紫外線照射装置はランプ発光長70cm、160W/cmの高圧水銀灯を用いた。
【0104】
紫外線硬化性組成物(活性エネルギー線硬化性組成物)を樹脂タンク(タンク)に投入した。樹脂タンクは、紫外線硬化性組成物に接する部分は全てステンレススチール(SUS304)製とした。また、紫外線硬化性組成物の液温度を制御するためのジャケットを有しており、ヒータにより40℃に調節された水をジャケットに供給し、樹脂タンク内の紫外線硬化性組成物の液温を40℃に保持した。さらに、真空ポンプにより樹脂タンク内を真空状態にすることにより、投入時に発生した泡を脱泡除去した。
【0105】
紫外線硬化性組成物は以下の通りで、粘度は150mPa・S/40℃
フェノキシエチルアクリレート 50重量部
(大阪有機化学工業社性ビスコート#192)
ビスフェノールA−ジエポキシ−アクリレート 50重量部
(共栄社油脂化学工業社製エポキシエステル3000A)
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン
(チバガイキ−社製ダロキュア1173) 1.5重量部
に調整した。
【0106】
樹脂タンク内を常圧に戻し、タクミナ製ギヤポンプにより、40℃に温度制御された紫外線硬化性組成物を由利ロール製Tダイから東洋紡製ポリエステルフィルム(透光性基材)に塗布した。
【0107】
次に、転写ロールの流通路にカワタ製金型温度調整装置(DYNATHERMεz KCWIII−05Hεz2)を用いて38℃の温調制御された水を20リットル/分の流量で供給した。この時、媒体噴出孔を設けた中空管を通じて剥離部へ水を噴射すると共に転写ロール内部空間の底部に水を溜めることで、活性エネルギー線が照射されるまでの転写ロールの外周面の温度を調節した。また、紫外線硬化性組成物が東洋紡製ポリエステルフィルムと転写ロールとの間に挟まれた状態で、活性エネルギー線硬化性組成物18の厚さ調整を完了した。
【0108】
三菱電機製ACサーボ200W(減速比1/100)で毎分5.3mの周速で矢印方向に転写ロールを回転させながら、紫外線硬化性組成物が東洋紡製ポリエステルフィルムと転写ロールとの間に挟まれた状態にあるうちに、紫外線照射装置から紫外線を照射し、紫外線硬化性組成物を重合・硬化させ転写ロールのプリズム部転写パターンを転写させた。その後、転写ロールより剥離させ、長尺光学シート(プリズムシート)を得た。
【0109】
長尺プリズムシート製造を行っている際に安立計器製接触式熱電対(SH−11K−TS1−W)およびKEYENCE製モバイル型温度レコーダ(NR−1000)を用いて側面から転写ロール外周面の剥離部における表面温度を測定すると40℃であった。同様に転写ロール外周面の硬化部における表面温度を測定すると48℃であった。
【0110】
得られた光学シートのマルテンス硬さをフィッシャー・インスツルメンツ製超微小硬度計(フィッシャースコープHM2000)で測定したところ、90N/mm2のマルテンス硬さがあった。
【0111】
[実施例2]
熱媒体供給口から供給する水の温度を30℃としたこと以外は、実施例1と同様にして長尺光学シートを得た。
【0112】
長尺光学シート製造を行っている際に安立計器製接触式熱電対(SH−11K−TS1−W)およびキーエンス製モバイル型温度レコーダ(NR−1000)を用いて側面から転写ロール外周面の剥離部における表面温度を測定すると32℃であった。同様に転写ロール外周面の硬化部における表面温度を測定すると40℃であった。
【0113】
得られた光学シートのマルテンス硬さをフィッシャー・インスツルメンツ製超微小硬度計(フィッシャースコープHM2000)で測定したところ、80N/mm2のマルテンス硬さがあった。
【0114】
[実施例3]
熱媒体供給口から供給する水の温度を70℃としたこと以外は、実施例1と同様にして長尺光学シートを得た。
【0115】
長尺光学シート製造を行っている際に安立計器製接触式熱電対(SH−11K−TS1−W)およびキーエンス製モバイル型温度レコーダ(NR−1000)を用いて側面から転写ロール外周面の剥離部における表面温度を測定すると71℃であった。同様に転写ロール外周面の硬化部における表面温度を測定すると79℃であった。
【0116】
得られた光学シートのマルテンス硬さをフィッシャー・インスツルメンツ製超微小硬度計(フィッシャースコープHM2000)で測定したところ、95N/mm2のマルテンス硬さがあった。
【0117】
[実施例4]
φ200mm、長さ550mm、厚さ5mmの純アルミ製ロールに表面研磨仕上げを行い鏡面化し、
電解液として0.5Mシュウ酸を用い、陰極・陽極それぞれに厚さ0.5mmのアルミ板を使用して、40Vの電圧で16℃で6時間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した。(工程(a))ついで、その陽極を70℃の6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混酸に浸漬して、酸化皮膜(アルミナ層)を溶解した(工程(b))。
【0118】
次いで、二段目の陽極酸化を実施した。すなわち、純水で洗浄後、0.3Mシュウ酸を電解液として40Vの電圧で16℃で25秒陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した(工程(c))。そのまま、32℃、5質量%リン酸に8分間浸漬してエッチング処理を行い、細孔を拡径した(工程(d))。
【0119】
その後、二段目の陽極酸化における、酸化皮膜形成工程(工程(e))と、細孔径拡大処理工程(工程(d))を1セットとして合計5セット繰り返して行い(工程(f))、酸化皮膜の厚さ:200nm、細孔の周期:100nm、細孔の径:95nm、細孔全体の深さ:180nmとなる、略円錐状の細孔を外周面全体に有する転写スリーブを得た。
【0120】
φ200mm、長さ30mm、厚さ15mmの鋼製ロールの端部25mmを厚さ10mmまで外側から切削することで基端側の端部材を、φ195mm、長さ30mm、厚さ10mmの鋼製ロールの端部10mmの領域にM190ピッチ2mmのネジを切り、先端側の端部材を得た。長さ500mm、直径20mmの鋼製丸棒8本をビームとした。端部材2つの軸心が一致するようにビーム両端に中心回転軸を溶接することでマンドレルを得た。Oリングについては森清化工製Oリング(C1900G)を使用し、締め付けナットはφ200mm、長さ3mm、厚さ8mmの鋼製ロールを切削し作製した。
【0121】
上記の転写スリーブ及びマンドレルから構成される転写ロールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして長尺モスアイシートを得た。
【0122】
長尺光学シート製造を行っている際に安立計器製接触式熱電対(SH−11K−TS1−W)およびキーエンス製モバイル型温度レコーダ(NR−1000)を用いて側面から転写ロール外周面の剥離部における表面温度を測定すると38℃であった。同様に転写ロール外周面の硬化部における表面温度を測定すると48℃であった。
【0123】
得られたモスアイシートのマルテンス硬さをフィッシャー・インスツルメンツ製超微小硬度計(フィッシャースコープHM2000)で測定したところ、90N/mm2のマルテンス硬さがあった。
【0124】
[比較例1]
硬化部と剥離部の温度差についての比較として、ロール本体内部に挿通された中空管を取り去ったこと以外は、実施例1と同様にした。このとき、温度制御された水は熱媒体供給口から中空管を経ずに供給された。この条件で生産を行ったところ、冷却が十分ではなかったため転写ロールへの硬化物である活性エネルギー線硬化樹脂の付着が部分的に生じ、付着した硬化物を起点とした剥離不良が生じたため長尺光学シートを連続的に得ることができなかった。
【0125】
長尺光学シート製造を行っている際に安立計器製接触式熱電対(SH−11K−TS1−W)およびキーエンス製モバイル型温度レコーダ(NR−1000)を用いて側面から転写ロール外周面の剥離部における表面温度を測定すると45℃であった。同様に転写ロール外周面の硬化部における表面温度を測定すると46℃であった。
【0126】
[比較例2]
硬化部温度の下限に関する比較として、熱媒体供給口から供給する水の温度を20℃としたこと以外は、実施例1と同様にした。このとき、転写ロールへ硬化物である活性エネルギー線硬化樹脂が付着し、長尺光学シートを得ることができなかった。
【0127】
長尺光学シート製造を行っている際に安立計器製接触式熱電対(SH−11K−TS1−W)およびキーエンス製モバイル型温度レコーダ(NR−1000)を用いて側面から転写ロール外周面の剥離部における表面温度を測定すると23℃であった。同様に転写ロール外周面の硬化部における表面温度を測定すると28℃であった。
【0128】
[比較例3]
硬化部温度の上限に関する比較として、熱媒体体供給口から供給する水の温度を80℃としたこと以外は、実施例1と同様にした。このとき、このとき、ポリエステルフィルムが加熱により軟化し、しわが発生したため長尺光学シートを得ることができなかった。
【0129】
長尺光学シート製造を行っている際に安立計器製接触式熱電対(SH−11K−TS1−W)およびキーエンス製モバイル型温度レコーダ(NR−1000)を用いて側面から転写ロール外周面の剥離部における表面温度を測定すると80℃であった。同様に転写ロール外周面の硬化部における表面温度を測定すると88℃であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写物に外周面形状を転写する転写ロールであって、
外周面上に凹凸形状パターンが形成され、内部に中空部を有する略円筒状の本体と、
前記中空部内に配置され前記本体の内周面に熱媒体を噴射する熱媒体噴射手段と、を備え、
前記熱媒体噴射手段が、少なくとも一端が熱媒体供給装置に接続され、前記本体外部から前記中空部内まで延びるように配置された中空管を備え、
該中空管は、前記熱媒体供給手段から供給された熱媒体を、所定の回転角度方向に噴射して前記本体の内周面に衝突させる複数の噴射手段を有している、
ことを特徴とする転写ロール。
【請求項2】
前記本体が、
前記被転写物に転写される前記凹凸形状パターンが外周面上に形成された略円筒状の転写スリーブと、
前記転写スリーブの軸方向の両端に配置され前記転写スリーブを担持する一対の端部材および該一対の端部材を相互に連結する複数のビームを有するマンドレルと、を備え、
前記中空管から噴射された前記熱媒体が、複数のビームの間を通り前記転写スリーブの内周面に衝突する、
ことを特徴とする請求項1に記載の転写ロール。
【請求項3】
前記凹凸形状パターンが、レンズ部転写パターンである、
請求項1または請求項2に記載の転写ロール。
【請求項4】
転写ロールと透光性基材の間に配置された活性エネルギー線硬化性組成物を、活性エネルギー線で照射して硬化させ、透光性基材上に微細凹凸形状を賦型する光学シート製造方法であって、
前記転写ロールが、被転写物に外周面形状を転写する転写ロールであって、
外周面上に凹凸形状パターンが形成され、内部に中空部を有する略円筒状の本体と、
前記中空部内に配置され前記本体の内周面に熱媒体を噴射する熱媒体噴射手段と、を備え、
前記熱媒体噴射手段が、少なくとも一端が熱媒体供給装置に接続され、前記本体外部から前記中空部内まで延びるように配置された中空管を備え、
該中空管は、前記熱媒体供給手段から供給された熱媒体を、所定の回転角度方向に噴射して前記本体の内周面に衝突させる複数の噴射手段を有し、前記方法が、
前記透光性基材の表面に前記活性エネルギー線硬化性組成物を付与するステップと、
前記転写ロールの硬化部で、前記透光性基材を介して前記活性エネルギー線硬化性組成物を前記活性エネルギー線で照射して前記透光性基材上で硬化させるステップと、
温度が、前記硬化部より5℃以上55℃未満だけ低い前記転写ロールの剥離部から、前記活性エネルギー線硬化性組成物が硬化させられた前記透光性基材を剥離するステップと、を備えている、
ことを特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項5】
前記転写ロールの本体が、
前記被転写物に転写される前記凹凸形状パターンが外周面上に形成された略円筒状の転写スリーブと、
前記転写スリーブの軸方向の両端に配置され前記転写スリーブを担持する一対の端部材および該一対の端部材を相互に連結する複数のビームを有するマンドレルと、を備え、
前記中空管から噴射された前記熱媒体が、複数のビームの間を通り前記転写スリーブの内周面に衝突する、
請求項4に記載の光学シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−25151(P2012−25151A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113427(P2011−113427)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】