説明

転写箔及びIDカード

【課題】 層間剥離を向上させることで、偽造、変造防止等の安全性(セキュリティ)が高まると同時に、従来方式に比し、カード材とホログラム層等光学変化素子層とが剥離し易いという欠点を防止でき、キズやシワの発生を防止でき、長期保存により耐久性の高い転写箔、及び個人認証カードを提供することを目的とする。
【解決手段】 接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に層間剥離強度が、
接着層−樹脂層A間の剥離強度<接着層−樹脂層B間の剥離強度
の関係を満たす樹脂層Bを樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とする転写箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造、変造防止等の安全性(セキュリティ)が要求される個人情報等を記憶する接触式又は非接触式の電子または磁気等のカード、あるいはシートに適用して好適な画像記録体、転写箔、転写箔ロール、画像記録体作製方法、転写箔製造方法及び個人認証カードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば銀行、会社、学校及び官公庁等のサービス産業分野では、接触式又は非接触式の電子または磁気等のカードを発行する場合が多くなってきた。これらの分野で使用されるキャッシュカード、従業者証、社員証、会員証、学生証、外国人登録証及び各種免許証等には個人情報が記録されるために、容易に偽造、変造できないようにセキュリティ処理が施されている。
【0003】
例えば、カード基板上にホログラム層を設け、顔写真や氏名、発行日などを容易に模倣されないように特殊な画像が形成されている。この画像は、回折格子像や一般にホログラム像と呼ばれる像が形成され、このホログラム像は物体から反射又は物体を透過してきた波動と参照波とを重ね合わせて得られる干渉縞によって形成されるものである。このホログラム像によって物体の像が立体的に再現されるものもある。ホログラム層上は光透過性の良いシート状の保護シートによって覆われ、この保護シートにはラミネートなどの透明樹脂が使用され、カード基板よりも強度的に弱いホログラム層を覆うように保護される。
【0004】
しかしながら、ホログラム層等の光学変化素子を有する層を故意に剥がしたり、カードに記載された固有情報を書き換える問題も多発している。
【0005】
通常、例えば特許文献1に記載されたように、ホログラム層等光学変化素子を有するIDカードは、所定領域に、カード使用者の個人情報や、顔写真等画像が記録されたカード材表面に、光学変化素子を有する転写箔からホログラム層を転写し接着して作製する。
【0006】
しかしながら、これらの光学変化素子を有する個人認証カード等の画像記録体は、光学変化素子を有する層等が剥がれやすく、偽造という観点で、更に改良が必要であり、また、特に顔写真付きの社員証や免許証等においては、画像上に傷が付き本人確認できなくなることを避けるために、製造工程において、カードの表面上でのひっかき傷やシワの発生を防ぎ、スクラッチ耐性、耐溶剤性等についても更に改善が必要であった。
【0007】
このような光学変化素子を有する層或いは基材をカード材に転写し、密着させるためには、接着層により、光学変化素子を有する基材をカード材と密着させる。しかしながら、接着剤層単独で、カード材と、光学変化素子層両方に充分な密着力をとるのは、かなり難しい。これは光学変化素子層材料と、カード材材料が化学的な親和性という面で必ずしも近似したものではないため、カード材と密着のよい接着剤が、必ずしも光学変化素子層との密着がよくない(或いは逆)という現象が生じるためである。そのため、例えば前記特許文献1にも、接着層と光学変化素子層との間にとの間に両方の層に親和性の高い樹脂を用いた中間層を設けた例が開示されている。しかしながら、単にこれのみでは、化学的また物理的に特性の異なるそれぞれの層の両方に親和性が高く密着性のよい樹脂の選択は難しく、光学変化素子を有する層のカード表面からの剥離性という面で充分な性能が得られているとは言い難い。
【特許文献1】特開2001−96956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は上述した課題を解決したものであって、層間剥離を向上させることで、偽造、変造防止等の安全性(セキュリティ)が高まると同時に、従来方式に比し、カード材とホログラム層等光学変化素子層とが剥離し易いという欠点を防止でき、キズやシワの発生を防止でき、長期保存により耐久性の高い転写箔、及び個人認証カードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1)
接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に層間剥離強度が、
接着層−樹脂層A間の剥離強度<接着層−樹脂層B間の剥離強度
の関係を満たす樹脂層Bを、樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とする転写箔。
【0010】
(請求項2)
樹脂層Aと樹脂層Bに、1種以上の同一成分、又は構成するモノマー種が同一であるポリマー成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の転写箔。
【0011】
(請求項3)
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項1に記載の転写箔。
【0012】
(請求項4)
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項2に記載の転写箔。
【0013】
(請求項5)
請求項1〜4のいずれか1項に記載の転写箔を転写して作製したことを特徴とするIDカード。
【0014】
(請求項6)
接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に、層間剥離強度が、
接着層−樹脂層A間の剥離強度<接着層−樹脂層B間の剥離強度
の関係を満たす樹脂層Bを、樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とするIDカード。
【0015】
(請求項7)
樹脂層Aと樹脂層Bに、1種以上の同一成分、又は構成するモノマー種が同一であるポリマー成分を含有することを特徴とする請求項6に記載のIDカード。
【0016】
(請求項8)
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項6に記載のIDカード。
【0017】
(請求項9)
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項7に記載のIDカード。
【0018】
(請求項10)
接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に溶解性パラメータ(SP)値が、|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Aを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値|>|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Bを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値|
の関係を満たす樹脂層Bを、樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とする転写箔。
【0019】
(請求項11)
樹脂層Aと樹脂層Bに、1種以上の同一成分、又は構成するモノマー種が同一であるポリマー成分を含有することを特徴とする請求項10に記載の転写箔。
【0020】
(請求項12)
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項10に記載の転写箔。
【0021】
(請求項13)
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項11に記載の転写箔。
【0022】
(請求項14)
請求項10〜13のいずれか1項に記載の転写箔を転写して作製したことを特徴とするIDカード。
【0023】
(請求項15)
接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に溶解性パラメータ(SP)値が、|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Aを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値|>|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Bを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値|
の関係を満たす樹脂層Bを、樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とするIDカード。
【0024】
(請求項16)
樹脂層Aと樹脂層Bに、1種以上の同一成分、又は構成するモノマー種が同一であるポリマー成分を含有することを特徴とする請求項15に記載のIDカード。
【0025】
(請求項17)
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項15に記載のIDカード。
【0026】
(請求項18)
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項16に記載のIDカード。
【発明の効果】
【0027】
本発明によって、従来方式に比し、長期保存によっても剥離しにくく、キズやシワの発生が少ない、耐久性の高い、偽造、変造防止等の安全性(セキュリティ)に優れた、画像記録体としての個人認証カード(IDカード)、また、個人認証カード(IDカード)を得ることの出来る転写箔を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0029】
以下、この発明に係わる画像記録体、転写箔、転写箔ロールを用いた画像記録体(IDカード)の製造の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。図1は本発明のIDカードを作製する画像記録体作製装置の一例を示す概略構成図である。図2に画像記録体(IDカード)の層構成を示す。
【0030】
この形態の画像記録体作製装置1には、上方位置にカード材供給部10及び情報記録部20が配置され、下方位置に、光学変化素子付与部40、活性光線硬化層付与部及び/又は活性光線照射部90が配置され、画像記録体としてカードを作製するが、シートも作製することもできる。
【0031】
カード材供給部10には、カード使用者の個人情報を書き込むために予め枚葉状にカットされた複数枚のカード材50が、顔写真を記録する面を上に向けてストックされている。この例では、カード材50が支持体51と情報担持層52からなり、このカード材50は1枚づつカード材供給部10から所定のタイミングで自動供給される。
【0032】
情報記録部20には、イエローリボンカセット21、マゼンタリボンカセット22、シアンリボンカセット23、ブラックリボンカセット24が配置され、それぞれに対応して記録ヘッド25〜28が配置されている。イエローリボン、マゼンタリボン、シアンリボン等の熱転写シートによる熱転写で、50が移動されている間に、その情報担持層52の所定領域にカード使用者の顔写真等の諧調を有する画像領域53が記録される。また、文字リボンカセット31及び記録ヘッド32が配置され、文字リボン等の熱転写シートによる熱転写で、その氏名やカード発行日等の個人認証識別情報54が記録され、画像記録層が形成される。
【0033】
光学変化素子付与部40では、転写箔カセット41が配置され、この転写箔カセット41に対応して熱転写ヘッド42が配置されている。43は光学素子転写箔である。
【0034】
光学素子転写箔43とは、基材上に、ホログラム画像等のを組み込んだものであり、これらにより、画像記録層が形成されたカード材上に、光学変化素子転写層を熱転写して、光学変化素子転写層430が設けられる。
【0035】
その後、活性光線硬化層付与部及び/又は活性光線照射部90により活性光線硬化層650が塗布され、活性光線により露光が行なわれ、図2の構成の画像記録体の層構成が得られ、光学変化素子転写層430上に活性光線硬化層650が設けられる。
【0036】
本発明はこの実施の形態の説明及び図面に限定されるものではなく、要は、IDカード基体となる画像記録体に、ホログラム層等光学変化素子層を有する転写箔を接着積層してIDカードを形成する方法であれば構わない。IDカード形成のためのその他の方法は例えば、前記特開2001−96956号公報に詳しい。
【0037】
また、光学変化素子層に活性光線硬化樹脂層(後述する)を加えたり、予め剥離層と、光学変化素子層との間に、活性光線硬化樹脂層を少なくとも一層含む転写箔を構成することで、透明保護層として活性光線硬化樹脂層を有する転写箔そしてIDカードを得ることが出来る。
【0038】
この場合、前記図1における画像記録体作製装置において活性光線硬化層付与部及び/又は活性光線照射部90は備えられていなくともよく、光学変化素子付与部40において、硬化型樹脂層を有する光学変化素子転写箔を転写することで、活性光線硬化性樹脂硬化層を光学変化素子層表面に設けた画像記録体(IDカード)が得られる。
【0039】
このように、顔写真等の画像や、氏名やカード発行日等の認証識別情報を記録したカード材に、光学変化素子転写箔を転写することで、光学変化素子層表面に設けた画像記録体(IDカード)を得る。
【0040】
このように、光学変化素子転写箔とは、通常は、画像を保護する透明保護層を形成するための保護転写箔に、ホログラム画像等の光学変化素子層を組み込んだ基材である。
【0041】
光学変化素子転写箔43の実施の形態を図3に示す。図3(a)の光学変化素子転写箔43は光学変化素子転写層430と支持体43bから構成され、光学変化素子転写層430は剥離層43a1、光学変化素子層43a2、接着層43a3から構成され、光学変化素子層43a2の両側に剥離層43a1、接着層43a3が設けられ、剥離層43a1が支持体43bに接着されている。
【0042】
また、図3(b)の光学変化素子転写箔43は図3(a)の転写箔と同様に構成されるが、接着層43a3と光学変化素子層43a2との間に、光学変化素子層43a2と接着層43a3との膜付きをよくするために、樹脂層である中間層43a4が設けられている。
【0043】
これらの光学変化素子転写箔43において、光学変化素子転写層430が支持体43bから剥離して、カード材に転写される。
【0044】
光学変化素子転写箔は、従って、少なくとも、支持体に、剥離層、光学変化素子層、接着層の順に積層された構成であり、あるいは少なくとも、光学変化素子層、接着層の間に中間層として樹脂層が順に積層された構成である。
【0045】
光学変化素子転写箔は、図3(c)また、剥離層と光学変化素子層の間に、透明保護層を有してもよ、また該透明保護層がに示されるように、硬化透明保護層43a5であってもよい。
【0046】
硬化透明保護層は、紫外線硬化層または電子線硬化層等からなる少なくとも1つの透明保護層であってもよく、カード全面に転写箔から熱転写さることが表面保護性、表面摩耗耐久性に優れ好ましい。
【0047】
また、光学変化素子層が、凹凸像を有するハードコート層、蒸着層であることが、より偽変造防止の効果があり好ましい。
【0048】
さらに、光学変化素子転写箔のいずれかの層に、帯電防止剤が含有されていることが好ましく、ゴミが付着しないカード、あるいはシートを作製できる。
【0049】
また転写箔は、少なくとも片側の中心線平均粗さ(Ra)で0.05〜0.5μmの範囲の支持体を用い、また支持体上に転写層を設けた転写箔において、未転写側の中心線平均粗さ(Ra)で0.05〜0.5μmの範囲の支持体を用いることができる。さらに転写箔は、図10に示すように、コア60として保存されるが、このコア60にかかる巻き取り張力が0.6〜7kgの範囲であり、長期保存により接着することを防止することができる。
【0050】
本発明に係わる画像記録体(IDカード)は、所定領域に、カード使用者の個人情報や、顔写真等画像が記録されたカード材表面に、前記光学変化素子転写箔から光学変化素子層を転写し接着して作製する。
【0051】
一方、画像記録体を構成するカード材について説明する。
【0052】
この画像要素は、支持体となる基材上に、顔画像等の認証識別画像、属性情報画像、フォーマット印刷から選ばれる少なくとも一つが設けられた情報担持層を形成したものである。
【0053】
顔画像に代表される認証識別画像の形成方法としては、階調画像形成に有利である銀塩写真方式や溶融熱転写記録方式、インクジェット方式や昇華型感熱転写記録方式が挙られ、近年は運転免許証に代表されるように後者が一般的になっている。属性情報とは氏名、住所、生年月日、資格等であり、属性情報は通常文字情報として記録され溶融型感熱転写記録方法が一般的である。フォーマット印刷は基体上又は昇華型感熱記録方式に用いられる受像層上に樹脂凸版印刷、平版印刷、シルク印刷等の印刷方法により施す。絵柄層としては印刷物、ホログラム、バーコード、マット調柄、細紋、地紋、凹凸パターンなどで適時選択され、可視光吸収色材、紫外線吸収材、赤外線吸収材、蛍光増白材、金属蒸着層、ガラス蒸着層などからなる。中間層としての機能は、被転写体の凹凸を吸収するためのクッション機能や、転写後の絵柄層を保護する目的で樹脂硬化機能として光硬化樹脂層、熱硬化樹脂層が付加される。
【0054】
転写箔の被転写材への転写は通常サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプマシンなどの加熱しながら加圧を行える手段を用い転写を行う。
【0055】
この発明の識別情報又は書誌情報を有する層である受像層は、その表面に少なくとも昇華性色素等による識別情報画像を形成し得るものが好ましい。その構成は、昇華型熱転写インクシートにおけるインク層から、加熱により拡散してくる昇華性色素を受容することができる限り特に制限がなく、基本的にバインター及び必要に応じて各種の添加剤で形成される。受像層の厚みは、一般に1〜50μm、好ましくは2〜20μm程度である。
【0056】
受像層用のバインダーとしては、塩化ビニル系樹脂、ポリエテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニールアセタール系等各種の樹脂を使用することができるが、画像保存性などの点において、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂又はポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂が好ましい。他に、ポリエステル系樹脂も昇華型感熱転写用の受像層として好適に用いることができる。
【0057】
受像層には、添加剤として、剥離剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料を添加しても良い。また増感剤として可塑剤、熱溶剤等を添加しても良い。このような剥離剤としては、シリコーンオイル(シリコーン樹脂と称されるものも含む);ポリエチレンワックス、ポリブロビレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固型ワックス類;弗素系、燐酸エステル系の界画活性剤等が挙げられ、中でもシリコーンオイルが好ましい。
【0058】
酸化防止剤としては、特開昭59−182785号、同60−130735号、特開平1−127387号公報等に記載の醜化防止剤、及び写真その他の面像記録材料における画像耐久性を改善するものとして公知の化合物を挙げることができる。
【0059】
紫外線吸収剤および光安定剤としては、特開昭59−158287号、同63−74686号、同63−145089号、及び写真その他の画像記録材料における画像耐久性を改善するものとして公知の化合物を挙げることができる。
【0060】
フィラーとしては、シリカゲル、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸性白土、活性白土、アルミナ等の無機微粒子やフッ素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子等の有機樹脂粒子を挙げることができる。
【0061】
顔料としては、代表例としてチタンホワイト、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、カオリン、活性白土、酸性白土などを拳げることができる。
【0062】
また、本発明のIDカードにおいては、カード材上に、フォーマット情報を印刷した後、少なくともフォーマット情報の印刷領域上に、透明樹脂層を印刷で設けてよい。
【0063】
これらの透明樹脂層は、OP(オーバープリント)ニス層とも呼ばれ、各種のOPニス層組成物が好適に利用でき、オフセット印刷機、凸版印刷機、グラビア印刷機、専用のニス引き機等によって受像層表面に塗布される。
【0064】
本発明で用いることのできるOPニス層の組成物を例示すると、例えば、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、水添ロジンエステル等の樹脂と、アマニ油、シナキリ油、脱水ヒマシ油等の乾性油、さらに、コバルトドライヤ、また必要に応じ、ゲル化剤、体質顔料等の添加剤を加えたもの、また、低重合度の塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル酸エステル・スチレン共重合樹脂、さらに、コロイダルディスパージョン、またはエマルジョンの形で使用される各種アクリル共重合樹脂、高酸価のロジンマレイン酸樹脂、セラミック及びその誘導体等の樹脂、アルコール類やセロソルブ類等の補助剤、また必要に応じ、水溶化剤、可塑剤、ワックス、防湿剤等の添加剤を加えたもの、あるいは、ポリイソシアネートポリマーとポリオールからなる熱硬化性のポリウレタン系の熱硬化型OPニス組成物等を挙げることができる。
【0065】
また、OPニス組成物は活性エネルギー線硬化型OPニス組成物であってもよい。通常使用されているオフセット印刷用活性エネルギー線硬化型OPニス組成物、シルクスクリーン印刷用活性エネルギー線硬化型OPニス組成物、凸版印刷用等活性エネルギー線硬化型OPニス組成物等を用いることができる。このような活性エネルギー線硬化型OPニス組成物は、基本的に、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーからなる活性エネルギー線硬化性樹脂成分を含有し、必要に応じて、光硬化開始剤、樹脂、増感剤、体質顔料、その他の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0066】
活性エネルギー線硬化型OPニス組成物に使用され得る光硬化開始剤としては、一般的に市販される光硬化開始剤増感剤等を使用することができる。
【0067】
活性エネルギー線硬化型OPニス組成物に配合され得る樹脂は、OPニス組成物皮膜強度の向上、印刷用紙への当該ニスの固着性の向上等の目的で必要に応じて使用されるものである。そのような樹脂としては、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、さらには、(メタ)アクリル酸で変成された樹脂等を用いることもできる。(メタ)アクリル酸変成樹脂としては、一分子内に(メタ)アクリロイル基を有するウレタン系(メタ)アクリレート、エポキシ系(メタ)アクリレート、ポリオール系(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0068】
その他、受像層上には、受像層と熱転写記録用インクシートのインク層との融着防止をより効果的にするため、受像層の表面に剥離剤を含有する剥離層がさらに積層されていても良い。この剥離層の厚みは、通常0.03〜2.0μmである。また、IDカード用支持体と受像層との間にクッション層或いはバリヤー層を設けることもできる。その他、特開平07−1173б7号、同08−324117号、同08−282196号、同09−44065号等に記載されている画像記録層も使用することができるがこれに制限されない。
【0069】
昇華画像形成方法は、昇華型感熱転写記録用インクシートを用いる。昇華型感熱転写記録用インクシートは、支持体とその上に形成された昇華性色素含有インク層とで構成することができる。
【0070】
この支持体としては、寸法安定性がよく、感熱ヘッドでの記録の際の熱に耐える限り特に制限がなく、従来から公知のものを使用することができる。
【0071】
昇華性色素含有インク層としては、基本的に昇華性色素とバインダーとを含有する。昇華性色素としてはシアン色素、マゼンタ色素およびイエロー色素を挙げることができる。シアン色素としては、特開昭59−78896号公報、同59−227948号公報、同60−24966号公報、同60−53563号公報、同60−130735号公報、同60−131292号公報、同60−239289号公報、同61−19396号公報、同61−22993号公報、同61−31292号公報、同61−31467号公報、同61−35994号公報、同61−49893号公報、同61−148269号公報、同62−191191号公報、同63−91288号公報、同63−91287号公報、同63−290793号公報などに記載されているナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、アゾメチン系色素等が挙げられる。
【0072】
マゼンタ色素としては、特開昭59−78896号公報、同60−30392号公報、同60−30394号公報、同60−253595号公報、同61−262190号公報、同63−5992号公報、同63−205288号公報、同64−159号公報、同64−63194号公報等の各公報に記載されているアントラキノン系色素、アゾ色素、アゾメチン系色素等が挙げられる。イエロー色素としては、特開昭59−78896号公報、同60−27594号公報、同60−31560号公報、同60−53565号公報、同61−12394号公報、同63−122594号公報等の各公報に記載されているメチン系色素、アゾ系色素、キノフタロン系色素およびアントライソチアゾール系色素が挙げられる。
【0073】
また、昇華性色素として特に好ましいのは、開鎖型または閉鎖型の活性メチレン基を有する化合物をp−フェニレンジアミン誘導体の酸化体またはp−アミノフェノール誘導体の酸化体とのカップリング反応により得られるアゾメチン色素およびフェノールまたはナフトール誘導体またはp−フェニレンジアミン誘導体の酸化体またはp−アミノフェノール誘導体の酸化体のとのカップリング反応により得られるインドアニリン色素である。
【0074】
また、受像層中に金属イオン含有化合物が配合されているときには、この金属イオン含有化合物と反応してキレートを形成する昇華性色素を、昇華性色素含有インク層中に含めておくのが良い。このようなキレート形成可能な昇華性色素としては、例えば特開昭59−78893号公報、同59−109349号公報、同特願平2−213303号、同2−214719号、同2−203742号に記載されている、少なくとも2座のキレートを形成することができるシアン色素、マゼンタ色素およびイエロー色素を挙げることができる。キレートの形成可能な好ましい昇華性色素は、下記一般式で表わすことができる。
【0075】
1−N=N−X2−G
ただし、式中X1は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族の炭素環、または複素環を完成するのに必要な原子の集まりを表わし、アゾ結合に結合する炭素原子の隣接位の少なくとも一つが、窒素原子またはキレート化基で置換された炭素原子である。X2は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族複素環または、芳香族炭素環を表わす。Gはキレート化基を表わす。
【0076】
いずれの昇華性色素に関しても前記昇華性色素含有インク層に含有される昇華性色素は、形成しようとする画像が単色であるならば、イエロー色素、マゼンタ色素、およびシアン色素の何れであっても良く、形成しようとする画像の色調によっては、三種の色素のいずれか二種以上もしくは他の昇華性色素を含んでいても良い。昇華性色素の使用量は、通常、支持体1m2当たり0.1〜20g、好ましくは0.2〜5gである。インク層のバインダーとしては特に制限がなく従来から公知のものを使用することができる。さらに前記インク層には、従来から公知の各種添加剤を適宜に添加することができる。昇華型感熱転写記録用インクシートは、インク層を形成する前記各種の成分を溶媒に分散ないし溶解してなるインク層形成用塗工液を調製し、これを支持体の表面に塗工し、乾燥することにより製造することができる。かくして形成されたインク層の膜厚は、通常、0.2〜10μmであり、好ましくは、0.3〜3μmである。
【0077】
次に、本発明に係わる転写箔について説明する。
【0078】
本発明の転写箔においては、これまでの転写箔と異なり、以下の如く接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に、層間剥離強度が、
接着層−樹脂層A間の剥離強度<接着層−樹脂層B間の剥離強度
の関係を満たす樹脂層Bを樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とする。
【0079】
剥離強度の関係を以上のようにすることで、光学変化素子層の密着を、直接、後述する接着層により、或いは、単独の樹脂層のみを介してカード材に密着させるよりも、より密着性に優れたカードが得られる。
【0080】
転写箔の支持体としては、耐熱性を有するポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフトール、ABS樹脂などのプラスチックフィルム支持体の片面上に最下層として剥離層を設け最上層として接着層が設けられており必要に応じ剥離層と接着層の間には絵柄層、例えば前記光学変化素子層、中間層などが設けられている。プラスチックフィルム支持体の厚みは通常3〜50μmで好ましくは10〜30μmである。
【0081】
本発明に係わる転写箔の剥離層としては、高ガラス転移温度を有するアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ボリビニルブチラール樹脂などの樹脂、ワックス類、シリコンオイル類、フッ素化合物、水溶性を有するポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、Si変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース樹脂、ヒドロキシセルロース樹脂、シリコン樹脂、パラフィンワックス、アクリル変性シリコーン、ポリエチレンワックス、エチレン酢酸ビニルなどの樹脂が挙げられ、他にポリジメチルシロキサンやその変性物、例えばポリエステル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、アルキッド変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等のオイルや樹脂、またはこの硬化物、等が挙げられる。他のフッ素系化合物としては、フッ素化オレフィン、パーフルオロ燐酸エステル系化合物が挙げられる。好ましいオレフィン系化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の分散物、ポリエチレンイミンオクタデシル等の長鎖アルキル系化合物等が挙げられる。これらの離型剤で溶解性の乏しいものは分散するなどして用いることができる。
【0082】
また、シリコーン化合物と同様に他のポリマーに付加させることも可能である。この他シリカ粒子や窒化ホウ素等の微細(ミクロンまたはサブミクロンオーダー)な粒子なども有効である。厚みは0.1〜2μmが好ましい。
【0083】
本発明に係わる転写箔の接着層としては、熱貼着性樹脂としてエチレン酢酸ビニル樹脂、エチンエチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、アイオノマー樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、粘着付与剤(例えばフェノール樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂など)などが挙げられそれらの共重合体や混合物でもよく、厚みは0.1〜10μmが好ましい。
【0084】
具体的には、ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体としては東邦化学工業(株)製のハイテックS−6254、S−6254B、S−3129等が市販され、ポリアクリル酸エステル共重合体としては日本純薬(株)製のジュリマーAT−210、AT−510、AT−613、互応化学工業(株)製のプラスサイズL−201、SR−102、SR−103、J−4等が市販されている。ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体とポリアクリル酸エステル共重合体の質量比は9:1から2:8が好ましく、接着層の厚みは0.1〜1.0μmが好ましい。
【0085】
本発明において、光学変化素子(Optical Variable Device:OVD)とは、1)キネグラムのような回析格子の2次元のCG画像であり、線画像構成の画像が移動、回転、膨張、縮小等自由に動き変化する点に特徴があるもの、2)Pixelgramのような画像がポジとネガに変化する特徴があるようなもの、3)OSD(Optical Security Device)のような色が金色から緑色に変化するもの、4)LEAD(Long Lasting Economical Anticopy Device)のような像画が変化して見えるもの、5)ストライブ型OVD、6)金属箔等を表し、日本印刷学会誌(1998年)第35巻第6号P482〜P496記載に有るような用紙の素材、特殊な印刷技法、特殊インキ等でセキュリティを維持してもよい。この発明においては、ホログラムがとくに好ましい。
【0086】
本発明で用いるホログラムは、レリーフホログラム、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザー再生ホログラム、リップマンホログラム、レインボーホログラム等の白色再生ホログラム、カラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチフレックスホログラム、ホログラムフレックステレオグラム、ホログラフィック回折格子等任意に採用できる。
【0087】
光学変化素子層は、例えばホログラムシートを接着することによって形成することができる。ホログラムシートとしては、レリーフ型ホログラムシートを使用することができる。レリーフ型ホログラムシートは、支持体フィルム上にホログラム形成層とホログラム効果層とをこの順に積層してなる。具体的に言うと、ホログラムシートは、例えばポリエチレンテフタレートフィルム等の支持体フィルムの表面に、常温で固体であり、しかも熱形成性を有する樹脂層、例えば常温で固体の熱可塑成性の電子線硬化性樹脂層(ホログラム形成層)を形成し、この面にホログラムの干渉模様が凹凸状に形成されているホログラム原版を加圧圧縮させて、凹凸形状を樹脂表面に転写し、硬化し、さらに凹凸形状の表面に十分な透明性とある角度での大きな反射性を兼ね備え、かつホログラム形成層と屈折率が異なる材料(たとえばTiO2、SiO2、ZnSの蒸着膜)からなる薄膜のホログラム効果層を形成することによって得ることができる。昼光、照明光等の白色光で像が再生されるホログラムは、通常の状態でもホログラム像が観察されるので、装飾性にも優れている。一方、レーザー光によって像が再生されるタイプのものは、改ざんの発見性に優れている。
【0088】
また、その他の屈折率の変化をする層としてビーズ保有層を用いることができる。
【0089】
ビーズ保有層としては、入射光の一部に位相差を付与して再合成し、特定波長領域の光成分を干渉させることにより強調し入射光とは異なる色調の着色光を入射光進行方向へ帰還させ、反射基板と、基板上に整列配列された透明なビーズとを有する。
【0090】
ビーズを有するビーズ保有層は、反射基板上に樹脂層を設け、更にその表面側にガラス等によりなるビーズ径5〜80μmのビーズを多数整列配置して構成される。外方より入射した入射光は、ビーズ内に進行し、少なくともその一部は透明なビーズより樹脂層を介して反射基板に反射され、再度ビーズに帰還し、外方へ進行する。ビーズの外方へと出している面は球面であるので、入射角の多少の変動があっても同様な作用を生じ、入射方向へ反射光をp帰還させることができる。
【0091】
光学変化素子層は、金属酸化物を有する微粒子のような高虹彩反射性をもつ顔料を使用したり、上記ホログラムシートと併用してもよい。
【0092】
高虹彩反射性をもつ顔料としては、雲母に屈折率の高い透明金属酸化物を被覆したパール顔料があげられる。金属酸化物としては、PbO,ZnS,Fe23,Sb23,ZnSe,CdS,Bi23,TiO3,SiO,ZnO,CdO,Sb23,Nd23,Ta25などの単層被覆、または多層被覆により得ることができる。雲母と金属酸化物の屈折率比が大きいことから高虹彩反射性効果を得ることができ、粒子が鱗片状を有することで反射率を高め複屈折を助長することで高い高虹彩反射性効果を得ることができる。例えば、パール顔料を樹脂と混合し光学変化素子層としたり、インキ化し紋様を設けたりホログラムシートに積層することができる。
【0093】
これらの転写箔に用いられる、接着剤層は、個人識別情報、書誌情報又は画像等を有するカード材表面の樹脂層と接着性のよいことが必要である。個人識別情報、書誌情報又は画像等を有するカード材表面の樹脂は、昇華型熱転写インクシートにおけるインク層から加熱により拡散してくる色材を受容する受像層のバインター樹脂等であり、例えば、前記の塩化ビニル系樹脂、ポリエテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニールアセタール系等各種の樹脂、特に画像保存性などの点において良好な、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂又はポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹等が用いられる。また個人識別情報、書誌情報等の部分印刷されたOPニス層等の表面に対しても接着性のよいことが必要である。
【0094】
接着剤層の樹脂として具体的には、例えば、前記のウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体(東邦化学工業(株)製 ハイテックS−6254、S−6254B、S−3129等)、また、日本純薬株式会社製ジュリマーAT−510等が挙げられるが、これ等の樹脂を用いて接着剤層を形成し、転写箔をカード材と密着させて、カード材上に、光学変化素子層を転写して、ホログラム層有する画像記録体(IDカード)を形成する際に、これらの接着剤層により、前記ホログラム層等光学変化素子層を形成する樹脂層と、カード材表面の両方に強い密着性(接着)を確保することは、実際上は、難しいことであった。
【0095】
そこで、前記図3(b)の如く、光学変化素子層と接着層との間に中間層を設け、カード材に接着性を確保しつつ、光学変化素子層との密着性(接着性)を同時に強固にしようとの試みが行われている。
【0096】
これら中間層として、具体的な化合物として、ポリスチレンとポリオレフィンのブロックポリマーからなる熱可塑性樹脂、ポリビニルブチラール等が好ましい。特に重合度に限定はないが、重合度が1000以上のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、これらの樹脂としては、積水化学工業(株)製のエスレックBH−3、BX−1、BX−2、BX−5、BX−55、BH−S、電気化学工業(株)製のデンカブチラール#4000−2、#5000−A、#6000−EP等樹脂が市販されているものが用いられる。これら樹脂層のポリブチラールの熱硬化樹脂の熱硬化にはイソシアネート硬化剤やエポキシ硬化剤等を用いることができ、熱硬化条件は50〜90℃で1〜24時間が好ましい。樹脂層A又はBの厚みは0.1〜1.0μmが好ましい。
【0097】
これらの樹脂を中間層として用いることにより、前記接着層と光学変化素子層との親和性密着性は改良されるが、前記ホログラムを形成する層を構成する樹脂と、カード材表面、例えば受像層またはOPニス層等、を構成する樹脂の、物理的、或いは化学的性質(親和性)がかなり異なるために、接着層、光学変化素子層間に単一の樹脂層を設けて、光学変化素子層と接着層との密着性、また、接着層と、カード材表面との両者に対して共に高い接着力(密着力)を確保するのは、尚、難しかった。
【0098】
従って本発明においては、転写箔から光学変化素子を、カード材上に転写して、接着層により、これをカード材に密着させ、IDカードを形成する際に、前記中間層を構成する樹脂層を、樹脂層Aおよび樹脂層Bの少なくとも2つの異なる樹脂層により構成する。樹脂層Aには、ホログラム層等の光学変化素子層と親和性が高く密着のよい樹脂を用い、また、この樹脂層Aに親和性が高く、かつ、カード材表面或いは、例えば受像層等のカード材表面層に、これらのホログラム層を密着させる接着剤層と親和性が高い樹脂Bを組み合わせることが好ましい。勿論樹脂層Aおよび樹脂層Bの間に、段階的に性質を変化させた幾つかの樹脂層を設けてもよい。
【0099】
これら樹脂層を構成する具体的な化合物としては、前記中間層で挙げられた、ポリスチレンとポリオレフィンのブロックポリマーからなる熱可塑性樹脂、ポリビニルブチラール等、特に重合度が1000以上のポリビニルブチラール樹脂等があげられ、例えば、積水化学工業(株)製のエスレックBH−3、BX−1、BX−2、BX−5、BX−55、BH−S、電気化学工業(株)製のデンカブチラール#4000−2、#5000−A、#6000−EP等ある。また、ポリブチラールの熱硬化樹脂としては、熱硬化前の重合度に限定はないが、低重合度の樹脂が好ましく、熱硬化にはイソシアネート硬化剤やエポキシ硬化剤等を用いる。
【0100】
従って、本発明においては、これらの樹脂層の中から、前記接着層樹脂、例えば、
ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体(東邦化学工業(株)製 ハイテックS−6254、S−6254B、S−3129等)との間での別途定義する接着強度が、
接着層−樹脂層A間の剥離強度<接着層−樹脂層B間の剥離強度
となるように、樹脂層A、樹脂層Bを選択することで、光学変化素子層(ホログラム層)がカード機材から剥がれにくくなり、剥離強度が改善される。
【0101】
例えば、樹脂層Aを構成する樹脂としては、光学変化素子層に親和性の高い樹脂を選べばよく、前記ポリビニルブチラールであれば、例えば、エスレックBX−1等を挙げることが出来、また樹脂層Bを構成する樹脂としては、例えば、エスレックBL−S等を挙げることが出来る。また、これら樹脂層A、Bを構成する樹脂として、各々の樹脂層と接着剤層の剥離強度に関し、樹脂の配合により前記の関係を有するようにそれぞれの層を構成してもよい、例えば、前記BX−1;BL−Sの比を変えることにより、樹脂層A、樹脂層Bをそれぞれ構成してもよい。例えば、樹脂層Aとしては、エスレックBX−1:エスレックBL−S=4:1等の構成からなる樹脂組成を、また樹脂層Bとしては、エエスレックBL−S:スレックBX−1=5:1等からなる樹脂組成を、というように2種の樹脂材料の混合比率を変えて、各樹脂層を構成してもよい。
【0102】
上記において、樹脂層と接着層の密着力をはかる剥離強度の測定としては、樹脂層Aそして樹脂層Bそれぞれと接着層に用いる接着剤組成物を用いて以下のようにして測定する。即ち、先ず、用いる接着剤層をこれと密着性のよい、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム基材上に厚み10μmで塗布する。次いで、接着層上に、更に、樹脂層Aまたは樹脂層B組成物を10μmの厚みで塗布・形成した試料をそれぞれ用意する。よく乾燥後、面積を10cm×10cmの大きさに断裁した後、アクリル系テープ(住友スリーエム製Scotch超強力テープ)を用いて、この両全面をよく接着する。この2つのセロファンテープをフィルム面に対し垂直方向に、互い反対方向に力をかけて引っ張り、接着層と、樹脂層とが剥離する強度(N/cm2)をそれぞれ測定する。セロファンテープ
これら樹脂層A、Bについて、それぞれ光学変化素子層、また、接着層即ちカード材との密着性がよいものを選択することは前記の如く重要であると同時に、樹脂層A、B間の密着がよいことが同様に必要であり、そのためには、樹脂層A,B、両方の層の接着性を向上させる1種以上の共通の成分すなわち、同一化合物成分、または、樹脂層A、Bそれぞれに、両方の層と相溶性がある、その構成成分として同一モノマー種を有するポリマーをアンカー物質として含有させることが好ましい。これにより、樹脂層A、B間の接着強度が増し好ましい。
【0103】
これらの共通の同一成分とは例えば、両方の層を構成する樹脂と相溶性のある成分ならば、低分子化合物、高分子化合物(ポリマー)等、限定はないが、低分子化合物であれば、通常、可塑剤として用いられる溶解性パラメータ値で16.0〜22.0((MPa)1/2)の範囲である、低分子化合物あるいは高分子化合物(ポリマー)をあげることが出来る。
【0104】
低分子化合物としては、高沸点(200℃以上)を有する化合物、通常ポリマーの可塑剤として用いられている化合物、例えば、
リン酸エステル類、フタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類等の可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等が挙げられる。
【0105】
また、高分子化合物(ポリマー)であれば、前記範囲の溶解度パラメータを有する材料が挙げられるが、特に好ましいモノは、(メタ)アクリル系ポリマー、アクリルアミド系ポリマー、また、アクリル酸エステル/スチレン共重合体、また、塩化ビニル/アクリル酸エステル/スチレン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0106】
また、各種樹脂に対するエラストマー、例えば、水添スチレン系熱可塑性エラストマータフテックMシリーズ等も好ましい。また、前記樹脂層AまたはB中の樹脂に対し変性効果を有するものでもよく、例えば、タフテックM−1913(旭化成(株)製)等でもよい。タフテックM−1913においては、酸無水物基が樹脂層の樹脂成分と反応することで変性効果をもつ。
【0107】
その他に好ましいポリマー成分として、日本ポリウレタン工業製 コロネート3041等が代表的には挙げられる。
【0108】
また、その構成成分として同一モノマー種を有するポリマーが好ましく、同一化合物であれば尚よいが、同一でなくとも、ポリマー成分として同一モノマー種を有するもであればよい。
、特にラジカル重合系のポリマーの場合、アクリル系モノマーが共有モノマーとして含まれることが好ましい。
【0109】
また、縮合系のポリマーの場合でも前記溶解性パラメータの範囲に含まれるモノマー成分を共有して有するポリマー同士が好ましく、例えばポリエステル成分等が好ましい。
【0110】
同一モノマーは、それぞれのポリマー中に5モル%以上を共有成分として入っていればよく、好ましくは10モル%以上さらに好ましくは30モル%以上である。
【0111】
これら樹脂層AおよびBに含有させる同一成分やポリマーは前記樹脂層を調製する際に構成成分中に混合し、含有させることが好ましい。含有させる量としては、層の固形分量全体の0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、1〜40質量%の範囲である。
【0112】
従って、本発明に係わる、光学変化素子転写箔においては、例えば図4に示すように、接着層43a3と、光学変化素子層43a2との間に、中間層として樹脂層A(43a4A)およびB(43a4B)を少なくとも有するものであり、これにより接着層と、光学変化素子層との密着性が向上する。
【0113】
また、本発明に係わる、光学変化素子転写箔においても、剥離層と、光学変化素子層3との間に、活性光線硬化性樹脂を含有する層を少なくとも一層形成後、活性光線により露光を行い、硬化層を形成し、活性線硬化層を含む転写箔を構成することは好ましく、活性光線硬化層からなる透明保護層が、光学変化素子層上に形成でき好ましい。
【0114】
これによれば、前記の図1で示したように、光学変化素子層の転写後に、あらためて、活性光線硬化樹脂層を装置内で塗設する必要がない。活性光線硬化樹脂層からなる透明保護層により、スクラッチ耐性、耐溶剤性等が向上する。
【0115】
このような支持体上に光学変化素子層が担持された光学変化素子転写箔を、顔画像等の個人認証識別画像、個人情報が記録された画像記録体であるカード材に、接着剤層により密着させ、例えば、前記熱転写ヘッド等により、温度例えば120℃〜250℃の範囲で加熱、圧着することで、光学変化素子層が、剥離層を介して支持体から剥離し、光学変化素子を有するIDカードが作製できる。
【0116】
カード材に転写箔から保護層または光学変化素子転写層を転写するには、具体的には、作製したカードの記録面と転写箔の転写層面を重ねて、例えば、金属ローラーの周囲にシリコーンゴム(ゴム硬度80)をつけたヒートローラーの表面温度を190℃に加熱し、熱転写シート側から押圧して、転写速度23mm/秒、線圧10kg/cmの条件で転写する。これにより転写箔の支持体を剥離してカードに保護層(光学変化素子層)を形成することが出来る。
【0117】
しかしながら、本発明においては、前記転写箔を用いて作製したIDカードに限られるものではない。その製造法に限らず、IDカードとして、ホログラム層等の光学変化素子層とカード材を接着層を用いて密着させた構成を有するIDカードであれば、本発明の効果を得ることが出来る。
【0118】
即ち、前記図4に示された如き構成において、
樹脂層A、Bを有し、層間剥離強度が、
接着層−樹脂層A間の剥離強度<接着層−樹脂層B間の剥離強度
の関係にある樹脂層A、Bをそれぞれ選択して前記接着剤を用いてIDカードを構成することで、層間の剥離が改良された、耐久性のあるカードを得ることが出来る。
【0119】
樹脂層A、B間のアンカーとなる同一化合物成分、また同一モノマー成分を有するポリマーを同じくアンカー成分として、樹脂層A、Bに含有させることも前記同様に好ましい。
【0120】
又本発明は、別の溶解性パラメータ値(SP)という観点でみたとき、
前記画像記録体を有するカード材(カード本体)と、支持体上に、剥離層、光学変化素子層、接着層を有し、該接着層と光学変化素子層との間に樹脂層A、Bを有する転写箔を用い、転写箔、カード材を密着固定し、加熱・圧着することで、転写箔から、光学変化素子層を剥離して、カード材上に密着固定する際に、樹脂層AおよびBを構成する樹脂の溶解性パラメータが、
|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値(SP)−樹脂層Aを構成する樹脂の溶解性パラメータ値(SP)|>|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Bを構成する樹脂の溶解性パラメータ値|
の関係を満たすことが好ましい。
【0121】
或いは、転写箔を用い形成されたものに限らず、上記の構成を有するIDカードにおいて、樹脂層Aと樹脂層Bが、同様の関係にあることが同様に好ましい。
【0122】
《溶解性パラメータ》
ここにおいて、本発明に係る溶解性パラメータについて説明する。
【0123】
溶解性パラメータは有機溶剤に対する非電解質の溶け易さを評価する際によく用いられるHildebrandの溶解性パラメータにより得られる値である。この溶解性パラメータについてはJ.H.Hildebrand,J.M.Prausnitz.R.L.Scott著“Regular and Related Solutions”,Van Nostrand−Reinhold,Princeton(1970年)、「高分子データハンドブック基礎編」 高分子学会を参照。各種溶剤の溶解性パラメータの値はA.F.M.Barton,“Handbook of Solrbility Parameters and Other Cohesion Parameters”,CRC Press,Boca Raton/Florida(1983年)、「高分子データハンドブック基礎編」高分子学会に記載されている。
【0124】
物質の溶解性パラメータは、
SP=(δE/V)1/2
で定義されており、δEはモル当たりの凝集エネルギーであり、Vはモル体積である。
【0125】
溶解性パラメータは、溶解度から求める方法、或いは蒸発潜熱法、蒸気圧法、膨潤法、表面張力法、熱膨潤係数法、屈折率法等幾つかの方法で求めることができる。
【0126】
本発明に於いては、以下の方法により求めたいずれかの溶解性パラメータを用いるものとする。又、単位としては、本発明において(MPa)1/2で表すものとする。
【0127】
溶解性パラメータは各種のSP値が既知の溶媒中への溶解度から求めることができる。この溶媒中への溶解度によって溶解性パラメータを求める方法は、化合物等の構造が未知の場合には有効である。
【0128】
本発明の化合物あるいはポリマーにおいては、例えば、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等、SP値既知の各種の溶剤を用い、最も溶解度の高い溶剤のSP値から溶質としてのSP値を求める溶解法を用いる。この方法では、最も溶解度の高いグループの溶剤それぞれのSP値の各成分であるδd(分散力項)、δp(極性項)、δh(水素結合項)をそれぞれ各項毎に分けてプロットし、各項毎に中心値を求める。化合物のSP値の各項の値としてこの中心値をそれぞれ用いて化合物のSP値を求めることが出来る。C.M.Hansen,J.Paint Technol.,39(505)104(1967)、C.M.Hansen,J.Paint Technol.,39(511)505(1967)
溶剤溶解性の低いポリマーでは溶解法でSP値を正確に求めることは難しいが、前記文献に懸濁状態を利用した測定が示されている。即ち、SP値の近い溶剤ほどポリマー粉体を良く濡らすことから、溶剤とポリマーを混合後、良く振って懸濁状態の良好(沈降しない)な溶剤を、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等SP値既知の各種の溶剤のなかから選び(複数でよい)、懸濁状態の良好な溶剤それぞれのδd(分散力項)、δp(極性項)、δh(水素結合項)をそれぞれ各項毎に分けてプロットし、各δd(分散力項)、δp(極性項)、δh(水素結合項)項の中心値をそれぞれ算出し、算出した各項の中心値を、求めるポリマーのSP値の各項とすることでSP値を求めることが出来る。
【0129】
溶解性パラメータは構造が既知の場合には計算により求めることができる。
【0130】
Smallは化学組成とSP値を関係付け、分子中のモル引力定数ΔFの総和をモル体積Vで割ることでSP値が求められる計算方法を提案した。この方法ではΔFは各原子団に割り当てることが出来るため簡易に計算できる。
【0131】
S=(ΣΔF)/V
しかし、Smallの式では分散力から生じた凝集エネルギーのみしか含まないため、上記計算方法の精度を更に上げるために、Rheinneck、Hoy、Krevelen、Fedorsらは各々異なった修正ΔFを提案している。また、Hansenは3次元に分解したパラメータを提唱した。各修正パラメータにより数値は若干変動するが本発明で定義している各層の構成樹脂成分の差としてみた時の誤差は小さい。構造が既知の場合は前記修正パラメータを用いた計算で求めた溶解性パラメータを用いることが出来る。本発明において用いている計算プログラムは富士通株式会社製のCACheという分子計算パッケージ中のProject Leaderである。
【0132】
これらのいずれかの方法によって、算出した溶解性パラメータを本発明においては用いる。溶解性パラメータの値は、例えば溶媒に対する溶解度から求めた場合、採用する溶剤の溶解性パラメータの値が、求める方法によってはやや異なる場合があり、ポリマー等のSP値もこれに伴ってやや異なってくる。しかしながら、その値の違いはそれ程大きくないので、ポリマー同士のSP値の差としてはその差が、一番小さくなるものを採用すればよい。
【0133】
従って、構造既知のポリマーの場合には、前記の計算による方法を用いるのがよい。この様にして溶解性パラメータの差を求めればよい。
【0134】
ちなみに、本発明に係る溶解性パラメータの具体的な数値は、原則として、J.BRANDRUP and E.H.IMMERGUT,”POLYMER HANDBOOK”,THIRD EDITION,JOHN WILEY & SONS(1989)に記載の数値を用いることもできる。但し、前記文献に記載のないものについては、計算(シュミレーション)により求めた数値を使用した。
【0135】
本発明に係わる接着層の溶解性パラメータは17.0〜25.0(MPa)1/2の範囲であり、樹脂層Bと接着層の溶解性パラメータ差は、前記樹脂層Aと接着層との溶解性パラメータの差よりも小さいことが好ましく、それぞれ樹脂層BまたはAに用いられる樹脂等については、前記の様なものが具体例として挙げられ好ましいが、溶解性パラメータ(SP値)でいうと、前記樹脂層Aとしては15.5〜19.0(MPa)1/2での範囲にあるものが好ましく、樹脂層Bとしては、好ましくは、17〜22.0(MPa)1/2の範囲にあるものが好ましい。
【0136】
樹脂層がそれぞれいくつかの成分の混合系である場合は、樹脂その他低分子成分を含めた構成成分の加重平均でその樹脂層の溶解性パラメータを算出する。
【0137】
これら樹脂層A、B間についても、それぞれカード材(カード本体)、光学変化素子層との密着性がよいものをそれぞれ選択するため、樹脂層A、Bを構成する樹脂等の成分の溶解性パラメータが前期の関係を満たすためには、両方の樹脂層に、1種以上の共通の成分(前記同一成分)、または、樹脂層A、Bそれぞれに、前記の、両方の層と相溶性がある、その構成成分として同一モノマー種を有するポリマー等を含有していることが好ましい。これにより、樹脂層A、B間の溶解性パラメータは前記の範囲を満たすものとなり好ましい。
【0138】
また、本発明においては、必ずしも前記転写箔を用い作製するIDカードに限るものではなく、その製造法に限らず、IDカードとしてホログラム層等の光学変化素子層とカード本体を接着層を用いて密着させた構成を有するIDカードであれば、本発明の効果を得ることが出来る。
【0139】
即ち、図5Bに示された如き構成において、
樹脂層A、Bを有し、前記溶解性パラメータが、
|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値(SP)−樹脂層Aを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値(SP)|>|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Bを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値|
の関係にある樹脂層A、Bをそれぞれ選択して前記接着剤を用いてIDカードを構成することで、
層間の剥離が改良された、耐久性のあるカードを得ることが出来る。
【0140】
樹脂層A、B間に同一成分、また同一モノマー成分を有するポリマーを同じく、樹脂層A、Bに含有させることも前記同様に好ましい。
【0141】
本発明においては、このように、樹脂層A、樹脂層Bの溶解性パラメータを調整した転写箔を転写してIDカードを作製することができ、これらの転写箔を用いて作製したIDカードは、耐久性があり、本発明の効果を奏する。
【0142】
本発明に関わる転写箔は、前記の構成の他、光学変化素子層と剥離層の間に、中間層(IDカードとしては透明保護層となる)を設けてもよく、また、前記活性光線硬化層を設けてもよい。またこれらに加えて、プライマー層、バリヤ層等、層間の接着性をさらに向上させるように、1層以上の中間層等を更に含んでいてもよい。特に、透明保護層となる中間層として具体的な化合物としては、やはりポリスチレンとポリオレフィンのブロックポリマーからなる熱可塑性樹脂、ポリビニルブチラール等が好ましい。特に中間層においては重合度が1000以上のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、積水化学工業(株)製のエスレックBH−3、BX−1、BX−2、BX−5、BX−55、BH−S、電気化学工業(株)製のデンカブチラール#4000−2、#5000−A、#6000−EP等が市販されている。中間層のポリブチラールの熱硬化樹脂としては熱硬化前の重合度に限定はなく低重合度の樹脂でもよく、熱硬化にはイソシアネート硬化剤やエポキシ硬化剤等を用いることができ、熱硬化条件は50〜90℃で1〜24時間が好ましい。中間層の厚みは0.1〜1.0μmが好ましい。
【0143】
次に、本発明に係わる転写箔及びこれを用いて形成されたIDカードについて説明する。
【0144】
図4は、支持体43b、剥離層43a1、ホログラム層43a2、そして本発明に係わる樹脂層A(43a4A)およびB(43a4B)そして接着層43a3からなる光学変化素子転写箔の一例を示す断面図である。
【0145】
これをカード材50に転写した光学変化素子を有するIDカードの構成を図5に示した。
【0146】
ホログラム層とカード材とは、樹脂層A、およびBを介して接着層によりカード材と密着している。
【0147】
図6に通常の支持体43b、剥離層43a1、ホログラム層43a2、中間層43a4、そして接着層43a3からなる光学変化素子転写箔を、また、これから形成したIDカードを図7に示した。ホログラム層が接着層を介して直接カード本体と密着しているため接着層とホログラム層との接着が悪く、剥離故障を起こしやすい。
【0148】
本発明において、接着層との剥離強度に関し前記の関係を有する樹脂層A、そして樹脂層Bを、ホログラム層及び接着層間に設けることで、カード本体とホログラム層等の光学変化素子層の密着性が向上し、耐久性のあるカードが得られる。
【0149】
本発明において、光学変化素子転写箔のいずれかの層に、帯電防止剤が含有されていることは好ましく、帯電防止層は、帯電防止性に優れたアニオン性高分子物質及び/又は導電性粒子を含有することが好ましい。このようなアニオン性高分子物質としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基を含有するポリマー、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、塩化ビニル、マレイン酸モノ(2.エチルヘキシル)共重合体、ポリスチレンスルホ酸、ポリビニルアルコール、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びそれらの変性物などが挙げられ、それぞれに対応する官能基の部分あるいは全てがアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等になったものが挙げられる。その中でもポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩が好ましく、特にポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩が後述する他の樹脂との相溶性、帯電防止性能、溶解性及び溶液にした場合の粘度の面から好ましい。
【0150】
また、導電性粒子としては、各種金属、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、CoO、CuO、Cu2O、SrO、BaO、BaO2、PbO、PbO2、MnO3、SiO2、ZrO2、Ag2O、Y23、BiO3、La23、Ti23、Sb23、Sb25、K2Ti613、NaCaP218、MgB25などの酸化物、CuS、ZnSなどの硫化物、SiC、TiC、ZrC、VC、NbC、WoCなどの炭化物、Si34、Tin、ZrN、VN、NbN、TaN、Cr2Nなどの窒化物、TiB2、ZrB2、NbB2、TaB2、CrB、MoB、WB、LaB6などの硼化物、TiSi2、ZrSi2、NbSi2、TaSi2、CrSi2、MoSi2、WSi2などの珪化物、BaCO3、CaCO3、SrCO3、BaSO4、CaSO4などの金属塩、Si34−SiC、9Al23−2B23などの複合体、あるいはそれらをドープしたものなどが挙げられ、その中でもZnO、TiO2、SnO2、In23、ZrO2、Y23、Sb25、CuS、ZnS、TiC、WC、Tin、TiB2、ZrB2、MoSi2、WSi2、CaCO3、BaSO4などが好ましく、これらを1種単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0151】
ここにおいて、導電性粒子は少なくとも粒形の異なる2種以上の混合物であることが好ましく、導電性粒子全量に対して、平均粒子径0.01〜0.5μmの粒子と平均粒子径0.5〜3μmの粒子との混合物であることが好ましく、それらの質量比は前者を50〜95質量%、後者を5〜50質量%で添加するのが好ましい。平均粒子径0.01〜0.5μmの粒子のみで帯電防止層を形成すると、帯電防止や白抜けに対しては有効であるが、複数枚給紙の防止、走行安定性や画像記録体作製直後のべたついた受像層面に対する付着防止に対してトラブルを生じる場合があり、また、平均粒子径0.5〜3μmの粒子のみで帯電防止層を形成すると、帯電防止、複数枚給紙の防止、走行安定性及び画像記録体作製直後のべたついた受像層面に対する付着防止に対しては有効であるが、白抜けを発生する場合があった。
【0152】
このように粒径の異なる2種の導電性粒子を存在させると、帯電防止のみならず、複数枚給紙の防止、走行安定性、白ぬけ防止、画像記録体作製直後のべたついた受像層面に対する付着防止に対して有効に働く。
【0153】
なお、前記アニオン性高分子物質及び/又は導電性粒子の帯電防止層形成組成物中の含有量は、全量に対して5〜80質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
【0154】
この発明において、アニオン性高分子物質及び/又は導電性粒子を樹脂の中に混合したり、あるいは分散させて帯電防止層を形成する。
【0155】
帯電防止層形成する樹脂としては特に制限はなく、公知のバインダー樹脂など各種のものを適宜選択して使用することができる。バインダー樹脂の代表例としては、例えばポリメタクリル酸メチル系のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレンテレフフクレート等のポリエステル系樹脂、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキッド系樹脂、フェノール系樹脂、弗素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、カゼイン、ゼラチン等を挙げることができる。また、電離放射線硬化樹脂や、熱硬化樹脂などのように、帯電防止層形成後に電離放射線あるいは熱により硬化できるのものも併用することができる。
【0156】
図4に示されるような活性光線硬化層を有しない光学変化素子転写箔を用いて画像記録体と密着する場合、画像記録層上に、光学変化素子層を設けたのち、その上に活性光線硬化樹脂層を設け、その後に、活性光線により露光を行い硬化層を形成し、個人認証カード(IDカード)を作製することが好ましい。これにより表面のスクラッチ強度が向上し、キズやシワの発生を防止することができる。活性光線硬化樹脂層の破断伸度は5〜90%の範囲、また静表面摩擦係数は0.5〜0.01の範囲が好ましい。
【0157】
また、この発明の転写箔、および転写箔製造方法は、図8に示すように、支持体43bに剥離層43a1形成後、活性光線硬化層43a5塗布し、活性光線により露光を行い硬化層を形成し、その後光学変化素子層43a2、樹脂層A(43a4A)、樹脂層B(43a4B)を順次形成し、接着層43a3を設けて転写箔を製造することができる。
【0158】
このように転写箔製造方法により製造された転写箔を、図9に示したように、カード材50に転写して認証カード(IDカード)を作製することができる。
【0159】
これら活性光線硬化樹脂層は、前記転写箔中に設けられるものも含め、非硬化型樹脂、また平均分子量が5000〜50000不飽和基含有樹脂を含み、また、Si、F化合物(不飽和基含有Si、F化合物が好ましい)を含み、また活性光線硬化樹脂層にカップリング剤を含むことが好ましい。
【0160】
本発明に係わる、個人認証カード(IDカード)には、前記のようにあらかじめ転写箔中に形成することにより、また、活性光線硬化樹脂層が後から設けられる場合ともに、破断伸度が5〜90%の範囲の活性光線硬化樹脂層が設けられていること、また静表面摩擦係数0.5〜0.01の範囲の活性光線硬化樹脂層を設けられていることが好ましく、これにより引っ掻きに対して強度があり、表面保護性に優れたIDカードを得ることができる。
【0161】
[破断伸度の測定方法]
本発明において、破断伸度(%)は、23℃55%RHの条件下で樹脂層を1時間以上放置した後、株式会社オリエンテックテンシロン万能試験機RTA−100を用いデータ処理は、テンシロン多機能型データ処理TYPE MP−100/200S Ver.44を用い測定を行った。樹脂の固定手段はエアーチャック方式で固定した。クロスヘッドスピードは、5〜100mm/min、RANGEは5〜100%、荷重は0.1〜500kgを選択することができるが、この発明の評価では、クロスヘッドスピードは、30mm/min、RANGEは20%、荷重は100kgの条件で評価を行った。
【0162】
また、樹脂または活性光線硬化樹脂の破断伸度を測定するに当たり、特に活性光線硬化樹脂層のみの単独膜を作製するのは難しいため、12μmのPETに5μmの樹脂層を形成する。活性光線硬化樹脂層は、水銀灯で160W/cmの露光エネルギーでCS5mで2回通し硬化をさせた後に測定を行った。測定は、1cm幅のサンプルをエアーチャックに固定し引っ張り試験を行った。
【0163】
破断伸度は、引っ張り時の樹脂、または活性光線硬化樹脂の破断、または亀裂が入ったときの破断点伸びから破断点伸度を求めた。
【0164】
[静摩擦係数の測定方法]
本発明において、静摩擦係数(μs)とは、JIS K7125に記載の摩擦係数試験方法と同様の原理で求めることができる。25℃60%RHの条件下で樹脂層を1時間以上放置した後、鋼球(例、直径0.5〜5mm)に一定の荷重(接触力:Fp例、50〜200g)を加え、樹脂層の表面を一定のスピード(例、2〜100cm/min)で滑らせ、そのときの最初の最大荷重(静摩擦力)(Fs)を測定し、下記、数1で求める。
【0165】
μs=Fs/Fp
μs:静摩擦係数
Fs:静摩擦力N{kgf}
Fp:接触力N{kgf}
本発明においては、新東科学(株)製表面性測定機HEIDON[TYPE14DR]で、測定をし、荷重を100gでスピードを600mm/minの条件下で測定を行った。また、荷重変換器100gf、測定器具としてボール圧子(5mmクロム球)を使用し測定を行った。
【0166】
また本発明において、転写箔は、少なくとも片側の中心線平均粗さ(Ra)で0.05〜0.5μmの範囲の支持体を用い、また支持体上に転写層を設けた転写箔において、未転写側の中心線平均粗さ(Ra)で0.05〜0.5μmの範囲の支持体を用いることができる。
【0167】
[中心線粗さ(以下Raと称す)の測定方法(支持体の表面粗さ測定方法)]
支持体表面の3次元表面粗さをWYKO社製非接触3次元微小表面測定装置:RST PLUS を使用して測定した。
【0168】
測定は「バーティカルスキャン法」モードで、対物レンズ:40倍、倍率セレクター:0.5倍、空間サンプリング間隔:0.42×0.48μmの条件で行なった。
【0169】
測定は最初に115×150μm程度の範囲で行い、不連続なデータがあった場合は装置に付属のソフトウエアにより修復(連続化)した後、範囲を選択して100×100μmのデータに加工した(データ点数:238×209)。測定データは付属のソフトウエアによりヒストグラム表示とし、このデータをもとに表面の凹凸高さを計算した。
【0170】
[Ra作製手段及び好ましい形態]
本発明において用いられるRa作製手段としては、マット剤を設けることが好ましい。有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩、等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0171】
好ましい微粒子としては、不定形シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、球形シリカ、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、シリコーン、テフロン(登録商標)等がある。マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良い。
【0172】
マット剤は任意の構成層中に含むことができるが、この発明の目的を達成するためには好ましくは転写層を設けた転写箔において、未転写側のRaが0.05〜0.5μmであることが好ましく、より好ましくは転写箔の保存性の面から0.15〜0.5の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.2〜0.45の範囲である。
【0173】
マット剤の付着方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。また場合により、窒素置換、減圧下等による方法で空気を遮断し重合速度を向上させてもよい。
【0174】
[活性光線]
活性光線としては、重合開始剤に対し活性な電磁波を発生させるものは全て用いることができる。例えば、レーザー、発光ダイオード、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ、タングステンランプ、水銀灯、無電極光源等をあげることができる。好ましくは、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ、タングステンランプ、水銀灯等の光源が挙げられ、この際加えられるエネルギーは、重合開始剤の種類のより、露光距離、時間、強度を調整することにより適時選択して用いることができる。また活性光線は、場合により、窒素置換、減圧下等による方法で空気を遮断し重合速度を向上させてもよい。
【0175】
レーザーを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。レーザー光源としてはアルゴンレーザー、He−Neガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等を何れも好適に用いることが可能である。又、活性光線を用い光硬化を行う場合、減圧下、窒素気流中で光硬化を安定化する手段等を用いてもかまわない。活性光線の他に熱エネルギーを加えることもでき手段としては、オーブン、ヒ−トロ−ル、ホットスタンプ、サーマルヘッド、レーザー光、赤外線フラッシュ、熱ペンなどを適時選択して用いることができる。
【0176】
[カップリング剤]
本発明において、カップリング剤とは、シリコーン系、アルミニウム系、チタン系等のカップリング剤を表し、特開平2−4258号公報、特開平4−161957号公報記載のものを挙げることができる。カップリング剤は、樹脂層又は硬化層に添加する場合は、層の全固形分に対し0.1〜30質量%添加される。更に好ましくは、1%〜20%質量%である。カップリング剤は樹脂層又は硬化層の表面処理層として用いることも可能である。
【0177】
本発明において使用するカップリング剤は好ましくは、シラン系、チタン系のカップリング剤である。この発明化合物のカップリング剤には、種々のがあるが以下に示すような化合物に限定される物ではない。N−3−(アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、N−(3−メタクリキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(メタクリロキシイメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メトキシジメチルビニルシラン、1−メトキシ−3−(トリメチルシロキシ)ブタジエン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)−プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ジアリルアミノプロピルメトキシシランを挙げることができる。
【0178】
チタネートカップリング剤としては公知の種々のものを用いることができ、具体的には、A−1(テトラ−i−プロポキシチタン)、B−1(テトラ−n−ブトキシチタン)、TOT(テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン)、TST(テトラステアリルオキシチタン)、TAA(ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン)、TAT(ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン)TLA(ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン)、TOG(チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート)TTS(チタニウムステアレート、以上日本曹達社製)、EL−105(アルキルチタネート系、東洋モートン社製)、KRTTS(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート)、KR38S(イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート)、KR44(イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート)、KR46B(テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート)、KR55(テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート)、KR138S(ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート)KR238S(ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート)、KR2S(イソプロピルトリオクタノイルチタネート)、KR7(イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート)、KR9S(イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、KR11(イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート)、KR12(イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート)、KR34S(イソプロピルトリクミルフェニルチタネート)、KR41B(テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、以上味の素社製)を用いることができる。特にA−1、B−1を好ましく用いることができる。
【0179】
[破断伸度の良好な樹脂]
破断伸度が5〜90%の樹脂であればいかなる樹脂でもかまわない。具体的には、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。親水性でも疎水性でもよいが、この発明においては、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、仕上がり品質等の良好な樹脂として活性光線により形成された硬化層であることが特に好ましい。
【0180】
[静摩擦係数の良好な樹脂]
静摩擦係数が0.01〜0.5の範囲の樹脂層であればいかなるものでもかまわない。樹脂としては、シリコーン系樹脂、F系樹脂、ポリエチレンワックス、アミドワックスが挙げられるが、製造方法、製造コスト、仕上がり品質の点から活性光線により形成された硬化層であることが特に好ましい。
【0181】
[活性光線硬化層]
本発明に係わる活性光線硬化型樹脂層は、付加重合性または開環重合性を有する素材からなるものであり、付加重合性化合物とは、ラジカル重合性化合物、例えば特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平08−224982、特開平10−863号等に記載されている光重合性(熱重合性も含む)組成物を用いた光硬化型材料であってもよい。付加重合性化合物とは、カチオン重合系の光硬化材料が知られており、最近では可視光以上の長波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化材料も例えば、特開平6−43633号、特開平08−324137公報等に公開されている。この発明の目的においてはどちらを用いても構わない。また層構成においても1層以上の活性光線硬化層を設けその内のいずれか片方が本発明の破断伸度、若しくは摩擦係数を満たすものであればよいが、好ましくは、カードにしたとき最上層となる方が摩擦係数がこの発明内であることが好ましい。
【0182】
[活性光線硬化用開始剤]
本発明に係わるラジカル重合性組成物に併用されてもよいラジカル若しくは酸を発生する他の化合物としてはラジカル重合開始剤がある。なお、この発明の特定化合物は光または熱によりラジカル(例えば・Cl)を発生し、ラジカルが層中のプロトンを引き抜き酸(例えばHCl)を発生して重合が行われるが、併用されてもよい下記重合開始剤も同様に光または熱によりラジカル若しくは酸を発生して重合が行われる。
【0183】
ラジカル重合開始剤としては、特公昭59−1281号、特公昭61−9621号、及び特開昭60−60104号等の各公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号及び特開昭61−243807号等の各公報に記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号、特公昭44−6413号、特公昭44−6413号及び特公昭47−1604号等の各公報並びに米国特許第3,567,453号明細書に記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,848,328号、同第2,852,379号及び同2,940,853号各明細書に記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号、特公昭37−13109号、特公昭38−18015号、特公昭45−9610号等の各公報に記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号、特開昭59−14023号等の各公報及び「マクロモレキュルス(Macromolecules)、第10巻、第1307頁(1977年)に記載の各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109,851号、ヨーロッパ特許第126,712号等の各明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス」(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)に記載の金属アレン錯体、特願平4−56831号明細書及び特願平4−89535号明細書に記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(CoordinantionChemistry Review)」、第84巻、第85〜第277頁)(1988年)及び特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤はラジカル重合可能なエチレン不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.01から10質量部の範囲で含有されるのが好ましい。
【0184】
ラジカル重合性化合物を含有する感光性組成物には、ラジカル重合性モノマーの熱重合開始剤として、一般にラジカル重合による高分子合成反応に用いられる公知のラジカル重合開始剤を特に制限なく含有させることができる。ここで、熱重合開始剤とは、熱エネルギーを与えることにより重合性のラジカルを発生することが可能な化合物である。
【0185】
この様な化合物としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスプロピオニトリル等のアゾビスニトリル系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過安息香酸t−ブチル、α−クミルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、過酸類、アルキルパーオキシカルバメート類、ニトロソアリールアシルアミン類等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の無機過酸化物、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム、アゾビス置換アルカン類、ジアゾチオエーテル類、アリールアゾスルフォン類等のアゾ又はジアゾ系化合物、ニトロソフェニル尿素、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジアリールジスルフィド類、ジベンゾイルジスルフィド、テトラアルキルチウラムジスルフィド類、ジアルキルキサントゲン酸ジスルフィド類、アリールスルフィン酸類、アリールアルキルスルフォン類、1−アルカンスルフィン酸類等を挙げることができる。
【0186】
これらの中で特に好ましいものは、常温での安定性に優れ、加熱時の分解速度が速く、かつ分解時に無色となる化合物であり、このようなものとしては、過酸化ベンゾイル、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。また、本発明では、これらの熱重合開始剤を1種又は2種以上混合して用いることができる。更に、熱重合開始剤は、熱重合性の組成物中通常0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%の範囲がより好ましい。
【0187】
(1)カチオン重合系光硬化樹脂
カチオン重合性化合物
カチオン重合により高分子化の起こるタイプ(主にエポキシタイプ)のエポキシタイプの紫外線硬化性プレポリマー、モノマーは、1分子内にエポキシ基を2個以上含有するプレポリマーを挙げることができる。このようなプレポリマーとしては、例えば、脂環式ポリエポキシド類、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物類およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらのプレポリマーは、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0188】
紫外線硬化保護層形成用コーティング剤中の、エポキシ基を1分子内に2個以上有するプレポリマーの含有量は70質量%以上であるのが好ましい。カチオン重合性組成物中に含有されるカチオン重合性化合物としては、他に例えば下記の(1)スチレン誘導体、(2)ビニルナフタレン誘導体、(3)ビニルエーテル類及び(4)N−ビニル化合物類を挙げることができる。
(1)スチレン誘導体
例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン等
(2)ビニルナフタレン誘導体
例えば、1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等
(3)ビニルエーテル類
例えば、イソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、α−メチルフェニルビニルエーテル、β−メチルイソブチルビニルエーテル、β−クロロイソブチルビニルエーテル等
(4)N−ビニル化合物類
例えばN−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン、N−ビニルアセトアニリド、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール等。
【0189】
上記カチオン重合性化合物のカチオン重合性組成物中の含有量は1〜97質量%が好ましくは、より好ましくは30〜95質量%である。
【0190】
[カチオン系重合開始剤]
開始剤としては、カチオン重合開始剤が好ましく、具体的には芳香族オニウム塩を挙げることができる。この芳香族オニウム塩として、周期表第Va族元素の塩たとえばホスホニウム塩(たとえばヘキサフルオロリン酸トリフェニルフェナシルホスホニウムなど)、第VIa族元素の塩たとえばスルホニウム塩(たとえばテトラフルオロホウ酸トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロリン酸トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロリン酸トリス(4−チオメトキシフェニル)、スルホニウムおよびヘキシサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウムなど)、および第VIIa族元素の塩たとえばヨードニウム塩(たとえば塩化ジフェニルヨードニウムなど)を挙げることができる。
【0191】
このような芳香族オニウム塩をエポキシ化合物の重合におけるカチオン重合開始剤として使用することは、米国特許第4,058,401号、同第4,069,055号、同第4,101,513号および同第4,161,478号公報に詳述されている。
好ましいカチオン重合開始剤としては、第VIa族元素のスルホニウム塩が挙げられる。その中でも、紫外線硬化性と紫外線硬化性の組成物の貯蔵安定性の観点からすると、ヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスホニウムが好ましい。またフォトポリマーハンドブック(フォトポリマー懇話会編 工業調査会発行1989年)の39〜56頁に記載の公知の光重合開始剤、特開昭64−13142号、特開平2−4804号に記載されている化合物を任意に用いることが可能である。
【0192】
(2)ラジカル重合系光硬化樹脂
ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性組成物に含有されるラジカル重合性化合物には通常の光重合性化合物及び熱重合性化合物が包含される。ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどの様なものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。
【0193】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。上記ラジカル重合性化合物のラジカル重合性組成物中の添加量は好ましくは1〜97質量%であり、より好ましくは30〜95質量%である。
【0194】
(3)酸架橋系光硬化樹脂
本発明において、酸架橋性組成物において用いられる架橋剤は、活性光または放射線の照射により前記この発明の特定化合物から発生する酸により架橋反応を起こす化合物である。この発明において好適に用いられる架橋剤は、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、エポキシ基またはビニルエーテル基を有する化合物である。好ましくはこれらの架橋性官能基が芳香環に直接結合した化合物である。具体的には、メチロールメラミン、レゾール樹脂、エポキシ化されたノボラック樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。さらに、「架橋剤ハンドブック」(山下晋三、金子東助著、大成社(株))に記載されている化合物も好ましい。特に、分子内に2個以上のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は画像形成した際の画像部の強度が良好であり好ましい。このようなフェノール誘導体として、具体的には、レゾール樹脂を挙げることができる。
【0195】
しかしながら、これらの架橋剤は熱に対して不安定であり、画像記録材料を作製したあとの保存時の安定性があまりよくない。これに対し、分子内にベンゼン環に結合する2個以上のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有し、さらに分子量が1,200以下であるフェノール誘導体は、保存時の安定性も良好であり、この発明において最も好適に用いられる。アルコキシメチル基としては、炭素数6以下のものが好ましい。具体的にはメトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、sec−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基が好ましい。さらに、2−メトキシエトキシメチル基および2−メトキシ−1−プロポキシメチル基のように、アルコキシ置換されたアルコキシメチル基も好ましい。具体的には、特開平6−282067号公報、特開平7−64285号公報、EP632,003A1号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0196】
この発明において好適に用いられる他の架橋剤としては、アルデヒドやケトン化合物を挙げることができる。好ましくは、分子内に2個以上のアルデヒドまたはケトンを有する化合物である。
【0197】
この発明において、架橋剤は全画像記録材料固形分中、5〜70質量%、好ましくは10〜65質量%の添加量で用いられる。架橋剤の添加量が5質量%未満であると画像記録した際の画像部の膜強度が悪化し、また、70質量%を越えると保存時の安定性の点で好ましくない。これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0198】
[活性光線硬化型樹脂層への添加剤]
増感剤
本発明に係わる感光性組成物は、種々の増感剤と組み合わせた組成物とすることによって、紫外から近赤外領域にかけての光に対する活性を高め、極めて高感度な重合性組成物とすることが可能である。この発明でいう増感剤の具体例としては、カルコン誘導体やジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、スチリル誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノール誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体等が挙げられ、その他さらに具体的には大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)等に記載の色素および増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、その他、紫外が近赤外域にかけての光に対して吸収を示す色素や増感剤が挙げられ、これらは必要に応じて任意の比率で二種以上用いてもかまわない。
【0199】
重合促進剤、連鎖移動剤等
本発明に係わる感光性組成物には重合促進剤や連鎖移動触媒を添加できる。その具体例としては、例えば、N−フェニルグリシン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類、米国特許第4,414,312号や特開昭64−13144号記載のチオール類、特開平2−291561号記載のジスルフィド類、米国特許第3,558,322号や特開昭64−17048号記載のチオン類、特開平2−291560号記載のo−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類が挙げられる。
【0200】
この発明の感光性組成物はさらに目的に応じて、染料、有機および無機顔料、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト等の酸素除去剤や還元剤、カブリ防止剤、退色防止剤、ハレーション防止剤、蛍光増白剤、界面活性剤、着色剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発砲剤、防カビ剤、帯電防止剤、磁性体やその他種々の特性を付与する添加剤、希釈溶剤等と混合して使用しても良い。
【0201】
重合禁止剤
ラジカル重合性化合物を含有するラジカル重合性組成物中には光硬化性樹脂層中に液保存時の重合を防止する目的で重合禁止剤を含有させることができる。ラジカル重合性組成物に添加可能な熱重合禁止剤の具体例としては、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、アルキル置換ハイドロキノン、カテコール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、これらの熱重合禁止剤は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.001から5質量部の範囲で添加されるのが好ましい。
【0202】
[樹脂層への添加剤]
非硬化型樹脂必要に応じて、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、スチレン、パラメチルスチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等のビニル単量体やセルロース系、熱可塑性ポリエステル、天然樹脂等、他の任意の高分子重合体を併用してもよい。また、その他、赤松清監修、「新・感光性樹脂の実際技術」、(シーエムシー、1987年)や「10188の化学商品」657〜767頁(化学工業日報社、1988年)記載の業界公知の有機高分子重合体を併用してもよい。
【0203】
感光性組成物中におけるこれら高分子重合体の含有量は、1〜70質量%の範囲が好ましく、5〜50質量%の範囲が更に好ましい。
【0204】
帯電防止剤
帯電防止剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子帯電防止剤、導電性微粒子などのほか「11290の化学商品」化学工業日報社、p875〜876などに記載の化合物などが挙げられる。
【0205】
界面活性剤
また、画像形成材料の画像形成層中には、光硬化層の摩擦係数を調整するために助剤として界面活性剤を添加することができる。特開昭62−251740号、特開平3−208514号等の各号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、或いは特開昭59−121044号、特開平4−13149号等の各号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0206】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0207】
また、両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型、例えば商品名「アモーゲンK」(第一工業(株)製)等が挙げられる。
【0208】
F系活性剤
また、下記構造のフッ素系界面活性剤を添加してもよい。この発明に用いるフッ素系界面活性剤は下記一般式(1)、(2)または(3)で表されるモノマーの一種または二種以上の重合体及びこれらモノマーとこれと重合可能なモノマーとの共重合体である。
【0209】
式(1):CH2=C(R1)COOARf
1:−H,−X(ハロゲン基),アルキル基,ハロゲン化アルキル基、
A:カルボニル基,アルキレン基,(ポリ)オキシアルキレン基,ウレタン基,ペプチド基等の二価の連結基、
Rf:少なくとも1つの水素がフッ素に置換されている炭化水素基(C=1〜30)
式(2):CH2=C(R1)COO(A)N(R2)SO2Rf
1:−H,−X(ハロゲン基),アルキル基,ハロゲン化アルキル基、
2:−H,−X(ハロゲン基),アルキル基,ハロゲン化アルキル基
A:カルボニル基,アルキレン基,(ポリ)オキシアルキレン基,ウレタン基,ペプチド基等の二価の連結基、
Rf:少なくとも1つの水素がフッ素に置換されている炭化水素基(C=1〜30)
式(3):CH2=C(R1)Ar(R2l[(A)mRf]n
1:−H,−X(ハロゲン基),アルキル基,ハロゲン化アルキル基、
Ar:−C65-l-n
2:−H,−X(ハロゲン基),アルキル基,ハロゲン化アルキル基等のベンゼン置換可能基、
A:カルボニル基,アルキレン基,(ポリ)オキシアルキレン基,ウレタン基,ペプチド基,−O−,−NH−等の二価の連結基、
Rf:少なくとも1つの水素がフッ素に置換されている炭化水素基(C=1〜30)
l=0〜4、m=0,1、n=1〜5
上記一般式で示されるモノマーの例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらの化合物に限られるものではない。
(1)CH2=C(CH3)COOCH2CF2CHF2
(2)CH2=C(CH3)COOCH2CF2CF2CF2CHF2
(3)CH2=C(CH3)COOC(CH32CF2CHF2
(4)CH2=C(CH3)COOC(CH32CF2CF2CF2CHF2
(5)CH2=CClCOOCH2CF2CHF2
(6)CH2=C(CH3)COOCH2CF2CHFCF3
(7)CH2=C(CH3)COOCH(CH3)CF2CHFCF3
(8)CH2=C(CH3)COOCH(C25)CF2CHFCF3
(9)CH2=C(CH3)COOCH(C37)CF2CHFCF3
(10)CH2=C(CH3)COOC(CH32CF2CHFCF3
(11)CH2=C(CH3)COOC(CH3)(C25)CF2CHFCF3
(12)CH2=C(CH3)COOCH(CH3)CH2CF2CHFCF3
(13)CH2=C(CH3)COOCH2CH237
(14)CH2=C(CH3)COOCH2CH2511
(15)CH2=CHCOOCH2CH2NHSO2817
(16)CH2=CHCOOCH2CH2N(CH3)SO2817
(17)CH2=CHCOOCH2CH2N(C25)SO2817
(18)CH2=CHCOOCH2CH2N(C37)SO2817
(19)CH2=CHCOOCH2CH2N(C49)SO2817
(20)CH2=C(CH3)COOCH2CH2NHSO2817
(21)CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)SO2817
(22)CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(C25)SO2817
(23)CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(C37)SO2817
(24)CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(C49)SO2817
(25)CH2=CHCOO(CH24NHSO2817
(26)CH2=CHCOO(CH24N(CH3)SO2817
(27)CH2=CHCOO(CH24N(C25)SO2817
(28)CH2=CHCOO(CH24N(C37)SO2817
(29)CH2=CHCOO(CH24N(C49)SO2817
(30)CH2=CHCOO(CH211NHSO2817
(31)CH2=CHCOO(CH211N(CH3)SO2817
(32)CH2=CHCOO(CH211N(C25)SO2817
(33)CH2=CHCOO(CH211N(C37)SO2817
(34)CH2=CHCOO(CH211N(C49)SO2817
【0210】
【化1】

【0211】
【化2】

【0212】
上記に示されるようなモノマーは、ホモポリマーとしてもこれらと重合可能なモノマーとのコポリマーとしても、界面活性剤として使用することができる。上記に示されるようなモノマーと重合可能なモノマーとしては、重合できるものであればどのような化合物でもよいが、その例としては下記に示すような化合物を挙げることができる。しかし、上記モノマーと重合可能なモノマーは、下記の例に上げられるものに限定されるものではない。
(1)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類。
(2)ポリオキシエチレンメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンメチルエーテル(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート類。
(3)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のエチレン系不飽和オレフィン類。
(4)スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン類。
(5)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸類。
(6)イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸類。
(7)マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル等の不飽和ジカルボン酸のジエステル類。
(8)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類。
(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類。
(10)アクリルアミド等のアミド類。
(11)アクリルアニリド、p−クロロアクリルアニリド、m−ニトロアクリルアニリド、m−メトキシアクリルアニリド等のアニリド類。
(12)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、β−クロロエチルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(13)塩化ビニル、ビニリデンクロライド、ビニリデンシアナイド等のビニル誘導体。
(14)1−メチル−1−メトキシエチレン、1,1−ジメトキシエチレン、1,2−ジメ トキシエチレン、1,1−ジメトキシカルボニルエチレン、1−メチル−1−ニトロエチレン等のエチレン誘導体類。
(15)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等のビニル系単量体。
(16)グリシジルメチルアクリレート、グリシジルメチルメタクリレート等のグリシジルアクリレート類。
(17)α−シアノメチルアクリレート、α−シアノエチルアクリレート、α−シアノメチルメタクリレート等のα−シアノアクリレート類。
【0213】
これらのモノマーの重合体のうち、この発明におけるフッ素系界面活性剤として好ましいものは一般式(1)、(2)または(3)で表されるモノマーの1種または2種以上とポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート類、不飽和カルボン酸類、グリシジルアクリレート類、α−シアノアクリレート類、アミド類のうちのすくなくとも1種を含む1種または2種以上のモノマーとの共重合体である。
【0214】
例えばサーフロン「S−381」、「S−382」、「SC−101」、「SC−102」、「SC−103」、「SC−104」(いずれも旭硝子(株)製)、フロラード「FC−430」、「FC−431」、「FC−173」(いずれもフロロケミカル−住友スリーエム(株)製)、エフトップ「EF352」、「EF301」、「EF303」(いずれも新秋田化成(株)製)、シュベゴーフルアー「8035」、「8036」(いずれもシュベグマン(株)製)、「BM1000」、「BM1100」(いずれもビーエム・ヒミー(株)製)、メガファック「F−171」、「F−177」(いずれも大日本インキ化学(株)製)、などを挙げることができる。
【0215】
上記非イオン界面活性剤、両性界面活性剤又はフッソ系界面活性剤の上記画像形成層中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0216】
さらに、この発明の画像形成層中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0217】
Si系添加剤
表面摩擦係数を前記の適度な値にするために、シリコーン油、シリコーン−アルキレンオキシド共重合体(たとえばユニオンカーバイド社から市販されているL−5410)のような界面活性剤、日本ユニカー製のようなシリコーン系活性剤、シリコーン油含有脂肪族エポキシド類、ケイ素含有モノエポキシド等を挙げることができる。東芝シリコーン株式会社1994年発行の「新シリコーンとその応用」、アズマックス株式会社1996年発行の「特殊シリコーン試薬カタログ」等記載されているSi系添加剤を使用することもできる。添加量は0.01〜1質量%が好ましい。
【0218】
塗布方法
本発明に係わる感光性組成物を支持体上に塗布する際に用いる塗布方法としては、従来公知の方法、例えば回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、スプレイ塗布、エアースプレイ塗布、静電エアースプレイ塗布、ロール塗布ブレード塗布及びカーテン塗布等の方法が用いられる。この際塗布量は用途により異なるが、例えば固形分として0.05〜5.0g/m2の塗布量が好ましい。なお、塗布量が少なくなるにつれて見掛の感度が大になるが画像形成層の皮膜特性が低下する。
【0219】
ここで、塗布された上記感光性組成物の塗布層は30℃以上の乾燥温度で5sec以上の時間で支持体上で乾燥されるのが好ましく、特に好ましくは、50℃以上の乾燥温度で10secの乾燥時間が好ましい。更には、該乾燥条件により得られた画像形成材料の画像形成層表面の残留溶剤が20mg/m2以下になるように加工されるのが好ましい。
【0220】
塗布溶剤
本発明においては、塗布溶剤に制限はなく、塗布溶剤を使用する場合は例えば、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、n−ヘキサノール、2−ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタングリコール、ジメチルトリグリコール、フリフリルアルコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、ブチルフェニルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、イソホロン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、炭酸プロピレン、酢酸フェニル、酢酸−sec−ブチル、酢酸シクロヘキシル、シュウ酸ジエチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、γ−ブチルラクトン、3−メトキシ−1−ブタノール、4−メトキシ−1−ブタノール、3−エトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−エチル−1−ペンタノール、4−エトキシ−1−ペンタノール、5−メトキシ−1−ヘキサノール、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−3−ペンタノン、6−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−3−ペンタノン、6−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、3−メチル−3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、MC、EC、アリルアルコール、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチルカルビトール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、アセトン、メチルプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチアミルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、DMF、DMAc、n−ペンタン、2−メチルペンタン、3−エチルペンタン、メチルシクロペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、クメン、n−アミルベンゼン、DMDG、エタノール等が挙げられる。
【0221】
その他の添加剤等
本発明に係わる活性光線硬化層中には、不活性性成分として染料、顔料、増粘剤、可塑剤、安定剤、レベリング剤、粘着付与剤、光退色防止剤として紫外線吸収剤等を含んでもよい。さらに前記紫外線硬化保護層は、その表面に一定パターンの凸凹を形成することができる。紫外線硬化護層表面に特定パターンの凹凸、例えばある種のマーク、細紋あるいは地紋などの紋様、などを表面に形成すると、偽造物、変造物との識別を可能にすることができる点で好ましい。
【0222】
紫外線硬化保護層の表面を凸凹にするには、例えば紫外線硬化保護層を、ある特定パターンのグラビヤ目を持つ版によってコーティングする方法、紫外線硬化性樹脂が半硬化した時点で型押しする方法などにより凹凸を形成することができる。
【0223】
[不飽和基含有樹脂]
本発明に係わる不飽和基含有樹脂とは、ラジカルまたは酸により重合可能な基を含むことを特徴としており、不飽和基とはここでは、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を表す。具体的には下記に示すような構造を持つ樹脂を挙げることができる。
【0224】
【化3】

【0225】
本発明に係わる好ましい反応性樹脂は、前記一般式(1)が好ましい。R1及びR2は各々水素原子又はメチル基を表す。Rは、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のフェニル基、アルキル基、R3が表すアルキル基としては、メチル基、エチル基等炭素数7までのアルキル基が好ましく、R3が表すアリール基としてはフェニル基、ナフチル基等の炭素数10までのアリール基が好ましい。
【0226】
Lが表す2価の連結基としては、例えば、−CH2−CH(OH)−CH2−O−、−OCH2CH(OH)CH2OCO−、−OCH2CH2OCONH−R4−NHCOOCH2−(R4はp−フェニレン基)、−OCH2CH2OCOCH2CH2COOCH2−、−OCH2CH2OCO−R5−COOCH2−(R5はo−フェニレン基)等が挙げられる。
【0227】
この発明において、Lは−O−CH2CH(OH)−CH2O−CO−であることが好ましい。この発明のビニル系高分子重合体は、前記一般式(1)で示される単位を好ましくは0.001〜20質量%、より好ましくは0.001〜10質量%含有する。前記一般式(1)で示される単位の含有量が0.001質量%より低い場合には、硬化層の重合度低下による耐薬品性低下、スクラッチ強度低下し易く、20質量%特に20質量%を越えると合成中ゲル化してしまい収率が悪く実用上支障がある。若しくは反応性基が多いため架橋密度が異常に高くなり樹脂自体の柔らかさを失ってしまい破断伸度の低下をしてしまう等の問題が生じる。
【0228】
また、カルボキシル基の含有量は、酸価で3〜300が好ましく、より好ましくは10〜200である。カルボキシル基の含有量が酸価で3より低い場合には硬化層のと対面する樹脂層の接着性が劣化する。
【0229】
本発明のビニル系高分子重合体中へのカルボキシル基の導入は該重合体を合成する際に予めカルボキシル基を有するモノマー、例えば、α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等又はこれらの誘導体を共重合性成分として加える方法を使用することができる。上記のような誘導体を使用する場合、一度無水物(無水マレイン酸等)で共重合させ、その後の片側のカルボン酸部分にメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールで無水物を加水分解して片側のカルボン酸部分に長鎖のアルキル基を付加することもできる。また、高分子重合体中の活性基、例えばヒドロキシル基、アミノ基にジカルボン酸や酸無水物を高分子反応させる方法等により行なわれる。
【0230】
前記一般式(1)で示される重合単位を含みかつα,β−不飽和カルボン酸を含む重合体の合成は、第一ステップとしてα,β−不飽和カルボン酸を含有するビニル共重合体を公知の方法で合成した後、第二のステップとしてグリシジル基(エポキシ基)を含有する不飽和エチレン性化合物を添加して合成することができる。グリシジル基(エポキシ基)を含有する不飽和エチレン性化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等を代表例として挙げられるがこれらに限定されるものでなく、グリシジル基(エポキシ基)を含有する不飽和エチレン性化合物であればよい。
【0231】
本発明のビニル系高分子重合体に含まれる前記一般式(1)で示される重合単位以外の構成モノマーとしては、下記(1)〜(17)に記載するモノマーが挙げれらる。
(1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えば、o−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート等。
(2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
(3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えば、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
(4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えば、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
(5)α,β−不飽和カルボン酸類、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等。
(6)置換または無置換のアルキルアクリレート、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等。
(7)置換または無置換のアルキルメタクリレート、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等。
(8)アクリルアミドもしくはメタクリルアミド類、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
(9)フッ化アルキル基を含有するモノマー、例えば、トリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、へプタデカフルオロデシルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
(10)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
(11)ビニルエステル類、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
(12)スチレン類、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
(13)ビニルケトン類、例えば、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
(14)オレフィン類、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
(15)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
(16)シアノ基を有するモノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−シアノスチレン、m−シアノスチレン、p−シアノスチレン等。
(17)アミノ基を有するモノマー、例えば、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジェンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0232】
この発明のビニル系高分子重合体の分子量は5000〜50000が好ましく、より好ましくは7000〜50000である。分子量が5000より小さいと塗膜形成能が低下し、また耐薬品性が劣化する傾向にある。逆に50000より大きい場合には樹脂の塗布溶剤への溶解性が問題となる。
【0233】
この発明のビニル系高分子重合体の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0234】
【化4】

【0235】
【化5】

【0236】
重合性二重結合を1分子中に少なくとも1個有するモノマー又はオリゴマーとしては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を1分子中に少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー又はプレポリマーであればどのようなものでもよく、公知の化合物が特に制限はなく使用することができる。具体的化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、ホスファゼンモノマー、トリエチレングリコール、イソシアヌール酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性、ウレタン変性アクリレート等が挙げられる。中でも、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル化合物が特に好適に使用できる。これらの化合物のうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0237】
その他に、付加重合もしくは架橋可能な化合物として、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、またはメタクリル酸を導入し、光重合性を付与した、所謂プレポリマーと呼ばれるものも好適に使用できる。これらはプレポリマーだけ1種または2種以上を混合して用いてもよいし、上述のモノマー類と混合して用いても良い。プレポリマーとして、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類、例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート・キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート、例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類、その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類等が挙げられる。
【0238】
重合又は硬化可能な化合物は全感光性層組成物中の5質量%以上(好ましくは20質量%以上)〜97質量%(好ましくは95質量%以下)の範囲で配合される。
【0239】
[不飽和基含有Si、F化合物(重合度の低下のないスベリ剤)]
不飽和基含有Si化合物とは、本文に示した不飽和基を有するカップリング剤の他に、末端ビニルポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサンージメチルシロキサンコポリマー、ビニルメチルシロキサンージメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端、ビニルガム、ビニルメチルシロキサンホモポリマー、ビニルT構造ポリマー、ビニルメトキシシロキサンホモポリマー、Hシリコーン、エポキシシリコーン、メタクリレートシリコーン、メルカプトシリコーン、アリル基変性シリコーン、(メタ)アクリロイル基シリコーン等を挙げることができ、好ましい添加量は、0.01〜50質量%で、更に好ましくは、0.05〜30質量%である。具体的には、日本ユニカー製MAC−2101、MAC−2301等である。ビニル東芝シリコーン株式会社1994年発行の「新シリコーンとその応用」、アズマックス株式会社1996年発行の「特殊シリコーン試薬カタログ」等記載されているSi系添加剤を使用することもできる。
【0240】
不飽和基含有F化合物とは、例えば、共栄社化学株式会社のライトエステルM−3F、ライトエステルM−4F、ライトエステルM−6F、ライトエステルFM−108、ライトアクリレートFA−108等、もしくは前記に挙げられる不飽和基含有F系化合物を単独添加してもよい。好ましい不飽和基含有Si、F化合物は添加量は、0.01〜20質量%であり、更に好ましくは0.01〜10質量%である。
【0241】
[保護層の形成方法]
本発明に係わる転写箔からの転写により保護層を形成する。具体的には、上記の画像を表面に有するカード面と若しくは光学変化素子を有するカードに熱転写シートの転写面を重ね、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプマシン等の加熱しながら加圧する手段により熱転写シート側から押圧し、その後熱転写シートの支持体を剥離することにより保護層を形成する。
【0242】
特開平08−324137、特開平04−247486、特開平04−286696、特開平04−320898、特開平05−139093、特開平06−072018等の保護層を形成若しくは形成方法も用いることができる。
【実施例】
【0243】
以下、実施例を挙げてこの発明を詳細に説明するが、この発明の態様はこれに限定されない。なお、以下において「部」は「質量部」を示す。
【0244】
合成例1(不飽和基含有樹脂の作製)
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メタクリル酸メチル73部、スチレン15部、メタクリル酸12部とエタノール500部、α、α′−アゾビスイソブチロニトリル3部を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させた。その後、トリエチルアンモニウムクロライド3部、グリシジルメタクリレート0.6部を加え、3時間反応させ目的のアクリル系共重合体の合成バインダー1を得た。
Mw.17000、酸価67.8
支持体の作製
厚み20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムでWYKOで測定した結果Ra(中心線平均粗さ)が0.02μであった。
【0245】
Ra測定方法(支持体の表面粗さ測定方法)
支持体表面の3次元表面粗さはWYKO社製非接触3次元微小表面測定装置:RST PLUS を使用して測定した。
【0246】
測定は「バーティカルスキャン法」モードで、対物レンズ:40倍、倍率セレクター:0.5倍、空間サンプリング間隔:0.42×0.48μmの条件で行なった。
【0247】
測定は最初に115×150μm程度の範囲で行い、不連続なデータがあった場合は装置に付属のソフトウエアにより修復(連続化)した後、範囲を選択して100×100μmのデータに加工した(データ点数:238×209)。測定データは付属のソフトウエアによりヒストグラム表示とし、このデータをもとに表面の凹凸高さを計算した。
【0248】
実施例
《顔画像と属性情報とフォーマット印刷を設けたカード材の作製》
(支持体の作製)
厚さ350μmのポリエチレンテレフタレート〔帝人(株)製:テトロンHS350〕の両面に白色ポリプロピレン樹脂〔三菱油化(株)製:ノーブレンFL25HA〕をエクストルージョンラミネート法で厚み50μmになるように設けた。得られた複合樹脂シートの一方の面に25W/m2・分でコロナ放電処理を施し、このシートを支持体とした。
【0249】
(昇華型感熱転写記録用の受像層の作製)
前記支持体のコロナ放電処理した面に下記組成の第1受像層形成用塗工液、第2受像層形成用塗工液及び第3受像層形成用塗工液をこの順に塗布乾燥して、それぞれの厚みが0.2μm、2.5μm、0.5μmになるように積層することにより受像層を形成した。
【0250】
〈第1受像層形成用塗工液〉
ポリビニルブチラール樹脂 9部
〔積水化学工業(株)製:エスレックBL−1〕
イソシアネート 1部
〔日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートHX〕
メチルエチルケトン 80部
酢酸ブチル 10部
〈第2受像層形成用塗工液〉
ポリビニルブチラール樹脂 6部
〔積水化学工業(株)製:エスレックBX−1〕
金属イオン含有化合物(化合物MS) 4部
メチルエチルケトン 80部
酢酸ブチル 10部
〈第3受像層形成用塗工液〉
ポリエチレンワックス 2部
〔東邦化学工業(株)製:ハイテックE1000〕
ウレタン変性エチレンアクリル酸共重合体 8部
〔東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254〕
メチルセルロース〔信越化学工業(株)製:SM15〕 0.1部
水 90部
(筆記層の作製)
支持体上の受像層とは反対面に王子油化(株)製:ユポDFG−65シートを貼合し下記組成の第1筆記層形成用塗工液、第2筆記層形成用塗工液及び第3筆記層形成用塗工液をこの順に塗布乾燥して、それぞれの厚みが5μm、15μm、0.2μmになる様に積層することにより受像層を形成した。
【0251】
〈第1筆記層形成用塗工液〉
ポリエステル樹脂〔東洋紡績(株)製:バイロン200〕 8部
イソシアネート 1部
〔日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートHX〕
カーボンブラック 微量
二酸化チタン粒子〔石原産業(株)製:CR80〕 1部
メチルエチルケトン 80部
酢酸ブチル 10部
〈第2筆記層形成用塗工液〉
ポリエステル樹脂 4部
〔東洋紡績(株)製:バイロナールMD1200〕
シリカ 5部
二酸化チタン粒子〔石原産業(株)製:CR80〕 1部
水 90部
〈第3筆記層形成用塗工液〉
ポリアミド樹脂〔三和化学工業(株)製:サンマイド55〕 5部
メタノール 95部
得られた筆記層の中心線平均粗さは1.34μmであった。
【0252】
(フォーマット印刷)
樹脂凸版印刷法により、ロゴとOPニスを順次印刷した。
【0253】
(昇華型感熱転写記録用のインクシートの作製)
裏面に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートに下記組成のイエローインク層形成用塗工液、マゼンタインク層形成用塗工液、シアンインク層形成用塗工液を各々の厚みが1μmになるように設け、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のインクシートを得た。
【0254】
〈イエローインク層形成用塗工液〉
イエロー染料(化合物Y−1) 3部
ポリビニルアセタール 5.5部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン 1部
〔東亜合成化学工業(株)製:レデダGP−200〕
ウレタン変性シリコンオイル 0.5部
〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
〈マゼンタインク層形成用塗工液〉
マゼンタ染料(化合物M−1) 2部
ポリビニルアセタール 5.5部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン 2部
〔東亜合成化学工業(株)製:レデダGP−200〕
ウレタン変性シリコンオイル 0.5部
〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
〈シアンインク層形成用塗工液〉
シアン染料(化合物C−1) 1.5部
シアン染料(化合物C−2) 1.5部
ポリビニルアセタール 5.6部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン 1部
〔東亜合成化学工業(株)製:レデダGP−200〕
ウレタン変性シリコンオイル 0.5部
〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
(溶融型感熱転写記録用のインクシートの作製)
裏面に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートに下記組成のインク層形成用塗工液を厚みが2μmになるように塗布乾燥してインクシートを得た。
【0255】
〈インク層形成用塗工液〉
カルナバワックス 1部
エチレン酢酸ビニル共重合体 1部
〔三井デュポンケミカル社製:EV40Y〕
カーボンブラック 3部
フェノール樹脂〔荒川化学工業(株)製:タマノル521〕 5部
メチルエチルケトン 90部
(顔画像の形成)
受像層と昇華型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせインクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.23W/ドット、パルス幅0.3〜4.5m秒、ドット密度16ドット/mmの条件で加熱することにより画像に階調性のある人物画像を受像層に形成した。この画像においては上記色素と受像層のニッケルが錯体を形成している。
【0256】
(文字情報の形成)
OPニス部と溶融型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせインクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.5W/ドット、パルス幅1.0m秒、ドット密度16ドット/mmの条件で加熱することにより文字情報をOPニス上に形成した。
【0257】
上記により顔画像と属性情報とフォーマット印刷を設けたカード材の作製を行った。
【0258】
《転写箔1の作製》
ダイアホイルヘキスト(株)製ポリエチレンテレフタレート(S−25)の片面に下記処方の剥離層を設けた。
【0259】
(剥離層);膜厚0.5μm
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、ダイアナールBR−87) 5部
ポリビニルアセトアセタール(SP値:9.4)(積水化学(株)、KS−1) 5部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 50部
次いで、剥離層上に、光学変化素子層(ホログラム画像)、中間層形成塗工液、接着層形成塗工液をこの順に塗布乾燥し積層することにより転写箔1を作製した。
【0260】
(光学変化素子層)膜厚2μm
ホログラム画像
〈中間層形成塗工液〉膜厚1.0μm
表1に記載のポリビニルブチラール樹脂 10部
〔積水化学(株)製:エスレックBシリーズ〕
メチルエチルケトン 90部
タフテックスM−1953(旭化成) 1部
硬化剤添加時の硬化は50℃、24時間で行った。
【0261】
〈接着層形成塗工液〉
ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体 8部
〔東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254B〕
ポリアクリル酸エステル共重合体 2部
〔日本純薬(株)製:ジュリマーAT510〕
水 45部
エタノール 45部
《転写箔2の作製》
前記転写箔1において、光学変化素子層(膜厚2μm)を設けた後に、中間層にかわって、以下に示す樹脂層A(膜厚0.5μm)、樹脂層B(膜厚0.5μm)を順次塗布乾燥して設けその後に接着層を設けた以外は同様にして転写箔2を得た。
【0262】
〈樹脂層A形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBX−1 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
メチルエチルケトン 17.0部
シクロヘキサノン 14.0部
トルエン 69.0部
〈樹脂層B形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBL−S 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
シクロヘキサノン 10.0部
トルエン 90.0部
尚、樹脂層A、樹脂層Bについて、接着層との剥離強度をそれぞれ前記の方法により測定した(表1に示した)。
【0263】
樹脂層A、樹脂層B、また接着層、溶解性パラメータについては、前記富士通株式会社製のCACheという分子計算パッケージ中のProject Leaderという計算プログラムをいて計算した。
【0264】
これによると接着層の溶解性パラメータ値は22(MPa)1/2であり、また、各樹脂層A、Bについて、前記の計算方法により、各溶解性パラメータを算出し、それぞれの層の溶解性パラメータ値と、接着層の溶解性パラメータ値の差(ΔSp)をとったものを同じく表1に示した。
【0265】
以下の樹脂層A,Bについても同様に剥離強度、ΔSpを算出して表1に示した。
【0266】
《転写箔3の作製》
前記転写箔2において、樹脂層A(膜厚0.5μm)、樹脂層B(膜厚0.5μm)の塗工液を以下に代え転写箔3を得た。
【0267】
〈樹脂層A形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBX−1 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
タフテックM−1953(旭化成) 30.0部
メチルエチルケトン 17.0部
シクロヘキサノン 14.0部
トルエン 69.0部
〈樹脂層B形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBL−S 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
タフテックスM−1953(旭化成) 30.0部
シクロヘキサノン 10.0部
トルエン 90.0部
《転写箔4の作製》
前記転写箔2において、樹脂層A(膜厚0.5μm)、樹脂層B(膜厚0.5μm)の塗工液を以下に代え転写箔4を得た。
【0268】
〈樹脂層A形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBX−1 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
タフテックM−1953(旭化成) 30.0部
コロネート3041 20.0部
メチルエチルケトン 17.0部
シクロヘキサノン 14.0部
トルエン 69.0部
〈樹脂層B形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBL−S 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
タフテックM−1953(旭化成) 30.0部
コロネート3041 20.0部
シクロヘキサノン 10.0部
トルエン 90.0部
《転写箔5の作製》
ダイアホイルヘキスト(株)製ポリエチレンテレフタレート(S−25)の片面に下記処方の剥離層を設けた。
【0269】
(剥離層);膜厚0.5μm
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、ダイアナールBR−87) 5部
ポリビニルアセトアセタール(SP値:9.4)(積水化学(株)、KS−1) 5部
メチルエチルケトン 40部
トルエン 50部
次いで、剥離層上に活性光線硬化層(透明保護層)形成塗工液、ホログラム層、中間層形成塗工液、接着層形成塗工液をこの順に塗布乾燥し積層することにより転写箔5を作製した。
【0270】
以下に示される活性光線硬化層形成塗工液を塗布膜厚5.0μmで塗布し活性光線硬化層を形成した。塗布後、90℃,30secで乾燥を行い、次いで水銀灯(300mJ/cm2)で光硬化を行った。
【0271】
〈活性光線硬化層形成塗工液〉
新中村化学社製A−9300/新中村化学社製EA−1020=35/11 75部
反応開始剤イルガキュア184(日本チバガイギー社製) 5部
合成例1の不飽和基含有樹脂 48部
トルエン 500部
(光学変化素子層)膜厚2μm
ホログラム画像
〈樹脂層A形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBX−1 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
メチルエチルケトン 17.0部
シクロヘキサノン 14.0部
トルエン 69.0部
〈樹脂層B形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBL−S 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
シクロヘキサノン 10.0部
トルエン 90.0部
〈接着層形成塗工液〉
ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体 8部
〔東邦化学工業(株)製:ハイテックS6254B〕
ポリアクリル酸エステル共重合体 2部
〔日本純薬(株)製:ジュリマーAT510〕
水 45部
エタノール 45部
《転写箔6の作製》
前記転写箔5において、樹脂層A(膜厚0.5μm)、樹脂層B(膜厚0.5μm)の塗工液を以下に代え転写箔6を得た。
【0272】
〈樹脂層A形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBX−1 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
タフテックM−1953(旭化成) 30.0部
メチルエチルケトン 17.0部
シクロヘキサノン 14.0部
トルエン 69.0部
〈樹脂層B形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBL−S 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
タフテックM−1953(旭化成) 30.0部
シクロヘキサノン 10.0部
トルエン 90.0部
《転写箔7の作製》
前記転写箔5において、樹脂層A(膜厚0.5μm)、樹脂層B(膜厚0.5μm)の塗工液を以下に代え転写箔7を得た。
【0273】
〈樹脂層A形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBX−1 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
タフテックM−1953(旭化成) 30.0部
コロネート3041 20.0部
メチルエチルケトン 17.0部
シクロヘキサノン 14.0部
トルエン 69.0部
〈樹脂層B形成塗工液〉膜厚0.5μm
エスレックBL−S 50.0部
〔積水化学工業(株)製ポリビニルブチラール樹脂〕
タフテックM−1953(旭化成) 30.0部
コロネート3041 20.0部
シクロヘキサノン 10.0部
トルエン 90.0部
各転写箔について、樹脂層A及びBに含有させた同一成分と、それぞれの樹脂層中の固形分に対する量(%)を表1に示した。
【0274】
また、樹脂層A、Bそれぞれと接着層間の剥離強度、また、接着層とそれぞれの樹脂層との溶解性パラメータ差(ΔSp)についても表1に示した。
【0275】
《カード材への転写層の形成》
作製したカード材の記録面と転写箔1〜7それぞれの転写層面を重ねて、外径3cmの金属ローラーの周囲にシリコーンゴム(ゴム硬度80)をつけたヒートローラーの表面温度を190℃に加熱し、転写箔側から押圧して、転写速度23mm/秒、線圧10kg/cmの条件で転写層を転写し、転写箔の支持体を剥離してカード材にホログラム層を含む保護層を形成し、表1に示すようなIDカード1〜7を作製した。
【0276】
【表1】

【0277】
作製したIDカードについて以下の試験を行った。
【0278】
[接着性]
a.硬化した紫外線硬化保護層の表面にセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製)を強く貼り付け、急速に前記表面からセロハン粘着テープを剥離した後、剥離状態を観察した。
b.JIS K5400ゴバン目テープ法に規定される方法に従い、硬化した保護層の表面に、ナイフ等の鋭利な刃物で30°の角度で切り込み、素地に達する1mmまたは1.5mmのゴバン目100個(10×10)を作った。ゴバン目を作った後、その表面にセロテープ(登録商標)を貼り、テープをはがしてゴバン目のはがれた数を測定して評価した。評価は、下記の評価点数法に基づいて行われた。
◎ 正方形の一目一目にはがれが全くない場合
○ 欠損部の面積は全正方形面積の5%未満である場合
△ 欠損部の面積は全正方形面積の5%以上、10%未満ある場合
× 欠損部の面積は全正方形面積の10以上%ある場合
[耐溶剤性]
その結果、表面保護層の表面は、どの溶剤でも変質を生じなかった。
【0279】
作製したIDカード試料を20℃のメチルエチルケトンに5分間浸し接着性を調べた。
目視で観察し、溶剤の浸透によりハガレてしまっているものを×、ハガレが観察されるものを△、ハガレが一部で微少観察されるが殆ど生じていないものを○、ハガレが全く生じていないものを◎とした。
【0280】
以上の結果を表2に示す。
【0281】
【表2】

【0282】
表1及び表2より、本発明に係わる転写箔を用いて作製したIDカードは保護層の接着性に優れ、耐溶剤性もつよく、耐久性に優れていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0283】
【図1】画像記録体作製装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】画像記録体の層構成を示す図である。
【図3】光学変化素子転写箔の実施の形態を示す図である。
【図4】光学変化素子転写箔の一例を示す断面図である。
【図5】光学変化素子を有するIDカードの一例を示す断面図である。
【図6】光学変化素子転写箔の一例を示す断面図である。
【図7】光学変化素子を有するIDカードの一例を示す断面図である。
【図8】光学変化素子転写箔の一例を示す断面図である。
【図9】光学変化素子を有するIDカードの一例を示す断面図である。
【図10】転写箔ロールを示す図である。
【符号の説明】
【0284】
1 画像記録体作製装置
10 カード材供給部
20 情報記録部
40 光学変化素子付与部
43 光学変化素子転写箔
50 カード材
51 支持体
52 情報担持層
90 活性光線硬化層付与部及び/又は活性光線照射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に層間剥離強度が、
接着層−樹脂層A間の剥離強度<接着層−樹脂層B間の剥離強度
の関係を満たす樹脂層Bを樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とする転写箔。
【請求項2】
樹脂層Aと樹脂層Bに、1種以上の同一成分、又は構成するモノマー種が同一であるポリマー成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の転写箔。
【請求項3】
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項1に記載の転写箔。
【請求項4】
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項2に記載の転写箔。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の転写箔を転写して作製したことを特徴とするIDカード。
【請求項6】
接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に、層間剥離強度が、
接着層−樹脂層A間の剥離強度<接着層−樹脂層B間の剥離強度
の関係を満たす樹脂層Bを、樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とするIDカード。
【請求項7】
樹脂層Aと樹脂層Bに、1種以上の同一成分、又は構成するモノマー種が同一であるポリマー成分を含有することを特徴とする請求項6に記載のIDカード。
【請求項8】
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項6に記載のIDカード。
【請求項9】
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項7に記載のIDカード。
【請求項10】
接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に溶解性パラメータ(SP)値が、|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Aを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値|>|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Bを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値|
の関係を満たす樹脂層Bを、樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とする転写箔。
【請求項11】
樹脂層Aと樹脂層Bに、1種以上の同一成分、又は構成するモノマー種が同一であるポリマー成分を含有することを特徴とする請求項10に記載の転写箔。
【請求項12】
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項10に記載の転写箔。
【請求項13】
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項11に記載の転写箔。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の転写箔を転写して作製したことを特徴とするIDカード。
【請求項15】
接着層と光学変化素子層との間に樹脂層Aを有し、更に溶解性パラメータ(SP)値が、|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Aを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値|>|接着層を構成する樹脂層の溶解性パラメータ値−樹脂層Bを構成する樹脂層の溶解性パラメータ値|
の関係を満たす樹脂層Bを、樹脂層Aと接着層との間に有することを特徴とするIDカード。
【請求項16】
樹脂層Aと樹脂層Bに、1種以上の同一成分、又は構成するモノマー種が同一であるポリマー成分を含有することを特徴とする請求項15に記載のIDカード。
【請求項17】
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項15に記載のIDカード。
【請求項18】
活性光線硬化層を有することを特徴とする請求項16に記載のIDカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−88524(P2006−88524A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276927(P2004−276927)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】