説明

軸保持装置及びこれを搭載した給紙装置

【課題】 軸の周辺に広い領域を必要とせず、低コスト化が図られた簡便な機構により、短時間で簡単に回転体間のニップ圧を調整することが可能な軸保持装置を得る。
【解決手段】 軸保持装置10の加圧部材11は、分離コロ4の軸部4aの軸線と直角をなす支軸11aを中心として回転可能に支持される。加圧部材11の自由端部分と、給紙装置1のフレーム7に設けられた本体側連結部材13との間には、ばね12が連結される。これにより、加圧部材11に支軸11aを中心とするモーメントMが発生し、加圧部材11の押圧部11eにより軸部4aの側面が押圧され、ニップ圧が生じる。加圧部材11の移動間隔である支軸係合部14の間隔S1は、本体側連結部材13の移動間隔である位置決め用孔13bの間隔S2の2倍(整数倍)である。したがって、分離コロ4と給紙ローラ3とのニップ圧を調整したり、その調整具合を把握したりするのが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の給紙装置や用紙搬送路等において用いられるローラやコロに対して適用可能な軸保持装置に関する。また、この軸保持装置を搭載した給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタに代表される画像形成装置には、原稿送り部や給紙部、作像部、転写部、定着部等といった構成要素が備えられている。そして、原稿送り部や給紙部、及びその他の構成要素間には、原稿や印刷前の用紙を搬送するためにローラやコロといった軸まわりに回転する回転体が設けられている。これらの回転体は、2個の回転体を互いに圧接することにより形成されるニップに用紙を挿通させて搬送するものであり、画像形成装置内の様々な場所に設けられている。
【0003】
ローラやコロのような回転体を用いて用紙を搬送するには、好適なニップ圧を作用させて2個の回転体を互いに圧接させる必要がある。このため、回転体を、ばね等の弾性部材を用いて圧接させる手法が提案され、その一例を特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載の給紙装置では、従動コロが、給紙ローラとのニップに向かって、その軸の軸線と直角をなす方向に伸縮するばねにより付勢され、給紙ローラに圧接せしめられている。このように、ニップに対して軸対象となる位置に設けられたばねにより、軸の軸線と直角をなす方向からばねで付勢するという手法が、2個の回転体を互いに圧接させる手法として一般的に広く用いられている。
【0004】
ここで、製品の組み立て時において標準的な使用を想定して2個の回転体のニップ圧を設定していた場合であっても、使用期間が長くなるとともに回転体表面に磨耗等の経時変化が生じて、ニップ圧を再調整しなければならないといったことが起こり得る。また、ユーザーによっては、特殊な温度、湿度環境で使用したり、用紙の材質や厚さ、大きさが予め想定された上記標準的な使用条件とは異なったりすることがあるので、各々の条件に合わせた好適なニップ圧を任意に設定できることが望ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の給紙装置では、2個の回転体のニップ圧を、使用条件に対応して任意に調整することができない。そこで、モータを用いることによってニップ圧の調整を可能にした手法の一例を、特許文献2に見ることができる。
【特許文献1】特開2003−335426号公報(第3頁、図1−2)
【特許文献2】特開平5−32356号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の給紙装置は、重なり合って搬送されつつある用紙を分離するための分離ローラに対して、モータを用いることによってフィードローラ(給紙ローラ)とのニップ圧を自動的に調整可能にするものである。しかしながら、ニップ圧の調整のためにモータを用いると、軸保持装置のコストが増加する。また、モータを配置するためのスペースも確保する必要があり、装置の大型化を招く。そして、ニップ圧を調整したり、その調整具合を把握したりするためには、モータをどのように動作させたかを確認する必要があるので、非常に不便である。さらに、短時間で簡単にニップ圧の調整を行うために、モータの動作状況を確認するための機能部材や装置が新たに必要となり、軸保持装置がさらに複雑に、且つ高価になる可能性がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、軸の周辺に広い領域を必要とすることなく設置することができる、低コスト化が図られた簡便な機構により、短時間で簡単に回転体間のニップ圧を調整することが可能な軸保持装置を提供することを目的とする。また、このような軸保持装置を搭載した高性能な給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、機器本体内に配置される軸に対し、その軸線と直角な方向の付勢力を与える軸保持装置において、一端が前記軸の軸線と直角をなす支軸によって回転可能に支持されるとともに、他端に弾性部材連結部、両端間には軸側面を押圧する押圧部が設けられた加圧部材と、この加圧部材側の連結部に一端を連結し、前記本体側の連結部材に他端を連結して、加圧部材に、前記支軸を中心とするモーメントを発生させ、前記押圧部により軸側面を押圧させる弾性部材とを備えるとともに、前記加圧部材と前記本体側連結部材とが、互いに前記軸の軸線方向に、所定間隔毎に移動可能であって、一方の移動間隔が他方の移動間隔の整数倍であることとした。
【0009】
また本発明では、上記軸保持装置を給紙装置に搭載することとした。
【0010】
また、上記給紙装置において、前記軸保持装置が、重なり合った用紙を分離する分離コロを保持するために用いられることとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成によれば、軸線と直角な方向の付勢力を与える軸保持装置において、一端が前記軸の軸線と直角をなす支軸によって回転可能に支持されるとともに、他端に弾性部材連結部、両端間には軸側面を押圧する押圧部が設けられた加圧部材と、この加圧部材側の連結部に一端を連結し、本体側の連結部材に他端を連結して、加圧部材に、支軸を中心とするモーメントを発生させ、前記押圧部により軸側面を押圧させる弾性部材とを備えるとともに、加圧部材と本体側連結部材とが、互いに前記軸の軸線方向に、所定間隔毎に移動可能であることとしたので、簡単に弾性部材による付勢力を変化させることができる。さらに、一方の移動間隔が他方の移動間隔の整数倍であることとしたので、回転体間のニップ圧を調整したり、その調整具合を把握したりするのが容易である。したがって、モータを用いることなく、コンパクト化、低コスト化が図られた簡便な機構により、短時間で簡単に回転体間のニップ圧を調整することが可能である。
【0012】
また本発明では、上記軸保持装置を給紙装置に搭載することとしたので、給紙ローラ等のローラやコロの周辺に広い領域を必要とすることがない、低コスト化が図られた簡便な機構により、短時間で簡単にローラ間のニップ圧を調整することが可能な高性能な給紙装置を得ることができる。
【0013】
また、上記給紙装置において、軸保持装置が、重なり合った用紙を分離する分離コロを保持するために用いられることとしたので、分離コロに対して好適なニップ圧を保持させるための調整が容易になる。これにより、分離コロが磨耗してコロの径が小さくなったり、分離コロを付勢する弾性部材が劣化したり、また特殊な環境で装置を使用したりしても、各々の条件に合わせた好適なニップ圧を簡単な調整によって任意に設定できる。したがって、用紙の重送等の不具合の発生を確実に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図1〜図8に基づき説明する。ここでは、機器の一例として、画像形成装置に配置される給紙装置をとり上げる。この給紙装置において、重なり合って搬送されつつある用紙を分離するための分離コロに対して本発明の軸保持装置が用いられているものとする。
【0015】
最初に、本発明の軸保持装置を備えた給紙装置について、図1、及び図2を用いてその構造の概略を説明する。図1は軸保持装置を備えた給紙装置とその周辺を示す模型的垂直断面図、図2は分離コロ周辺を下方から見た斜視図である。給紙装置1は、図示しない画像形成装置の給紙部100の用紙供給方向下流部上方、すなわち図1において右側上方に備えられている。
【0016】
図1に示すように、給紙部100には、用紙トレイ101が備えられている。用紙トレイ101は、上面が開口した平たい箱で構成され、その上面方向から印刷前のカットペーパー等の用紙Pを積載して収容する。
【0017】
用紙トレイ101の内底面には、リフト板102が配置されている。用紙Pは、このリフト板102上に積み上げられている。リフト板102は、その用紙供給方向上流端、すなわち図1において左方の端部が用紙トレイ101の内底面に支持され、この支軸102aを中心とし、下流端を自由端として回転可能である。リフト板102の下流部下方には、用紙トレイ101の内底面との間に、ばね103が備えられている。このばね103は、リフト板102の用紙供給方向下流部を上方に付勢し、変位させる付勢手段である。リフト板102は、ばね103の作用によりその下流部が上方に持ち上げられて、図1に示す用紙供給位置に変位する。リフト板102上の用紙Pは、用紙トレイ101の下流部上方に設けられた給紙装置1により、一枚ずつ分離されて、給紙部100の外部へ、すなわち図1に示す矢印Aの方向に送り出される。
【0018】
図1に示すように、用紙トレイ101の下流部上方には、給紙部100の外部へと用紙Pを送り出す給紙装置1が配置されている。給紙装置1には、ピックアップローラ2、給紙ローラ3、及び分離コロ4が備えられている。
【0019】
ピックアップローラ2は、リフト板102の下流部上方に備えられている。ピックアップローラ2には、その下方から、用紙トレイ101に積載された用紙束の下流部がリフト板102により持ち上げられ、用紙束の最上層が圧接する。用紙Pは、ピックアップローラ2により給紙ローラ3へと引き渡され、給紙ローラ3により給紙部100の外部へと送り出される。
【0020】
給紙ローラ3は、ピックアップローラ2の下流側において、その表面の下部が用紙搬送路5に突出するように配置されている。給紙ローラ3は、図示しないモータに連結されている。しかしながら、ピックアップローラ2はモータに連結されていない。給紙ローラ3とピックアップローラ2との間には、ピックアップローラ2の駆動機構(図示せず)が配置され、この駆動機構を介して給紙ローラ3とピックアップローラ2とが連結されている。このピックアップローラ2の駆動機構により、給紙ローラ3がモータによって回転せしめられると、ピックアップローラ2も給紙ローラ3と同じ方向に回転せしめられる。
【0021】
分離コロ4は、図1に示すように、給紙ローラ3の下方に備えられ、図示しない付勢手段の作用により給紙ローラ3に圧接している。この分離コロ4と給紙ローラ3とが圧接して形成されるニップに用紙Pが挿通される。分離コロ4には、モータが連結されていない。分離コロ4は、給紙ローラ3に圧接していることにより、給紙ローラ3の回転に従って回転せしめられる。
【0022】
図2に示すように、分離コロ4には、その軸部4aにトルクリミッタ6が設けられている。分離コロ4と給紙ローラ3とが圧接して形成されるニップに用紙Pが存在しない時や用紙Pが1枚だけ進入した時には、分離コロ4にはトルクリミッタ6の設定トルク以上のトルクが掛かり、分離コロ4は給紙ローラ3に従って用紙Pを送り出す方向に回転する。しかしながら、前記ニップに用紙Pが重なって複数枚進入した時には、分離コロ4に掛かるトルクはトルクリミッタ6の設定トルクを超えることがなく、分離コロ4は回転を停止する。これにより、重なった下側の用紙Pが送り出されることがないので、用紙Pが重なって送られてしまう重送という問題が起こるのを防止できる。
【0023】
このような分離コロ4は、図2に示すように、その回転軸の両端が、各々軸保持装置10によって保持されている。分離コロ4は、この軸保持装置10の作用により、給紙ローラ3との圧接における好適なニップ圧が確保されている。
【0024】
次に、本発明の実施形態に係る軸保持装置の詳細な構成について、図3〜図7を用いて説明する。図3は軸保持装置の外観を示す斜視図、図4は軸保持装置の加圧部材を示す斜視図、図5は軸保持装置のベース部のみを示す斜視図、図6は軸保持装置のベース部を示す斜視図にして、本体側連結部材を取り外した状態を示すもの、図7は軸保持装置の模型的垂直断面図である。
【0025】
図3に示すように、軸保持装置10には、回転体である分離コロ4(図2参照)を支持するとともにこれを押圧する加圧部材11、弾性部材であるばね12、及びばね12を連結する本体側連結部材13が備えられている。
【0026】
加圧部材11は、分離コロ4の軸部4aの端部にて分離コロ4を支持している。図4に示すように、加圧部材11は、その一端に支軸11aを備え、この支軸11aを中心とし、他端を自由端として回転可能に支持されている。加圧部材11の支軸11aの軸線は、分離コロ4の軸部4aの軸線に対して直角をなす。加圧部材11の自由端部分には、ばね12を連結する加圧部材側連結部11bが設けられ、ここにはばね12を引っ掛けるためのフック11cが設けられている。加圧部材11の支軸11aとフック11cとの間には軸挿入口11dが設けられ、この軸挿入口11dに分離コロ4の軸部4aを挿入することにより、分離コロ4が加圧部材11に支持される。軸挿入口11dの内側であって、支軸11aと対向する位置には、分離コロ4の軸部4aの側面を押圧する押圧部11eが設けられている。分離コロ4を給紙ローラ3に向かって付勢する場合には、支軸11aが支点、フック11cが力点、押圧部11eが作用点の役割を果たす。
【0027】
この加圧部材11は、図3に示すように、本体である給紙装置1のフレーム7に支持されている。図5に示すように、フレーム7には、支軸係合部14が設けられている。支軸係合部14は3箇所備えられ、これらは分離コロ4の軸部4aの軸線方向に沿って所定間隔S1(図7参照)で並べられている。加圧部材11は、3箇所ある支軸係合部14のいずれにも移動して取り付けが可能であり、これにより本体側連結部材13との距離を変更することができる。
【0028】
弾性部材であるばね12は、引張コイルばねで構成され、図3に示すように、加圧部材11と本体側連結部材13との間に、これらの部材に引っ掛けて備えられている。ばね12は、分離コロ4の軸部4aと平行な方向に伸縮して弾発力を作用させるものである。
【0029】
本体側連結部材13は、図3、及び図5に示すように、本体である給紙装置1のフレーム7に取り付けられている。本体側連結部材13は、図6に示すように、給紙装置1のフレーム7とは独立した部材になっており、分離コロ4の軸部4aの両端外側に1個ずつ設けられている。本体側連結部材13は、分離コロ4から最も離れた箇所にフック13aを、フレーム7との接触箇所に位置決め用孔13b及び固定用孔13cを備えている。
【0030】
フック13aは、一端が加圧部材11のフック11cに引っ掛けられたばね12の他端を引っ掛けるためのものである。これにより、ばね12が伸びて、ばね12に分離コロ4を押圧するための弾発力が生じる。位置決め用孔13bは5箇所備えられ、これらは分離コロ4の軸部4aの軸線方向に沿って所定間隔S2(図7参照)で並べられている。なお、前記加圧部材11が係合する支軸係合部14の間隔S1は、本体側連結部材13の位置決め用孔13bの間隔S2の整数倍である2倍となっている。したがって、加圧部材11の移動間隔は、本体側連結部材13の移動間隔の2倍となる。5箇所の位置決め用孔13bは、互いに接近して設けられているので、分離コロ4の軸部4aの軸線方向に沿って一つに繋がった形状をなしている。固定用孔13cは、分離コロ4の軸部4aの軸線方向に延びる長穴状となっている。
【0031】
フレーム7には、本体側連結部材13を取り付けるための位置決めピン15と固定用ピン16とが、分離コロ4の軸部4aの軸線方向に沿って並べて設けられている。本体側連結部材13は、位置決め用孔13bにフレーム7の位置決めピン15を挿入することにより、その位置が決定される。この時、固定用ピン16は、本体側連結部材13の固定用孔13cに挿入される。本体側連結部材13をフレーム7に取り付けた後、図7に示すように、固定用ピン16の先端にネジ17を取り付けることにより、本体側連結部材13は固定され、フレーム7から離れるようにして外れてしまうことはない。なお、図2、図3、及び図5においては、ネジ17の描画を省略している。
【0032】
続いて、軸保持装置の動作について、図3、図7、及び図8を用いて説明する。図8は、図7と同様の軸保持装置の模型的垂直断面図にして、本体側連結部材を図7とは別の位置に移動して取り付けた状態を示すものである。
【0033】
図3、及び図7において、分離コロ4は、その軸部4aが加圧部材11の軸挿入口11dに挿入されて支持されている。軸挿入口11d内では、押圧部11eが軸部4aの側面に接触している。加圧部材11は、給紙装置1のフレーム7に設けられた支軸係合部14において、支軸11aを中心として回転可能に支持されている。そして、加圧部材11の加圧部材側連結部11bと、本体側連結部材13との間に、ばね12が連結されている。
【0034】
ばね12は、張力が与えられて各連結部に連結されるので、分離コロ4の軸部4aと平行な縮小方向に弾発力Kを作用させる(図7矢印K)。これにより、加圧部材11の加圧部材側連結部11bが設けられた自由端側が本体側連結部材13に近づく方向に引っ張られ、加圧部材11には支軸11aを中心とするモーメントMが発生する(図7矢印M)。その結果、分離コロ4の軸部4aは、加圧部材11に押圧され、その軸線と直角をなす方向に付勢力Fが与えられる(図7矢印F)。
【0035】
また、図8は、図7において、加圧部材11を支軸係合部14の1箇所分右方にずらし、本体側連結部材13を位置決め用孔13bの2箇所分右方にずらした状態を示している。ここで、前述のように、加圧部材11が係合する支軸係合部14の間隔S1は、本体側連結部材13の位置決め用孔13bの間隔S2の2倍となっている。したがって、図7の状態と図8の状態とは、加圧部材11や本体側連結部材13の位置が異なるものの、ばね12に生じる弾発力K、すなわち加圧部材11による分離コロ4の軸部4aへの付勢力Fは同じになっている。
【0036】
このようにして、軸線と直角な方向の付勢力を与える軸保持装置10において、一端が分離コロ4の軸部4aの軸線と直角をなす支軸11aによって回転可能に支持されるとともに、他端に弾性部材であるばね12の連結部11b、両端間には軸部4aの側面を押圧する押圧部11eが設けられた加圧部材11と、この加圧部材11側の連結部11bに一端を連結し、本体側連結部材13に他端を連結して、加圧部材11に、支軸11aを中心とするモーメントMを発生させ、前記押圧部11eにより軸部4aの側面を押圧させる弾性部材であるばね12とを備えるとともに、加圧部材11と本体側連結部材13とが、互いに分離コロ4の軸部4aの軸線方向に、所定間隔毎に移動可能であるので、簡単にばね12による付勢力Fを変化させることができる。さらに、加圧部材11の移動間隔である支軸係合部14の間隔S1が、本体側連結部材13の移動間隔である位置決め用孔13bの間隔S2の2倍(整数倍)であるので、分離コロ4と給紙ローラ3とのニップ圧を調整したり、その調整具合を把握したりするのが容易である。したがって、モータを用いることなく、コンパクト化、低コスト化が図られた簡便な機構により、短時間で簡単に回転体間のニップ圧を調整することが可能である。
【0037】
また本発明では、軸保持装置10を、画像形成装置内に配置される給紙装置1に搭載したので、分離コロ4の周辺に広い領域を必要とすることがない、低コスト化が図られた簡便な機構により、短時間で簡単に分離コロ4と給紙ローラ3とのニップ圧を調整することが可能な高性能な給紙装置1を得ることができる。
【0038】
また、上記給紙装置1において、軸保持装置10が、重なり合った用紙Pを分離する分離コロ4を保持するために用いられるので、分離コロ4に対して好適なニップ圧を保持させるための調整が容易になる。これにより、分離コロ4が磨耗してコロの径が小さくなったり、分離コロ4を付勢する弾性部材であるばね12が劣化したり、また特殊な環境で装置を使用したりしても、各々の条件に合わせた好適なニップ圧を簡単な調整によって任意に設定できる。したがって、用紙Pの重送等の不具合の発生を確実に防止することが可能となる。
【0039】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0040】
たとえば、本発明の実施形態では、加圧部材11が係合する支軸係合部14の間隔S1は、本体側連結部材13の位置決め用孔13bの間隔S2の2倍としているが、加圧部材11の移動間隔である間隔S1と、本体側連結部材13の移動間隔である間隔S2との関係はこれに限定されるものではなく、整数倍であれば3倍、5倍等、その他の間隔であっても構わない。また、支軸係合部14を3箇所、位置決め用孔13bを5箇所としているが、これらの数に限定されるわけではなく、移動箇所を増減させることができる。さらに、本体側連結部材13の移動間隔S2を、加圧部材11の移動間隔S1より広くしても構わない。
【0041】
そして、本発明の実施形態では、ばね12によって加圧部材11を引っ張ることで、加圧部材11に支軸11aを中心とするモーメントMを発生させているが、ばね12を圧縮コイルばね等にして、ばね12によって加圧部材11を押すことで、加圧部材11にモーメントを発生させてもよい。また、ばね12はコイルばねに限定されるものではなく、板ばねやゴム、スポンジ等の弾性部材であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、機器本体内に配置される軸に対し、その軸線と直角な方向の付勢力が必要な機器全般において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の軸保持装置を搭載した給紙装置とその周辺を示す模型的垂直断面図である。
【図2】図1の給紙装置の分離コロ周辺を下方から見た斜視図である。
【図3】図2の軸保持装置の外観を示す斜視図である。
【図4】図3の軸保持装置の加圧部材を示す斜視図である。
【図5】図3の軸保持装置のベース部のみを示す斜視図である。
【図6】図2の軸保持装置のベース部を示す斜視図にして、本体側連結部材を取り外した状態を示すものである。
【図7】図3の軸保持装置の模型的垂直断面図である。
【図8】図7と同様の軸保持装置の模型的垂直断面図にして、本体側連結部材を図7とは別の位置に移動して取り付けた状態を示すものである。
【符号の説明】
【0044】
1 給紙装置
3 給紙ローラ
4 分離コロ
4a 軸部
7 フレーム
10 軸保持装置
11 加圧部材
11a 支軸
11b 加圧部材側連結部
11c フック
11d 軸挿入口
11e 押圧部
12 ばね(弾性部材)
13 本体側連結部材
13a フック
13b 位置決め用孔
13c 固定用孔
14 支軸係合部
15 位置決めピン
16 固定用ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体内に配置される軸に対し、その軸線と直角な方向の付勢力を与える軸保持装置において、
一端が前記軸の軸線と直角をなす支軸によって回転可能に支持されるとともに、他端に弾性部材連結部、両端間には軸側面を押圧する押圧部が設けられた加圧部材と、
この加圧部材側の連結部に一端を連結し、前記本体側の連結部材に他端を連結して、加圧部材に、前記支軸を中心とするモーメントを発生させ、前記押圧部により軸側面を押圧させる弾性部材とを備えるとともに、
前記加圧部材と前記本体側連結部材とが、互いに前記軸の軸線方向に、所定間隔毎に移動可能であって、一方の移動間隔が他方の移動間隔の整数倍であることを特徴とする軸保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軸保持装置を搭載したことを特徴とする給紙装置。
【請求項3】
前記軸保持装置が、重なり合った用紙を分離する分離コロを保持するために用いられることを特徴とする請求項2に記載の給紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−315841(P2006−315841A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142117(P2005−142117)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】