説明

転写基板の製造方法

【課題】浮島状の導体パターンが板厚サイズで転写される転写基板の製造方法を提供する。
【解決手段】金属板材4に半抜き加工した導体パターン2をベース基板16に粘着シート15を介して転写した後、導体パターン2間の溝部分を樹脂封止して成形品からベース基板16を分離することより、浮島状の任意の導体パターン2が板厚サイズで転写された薄型で平坦度の高い転写基板1を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、浮島状の導体パターンが板厚サイズで転写される転写基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮島状の導体パターンが形成される回路基板としては、リードフレームの半導体素子を搭載して樹脂封止されるアイランド部や(特許文献1参照)、電子部品の搭載部やヒートシンクを有する回路基板などがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−104371号公報
【特許文献2】特開平6−29632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、半導体装置の小型化、高密度実装化が進行し、POP(Package・On・Package)タイプの半導体装置が製造されている。この半導体装置は、半導体チップが搭載された基板どうしを積層して電気的導通をとるため、端子間の接続を考慮すると樹脂モールド部の厚さをできるだけ薄くなるように成形したいというニーズがある。また、給電用の半導体素子や電子部品が実装される回路基板においては、熱放散性や低抵抗にするため薄型化を図るニーズが存在する。
【0004】
本発明の目的は、浮島状の導体パターンが板厚サイズで転写される転写基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
即ち、金属板材を第1のプレス装置に搬入して導体パターンに応じて半抜き加工する第1のプレス工程と、表面に粘着層が形成された粘着支持材を第2のプレス装置に搬入し、前記金属板材を重ね合わせて半抜きされた導体パターンを切断して粘着支持材上に粘着する第2のプレス工程と、前記粘着支持材を封止樹脂とともにモールド金型へ搬入して導体パターン間の溝を樹脂封止する樹脂封止工程と、前記樹脂封止された成形品から粘着支持材を剥離して封止樹脂から導体パターンが露出する回路基板を形成する基板分離工程を含むことを特徴とする。
また、前記樹脂封止工程は、金型クランプ面の樹脂モールド領域がリリースフィルムにより被覆され、樹脂封止部の外形及び厚さを規定するキャビティ孔が穿孔されたキャビティプレートを粘着支持材に重ね合わせて導体パターン間の溝が樹脂封止されることを特徴とする。
また、前記粘着支持材は、粘着シートが粘着されたベース基板、粘着剤付ベース基板、粘着シートのいずれかが用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上述した樹脂モールド装置を用いれば、金属板材に半抜き加工した導体パターンを粘着支持材に粘着した後、導体パターン間の溝部分を樹脂封止した成形品から粘着支持材を分離することより、浮島状の任意の導体パターンが板厚サイズで転写された薄型で平坦度の高い転写基板を製造することができる。
特に、モールド金型のクランプ面の樹脂モールド領域がリリースフィルムにより被覆され、樹脂封止部の外形及び厚さを規定するキャビティ孔が穿孔されたキャビティプレートを粘着支持材に重ね合わせて樹脂封止することにより、簡易な金型構成で導体パターンを露出させて平坦度の高い薄型の基板を効率よく量産することができる。
また、粘着支持材は、粘着シートが粘着されたベース基板、粘着剤付ベース基板、粘着シートのいずれかを用いることで、製造工程において浮島状の導体パターンのハンドリングがし易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係る転写基板の製造方法の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。
転写基板の一例について、図5を参照して説明する。転写基板1は、浮島状の導体パターン2がパターン間の隙間を封止樹脂3に封止された板厚サイズで形成されている。この転写基板1は、それ自体が電子部品を搭載される回路基板であってよいし、回路基板どうしを積層するPOPタイプの基板であってもよい。
【0008】
次に、転写基板の製造方法について、図1乃至図5を参照して説明する。
図1A〜Cは第1のプレス工程を示す。即ち、金属板材(例えば銅板材)4を第1のプレス装置5に搬入して導体パターンに応じて半抜き加工する。第1のプレス装置5はダイ孔が設けられたダイ6に対して、ストリッパプレート7を貫通してポンチ8が設けられたポンチプレート9が上下動可能に設けられている。図1Aで銅板材4をストリッパプレート7によりダイ6に押圧した状態で、ポンチ8が導体パターン2(図4A参照)を半抜きする(図1B参照)。半抜きされた銅板材4は第2のプレス装置10へ搬送される。
【0009】
図2A〜Dは第2のプレス工程を示す。第2のプレス装置10はプラテン11に対して、ストリッパプレート12を貫通してポンチ13が設けられたポンチプレート14が上下動可能に設けられている。プラテン11には粘着支持材が搬入される。粘着支持材としては、例えば表面に粘着シート15が粘着したベース基板16が用いられる。粘着シート15としては、熱硬化性フィルムなどの接着性を有するシート材が好適に用いられる。ベース基板16は、金属板、樹脂板など様々な板材が用いられる。このベース基板16上に、銅板材4を搬入して重ね合わせる(図2A参照)。そして、図2Bで銅板材4をストリッパプレート12によりベース基板16に押圧した状態で、ポンチ13が半抜きされた導体パターン2を切断して粘着シート15に粘着させる(図2C参照)。図2Dにおいて、導体パターン2が粘着したベース基板16(図4B参照)は、樹脂モールド装置18へ搬送される。尚、粘着シート15に代えてベース基板16の表面に粘着層(粘着剤)が形成(塗布)された粘着層付ベース基板を用いてもよい。
【0010】
図3A〜Dは樹脂封止工程を示す。樹脂モールド装置18は、ベース基板16を封止樹脂3ともにモールド金型へ搬入して導体パターン間の溝が樹脂封止される。本実施例では樹脂モールド方式としてトランスファー成形方式を採用している。モールド金型を構成する固定型である上型19と可動型である下型20を備えている。下型20は例えば電動モータ等を用いた型締め機構により上下動するようになっている。上型19のクランプ面には樹脂モールド領域を覆うリリースフィルム21が吸着支持されている。リリースフィルム21は、所定の耐熱性及び封止樹脂3との剥離性、柔軟性を備えたフィルム材が用いられる。
【0011】
また、樹脂モールド装置には、樹脂封止部(パッケージ部)の外形及び厚さを規定するキャビティ孔22が穿孔されたキャビティプレート23が用いられる。モールド金型のクランプ面と略平行なトラック面上を周回移動するようになっている。このトラック面に沿って図示しないプレヒート部、樹脂モールド部、ディゲート部及びクリーナー部が設けられている。
【0012】
図3Aにおいて、ベース基板16は型開きした下型20に封止樹脂3と共に搬入される。ベース基板16は、例えば下型載置面に吸着保持されて位置決めされる。封止樹脂3の供給は、ベース基板16をモールド金型へ搬入する前であっても、搬入した後のいずれであってもよい。封止樹脂(樹脂タブレット)3はポット24内に装填される。ポット24内にはプランジャ25が移動可能に設けられている。
【0013】
図3Bにおいて、キャビティプレート23には、ポット24に連通するポット孔23aやベース基板16を収容するキャビティ孔22が設けられている。型閉じする場合は、キャビティプレート23が上型クランプ面へリフトアップされ、ベース基板16を載置した下型20が上動してキャビティプレート23に押し当てられてクランプされる。
【0014】
図3Cにおいて、金型クランプが完了すると、トランスファー機構を作動させてポット24内に装填される封止樹脂3をプランジャ25により押動する。このとき、図3Dにおいて、溶融した封止樹脂3がキャビティプレート23とリリースフィルム21との間に形成された樹脂路を通じてキャビティ孔22内へ充填され浮島状の導体パターン2間の溝が樹脂封止される。
【0015】
樹脂封止後の成形品は、下型20が下動して型開きする際に、リリースフィルム21より離間し、下型20によるベース基板16の吸引を停止することで、キャビティプレート23と一体となったまま、当該キャビティプレート23とともに図示しないディゲート部へ搬出される。
【0016】
ディゲート部において、キャビティプレート23よりスクラップと成形品とがプレート面の上下で各々分離される。次いで、基板分離工程に移行し、図4Cにおいて分離された成形品はベース基板16が剥離される。例えば粘着シート15として熱硬化性フィルムを用いた場合には、熱硬化により接着性が弱くなっているため、ベース基板16側の吸引などにより容易に分離することができる(図4D参照)。この結果、図5において、封止樹脂3から導体パターン2が露出する転写基板1が得られる。このように、浮島状の任意の導体パターン2が板厚サイズで転写された薄型で平坦度の高い転写基板1を効率よく製造することができる。
【0017】
上述した樹脂封止工程では、樹脂モールド装置としてトランスファー成形方法を用いたが、図6A、Bにおいて圧縮成形方法を用いることも可能である。上型19のクランプ面には樹脂モールド領域を覆うリリースフィルム21が吸着支持されている。また、下型20にはベース基板16が吸着保持されて位置決めされる。図6Aにおいて、ベース基板16上には、転写基板1の外形及び厚さを規定するキャビティ孔22が穿孔されたキャビティプレート23を重ね合わせる。図6Bにおいて、ベース基板16上(導体パターン2以外のエリア)には、液状樹脂、粉状樹脂、顆粒状樹脂などの封止樹脂3が供給される。この状態で金型をクランプして圧縮成形することによって、導体パターン2間の溝を樹脂封止するようにしてもよい。
【0018】
尚、上述した実施例では、転写基板1は導体パターン2のみが封止樹脂3により封止されている場合について説明したが、半導体チップや電子部品が封止された基板であってもよい。また、金属板材も、銅板材4にかぎらず他の導電性を有する金属板材であってもよい。
また、図7A、Bにおいて、導体パターン2の断面を凸面2a又は凹面2bとすることで成形後の封止樹脂3との密着性が増大することができる。さらには、粘着支持材としてハンドリングのし易さから板材よりなるベース基板16を使用しているが、粘着シート15に剛性があればベース基板16を省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1プレス工程の説明図である。
【図2】第2プレス工程の説明図である。
【図3】樹脂封止工程の説明図である。
【図4】各工程におけるワークの平面図及び正面図である。
【図5】転写基板の平面図である。
【図6】他例に係る樹脂モールド装置の下型平面図及び金型断面図である。
【図7】他例に係る導体パターンの断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 転写基板
2 導体パターン
3 封止樹脂
4 銅板材
5 第1のプレス装置
6 ダイ
7、12 ストリッパプレート
8、13 ポンチ
9、14 ポンチプレート
10 第2のプレス装置
11 プラテン
15 粘着シート(粘着剤)
16 ベース基板
18 樹脂モールド装置
19 上型
20 下型
21 リリースフィルム
22 キャビティ孔
23 キャビティプレート
23a ポット孔
24 ポット
25 プランジャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板材を第1のプレス装置に搬入して導体パターンに応じて半抜き加工する第1のプレス工程と、
表面に粘着層が形成された粘着支持材を第2のプレス装置に搬入し、前記金属板材を重ね合わせて半抜きされた導体パターンを切断して粘着支持材上に粘着する第2のプレス工程と、
前記粘着支持材を封止樹脂とともにモールド金型へ搬入して導体パターン間の溝を樹脂封止する樹脂封止工程と、
前記樹脂封止された成形品から粘着支持材を剥離して封止樹脂から導体パターンが露出する回路基板を形成する基板分離工程を含むことを特徴とする転写基板の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂封止工程は、金型クランプ面の樹脂モールド領域がリリースフィルムにより被覆され、樹脂封止部の外形及び厚さを規定するキャビティ孔が穿孔されたキャビティプレートを粘着支持材に重ね合わせて導体パターン間の溝が樹脂封止されることを特徴とする請求項1記載の転写基板の製造方法。
【請求項3】
前記粘着支持材は、粘着シートが粘着されたベース基板、粘着剤付ベース基板、粘着シートのいずれかが用いられることを特徴とする請求項1記載の転写基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−335702(P2007−335702A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167003(P2006−167003)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】