転写装置および転写方法
【課題】ナノインプリント加工の大面積化、高スループット化、高品質化を達成できる新規な転写装置および転写方法の提供。
【解決手段】予め表面に樹脂が塗布された基材フィルムF1に、所定の微細パターンが形成された転写板31aを押し当ててその樹脂に当該微細パターンを転写する方法であって、前記転写板31aを筒状に加工してから弾性層31bを介して回転軸32に着脱自在に取り付けた後、ニップロール33で前記基材フィルムF1を前記回転軸32上の転写板31aの表面に押し付けるようにして連続して送り出しながら、その樹脂J上に所定の微細パターンを連続して転写する。これによって、基材フィルムF1上に所定の微細パターンを確実かつ連続して転写できるため、ナノインプリント加工の大面積化、高スループット化、高品質化を容易に達成できる。
【解決手段】予め表面に樹脂が塗布された基材フィルムF1に、所定の微細パターンが形成された転写板31aを押し当ててその樹脂に当該微細パターンを転写する方法であって、前記転写板31aを筒状に加工してから弾性層31bを介して回転軸32に着脱自在に取り付けた後、ニップロール33で前記基材フィルムF1を前記回転軸32上の転写板31aの表面に押し付けるようにして連続して送り出しながら、その樹脂J上に所定の微細パターンを連続して転写する。これによって、基材フィルムF1上に所定の微細パターンを確実かつ連続して転写できるため、ナノインプリント加工の大面積化、高スループット化、高品質化を容易に達成できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ナノインプリント(nano-imprint)技術などのように数十〜数百ナノ領域の微細な凹凸パターン(以下、「微細パターン」と称す)の転写(賦型)が簡単にできる転写装置および転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
係るナノインプリント技術は、樹脂薄膜が塗布された基板にナノスタンパ(転写板)などと称される金型を押し当てて所望の凹凸パターンを転写する成形加工技術であり、従来の半導体リソグラフィのコア技術である光リソグラフィや電子線直接描画法などに比べて簡便・低コストにナノスケールの加工が可能であるため、半導体のみならず光デバイス、ストレージメディア、バイオチップ、薄型ディスプレイなど様々な分野への応用が研究されている。
【0003】
しかしながら、現状のナノインプリント技術は、いわゆるバッチ処理であって一度のプリント処理単位では一定サイズ(ナノスタンパのサイズ)のものしか得られないため、例えば、このナノインプリント技術を用いて液晶パネル向けの拡散フィルムや反射防止フィルム、ワイヤー・グリッド偏光フィルムなどを製造するにあたっては、大面積化、高スループット化が課題となってくる。
【0004】
そこで、本発明者らは以下の特許文献1〜4などに示すような従来技術を応用することでナノインプリント製品の大面積化、高スループット化の可能性を検討している。
すなわち、本発明者らは、従来平板状であったナノスタンパをロール状に加工(ロールスタンパ)し、これを基材フィルムを繰り出す繰出しロールと、これを巻き取る巻取りロールとの間に設け、繰出しロールから連続して繰り出される基材フィルム上の樹脂にそのロールスタンパを連続して接触させてそのロールスタンパ表面の微細パターンを基材フィルム上に連続して転写するというものである。
【特許文献1】特許第2533379号公報
【特許文献2】特許第3218662号公報
【特許文献3】特開2005−161531号公報
【特許文献4】特開平5−325272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜4などに示すような従来技術をそのままナノインプリント加工に適用した場合、以下に示すような問題が生ずることが分かった。
先ず、従来の転写板(ナノスタンパ)は、電鋳金型から形成される厚さ0.数mmのNi合金薄板からなるため、これを稼働中に剥離することなく回転軸のロール表面にしっかりと取り付けるのは容易ではない。すなわち、高スループット化を図るべくこのロールスタンパを高速で回転させる場合に、その転写板(ナノスタンパ)が回転軸から剥離したりずれたりしないように接着剤や溶接などによって回転軸と一体となるように固定しなければならず、その作業は容易ではない。
【0006】
しかも、この転写板(ナノスタンパ)には、基材フィルムの滓(樹脂)や埃あるいはゴミや油などが付着するため、定期的にあるいは頻繁に洗浄や交換を行わなくてはならないが、その転写板(ナノスタンパ)が前記のように接着剤や溶接などによって回転軸に固定されていると、その回転軸ごと脱着、洗浄などをしなければならず、その作業も容易ではない。
【0007】
次に、ロールスタンパ表面の真円度(凹凸)が例えば200μmを超えると、基材フィルムとロールスタンパとの接触面圧が一定でなくなり、その結果、その微細な凹凸パターンが転写された樹脂の膜厚が大きく変動して加工品質を大きく損なうことがある。
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、係る不都合を確実に回避してナノインプリント加工の大面積化、高スループット化を達成できる新規な転写装置および転写方法を提供するものである。
また、本発明の目的は、高品質なナノインプリント加工を実現できる新規な転写装置および転写方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、
繰出しロールから繰り出される基材フィルムと接してその表面に所定の微細パターンを転写する転写ロールと、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムを巻き取る巻取りロールとを有する転写装置であって、
前記転写ロールは、前記基材フィルムと接触する外周面に前記所定の微細パターンが形成されると共にその内周面に弾性層が形成された転写筒と、当該転写筒の内側に挿入されて当該転写筒を前記弾性層を介して着脱自在に挿着する回転軸と、当該回転軸に挿着された前記転写筒に接して前記基材フィルムをその外周面に押圧するニップロールとを有することを特徴とする転写装置。
【0009】
また、請求項2の発明は、
請求項1に記載の転写装置において、前記ニップロールを、前記回転軸に挿着された転写筒と前記基材フィルムとの合流部に設けたことを特徴とする転写装置である。
また、請求項3の発明は、
請求項1または2に記載の転写装置において、前記ニップロールは、少なくともその表面が弾性変形可能な材料からなっていることを特徴とする転写装置である。
また、請求項4の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の転写装置において、前記転写筒は、前記所定の微細パターンを有する矩形状の転写板を、その微細パターンが外側に位置するように筒状に曲げ加工してからその両縁部を突き合わせ溶接してなることを特徴とする転写装置である。
【0010】
また、請求項5の発明は、
請求項4に記載の転写装置において、前記転写板の突き合わせ溶接は、マイクロプラズマ溶接によって行うことを特徴とする転写装置である。
また、請求項6の発明は、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の転写装置において、前記転写筒は、ロール電鋳法によって形成されたものであることを特徴とする転写装置である。
また、請求項7の発明は、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の転写装置において、前記回転軸は、その表層部を周方向に分割した複数の分割ブロックと、当該各分割ブロックを係合保持すると共に当該各分割ブロックを径方向に移動する移動軸とからなることを特徴とする転写装置である。
【0011】
また、請求項8の発明は、
請求項7に記載の転写装置において、前記各分割ブロックの周方向の境界部は互いに櫛歯状に噛み合っていることを特徴とする転写装置である。
また、請求項9の発明は、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の転写装置において、前記転写ロールの下流側に、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置に所定の樹脂を塗布する副塗布部と、当該副塗布部によって塗布された樹脂上に所定の微細パターンを転写する副転写ロールとをさらに備えたことを特徴とする転写装置である。
【0012】
一方、請求項10の発明は、
予め表面に樹脂が塗布された基材フィルムに、所定の微細パターンが形成された転写板を押し当ててその樹脂に当該微細パターンを転写する方法であって、前記転写板をその微細パターンが外周面に位置するように筒状に加工し、その内周面に弾性層を形成してから回転軸に着脱自在に取り付けた後、前記基材フィルムを前記回転軸上の転写板の表面に接触するように連続して送り出すと共にその基材フィルムをニップロールで転写板の表面に押圧しながら、その樹脂上に所定の微細パターンを連続して転写することを特徴とする転写方法である。
【0013】
また、請求項11の発明は、
請求項10に記載の転写方法において、前記所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置にさらに所定の樹脂を塗布した後、当該基材フィルムを筒状の副転写板の表面に接触するように連続して送り出しながら、その樹脂上に所定の微細パターンを連続して転写することを特徴とする転写方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、ナノインプリント加工の連続加工が可能となり、高スループット化および大面積化を容易に達成することできる。
また、転写筒の内側に弾性層を形成すると共にその表面を押圧ローラで押圧するようにしながら転写するため、基材フィルムの面圧が一定となり、その樹脂の塗布厚が均一で高品質なナノインプリント加工ができる。
また、回転軸から転写筒のみを簡単に取り外すことができるため、着脱作業や洗浄作業などを極めて容易に行うことができる。
また、転写筒の内側の弾性層が弾性変形することで、回転軸表面の凹凸や隙間の影響を吸収することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、前記ニップロールを回転軸に挿着された転写筒と基材フィルムとの合流部に設けたため、このニップロールを、基材フィルムを転写筒側に案内する案内ロールとして兼用することができる。
請求項3の発明によれば、このニップロールが転写筒に対して押圧状態で接したときにその表面が弾性変形して転写筒に対して一定の面積を有する平面状に接するようになるため、樹脂の膜厚を均一にすることができる。
請求項4の発明によれば、この転写筒を前述したような従来製法によって得られる矩形状の転写板から形成することができるため、別個新たに製造するケースに比べて容易かつ安価に製造することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、通常、突き合わせ溶接が困難な薄板であっても、確実に突き合わせ溶接が可能となるため、従来からナノインプリント加工用の転写板として用いられているNi合金薄板などをそのまま本発明に係る転写板として適用することができる。
請求項6の発明によれば、前記転写筒としてロール電鋳法によって形成されたものを用いれば、曲げ加工や突き合わせ溶接作業が不要となる。
請求項7の発明によれば、転写筒の脱着時にはその回転軸が縮径するため、容易かつ確実に転写筒を着脱することができ、また、挿着時にはその回転軸が拡径するため、外れたり緩んだりすることなくしっかりと転写筒を保持することができる。
【0017】
請求項8の発明によれば、この回転軸を構成する各分割ブロックの周方向の境界部が互いに櫛歯状に噛み合っているため、特にその回転軸が拡径した際に形成される分割ブロック間の隙間(溝)の形状が波形あるいはジグザク状になるため、その隙間の存在による転写時の悪影響を抑えることができる。
請求項9の発明によれば、前記転写ロールの下流側に、さらに所定の樹脂を塗布する副塗布部と、この副塗布部によって塗布された樹脂上に所定の微細パターンを転写する副転写ロールとを備えたため、上流側の転写ロールで所定の微細パターンが転写できなかった基材フィルムの箇所にその後引き続き所定の微細パターンを転写することができる。
【0018】
請求項10の発明によれば、基材フィルム上に所定の微細パターンを連続して転写できるため、ナノインプリント加工の大面積化、高スループット化を容易に達成できる。また、同時に請求項1の発明のように回転軸から転写筒のみを簡単に取り外すことができるため、着脱、洗浄作業などを極めて容易に行うことができる。さらに、転写筒の内側に弾性層を形成すると共にその表面を押圧ローラで押圧するようにしながら転写するため、基材フィルムの面圧が一定となり、その樹脂の膜厚が均一で高品質なナノインプリント加工ができる。
請求項11の発明によれば、請求項9の発明と同様に上流側の転写ロールで所定の微細パターンが転写できなかった基材フィルムの箇所にその後引き続き所定の微細パターンを転写することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明に係る微細パターン転写装置100の実施の一形態を示したものである。
この転写装置100は、例えば、前述したようなナノインプリント技術を応用したワイヤー・グリッド偏光フィルムなどを連続して製造するための装置であり、図示するように、ロール状に巻き付けられたテープ状の基材フィルムF1を連続して繰り出す繰出しロール10と、この繰出しロール10から繰り出される基材フィルムF1の片面に転写用の樹脂Jを塗布する塗布部20と、この塗布部20によって転写用の樹脂Jが塗布された基材フィルムF1に所定の微細パターンを連続して転写する転写ロール30と、この転写ロール30で転写された基材フィルムF1上の微細パターンを硬化する硬化部40と、この硬化部40で硬化された微細パターンを保護するための保護フィルムF2を連続して繰り出して供給する供給ロール50と、この保護フィルムF2と基材フィルムF1とを重ね合わせた後、連続して巻き取る巻取りロール60と、これら各フィルムF1、F2の流路を構成する各種案内ロール61〜76とから主に構成されている。
【0020】
ここで、先ずこの繰出しロール10から繰り出される基材フィルムF1としては特に限定されるものではないが、例えば、前記のワイヤー・グリッド偏光フィルムなどを得る場合には、光(紫外線や放射線なども含む)を透過する性質(透明)を有するものであって、かつロール軸に沿って密着して巻き付けられる性質を有するものが望ましい。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PMMA(アクリル)、PC(ポリカーボネイト)、COP(シクロオレフィンポリマー)、TAC(トリアセチルセルロース)、易接着層を付与したPETなどを用いることができる。
また、この基材フィルムF1のサイズや膜厚なども特に限定されるものでないが、例えば、ワイヤー・グリッド偏光フィルムなどを作製する場合は、幅100mm〜1500mm×膜厚30μm〜300μm程度のものが多用される。
【0021】
次に、塗布部20は、この基材フィルムF1の片面に転写用の樹脂Jを塗布するためのものであり、その構成としては、前記先行技術文献などに開示されているような公知のもの(グラビア、ダイ、ロール、スプレー、マイクログラビア)をそのまま用いることができる。すなわち、例えば、図示するように転写用の樹脂Jが供給される樹脂槽21内にグラビアロール22の下端側を浸漬させると共に、このグラビアロール22の上端側に繰り出し直後の基材フィルムF1の下面側を当接させると共に、その上方から抑えローラ23で挟んだ状態でこのグラビアロール22を回転させることでその基材フィルムF1の下面側に樹脂槽21内の樹脂Jを一定の厚さで連続して塗布することができる。
【0022】
ここで、この基材フィルムF1に塗布される転写用の樹脂Jも特に限定されるものでなく、微細パターンの転写が容易でかつその形状を安定して保つことができるものであれば良い。現状では以下に示すような公知の紫外線硬化樹脂が最適であるが、この紫外線硬化樹脂の他、PF(フェノール樹脂)、MF(メラミン)、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)などの熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂などを用いることも可能である。
そして、この樹脂Jとして用いることができる紫外線硬化樹脂としては、光重合性プレポリマー、光重合性モノマーおよび光開始剤からなる公知のものを用いることができ、転写、硬化した後、金型から容易に剥がれるように離型しやすく、かつ基材フィルムF1との相性の良いものが望ましい。
【0023】
なお、この光重合性プレポリマーとしては、例えば不飽和ポリエステル類、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどのアクリレート類を用いることができ、また、光重合性モノマーとしては、例えばラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、シクロペンタジエンアクリレートなどの単官能性モノマーや、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの多官能モノマーを用いることができる。また、光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾインおよびその誘導体、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタールなどを用いることができる。
【0024】
また、この塗布部20によって塗布される樹脂Jの塗布厚も特に限定されるものではないが、例えば次述するようにこの樹脂Jに対して転写される微細パターンの高さが10μm以下であれば1〜15μmで良いが、転写ロール30側の微細パターンの表面精度凹凸を吸収し、かつ確実な転写を行うためには3〜15μmの範囲が好ましい。なお、この樹脂Jの塗布厚が厚すぎると、転写ロール30との接触部で樹脂が余って溢れてしまうため、前記の例では上限は微細パターンの高さとほぼ同じ10μm程度がより望ましい。
【0025】
一方、この樹脂Jに対して転写される微細パターンの高さが10〜100μm程度の場合は、パターン体積相当分に1〜10μm程度を加えた厚さで塗布することが望ましい。例えば、微細パターンが断面波形であってその高さが25μm、ピッチ50μm、頂角90度のプリズムの場合、樹脂Jの塗布厚は12.5〜22.5μmとなる。
さらに、前記のような紫外線硬化樹脂を用いた場合、その粘度としては、例えば数mPa・s〜100mPa・s、高速生産性を考慮すると数mPa・s〜50mPa・sであることが望ましい。なお、この紫外線硬化樹脂の粘度は、例えば低粘度単官能性モノマーや溶剤(エタノールなど)を適量添加することで容易に調整することができる。また、この樹脂J中には、離型剤やレベリング剤、消泡剤などの各種添加剤などを適宜添加しておいても良い。
【0026】
次に、転写ロール30は、この基材フィルムF1上に塗布された転写用の樹脂Jに対して所定の微細パターンを連続して転写(賦型)するものであり、図2に示すように外周面に所定の微細パターンが形成された転写筒31と、この転写筒31の内側に挿入されてこの転写筒31を着脱自在に保持する回転軸32と、この回転軸32と平行に位置するニップロール33とから主に構成されている。
【0027】
先ず、この転写筒31は、図3に示すように片面(図の例では下面側)に所定の微細パターンを有する矩形状の転写板31aと、この転写板31aの他の面(図の例では上面側)に重ね合わされた弾性層31bとから構成されており、図示するようにこの矩形状の転写板31aをその微細パターンが外側に、また弾性層31bが内側に位置するように筒状に曲げ加工すると共に、その両縁部を突き合わせ溶接して筒状に形成されている。そして、図2に示すようにその端面の開口部から回転軸32の外側に挿着されることで回転軸32に対して着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0028】
この転写筒31を構成する転写板31aは、従来のものと同様に電鋳金型から形成される厚さ0.1〜1.0mmのNi電鋳薄板をそのまま用いることができる。その表面硬度は、基材フィルムF1との接触や洗浄および着脱時のハンドリングなど観点から少なくともHv300以上とすることが望ましい。また、このようなNi電鋳薄板を用いる場合、その微細パターンが数μm以上の高さであれば、その表面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理やCrめっき加工処理を実施してその表面硬度を上げることができる。また、その微細パターンの高さが1μm以下の場合には、Ni電鋳薄板に代えて、例えばNi/B、Ni/P、Ni/CoなどのNi合金を用いることができる。さらに熱処理によってその表面硬度を高くしても良い。
【0029】
そして、この転写板31aをその微細パターンが外側に位置するように筒状に曲げ加工してその両縁部を突き合わせ溶接することで転写筒31が得られる。突き合わせ溶接方法としては、以下に示すようなマイクロプラズマ溶接法を用い、その電流値、プラズマガス、シールドガス、電極径、ノズル径、キャップ径、トーチ角度、アーク長さ、溶接スピードなどを微調整すれば、厚さ0.1〜1.0mm程度のNi電鋳薄板でもその溶接が可能となる。
【0030】
ここで、このマイクロプラズマ溶接法とは、水冷ノズル内で発生させた低電流(3A程度)のアーク(非移行型プラズマアーク)をノズル先端の細穴を通し、熱ピンチ効果によりさらに細くなったアーク柱を発生させ、そのアーク柱を細いままで溶接ワークに届かせるためシールドガスに少量のH(水素)を加え、その乖離熱でアーク柱表面に冷却ピンチ効果を持続させる溶接方法である。そして、この溶接方法で得られるアーク柱は極めて低電流でも発生可能で、0.1Aといった極小電流でも安定したアークが得られるものである。
【0031】
従って、このようなマイクロプラズマ溶接法を用いれば、その溶接熱によってその転写板31aが溶け落ちてしまうようなことがなく、確実に突き合わせ溶接することが可能となる。ちなみに、ステンレス鋼や耐熱耐蝕合金鋼、チタン鋼などの場合では、板厚が0.01mm(10μm)程度でも溶接が可能である。
また、この転写筒31としては、前記のように転写板31aを円筒状に加工したものの他、ロール電鋳法によってはじめから円筒状に形成されたものを用いることも可能である。
【0032】
このロール電鋳法は、例えば微細パターンを有する樹脂フィルムを型となる円筒体の内側にその微細パターン面が内向きになるように貼り付け、その内側をNi電鋳する方法であり、電鋳後、この樹脂フィルムをその内側に電鋳されたNi膜と共にその円筒体から取り外すと共に、この樹脂フィルムをNi膜から剥がすことで外面に微細パターンが形成された転写筒31が得られることになる。
【0033】
一方、この転写板31aの片面に重ね合わされる弾性層31bは、この転写板31aを弾性変形可能に支持する機能を有するものであれば良く、例えば以下に例示するような公知のゴム材料などを用いることができる。すなわち、この弾性層31bとして適用可能なゴム材料としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリル ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(AU,EU)、シリコンゴム(VMQ、FVMQ)、アクリル ゴム(ACM)、クロルスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、フッ素ゴム(FKM,FEPM、FFKM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、多硫化ゴムなどが挙げられるが、なかでも高度の耐熱性を有し、かつ電気特性や非粘着性にも優れたシリコンゴムを用いることが望ましい。
【0034】
また、この弾性層31bの厚さとしては、特に限定されるものではないが、薄すぎると、転写板31aの弾性変形量が小さすぎてその機能を発揮できないため、少なくとも、0.1mm以上の厚さが必要である。また、ハンドリングの観点からその厚さの上限は5.0mm程度であり、望ましい厚さとしては、0.1mm〜1.0mmである。
また、この弾性層31bの形成方法としては、前述したように突き合わせ溶接前に予め転写板31aに形成しておく他に、突き合わせ溶接後にその転写板31aの内周面に形成するようにしても良い。この場合の形成方法としては、例えば、弾性層用にシート状のシリコンゴムをその筒状の転写板31aの幅および長さに合わせてカットしてからその内周に沿わせるようにそのゴムの粘着力を用いて貼り付けた後、この転写板31a(転写筒31)を縮径した回転軸32に挿入拡径して固定する方法などを用いることができる。
【0035】
次に、この転写筒31を着脱自在に保持するための回転軸32は、図4〜図6に示すように、その表層部を周方向に分割した複数(本実施の形態では4つ)の分割ブロック34,34,34,34と、これら各分割ブロック34,34,34,34を係合保持すると共に径方向に移動する移動軸35とから主に構成されている。
図4は、この回転軸32の内部構造を示す縦断面図、図5は、図4中A−A断面図、図6は、図4中B−B断面図であり、それぞれ中心線CおよびC´より上方(上半分)は、各分割ブロック34,34,34,34が径方向外方に移動してその部分の外径が拡径した状態を、また、中心線CおよびC´より下方(下半分)は、各分割ブロック34,34,34,34が径方向内方に移動してその部分の外径が縮径した状態をそれぞれ示したものである。
【0036】
この移動軸35は、その両端が軸受36、37に軸支された外軸35aと、この外軸35aの中心部に挿入されてその長手方向にスライド自在な内軸35bと、この内軸35bの先端に連結された4つの拡縮部材35c、35c、35c、35cとから主に構成されており、この拡縮部材35c、35c、35c、35cの外側にそれぞれ形成されたテーパー部35dがそれぞれ各分割ブロック34,34,34,34の内側に形成されたテーパー部35eとそれぞれ軸方向にスライド自在に係合するようになっている。
【0037】
従って、図4に示すように、外軸35aに対して内軸35bを図中左側にスライドさせると各分割ブロック34,34,34,34全体が径方向外方に移動してその部分が拡径し、反対にこの状態から内軸35bを元に戻すと各分割ブロック34,34,34,34全体が径方向外方に移動してその部分が縮径するようになっている。
そのため、図5および図6に示すように、拡径した状態では各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部にはある程度の隙間が発生し、反対に最小に縮径した状態ではその各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部が密着してその隙間がなくなった(塞がれた)状態になるようになっている。
【0038】
そして、前述した転写筒31の内径φは、少なくともこの回転軸32を最も縮径させた状態の外径(例えば、400mm)よりも十分に大きく、かつこの回転軸32を最も拡径させた状態の外径(例えば、405mm)よりも小さく(400mm<内径φ<405mm)なっており、転写筒31の脱着時にはこの回転軸32を縮径することによって容易に着脱でき、また転写時にはこの回転軸32を拡径することによって、空回りや偏心などを防止しつつその転写筒31を確実に回転軸32側に保持できるようになっている。
【0039】
また、転写筒31の内径と回転軸32の拡径時の外形寸法を一致させることで転写筒31の外周の真円度(振れ)を最小化することが可能となる。
また、図7に示すように、さらにこの回転軸32の外周部を構成する各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部は、櫛歯状に形成されると共に互いに噛み合っている状態となっている。従って、最も縮径した状態では各歯とも互いに周方向に密着した状態となっているのに対し、拡径した状態では各歯間にある程度の隙間が発生するようになっている。
【0040】
さらに、この回転軸32を構成する移動軸35および各分割ブロック34,34,34,34には、図示しない冷却水ラインが縦横に設けられており、冷却水ラインに所定温度の冷却水を流すことで、特に各分割ブロック34,34,34,34の表面温度を任意に調整できるようになっている。
また、この回転軸32に対する転写筒31の着脱を容易にするために、この回転軸32を軸支する軸受36,37のうち一方の軸受は容易に取り外すことができるようになっており、回転軸32を片持ちで支持できるようになっている。
さらに、この回転軸32には、歯車38を介して図示しない駆動モータが接続されており、自転可能となっていると共にその回転速度が基材フィルムF1の送り出し速度と同期するように図示しない制御回路によって調整されている。
【0041】
次に、図2に示すようにこの回転軸32と平行に位置するニップロール33は、両端が軸支された軸部33aの周囲に一定の被覆厚をもった弾性部33bを一体的に被覆してなるものであり、図8に示すようにこの回転軸32に挿着された転写筒31の表面に接してその基材フィルムF1をその転写筒31の外周面(微細パターン)に押圧するようになっている。
また、図2に示すようにこのニップロール33は、回転軸32への転写筒31の着脱などに際して邪魔にならないように適宜その回転軸32に対して径方向に離間移動自在になっている。
【0042】
なお、この弾性部33bも前記転写板31aを弾性変形可能に支持するための弾性層31bと同様に公知のゴム材料などを用いることができる。すなわち、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリル ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(AU,EU)、シリコンゴム(VMQ、FVMQ)、アクリル ゴム(ACM)、クロルスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、フッ素ゴム(FKM,FEPM、FFKM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、多硫化ゴムなどを用いることができ、特に高度の耐熱性を有し、かつ電気特性や非粘着性は勿論、弾性変形性に優れたウレタンゴムを用いることが望ましい。
【0043】
また、このニップロール33の長さは、少なくとも基材フィルムF1の幅以上である必要がある。ニップロールの外径やその弾性部33bの厚さなどは特に限定されるものではないが、回転軸直径などを考慮し、適宜選択する。例えば、外径としては、30mm〜300mm程度、弾性部33bの厚さとしては、例えば3mm〜50mm程度のものが適している。
【0044】
硬化部40は、図1に示すようにこの転写ロール30によってその樹脂J上に転写された微細パターンを硬化させて固定するためのものであり、その樹脂Jの種類に対応した硬化装置から構成されている。すなわち、例えば、この樹脂Jが前述したような紫外線硬化樹脂の場合はその樹脂を硬化可能な波長の紫外線(UV)を照射するための紫外線ランプやそのハウジングなどが用いられ、また、この樹脂Jが電子線硬化樹脂の場合はその樹脂を電子線架橋するための電子線を照射するための照射器などが用いられ、さらに、この樹脂Jが熱硬化樹脂の場合は、その樹脂を加熱するためのヒーターなどが用いられることになる。
【0045】
次に、このような構成をした本発明の転写装置100の作用およびこの転写装置100を用いた転写方法の一例を説明する。
先ず、図1および図2に示すように転写ロール30の回転軸32に対して転写筒31を挿着した後、繰出しロール10から繰り出された基材フィルムF1を図中の案内ロール61〜76に沿って順に張り巡らし、その経路の途中で転写ロール30に巻き付くようにしてその先端を巻取りロール60に巻き付ける。
【0046】
また、供給ロール50からも同様に保護フィルムF2を繰り出し、図中に示すような経路に従って順に張り巡らし、案内ローラ73の部分で転写ロール30側から流れてくる基材フィルムF1と重ね合わせるようにしてからその先端を巻取りロール60に巻き付ける。
そして、このような状態で繰出しロール10、転写ロール30、供給ロール50、巻取りロール60をそれぞれ図中矢印方向に所定の速度で回転させると、繰出しロール10から基材フィルムF1が連続して繰り出され、その経路に沿って移動する。
【0047】
この繰出しロール10から繰り出された基材フィルムF1は、その繰り出し直後に塗布部20を通過することによってその片面(図の例では下面側)に転写用の樹脂Jが所定の厚さで連続的に塗布された後、案内ロール64,65,66,67,68,69,70を順に通過して転写ロール30側に到達する。
なお、このとき、これら各案内ロール案内ロール64,65,66,67,68,69,70は、いずれも基材フィルムF1に対して他方の面、すなわち転写用の樹脂Jが塗布されていない面(背面側)に接しながらこれを転写ロール30まで案内するようになっているため、その樹脂Jがこれら各案内ロール64〜70に付着したりすることはなく、その厚さが変動したりすることを防ぐことができる。
【0048】
そして、この最後の案内ロール70を介して転写ロール30側に達した基材フィルムF1は、その後、転写ロール30のニップロール33によって押し付けられるようにしてその転写筒31の表面に接し、その転写筒31の回転と共にその下流側に流れる。これによって図8に示すようにその転写筒31の微細パターンがその樹脂J上に連続して転写されると共に、例えば硬化部40から照射される紫外線によってその樹脂Jが硬化して転写された微細パターンが直ちに固定化される。
【0049】
図9〜図11は、この転写ロール30における基材フィルムF1に対する微細パターンの転写過程を示したものである。なお、図9はこの転写ロール30を構成する転写筒31と回転軸32とニップロール33との位置関係を示したものであり、図10および図11は、それぞれ図9中a部、b部、c部を示す部分拡大図である。
図示するように、この転写ロール30のニップロール33は、回転軸32に挿着された転写筒31に対してその弾性部33bの表面部が押し潰されるように弾性変形して押圧状態で接している。このため、図11に示すようにその接触部分ではその押圧力によって転写筒31側の転写板31aおよび弾性層31bも回転軸32側に凹むように弾性変形することからこの接触部分は、平坦な接触面(平面)が形成されるようになる。
【0050】
この結果、この部分に流れてきた基材フィルムF1は、この平坦な接触面を通過する際に一定の押圧力を受け、その基材フィルムF1に塗布された樹脂Jに対して転写筒31外周面の微細パターンが圧接するため、その転写筒31外周面の微細パターンがその樹脂J上に確実に転写されることになる。また、この基材フィルムF1の樹脂Jの厚さが不均一であった場合でも、この転写筒31とニップロール33との間を加圧されながら通過することでその厚さが均一(広がる)となるため、良質な転写を達成することができる。
【0051】
このようにして微細パターンが転写・固定化された基材フィルムF1は、さらにその後、転写ロール30の下流側の案内ロール71,72を通過し、案内ロール73に達したところでその微細パターンが形成された面側に供給ロール50側から順次繰り出される保護フィルムF2が重ね合わされ、案内ロール75,76を順に通過して巻取りロール60に連続して巻き取られる。
【0052】
なお、この基材フィルムF1に重ね合わされる保護フィルムF2としては特に限定するものでなく、例えば、基材フィルムF1として厚さが約100μmの易接着層付PETを用いた場合は、この保護フィルムF2として厚さが約50μmの未処理PETを用いることができる。また、この保護フィルムF2として自己粘着性を有するものを使用することもできる。例えば、LDPE/EVA、PP/EVAなどを用いることができる。
【0053】
このように本発明は、従来平板状であった微細パターンの転写板31aを筒状に加工した転写筒31を回転軸32に着脱自在に取り付けて転写ロール30とした後、基材フィルムF1をその転写ロール30の表面に接触させながら、その樹脂J上に所定の微細パターンを連続して転写するようにしたことから、ナノインプリント加工の連続加工が可能となり、高スループット化および大面積化を容易に達成することできる。
【0054】
また、基材フィルムF1上に微細パターンを転写するに際してこの基材フィルムF1を転写筒31に対して単に接触させるだけでなく、弾性変形可能なニップロール33と弾性層31bによってこの基材フィルムF1を転写筒31に対してより積極的に押さえ付け(挟み込む)て通過させるようにしたため、確実に微細パターンを転写することができる。
さらに、前述したように本発明は、転写ロール30から転写筒31のみを簡単に取り外すことができるため、転写筒31の洗浄・交換時などの着脱作業を極めて容易に行うことができる。
【0055】
また、さらにこの転写筒31を、前述したような従来製法によって得られる矩形状の転写板31aから形成することができるため、別個新たに製造するケースに比べて容易かつ安価に製造することができる。
また、前述したようにこの転写筒31の脱着時にはその回転軸32が縮径するため、容易かつ確実にこの転写筒31を着脱することができ、また、挿着時にはその回転軸32が拡径するため、緩んだり外れたりすることなくしっかりと転写筒31を保持することができる。これによって稼働中における転写筒31の離脱や空回り、スリップなどによる転写不良を確実に防止できる。
【0056】
また、前述したようにこの回転軸32を構成する各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部が互いに櫛歯状に噛み合っているため、特にその回転軸が拡径した際に形成される分割ブロック34,34,34,34間の隙間(溝)の形状が波形あるいはジグザク状になるため、その隙間の存在による転写時の悪影響を最小限に抑えることができる。
【0057】
本発明では、各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部が互いに櫛歯状に噛み合ってその隙間が周方向にジグザク状になるため、その境界部において面圧が一気に下がるようなことがなくなり、係る不都合を確実に解消することができる。
しかも、この転写筒31の内面に弾性変形可能な弾性層31bを設けたことにより、これがその回転軸32との接触面で変形することで、その回転軸32の凹凸による影響をなくすことができる。
なお、本実施の形態では、微細パターンを転写した後に引き続きその上に保護フィルムF2を重ね合わせるようにしているが、この工程を省略して微細パターンを転写・硬化した後にそのまま直ちに巻取りロール60に巻き取るようにしても良い。
【0058】
さらに、基材フィルムF1上の微細パターンに欠けている部分がある場合には、図12に示すように、この転写ロール30の下流側に、さらに上流側塗布部20と同じ樹脂Jを塗布する第2の塗布部25(副塗布部)と、この転写ロール30とほぼ同じ構造の第2の転写ロール(副転写ロール)80を設け、その微細パターンが欠けている部分に新たな微細パターンを重ねて形成すれば、実質的にその微細パターンを長距離に亘って連続して転写することができる。ここで、第2の塗布部25(副塗布部)とは、連続塗膜における転写筒溶接部の転写パターン欠陥部や間欠塗膜における未塗工部に樹脂を塗布する塗布部をいう。
【0059】
具体的には、上流側の転写ロール30の回転速度やその転写筒31の溶接線の位置などから基材フィルムF1上の微細パターンの欠損箇所(溶接跡)を求め、その部分に対して第2の塗布部25から同じ樹脂Jを間欠的に上塗りし、その部分に微細パターンを重ねて転写・固定化することができる。
なお、この工程は必ずしも転写ロール30による微細パターンの転写・固定化の後に連続して行う必要はなく、保護フィルムF2を積層しない状態で一旦その基材フィルムF1の全量を巻取りロール60に巻き取った後、再度これを繰出しロール10にセットしてその微細パターンの欠損箇所に対してあらためて微細パターンを転写・固定化するようにしても良い。これにより、転写ロール30をそのまま2回目の微細パターンの転写・固定化手段として再利用できるため、設備に要する費用を節約することが可能となる。
また、転写ロール30の転写筒31を前述したロール電鋳法によって一体成形した場合に微細パターンの繋ぎ目が残った場合、この工程を行えば良い。
【実施例】
【0060】
次に、このような構成をした本発明の転写装置100による転写方法の一実施例を具体的な数値を用いて説明する。
(実施例)
先ず、ピッチ130nm×高さ130nmのL/S(波状)の微細パターンを有するNi電鋳金型(厚さ0.3mm)を用い、これを筒状に曲げ加工すると共に、その両端をマイクロプラズマ溶接によって突き合わせ溶接して内径82.5mmの転写筒を作製した。
その後、この転写筒に弾性層としてシリコンゴムシート(硬度50、厚さ0.3mm)を装着した。この弾性層を装着した転写筒をその外径が80mm〜85mmの範囲で拡縮自在な回転軸上に挿装し、拡径してその転写筒を回転軸上に固定した。なお、回転軸は拡径時外径が82mmで真円になるように加工してある。そして、このようにして回転軸を拡径して固定された転写筒の外周の真円度は、65μmであった。
【0061】
一方、基材フィルムとして、幅135mm×厚さ50μmの片面易接着性の東洋紡A4100(東洋紡績株式会社製)を用い、#225斜線、パターン部幅40mmのグラビアロールによってその易接着面に紫外線硬化樹脂(東亞合成株式会社製M309/ダイセル・サイテック株式会社HDDA/チバスペシャリティケミカル・ケミカルズ株式会社製イルガキュアI907=50/50/3部、23℃、樹脂粘度20mPa・s)を幅40mm×塗布厚1μmで塗布した。
【0062】
また、この樹脂を硬化させるための装置としてメタルハライドUVランプを用い、これを前記回転軸上に固定した転写筒の頂点(基材フィルム最接近時)に配置し、150mW/cm2の照度で照射した。
また、外径30mm、弾性部の厚み10mm、硬度A50のウレタンゴム製のニップロールを用い、基材フィルム上の紫外線硬化樹脂を転写筒に押し付けた。
【0063】
そして、基材フィルムの送り速度を1m/min、転写筒を固定した回転軸を基材フィルムと同じ速度1m/minの回転速度で回転させながらその基材フィルム上に微細パターンを転写・硬化固定した。この際、基材フィルム上の紫外線硬化樹脂の幅は転写筒上で約2倍に広がった。
その後、微細パターンが形成された基材フィルムを溶接部分を避けて転写筒の周方向45°間隔相当の位置8箇所を冷凍割段し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認し、形状の転写性と紫外線硬化樹脂の膜厚を測定した。
【0064】
この結果、紫外線硬化樹脂の膜厚は、平均0.5μm、標準偏差0.05μmであり、目視においても平滑な表面性であった。
また、その基材フィルム上には、転写筒側の微細パターンがその形状を殆ど損なうことなく正確に転写されていることが確認できた。
また、その後さらにこの基材フィルム上の微細パターンに対してAL蒸着、エッチングなどの一連の処理を経てワイヤー・グリッド偏光フィルムを作製し、その光学的特性を日本分光株式会社製VAP−7070で測定したところ、視感度補正単体透過率37%、視感度補正偏光度99.95%であり、十分に実用化の条件を満たすことが確認できた。
【0065】
(比較例)
前記実施例1においてNi電鋳金型を内径82mmになるように溶接して転写筒を作製した。
転写筒は、シリコンゴムシートを介さず直接回転軸に拡径固定した以外は実施例1と同様に実施した。なお、回転軸に拡径・固定された転写筒の外周の真円度は65μmであった。
この結果、基材フィルム上には、転写筒側の微細パターンがその形状を殆ど損なうことなく正確に転写されていることが確認できたが、紫外線硬化樹脂の膜厚は平均0.9μm、標準偏差0.3μmであり、目視においてもロール円周方向すなわち基材フィルム長手方向に横段が見られた。
【0066】
また、その後さらにこの基材フィルム上の微細パターンに対してAL蒸着、エッチングなどの一連の処理を経てワイヤー・グリッド偏光フィルムを作製し、その光学的特性を日本分光株式会社製VAP−7070で測定したところ、視感度補正単体透過率37%、視感度補正偏光度99.95%であり、実用化の条件を満たすことが確認できたが、商品性は実施例1に比べて低いものといわざるを得ないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の転写装置100の実施の一形態を示す全体図である。
【図2】転写ロールの構成を示す説明図である。
【図3】転写筒の製法例を示す説明図である。
【図4】回転軸の構造を示す縦断面図である。
【図5】図4中A−A線断面図である。
【図6】図4中B−B線断面図である。
【図7】分割ブロック間の境界部を示す部分拡大平面図である。
【図8】本発明の転写装置100で得られる基材フィルムの一例を示す説明図である。
【図9】転写ロールによる転写工程を示す側面図である。
【図10】(A)は図9中a部を示す部分拡大図、(B)は図9中b部を示す部分拡大図である。
【図11】図9中c部を示す部分拡大図である。
【図12】本発明の転写装置100の他の実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
100…転写装置
10…繰出しロール
20…塗布部
25…副塗布部
30…転写ロール
31…転写筒
31a…転写板
31b…弾性層
32…回転軸
33…押圧ローラ(ニップロール)
34…分割ブロック
35…移動軸
40…硬化部
50…供給ロール
60…巻取りロール
61〜76…案内ロール
80…副転写ロール(副転写板)
F1…基材フィルム
F2…保護フィルム
J…樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ナノインプリント(nano-imprint)技術などのように数十〜数百ナノ領域の微細な凹凸パターン(以下、「微細パターン」と称す)の転写(賦型)が簡単にできる転写装置および転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
係るナノインプリント技術は、樹脂薄膜が塗布された基板にナノスタンパ(転写板)などと称される金型を押し当てて所望の凹凸パターンを転写する成形加工技術であり、従来の半導体リソグラフィのコア技術である光リソグラフィや電子線直接描画法などに比べて簡便・低コストにナノスケールの加工が可能であるため、半導体のみならず光デバイス、ストレージメディア、バイオチップ、薄型ディスプレイなど様々な分野への応用が研究されている。
【0003】
しかしながら、現状のナノインプリント技術は、いわゆるバッチ処理であって一度のプリント処理単位では一定サイズ(ナノスタンパのサイズ)のものしか得られないため、例えば、このナノインプリント技術を用いて液晶パネル向けの拡散フィルムや反射防止フィルム、ワイヤー・グリッド偏光フィルムなどを製造するにあたっては、大面積化、高スループット化が課題となってくる。
【0004】
そこで、本発明者らは以下の特許文献1〜4などに示すような従来技術を応用することでナノインプリント製品の大面積化、高スループット化の可能性を検討している。
すなわち、本発明者らは、従来平板状であったナノスタンパをロール状に加工(ロールスタンパ)し、これを基材フィルムを繰り出す繰出しロールと、これを巻き取る巻取りロールとの間に設け、繰出しロールから連続して繰り出される基材フィルム上の樹脂にそのロールスタンパを連続して接触させてそのロールスタンパ表面の微細パターンを基材フィルム上に連続して転写するというものである。
【特許文献1】特許第2533379号公報
【特許文献2】特許第3218662号公報
【特許文献3】特開2005−161531号公報
【特許文献4】特開平5−325272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜4などに示すような従来技術をそのままナノインプリント加工に適用した場合、以下に示すような問題が生ずることが分かった。
先ず、従来の転写板(ナノスタンパ)は、電鋳金型から形成される厚さ0.数mmのNi合金薄板からなるため、これを稼働中に剥離することなく回転軸のロール表面にしっかりと取り付けるのは容易ではない。すなわち、高スループット化を図るべくこのロールスタンパを高速で回転させる場合に、その転写板(ナノスタンパ)が回転軸から剥離したりずれたりしないように接着剤や溶接などによって回転軸と一体となるように固定しなければならず、その作業は容易ではない。
【0006】
しかも、この転写板(ナノスタンパ)には、基材フィルムの滓(樹脂)や埃あるいはゴミや油などが付着するため、定期的にあるいは頻繁に洗浄や交換を行わなくてはならないが、その転写板(ナノスタンパ)が前記のように接着剤や溶接などによって回転軸に固定されていると、その回転軸ごと脱着、洗浄などをしなければならず、その作業も容易ではない。
【0007】
次に、ロールスタンパ表面の真円度(凹凸)が例えば200μmを超えると、基材フィルムとロールスタンパとの接触面圧が一定でなくなり、その結果、その微細な凹凸パターンが転写された樹脂の膜厚が大きく変動して加工品質を大きく損なうことがある。
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、係る不都合を確実に回避してナノインプリント加工の大面積化、高スループット化を達成できる新規な転写装置および転写方法を提供するものである。
また、本発明の目的は、高品質なナノインプリント加工を実現できる新規な転写装置および転写方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、
繰出しロールから繰り出される基材フィルムと接してその表面に所定の微細パターンを転写する転写ロールと、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムを巻き取る巻取りロールとを有する転写装置であって、
前記転写ロールは、前記基材フィルムと接触する外周面に前記所定の微細パターンが形成されると共にその内周面に弾性層が形成された転写筒と、当該転写筒の内側に挿入されて当該転写筒を前記弾性層を介して着脱自在に挿着する回転軸と、当該回転軸に挿着された前記転写筒に接して前記基材フィルムをその外周面に押圧するニップロールとを有することを特徴とする転写装置。
【0009】
また、請求項2の発明は、
請求項1に記載の転写装置において、前記ニップロールを、前記回転軸に挿着された転写筒と前記基材フィルムとの合流部に設けたことを特徴とする転写装置である。
また、請求項3の発明は、
請求項1または2に記載の転写装置において、前記ニップロールは、少なくともその表面が弾性変形可能な材料からなっていることを特徴とする転写装置である。
また、請求項4の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の転写装置において、前記転写筒は、前記所定の微細パターンを有する矩形状の転写板を、その微細パターンが外側に位置するように筒状に曲げ加工してからその両縁部を突き合わせ溶接してなることを特徴とする転写装置である。
【0010】
また、請求項5の発明は、
請求項4に記載の転写装置において、前記転写板の突き合わせ溶接は、マイクロプラズマ溶接によって行うことを特徴とする転写装置である。
また、請求項6の発明は、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の転写装置において、前記転写筒は、ロール電鋳法によって形成されたものであることを特徴とする転写装置である。
また、請求項7の発明は、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の転写装置において、前記回転軸は、その表層部を周方向に分割した複数の分割ブロックと、当該各分割ブロックを係合保持すると共に当該各分割ブロックを径方向に移動する移動軸とからなることを特徴とする転写装置である。
【0011】
また、請求項8の発明は、
請求項7に記載の転写装置において、前記各分割ブロックの周方向の境界部は互いに櫛歯状に噛み合っていることを特徴とする転写装置である。
また、請求項9の発明は、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の転写装置において、前記転写ロールの下流側に、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置に所定の樹脂を塗布する副塗布部と、当該副塗布部によって塗布された樹脂上に所定の微細パターンを転写する副転写ロールとをさらに備えたことを特徴とする転写装置である。
【0012】
一方、請求項10の発明は、
予め表面に樹脂が塗布された基材フィルムに、所定の微細パターンが形成された転写板を押し当ててその樹脂に当該微細パターンを転写する方法であって、前記転写板をその微細パターンが外周面に位置するように筒状に加工し、その内周面に弾性層を形成してから回転軸に着脱自在に取り付けた後、前記基材フィルムを前記回転軸上の転写板の表面に接触するように連続して送り出すと共にその基材フィルムをニップロールで転写板の表面に押圧しながら、その樹脂上に所定の微細パターンを連続して転写することを特徴とする転写方法である。
【0013】
また、請求項11の発明は、
請求項10に記載の転写方法において、前記所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置にさらに所定の樹脂を塗布した後、当該基材フィルムを筒状の副転写板の表面に接触するように連続して送り出しながら、その樹脂上に所定の微細パターンを連続して転写することを特徴とする転写方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、ナノインプリント加工の連続加工が可能となり、高スループット化および大面積化を容易に達成することできる。
また、転写筒の内側に弾性層を形成すると共にその表面を押圧ローラで押圧するようにしながら転写するため、基材フィルムの面圧が一定となり、その樹脂の塗布厚が均一で高品質なナノインプリント加工ができる。
また、回転軸から転写筒のみを簡単に取り外すことができるため、着脱作業や洗浄作業などを極めて容易に行うことができる。
また、転写筒の内側の弾性層が弾性変形することで、回転軸表面の凹凸や隙間の影響を吸収することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、前記ニップロールを回転軸に挿着された転写筒と基材フィルムとの合流部に設けたため、このニップロールを、基材フィルムを転写筒側に案内する案内ロールとして兼用することができる。
請求項3の発明によれば、このニップロールが転写筒に対して押圧状態で接したときにその表面が弾性変形して転写筒に対して一定の面積を有する平面状に接するようになるため、樹脂の膜厚を均一にすることができる。
請求項4の発明によれば、この転写筒を前述したような従来製法によって得られる矩形状の転写板から形成することができるため、別個新たに製造するケースに比べて容易かつ安価に製造することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、通常、突き合わせ溶接が困難な薄板であっても、確実に突き合わせ溶接が可能となるため、従来からナノインプリント加工用の転写板として用いられているNi合金薄板などをそのまま本発明に係る転写板として適用することができる。
請求項6の発明によれば、前記転写筒としてロール電鋳法によって形成されたものを用いれば、曲げ加工や突き合わせ溶接作業が不要となる。
請求項7の発明によれば、転写筒の脱着時にはその回転軸が縮径するため、容易かつ確実に転写筒を着脱することができ、また、挿着時にはその回転軸が拡径するため、外れたり緩んだりすることなくしっかりと転写筒を保持することができる。
【0017】
請求項8の発明によれば、この回転軸を構成する各分割ブロックの周方向の境界部が互いに櫛歯状に噛み合っているため、特にその回転軸が拡径した際に形成される分割ブロック間の隙間(溝)の形状が波形あるいはジグザク状になるため、その隙間の存在による転写時の悪影響を抑えることができる。
請求項9の発明によれば、前記転写ロールの下流側に、さらに所定の樹脂を塗布する副塗布部と、この副塗布部によって塗布された樹脂上に所定の微細パターンを転写する副転写ロールとを備えたため、上流側の転写ロールで所定の微細パターンが転写できなかった基材フィルムの箇所にその後引き続き所定の微細パターンを転写することができる。
【0018】
請求項10の発明によれば、基材フィルム上に所定の微細パターンを連続して転写できるため、ナノインプリント加工の大面積化、高スループット化を容易に達成できる。また、同時に請求項1の発明のように回転軸から転写筒のみを簡単に取り外すことができるため、着脱、洗浄作業などを極めて容易に行うことができる。さらに、転写筒の内側に弾性層を形成すると共にその表面を押圧ローラで押圧するようにしながら転写するため、基材フィルムの面圧が一定となり、その樹脂の膜厚が均一で高品質なナノインプリント加工ができる。
請求項11の発明によれば、請求項9の発明と同様に上流側の転写ロールで所定の微細パターンが転写できなかった基材フィルムの箇所にその後引き続き所定の微細パターンを転写することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明に係る微細パターン転写装置100の実施の一形態を示したものである。
この転写装置100は、例えば、前述したようなナノインプリント技術を応用したワイヤー・グリッド偏光フィルムなどを連続して製造するための装置であり、図示するように、ロール状に巻き付けられたテープ状の基材フィルムF1を連続して繰り出す繰出しロール10と、この繰出しロール10から繰り出される基材フィルムF1の片面に転写用の樹脂Jを塗布する塗布部20と、この塗布部20によって転写用の樹脂Jが塗布された基材フィルムF1に所定の微細パターンを連続して転写する転写ロール30と、この転写ロール30で転写された基材フィルムF1上の微細パターンを硬化する硬化部40と、この硬化部40で硬化された微細パターンを保護するための保護フィルムF2を連続して繰り出して供給する供給ロール50と、この保護フィルムF2と基材フィルムF1とを重ね合わせた後、連続して巻き取る巻取りロール60と、これら各フィルムF1、F2の流路を構成する各種案内ロール61〜76とから主に構成されている。
【0020】
ここで、先ずこの繰出しロール10から繰り出される基材フィルムF1としては特に限定されるものではないが、例えば、前記のワイヤー・グリッド偏光フィルムなどを得る場合には、光(紫外線や放射線なども含む)を透過する性質(透明)を有するものであって、かつロール軸に沿って密着して巻き付けられる性質を有するものが望ましい。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PMMA(アクリル)、PC(ポリカーボネイト)、COP(シクロオレフィンポリマー)、TAC(トリアセチルセルロース)、易接着層を付与したPETなどを用いることができる。
また、この基材フィルムF1のサイズや膜厚なども特に限定されるものでないが、例えば、ワイヤー・グリッド偏光フィルムなどを作製する場合は、幅100mm〜1500mm×膜厚30μm〜300μm程度のものが多用される。
【0021】
次に、塗布部20は、この基材フィルムF1の片面に転写用の樹脂Jを塗布するためのものであり、その構成としては、前記先行技術文献などに開示されているような公知のもの(グラビア、ダイ、ロール、スプレー、マイクログラビア)をそのまま用いることができる。すなわち、例えば、図示するように転写用の樹脂Jが供給される樹脂槽21内にグラビアロール22の下端側を浸漬させると共に、このグラビアロール22の上端側に繰り出し直後の基材フィルムF1の下面側を当接させると共に、その上方から抑えローラ23で挟んだ状態でこのグラビアロール22を回転させることでその基材フィルムF1の下面側に樹脂槽21内の樹脂Jを一定の厚さで連続して塗布することができる。
【0022】
ここで、この基材フィルムF1に塗布される転写用の樹脂Jも特に限定されるものでなく、微細パターンの転写が容易でかつその形状を安定して保つことができるものであれば良い。現状では以下に示すような公知の紫外線硬化樹脂が最適であるが、この紫外線硬化樹脂の他、PF(フェノール樹脂)、MF(メラミン)、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)などの熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂などを用いることも可能である。
そして、この樹脂Jとして用いることができる紫外線硬化樹脂としては、光重合性プレポリマー、光重合性モノマーおよび光開始剤からなる公知のものを用いることができ、転写、硬化した後、金型から容易に剥がれるように離型しやすく、かつ基材フィルムF1との相性の良いものが望ましい。
【0023】
なお、この光重合性プレポリマーとしては、例えば不飽和ポリエステル類、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどのアクリレート類を用いることができ、また、光重合性モノマーとしては、例えばラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、シクロペンタジエンアクリレートなどの単官能性モノマーや、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの多官能モノマーを用いることができる。また、光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾインおよびその誘導体、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタールなどを用いることができる。
【0024】
また、この塗布部20によって塗布される樹脂Jの塗布厚も特に限定されるものではないが、例えば次述するようにこの樹脂Jに対して転写される微細パターンの高さが10μm以下であれば1〜15μmで良いが、転写ロール30側の微細パターンの表面精度凹凸を吸収し、かつ確実な転写を行うためには3〜15μmの範囲が好ましい。なお、この樹脂Jの塗布厚が厚すぎると、転写ロール30との接触部で樹脂が余って溢れてしまうため、前記の例では上限は微細パターンの高さとほぼ同じ10μm程度がより望ましい。
【0025】
一方、この樹脂Jに対して転写される微細パターンの高さが10〜100μm程度の場合は、パターン体積相当分に1〜10μm程度を加えた厚さで塗布することが望ましい。例えば、微細パターンが断面波形であってその高さが25μm、ピッチ50μm、頂角90度のプリズムの場合、樹脂Jの塗布厚は12.5〜22.5μmとなる。
さらに、前記のような紫外線硬化樹脂を用いた場合、その粘度としては、例えば数mPa・s〜100mPa・s、高速生産性を考慮すると数mPa・s〜50mPa・sであることが望ましい。なお、この紫外線硬化樹脂の粘度は、例えば低粘度単官能性モノマーや溶剤(エタノールなど)を適量添加することで容易に調整することができる。また、この樹脂J中には、離型剤やレベリング剤、消泡剤などの各種添加剤などを適宜添加しておいても良い。
【0026】
次に、転写ロール30は、この基材フィルムF1上に塗布された転写用の樹脂Jに対して所定の微細パターンを連続して転写(賦型)するものであり、図2に示すように外周面に所定の微細パターンが形成された転写筒31と、この転写筒31の内側に挿入されてこの転写筒31を着脱自在に保持する回転軸32と、この回転軸32と平行に位置するニップロール33とから主に構成されている。
【0027】
先ず、この転写筒31は、図3に示すように片面(図の例では下面側)に所定の微細パターンを有する矩形状の転写板31aと、この転写板31aの他の面(図の例では上面側)に重ね合わされた弾性層31bとから構成されており、図示するようにこの矩形状の転写板31aをその微細パターンが外側に、また弾性層31bが内側に位置するように筒状に曲げ加工すると共に、その両縁部を突き合わせ溶接して筒状に形成されている。そして、図2に示すようにその端面の開口部から回転軸32の外側に挿着されることで回転軸32に対して着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0028】
この転写筒31を構成する転写板31aは、従来のものと同様に電鋳金型から形成される厚さ0.1〜1.0mmのNi電鋳薄板をそのまま用いることができる。その表面硬度は、基材フィルムF1との接触や洗浄および着脱時のハンドリングなど観点から少なくともHv300以上とすることが望ましい。また、このようなNi電鋳薄板を用いる場合、その微細パターンが数μm以上の高さであれば、その表面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理やCrめっき加工処理を実施してその表面硬度を上げることができる。また、その微細パターンの高さが1μm以下の場合には、Ni電鋳薄板に代えて、例えばNi/B、Ni/P、Ni/CoなどのNi合金を用いることができる。さらに熱処理によってその表面硬度を高くしても良い。
【0029】
そして、この転写板31aをその微細パターンが外側に位置するように筒状に曲げ加工してその両縁部を突き合わせ溶接することで転写筒31が得られる。突き合わせ溶接方法としては、以下に示すようなマイクロプラズマ溶接法を用い、その電流値、プラズマガス、シールドガス、電極径、ノズル径、キャップ径、トーチ角度、アーク長さ、溶接スピードなどを微調整すれば、厚さ0.1〜1.0mm程度のNi電鋳薄板でもその溶接が可能となる。
【0030】
ここで、このマイクロプラズマ溶接法とは、水冷ノズル内で発生させた低電流(3A程度)のアーク(非移行型プラズマアーク)をノズル先端の細穴を通し、熱ピンチ効果によりさらに細くなったアーク柱を発生させ、そのアーク柱を細いままで溶接ワークに届かせるためシールドガスに少量のH(水素)を加え、その乖離熱でアーク柱表面に冷却ピンチ効果を持続させる溶接方法である。そして、この溶接方法で得られるアーク柱は極めて低電流でも発生可能で、0.1Aといった極小電流でも安定したアークが得られるものである。
【0031】
従って、このようなマイクロプラズマ溶接法を用いれば、その溶接熱によってその転写板31aが溶け落ちてしまうようなことがなく、確実に突き合わせ溶接することが可能となる。ちなみに、ステンレス鋼や耐熱耐蝕合金鋼、チタン鋼などの場合では、板厚が0.01mm(10μm)程度でも溶接が可能である。
また、この転写筒31としては、前記のように転写板31aを円筒状に加工したものの他、ロール電鋳法によってはじめから円筒状に形成されたものを用いることも可能である。
【0032】
このロール電鋳法は、例えば微細パターンを有する樹脂フィルムを型となる円筒体の内側にその微細パターン面が内向きになるように貼り付け、その内側をNi電鋳する方法であり、電鋳後、この樹脂フィルムをその内側に電鋳されたNi膜と共にその円筒体から取り外すと共に、この樹脂フィルムをNi膜から剥がすことで外面に微細パターンが形成された転写筒31が得られることになる。
【0033】
一方、この転写板31aの片面に重ね合わされる弾性層31bは、この転写板31aを弾性変形可能に支持する機能を有するものであれば良く、例えば以下に例示するような公知のゴム材料などを用いることができる。すなわち、この弾性層31bとして適用可能なゴム材料としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリル ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(AU,EU)、シリコンゴム(VMQ、FVMQ)、アクリル ゴム(ACM)、クロルスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、フッ素ゴム(FKM,FEPM、FFKM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、多硫化ゴムなどが挙げられるが、なかでも高度の耐熱性を有し、かつ電気特性や非粘着性にも優れたシリコンゴムを用いることが望ましい。
【0034】
また、この弾性層31bの厚さとしては、特に限定されるものではないが、薄すぎると、転写板31aの弾性変形量が小さすぎてその機能を発揮できないため、少なくとも、0.1mm以上の厚さが必要である。また、ハンドリングの観点からその厚さの上限は5.0mm程度であり、望ましい厚さとしては、0.1mm〜1.0mmである。
また、この弾性層31bの形成方法としては、前述したように突き合わせ溶接前に予め転写板31aに形成しておく他に、突き合わせ溶接後にその転写板31aの内周面に形成するようにしても良い。この場合の形成方法としては、例えば、弾性層用にシート状のシリコンゴムをその筒状の転写板31aの幅および長さに合わせてカットしてからその内周に沿わせるようにそのゴムの粘着力を用いて貼り付けた後、この転写板31a(転写筒31)を縮径した回転軸32に挿入拡径して固定する方法などを用いることができる。
【0035】
次に、この転写筒31を着脱自在に保持するための回転軸32は、図4〜図6に示すように、その表層部を周方向に分割した複数(本実施の形態では4つ)の分割ブロック34,34,34,34と、これら各分割ブロック34,34,34,34を係合保持すると共に径方向に移動する移動軸35とから主に構成されている。
図4は、この回転軸32の内部構造を示す縦断面図、図5は、図4中A−A断面図、図6は、図4中B−B断面図であり、それぞれ中心線CおよびC´より上方(上半分)は、各分割ブロック34,34,34,34が径方向外方に移動してその部分の外径が拡径した状態を、また、中心線CおよびC´より下方(下半分)は、各分割ブロック34,34,34,34が径方向内方に移動してその部分の外径が縮径した状態をそれぞれ示したものである。
【0036】
この移動軸35は、その両端が軸受36、37に軸支された外軸35aと、この外軸35aの中心部に挿入されてその長手方向にスライド自在な内軸35bと、この内軸35bの先端に連結された4つの拡縮部材35c、35c、35c、35cとから主に構成されており、この拡縮部材35c、35c、35c、35cの外側にそれぞれ形成されたテーパー部35dがそれぞれ各分割ブロック34,34,34,34の内側に形成されたテーパー部35eとそれぞれ軸方向にスライド自在に係合するようになっている。
【0037】
従って、図4に示すように、外軸35aに対して内軸35bを図中左側にスライドさせると各分割ブロック34,34,34,34全体が径方向外方に移動してその部分が拡径し、反対にこの状態から内軸35bを元に戻すと各分割ブロック34,34,34,34全体が径方向外方に移動してその部分が縮径するようになっている。
そのため、図5および図6に示すように、拡径した状態では各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部にはある程度の隙間が発生し、反対に最小に縮径した状態ではその各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部が密着してその隙間がなくなった(塞がれた)状態になるようになっている。
【0038】
そして、前述した転写筒31の内径φは、少なくともこの回転軸32を最も縮径させた状態の外径(例えば、400mm)よりも十分に大きく、かつこの回転軸32を最も拡径させた状態の外径(例えば、405mm)よりも小さく(400mm<内径φ<405mm)なっており、転写筒31の脱着時にはこの回転軸32を縮径することによって容易に着脱でき、また転写時にはこの回転軸32を拡径することによって、空回りや偏心などを防止しつつその転写筒31を確実に回転軸32側に保持できるようになっている。
【0039】
また、転写筒31の内径と回転軸32の拡径時の外形寸法を一致させることで転写筒31の外周の真円度(振れ)を最小化することが可能となる。
また、図7に示すように、さらにこの回転軸32の外周部を構成する各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部は、櫛歯状に形成されると共に互いに噛み合っている状態となっている。従って、最も縮径した状態では各歯とも互いに周方向に密着した状態となっているのに対し、拡径した状態では各歯間にある程度の隙間が発生するようになっている。
【0040】
さらに、この回転軸32を構成する移動軸35および各分割ブロック34,34,34,34には、図示しない冷却水ラインが縦横に設けられており、冷却水ラインに所定温度の冷却水を流すことで、特に各分割ブロック34,34,34,34の表面温度を任意に調整できるようになっている。
また、この回転軸32に対する転写筒31の着脱を容易にするために、この回転軸32を軸支する軸受36,37のうち一方の軸受は容易に取り外すことができるようになっており、回転軸32を片持ちで支持できるようになっている。
さらに、この回転軸32には、歯車38を介して図示しない駆動モータが接続されており、自転可能となっていると共にその回転速度が基材フィルムF1の送り出し速度と同期するように図示しない制御回路によって調整されている。
【0041】
次に、図2に示すようにこの回転軸32と平行に位置するニップロール33は、両端が軸支された軸部33aの周囲に一定の被覆厚をもった弾性部33bを一体的に被覆してなるものであり、図8に示すようにこの回転軸32に挿着された転写筒31の表面に接してその基材フィルムF1をその転写筒31の外周面(微細パターン)に押圧するようになっている。
また、図2に示すようにこのニップロール33は、回転軸32への転写筒31の着脱などに際して邪魔にならないように適宜その回転軸32に対して径方向に離間移動自在になっている。
【0042】
なお、この弾性部33bも前記転写板31aを弾性変形可能に支持するための弾性層31bと同様に公知のゴム材料などを用いることができる。すなわち、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリル ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(AU,EU)、シリコンゴム(VMQ、FVMQ)、アクリル ゴム(ACM)、クロルスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、フッ素ゴム(FKM,FEPM、FFKM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、多硫化ゴムなどを用いることができ、特に高度の耐熱性を有し、かつ電気特性や非粘着性は勿論、弾性変形性に優れたウレタンゴムを用いることが望ましい。
【0043】
また、このニップロール33の長さは、少なくとも基材フィルムF1の幅以上である必要がある。ニップロールの外径やその弾性部33bの厚さなどは特に限定されるものではないが、回転軸直径などを考慮し、適宜選択する。例えば、外径としては、30mm〜300mm程度、弾性部33bの厚さとしては、例えば3mm〜50mm程度のものが適している。
【0044】
硬化部40は、図1に示すようにこの転写ロール30によってその樹脂J上に転写された微細パターンを硬化させて固定するためのものであり、その樹脂Jの種類に対応した硬化装置から構成されている。すなわち、例えば、この樹脂Jが前述したような紫外線硬化樹脂の場合はその樹脂を硬化可能な波長の紫外線(UV)を照射するための紫外線ランプやそのハウジングなどが用いられ、また、この樹脂Jが電子線硬化樹脂の場合はその樹脂を電子線架橋するための電子線を照射するための照射器などが用いられ、さらに、この樹脂Jが熱硬化樹脂の場合は、その樹脂を加熱するためのヒーターなどが用いられることになる。
【0045】
次に、このような構成をした本発明の転写装置100の作用およびこの転写装置100を用いた転写方法の一例を説明する。
先ず、図1および図2に示すように転写ロール30の回転軸32に対して転写筒31を挿着した後、繰出しロール10から繰り出された基材フィルムF1を図中の案内ロール61〜76に沿って順に張り巡らし、その経路の途中で転写ロール30に巻き付くようにしてその先端を巻取りロール60に巻き付ける。
【0046】
また、供給ロール50からも同様に保護フィルムF2を繰り出し、図中に示すような経路に従って順に張り巡らし、案内ローラ73の部分で転写ロール30側から流れてくる基材フィルムF1と重ね合わせるようにしてからその先端を巻取りロール60に巻き付ける。
そして、このような状態で繰出しロール10、転写ロール30、供給ロール50、巻取りロール60をそれぞれ図中矢印方向に所定の速度で回転させると、繰出しロール10から基材フィルムF1が連続して繰り出され、その経路に沿って移動する。
【0047】
この繰出しロール10から繰り出された基材フィルムF1は、その繰り出し直後に塗布部20を通過することによってその片面(図の例では下面側)に転写用の樹脂Jが所定の厚さで連続的に塗布された後、案内ロール64,65,66,67,68,69,70を順に通過して転写ロール30側に到達する。
なお、このとき、これら各案内ロール案内ロール64,65,66,67,68,69,70は、いずれも基材フィルムF1に対して他方の面、すなわち転写用の樹脂Jが塗布されていない面(背面側)に接しながらこれを転写ロール30まで案内するようになっているため、その樹脂Jがこれら各案内ロール64〜70に付着したりすることはなく、その厚さが変動したりすることを防ぐことができる。
【0048】
そして、この最後の案内ロール70を介して転写ロール30側に達した基材フィルムF1は、その後、転写ロール30のニップロール33によって押し付けられるようにしてその転写筒31の表面に接し、その転写筒31の回転と共にその下流側に流れる。これによって図8に示すようにその転写筒31の微細パターンがその樹脂J上に連続して転写されると共に、例えば硬化部40から照射される紫外線によってその樹脂Jが硬化して転写された微細パターンが直ちに固定化される。
【0049】
図9〜図11は、この転写ロール30における基材フィルムF1に対する微細パターンの転写過程を示したものである。なお、図9はこの転写ロール30を構成する転写筒31と回転軸32とニップロール33との位置関係を示したものであり、図10および図11は、それぞれ図9中a部、b部、c部を示す部分拡大図である。
図示するように、この転写ロール30のニップロール33は、回転軸32に挿着された転写筒31に対してその弾性部33bの表面部が押し潰されるように弾性変形して押圧状態で接している。このため、図11に示すようにその接触部分ではその押圧力によって転写筒31側の転写板31aおよび弾性層31bも回転軸32側に凹むように弾性変形することからこの接触部分は、平坦な接触面(平面)が形成されるようになる。
【0050】
この結果、この部分に流れてきた基材フィルムF1は、この平坦な接触面を通過する際に一定の押圧力を受け、その基材フィルムF1に塗布された樹脂Jに対して転写筒31外周面の微細パターンが圧接するため、その転写筒31外周面の微細パターンがその樹脂J上に確実に転写されることになる。また、この基材フィルムF1の樹脂Jの厚さが不均一であった場合でも、この転写筒31とニップロール33との間を加圧されながら通過することでその厚さが均一(広がる)となるため、良質な転写を達成することができる。
【0051】
このようにして微細パターンが転写・固定化された基材フィルムF1は、さらにその後、転写ロール30の下流側の案内ロール71,72を通過し、案内ロール73に達したところでその微細パターンが形成された面側に供給ロール50側から順次繰り出される保護フィルムF2が重ね合わされ、案内ロール75,76を順に通過して巻取りロール60に連続して巻き取られる。
【0052】
なお、この基材フィルムF1に重ね合わされる保護フィルムF2としては特に限定するものでなく、例えば、基材フィルムF1として厚さが約100μmの易接着層付PETを用いた場合は、この保護フィルムF2として厚さが約50μmの未処理PETを用いることができる。また、この保護フィルムF2として自己粘着性を有するものを使用することもできる。例えば、LDPE/EVA、PP/EVAなどを用いることができる。
【0053】
このように本発明は、従来平板状であった微細パターンの転写板31aを筒状に加工した転写筒31を回転軸32に着脱自在に取り付けて転写ロール30とした後、基材フィルムF1をその転写ロール30の表面に接触させながら、その樹脂J上に所定の微細パターンを連続して転写するようにしたことから、ナノインプリント加工の連続加工が可能となり、高スループット化および大面積化を容易に達成することできる。
【0054】
また、基材フィルムF1上に微細パターンを転写するに際してこの基材フィルムF1を転写筒31に対して単に接触させるだけでなく、弾性変形可能なニップロール33と弾性層31bによってこの基材フィルムF1を転写筒31に対してより積極的に押さえ付け(挟み込む)て通過させるようにしたため、確実に微細パターンを転写することができる。
さらに、前述したように本発明は、転写ロール30から転写筒31のみを簡単に取り外すことができるため、転写筒31の洗浄・交換時などの着脱作業を極めて容易に行うことができる。
【0055】
また、さらにこの転写筒31を、前述したような従来製法によって得られる矩形状の転写板31aから形成することができるため、別個新たに製造するケースに比べて容易かつ安価に製造することができる。
また、前述したようにこの転写筒31の脱着時にはその回転軸32が縮径するため、容易かつ確実にこの転写筒31を着脱することができ、また、挿着時にはその回転軸32が拡径するため、緩んだり外れたりすることなくしっかりと転写筒31を保持することができる。これによって稼働中における転写筒31の離脱や空回り、スリップなどによる転写不良を確実に防止できる。
【0056】
また、前述したようにこの回転軸32を構成する各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部が互いに櫛歯状に噛み合っているため、特にその回転軸が拡径した際に形成される分割ブロック34,34,34,34間の隙間(溝)の形状が波形あるいはジグザク状になるため、その隙間の存在による転写時の悪影響を最小限に抑えることができる。
【0057】
本発明では、各分割ブロック34,34,34,34の周方向の境界部が互いに櫛歯状に噛み合ってその隙間が周方向にジグザク状になるため、その境界部において面圧が一気に下がるようなことがなくなり、係る不都合を確実に解消することができる。
しかも、この転写筒31の内面に弾性変形可能な弾性層31bを設けたことにより、これがその回転軸32との接触面で変形することで、その回転軸32の凹凸による影響をなくすことができる。
なお、本実施の形態では、微細パターンを転写した後に引き続きその上に保護フィルムF2を重ね合わせるようにしているが、この工程を省略して微細パターンを転写・硬化した後にそのまま直ちに巻取りロール60に巻き取るようにしても良い。
【0058】
さらに、基材フィルムF1上の微細パターンに欠けている部分がある場合には、図12に示すように、この転写ロール30の下流側に、さらに上流側塗布部20と同じ樹脂Jを塗布する第2の塗布部25(副塗布部)と、この転写ロール30とほぼ同じ構造の第2の転写ロール(副転写ロール)80を設け、その微細パターンが欠けている部分に新たな微細パターンを重ねて形成すれば、実質的にその微細パターンを長距離に亘って連続して転写することができる。ここで、第2の塗布部25(副塗布部)とは、連続塗膜における転写筒溶接部の転写パターン欠陥部や間欠塗膜における未塗工部に樹脂を塗布する塗布部をいう。
【0059】
具体的には、上流側の転写ロール30の回転速度やその転写筒31の溶接線の位置などから基材フィルムF1上の微細パターンの欠損箇所(溶接跡)を求め、その部分に対して第2の塗布部25から同じ樹脂Jを間欠的に上塗りし、その部分に微細パターンを重ねて転写・固定化することができる。
なお、この工程は必ずしも転写ロール30による微細パターンの転写・固定化の後に連続して行う必要はなく、保護フィルムF2を積層しない状態で一旦その基材フィルムF1の全量を巻取りロール60に巻き取った後、再度これを繰出しロール10にセットしてその微細パターンの欠損箇所に対してあらためて微細パターンを転写・固定化するようにしても良い。これにより、転写ロール30をそのまま2回目の微細パターンの転写・固定化手段として再利用できるため、設備に要する費用を節約することが可能となる。
また、転写ロール30の転写筒31を前述したロール電鋳法によって一体成形した場合に微細パターンの繋ぎ目が残った場合、この工程を行えば良い。
【実施例】
【0060】
次に、このような構成をした本発明の転写装置100による転写方法の一実施例を具体的な数値を用いて説明する。
(実施例)
先ず、ピッチ130nm×高さ130nmのL/S(波状)の微細パターンを有するNi電鋳金型(厚さ0.3mm)を用い、これを筒状に曲げ加工すると共に、その両端をマイクロプラズマ溶接によって突き合わせ溶接して内径82.5mmの転写筒を作製した。
その後、この転写筒に弾性層としてシリコンゴムシート(硬度50、厚さ0.3mm)を装着した。この弾性層を装着した転写筒をその外径が80mm〜85mmの範囲で拡縮自在な回転軸上に挿装し、拡径してその転写筒を回転軸上に固定した。なお、回転軸は拡径時外径が82mmで真円になるように加工してある。そして、このようにして回転軸を拡径して固定された転写筒の外周の真円度は、65μmであった。
【0061】
一方、基材フィルムとして、幅135mm×厚さ50μmの片面易接着性の東洋紡A4100(東洋紡績株式会社製)を用い、#225斜線、パターン部幅40mmのグラビアロールによってその易接着面に紫外線硬化樹脂(東亞合成株式会社製M309/ダイセル・サイテック株式会社HDDA/チバスペシャリティケミカル・ケミカルズ株式会社製イルガキュアI907=50/50/3部、23℃、樹脂粘度20mPa・s)を幅40mm×塗布厚1μmで塗布した。
【0062】
また、この樹脂を硬化させるための装置としてメタルハライドUVランプを用い、これを前記回転軸上に固定した転写筒の頂点(基材フィルム最接近時)に配置し、150mW/cm2の照度で照射した。
また、外径30mm、弾性部の厚み10mm、硬度A50のウレタンゴム製のニップロールを用い、基材フィルム上の紫外線硬化樹脂を転写筒に押し付けた。
【0063】
そして、基材フィルムの送り速度を1m/min、転写筒を固定した回転軸を基材フィルムと同じ速度1m/minの回転速度で回転させながらその基材フィルム上に微細パターンを転写・硬化固定した。この際、基材フィルム上の紫外線硬化樹脂の幅は転写筒上で約2倍に広がった。
その後、微細パターンが形成された基材フィルムを溶接部分を避けて転写筒の周方向45°間隔相当の位置8箇所を冷凍割段し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認し、形状の転写性と紫外線硬化樹脂の膜厚を測定した。
【0064】
この結果、紫外線硬化樹脂の膜厚は、平均0.5μm、標準偏差0.05μmであり、目視においても平滑な表面性であった。
また、その基材フィルム上には、転写筒側の微細パターンがその形状を殆ど損なうことなく正確に転写されていることが確認できた。
また、その後さらにこの基材フィルム上の微細パターンに対してAL蒸着、エッチングなどの一連の処理を経てワイヤー・グリッド偏光フィルムを作製し、その光学的特性を日本分光株式会社製VAP−7070で測定したところ、視感度補正単体透過率37%、視感度補正偏光度99.95%であり、十分に実用化の条件を満たすことが確認できた。
【0065】
(比較例)
前記実施例1においてNi電鋳金型を内径82mmになるように溶接して転写筒を作製した。
転写筒は、シリコンゴムシートを介さず直接回転軸に拡径固定した以外は実施例1と同様に実施した。なお、回転軸に拡径・固定された転写筒の外周の真円度は65μmであった。
この結果、基材フィルム上には、転写筒側の微細パターンがその形状を殆ど損なうことなく正確に転写されていることが確認できたが、紫外線硬化樹脂の膜厚は平均0.9μm、標準偏差0.3μmであり、目視においてもロール円周方向すなわち基材フィルム長手方向に横段が見られた。
【0066】
また、その後さらにこの基材フィルム上の微細パターンに対してAL蒸着、エッチングなどの一連の処理を経てワイヤー・グリッド偏光フィルムを作製し、その光学的特性を日本分光株式会社製VAP−7070で測定したところ、視感度補正単体透過率37%、視感度補正偏光度99.95%であり、実用化の条件を満たすことが確認できたが、商品性は実施例1に比べて低いものといわざるを得ないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の転写装置100の実施の一形態を示す全体図である。
【図2】転写ロールの構成を示す説明図である。
【図3】転写筒の製法例を示す説明図である。
【図4】回転軸の構造を示す縦断面図である。
【図5】図4中A−A線断面図である。
【図6】図4中B−B線断面図である。
【図7】分割ブロック間の境界部を示す部分拡大平面図である。
【図8】本発明の転写装置100で得られる基材フィルムの一例を示す説明図である。
【図9】転写ロールによる転写工程を示す側面図である。
【図10】(A)は図9中a部を示す部分拡大図、(B)は図9中b部を示す部分拡大図である。
【図11】図9中c部を示す部分拡大図である。
【図12】本発明の転写装置100の他の実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
100…転写装置
10…繰出しロール
20…塗布部
25…副塗布部
30…転写ロール
31…転写筒
31a…転写板
31b…弾性層
32…回転軸
33…押圧ローラ(ニップロール)
34…分割ブロック
35…移動軸
40…硬化部
50…供給ロール
60…巻取りロール
61〜76…案内ロール
80…副転写ロール(副転写板)
F1…基材フィルム
F2…保護フィルム
J…樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出しロールから繰り出される基材フィルムと接してその表面に所定の微細パターンを転写する転写ロールと、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムを巻き取る巻取りロールとを有する転写装置であって、
前記転写ロールは、前記基材フィルムと接触する外周面に前記所定の微細パターンが形成されると共にその内周面に弾性層が形成された転写筒と、当該転写筒の内側に挿入されて当該転写筒を前記弾性層を介して着脱自在に挿着する回転軸と、当該回転軸に挿着された前記転写筒に接して前記基材フィルムをその外周面に押圧するニップロールとを有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写装置において、
前記ニップロールを、前記回転軸に挿着された転写筒と前記基材フィルムとの合流部に設けたことを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転写装置において、
前記ニップロールは、少なくともその表面が弾性変形可能な材料からなっていることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記転写筒は、前記所定の微細パターンを有する矩形状の転写板を、その微細パターンが外側に位置するように筒状に曲げ加工してからその両縁部を突き合わせ溶接してなることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項4に記載の転写装置において、
前記転写板の突き合わせ溶接は、マイクロプラズマ溶接によって行うことを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記転写筒は、ロール電鋳法によって形成されたものであることを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記回転軸は、その表層部を周方向に分割した複数の分割ブロックと、当該各分割ブロックを係合保持すると共に当該各分割ブロックを径方向に移動する移動軸とからなることを特徴とする転写装置。
【請求項8】
請求項7に記載の転写装置において、
前記各分割ブロックの周方向の境界部は互いに櫛歯状に噛み合っていることを特徴とする転写装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記転写ロールの下流側に、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置に所定の樹脂を塗布する副塗布部と、当該副塗布部によって塗布された樹脂上に所定の微細パターンを転写する副転写ロールとをさらに備えたことを特徴とする転写装置。
【請求項10】
予め表面に樹脂が塗布された基材フィルムに、所定の微細パターンが形成された転写板を押し当ててその樹脂に当該微細パターンを転写する方法であって、
前記転写板をその微細パターンが外周面に位置するように筒状に加工し、その内周面に弾性層を形成してから回転軸に着脱自在に取り付けた後、前記基材フィルムを前記回転軸上の転写板の表面に接触するように連続して送り出すと共にその基材フィルムをニップロールで転写板の表面に押圧しながら、その樹脂上に所定の微細パターンを連続して転写することを特徴とする転写方法。
【請求項11】
請求項10に記載の転写方法において、
前記所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置にさらに所定の樹脂を塗布した後、当該基材フィルムを筒状の副転写板の表面に接触するように連続して送り出しながら、その樹脂上に所定の微細パターンを連続して転写することを特徴とする転写方法。
【請求項1】
繰出しロールから繰り出される基材フィルムと接してその表面に所定の微細パターンを転写する転写ロールと、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムを巻き取る巻取りロールとを有する転写装置であって、
前記転写ロールは、前記基材フィルムと接触する外周面に前記所定の微細パターンが形成されると共にその内周面に弾性層が形成された転写筒と、当該転写筒の内側に挿入されて当該転写筒を前記弾性層を介して着脱自在に挿着する回転軸と、当該回転軸に挿着された前記転写筒に接して前記基材フィルムをその外周面に押圧するニップロールとを有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写装置において、
前記ニップロールを、前記回転軸に挿着された転写筒と前記基材フィルムとの合流部に設けたことを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転写装置において、
前記ニップロールは、少なくともその表面が弾性変形可能な材料からなっていることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記転写筒は、前記所定の微細パターンを有する矩形状の転写板を、その微細パターンが外側に位置するように筒状に曲げ加工してからその両縁部を突き合わせ溶接してなることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項4に記載の転写装置において、
前記転写板の突き合わせ溶接は、マイクロプラズマ溶接によって行うことを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記転写筒は、ロール電鋳法によって形成されたものであることを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記回転軸は、その表層部を周方向に分割した複数の分割ブロックと、当該各分割ブロックを係合保持すると共に当該各分割ブロックを径方向に移動する移動軸とからなることを特徴とする転写装置。
【請求項8】
請求項7に記載の転写装置において、
前記各分割ブロックの周方向の境界部は互いに櫛歯状に噛み合っていることを特徴とする転写装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の転写装置において、
前記転写ロールの下流側に、当該転写ロールによって所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置に所定の樹脂を塗布する副塗布部と、当該副塗布部によって塗布された樹脂上に所定の微細パターンを転写する副転写ロールとをさらに備えたことを特徴とする転写装置。
【請求項10】
予め表面に樹脂が塗布された基材フィルムに、所定の微細パターンが形成された転写板を押し当ててその樹脂に当該微細パターンを転写する方法であって、
前記転写板をその微細パターンが外周面に位置するように筒状に加工し、その内周面に弾性層を形成してから回転軸に着脱自在に取り付けた後、前記基材フィルムを前記回転軸上の転写板の表面に接触するように連続して送り出すと共にその基材フィルムをニップロールで転写板の表面に押圧しながら、その樹脂上に所定の微細パターンを連続して転写することを特徴とする転写方法。
【請求項11】
請求項10に記載の転写方法において、
前記所定の微細パターンが転写された基材フィルムの所定の位置にさらに所定の樹脂を塗布した後、当該基材フィルムを筒状の副転写板の表面に接触するように連続して送り出しながら、その樹脂上に所定の微細パターンを連続して転写することを特徴とする転写方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−296390(P2008−296390A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141826(P2007−141826)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]