説明

転写定着装置及び画像形成装置

【課題】消費エネルギが低く、紙粉の発生量が低減されて、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じない、転写定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】転写定着部材27と加圧部材68とが圧接するニップ部に向けて搬送される記録媒体Pの転写定着面を加熱する加熱手段67と、加熱手段67の伝熱部材67bが記録媒体Pの転写定着面に間接的に接触して伝熱部材67bから転写定着面に熱が伝えられるように転写定着面と伝熱部材67bとの間に介在されるフィルム状の低摩擦部材91と、低摩擦部材91を移動させる移動手段92、93と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体上にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置では、転写工程と定着工程とを同時におこなう転写定着装置を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照。)。
このような転写定着装置を備えた画像形成装置は、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置に比べて、表面性の粗い記録媒体を使用しても画像品質の低下が起こり難いという利点がある。
【0003】
詳しくは、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置では、表面性の粗い記録媒体を使用すると、中間転写ベルト等の中間転写体が記録媒体の表面性に追従できずに中間転写体と記録媒体との間に微小ギャップが形成されてしまう。そのため、その微小ギャップが形成された部分で異常放電が発生して、中間転写体上に担持された画像が記録媒体上に正常に転写されずに、画像が全体としてボソボソになってしまう。
これに対して、転写定着装置を備えた画像形成装置では、トナー像に対して転写と同時に熱を加えるため、トナーが軟化・溶融して粘弾性を帯びたブロック状の塊になる。そのため、表面性の粗い記録媒体を使用して定着部材と記録媒体との間に微小ギャップが形成されても、その部分に画像が塊として転写されてしまう。したがって、画像は、ボソボソにならずに、良好で高画質なものになる。
【0004】
さらに、転写定着装置を備えた画像形成装置は、転写・定着工程がおこなわれるニップ部(転写定着部材と加圧部材との当接位置である。)に搬送される記録媒体上に未定着のトナー像が担持されないために、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置に比べて、記録媒体の搬送経路に対する制約が少なくなる。すなわち、転写工程と定着工程とを別々におこなう画像形成装置は、定着工程がおこなわれるニップ部(定着部材と加圧部材との当接位置である。)に搬送される記録媒体上に未定着のトナー像が担持されるために、転写部から定着部に至る搬送経路には未定着トナー像に接触しないための制約が課せられる。したがって、転写定着装置を備えた画像形成装置は、記録媒体の搬送経路に対する設計上の自由度が高く、記録媒体の搬送性を高めることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−37879号公報
【特許文献2】特開2002−99159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の転写定着装置は、トナー像を担持する転写定着部材を加熱してトナー像を加熱・溶融しているために、長寿命化のために転写定着部材が厚くなったり、大型のタンデム型の画像形成装置に設置するために転写定着部材の周長が長くなったりした場合に、転写定着部材の熱効率が低下してしまっていた。そのため、転写定着装置における消費エネルギが大きくなっていた。
さらに、従来の転写定着装置は、上述した転写定着部材の加熱工程に加えて、作像部の熱的損傷を低減するために転写・定着工程後の転写定着部材を冷却する冷却工程がおこなわれている場合が多かった。このような加熱・冷却のサイクルが繰り返されるために、転写定着装置における消費エネルギが大きくなっていた。
【0007】
本願発明者は、このような問題を解決するために研究を重ねた結果、転写定着部材の加熱を最小限に抑えて、トナーの加熱・溶融に必要な熱量を、ニップ部に搬送される直前に記録媒体を効率的に加熱することで補足する方策を知得した。このような方策を具現化するためには、ニップ部に対して記録媒体の搬送方向上流側であってニップ部の近傍に、記録媒体の転写定着面に接触して熱を伝える伝熱部材を設けることが考えられる。しかし、その場合に、記録媒体に伝熱部材が摺接することにより大量の紙粉が発生する不具合や伝熱部材が磨耗する不具合が生じてしまうことも知得した。また、紙粉の発生や磨耗を防止するために伝熱部材の摺接面に伝熱性を妨げない程度に薄い低摩擦材料をコーティングしても、転写定着工程が繰り返しおこなわれるうちに、記録媒体との摺接によって伝熱部材のコーティング面が徐々に磨耗してその機能が発揮されなくなってしまう。そして、このように生じた紙粉が伝熱部材に付着したり、伝熱部材が磨耗したりすることにより、ニップ部に搬送される直前に加熱される記録媒体の表面に温度ムラが発生してしまう。このような場合には、転写・定着工程後の出力画像に定着不良や光沢ムラが生じてしまうことになる。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、消費エネルギが低く、紙粉の発生量が低減されて、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じない、転写定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の請求項1記載の発明にかかる転写定着装置は、記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、トナー像を担持する転写定着部材と、前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体の前記転写定着面を当該記録媒体が前記ニップ部に搬送される前に加熱する加熱手段と、前記加熱手段の伝熱部材が前記記録媒体の前記転写定着面に間接的に接触して前記伝熱部材から前記転写定着面に熱が伝えられるように前記転写定着面と前記伝熱部材との間に介在されるとともに、前記伝熱部材の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有するフィルム状の低摩擦部材と、前記転写定着面と前記伝熱部材との間に介在される前記低摩擦部材の当接位置を移動させる移動手段と、を備えたものである。
【0010】
また、請求項2記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記低摩擦部材を、フッ素樹脂フィルムとしたものである。
【0011】
また、請求項3記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項2に記載の発明において、前記フッ素樹脂フィルムは、放射線架橋ポリテトラフルオロエチレンで形成されたものである。
【0012】
また、請求項4記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記移動手段を、ロール状に巻回された前記低摩擦部材を前記転写定着面と前記伝熱部材との間に向けて巻き出すとともに前記転写定着面と前記伝熱部材との間を通過した前記低摩擦部材をロール状に巻き取る巻取り機構としたものである。
【0013】
また、請求項5記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項4に記載の発明において、前記巻取り機構は、記録媒体の搬送方向に沿って前記低摩擦部材を巻き出すものである。
【0014】
また、請求項6記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記移動手段を、無端状に形成された前記低摩擦部材を回転駆動する回転駆動機構としたものである。
【0015】
また、請求項7記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項6に記載の発明において、前記回転駆動機構は、記録媒体の搬送方向に沿って前記低摩擦部材を回転駆動するものである。
【0016】
また、請求項8記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記加熱手段の前記伝熱部材は、前記低摩擦部材を介して前記転写定着面に接触する接触面が銅で形成されたものである。
【0017】
また、請求項9記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項1〜請求項8のいずれかに記載の発明において、記録媒体が前記ニップ部に搬送される前に当該記録媒体の前記転写定着面を前記低摩擦部材を介して輻射熱によって加熱する輻射熱源をさらに備えたものである。
【0018】
また、請求項10記載の発明にかかる転写定着装置は、前記請求項9に記載の発明において、前記輻射熱源は、前記伝熱部材をも輻射熱によって加熱するように前記伝熱部材に対向する位置に配設されたものである。
【0019】
また、この発明の請求項11記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の転写定着装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、転写定着部材と加圧部材とのニップ部に搬送される直前に記録媒体の転写定着面を効率的に加熱するとともに、記録媒体と伝熱部材との間にフィルム状の低摩擦部材を移動可能に配設しているために、消費エネルギが低く、紙粉の発生量が低減されて、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じない、転写定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0022】
実施の形態1.
図1〜図3にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、20Y、20M、20C、20BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応したプロセスカートリッジ、21は各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにそれぞれ収容された感光体ドラム(像担持体)、22は感光体ドラム21上を帯電する帯電部、23Y、23M、23C、23BKは感光体ドラム21上に形成される静電潜像を現像する現像装置、24は感光体ドラム21上に形成されたトナー像を転写定着ベルト27に転写する転写バイアスローラ、25は感光体ドラム21上の未転写トナーを回収するクリーニング装置、を示す。
【0023】
また、27は複数色のトナー像が重ねて転写される転写定着部材としての転写定着ベルト、29は転写・定着工程後の転写定着ベルト27を清掃するクリーニング装置(ベルトクリーニング装置)、32Y、32M、32C、32BKは各現像装置23Y、23M、23C、23BKに各色のトナーを補給するトナー補給部、51は原稿Dを原稿読込部55に搬送する原稿搬送部、55は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、61は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、66は記録媒体P上にトナー像を転写・定着する転写定着装置、67は転写・定着工程直前の記録媒体Pを加熱する加熱手段としての加熱装置、68は転写定着ベルト27に圧接してニップ部を形成する加圧部材としての加圧ローラ、85は転写定着ベルト27の幅方向温度分布を均一化する均しローラ、を示す。
【0024】
ここで、転写定着装置66は、転写定着部材としての転写定着ベルト27、加熱手段としての加熱装置67、加圧部材としての加圧ローラ68、温度均し手段としての均しローラ85、等で構成される。
また、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKは、それぞれ、感光体ドラム21、帯電部22、クリーニング装置25が、一体化されたものである。そして、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにおける感光体ドラム21上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像形成がおこなわれる。
【0025】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部51の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部55のコンタクトガラス53上に載置される。そして、原稿読込部55で、コンタクトガラス53上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
【0026】
詳しくは、原稿読込部55は、コンタクトガラス53上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0027】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKの感光体ドラム21上に向けて発せられる。
【0028】
一方、4つの感光体ドラム21は、それぞれ、図1の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム21の表面は、帯電部22との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム21上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム21表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部2において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。レーザ光は、ポリゴンミラー3に入射して反射した後に、レンズ4、5を透過する。レンズ4、5を透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0029】
イエロー成分に対応したレーザ光は、ミラー6〜8で反射された後に、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ20Yの感光体ドラム21表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー3により、感光体ドラム21の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部22にて帯電された後の感光体ドラム21上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0030】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、ミラー9〜11で反射された後に、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ20Mの感光体ドラム21表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、ミラー12〜14で反射された後に、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ20Cの感光体ドラム212表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、ミラー15で反射された後に、紙面左から4番目のプロセスカートリッジ20BKの感光体ドラム21表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0031】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム21表面は、それぞれ、現像装置23Y、23M、23C、23BKとの対向位置に達する。そして、各現像装置23Y、23M、23C、23BKから感光体ドラム21上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム21上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、複数のローラ部材28A〜28C、85に張架・支持された転写定着ベルト27との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、転写定着ベルト27の内周面に当接するように転写バイアスローラ24が設置されている。そして、転写バイアスローラ24の位置で、転写定着ベルト27上に、感光体ドラム21上に形成された各色の画像(トナー像)が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
【0032】
そして、第1転写工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、クリーニング装置25との対向位置に達する。そして、クリーニング装置25で、感光体ドラム21上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム21表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム21における一連の作像プロセスが終了する。
【0033】
他方、感光体ドラム21上の各色のトナー像が重ねて転写・担持された転写定着ベルト27(転写定着部材)表面は、図中の矢印方向に走行して、加圧ローラ68(加圧部材)との当接位置(ニップ部である。)に達する。ここで、本実施の形態1における転写定着装置66は、従来のものとは異なり、転写定着ベルト27自体を直接的に加熱する装置が設置されていない(または、設置されているとしても加熱量の少ない装置である。)。
転写定着ベルト27に担持されたトナー像は、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部にて、記録媒体Pの転写定着面(おもて面)に転写されるとともに定着される(転写・定着工程である。)。詳しくは、記録媒体Pの転写定着面がニップ部の直前で加熱装置67によって加熱されて、ニップ部にて転写定着面の熱によってトナー像が加熱・溶融されるとともに、ニップ部の圧力によってトナー像が転写定着面に定着される。なお、転写定着装置66の構成・動作については、後で図2及び図3を用いてさらに詳しく説明する。
その後、転写定着ベルト27表面は、ベルトクリーニング部29の位置に達する。そして、転写定着ベルト27上の残トナー等の付着物がベルトクリーニング装置29に回収されて、転写定着ベルト27上の一連の転写定着プロセスが完了する。
【0034】
ここで、転写定着装置66のニップ部に搬送される記録媒体Pは、給紙部61から搬送ガイド63、レジストローラ64、加熱装置67等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部61から、給紙ローラ62により給送された転写紙Pが、搬送ガイド63を通過した後に、レジストローラ64に導かれる。レジストローラ64に達した記録媒体Pは、転写定着ベルト27上のトナー像とタイミングを合わせて、転写定着ベルト27と加圧ローラ68とのニップ部に向けて搬送される。このとき、記録媒体Pの転写定着面のみが加熱装置67によって加熱される。
その後、フルカラー画像が転写・定着された記録媒体Pは、排紙搬送経路を通過して、排紙ローラ80によって装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0035】
なお、本実施の形態1において用いられるトナーは、低温定着に適したものであることが好ましい。具体的に、トナーの軟化点(1/2流出温度)は100℃程度であることが好ましい。
トナー結着樹脂としては、以下の組成のものを使用することができる。
例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、 スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体が挙げられる。
また、以下の樹脂を混合して使用することもできる。ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。この中で特に、ポリエステル樹脂を含有しているものは充分な定着性を得るために、好ましい。特に結晶性ポリエステル樹脂は、紙接触時に充分に軟化溶融し、定着強度とともに色再現性の高い画像形成が可能となる。ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られるが、用いられるアルコールとはポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリエキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノル類、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価のアルコール単体、その他の2価のアルコール単体を挙げることができる。
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3〜22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した2価の有機酸単量体、これらの酸無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の2量体、その他の2価の有機酸単量体を挙げることができる。
バインダー樹脂として用いるポリエステル樹脂を得るためには、以上の2官能性単量体のみによる重合体のみでなく、3官能以上の多官能性単量体による成分を含有する重合体を用いることも好適である。かかる多官能性単量体である3価以上の多価アルコール単量体としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−サルビタン、ペンタエスリトール、ジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1.3.5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
また3価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば1,2,4−ペンゼントリカルボン酸、1,2,5−ペンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンボール3量体酸、これらの酸無水物、その他を挙げることができる。
【0036】
また、本実施の形態1に用いるトナーには、転写定着工程時の転写定着ベルト27表面でのトナーの離型性を向上する目的で、離型剤を含有させることができる。離型剤として、公知のものをすべて使用できるが、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックス、エステルワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。カルナウバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が5以下であり、トナーバインダー中に分散したときの粒子径が1μm以下の粒径であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。各ワックスの酸価が各々の範囲未満であった場合、低温定着温度が上昇し低温定着化が不充分となる。逆に酸価が各々の範囲を超えた場合、コールドオフセット温度が上昇し低温定着化が不充分となる。ワックスの添加量としてはバインダー樹脂100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは3〜10重量部の範囲で用いられる。1重量部未満では、その離型効果が薄く所望の効果が得られにくい。また、15重量部を超えた場合はキャリアへのスペントが顕著になる等の問題が生じる。
また、外添加剤として、トナーの流動性を向上させる目的で、シリカ、酸化チタン、アルミナ等、さらに必要に応じて脂肪酸金属塩類やポリフッ化ビニリデン等を添加しても良い。
【0037】
次に、図2及び図3にて、本実施の形態1において特徴的な転写定着装置66について詳述する。
図2は、転写定着装置66の一部を示す拡大図である。図3は、加熱装置67を図2のX方向から幅方向にみた図である。
図2に示すように、転写定着装置66は、転写定着部材としての転写定着ベルト27、加熱手段としての加熱装置67、加圧部材としての加圧ローラ68、低摩擦部材としてのフッ素樹脂フィルム91、移動手段としての巻取り機構92、93、等で構成される。
【0038】
ここで、転写定着部材としての転写定着ベルト27は、ベース層上に、弾性層、離型層が順次形成された多層構造のエンドレスベルトである。ベース層は、層厚が40μmのポリイミド樹脂で形成されている。弾性層は、記録媒体P表面の凹凸に追従するためのものであって、層厚が60μmのゴム材料で形成されている。離型層は、ベルト表面のトナー離型性を確保するためのものであって、層厚が6μmのフッ素樹脂で形成されている。
【0039】
また、加圧ローラ68は、アルミニウム等からなる円筒状の芯金上に表面層(離型層)が形成されたものであって、図2の時計方向に回転する。加圧ローラ68は、不図示の加圧機構によって、転写定着ベルト27を介してローラ部材28Aに圧接する。こうして、加圧ローラ68と転写定着ベルト27との間に、所望のニップ部が形成される。
加圧ローラ68の表面層としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、等を用いることができる。
【0040】
加熱手段としての加熱装置67は、転写定着装置66におけるニップ部の入口側の近傍に配設されている。加熱装置67は、加熱体67a(ヒータ)、伝熱部材としての伝熱板67b、電極67c、等で構成される。
加熱体67aは、伝熱板67bと電極67cとに挟持されている。本実施の形態1では、加熱体67aとして、所定のキューリー点に達すると抵抗が急激に上昇する抵抗発熱体を用いている。具体的に、加熱体67aとして、チタン酸バリウム系半導体磁器素体からなる正特性サーミスタを用いている。また、本実施の形態1では、図3に示すように、加熱体67a(正特性サーミスタ)を幅方向に10個並設している。
伝熱部材としての伝熱板67bは、板厚が0.1mmのステンレス鋼板と板厚が0.2mmの銅板とが積層されたものであって、伝熱板67bの銅板側がニップ部に向けて搬送される記録媒体Pの転写定着面(おもて面)にフッ素樹脂フィルム91を介して接触するように配設されている。すなわち、伝熱板67bは、加熱体67aで発生した熱をフッ素樹脂フィルム91を介して記録媒体P(転写定着面)に伝熱する機能を有する。さらに、伝熱板67bには交流電源71が接続されていて、一方の電極としても機能することになる。
【0041】
加熱体67aを挟持する電極67c及び伝熱板67bには、交流電源71が接続されていて、スイッチ72が接続されることにより加熱体67aの両端にAC100ボルトの電圧が印加される。これにより、加熱体67a内に電流が流れて加熱体67aが発熱することになる。さらには、加熱体67aの熱が伝熱板67bからフッ素樹脂フィルム91を介して記録媒体Pの転写定着面に伝えられる。
なお、本実施の形態1では、伝熱板67bの材料として、熱伝導率が高く、同体積における熱容量が低く、比較的安価な銅を用いているために、加熱効率が高く比較的安価な加熱装置67を提供することができる。
【0042】
ここで、加熱体67aは、記録媒体Pの発火点よりも低いキューリー点を有するものを用いることが好ましい。これにより、加熱体67aは、その自己温度制御機能によって、記録媒体Pの発火点以上に昇温する不具合が抑止される。
具体的に、本実施の形態1では、加熱体67aのキューリー点を200℃に設定している。これにより、加熱体67aの温度が200℃を超えたときに、電極67cと伝熱板67bとの間の抵抗が急激に上昇して、加熱体67a内に流れる電流が低下する。詳しくは、加熱体67aの温度が210℃のとき加熱体67a内に流れる電流は1/2に低下して、加熱体67aの温度が220℃のとき加熱体67a内に流れる電流は1/4に低下する。
このように構成された加熱体67aは、1200ワットの電力で6秒後に190〜200℃にまで昇温して、その後は自己温度制御機能により210℃以上に昇温することはない。また、本実施の形態1では、幅方向に複数の加熱体67aを並設しているために、複数の加熱体67aによってそれぞれの自己温度制御がおこなわれて、幅方向の温度ムラを10℃以下にすることができる。
【0043】
このように構成された加熱装置67は、上述したように、転写・定着工程直前の記録媒体Pの転写定着面(おもて面)のみを加熱するものである。換言すると、加熱装置67は、記録媒体Pの裏面(転写定着面に対する裏面である。)が昇温する前に(おもて面から裏面に熱が伝達される前に)記録媒体Pがニップ部に搬送されるように転写定着面を加熱する。
【0044】
具体的に、厚さが50μm以上の記録媒体Pを通紙するときに、記録媒体Pが加熱装置67の位置(伝熱板67b(フッ素樹脂フィルム91)との接触位置である。)を通過してからニップ部に達するまでの時間が50ms以内になるように設定している。換言すると、記録媒体Pの転写定着面に対する加熱装置67による加熱が終了してから記録媒体Pがニップ部に達するまでの時間が50ms以内になるように設定している。ここで、このような条件を満足するように具体的に設定するのは、加熱装置67(伝熱板67b)とニップ部との距離、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)、等である。
なお、本実施の形態1では、記録媒体Pが伝熱板67b(フッ素樹脂フィルム91)に接触する時間を10〜20msに設定し、記録媒体Pと加熱装置67との接触から2〜5ms後に記録媒体Pがニップ部に達するように設定している。
このような構成により、転写定着ベルト27を積極的に加熱しなくても定着性及び発色性が充分な出力画像(定着画像)を得ることができる。
【0045】
本実施の形態1における加熱装置67は、記録媒体Pの転写定着面の温度が転写定着ベルト27の表面温度よりも高くなるように、転写定着面を加熱している。すなわち、転写定着ベルト27に担持されたトナー像Tは、ニップ部にて、記録媒体Pから受ける熱により加熱・溶融されることになる。
本実施の形態1では、記録媒体Pの転写定着面を加熱していて、出力画像上にて充分な光沢を得るための温度を独立して設定できるので、転写定着ベルト27の温度(定着設定温度)を低くできる。また、記録媒体Pは転写・定着工程の直前に加熱されるので、過剰に加熱されずに、トナーTと記録媒体Pとの密着性も必要以上に高められることはない。
すなわち、本実施の形態1の構成によれば、低温定着が可能であって、装置のウォームアップ時間を短縮できて、省エネルギ化を向上させることができる。また、転写定着ベルト27への熱移動を抑制できるので、転写定着ベルト27の耐久性を向上させることができる。さらに、転写定着ベルト27の加熱温度が低減されるために、転写定着ベルト27の熱劣化を抑制できる。
【0046】
なお、本実施の形態1では、加熱装置67の伝熱板67bが加圧ローラ68に接触するように配置されている。このように配置することにより、伝熱板67bと加圧ローラ68との間で記録媒体Pの表面を確実に目標温度まで温度上昇させて、定着不良を抑制することが可能となる。
ここで、本実施の形態1では伝熱板67bを加圧ローラ68に接触させたが、ニップ部の直前に加圧ローラ68とは別に小径のローラを配置して、その小径ローラに伝熱板67bを当接させるように構成することもできる。ただし、本実施の形態1のように板状の伝熱板67bを用いる場合には、ニップ部に近接した位置まで伝熱板67bを近づけて記録媒体Pを加熱することができるため、小径ローラを別に設ける構成とする必要がなく、構成部材を減らすことができる。
【0047】
このように、本実施の形態1における転写定着装置66は、転写定着ベルト27の加熱を最小限に抑えて、トナーの加熱・溶融に必要な熱量を、ニップ部に搬送される直前に記録媒体Pを効率的に加熱することで補足するものである。しかし、その場合に、加熱された記録媒体Pから転写定着ベルト27が多量かつ不均一な分布の熱を受けて、転写定着ベルト27の幅方向(記録媒体の搬送方向に直交する方向である。)に温度ムラが生じて、定着ムラやオフセット等の定着不良画像が発生しやすくなってしまう。
これに対して、本実施の形態1では、図2に示すように、ニップ部を通過した後の転写定着ベルト27の表面の幅方向の温度分布を均一化する均しローラ85を設置している。
均しローラ85は、ニップ部に対して転写定着ベルト27の走行方向下流側に配設されたローラ部材であって、3つのローラ部材28A〜28Cとともに転写定着ベルト27を張架・支持する。均しローラ85は、ヒートパイプであって、その内部で熱を効率的に対流させることで、転写定着ベルト27表面の幅方向の温度分布を均一化する。これにより、転写定着ベルト27の加熱を最小限に抑えてニップ部に搬送される直前の記録媒体Pを加熱装置67によって加熱する場合であっても、定着ムラやオフセット等の定着不良が発生するのを抑止することができる。
【0048】
ここで、本実施の形態1では、図2に示すように、伝熱板67bが記録媒体Pの転写定着面に間接的に接触して伝熱板67bから転写定着面に熱が伝えられるように、転写定着面と伝熱板67bとの間に低摩擦部材としてのフッ素樹脂フィルム91が介在されている。すなわち、伝熱板67bの先端はフッ素樹脂フィルム91で覆われていて、伝熱板67bの接触面(銅で形成されている。)がフッ素樹脂フィルム91を介して記録媒体Pの転写定着面に接触するように構成されている。フッ素樹脂フィルム91は、伝熱板67b(銅板)の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有するフィルム状の低摩擦部材であって、膜厚が30μmのPFA(ポリテトラフルオロエチレン)で形成されている。
このように、フッ素樹脂フィルム91を介して伝熱板67bを記録媒体Pの転写定着面に接触させることで、伝熱板67bから記録媒体Pの転写定着面への伝熱性を確保したまま、記録媒体Pの摺接による紙粉の発生や伝熱板67bの磨耗を低減することができる。
【0049】
さらに、本実施の形態1では、上述した効果が経時においても安定的に得られるように、記録媒体Pの転写定着面と伝熱板67bとの間に介在されるフッ素樹脂フィルム91の当接位置を移動させる移動手段としての巻取り機構92、93を設置している。
詳しくは、図2に示すように、移動手段としての巻取り機構は、主として、ロール状に巻回されたフッ素樹脂フィルム91を転写定着面と伝熱板67bとの間に向けて巻き出す巻出し部92と、転写定着面と伝熱板67bとの間を通過したフッ素樹脂フィルム91をロール状に巻き取る巻取り部93と、で構成されている。そして、ロール状に巻回されたフッ素樹脂フィルム91が巻出し部92から矢印方向に巻き出されて、伝熱板67bの先端部を経て、巻取り部93に矢印方向に巻き取られることで、薄膜で機械的強度が充分ではないフッ素樹脂フィルム91が記録媒体Pとの摺接によって局所的に磨耗して破断する不具合が抑止される。すなわち、記録媒体Pに摺接するフッ素樹脂フィルム91の当接位置(摺接位置)は、巻取り機構92、93によって固定させることなく移動するために、フッ素樹脂フィルム91の同じ箇所が記録媒体Pに摺接され続けて磨耗する不具合が抑止される。
【0050】
ここで、本実施の形態1では、巻取り機構92、93によって、フッ素樹脂フィルム91が記録媒体Pの搬送方向に沿って巻き出される(移動する)ように構成されている。すなわち、フッ素樹脂フィルム91と記録媒体Pとの当接位置において、フッ素樹脂フィルム91の移動方向と記録媒体Pの搬送方向とは同方向(図2の右方向)になるように設定されている。これにより、フッ素樹脂フィルム91と記録媒体Pとの摩擦抵抗を低減することができるために、フッ素樹脂フィルム91の磨耗をさらに低減することができる。なお、本実施の形態1では、フッ素樹脂フィルム91が移動する速度は、1000枚の記録媒体Pの通紙(搬送)に対して10mm移動する程度に設定されている。
【0051】
なお、本願発明者は、膜厚が30μmのフッ素樹脂フィルム91を伝熱板67bの先端を覆うように移動させずに固定して、記録媒体Pを連続的に通紙して紙粉の発生量を実験的に確認した。その結果、フッ素樹脂フィルム91を固定設置した場合に発生する紙粉量は5グラム(1000枚の通紙当りの紙粉量である。)であって、フッ素樹脂フィルム91を設置しない場合に生じる紙粉量10グラムに対して半減することを確認した。しかし、記録媒体Pを1000枚通紙した後に、フッ素樹脂フィルム91が破断してしまうことも確認した。
さらに、本願発明者は、本実施の形態1の転写定着装置66を用いて、膜厚が30μmのフッ素樹脂フィルム91を伝熱板67bの先端を覆うように移動させて、記録媒体Pを連続的に通紙して紙粉の発生量を実験的に確認した。その結果、上述した紙粉の発生量を低減する効果を維持しつつ、1000枚以上の通紙をおこなってもフッ素樹脂フィルム91の破断はまったく生じることなく、記録媒体Pの加熱を安定的におこなえることを確認した。
また、本願発明者が、膜厚が20μmのフッ素樹脂フィルム91を用いて同じ実験をおこなったところ、膜厚が30μmのフッ素樹脂フィルム91を用いた場合に比べて、記録媒体Pの加熱温度を10℃上昇できることも確認した。
【0052】
なお、低摩擦部材としてのフッ素樹脂フィルム91を、特に、放射線架橋ポリテトラフルオロエチレン(放射線架橋PTFE)にて形成することが好ましい。
放射線架橋PTFEは、工学技術研究誌「日立電線(2001.1 No.20) 架橋ふっ素樹脂材料および応用製品」に開示されているように、フッ素樹脂の中でも特に摺動性に優れた材料である。したがって、上述したフッ素樹脂フィルム91を設置することによる効果がさらに確実なものになる。
本願発明者は、膜厚が30μmの放射線架橋PTFEからなるフッ素樹脂フィルム91を伝熱板67bの先端を覆うように移動させずに固定して、記録媒体Pを連続的に通紙して紙粉の発生量を実験的に確認した。その結果、紙粉の発生量は通常のフッ素樹脂を用いた場合に比べて半減するとともに、フッ素樹脂フィルム91の破断についても3000枚程度の通紙に耐えうることを確認した。
【0053】
ここで、本実施の形態1では、上述したようにフッ素樹脂フィルム91が巻取り機構92、93によって巻取り可能に構成されている。これにより、加熱手段としての加熱装置67の保守点検が容易になる。すなわち、伝熱板67bの表面にフッ素コーティングを施した場合には磨耗によりコーティング面が劣化してしまうと加熱装置67全体を交換しなくてはならないが、巻取り可能なフッ素樹脂フィルム91を設置することにより加熱装置67に対してフッ素樹脂フィルム91を分離して容易に交換することが可能となる。
【0054】
また、伝熱板67bの表面にフッ素コーティングを施す場合には、加熱装置67としての安定した性能を発揮することができない可能性がある。本実施の形態1のようにニップ部の直前で記録媒体Pのみを加熱する場合には、トナー像が転写・定着される転写定着面の温度をムラなく確実に定着温度まで加熱する必要がある。しかし、伝熱板67bの表面にフッ素コーティングを施す場合には、その加工性から次のような問題が生じて、記録媒体Pの転写定着面に温度ムラが生じて、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じてしまう可能性がある。
まず、加熱装置67が組み付けられる前に伝熱板67bにフッ素コーティングを施す場合には、コーティング後の加熱焼き付けにより伝熱板67bの平面度にばらつきが生じるため、その後の組み付け工程において加熱体67aと伝熱板67bとの接触不良が生じて、伝熱板67bの伝熱効率にバラツキが生じてしまう。したがって、記録媒体Pにおける転写定着面において温度ムラが発生して、定着不良画像や光沢ムラ画像が生じてしまう。
また、加熱装置67が組み付けられた後に伝熱板67bにフッ素コーティングを施す場合には、コーティング処理時に伝熱板67bが高温(320℃程度である。)に達してしまうため、加熱装置67を構成する電極67c等の他の構成部品が熱変形してしまう可能性があり、加熱装置67としての安定した性能を確保することが困難となる。
したがって、ニップ部の直前において記録媒体Pを安定的に確実に加熱するためには、伝熱板67bの表面にフッ素コーティングを施すのではなく、移動可能な(巻取り可能な)フッ素樹脂フィルム91を用いる本実施の形態1の構成が好適である。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される直前に記録媒体Pの転写定着面を効率的に加熱するとともに、記録媒体Pと伝熱板67b(伝熱部材)との間にフッ素樹脂フィルム91(フィルム状の低摩擦部材)を移動可能に配設しているために、消費エネルギが低く、紙粉の発生量が低減されて、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止することができる。
【0056】
なお、本実施の形態1では、加熱装置67の加熱体67aとして抵抗発熱体(正特性サーミスタ)を用いたが、加熱体67aとして電磁誘導により発熱するとともに所定のキューリー点に達すると透磁率が低下する金属部材を用いることもできる。そして、このような場合にも、本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
具体的に、加熱装置は、ニッケル、鉄等の整磁合金からなる板厚0.3mm程度の板バネ部材と、板バネ部材に対向する誘導コイルと、等で構成される。板バネ部材の先端は、伝熱板67bと同様に、ニップ部に向けて搬送される記録媒体Pにフッ素樹脂フィルム91を介して接触するように配設される。このような構成により、誘導コイルに20kHzの高周波電圧が印加されると、板バネ部材が電磁誘導加熱されて、記録媒体Pの転写定着面にフッ素樹脂フィルム91を介して熱を伝えることになる。なお、板バネ部材は、整磁合金中のニッケル成分の比率が40%程度に設定されていて、その温度が200℃(キューリー点)に達すると透磁率が急激に低下して電磁誘導加熱されなくなる。具体的に、このように構成された加熱体は、1200ワットの電力で3秒後に190〜200℃にまで昇温して、その後は自己温度制御機能により210℃以上に昇温することはない。
【0057】
実施の形態2.
図4にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図4は、実施の形態2における転写定着装置に設置される加熱手段を幅方向にみた図であって、前記実施の形態1における図3に相当する図である。本実施の形態2における転写定着装置は、加熱手段によって記録媒体における転写定着面の画像領域のみを加熱する点が、前記実施の形態1のものと相違する。
【0058】
本実施の形態2における転写定着装置66も、前記実施の形態1のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、フッ素樹脂フィルム91の巻取り機構92、93が設置されている。このように、記録媒体Pと伝熱板67bとの間にフッ素樹脂フィルム91を移動可能に配設することで、前記実施の形態1と同様に、フッ素樹脂フィルム91に破断が生じることなく紙粉の発生量が低減されることになる。
【0059】
ここで、本実施の形態2における加熱装置67は、図4に示すように、幅方向に分割された10個の加熱体67a1〜67a10と電極67c1〜67c10とが設置され、それらの加熱体67a1〜67a10(電極67c1〜67c10)にはそれぞれ独立した切替制御が可能なスイッチ72A〜72Jが接続されている。
そして、装置本体1の制御部に送られる画像情報に基いて、記録媒体Pの画像面(転写定着面)における画像領域のみを加熱して、非画像領域を加熱しないように制御する。具体的に、転写定着面において画像が形成される領域に対応した加熱体のみスイッチを接続して加熱させて、画像が形成されない領域に対応した加熱体のスイッチを切断して加熱停止させる。
【0060】
このような構成・制御により、加熱装置67が無駄に電力を消費するのを抑止することができるとともに、転写定着ベルト27上に地肌汚れ(非画像領域にトナーが付着する現象である。)が生じている場合であってもニップ部にて記録媒体P上に地肌汚れトナーが転写・定着される不具合が軽減される。
なお、本実施の形態2における装置を用いて、均しローラ85を通過する前後の転写定着ベルト27表面の幅方向温度ムラをサーモグラフィで測定したところ、均しローラ通過前の転写定着ベルト27表面の幅方向温度ムラが30〜40℃であったのに対して、均しローラ通過後の転写定着ベルト27表面の幅方向温度ムラは10℃以下であった。また、連続通紙をおこなっても、光沢ムラ、定着不良等の異常画像の発生はなく、安定的に高画質の出力画像を得ることができた。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、前記実施の形態1と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される直前に記録媒体Pの転写定着面を効率的に加熱するとともに、記録媒体Pと伝熱板67b(伝熱部材)との間にフッ素樹脂フィルム91(フィルム状の低摩擦部材)を移動可能に配設しているために、消費エネルギが低く、紙粉の発生量が低減されて、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止することができる。
【0062】
実施の形態3.
図5にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図5は、実施の形態3における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態2における転写定着装置は、加熱手段にブラシ状部材が設置されている点が、前記実施の形態1のものと相違する。
【0063】
本実施の形態3における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、フッ素樹脂フィルム91の巻取り機構92、93が設置されている。このように、記録媒体Pと伝熱板67bとの間にフッ素樹脂フィルム91を移動可能に配設することで、前記各実施の形態と同様に、フッ素樹脂フィルム91に破断が生じることなく紙粉の発生量が低減されることになる。
【0064】
ここで、本実施の形態3における加熱装置67は、図5に示すように、磁性を有するとともに記録媒体P(転写定着面)にフッ素樹脂フィルム91を介して接触して伝熱するブラシ状部材67bが設置されている。すなわち、加熱装置67の伝熱部材として、伝熱板の代わりに、ブラシ状部材67bが設置されている。一方、加圧ローラ68の内部であってブラシ状部材67bに対向する位置には、マグネット75(磁力発生手段)が設置されている。このマグネット75は、その磁力によってブラシ状部材67bを記録媒体Pに接触するように付勢するものである。これにより、ブラシ状部材67bは、経時においても記録媒体Pに安定的に接触することになる。すなわち、ブラシ状部材67bが記録媒体Pとの接触を繰り返すことにより毛倒れを起こして、記録媒体Pとの接触不良による加熱不良が生じるのを抑止することができる。
【0065】
具体的に、ブラシ状部材67bとして、SUS304からなる外径40μmの繊維を束ねたものを用いることができる。SUS304は、はオーステナイト系のステンレスであって一般に非磁性とされるが、繊維や箔のように延伸加工を施すことにより磁性が発現する。なお、ブラシ状部材67bの材料としては、SUS304の他に、本来的に磁性を有するフェライト系材料からなる繊維や、ニッケルからなる繊維、等を用いることもできる。
【0066】
本願発明者が、本実施の形態3における転写定着装置66を用いて、通紙テストをおこなったところ、平滑度が23秒までの表面凹凸性が大きな記録媒体(Sabre−X80である。)に対しても、ブラシ状部材67bは毛倒れすることなく記録媒体Pに追従して接触して、安定した定着性能を発揮することができた。
なお、記録媒体(紙)の表面凹凸性をあらわす「平滑度」は、紙パルプ技術協会の紙パルプ試験法No.5−74に基くものであり、その単位は秒であらわされる。平滑度が高い値であるほど、表面の凹凸性が少なく平滑性に優れた紙となる。日本国内において電子写真方式の画像形成装置で用いられる普通紙としては、おおよそ平滑度30秒以上のものが市販されている。上質紙では100秒を超える。30秒を下回るものは稀であって、海外で流通する一部の紙種や、冊子の表紙に用いられる特殊紙等がある。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態3によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される直前に記録媒体Pの転写定着面を効率的に加熱するとともに、記録媒体Pとブラシ状部材67b(伝熱部材)との間にフッ素樹脂フィルム91(フィルム状の低摩擦部材)を移動可能に配設しているために、消費エネルギが低く、紙粉の発生量が低減されて、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止することができる。
特に、本実施の形態3では、加熱装置67の伝熱部材としてブラシ状部材67bを用いているために、凹凸が大きく平滑性の低い記録媒体Pに対しても、その転写定着面をムラなく確実に加熱することができる。
また、ブラシ状部材67bは、フッ素樹脂フィルム91で覆われているために、ブラシ状部材67bのブラシ毛が抜けて記録媒体Pに付着する不具合も抑止することができる。
【0068】
実施の形態4.
図6にて、この発明の実施の形態4について詳細に説明する。
図6は、実施の形態4における画像形成装置の一部を示す構成図である。本実施の形態4における画像形成装置は、1つの感光体ドラム21が設置されている点が、4つの感光体ドラム21が設置されている前記実施の形態1のものと相違する。
【0069】
本実施の形態4における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置67に、フッ素樹脂フィルム91の巻取り機構92、93が設置されている。このように、記録媒体Pと伝熱板67bとの間にフッ素樹脂フィルム91を移動可能に配設することで、前記各実施の形態と同様に、フッ素樹脂フィルム91に破断が生じることなく紙粉の発生量が低減されることになる。
【0070】
図6に示すように、本実施の形態5における画像形成装置は、1つの感光体ドラム21の周囲に、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した書込み部(不図示である。)、帯電部(不図示である。)、現像装置23Y、23M、23C、23BKや、クリーニング装置25、等が配設されている。そして、感光体ドラム21上で各色の画像(トナー像)が重ねて形成されて、そのカラー画像が転写バイアスローラ24との対向位置で転写定着ベルト27上に転写される。
その後、転写定着ベルト27上に担持されたトナー像Tは、加圧ローラ68とのニップ部の位置で、前記各実施の形態と同様に、加熱装置67によって加熱された記録媒体P上に転写・定着される。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態4によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される直前に記録媒体Pの転写定着面を効率的に加熱するとともに、記録媒体Pと伝熱板67b(伝熱部材)との間にフッ素樹脂フィルム91(フィルム状の低摩擦部材)を移動可能に配設しているために、消費エネルギが低く、紙粉の発生量が低減されて、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止することができる。
【0072】
実施の形態5.
図7にて、この発明の実施の形態5について詳細に説明する。
図7は、実施の形態5における転写定着装置の一部を示す拡大図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態5における転写定着装置は、主として、フッ素樹脂フィルム91が無端状に形成されて回転駆動される点と、ニップ部に搬送される記録媒体Pが輻射熱源95によっても加熱される点と、が前記実施の形態1のものと相違する。
【0073】
本実施の形態5における転写定着装置66も、前記各実施の形態のものと同様に、転写・定着工程直前に記録媒体Pを加熱する加熱装置に、低摩擦部材としてのフッ素樹脂フィルム91と、フッ素樹脂フィルム91を移動させる移動手段と、が設置されている
ここで、本実施の形態5では、図7に示すように、加熱装置の伝熱板94(伝熱部材)が略周状に形成されている(一部に開口94aが設けられている。)。図示は省略するが、伝熱板94には、前記各実施の形態と同様に、加熱体が接触していて、加熱体の熱が伝熱板94、フッ素樹脂フィルム91を介して記録媒体Pの転写定着面に伝えられることになる。
また、低摩擦部材としてのフッ素樹脂フィルム91は、伝熱板94を覆うように無端状(環状)に形成されている。なお、図7では、理解の容易のため、伝熱板94とフッ素樹脂フィルム91とを隙間をあけて図示している。そして、図示は省略するが、移動手段として、無端状に形成されたフッ素樹脂フィルム91を回転駆動する回転駆動機構(例えば、フッ素樹脂フィルム91を環状に保持する保持部材、保持部材に連結された駆動モータ、等で構成される。)が設置されている。このように記録媒体Pと伝熱板67bとの間にフッ素樹脂フィルム91を回転駆動機構によって移動可能に配設することで、前記各実施の形態と同様に、フッ素樹脂フィルム91の同じ箇所が記録媒体Pに摺接され続けて磨耗・破断する不具合が生じることなく、紙粉の発生量も低減されることになる。
【0074】
なお、本実施の形態5では、回転駆動機構は、記録媒体の搬送方向に沿ってフッ素樹脂フィルム91を回転駆動している。すなわち、フッ素樹脂フィルム91は図7の反時計方向に回転して、フッ素樹脂フィルム91と記録媒体Pとの当接位置においてフッ素樹脂フィルム91の移動方向と記録媒体Pの搬送方向とは同方向(図7の右方向)になるように設定されている。これにより、フッ素樹脂フィルム91と記録媒体Pとの摩擦抵抗を低減することができるために、フッ素樹脂フィルム91の磨耗をさらに低減することができる。
【0075】
また、本実施の形態5では、記録媒体Pがニップ部に搬送される前にフッ素樹脂フィルム91を介して輻射熱によって加熱する輻射熱源としてのヒータ95が設置されている。詳しくは、ヒータ95(輻射熱源)は、伝熱板94の内周面に対向するように、伝熱板94の内部に配設されている。
このような構成により、ヒータ95の輻射熱が、伝熱板94の開口94aからフッ素樹脂フィルム91を透過して記録媒体Pの転写定着面に達して、記録媒体Pの加熱を補助することになる。さらには、ヒータ95の輻射熱は伝熱板94をも加熱するために、伝熱板94の加熱効率がさらに高められて、記録媒体Pに対する加熱効率がさらに高められる。
【0076】
このように、伝熱板94によって加熱された記録媒体Pは、さらにヒータ25の輻射熱によって加熱されるために、記録媒体Pがほとんど温度低下することなくニップ部に達することになる。具体的には、記録媒体Pが伝熱板94の位置からニップ部に達するまでの時間が30ms程度であっても、記録媒体Pの高温状態を維持することができる。
なお、フッ素樹脂フィルム91は、一般的なPFAで形成されたものであっても、波長3μm程度の赤外線に対する透過率が高いために、ヒータ95から射出された輻射熱を充分に透過して記録媒体Pにとどけることができる。また、フッ素樹脂フィルム91を放射線架橋PTFEで形成した場合には、さらに赤外線に対する透過率が高められて、記録媒体Pに対する加熱効率を向上させることができる。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態5によれば、前記各実施の形態と同様に、転写定着ベルト27(転写定着部材)と加圧ローラ68(加圧部材)とのニップ部に搬送される直前に記録媒体Pの転写定着面を効率的に加熱するとともに、記録媒体Pと伝熱板94(伝熱部材)との間にフッ素樹脂フィルム91(フィルム状の低摩擦部材)を移動可能に配設しているために、消費エネルギが低く、紙粉の発生量が低減されて、定着不良画像や光沢ムラ画像の発生を抑止することができる。
【0078】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明の実施の形態1における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図3】転写定着装置に設置される加熱手段を幅方向にみた図である。
【図4】この発明の実施の形態2における転写定着装置に設置される加熱手段を幅方向にみた図である。
【図5】この発明の実施の形態3における転写定着装置の一部を示す拡大図である。
【図6】この発明の実施の形態4における画像形成装置の一部を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態5における画像形成装置の一部を示す構成図である。
【符号の説明】
【0080】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
27 転写定着ベルト(転写定着部材)、
28A〜28C ローラ部材、
66 転写定着装置、
67 加熱装置(加熱手段)、
67a、67a1〜67a10 加熱体、
67b、94 伝熱板(伝熱部材)、
67c、67c1〜67c10 電極、
68 加圧ローラ(加圧部材)、
91 フッ素樹脂フィルム(低摩擦部材)、
92 巻出し部(移動手段、巻取り機構)、
93 巻取り部(移動手段、巻取り機構)、
95 ヒータ(輻射熱源)、 P 記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、
トナー像を担持する転写定着部材と、
前記転写定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
前記ニップ部に向けて搬送される記録媒体の前記転写定着面を当該記録媒体が前記ニップ部に搬送される前に加熱する加熱手段と、
前記加熱手段の伝熱部材が前記記録媒体の前記転写定着面に間接的に接触して前記伝熱部材から前記転写定着面に熱が伝えられるように前記転写定着面と前記伝熱部材との間に介在されるとともに、前記伝熱部材の摩擦係数よりも低い摩擦係数を有するフィルム状の低摩擦部材と、
前記転写定着面と前記伝熱部材との間に介在される前記低摩擦部材の当接位置を移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とする転写定着装置。
【請求項2】
前記低摩擦部材は、フッ素樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の転写定着装置。
【請求項3】
前記フッ素樹脂フィルムは、放射線架橋ポリテトラフルオロエチレンで形成されたことを特徴とする請求項2に記載の転写定着装置。
【請求項4】
前記移動手段は、ロール状に巻回された前記低摩擦部材を前記転写定着面と前記伝熱部材との間に向けて巻き出すとともに前記転写定着面と前記伝熱部材との間を通過した前記低摩擦部材をロール状に巻き取る巻取り機構であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項5】
前記巻取り機構は、記録媒体の搬送方向に沿って前記低摩擦部材を巻き出すことを特徴とする請求項4に記載の転写定着装置。
【請求項6】
前記移動手段は、無端状に形成された前記低摩擦部材を回転駆動する回転駆動機構であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項7】
前記回転駆動機構は、記録媒体の搬送方向に沿って前記低摩擦部材を回転駆動することを特徴とする請求項6に記載の転写定着装置。
【請求項8】
前記加熱手段の前記伝熱部材は、前記低摩擦部材を介して前記転写定着面に接触する接触面が銅で形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項9】
記録媒体が前記ニップ部に搬送される前に当該記録媒体の前記転写定着面を前記低摩擦部材を介して輻射熱によって加熱する輻射熱源をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の転写定着装置。
【請求項10】
前記輻射熱源は、前記伝熱部材をも輻射熱によって加熱するように前記伝熱部材に対向する位置に配設されたことを特徴とする請求項9に記載の転写定着装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の転写定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−300803(P2009−300803A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156067(P2008−156067)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】