説明

軸不斉リン化合物とその製造方法

【課題】金属触媒の配位子として有用な軸不斉リン化合物及びその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、三重結合を有する化合物を付加環化反応させる一般式(1)で表される軸不斉リン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属触媒の配位子として有用な軸不斉リン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、不斉水素化反応、不斉異性化反応、不斉ヒドロシリル化反応等の不斉反応の触媒として利用できる遷移金属錯体については数多くの報告がなされている。中でもルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム等の遷移金属に光学活性ホスフィン化合物が配位した錯体は、不斉合成反応の触媒として優れた性能を有するものとして広く知られている。このような光学活性ホスフィン化合物の中で軸不斉構造を有する光学活性ビアリールホスフィン化合物は不斉反応触媒の光学活性配位子として有用である(例えば、非特許文献1等)。このような光学活性ビアリール化合物を合成する方法としては、2つのアリールユニットのホモ又はクロスカップリングによるものが多く、また光学活性体を得るためにはカップリング後に光学分割を必要とする(例えば、特許文献1及び特許文献2等参照)。光学活性ビアリールホスフィン化合物を合成するためには、上記ホモ又はクロスカップリングによるビアリール化合物の合成の前あるいは後に該ビアリール骨格にリン原子部位を導入する必要がある(特許文献2及び特許文献3等参照)。一方、最近は新たな光学活性ビアリール化合物を合成する手法としてアルキン類を用いたエナンチオ選択的な[2+2+2]付加環化反応による方法も開発されている(非特許文献2)。また同様な[2+2+2]付加環化反応を用いたビアリールホスフィン化合物の製造法も開発されているが、光学活性なリン化合物は得ることができない(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−16997号公報
【特許文献2】特開平10−182678号公報
【特許文献3】特表平10−501234号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tetrahedron,2005,Vol.61,5405-5432
【非特許文献2】Organic Letters,2006,Vol.8,3489-3492
【非特許文献3】Organic Letters,2007,Vol.9,4925-4928
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、エナンチオ選択的[2+2+2]付加環化反応で軸不斉をとり得る構造を有するビアリール化合物の合成は知られているが、エナンチオ選択的に該ビアリール骨格の2,2’位にリン原子部位を導入した化合物の合成法は知られていない。
【0006】
また、従来のアリールユニットのカップリング法で合成されたビアリールリン化合物は、光学分割の操作が必須であり、場合によっては一方の光学異性体が不要になる可能性もある。
【0007】
そこで、比較的入手が容易な基質を用い、少ない工程数にて、高い光学純度で軸不斉ビアリールリン化合物を合成できれば、従来法ではほぼ必須の工程であった光学分割の工程を経ることなく、軸不斉光学活性体が簡便に得られる。そのような製造法を提供すること、並びにそのようにして製造できる新規な軸不斉ビアリールリン化合物を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、三重結合を有する化合物を、ロジウム及び光学活性ビスホスフィンを含む触媒の存在下でエナンチオ選択的[2+2+2]付加環化反応させることにより、1工程でかつ高い光学純度を有する軸不斉ビアリールリン化合物を製造し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明は以下の内容を包含するものである。
[1]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、三重結合を有する化合物を付加環化反応させる一般式(1)で表される軸不斉リン化合物の製造方法。
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。RからR10は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。RからR10は、これらの中から選ばれる任意の2つで環を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)
【0012】
[2]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、一般式(2)で表されるジイン化合物と一般式(3)で表される化合物とを、分子間で付加環化反応させる一般式(4)又は一般式(5)で表される光学活性化合物の製造方法。
【0013】
【化2】

【0014】
(式(2)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。式(3)中、Zは二価基を表し、R11及びR12は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は下記式で表されるR13を表す。)
【0015】
【化3】

【0016】
(式R13中、Zは二価基を表し、R14は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
【0017】
【化4】

【0018】
(式(4)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。R11は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R12は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Zは二価基を表し、a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。*は軸不斉であることを表す。
式(5)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。R14は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Z及びZは二価基を表し、a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。*は軸不斉であることを表す。)
【0019】
[3]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒が下記一般式(6)で表される化合物である[2]に記載の製造方法。
【0020】
[Rh(L)(Y)]X (6)
【0021】
(式(6)中、Lは下記式(7)で表される光学活性ビスホスフィンを表し、Yは非共役ジエン化合物を表し、Xはカウンターアニオンを表す。また、mは1又は2の整数を表し、nは0又は1の整数を表す。但し、m=1のときn=0又はn=1であり、m=2のときn=0である。)
【0022】
1516P−Q−PR1718 (7)
【0023】
(式(7)中、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R15とR16とで及び/又はR17とR18とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。)
【0024】
[4]ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を調製する際に、水素ガスを用いて非共役ジエン配位子を脱離させることを特徴とする[3]に記載の製造方法。
【0025】
[5]一般式(8)で表される光学活性化合物。
【0026】
【化5】

【0027】
(式(8)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。R19は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R20は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又は2個のR20同士でヘテロ原子を含んでいてもよく置換基を有していてもよい二価基を形成してもよい。Zは二価基を表す。a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。*は軸不斉であることを表す。)
【発明の効果】
【0028】
本発明の方法によれば、三重結合を複数有する化合物とジイン構造を有するリン化合物をロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒の存在下で反応させることにより、1工程でエナンチオ選択的に光学活性ビアリールリン化合物を製造することができるので、光学分割の工程を経ることなく軸不斉光学活性体を得ることができる。また、本発明に係わる光学活性ビアリール化合物は比較的入手が容易な基質を原料として製造することができ、金属触媒の配位子として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るリン化合物は、上記した一般式(1)、(4)、(5)及び(8)で表されるリン化合物であり、後に詳しく述べる本発明の製造方法により製造することができる。一般式(1)、(4)、(5)及び(8)において、R及びRは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。
【0030】
ここで、R及びRで表されるアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基等が挙げられる。これらアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0031】
及びRで表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜12のシクロアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0032】
及びRで表されるアリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子等が挙げられ、これら置換基は該アリール基上に複数置換されていてもよい。これら置換を有するアリール基の具体例としては、例えば、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基等が挙げられる。
【0033】
及びRで表されるアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基等が挙げられる。これらアルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アリール基等が挙げられる。
【0034】
及びRで表されるアリールオキシ基としては、炭素数6〜18のアリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。これらアリールオキシ基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子等が挙げられ、これら置換基は該アリール基上に複数置換されていてもよい。
【0035】
一般式(1)、(4)、(5)及び(8)において、R〜R20で表されるアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基等が挙げられる。これらアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0036】
〜R20で表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜12のシクロアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0037】
〜R20で表されるアリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子等が挙げられ、これら置換基は該アリール基上に複数置換されていてもよい。
【0038】
〜R20で表されるアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基等が挙げられる。これらアルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アリール基等が挙げられる。
【0039】
〜R20で表されるアリールオキシ基としては、炭素数6〜18のアリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。これらアリールオキシ基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子等が挙げられ、これら置換基は該アリール基上に複数置換されていてもよい。
【0040】
なお、一般式(1)におけるR〜R10の中から選ばれる2つの基、一般式(4)におけるR12同士、一般式(8)におけるR20同士において、これらのうちの二つで環又は二価基を形成してもよい。形成される環の具体例としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の脂肪族環;ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の芳香族環が挙げられる。該環の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、前記したような基が挙げられる。
【0041】
また、形成される二価基としては、置換基を有していてもよく、鎖内に酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよいメチレン鎖等が挙げられる。かかる場合のメチレン鎖としては、例えば、炭素数3〜6のメチレン鎖が好ましく、具体的にはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。また、前記のメチレン鎖内の炭素原子が、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されていてもよく、このような基の具体例としては、2−オキサトリメチレン基、3−オキサペンタメチレン基、メチレンジオキシ基、2,4−ジオキサペンタメチレン基等が挙げられる。また、該メチレン鎖の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシを有するアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0042】
一般式(3)、(4)、(5)及び(8)において、Z、Z及びZで表される二価基としては、酸素原子、硫黄原子、メチレン鎖、NR、Si(RSi等が挙げられる。ここで、Rは、アルキル基、アリール基、アルカンスルホニル基、アリーンスルホニル基又はアシル基を表し、RSiは、アルキル基又はアリール基を表すか、Si(RSiで環を形成してもよい。
【0043】
メチレン鎖としては、直鎖又は分岐のメチレン鎖が挙げられ、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、2,3−ブタンジイル基、ジフルオロメチレン基等が挙げられる。
【0044】
NRにおけるR及びSi(RSiにおけるRSiで表されるアルキル基としては、例えば直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては前記したようなアルキル基が挙げられる。R及びRSiで表されるアリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が挙げられ、具体的には前記したようなアリール基が挙げられる。
【0045】
NRにおけるRで表されるアルカンスルホニル基及びアリーンスルホニル基としては、例えばメタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等が挙げられる。
で表されるアシル基としては、炭素数2〜10の直鎖又は分岐の脂肪族アシル基、又は芳香族アシル基が挙げられ、具体例としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、ピバロイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンゾイル基、p−ニトロベンゾイル基等が挙げられる。
Si(RSiで形成される環としては、シロラン環、シリナン環、シレパン環等が挙げられる。
【0046】
本発明においては、一般式(1)で表されるリン化合物の中でも、上記した一般式(8)で表されるリン化合物が好ましい。
【0047】
次に本発明のリン化合物を製造できる、軸不斉光学活性リン化合物の製造方法(単に「本発明の製造方法」ということがある)について説明する。
【0048】
本発明の軸不斉光学活性リン化合物の製造方法は、以下のスキーム1に記載するように、ロジウム金属と光学活性ビスホスフィン化合物とを含む触媒の存在下に反応を行い、詳しくはエナンチオ選択的に[2+2+2]付加環化させるものである。
【0049】
【化6】

【0050】
スキーム中にも記載されている記号の表す意味及び該記号で表される基等の例は、上記で説明したそれぞれの意味及び例と同じである。
【0051】
本発明の製造方法で用いられるロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒について説明する。
【0052】
本発明に用いられる触媒成分の一つであるロジウム金属のロジウム源としては、ロジウム化合物が用いられ、好ましいロジウム化合物としては、オレフィン性配位子が配位したロジウム(I)の錯体が挙げられる。具体的なロジウム(I)錯体としては、[Rh(COD)]X、[Rh(NBD)]X、[Rh(エチレン)Cl]、[Rh(COE)2Cl]2[Rh(COD)Cl]、[Rh(NBD)Cl]等が挙げられる。前記錯体化学式中、XはCl、Br、I、BF、OTf、ClO、SbF、PF、BPh、B(3,5−(CF等のカウンターアニオンを表し、COEはシクロオクテン、CODは1,5−シクロオクタジエン、NBDはノルボルナジエンを表す。
【0053】
本発明に用いられる触媒成分のもう一つである光学活性ビスホスフィンとしては、例えば下記の一般式(7)で表されるものが挙げられる。
【0054】
1516P−Q−PR1718 (7)
【0055】
(式(7)中、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R15とR16とで及び/又はR17とR18とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。)
上記式中、R15、R16、R17及びR18で表される、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
【0056】
アリール基の置換基としてのアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基等が挙げられる。
【0057】
アリール基の置換基としてのアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0058】
アリール基の置換基としてのアリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0059】
アリール基の置換基としての複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられ、脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、2−オキソピロリジル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。一方、芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、ヘテロ原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0060】
また、R15、R16、R17及びR18で表される、置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、5員環又は6員環のシクロアルキル基が挙げられ、好ましいシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらシクロアルキル基の環上においては、前記アリール基の置換基として挙げたようなアルキル基又はアルコキシ基等の置換基で、1乃至2以上置換されていてもよい。
【0061】
また、R15、R16、R17及びR18で表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状又は分岐状の、例えば炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基等が挙げられる。これらアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0062】
また、R15とR16及び/又はR17とR18とで形成してもよい環としては、R15、R16、R17及びR18が結合しているリン原子を含めた環として、四員環、五員環又は六員環の環が挙げられる。具体的な環としては、ホスフェタン環、ホスホラン環、ホスファン環、2,4−ジメチルホスフェタン環、2,4−ジエチルホスフェタン環、2,5−ジメチルホスホラン環、2,5−ジエチルホスホラン環、2,6−ジメチルホスファン環、2,6−ジエチルホスファン環等が挙げられ、これらの環は光学活性体でもよい。
【0063】
また、Qで表される、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基等が挙げられる。フェニレン基としては、o又はm−フェニレン基が挙げられ、該フェニレン基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基及びt−ブトキシ基等のアルコキシ基;水酸基、アミノ基又は置換アミノ基等で置換されていてもよい。ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基としては、1,1'−ビアリール−2,2'−ジイル型の構造を有するものが好ましく、該ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基は、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等のアルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等で置換されていてもよい。また、フェロセンジイル基も置換基を有していてもよく、置換基としては、前記したようなアルキル基、アルコキシ基、アルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等が挙げられる。
【0064】
一般式(7)で表される光学活性ビスホスフィンの具体例としては、例えば公知のビスホスフィン類が挙げられ、その内の一つとして下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化7】

【0066】
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基を示すか、又はシクロペンチル基もしくはシクロヘキシル基を示す。)
上記のR21及びR22における、フェニル基の置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、これら置換基は該フェニル基上に複数置換していてもよい。
【0067】
21及びR22の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0068】
また、一般式(9)で表される化合物の基本骨格であるビナフチル環は、置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、例えばメチル基、t−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基又はトリフェニルシリル基等のトリアリールシリル基が挙げられる。
【0069】
また、一般式(7)で表される光学活性ビスホスフィンの他の具体例としては、下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化8】

【0071】
(式中、R23及びR24は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基から選ばれる置換基で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基を示す。R25、R26、R27、R28、R29及びR30は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基又はジアルキルアミノ基を示し、R25、R26及びR27のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよく、R28、R29及びR30のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。また、R27とR30とで置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成していてもよい。ただし、R27とR30は水素原子ではない。)
上記のR23及びR24における、フェニル基の置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、フェニル基の置換基としてのハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、これら置換基は該フェニル基上に複数置換していてもよい。R23及びR24の具体例としては、例えば、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、3,5−キシリル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0072】
また、R25〜R30で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、t−ブチル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜10のアシルオキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、ハロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のハロアルキル基が挙げられ、ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
【0073】
25、R26及びR27のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合、並びにR28、R29及びR30のうちの二つで置換基を有していてもよいメチレン鎖を形成する場合のメチレン鎖としては、例えば、炭素数3〜5のメチレン鎖が好ましく、具体的にはトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。また、該置換基を有していてもよいメチレン鎖における置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
【0074】
また、R25、R26及びR27のうちの二つで置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成する場合、並びにR28、R29及びR30の内の二つで置換基を有していてもよい(ポリ)メチレンジオキシ基を形成する場合の(ポリ)メチレンジオキシ基の具体例としては、例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等が挙げられる。また、該(ポリ)メチレンジオキシ基に置換する置換基としては、アルキル基及びハロゲン原子等が挙げられ、その具体例としては、例えば、炭素数1〜6の前記したようなアルキル基及びフッ素原子等が挙げられる。
【0075】
一般式(9)及び(10)で示される光学活性ビスホスフィン化合物の具体例としては、例えば2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(m−トリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−キシリル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−t−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(p−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(シクロペンチル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス[ジ(シクロヘキシル)ホスフィノ]−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−m−トリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1、1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−t−ブチルフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−クロロフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジフェニルホスフィン)(以下、segphosという)、(4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジ(3,5−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジ(4−メトキシフェニル)ホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ジシクロヘキシルホスフィン)、((4,4’−ビ−1,3−ベンゾジオキソール)−5、5’−ジイル)ビス(ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラ(トリフルオロメチル)−5,5’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,6−ジ(トリフルオロメチル)−4’,6’−ジメチル−5’−メトキシ−1,1’−ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジフェニルホスフィノ−4,4’,6,6’−テトラメチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ジフルオロ−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−o−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−m−フルオロフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、1,11−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,7−ジヒドロベンゾ[c,e]オキセピン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5’,6,6’−テトラメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−6,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−4,4’,5,5’,6,6’−ヘキサメトキシ−1,1’−ビフェニル、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジエチルホスホラノ)ベンゼン、1,2−ビス(2,5−ジイソプロピルホスホラノ)ベンゼン、1−(2,5−ジメチルホスホラノ)−2−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,1’−ビス(2,4−ジエチルホスフォタノ)フェロセン等が挙げられる。
【0076】
それら以外にも、本発明で用いることのできる光学活性ビスホスフィン化合物の具体例としては、例えば、N,N−ジメチル−1−[1’,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1−シクロヘキシル−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス[(o−メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン、1,2−ビス(2,5−ジメチルホスホラノ)エタン、5,6−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2−ノルボルネン、N,N’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−N,N’−ビス(1−フェニルエチル)エチレンジアミン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン等が挙げられる。
【0077】
本発明で用いられる触媒は、触媒成分として上記で説明したようなロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒であり、例えば、下記一般式(6)で表される化合物である。
【0078】
[Rh(L)(Y)]X (6)
【0079】
(式(6)中、LはR1516P−Q−PR1718で表される光学活性ビスホスフィンを表し、Yは非共役ジエン化合物を表し、Xはカウンターアニオンを表す。また、mは1又は2の整数を表し、nは0又は1の整数を表す。但し、m=1のときn=0又はn=1であり、m=2のときn=0である。R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R15とR16とで及び/又はR17とR18とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。)
上記式中、Lで表されるR1516P−Q−PR1718なる光学活性ビスホスフィンについては、前述した通りである。
【0080】
続いて、本発明で用いられるロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒の例である一般式(6)で表される化合物について、さらに詳しく説明する。
【0081】
一般式(6)において、Yで表される非共役ジエン化合物としては、環状でも非環状でもよく、非共役ジエン化合物が環状非共役ジエン化合物である場合には、単環状、多環状、縮環状、架橋環状のいずれであってもよい。また、非共役ジエン化合物は、置換基で置換された非共役ジエン化合物、即ち置換非共役ジエン化合物でもよく、該置換基は、本発明の製造方法に悪影響を与えない置換基であれば特に限定されない。好ましい非共役ジエン化合物としては、例えば、1,5−シクロオクタジエン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,5−ヘキサジエン等が挙げられる。
【0082】
一般式(6)において、Xで表されるカウンターアニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、BF、ClO、CFSO(以下、OTfと略記する)、PF、SbF、B(3,5−(CF又はBPh等が挙げられる。
【0083】
本発明で用いられる、一般式(6)で表される化合物は、例えば、下記スキーム2に示すように、不活性ガス雰囲気下、公知の方法で得られるか、又は市販されているロジウム−オレフィン配位錯体に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中で、例えばMX(Mは一価の金属陽イオンを示し、Xは前記と同じ意味を表す。)でカウンターアニオンの交換反応を行った後、前記のLで表される光学活性ビスホスフィンを反応させることにより(これによりスキーム2中の(A)の化合物が得られる)、あるいは更に水素ガスを作用させてオレフィン性配位子を脱離させる(これによりスキーム2中の(C)の化合物が得られる)ことにより得ることができる。あるいはロジウム−オレフィン配位錯体に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、トルエン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中で前記のLで表される光学活性ビスホスフィンを2当量反応させたのち、MX(Mは一価の金属陽イオンを示し、Xは前記と同じ意味を表す。)でカウンターアニオンの交換反応を行う(これによりスキーム2中の(B)の化合物が得られる)ことにより得ることができる。なお、化学式中のCODは、1,5−シクロオクタジエンを表す(以下同様)。
【0084】
【化9】

【0085】
本発明で用いられる、一般式(6)で表される化合物は、また、下記スキーム3に示すように、予めカウンターアニオンの交換反応を行ったロジウム−ビスオレフィン錯体にLで表される光学活性ビスホスフィンを反応させることにより、あるいは更に水素ガスでオレフィン性配位子を脱離させることによっても得ることができる。
【0086】
【化10】

【0087】
スキーム2及びスキーム3に示されるようなロジウム−オレフィン配位錯体の中心金属モル数に対しての、Lで表される光学活性ビスホスフィンの添加量は、ビスホスフィンの一部が酸化を受ける場合があるので、1.0〜2.4倍モルが好ましく、1.05〜2.2倍モルがより好ましい。
【0088】
本発明において、一般式(6)で表される化合物を触媒として調製する際に用いられるロジウム−オレフィン配位錯体としては、オレフィン配位子の選択によって種々の錯体を取り扱うことが可能であるが、入手の容易性より、1,5−シクロオクタジエンのロジウム錯体である[Rh(COD)Cl]や、ノルボルナジエンのロジウム錯体である[Rh(NBD)Cl]が特に好ましい。なお、化学式中のNBDは、2,5−ノルボルナジエンを表す(以下同様)。
【0089】
また、カウンターアニオン交換反応においては、MXとして例えば銀塩(AgX)を用いて行うことが、取り扱いの面で好ましい。
【0090】
なお、一般式(6)で表される化合物における触媒活性種は[Rh(L)]Xであるが、その前駆体である化合物、例えば前記スキームに記載の(A)の化合物[Rh(L)(COD)]Xも本発明の製造法において用いることができる。
【0091】
例えば前記スキームに記載の(A)、(B)及び(C)の化合物等の一般式(6)で表される化合物は、触媒として調製後は、特に精製することなく本発明の製造法に用いることができる。さらにいえば、本発明の製造方法においては、ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を調製後即時使用することができ、具体的には、ロジウム化合物と光学活性ビスホスフィンとを反応させて該触媒を調製し、続いて反応基質を加えればよい。
【0092】
本発明の製造方法において用いられる反応溶媒としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限は無いが、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、例えばtert−ブタノール等の非求核性のアルコール類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチル
エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類及び例えばジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら反応溶媒は、夫々単独で用いてもよく、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0093】
本発明の製造方法において、ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒の、ロジウム金属換算での使用量としては、一方の反応基質に対し、通常1〜5mol%程度で充分である。
【0094】
本発明の製造方法における、[2+2+2]付加環化反応の反応温度としては、使用する基質により自ずから異なるが、通常−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃の範囲である。また、反応時間としては、使用する基質により自ずから異なるが、通常30分〜30時間、好ましくは1時間〜20時間である。なお、反応は、窒素又はアルゴン等の不活性ガス中で行うことが好ましい。一般式(1)、(4)、(5)及び(8)で表わされるリン化合物において、a1及びa2が0である化合物は、対応するa1及びa2が1である化合物を常法(例えば還元反応等の方法)に付することによって容易に製造できる。
【0095】
該反応終了後は、濾過やシリカゲルカラムクロマトグラフィー等、この種分野で通常行われる後処理操作を行い、結晶化、蒸留、各種クロマトグラフィー等の精製法を単独又は適宜組み合わせることにより目的の光学活性リン化合物を得ることができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、光学純度は光学活性カラム(SUMICHIRAL OA-3100)を用いてHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて測定した。
【0097】
(実施例1)光学活性ビアリールジホスホネートの製造
【0098】
【化11】

【0099】
(スキーム中のMeはメチル基、Etはエチル基であることをそれぞれ表す。)
上記反応式に従い、光学活性ビアリールホスフィンオキシドを製造した。なお、本実施例の一方の基質として用いた5−オキサ−2,7−ノナジインは、K. Tanaka et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 3951-3954の記載に準じて合成した。また、もう一方の基質であるビスホスホノブタジイン類は、V. Tomberli et al., Phosphorus, Sulfur and Silicon 2000, 160, 251-269の記載に準じて合成した。
アルゴン雰囲気下、シュレンク管に(R)−segphos(6.2mg、0.010mmol)、[Rh(COD)]BF(4.1mg、0.010mmol)及び塩化メチレン1.0mLを加え、5分間撹拌後、シュレンク管中に水素ガスを導入して1時間撹拌した。続いて、反応液を減圧濃縮して乾固し、得られた濃縮乾固物に塩化メチレン0.4mLを加え、これに上記反応式に示したビスホスホノブタジイン化合物(64.4mg、0.200mmol)の塩化メチレン0.4mL溶液を加え、続いてノナジイン化合物(73.3mg、0.600mmol)の塩化メチレン1.2mL溶液を15分で滴下し、滴下後、室温で1時間撹拌した。得られた反応溶液を濃縮し、薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル/トリエチルアミン=20/1)で精製することにより65%の収率で73.5mgの目的物を無色固体として得た。得られた目的物の光学純度を測定したところ99%ee以上であり、(S)−(−)体であった。
【0100】
[α]25D −15.4° (c 3.29, CHCl3, >99% ee); IR (neat): 2979, 2928, 1401, 1255, 1052, 959 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 5.17 (s, 4H), 5.13 (s, 4H), 4.10-3.85 (m, 6H), 3.85-3.66 (m, 2H), 2.44 (s, 6H), 1.63 (s, 6H), 1.21 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 1.15 (t, J = 6.9 Hz); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz): δ 145.82, 145.77, 145.7, 145.6, 141.8, 141.7, 138.0, 137.8, 132.7, 132.6, 127.1, 127.0, 126.8, 124.6, 74.50, 74.46, 74.4, 61.03, 60.96, 60.8, 18.83, 18.79, 16.67, 16.66, 16.3, 16.22, 16.20, 16.1; 31P NMR (CDCl3, 121 MHz): δ19.2; SUMICHIRAL OA-3100, hexane/EtOH = 80:20, 1.0 mL/min, retention times: 11.3 min (major isomer) and 12.7 min (minor isomer).
また、(R)−segphosの構造式を下記に示す。
【0101】
【化12】

(式中、Phはフェニル基を表す。)
【0102】
(実施例2〜3)
実施例1の方法に準じて行った結果を以下の表1に示す。また、(R)−BINAPの構造式を下記に示す。
【0103】
【化13】

(式中、Phはフェニル基を表す。)
【0104】
【表1】

実施例3はノナジイン化合物の量が2.1等量。
【0105】
(実施例4)光学活性ビアリールジホスフィンの製造
【化14】

(スキーム中のMe、Etは上記と同一意味を表す。)
窒素雰囲気下、シュレンク管に水素化リチウムアルミニウム(200mg、4.8mmol)、テトラヒドロフラン3.0mLを加え、−78℃に冷却した。これにトリメチルシリルクロリド(610μL)を加え、徐々に室温まで昇温して1時間攪拌した。その後−78℃に再冷却し、3.0mLのテトラヒドロフランに溶解させた基質のジホスホネート(453mg、0.8mmol)をゆっくり滴下した。室温下で24時間攪拌した後、トルエン2.0mL、蒸留水0.2mL、15%NaOH水溶液 0.2mL及び蒸留水0.2mLを順番に加えて1時間攪拌した。不溶物をセライトろ過にて除去し、ジクロロメタンにて洗浄した。得られた濾液を濃縮乾固して白色固体を得た(270mg、収率94%)。
(S)-(4,4',7,7'-tetramethyl-1,1',3,3'-tetrahydro-5,5'-biisobenzofuran-6,6'-diyl)diphosphine;
1H NMR (CD2Cl2, 300 MHz): δ 5.16 (brs, 4H), 5.12 (brs, 4H), 3.72-3.70 (m, 2H), 3.02-3.00 (m, 2H), 2.28 (s, 6H), 1.74 (s, 6H)
31P NMR (CD2Cl2, 121 MHz): δ -150.8
【0106】
(実施例5)光学活性ビアリールジホスフィンクロリドの製造
【化15】

(スキーム中のMeは上記と同一意味を表す。)
窒素雰囲気下、200mL枝付フラスコに上記スキームに示した基質のジホスフィン(2.2g、6.1mmol)とトリホスゲン(3.8g、12.8mmol)、ジクロロメタン40mLを加えた。この溶液を−78℃に冷却した後、トリエチルアミン(0.3mL、2.2mmol)をゆっくり滴下した。室温下で24時間攪拌した後、溶液を−78℃に再冷却し、トリホスゲン(3.8g、12.8mmol)とトリエチルアミン(0.5mL、3.6mmol)をそれぞれ加えて、室温下で更に24時間攪拌した。得られた反応溶液を高真空下で濃縮し、目的物を二当量のトリエチルアミン塩酸塩の混合物として得た(4.7g、収率定量的)。
(S)-(4,4',7,7'-tetramethyl-1,1',3,3'-tetrahydro-5,5'-biisobenzofuran-6,6'-diyl)bis(dichlorophosphine);
1H NMR (CD2Cl2, 300 MHz): δ 5.19 (brs, 4H), 5.15 (brs, 4H), 2.70 (s, 6H), 1.73 (s, 6H)
31P NMR (CD2Cl2, 121 MHz): δ 160.0
【0107】
(実施例6)光学活性ビアリールジフェニルホスフィンの製造
【化16】

(スキーム中のMeは上記と同一意味を表し、Phはフェニル基を表す。)
窒素雰囲気下、200mL枝付フラスコに、上記スキームに示した基質のジクロロホスフィン・(2トリエチルアミン塩酸塩)(3.4g、4.4mmol)とテトラヒドロフラン40mLを加えて0℃に冷却した後、臭化フェニルマグネシウム(2mol/L THF溶液)44mLをゆっくり滴下した。室温下で24時間攪拌した後、反応溶液を濃縮してシリカゲルカラム(クロロホルム/メタノール=100/1〜30/1)にて精製して目的物を得た(270mg、収率10%)。
(S)-(4,4',7,7'-tetramethyl-1,1',3,3'-tetrahydro-5,5'-biisobenzofuran-6,6'-diyl)bis(diphenylphosphine);
1H NMR (CD2Cl2, 300 MHz): δ 7.40-7.00(m, 20H), δ 5.09-4.95 (m, 8H), 1.62 (s, 6H), 1.49 (s, 6H)
31P NMR (CD2Cl2, 121 MHz): δ -15.5
【0108】
(実施例7)光学活性ビアリールジホスフィンオキシドの製造
【化17】

(スキーム中のMe、Phは上記と同一意味を表す。)
上記スキームに示した基質のジホスフィン(100mg、0.15mmol)をクロロホルム1.0mLに溶解し、過酸化水素水1.0mLを加えた。室温下で1時間攪拌した後に分液し、有機層を濃縮して淡黄色の目的物を得た(100mg、収率96%)。
(S)-(4,4',7,7'-tetramethyl-1,1',3,3'-tetrahydro-5,5'-biisobenzofuran-6,6'-diyl)bis(diphenylphosphineoxide);
HPLC分析を行ったところ、光学純度は99%ee以上であった。
1H NMR (CD2Cl2, 300 MHz): δ 7.35-7.61(m, 20H), δ 5.14-4.98 (m, 8H), 2.24 (s, 6H), 2.08 (s, 6H)
31P NMR (CD2Cl2, 121 MHz): δ 29.7
光学純度分析条件
SUMICHIRAL OA-3100 X 2, 30℃, 254 nm, 1 mL/min, Hexane/EtOH=70/30
(R)-form 46.7 min, (S)-form 49.1 min
【0109】
(実施例8)不斉水素化反応への適用
以下のスキームによりエナミドの不斉水素化反応を行った。その結果を下記表2に示す。転化率及び光学純度はGC又はHPLCにて測定を行った。
【化18】

(スキーム中のMe、Phは上記と同一意味を表し、Acはアセチル基を表し、Rは下記表2に記載の原子又は基を表し、Xは下記表2に記載のカウンターアニオンを表し、r.t.は室温を表す。)
【0110】
【表2】

【0111】
(触媒のロジウム錯体の調製)
窒素雰囲気下、20mLシュレンク管に、上記の実施例6で得られた配位子(16.6mg、0.025mmol)、[Rh(COD)]BF(10.2mg、0.025mmol)及びジクロロメタン0.7mLを加え、室温にて1時間攪拌した。得られた反応液を乾固し、31P−NMRにて単一の目的物が生成していることを確認した。
31P NMR (CD2Cl2, 121 MHz): δ 19.0 (J = 143 Hz)
カウンターアニオンがBF以外の錯体も同様に調製した。
【0112】
(エナミドの不斉水素化)
窒素雰囲気下のオートクレーブに、上記手法にて調製したロジウム錯体(0.01mmol)、溶媒2.0mL及び基質(1mmol)を加え、水素ガスでオートクレーブ内を置換した後、室温で17時間攪拌し、水素化を行った。得られた生成物はHPLC(R=Ph)又はGC(R=H)にて転化率と光学純度の測定を行った。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の方法によって、不斉反応の金属触媒の配位子として有用な軸不斉リン化合物を簡便に製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、三重結合を有する化合物を付加環化反応させる一般式(1)で表される軸不斉リン化合物の製造方法。
【化1】

(式(1)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。RからR10は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。RからR10は、これらの中から選ばれる任意の2つで環を形成してもよい。*は軸不斉であることを表す。)
【請求項2】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を用いて、一般式(2)で表されるジイン化合物と一般式(3)で表される化合物とを、分子間で付加環化反応させる一般式(4)又は一般式(5)で表される光学活性化合物の製造方法。
【化2】

(式(2)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。式(3)中、Zは二価基を表し、R11及びR12は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は下記式で表されるR13を表す。)
【化3】

(式R13中、Zは二価基を表し、R14は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
【化4】

(式(4)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。R11は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R12は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Zは二価基を表し、a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。*は軸不斉であることを表す。
式(5)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。R14は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Z及びZは二価基を表し、a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。*は軸不斉であることを表す。)
【請求項3】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒が下記一般式(6)で表される化合物である請求項1又は2に記載の製造方法。
[Rh(L)(Y)]X (6)
(式(6)中、Lは下記式(7)で表される光学活性ビスホスフィンを表し、Yは非共役ジエン化合物を表し、Xはカウンターアニオンを表す。また、mは1又は2の整数を表し、nは0又は1の整数を表す。但し、m=1のときn=0又はn=1であり、m=2のときn=0である。)
1516P−Q−PR1718 (7)
(式(7)中、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R15とR16とで及び/又はR17とR18とで環を形成してもよい。Qは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又はフェロセンジイル基を表す。)
【請求項4】
ロジウム金属と光学活性ビスホスフィンとを含む触媒を調製する際に、水素ガスを用いて非共役ジエン配位子を脱離させることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(8)で表される光学活性化合物。
【化5】

(式(8)中、Jは酸素原子、硫黄原子又はBHを表し、R及びRは同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。R19は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R20は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表すか、又は2個のR20同士でヘテロ原子を含んでいてもよく置換基を有していてもよい二価基を形成してもよい。Zは二価基を表す。a1及びa2はそれぞれ0又は1を表す。*は軸不斉であることを表す。)

【公開番号】特開2009−235067(P2009−235067A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49209(P2009−49209)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】