説明

転写装置および転写方法

【課題】離型する際、型や被成型品が対応する設置体から離れるのを防止することのできる転写装置を提供する。
【解決手段】型Mを設置する型設置体13と、被成型品Wを設置し、型設置体13に対して相対的に移動自在な被成型品設置体21とを有し、被成型品設置体21が、真空吸着によって被成型品Wを保持するように構成され、型設置体13と被成型品設置体21とを互いに接近させて型Mを被成型品Wに押圧することによって微細な転写パターンを被成型品Wに転写をした後、被成型品Wから型Mを離すときに型M、被成型品W、型設置体13の型Mを設置している型設置部位13m、被成型品設置体21の被成型品Wを設置している被成型品部位21wが内部に入る部屋Rを形成し、真空吸着による保持力を増加させるために部屋R内の気圧を大気圧よりも高くするように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、型に形成されている微細な転写パターンを、被成型品に転写する転写装置および転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子線描画法などで石英基板等に微細な転写パターンを形成して型(モールド)とし、被成型品に型を所定の圧力で押圧して型に形成された転写パターンを被成型品に転写するナノインプリント技術が研究、開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ナノオーダーの微細な転写パターンを低コストで成型する方法としてリソグラフィ技術を用いたインプリント法が考案されている。
【0004】
この成型法は大別して、UV(紫外線)インプリント法と、熱インプリント法とに分類される。
【0005】
UVインプリント法では、光が透過する透明な型を使用し、UV硬化液に型を押しつけ、適当な時間UV放射光を照射してUV硬化液を硬化させて微細な転写パターンをUV硬化液に転写した後、UV硬化液(被成型品)から型を引き離す。
【0006】
熱インプリント法では、型を、熱可塑性ポリマからなる基板に押圧し、熱可塑性ポリマが十分に流動可能となる温度まで基板(熱可塑性ポリマ)を加熱して微細な転写パターンに樹脂(熱可塑性ポリマ)を流入させた後、型と基板とをガラス転移温度未満まで冷却し、基板に転写された微細な転写パターンを固化させて型を基板から引き離す。
【0007】
ハードディスクやCD、DVDなど回転式の記憶装置では、最近、高密度のデータをディスクに形成するための記憶媒体(記録媒体)を成型する手段として、上述したナノインプリント技術を活用する方法への関心が高くなってきている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Precision Engineering Journal of the International Societies for Precision Engineering and Nanotechnology 25(2001) 192-199
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、被成型品から型を離す(離型する)際、転写パターンが微細であるために型と被成型品との接着力が大きく(強く)、型や被成型品が対応する設置体から離れるという不都合が発生する。
【0010】
この発明は、上記した不都合を解消するためになされたもので、離型する際、型や成型品が対応する設置体から離れるのを防止することのできる転写装置および転写方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、型に形成されている微細な転写パターンを、被成型品に転写するための転写装置において、前記型を設置する型設置体と、前記被成型品を設置し、前記型設置体に対して相対的に移動自在な被成型品設置体とを有し、前記型設置体と前記被成型品設置体との少なくとも一方が、真空吸着によって前記型、前記被成型品を保持するように構成され、前記型設置体と前記被成型品設置体とを互いに接近させて前記型を前記被成型品に押圧することによって前記微細な転写パターンを前記被成型品に転写をした後、前記被成型品から前記型を離すときに前記型、前記被成型品、前記型設置体の前記型を設置している型設置部位、前記被成型品設置体の前記被成型品を設置している被成型品設置部位が内部に入る部屋を形成し、前記真空吸着による保持力を増加させるために前記部屋内の気圧を大気圧よりも高くするように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、型に形成されている微細な転写パターンを、被成型品に転写するための転写装置において、前記型または前記被成型品を設置する第1の設置体と、前記型または前記被成型品を設置し、前記第1の設置体に対して相対的に移動自在な第2の設置体とを有し、前記第1の設置体と前記第2の設置体との少なくとも一方が、真空吸着によって前記型、前記被成型品を保持するように構成され、前記第1の設置体と前記第2の設置体とを互いに接近させて前記型を前記被成型品に押圧することによって前記微細な転写パターンを前記被成型品に転写をした後、前記被成型品から前記型を離すときに前記型、前記被成型品、前記第1、第2の設置体の前記型、前記被成型品を設置している設置部位が内部に入る部屋を形成し、前記真空吸着による保持力を増加させるために前記部屋内の気圧を大気圧よりも高くするように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の転写装置において、前記微細な転写パターンを前記被成型品に転写するときにおける前記型と前記被成型品との接触部位の外側に、大気圧よりも高い気圧によって前記型を前記被成型品から離す方向へ押圧する型受圧部と、大気圧よりも高い気圧によって前記被成型品を前記型から離す方向へ押圧する被成型品受圧部との少なくとも一方が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転写装置を用いて型に形成されている微細な転写パターンを、被成型品に転写することを特徴とする転写方法である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、型を被成型品から離す(離型する)際、部屋内が大気圧よりも高くなるので、型や被成型品が対応する設置体から離れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の第1実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図である。
【図2】UVインプリント法による転写の概要を示す説明図である。
【図3】図1に示した型と被成型品との接触部位の周囲を示す説明図である。
【図4】型受圧部と被成型品受圧部との作用を示す説明図である。
【図5】図1に示した転写装置の動作説明図である。
【図6】この発明の第2実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図である。
【図7】この発明の第3実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図である。
【図8】この発明の第4実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図である。
【図9】この発明の第5実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図である。
【図10】熱インプリント法による転写の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0018】
図1はこの発明の第1実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図である。
【0019】
転写装置(ナノインプリント装置)1は、大気中において、型(モールド)Mに形成されている微細な転写パターンを、被成型品(被成型素材)Wに転写する装置である。
【0020】
型Mは、例えば、光を透過する石英ガラスで平板状に構成され、厚さ方向の一方の面(例えば、下面)Maに微細な転写パターン(例えば、凹凸の高さやピッチが可視光線の波長程度の大きさである微細な凹凸で形成されている転写パターン)が形成されている。
【0021】
被成型品Wは、例えば、シリコンやガラスで平板状に構成されている基材W1と、この基材W1の一方の面(例えば、上面)W1aに薄く設けられた膜状の転写素材(例えば、UV硬化樹脂)W3とを備えた構成とされ、型Mの微細な転写パターンが転写素材W3の一方の面(上面)W3aに転写される。
【0022】
被成型品Wとしては、情報記録用ディスク(例えば、DVD−ROM、ハードディスク用の記録媒体)や液晶表示装置のバックライトの導光板などを挙げることができる。
【0023】
転写は、例えば、前述したUVインプリント法でなされる。
【0024】
ここで、UVインプリント法による転写について、図2を用いて簡単に説明する。
【0025】
まず、図2(a)に示す状態において、矢印の方向に型Mを移動させ、図2(b)に示すように、型Mで被成型品Wを所定の力(小さい力)で押圧し、紫外線を照射し、転写素材(UV硬化樹脂)W3を硬化させる。
【0026】
そして、図2(b)に示す矢印の方向に型Mを移動させ、型Mを被成型品Wから離す(離型する)と、図2(c)に示すように、被成型品W(転写素材W3)に微細な転写パターンが転写される。
【0027】
ここまでが、転写装置1を使用してなされる転写である。
【0028】
上記の転写後、図2(c)に示す状態において、Oアッシングなどによって残膜除去処理をすることにより、図2(d)に示す状態になる。
【0029】
ここで、残膜とは、転写後における転写素材W3の微細な凹部の底部分のことで、基材W1を覆っている薄い膜のことである。
【0030】
そして、図2(d)に示す状態において、硬化した転写素材W3をマスキング部材にして、図2(e)に示すように、エッチングによって基材W1に微細な転写パターンを形成する。
【0031】
その後、硬化した転写素材W3を、例えば、溶剤で取り除くことにより、図2(f)に示すように、基材W1への微細な転写パターンの転写が完了する。
【0032】
上記のようにして型Mに形成されている微細な転写パターンを、被成型品Wに転写するとき、図3(a)、(b)および図4に示すように、型Mと被成型品Wとの接触部位Cの外側に、大気圧よりも高い気圧によって型Mを被成型品Wから離す方向へ押圧する周回した型受圧部Mcと、大気圧よりも高い気圧によって被成型品Wを型Mから離す方向へ押圧する周回した被成型品受圧部Wcとが設けられている。
【0033】
この型受圧部Mcは被成型品Wに接触しない型Mの部分によって形成され、被成型品受圧部Wcは、型Mに接触しない被成型品Wの部分によって形成されている。
【0034】
図3(a)は型Mと被成型品Wとが平面視円形の場合を示し、図3(b)は、型Mと被成型品Wとが平面視長方形(正方形)の場合を示している。
【0035】
図1に戻って、転写装置1はベース体11を備えている。
【0036】
そして、ベース体11には、型設置体13、被成型品設置体21、各部を制御する制御部41などが設けられている。
【0037】
上記した型設置体13は、ベース体11に、図示を省略したリニアガイドベアリングを介して一体的に設けられるとともに、サーボモータなどのアクチュエータとボールねじとを介して移動可能(被成型品設置体21に接離可能)とされている。
【0038】
この型設置体13は、平面状の型設置面13aを下側に備え、例えば、図示を省略したボルトなどによって型取付部材17を型設置体13に取り付けることにより、型Mの厚さ方向の他方の面(微細な転写パターンが形成されていない平面状の上面)Mbを型設置面13aに接触(面接触)させて型Mが設置されるものである。
【0039】
そして、型設置体13には、下側にバックアップ体取付穴13bが設けられ、このバックアップ体取付穴13bに連通して上側に貫通する貫通孔13cが設けられるとともに、下面から他の面、例えば、側面へと貫通する第2、第3の流路13f,13gが設けられている。
【0040】
そして、型設置体13のバックアップ体取付穴13a内には透光性を有したバックアップガラス(バックアップ体)15が気密に取り付けられ、型設置体13の上側に、貫通孔13cからバックアップガラス15へと紫外線(UV)を照射する紫外線発生器19が取り付けられている。
【0041】
なお、型設置面13aは、バックアップガラス15の平面によっても形成されている。
【0042】
上記した被成型品設置体21は、型設置体13の型設置面13aと対向する平面状の被成型品設置面21aを備え、被成型品Wの厚さ方向の他方の面(基材W1の転写素材W3が設けられていない平面状の下面)W1bを被成型品設置面21aに接触(面接触)させて被成型品Wが設置されるものである。
【0043】
そして、被成型品設置体21には、被成型品設置面21aの被成型品Wが接触する部分の内側に、周回する環状溝21dが設けられるとともに、この環状溝21dを、例えば、側面に連通、開放させる第4の流路21eが設けられている。
【0044】
上記した型設置体13の下面には、部屋Rを形成する部屋形成部材31が取り付けられている。
【0045】
ここで、部屋Rとは、型設置体13と被成型品設置体21とを互いに接近させて型Mを被成型品Wに押圧することによって微細な転写パターンを被成型品Wに転写したり、転写をした後に被成型品Wから型Mを離すときに、型M、被成型品W、型設置体13の型Mを設置している型設置部位13m、被成型品設置体21の被成型品Wを設置している被成型品設置部位21wが内部(内側)に入る空間のことである。
【0046】
この部屋形成部材31は、型設置体13の下面に、上端が気密に取り付けられた円筒状のベローズ31aと、このベローズ31aの下端に気密に取り付けられた円環状のOリング設置体31bと、このOリング設置体31bの下面側に形成された環状溝31bb内に、一部がOリング設置体31bから下側へ突出するように取り付けられたOリング31cとで構成されている。
【0047】
上記した第4の流路21eには第2の減圧機構35が接続され、第2の流路13fには第3の減圧機構37が接続されるとともに、第3の流路13gには加圧機構39が接続されている。
【0048】
上記した第2の減圧機構35は、被成型品Wを被成型品設置体21に保持させるものであり、第4の流路21eに接続された第2の開閉バルブ35aと、この第2の開閉バルブ35aに接続された第2の真空ポンプ35bとで構成されている。
【0049】
そして、環状溝21dと、第4の流路21eと、第2の減圧機構35とによって被成型品保持機構が構成されている。
【0050】
また、第3の減圧機構37は、部屋R内を真空にするものであり、第2の流路13fに接続された第3の開閉バルブ37aと、この第3の開閉バルブ37aに接続された第3の真空ポンプ37bとで構成されている。
【0051】
そして、第2の流路13fと、第3の減圧機構37とによって真空引き機構が構成されている。
【0052】
また、加圧機構39は、部屋R内を大気圧よりも高い気圧、例えば、1200hPa〜3000hPaに加圧するものであり、第3の流路13gに接続された第4の開閉バルブ39aと、この第4の開閉バルブ39aに接続された加圧ポンプ39bとで構成されている。
【0053】
そして、第3の流路13gと、加圧機構39とによって大気圧超え加圧機構が構成されている。
【0054】
次に、転写装置1の動作を、図5を参照して説明する。
【0055】
初期状態として、図1に示すように、型Mが型設置体13に型取付部材17によって保持され、被成型品Wが被成型品設置体21に真空吸着によって保持され、各開閉バルブ37a,39aは閉じているものとする。
【0056】
図1の状態で、例えば、転写装置1のスタートのスイッチ(図示せず)が押されると、制御装置41の制御の下、型設置体13が下降し、Oリング31cが被成型品設置体21の被成型品設置面21aに接触し始め、さらに型設置体13が所定の距離(僅かな距離)だけ下降して被成型品設置体21に近づく(図5(a)参照)。
【0057】
この状態では、ベローズ31aとOリング31cとが僅かに弾性変形し、型設置体13と被成型品設置体21と部屋形成部材31とによって部屋Rが形成されるが、型Mと被成型品Wとは僅かに離れている。
【0058】
続いて、第3の開閉バルブ37aを開いて第3の真空ポンプ37bを稼動し、部屋R内の気圧を部屋Rの外の気圧(例えば、大気圧)よりも下げ(例えば、真空近くまで下げ)、型Mをさらにごく僅か下降させ、型Mで被成型品Wを押圧するとともに、紫外線発生器19を作動させて紫外線を照射し、転写素材W3を硬化させる(図5(b)参照)。
【0059】
なお、型Mを被成型品Wに押圧する押圧力は、例えば、型設置体13にロードセルを設け、このロードセルからの信号に基づき、制御部41の制御の下、適宜の値に制御されるものとする。
【0060】
部屋R内の圧力(気圧)を下げると、被成型品Wと被成型品設置体21とのごく僅かな隙間に空気(大気)が入り込んで被成型品Wが弾性変形し、被成型品Wが型Mに倣い、型Mと被成型品Wとの接触部位Cにおける圧力が均一化される。
【0061】
すなわち、型Mと被成型品Wとの接触部位Cのいずれの部位においても、微小な単位面積あたりの接触圧力が互いにほぼ等しくなる。
【0062】
上述した転写後に、図5(c)に示すように、型設置体13を上昇させて型Mを被成型品Wから離す際、第3の開閉バルブ37aを閉じて第3の真空ポンプ37aを停止させとともに、第4の開閉バルブ39aを開いて加圧ポンプ39bを稼働し、部屋R内の圧力を大気圧よりも上げる。
【0063】
このようにして型Mを被成型品Wから離すとき、部屋R内の圧力を大気圧よりも上げると、型Mに設けられている型受圧部Mcが大気圧よりも高い気圧によって型Mを成型品Wから離す方向へ押圧され、被成型品Wに設けられている被成型品受圧部Wcが大気圧よりも高い気圧によって被成型品Wを型Mから離す方向へ押圧され、型Mと被成型品Wとが接触部位Cの周縁から離れることにより、型Mが被成型品Wから容易に離れる(外れる)。
【0064】
そして、型設置体13を所定の位置までさらに上昇させることにより、図1および図5(d)に示す初期状態とし、第4の開閉バルブ39aを閉じ、各ポンプ35b,39bを停止させ、転写がなされた被成型品Wを被成型品設置体21から取り外し、転写がなされていない次の被成型品Wを被成型品保持機構によって真空吸着する。
【0065】
このようにして、転写素材W3に微細な転写パターンが転写された被成型品Wの残膜を除去し、残膜除去後に、転写素材W3をマスク材として基材W1にエッチング(例えば、ドライエッチング)をすることにより、型Mの微細な転写パターンに対応した微細パターンが基材W1に形成される。基材W1への微細パターンの形成後に、転写素材W3は除去(クリーニング)される。
【0066】
なお、型設置体13が移動するものとして説明したが、型設置体13に代えてまたは加えて、被成型品設置体21が図1の上下方向に移動する構成であってもよい。
【0067】
また、被成型品Wのみを真空吸着によって被成型品設置体21に保持させる構成ものとして説明したが、型Mを真空吸着によって型設置体13に保持させるとともに、被成型品Wを真空吸着によって被成型品設置体21に保持させたり、型Mを真空吸着によって型設置体13に保持させ、被成型品Wを被成型品取付部材によって被成型品設置体21に保持させる構成であってもよい。
【0068】
また、型Mの外周に型受圧部Mcを設け、被成型品Wの外周に被成型品受圧部Wcを設けた構成として説明したが、型Mにのみ型受圧部Mcを設けたり、被成型品Wにのみ被成型品受圧部Wcを設けた構成であってもよい。この場合、型受圧部Mcまたは被成型品受圧部Wcは、周回して設けられていなくてもよい。
【0069】
この発明の一実施例の転写装置1によれば、部屋Rを減圧した場合であっても、Oリング31cが被成型品設置体21に接触し続けて部屋Rの減圧状態を維持するので、転写の際に被成型品Wに気泡が発生するなどの不具合いの発生を確実に防止することができる。
【0070】
また、被成型品保持機構によって被成型品Wが被成型品設置体21に保持されているので、被成型品Wの交換を容易に行うことができる。
【0071】
また、転写後に型Mを被成型品Wから離すべく型設置体13を被成型品設置体21から離れる方向に移動させるとき、部屋Rの圧力を大気圧よりも高くするので、転写のときよりも大きな力で被成型品設置体21が被成型品Wを保持し、離型の際に被成型品Wを被成型品設置体21から離す力がかかっても、型Mと被成型品Wとが接触部位Cの周縁から離れることにより、被成型品Wが被成型品設置体21から離れることを防止することができる。
【0072】
また、型Mに型受圧部Mcが設けられ、被成型品Wに被成型品受圧部Wcが設けられているので、離型の際、部屋Rの圧力が大気圧よりも高くなると、型受圧部Mcが大気圧よりも高い気圧によって型Mを成型品Wから離す方向へ押圧され、被成型品受圧部Wcが大気圧よりも高い気圧によって被成型品Wを型Mから離す方向へ押圧され、型Mと被成型品Wとが接触部位Cの周縁から離れることにより、型Mが被成型品Wから容易に離れ(外れ)、型Mが型設置体13から離れることを防止することができるとともに、被成型品Wが被成型品設置体21から離れることを防止することができる。
【0073】
図6はこの発明の第2実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図であり、図1〜図5に示す部分と同一部分または図1〜図5に示す部分に相当する部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
なお、図6において、図1に示す構成部分の一部分の図示が省略されている。
【0075】
この第2実施例の転写装置1Aが第1実施例の転写装置1と異なるところは、真空吸着による型保持機構によって型Mを型設置体13に保持させているところである。
【0076】
すなわち、型設置体13には、型設置面13aの型Mが接触する部分の内側に、周回する環状溝13dが設けられるとともに、この環状溝13dを、例えば、側面に連通、開放させる第1の流路13eが設けられている。
【0077】
そして、第1の流路13eには第1の減圧機構33が接続されている。
【0078】
上記した第1の減圧機構33は、型Mを型設置体13に保持させるものであり、第1の流路13eに接続された第1の開閉バルブ33aと、この第1の開閉バルブ33aに接続された第1の真空ポンプ33bとで構成されている。
【0079】
そして、環状溝13dと、第1の流路13eと、第2の減圧機構35とによって型保持機構が構成されている。
【0080】
なお、動作などの説明は、先の実施例と同様になるので、省略する。
【0081】
この第2実施例の転写装置1Aにおいても、第1実施例の転写装置1と同様な効果を得ることができる。
【0082】
図7はこの発明の第3実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図であり、図1〜図6に示す部分と同一部分または図1〜図6に示す部分に相当する部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
なお、図7において、図1〜図6に示す構成部分の一部分の図示が省略されている。
【0084】
この第3実施例の転写装置1Bが第2実施例の転写装置1Aと異なるところは、図示を省略したボルトなどによって被成型品取付部材23を被成型品設置体21に取り付けることにより、被成型品Wの厚さ方向の他方の面(転写部材W3が形成されていない基材W1の平面状の下面)W1bを被成型品設置面21aに接触(面接触)させて被成型品Wが設置されるところである。
【0085】
なお、動作などの説明は、先の実施例と同様になるので、省略する。
【0086】
この第3実施例の転写装置1Bにおいても、第1実施例の転写装置1と同様な効果を得ることができる。
【0087】
図8はこの発明の第4実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図であり、図1〜図7に示す部分と同一部分または図1〜図7に示す部分に相当する部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
なお、図8において、図1〜図7に示す構成部分の一部分の図示が省略され、図示を省略したが、被成型品設置体に各穴、孔が設けられるとともに、バックアップガラス、紫外線発生器が取り付けられている。
【0089】
この第4実施例の転写装置1Cが第2実施例の転写装置1Aと異なるところは、型設置体13を第1の設置体13Aにして型Mを設置するところと、被成型品設置体21を第2の設置体21Aにして型Mを設置するところと、基材W1の両面に転写素材W3を設けて被成型品WAにしたところである。
【0090】
なお、動作などの説明は、先の実施例と同様になるので、省略するが、被成型品WAは適宜な機構(手段)によって型Mの間(または、下側の型Mの上)に設置される。
【0091】
この第4実施例の転写装置1Cにおいても、第1実施例の転写装置1と同様な効果を得ることができる。
【0092】
図9はこの発明の第5実施例である転写装置の概略構成を一部破断して示す正面図であり、図1〜図8に示す部分と同一部分または図1〜図8に示す部分に相当する部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
なお、図9において、図1〜図8に示す構成部分の一部分の図示が省略されている。
【0094】
この第5実施例の転写装置1Dが第4実施例の転写装置1Cと異なるところは、第1の設置体13Aおよび第2の設置体21Aに被成型品Wを設置するところと、両面(上、下面)に微細な転写パターンを形成して型MAにしたところである。
【0095】
なお、動作などの説明は、先の実施例と同様になるので、省略するが、型MAは適宜な機構(手段)によって被成型品Wの間(または、下側の被成型品Wの上)に設置される。
【0096】
この第5実施例の転写装置1Dにおいても、第1実施例の転写装置1と同様な効果を得ることができる。
【0097】
図10は熱インプリント法による転写の概要を示す説明図である。
【0098】
熱インプリント法の場合、転写装置が、図10(a)〜(c)に示す工程を担当する。
【0099】
熱インプリント法の場合、型Mは金属、石英ガラスなどで構成され、被成型品Wは熱可塑性樹脂などで構成されている。
【0100】
図10(a)において、少なくとも被成型品Wをヒータによって加熱し、図10(a)に示す矢印の方向に型Mを移動させ、図10(b)に示すように、型Mで被成型品Wを押圧する。
【0101】
そして、被成型品Wの転写部分が十分に流動可能となる温度まで被成型品Wを加熱して微細な転写パターンに被成型品Wの一部を流入させた後、型Mと被成型品Wとをガラス転移温度未満になるまで、ペルチェ素子などによって冷却し、被成型品Wに転写された微細な転写パターンを固化させる。
【0102】
そして、図10(b)に示す矢印の方向に型Mを移動させ、型Mを被成型品Wから離すと、図10(c)に示すように、被成型品Wに微細な転写パターンが転写される。
【0103】
この熱インプリント法で転写する場合は、先の実施例において、例えば、被成型品設置体21または第2の設置体21Aにヒータ、ペルチェ素子を埋設し、被成型品Wを加熱するヒータなどを制御する構成とすることにより、型Mの微細な転写パターンを被成型品Wに転写することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 転写装置
1A〜1D 転写装置
11 ベース体
13,13A 型設置体
13a 型設置面
13b バックアップ体取付穴
13c 貫通孔
13d 環状溝
13e 第1の流路
13f 第2の流路
13g 第3の流路
13m 型設置部位
15 バックアップガラス(バックアップ体)
17 型取付部材
19 紫外線発生器
21,21A 被成型品設置体
21a 被成型品設置部面
21d 環状溝
21e 第4の流路
21w 被成型品設置部位
23 被成型品取付部材
31 部屋形成部材
31a ベローズ
31b Oリング設置体
31bb 環状溝
31c Oリング
33 第1の減圧機構
33a 第1の開閉バルブ
33b 第1の真空ポンプ
35 第2の減圧機構
35a 第2の開閉バルブ
35b 第2の真空ポンプ
37 第3の減圧機構
37a 第3の開閉バルブ
37b 第3の真空ポンプ
39 加圧機構
39a 第4の開閉バルブ
39b 加圧ポンプ
41 制御部
M,MA 型
Ma 一方の面
Mb 他方の面
Mc 型受圧部
W,WA 被成型品
W1 基材
W1a 一方の面
W1b 他方の面
W3 転写素材
W3a 一方の面
Wc 被成型品受圧部
C 接触部位
R 部屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型に形成されている微細な転写パターンを、被成型品に転写するための転写装置において、
前記型を設置する型設置体と、
前記被成型品を設置し、前記型設置体に対して相対的に移動自在な被成型品設置体とを有し、
前記型設置体と前記被成型品設置体との少なくとも一方が、真空吸着によって前記型、前記被成型品を保持するように構成され、
前記型設置体と前記被成型品設置体とを互いに接近させて前記型を前記被成型品に押圧することによって前記微細な転写パターンを前記被成型品に転写をした後、前記被成型品から前記型を離すときに前記型、前記被成型品、前記型設置体の前記型を設置している型設置部位、前記被成型品設置体の前記被成型品を設置している被成型品設置部位が内部に入る部屋を形成し、前記真空吸着による保持力を増加させるために前記部屋内の気圧を大気圧よりも高くするように構成されている、
ことを特徴とする転写装置。
【請求項2】
型に形成されている微細な転写パターンを、被成型品に転写するための転写装置において、
前記型または前記被成型品を設置する第1の設置体と、
前記型または前記被成型品を設置し、前記第1の設置体に対して相対的に移動自在な第2の設置体とを有し、
前記第1の設置体と前記第2の設置体との少なくとも一方が、真空吸着によって前記型、前記被成型品を保持するように構成され、
前記第1の設置体と前記第2の設置体とを互いに接近させて前記型を前記被成型品に押圧することによって前記微細な転写パターンを前記被成型品に転写をした後、前記被成型品から前記型を離すときに前記型、前記被成型品、前記第1、第2の設置体の前記型、前記被成型品を設置している設置部位が内部に入る部屋を形成し、前記真空吸着による保持力を増加させるために前記部屋内の気圧を大気圧よりも高くするように構成されている、
ことを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の転写装置において、
前記微細な転写パターンを前記被成型品に転写をするときにおける前記型と前記被成型品との接触部位の外側に、大気圧よりも高い気圧によって前記型を前記被成型品から離す方向へ押圧する型受圧部と、大気圧よりも高い気圧によって前記被成型品を前記型から離す方向へ押圧する被成型品受圧部との少なくとも一方が形成されている、
ことを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転写装置を用いて型に形成されている微細な転写パターンを、被成型品に転写する、
ことを特徴とする転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−45842(P2012−45842A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191083(P2010−191083)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】