説明

転写材分離装置、転写装置および画像形成装置

【課題】分離し難い転写材でもより確実に分離することのできる転写材分離装置を提供する。
【解決手段】液体現像剤像が転写される転写材8が圧接されて転写材8とともに移動する転写材移動部材(中間転写ベルト4)と、転写材移動部材とともに移動してくる転写材8の先端部を転写材移動部材から分離する可撓性の転写材分離部材21と、転写材8を分離する際に転写材分離部材21を転写材8の先端部と転写材移動部材との間に進入させる転写材分離部材作動機構(回転直線運動機構28)とを備える転写材分離装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤(液体トナー)像を用いた、例えば複写機、ファクシミリ、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置において、液体現像剤像が転写された転写材を転写材移動部材から分離する転写材分離装置、液体現像剤像を転写材に転写する転写装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体現像剤(液体トナー)を用いた画像形成装置においては、転写装置で転写材が転写装置の転写媒体に圧接されかつ転写媒体とともに移動することで、転写材に液体現像剤像が転写される。また、定着装置で液体現像剤像が転写された転写材が定着装置の定着部材に圧接されかつ定着媒体とともに移動することで、転写材に液体現像剤像が定着される。
【0003】
これらの場合、転写材の液体現像剤像側の転写面が、転写媒体あるいは定着部材等の転写材移動部材に圧接される。このように転写材の転写面が転写材移動部材に圧接されると、液体現像剤の特有の性質のため、転写材は転写材移動部材に張り付き易い。このため、液体現像剤像が転写された転写材を転写材移動部材から分離させることは難しい。そこで、従来、転写材移動部材とともに移動してくる転写材の先端にエアを吹き付けることで、転写材の先端部を転写材移動部材から強制的に分離するようにした転写材分離装置を備える画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の転写材分離装置では、吹き付けられるエアが転写材の先端と転写材移動部材との間に進入することで、転写材の先端部を分離するようにしている。
【特許文献1】特許第3128067号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載の転写材分離装置では、画像形成動作時および画像形成動作中には転写材の先端にエアを単に吹き付けているだけである。このため、転写材の分離を確実に行うことは難しい。
また、転写材移動部材から比較的分離し難い転写材の場合には、エアの吹付けのみでは、転写材の分離が効果的に行われない場合が考えられる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、分離し難い転写材でもより確実に分離することのできる転写材分離装置、転写装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明に係る転写材分離装置、転写装置および画像形成装置では、転写材分離部材作動機構により、可撓性の転写材分離部材を転写材の先端部と、転写媒体あるいは潜像担持体等の液体現像剤像担持体である転写材移動部材との間に進入させる。そして、この転写材分離部材の進入により転写材の先端部を転写材移動部材から分離することができる。特に、分離し難い転写材であってもより確実に分離することができるようになる。これにより、転写材が転写材移動部材とともに移動するのを防止でき、転写材を次の搬送位置の方へ確実に移動させることができる。
【0007】
また、転写材分離部材作動機構をクランク機構とすることで、転写材分離部材の先端部に回転運動と直線運動との複合運動を行わせることができる。この転写材分離部材の複合運動により、転写材分離部材による転写材の分離をより効果的に行うことができる。
【0008】
更に、転写材の先端部の分離後に、転写材分離部材の先端部をクリーニング部材に圧接かつ摺動させる。このクリーニング部材により、転写材分離部材の先端部に付着する残留トナーやちり等の異物を除去することができる。これにより、転写材分離部材による転写材の分離を長期にわたって確実に行うことができる。特に、転写材分離部材をクランク機構によって作動させることで、転写材の分離作動および転写材分離部材の先端部のクリーニング作動を一連の動作として行うことができる。したがって、転写材の分離および転写材分離部材の先端部のクリーニングをより効率よく行うことができる。
【0009】
更に、転写材分離ガス装置によりガスを転写材の先端に吹き付けることでも、転写材の先端部を転写材移動部材から分離するようにしている。これにより、前述の転写材分離部材による転写材の分離効果と相俟って、より効果的に転写材の先端部を分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明にかかる転写材分離装置を備えた画像形成装置の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示す図である。
図1に示すように、この例の画像形成装置1は、タンデムに配置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色の液体現像剤を用いた作像ユニット2Y,2M,2C,2Kを備えている。ここで、各作像ユニット2Y,2M,2C,2Kにおいて、2Yはイエローの作像ユニット、2Mはマゼンタの作像ユニット、2Cはシアンの作像ユニット、2Kはブラックの作像ユニットを表す。また、他の部材についても同じように、部材の符号にそれぞれ各色のY,M,C,Kを添えて各色の部材を表す。
【0011】
各作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、それぞれ、潜像担持体である感光体3Y,3M,3C,3Kを備えている。各感光体3Y,3M,3C,3Kは、図1に示す例ではいずれも、感光体ドラムから構成されている。なお、各感光体3Y,3M,3C,3Kは、無端ベルト状に構成することもできる。
【0012】
これらの感光体3Y,3M,3C,3Kは、いずれも作動時に図1に矢印αで示すように時計回りに回転するようにされている。また、図示しないが各作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、それぞれ、液体現像材を用いた従来周知の画像形成装置と同様に、各感光体3Y,3M,3C,3Kの周囲に配置された帯電部材、露光装置、液体現像装置、感光体スクイーズ装置、除電装置、および感光体クリーニング装置を備えている。これらの帯電部材、露光装置、液体現像装置、感光体スクイーズ装置、除電装置、および感光体クリーニング装置は、各感光体3Y,3M,3C,3Kの回転方向に向かってこれらの順に配設されている。各感光体3Y,3M,3C,3Kには、それぞれ対応する色の静電潜像が形成されるとともに、各静電潜像が各色の液体現像剤で現像されてトナー像が形成される。
【0013】
また図1に示すように、画像形成装置1は、転写媒体である無端状の中間転写ベルト4を備えている。なお、転写媒体は転写ローラで構成することもできる。以下の説明では、転写媒体が中間転写ベルト4であるとして説明する。
この中間転写ベルト4は図示しないモータの駆動力が伝達されるベルト駆動ローラ5および一対の従動ローラ6,7に張架されている。その場合、ベルト駆動ローラ5と一方の従動ローラ6とは互いに、後述する二次転写装置14へ搬送されてくる紙等の転写材8の矢印で示す転写材移動方向βに沿って所定間隔を置いて隣接して配設されている。また、ベルト駆動ローラ5と他方の従動ローラ7とは互いに各感光体3Y,3M,3C,3Kのタンデム配置方向に沿って離間して配設されている。更に、中間転写ベルト4はテンションローラ9によって所定のテンションが付与されている。そして、中間転写ベルト4はベルト駆動ローラ5によって図1に矢印γで示す反時計回りに回転可能に設けられている。
【0014】
なお、この例の画像形成装置1では、各作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは中間転写ベルト4の回転方向γ上流側(図1において、左側)から色Y、M、C、Kの順に配設されているが、これらの各色Y、M、C、Kの配置順は任意に設定することができる。
【0015】
各感光体3Y,3M,3C,3Kの周囲には、それぞれ一次転写装置10Y,10M,10C,10Kが配設されている。これらの一次転写装置10Y,10M,10C,10Kは、それぞれ図示しない感光体スクイーズ装置と除電装置との間に配置される。各一次転写装置10Y,10M,10C,10Kは、それぞれ一次転写用の各バックアップローラ11Y,11M,11C,11Kを備えている。これらのバックアップローラ11Y,11M,11C,11Kによって中間転写ベルト4が各感光体3Y,3M,3C,3Kに圧接される。
【0016】
そして、各バックアップローラ11Y,11M,11C,11Kは、トナー粒子の帯電極性と逆極性の電荷が印加されることにより、各感光体3Y,3M,3C,3K上の各トナー像がそれぞれ中間転写ベルト4に転写される。その場合、中間転写ベルト4に最初イエロー(Y)のトナー像が転写され、マゼンタ(M)のトナー像がイエロー(Y)のトナー像に色重ねされて転写される。以後、中間転写ベルト4上にシアン(C)のトナー像およびブラック(K)のトナー像がこれらの順に先に転写されたトナー像に色重ねされて転写され、中間転写ベルト4上にフルカラーのトナー像が形成される。
【0017】
各一次転写装置10Y,10M,10C,10Kより中間転写ベルト4の回転方向γ下流側の各一次転写装置10Y,10M,10C,10Kの近傍には、それぞれ、中間転写ベルトスクイーズ装置12Y,12M,12C,12Kが配設されている。各中間転写ベルトスクイーズ装置12Y,12M,12C,12Kは、それぞれ、中間転写ベルトスクイーズローラ13Y,13M,13C,13Kを備えている。各中間転写ベルトスクイーズローラ13Y,13M,13C,13Kは、それぞれ中間転写ベルト4上の対応する色のキャリア液を回収するものである。
【0018】
更に、中間転写ベルト4のベルト駆動ローラ5側には二次転写装置14が設けられている。二次転写装置14は、互いに転写材移動方向βに沿って所定間隔離間して配置された一対のローラ15,16と、ローラ16に関して転写材移動方向βとほぼ直交する方向に配置されたローラ17と、これらの3つのローラ15,16,17に掛け渡された転写ベルト18とを備えている。転写材移動方向βの上流側のローラ15は、ベルト駆動ローラ5に対向して配置されて転写ベルト18をベルト駆動ローラ5に巻きかけられた中間転写ベルト4に圧接している。また、転写材移動方向βの下流側のローラ16は、従動ローラ6に対向して配置されて転写ベルト18を従動ローラ6に巻きかけられた中間転写ベルト4に圧接している。そして、転写材8が2つのローラ15,16間の転写ベルト18とベルト駆動ローラ5および従動ローラ6間の中間転写ベルト4との間の転写ニップ部に挟圧されかつ転写材移動方向βに沿って移動しながら、中間転写ベルト4のトナー像(液体現像剤像)が転写材8に転写される。したがって、中間転写ベルト4は本発明の転写材移動部材および液体現像剤像担持体も構成している。また、一対のローラ15,16は本発明の転写部材を構成している。
【0019】
なお、図示しないが、この例の画像形成装置1は、二次転写を行う従来の一般的な画像形成装置と同様に、二次転写装置14より転写材搬送方向上流側に例えば紙等の転写材8を収納する転写材収納装置と、この転写材収納装置からの転写材8を二次転写装置14へ搬送供給するレジストローラ対とを備えている。この画像形成装置1は、同様に二次転写装置14より転写材搬送方向下流側に定着装置および排転写材トレイを備えている。図1には、転写材8を二次転写装置14から定着装置へ搬送するための転写材ベルト搬送装置27が部分的に示されている。
【0020】
図1ないし図3に示すように、二次転写装置14は、その転写ニップ部の終端に隣接して設けられた転写材分離装置19を備えている。この転写材分離装置19は、転写材8が中間転写ベルト4から分離する分離位置4aにエアを吹き付ける転写材分離エア装置20(本発明の転写材分離ガス装置に相当)と、この転写材分離エア装置20の両側に配設されかつ転写材分離ブラシからなる弾性を有する可撓性の転写材分離部材21とを備えている。なお、転写材分離エア装置20はエア以外のガスを吹き付けるガス吹付け装置を用いることもできる。以下の説明では、転写材分離エア装置20を用いるものとして説明する。
【0021】
図3に詳細に示すように、転写材分離エア装置20は、装置本体内のエアを吸い込んで気流を発生するエアファン22と、転写材分離部材21の下方に設けられかつエアファン22によって発生した気流が流れるエアダクト23と、このエアダクト23の先端に設けられたエア吹付け口24とを備えている。エア吹付け口24は、転写材8と中間転写ベルト4との分離位置4aに向かって開口している。したがって、エア吹付け口24から、気流によるエアがこの分離位置4aに向かって吹き付けられようになっている(なお、転写材分離エア装置20によるエアの吹付け方向は、従動ローラ6に巻き掛けられた中間転写ベルト4の円弧状部の分離位置4aにおける接線方向またはほぼ接線方向となっている)。転写材分離装置19のエアファン22は、画像形成装置1の制御装置によって作動制御される。
【0022】
転写材分離部材21は可撓性の多数のブラシ毛を有するブラシで構成されており、このブラシは、例えば樹脂系の繊維類で形成することができる。この転写材分離部材21は、中間転写ベルト4の分離位置4aまたはこの分離位置4aより中間転写ベルト4の回転方向γ下流側の近傍位置に離当接可能に設けられている。そして、転写材分離部材21の先端が、転写材8を中間転写ベルト4から分離する際に中間転写ベルト4に当接されかつ中間転写ベルト4の回転で摺接するようになる。これにより、転写材分離部材21の先端が、転写ニップ部終端から搬出されてくる転写材8の先端部と中間転写ベルト4との間に進入することで、転写材8の先端部が中間転写ベルト4から分離されるようになっている。その場合、転写材8の先端部は通常転写材の余白部(非画像部)となっているので、転写材分離部材21が進入しても、転写材の転写画像は転写材分離部材21によって影響されることはない。
【0023】
転写材分離装置19は、転写材分離部材21を作動するための転写材分離部材作動機構である回転直線運動機構28を備えている。この回転直線運動機構28は、円板状のクランク29と、クランクピン30と、連結レバー31と、直線ガイド部材32と、転写材分離部材支持軸33とを有している。すなわち、回転直線運動機構28としてクランク機構が採用されている。
【0024】
図2および図4に示すように、クランク29は左右一対設けられているとともに、これらのクランク29の中心が回転軸34により連結されている。この回転軸34は、転写材分離装置19の本体35に回転可能に設けられている。その場合、回転軸34は、左右一対のクランク29の内側部分が本体35に回転可能に支持されている。したがって、各クランク29は一体回転するようになっている。図示しないが、この回転軸34には適宜の動力伝達機構を介してクランク作動用モータの動力が伝達されるようになっている。
【0025】
図4に示すように、クランクピン30も一対設けられている(図4には、一方のクランクピン30のみが図示されているが、他方のクランクピン30も右側のクランク29に左右対称(回転軸34の中心を通りかつ回転軸34と直交する直線に関して対称)に設けられている。各クランクピン30はそれぞれ対応するクランク29に回転軸34から偏心して設けられて、各クランク29と一体回転するようになっている。
【0026】
更に、図2、図3および図4に示すように、連結レバー31も一対設けられている。各連結レバー31の一端部がそれぞれ対応するクランクピン30に相対回転可能に連結される。
図2および図3に示すように、直線ガイド部材32も一対設けられており、これらの直線ガイド部材32は、ともに本体35に一体に形成されている。各直線ガイド部材32は、それぞれ直線状のガイド溝36を有している。(なお、図2に一方のガイド溝36が図示され、また図3には他方のガイド溝36が図示されている。)。各ガイド溝36は、図3において左方から右方に向けて上方となるように若干傾斜して設けられている。これにより、各ガイド溝36は、分離位置4aに向くようにされている。
【0027】
図2、図3および図4に示すように、転写材分離部材支持軸33は回転軸34と平行に配置されている。転写材分離部材支持軸33の両端部は、それぞれ各連結レバー31の他端部にこれらの他端部を貫通して一体に固定されている。そして、転写材分離部材支持軸33の各連結レバー31より外側に突出する突出端部33a,33bは、それぞれ対応するガイド溝36に摺動可能に嵌合されている。したがって、転写材分離部材支持軸33は各連結レバー31と一体に行われる回転運動とガイド溝36に沿う直線運動との複合運動を行うようになっている。これにより、各連結レバー31も、他端部がガイド溝36に沿う直線運動を行うとともに、転写材分離部材支持軸33を中心に回転運動を行うようになる。
【0028】
転写材分離部材支持軸33には、一対の転写材分離部材取付部材37が各連結レバー31の内側に位置して一体に固定されている。これらの転写材分離部材取付部材37には、それぞれ分離ブラシからなる転写材分離部材21が取り付けられている。したがって、転写材分離部材21は転写材分離部材支持軸33の複合運動にともなって、同様に転写材分離部材支持軸33と一体に回転運動と直線運動とからなる複合運動を行うようになる。また、各転写材分離部材21はそれぞれ非作動時それらの弾性により直線状に保持されて、それらの先端が対応する連結レバー31の向きと同じ方向に向くようにして取り付けられる。
【0029】
なお、図4に示す例の転写材分離部材21は可撓性のブラシからなるものとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように各転写材分離部材21はブラシに代えてフィルムで構成することもできる。その場合、分離位置4aに来た転写材8の先端と中間転写ベルト4との間にフィルムが進入し易くするために、フィルムの先端部を先細りに形成することが好ましい。このフィルムは例えばPET等の樹脂フィルムで構成することができる。
【0030】
図3、図6(a)および(b)に示すように、転写材分離部材21の先端部をクリーニングする分離部材クリーニング装置38が転写材分離部材21の上方に設けられている。この分離部材クリーニング装置38は、一対のクリーニング部材39と、これらのクリーニング部材39を支持するクリーニング部材支持部材40とを備えている。一対のクリーニング部材39はいずれもスポンジ等の従来公知の柔軟なクリーニング材から形成することができる。各クリーニング部材39は、それぞれ各転写材分離部材21に対向するようにしてクリーニング部材支持部材40に支持されている。
【0031】
そして、転写材分離部材21の前述の複合運動により、各転写材分離部材21の先端部がそれぞれ対応するクリーニング部材39に撓みながら圧接かつ摺動可能となっている。これらのクリーニング部材39によって、各転写材分離部材21の先端部に付着する、残留トナーやちり等の異物が除去されるようになる。
【0032】
各転写材分離部材21による転写材8の分離動作について説明する。なお、転写材分離装置19に一対設けられるクランク29等の部材は互いに同期して動作することから、以下の説明では、1つの部材の動作として説明する。
図7(d)に示す非作動状態では、連結レバー31および転写材分離部材21は、ともに転写材分離部材21の先端が転写材8と中間転写ベルト4との分離位置4aの方へ向くように若干傾斜している。このとき、転写材分離部材21の先端は中間転写ベルト4から離間している。この非作動状態からクランク29が図7(d)において時計回りに回転すると、クランクピン30もクランク29と一体に時計回りに回転する。
【0033】
そして、クランクピン30はこの回転で二次転写装置14の方向(図7(d)において右方;つまり、中間転写ベルト4)へ移動する。すると、クランクピン30のこの移動で、連結レバー31も同方向へ移動するとともに、転写材分離部材支持軸33がガイド溝36に沿って同方向に移動する。したがって、連結レバー31は転写材分離部材支持軸33を中心に図7(d)において時計回りに回転しつつ、右方へ直線移動する。これにより、連結レバー31および転写材分離部材支持軸33は前述の複合運動を行う。更に、転写材分離部材21が連結レバー31および転写材分離部材支持軸33と一体に同じく複合運動をするので、転写材分離部材21の先端は下方に向きつつ、中間転写ベルト4に接近していく。
【0034】
クランクピン30が図7(d)に示す位置から時計回りに90度回転すると、図7(a)に示すように連結レバー31の転写材分離部材支持軸33回りの回転が最大となる。更に、クランクピン30が時計回りに回転すると、連結レバー31および転写材分離部材21が、右方へ直線運動している転写材分離部材支持軸33を中心に反時計回りに回転する。したがって、連結レバー31および転写材分離部材21は、回転が前述と逆回転の複合運動をする。これにより、転写材分離部材21の先端が更に中間転写ベルト4に接近しつつ、上方へ起き上がっていく。
【0035】
クランクピン30が図7(a)に示す位置から時計回りに90度回転すると、図7(b)に示すように連結レバー31および転写材分離部材21が、前述の図7(d)に示す若干傾斜した姿勢と同じ傾斜姿勢となる。また、連結レバー31および転写材分離部材21は、ともに最も右方に(中間転写ベルト4側)に移動した位置となっている。このときには、転写材分離部材21の先端は中間転写ベルト4に、分離位置4aまたは分離位置4aより中間転写ベルト4の回転方向γ下流側の近傍位置で当接する。これにより、転写材分離部材21の先端が中間転写ベルト4とともに移動してくる転写材8の先端と中間転写ベルト4との間に進入して、転写材8の先端を中間転写ベルト4から分離する。
【0036】
クランクピン30が図7(b)に示す位置から更に時計回りに回転すると、連結レバー31および転写材分離部材21は更に反時計回りに回転する。一方、クランクピン30はこの回転で二次転写装置14から遠ざかる方向(図7(b)において左方)へ移動する。すると、クランクピン30のこの移動で、転写材分離部材支持軸33がガイド溝36に沿って同左方向に移動する。したがって、連結レバー31および転写材分離部材21は前述の複合運動を行う(直線に同方向は、逆になる)。これにより、転写材分離部材21の先端は上方に移動しつつ、中間転写ベルト4から遠ざかっていく。
【0037】
このとき、クランクピン30における図7(b)に示す位置からの時計回りの回転では、クランクピン30は、最初下方への移動が大きく、左方への移動が小さい。したがって、転写材分離部材21の先端も最初上方への移動が大きく、左方への移動が小さい。このため、図6(a)に示すように分離した転写材8の先端部が、転写材分離部材21の先端によって持ち上げられて中間転写ベルト4から大きく分離される。これにより、転写材8の先端部は次の搬送位置である転写材ベルト搬送装置27の方へ、より効果的に移動される。
【0038】
クランクピン30が図6(a)に示す位置から更に時計回りに回転すると、図6(b)に示すように転写材分離部材21の先端部がクリーニング部材39に圧接して撓みかつ左方へ摺動する。このクリーニング部材39によって、各転写材分離部材21の先端部に付着する、残留トナーやちり等の異物が除去されるようになる。この転写材分離部材21の先端部における圧接および摺動に相前後して、転写材分離部材21の先端が転写材8の先端部から離間する。このときには、転写材8の先端部はその全体が中間転写ベルト4から既に分離されて転写材ベルト搬送装置27に導かれる。なお、転写材分離エア装置20からのエアの転写材8への吹付けによっても転写材8の先端部が中間転写ベルト4から分離されるので、より一層確実に分離されて転写材ベルト搬送装置27に導かれる。
【0039】
クランクピン30が図7(b)に示す位置から時計回りに45度以上回転すると、クランクピン30は、下方への移動が次第に小さくなり、また左方への移動が次第に大きくなる。したがって、転写材分離部材21の先端部はクリーニング部材39により長く圧接し摺動するようになる。これにより、転写材分離部材21の先端部がクリーニング部材39により効率よくクリーニングされる。
【0040】
クランクピン30が図7(b)に示す位置から時計回りに90度回転すると、図7(c)に示すように連結レバー31および転写材分離部材21の転写材分離部材支持軸33を中心とする時計回りの回転が最大となる。したがって、転写材分離部材21の先端部はクリーニング部材39に最も圧接された状態となる(つまり、図7(c)には図示されないが、転写材分離部材21は最大に撓んだ状態となる)。
【0041】
クランクピン30が、図7(c)に示す位置から更に時計回りに回転すると、連結レバー31および転写材分離部材21が転写材分離部材支持軸33を中心に時計回りに回転する。したがって、転写材分離部材支持軸33、連結レバー31、および転写材分離部材21は、回転が逆の時計回りの回転である複合運動をする。これにより、転写材分離部材21の先端が更に中間転写ベルト4から離間しつつ、下方へひれ伏していく。したがって、転写材分離部材21の先端部がクリーニング部材39への圧接を次第に弱めつつ、クリーニング部材39に対して左方へ摺動する。
【0042】
クランクピン30が図7(c)に示す位置から更に時計回りに所定量回転すると、転写材分離部材21の先端部がクリーニング部材39から離間して転写材分離部材21の撓みが解消し、転写材分離部材21がその弾性により初期の直線状態となる。これにより、クリーニング部材39による転写材分離部材21の先端部のクリーニングが終了する。
クランクピン30が図7(c)に示す位置から更に90度回転すると、図7(d)に示す連結レバー31および転写材分離部材21が若干傾斜した初期の非作動位置となる。
【0043】
このように、クランク29(つまり、クランクピン30)が時計回りに回転することで、転写材分離部材21の先端は下方へ向きつつ中間転写ベルト4の方へ接近した後、下から上方へ向きつつ、転写材8と中間転写ベルト4との分離位置4aまたは分離位置4aの中間転写ベルト4回転方向下流側の近傍に当接し、更に上方へ向きつつ中間転写ベルト4から上方にかつ左方へ遠ざかる方向に移動し、最後に初期位置に戻る複合運動を行う。
【0044】
そして、転写ニップ部から搬出された転写材8の先端が分離位置4aあるいは分離位置4aより中間転写ベルト4の回転方向γ下流近傍の所定位置に来る直前に、転写材分離部材21の先端が図7(b)に示す中間転写ベルト4に当接する位置となるように、転写材分離装置19のクランク作動用モータが画像形成装置1の制御装置(不図示)により制御される。これにより、転写材分離部材21の先端は、移動してくる転写材8の先端部と中間転写ベルト4との間に進入して転写材8の先端部を中間転写ベルト4から分離する。次いで、転写材分離部材21の先端は、図6(a)に示すように上方へ起き上がっていくことで、分離された転写材8の先端部を転写材ベルト搬送装置27の方へ向ける。こうして、転写材分離装置19は、転写材分離部材21の一連の複合運動で、転写材8の先端部を中間転写ベルト4から分離して転写材ベルト搬送装置27の方へ効果的に誘導するようになる。
【0045】
このように構成された転写材分離装置19を備えたこの例の画像形成装置1によれば、転写材分離部材21の先端部を、分離位置4aに到達した転写材8の先端部と中間転写ベルト4との間に進入させる。この転写材分離部材21の進入により、転写材8の先端部を中間転写ベルト4から確実に分離することができる。特に、分離し難い転写材8であってもより確実に分離することができるようになる。したがって、転写材8が中間転写ベルト4とともに移動するのを防止でき、転写材8を次の搬送位置である転写材ベルト搬送装置27の方へ確実に移動させることができる。
【0046】
更に、転写材分離部材21の先端が回転直線運動機構28により、回転運動と直線運動との複合運動を行うようにしているので、転写材分離部材21による転写材8の分離をより効果的に行うことができる。特に、この複合運動により、転写材先端が分離位置4aに到達した時点では転写材分離部材21の先端がすでに中間転写ベルト4に接触して、転写材8の先端の分離を確実に開始可能とし、転写材8の先端の分離後では、転写材8の先端部が中間転写ベルト4から上方に大きく離れて転写材ベルト搬送装置27の方へガイドされるように分離動作を行うので、転写材8を中間転写ベルト4からより確実に分離して、転写材ベルト搬送装置27の方へより効果的に導くことができる。
【0047】
更に、転写材8の先端部の分離後に、各転写材分離部材21の先端が回転直線運動機構28により各クリーニング部材39に圧接かつ摺動させているので、各クリーニング部材39によって、各転写材分離部材21の先端部に付着する残留トナーやちり等の異物を、各転写材分離部材21の一連の分離動作によって自動的に除去することができる。これにより、各転写材分離部材21による転写材8の分離を長期にわたって確実に行うことができる。特に、各転写材分離部材21をクランク機構によって作動しているので、転写材8の分離および各転写材分離部材21の先端部のクリーニングをより効率よく行うことができる。
【0048】
更に、転写材分離エア装置20により気流を発生させてエア吹付け口24からエアを分離位置4aに向かって吹き付けるようにしているので、この吹付けエアによっても、転写材8を分離させることができる。これにより、前述の転写材分離部材21による転写材8の分離効果と相俟って、より効果的に転写材8の先端部を分離することができる。
【0049】
なお、転写材分離装置19は、搬送されてくる転写材8の左右方向(搬送方向と直交する方向)中心に位置するように配置することもできるし、所定数を転写材8の左右方向に所定の間隔をおいて配置することもできる。所定数の転写材分離装置19を設ける場合には、転写材分離装置19を転写材8の左右方向中心に関して左右対称に配置することが転写材8の分離を効果的に行ううえで好ましい。
また、前述の実施の形態の例では、転写材分離装置19の転写材分離エア装置20と転写材分離部材21とを一体的に設けるものとしているが、転写材分離エア装置20と転写材分離部材21とは分離して設けることもできる。
【0050】
更に、本発明は、例えば中間転写ベルト4を備えず、各感光体3Y,3M,3C,3Kつまり潜像担持体のトナー像が直接転写材8に転写される、液体現像剤を用いた画像形成装置にも適用することができる。その場合には、転写材分離装置は転写材を潜像担持体から分離するようになる。したがって、この場合の潜像担持体は本発明の転写材移動部材および液体現像剤像担持体を構成する。また、潜像担持体に転写材を圧接させるバックアップローラ(前述の例のバックアップローラ11Y,11M,11C,11Kに相当)が本発明の転写部材を構成する。
また、本発明は、4サイクルの画像形成装置にも適用することができる。更に、本発明は単色の液体現像剤を用いた画像形成装置にも適用することができる。
【0051】
更に、本発明の転写材分離装置は転写ニップ部から排出される転写材の分離に限定されることなく、定着装置の定着ニップ部から排出される転写材の定着部材(定着ローラ等)からの分離にも適用することができる。この場合には、転写材分離装置は定着ニップ部の終端より、転写材搬送方向下流側の近傍に設けられる。
要は、転写材搬送装置から転写材を分離する装置であれば、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内でどのような転写材分離装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明にかかる転写材分離装置を備えた画像形成装置の実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に示す図である。
【図2】図1に示す例の転写材分離装置の部分斜視図である。
【図3】図1におけるIII部の部分拡大図である。
【図4】図1に示す例の転写材分離装置の転写材分離部材の一例を示す斜視図である。
【図5】図1に示す例の転写材分離装置の転写材分離部材の他の一例を示す斜視図である。
【図6】(a)は図4に示す例の転写材分離部材の作動の一状態を示す図、(b)は図4に示す例の転写材分離部材の作動の他の一状態を示す図である。
【図7】(a)ないし(d)は図4に示す例の転写材分離部材の一連の作動を説明する図である。
【符号の説明】
【0053】
1…画像形成装置、2Y,2M,2C,2K…作像ユニット、3Y,3M,3C,3K…感光体、4…中間転写ベルト、4a…分離位置、8…転写材、10Y,10M,10C,10K…一次転写装置、14…二次転写装置、18…転写ベルト、19…転写材分離装置、20…転写材分離ガス装置、21…転写材分離部材、22…エアファン、23…エアダクト、24…エア吹付け口、27…転写材ベルト搬送装置、28…回転直線運動機構、29…クランク、30…クランクピン、31…連結レバー、32…直線ガイド部材、33…転写材分離部材支持軸33、34…回転軸、36…ガイド溝、37…転写材分離部材取付部材、38…分離部材クリーニング装置、39…クリーニング部材、40…クリーニング部材支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写材が圧接される転写材移動部材とともに移動してくる前記転写材の先端部を前記転写材移動部材から分離する可撓性の転写材分離部材と、
前記転写材を分離する際に前記転写材分離部材を前記転写材の先端部と前記転写材移動部材との間に進入させる転写材分離部材作動機構と、
を備えることを特徴とする転写材分離装置。
【請求項2】
前記転写材分離部材は可撓性のブラシまたは可撓性のフィルムであることを特徴とする請求項1記載の転写材分離装置。
【請求項3】
前記転写材の分離後に前記転写材の先端部が圧接かつ摺動することで、前記転写材の先端部をクリーニングするクリーニング部材を備えることを特徴とする請求項1または2記載の転写材分離装置。
【請求項4】
前記転写材分離部材作動機構はクランク機構からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の転写材分離装置。
【請求項5】
前記転写材移動部材とともに移動する前記転写材の先端にガスを吹き付けることで、前記転写材を前記転写材移動部材から分離する転写材分離ガス装置を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1記載の転写材分離装置。
【請求項6】
液体現像剤像を担持する液体現像剤像担持体に転写材を圧接しかつ前記転写材を前記液体現像剤像担持体とともに移動させることで前記液体現像剤像を前記転写材に転写する転写部材と、
前記液体現像剤像が転写された前記転写材の先端部を前記液体現像剤像担持体から分離する転写材分離装置とを少なくとも備え、
前記転写材分離装置は、前記転写材が圧接される前記液体現像剤像担持体とともに移動してくる前記転写材の先端部を前記液体現像剤像担持体から分離する可撓性の転写材分離部材と、前記転写材を分離する際に前記転写材分離部材を前記転写材の先端部と前記液体現像剤像担持体との間に進入させる転写材分離部材作動機構とを備えることを特徴とする転写装置。
【請求項7】
静電潜像を担持する潜像担持体と、前記静電潜像を液体現像剤で現像して前記潜像担持体上に液体現像剤像を形成する現像装置と、前記潜像担持体上の液体現像剤像を転写媒体に転写する第1の転写装置と、前記転写媒体上の液体現像剤像を、前記転写媒体に圧接されかつ前記転写媒体とともに移動する転写材に転写する第2の転写装置とを少なくとも備え、
前記第2の転写装置は、液体現像剤像を担持する前記転写媒体に転写材を圧接しかつ前記転写材を前記転写媒体とともに移動させることで前記液体現像剤像を前記転写材に転写する転写部材と、前記液体現像剤像が転写された前記転写材の先端部を前記転写媒体から分離する転写材分離装置とを少なくとも備え、
前記転写材分離装置は、前記転写材が圧接される前記転写媒体とともに移動してくる前記転写材の先端部を前記転写媒体から分離する可撓性の転写材分離部材と、前記転写材を分離する際に前記転写材分離部材を前記転写材の先端部と前記転写媒体との間に進入させる転写材分離部材作動機構とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
静電潜像を担持する潜像担持体と、前記静電潜像を液体現像剤で現像して前記潜像担持体上に液体現像剤像を形成する現像装置と、前記潜像担持体上の液体現像剤像を、前記潜像担持体に圧接されかつ前記潜像担持体とともに移動する転写材に転写する転写装置とを少なくとも備え、
前記転写装置は、液体現像剤像を担持する前記潜像担持体に転写材を圧接しかつ前記転写材を前記潜像担持体とともに移動させることで前記液体現像剤像を前記転写材に転写する転写部材と、前記液体現像剤像が転写された前記転写材の先端部を前記潜像担持体から分離する転写材分離装置とを少なくとも備え、
前記転写材分離装置は、前記転写材が圧接される前記潜像担持体とともに移動してくる前記転写材の先端部を前記潜像担持体から分離する可撓性の転写材分離部材と、前記転写材を分離する際に前記転写材分離部材を前記転写材の先端部と前記潜像担持体との間に進入させる転写材分離部材作動機構とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−175590(P2009−175590A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16082(P2008−16082)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】