説明

転写装置用パッド構造および転写装置用パッドの製造方法

【課題】パッドの温度管理を精度良く行うことができると共に、別途に加熱手段を設ける必要をなくして転写装置の構造を簡単にし、設置スペースも狭くすることができ、転写装置の経済性を向上できる転写装置用パッド構造および該パッドの製造方法を提供する。
【解決手段】転写装置に用いるパッド14は、進退動手段26に固定される取付けベース24への接続部分の、絶縁性があり先端部12よりも硬度の高いベース部18と、このベース部18の先端側に固定し通電によって発熱する発熱部20と、このベース部18先端側および発熱部20を耐熱性の柔軟弾性材で覆った先端部12と、前記発熱部20への通電用金属リード線22aをパッド14外部に延ばした端子部22とを備え、パッド14を転写シート10に押圧する際に電源手段から前記端子部22を介して発熱部20に通電して当該パッド14が加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂、陶器、ガラス、皮革等の凹凸のある製品の表面に文字、図形、記号や模様等からなる図柄(絵柄)を手書きによらず、転写シート上の図柄および箔、または、インキ、ペースト、接着剤等を被転写面にパッドによって転写する転写装置においてそのパッドの構造およびパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッドを用いた転写装置に関して、例えば、特開2000-343895号公報(特許文献1)では、電極形成銀ペースト、マンガン・モリブデンペーストなどで絵柄(図柄)を台紙に印刷して転写シートとし、弾性体からなる転写用パッドを用いて、転写シートを余熱板の上で加熱して表面を軟化した状態でシリコンパッドを押圧することによって図柄を台紙から剥離して該パッドに接着させ、その後に、被転写体にパッドを押圧して絵柄を転写している。
【0003】
また、特開平10−181295号公報(特許文献2)では、垂直シリンダーの下部に設けた支持プレートには、ゴムシートの下面に加圧パッドを保持して設け、別途のヒータによって加温されたアルミ板に加圧パッドを押しつけて加熱し、転写シートを被転写面に位置決めして、加熱されたパッドによって転写シートを凹凸のある被転写面の全面へ密着させて加熱押圧して着色インク層を被転写面に転写させるようにしている。
【特許文献1】特開2000−343895号公報
【特許文献2】特開平10−181295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の如く、転写シートの図柄(文字記号や絵柄も含む)を転写するためには、加熱板上に転写シートを設置して加熱しパッドを転写シート上に移動させて密着させる工程を要するので、パッドの移動中および被転写体に密着中に温度低下を生じるなど、転写シート上の図柄をパッドに接着しまたはパッドから転写する際に実際の温度を適正温度に制御することが難しく、また転写に要する時間の長短によって実際のパッドの温度管理をきめ細かく行うことが難しい等の理由から転写品質がばらつくという問題点がある。
【0005】
また、加熱板等の加熱手段をパッドの昇降装置の他に設置する必要があり、構成部分が多くしかも加熱手段上にパッドを位置決めして押し付けて、当該パッドを加熱する構造が必要になるので、転写装置全体が大型かつ複雑な構成で設置場所も広く必要になることから、装置全体のコストが掛かるという問題を有する。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであって、パッドの温度管理を精度良く行うことができ転写品質にばらつきがなく転写図柄の品質向上ができると共に、パッドと別途に加熱手段を設ける必要をなくして転写装置の構造を簡単にし、かつ設置スペースも従来より狭くすることができ、転写装置の経済性を向上できる転写装置用パッド構造および転写装置用パッドの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、転写装置用パッド構造であって、箔またはインキ等からなる転写図柄を熱溶融性の溶剤を介して形成した転写シートを用い、先端部に柔軟弾性材を設けたパッドを加熱し、進退動手段によって、前記転写シートに加熱したパッドを転写シート上に押圧して該パッド表面に転写シートの図柄を接着させ、その後に、該パッドを被転写体の被転写面に押圧して図柄をその被転写面に転写する転写装置であって、
進退動手段に固定される取付けベースに前記パッドを接続する部分であって、絶縁性があり先端部よりも硬度の高いベース部と、
このベース部の先端側に固定し通電によって発熱する発熱部と、
このベース部先端側および発熱部を耐熱性の柔軟弾性材で覆った先端部と、
前記発熱部への通電用リードをパッド外部に延ばした端子部とを備え、
電源手段から前記端子部を介して発熱部に通電することによって当該パッドを加熱するようにしたことを特徴とする転写装置用パッド構造である。
【0008】
本発明において、先端部は、高伸縮性の低硬度ミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴム材料に導電性フィラーを混練した材料からなることが好適である。
【0009】
また、本発明において、発熱部は、導電性材を混練した導電性のミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴムを材料としたほぼ薄板形状を呈しており、端子部は、上記発熱部に接続された薄板金属からなるリード線をベース部内部において発熱部の面方向外側に向かいベース部表面付近で曲がって後方に延びて、ベース部後端からベース部外部に露出する構造を呈していることが好適である。
【0010】
本発明において、ベース部は、絶縁性を持ち、かつ高伸縮性を持ったミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴム材料から形成していることが好適である。
【0011】
本発明は、転写装置用パッドの製造方法であって、箔またはインキ等からなる転写図柄を熱溶融性の溶剤を介して形成した転写シートを用い、先端部に柔軟弾性材を設けたパッドを加熱し、進退動手段によって、前記転写シートに加熱したパッドを押圧して該パッド表面に転写シートの図柄を接着させ、その後に、該パッドを被転写体の被転写面に押圧して図柄を被転写面に転写する転写装置に用いるパッドの製造方法において、
パッド成形用金型内に離型材を塗布し、
前記金型内の最先端側部分を下方に向けて、前記金型内に前記パッド先端部を形成するための耐熱性の柔軟弾性材を注入し、
注入された柔軟性弾性材上に発熱部を置きかつその発熱部への通電用リードを金型外部に延して端子部を配置し、
金型内には、発熱部および先端部上に、絶縁性が有りかつ前記先端部形成用の柔軟弾性材よりも硬度の高いベース部用材料を注入し、
注入されたベース部上に取付けベースを載せ、
金型内に収容された材料全体を加硫プレスして、
加硫プレスされた材料全体を金型から外してパッドを形成することを特徴とする転写装置用パッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の転写装置用パッド構造によれば、パッドには、先端側に発熱部を耐熱性の柔軟弾性材で覆い、パッド外部に通電用リード線を延した端子部を備えているので、電源手段から前記端子部を介して発熱部に通電することによってパッドを直接加熱できる。
【0013】
したがって、パッドの移動中、転写シートに密着中および、被転写体に密着中に加熱を連続して行えるので、温度低下が生じることがなく、転写シート上の図柄をパッドに接着しまたはパッドから転写する際等に、実際の温度を適正温度にきめ細かく制御することが容易であり、また転写に要する時間の長短によっても実際のパッドの温度管理をきめ細かく行うことができることから、転写品質にばらつきがなく転写図柄の品質向上を図ることができる。
【0014】
また、パッドと別途に加熱手段を設ける必要がなくなり、転写装置の構造を簡単にでき、かつ設置スペースも従来より狭くすることができ、転写装置の経済性を向上できるという優れた効果を奏し得る。
【0015】
なお、本発明において、先端部を、高伸縮性の低硬度ミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴム材料に熱伝導性フィラーを混練した材料からなるものにすれば、熱伝導性がよくパッドの温度制御を一層きめ細かく制御できる。
【0016】
また、本発明において、発熱部は、導電性材を混練した導電性のミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴムを材料としたほぼ薄板形状を呈しており、端子部は、上記発熱部に接続された薄板金属からなるリード線をベース部内部において発熱部の面方向外側に向かいベース部表面付近で曲がって後方に延びて、ベース部後端からベース部外部に露出する構造を呈しているようにすれば、先端部を押圧する際に発熱部に圧力が加わっても薄板形状である発熱部は変形しにくく、また、端子部のリード線がベース部の内側かつ表面付近を後方に延びるので、転写時にベース部中心に設けた場合に比較して圧縮応力が掛かりにくく撓みや曲がりで応力を逃がし易い。
【0017】
したがって、転写作業を繰り返しても発熱部及び端子部の耐久性が向上してメンテナンスフリーにすることができる。
【0018】
また、本発明において、ベース部は、絶縁性を持ち、かつ高伸縮性を持ったミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴム材料から形成したものにすれば、発熱部の絶縁性が低くてもベース部から進退動手段を介して転写装置側に漏電することを防止でき、加熱制御に不都合が生じるのを確実に防止できる。
【0019】
本発明の転写装置用パッドの製造方法によれば、金型内にパッド先端部の柔軟弾性材の上に端子部を配置してベース部材料を注入し、そのベース部上に取付けベースを乗せて加硫処理をし、金型から外せば、一つの金型によってパッドを一括して形成できるので、各部材を個別に形成するのに比較して金型の数量および接着工程を省略することができ、簡単な製造装置の構成で簡易かつ迅速にパッドを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜図6は本発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。図1(a)は実施形態に係る転写装置用パッドの側面視図、同(b)は転写時のパッドの縦断面視図、同(c)は転写後の被転写体の縦断面視図である。図2はパッドの要部縦断視図である。図3(a)、(b)は、発熱部の第1の実施例の平面視説明図、側面視説明図、(c)、(d)は発熱部の第2の実施例の平面視説明図、縦断面視説明図である。図4(a)は、第1の実施例の発熱部の電極を複数設けたものの側面視説明図、(b)は第2の実施例の発熱部に電極を複数設けたものの縦断面視説明図である。図5〜図6は実施形態に係るパッド14の製造方法の断面視説明図である。
【0022】
実施形態に係るパッド14は、図1に示すように、箔またはインキ等からなる転写図柄10aを熱溶融性の溶剤を介して形成した転写シート10を用い、先端部12に柔軟弾性材を設けたパッド14を加熱し、進退動手段26によって、前記転写シート10に加熱したパッド14を板(載置板)上に載置された転写シート10上に押圧して該パッド14表面に転写シート10の図柄10aを接着させ、その後に、該パッド14を被転写体16の被転写面16aに押圧して図柄10aをその被転写面16aに転写する転写装置に用いるものである。なお、転写装置はパッド14を転写のために備える各種のものを採用することができる。また、進退動手段26は、パッド14後部の取付けベースを挟持して、押圧および必要な移動させ得る機構であれば種々の構成が可能であり、図1ではパッド14を挟持した状態の進退動手段26を略記している。また、被転写体16は、被転写面が平面はもちろん凹凸のある立体物品表面に転写印刷するのに好ましく、特に、多数のディンプルが表面に形成されたゴルフボール表面を被転写面として箔を転写するのに本発明のパッドを備えた転写装置によって転写するのが好適である。
【0023】
パッド14は、進退動手段26に固定される取付けベース24に前記パッド14を接続する部分であって、絶縁性があり先端部12よりも硬度の高いベース部18と、このベース部18の先端側に固定し通電によって発熱する発熱部20と、このベース部18先端側および発熱部20を耐熱性の柔軟弾性材で覆った先端部12と、前記発熱部20への通電用金属リード線22aをパッド14外部に延ばした端子部22とを備え、転写装置の進退動手段26によってパッド14を転写シート10に押圧する際に電源手段(図示省略)から前記端子部22を介して発熱部20に通電することによって当該パッド14を加熱するようにしたものである。電源手段からの通電はパッド14で押圧する際のみならず、その他予め余熱のために通電して加熱するようにしてもよい。
【0024】
パッド14は、ベース部18から先端部12にかけて先細の概略円錐形状または半球形状を呈した回転対称形状になっている。ベース部18の後部に繋がる取付けベース24は、進退動手段26によって挟持等で支持するのに都合の良い構成を呈している。実施形態では概略円柱状形状を呈している。
【0025】
前記先端部12は、高伸縮性の低硬度ミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴム材料に熱伝導性フィラーを混練した材料からなる。先端部12は、このような材料によって形成するので、熱伝導性がよくパッド14の温度制御を一層きめ細かく制御できる。
【0026】
具体的な先端部12の材料には、熱加硫型シリコーンゴムであって、例えば東レダウコーング(株)社製のDY32−3,DY32−5,DY32−9,DY32931,SH35,SH52,SH831,SH842、GE東芝シリコーン(株)社製のTSE2523,TSE2561,TSE260,TSE221,XE20−3,XE20−5,XE20−A,XE20−C,XE23−B,XE23−A、信越化学工業(株)社製のKE−9,KE−5,KE−7,KE−1,X30、旭化成ワッカーシリコーン(株)社製のEL1301,EL1401,EL7101,EL7152,EL1501,EL7210のうちの1以上の材料を単独にまたは混合して用いることができる。
【0027】
また、発熱部20は、導電性材を混練した導電性のミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴムを材料としたほぼ薄板形状を呈している。実施形態では発熱部20は、図2の縦断視しており、図3(a)の平面図,(b)の側面図で示す第1の実施例のように、平面視で円形形状を呈した概略円板形状で、側面視で概略矩形のものであって、その平面方向をパッド14の中心軸に対して垂直方向にほぼ一致させている。したがって、発熱部20は、ベース部18先端18aに平坦に支持されており、端子部22は、発熱部20の径方向外側にベース部18の先端18a側外縁付近まで金属リード線22aを延ばして形成されている。
【0028】
具体的には、端子部22は、上記発熱部20に接続された薄板金属からなる金属リード線22aをベース部18内部において発熱部20の面方向外側に向かいベース部18表面付近で曲がって該表面に沿って後方に延びて、ベース部18後端18bからベース部18外部に露出する構造を呈している。
【0029】
端子部22は上記の構造のため、転写時に先端部12を転写シート10に押圧する際に発熱部20に圧力が加わっても薄板形状であってベース部18先端18aに平坦に支持された発熱部20は変形しにくく、また、端子部22の金属リード線22aがベース部18の内側かつ表面付近を後方に延びるので、金属リード線22aをベース部18中心に設けた場合に比較して転写時に圧縮応力が掛かりにくく撓みや曲がりが生じて応力を逃がし易い。したがって、転写作業を繰り返しても発熱部20及び端子部22の耐久性が向上してメンテナンスフリーにすることができる。
【0030】
具体的には、この発熱部20の材料には熱加硫型シリコーンゴムであって、例えば東レダウコーング(株)社製のSRX−4,SRX−5,SRX−6,SE6770,DY32−5,DY32−9,SH−5,SH−8、GE東芝シリコーン(株)社製のTSE2523,TSE2561,TSE260,TSE221,XE20−3,XE20−5,XE20−A,XE20−C,XE23−B,XE23−A、信越化学工業(株)社製のKE−9,KE−7,KE−5,KE−3,KE−1,TC,EC,X30、旭化成ワッカーシリコーン社(株)社製のEL1301,EL1401,EL7101,EL7152,EL1501,EL7210のうち1以上の材料を単独にまたは混合して用いることができる。
【0031】
また、発熱部構造の各実施例を説明する。図2、図3(a),(b)に第1の実施例に係る発熱部20を、図3(c),(d)に第2の実施例に係る発熱部20を示す。
第1の実施例(形状A)に係る発熱部20は、上記ミラブル型シリコーンゴム製の円板形状の発熱体20aの中心を挟んで左右外周に金属端子片22c1、22c2を電気的に接合し、その金属端子片c1,22c2からそれぞれ金属リード線22a1,22a2を発熱体20aの面に沿う方向に延して端子部22に接続したものである。
また、第2の実施例(形状B)の発熱部20は、図3(c),(d)に示すように、発熱体20aの片面の中央部に円形の金属端子片22bを、また、外周に環状の金属端子片22cを電気的に接合している。そして、中央部の金属端子片22bにリード線(絶縁被覆線等)22dを延ばし、また、外周の金属端子片22cから金属リード線22aを発熱体20aの面に沿う方向に延して、端子部22に上記リード線22dおよび金属リード線22aをそれぞれ接続したものである。端子部22,22を介してリード線22d、金属リード線22aから電圧を発熱体20aに印加することによって、発熱部20を発熱させる。
【0032】
発熱体の形状や面積によって、図3では一対(2本)の金属リード線22aの発熱部20を示しているが、金属リード線22aの本数を2対以上つまり4・6・8…本などに増やすことにより、電流が発熱体20aにスムーズに流れるようにし、また、リード線に押圧の際の力学的負荷および電流を流す際の電気的負荷がなるべく掛からないようにリード線の本数および配置を設定する。
【0033】
また、前記発熱部20の金属リード線22aは図4に示すように上下方向に複数設けても良い。図4(a)では、上記形状Aの第1の実施例の発熱部20において、上記ミラブル型シリコーンゴム製の円板形状の発熱体20aの両面(上下面)の外周に環状の金属端子片22c1,22c2を電気的に接合して、それらの金属端子片22c1,22c2それぞれに金属リード線22a1,22a2を発熱体20aの面に沿う方向に延して接続したものである。
【0034】
また、(b)に示すように,中央部に円形の金属端子片22bを設けてリード線22dを延して、また、外周の金属端子片22c,22cからそれぞれ金属リード線22a,22aを発熱体20aの面に沿う方向に延して接続したものである。上下の金属リード線22a1,22a2,22a,22aから端子部22,22を介して電圧を発熱体20aに印加することによって、発熱させる。この場合、上記の金属端子片22c,22cで上下両側から発熱体を挟み込むことにより、同じ電圧の印加で電流が多く流せて(端子片と発熱体同士の接触抵抗が低下することから)高温を発生さえることができる。
なお、転写時の圧力分散を考慮し、中央部金属端子片22bの形状や面積を変えて設定するのが好ましい。また、合わせてリード線22dの配線も考慮することが好ましい。
【0035】
前記ベース部18は、絶縁性を持ち、かつ高伸縮性を持ったミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴム材料から形成しているものである。ベース部18は、この構成を採用するため、発熱部20の絶縁性が低くてもベース部18から進退動手段26を介して転写装置側に漏電することを防止でき、加熱制御に不都合が生じるのを確実に防止できる。
【0036】
具体的には、このベース部18の材料には熱加硫型シリコーンゴムであって、例えば東レダウコーング(株)社製のDY32−3,DY32−5,DY32−9,DY32931,SH35,SH52,SH831,SH842、GE東芝シリコーン(株)社製のTSE2523,TSE2561,TSE260,TSE221,XE20−3,XE20−5,XE20−A,XE20−C,XE23−B,XE23−A、信越化学工業(株)社製のKE−9,KE−5,KE−7,KE−1,X30、旭化成ワッカーシリコーン(株)社製のEL1301,EL1401,EL7101,EL7152,EL1501,EL7210のうち1以上の材料を単独にまたは混合して用いることができる。
【0037】
なお、各部を接着する接着剤は、例えば東レダウコーング(株)社製のSH4280,SD4560,SD4570,SD4580、GE東芝シリコーン(株)社製のME121,ME123,YP9341,XP80、信越化学工業(株)社製のプライマーS,プライマーT,プライマーU,プライマー4、旭化成ワッカーシリコーン(株)社製のN,RT,E,Kのうち1以上の材料を単独にまたは混合して用いることができる。
【0038】
また、パッド取付けベース24は、硬質のもの、具体的には、金属(鉄、真鍮、アルミニウム等)やプラスチック(メラミン、フェノール樹脂系の熱硬化性樹脂等)を用いることができる。
【0039】
上記構成の実施形態に係る転写装置では、図1の(a)に示すように、箔またはインキ等からなる転写図柄を熱溶融性の溶剤を介して形成した転写シート10を用い、載置台上に転写シート10を乗せた状態で、進退動手段26によって、前記転写シート10に発熱部20への通電によって加熱したパッド14を転写シート上に押圧する。これによって該パッド14表面に転写シート10の図柄10aが接着する。
【0040】
その後に、該パッド14を移動させて図1(b)に示すように、被転写体16の被転写面16aに押圧する(この際に適宜に発熱部20を発熱させて温度調整が可能である)。パッド14を後退させれば、図1(c)に示すように、図柄10aがその転写体16の被転写面16aに転写される。
【0041】
実施形態の転写装置用パッド14構造によれば、パッド14には、発熱部20先端側を耐熱性の柔軟弾性材からなる先端部12によって覆い、パッド14外部に通電用金属リード線22aを延した端子部22を備えているので、電源手段から前記端子部22を介して発熱部20に通電することによってパッド14を直接加熱できる。
【0042】
したがって、パッド14の移動中、転写シート10に密着中および、被転写体16に密着中に加熱を連続して行えるので、温度低下が生じることがなく、転写シート10上の図柄10aをパッド14に接着しまたはパッド14から被転写体16の被転写面16aに転写する際に実際の温度を適正温度にきめ細かく制御することが容易であり、また転写に要する時間の長短によっても実際のパッド14の温度管理をきめ細かく行うことができることから、転写品質にばらつきがなく転写図柄10aの品質向上を図ることができる。
【0043】
また、パッド14と別途に加熱手段を設ける必要がなくなり、転写装置の構造を簡単にでき、かつ設置スペースも従来より狭くすることができ、転写装置の経済性を向上できる。
【0044】
次に、上記構造のパッド14の製造方法を図5〜図6に基づいて説明する。
【0045】
この製造方法においては、図5〜図6に示す工程[1]〜[6]を実施し、その際、金型28内の最先端側部分を下方に向けた状態で設置する。金型は、鉄、真鍮、硬質アルミニウム、銅等からなっている。
【0046】
まず、図5の工程[1]に示すように、パッド14成形用金型28内に離型材を塗布する。
【0047】
次いで、工程[2]に示すように、前記金型28内に前記パッド14先端部12を形成するための耐熱性の柔軟弾性材を注入する。
【0048】
そして、工程[3]に示すように、注入された柔軟性弾性材上に発熱部20を置きかつその発熱部20への通電用金属リード線22aを金型外部に延して端子部22を配置する。
【0049】
次いで、図6の工程[4]に示すように、金型内には、発熱部20および先端部12上に、絶縁性が有りかつ前記先端部12形成用の柔軟弾性材よりも硬度の高いベース部18用材料を注入する。
【0050】
そして、工程[5]に示すように、注入されたベース部18上に取付けベース24を載せる。
【0051】
次いで、工程[6]に示すように、金型内に収容された材料全体を加硫プレスして、加硫プレスされた材料全体を金型から外してパッド14とする。
【0052】
このように、実施形態のパッド14の製造方法によれば、一つの金型によってパッド14を一括して形成できるので、各部材を個別に形成するのに比較して金型の数量および接着工程を省略することができ、簡単な製造装置の構成で簡易かつ迅速にパッド14を製造することができる。
【0053】
尚、本発明の転写装置用パッド構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は実施形態に係る転写装置用パッドの側面視図、(b)は転写時のパッドの縦断面視図、(c)は転写後の被転写体の縦断面視図である。
【図2】図1のパッドの先端部付近の要部縦断面視図である。
【図3】(a)、(b)は、発熱部の第1の実施例の平面視説明図、側面視説明図、(c)、(d)は発熱部の第2の実施例の平面視説明図、縦断視説明図である。
【図4】(a)は、第1の実施例の発熱部の電極を複数設けたものの側面視説明図、(b)は第2の実施例の発熱部に電極を複数設けたものの縦断面視説明図である。
【図5】実施形態に係るパッドの製造方法の断面視説明図であって、工程[1]〜[3]の説明図である。
【図6】図5に続く、工程[4]〜[6]の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
10 転写シート
10a 転写図柄
12 パッドの先端部
14 パッド
16 被転写体
16a 被転写面
18 ベース部
18a ベース部の先端
18b ベース部の後端
20 発熱部
20a 発熱体
22 端子部
22a,22a1,22a2 金属リード線
22b 中央部の金属端子片
22c,22c1,22c2 周辺の金属端子片
22d リード線
24 取付けベース
26 進退動手段
28 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔またはインキ等からなる転写図柄を熱溶融性の溶剤を介して形成した転写シートを用い、先端部に柔軟弾性材を設けたパッドを加熱し、進退動手段によって、前記転写シートに加熱したパッドを転写シート上に押圧して該パッド表面に転写シートの図柄を接着させ、その後に、該パッドを被転写体の被転写面に押圧して図柄をその被転写面に転写する転写装置であって、
進退動手段に固定される取付けベースに前記パッドを接続する部分であって、絶縁性があり先端部よりも硬度の高いベース部と、
このベース部の先端側に固定し通電によって発熱する発熱部と、
このベース部先端側および発熱部を耐熱性の柔軟弾性材で覆った先端部と、
前記発熱部への通電用リード線をパッド外部に延ばした端子部とを備え、
電源手段から前記端子部を介して発熱部に通電することによって当該パッドを加熱するようにしたことを特徴とする転写装置用パッド構造。
【請求項2】
先端部は、高伸縮性の低硬度ミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴム材料に熱伝導性フィラーを混練した材料からなることを特徴とする請求項1に記載の転写装置用パッド構造。
【請求項3】
発熱部は、導電性材を混練した導電性のミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴムを材料としたほぼ薄板形状を呈しており、
端子部は、上記発熱部に接続された薄板金属からなるリード線をベース部内部において発熱部の面方向外側に向かいベース部表面付近で曲がって後方に延びて、ベース部後端からベース部外部に露出する構造を呈していることを特徴とする請求項1または2に記載の転写装置用パッド構造。
【請求項4】
ベース部は、絶縁性を持ち、かつ高伸縮性を持ったミラブル型シリコーンゴムまたはRTV型シリコーンゴム材料から形成していることを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の転写装置用パッド構造。
【請求項5】
箔またはインキ等からなる転写図柄を熱溶融性の溶剤を介して形成した転写シートを用い、先端部に柔軟弾性材を設けたパッドを加熱し、進退動手段によって、前記転写シートに加熱したパッドを押圧して該パッド表面に転写シートの図柄を接着させ、その後に、該パッドを被転写体の被転写面に押圧して図柄を被転写面に転写する転写装置に用いるパッドの製造方法において、
パッド成形用金型内に離型材を塗布し、
前記金型内の最先端側部分を下方に向けて、前記金型内に前記パッド先端部を形成するための耐熱性の柔軟弾性材を注入し、
注入された柔軟性弾性材上に発熱部を置きかつその発熱部への通電用リード線を金型外部に延して端子部を配置し、
金型内には、発熱部および先端部上に、絶縁性が有りかつ前記先端部形成用の柔軟弾性材よりも硬度の高いベース部用材料を注入し、
注入されたベース部上に取付けベースを載せ、
金型内に収容された材料全体を加硫プレスして、
加硫プレスされた材料全体を金型から外すことによってパッドを形成することを特徴とする転写装置用パッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−61662(P2009−61662A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231311(P2007−231311)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(505325718)株式会社 アロー企画 (1)
【出願人】(507300227)株式会社特殊阿部製版所 (5)
【Fターム(参考)】