説明

軸出力を制御するための多速度比装置

【課題】発進加速性能、シフト特性、巡航性能、追い越し性能、登下坂性能を含む所望の全車両性能が得られる多速度比装置を提供する。
【解決手段】多速度比装置であって、この多速度比装置は、駆動部材(たとえば、エンジン、モータまたはトランスミッション)および被駆動部材(たとえば、軸、差動装置または車軸)に連結するものであり、この装置は少なくとも1つの回転速度変換機を有し、この回転速度変換機は共役対のカム部分30,33およびこれら共役対のカム部分30,33間に相互連結したリアクションディスク32を有するもので、このリアクションディスク32は共役対のカム部分30,33を作動可能に連結でき、さらに、固定部材を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
モータまたはエンジンの出力を原動力として必要とする車両の出力トルクおよび速度へ変換することは、通常或る種の歯車配置および/またはベルト駆動配置を含むトランスミッションで行う。さらに、これらの構成要素は複数の固定速度比で速度およびトルクを変化させるように配置してあり、したがって、トランスミッションは前進駆動方向で得ることのできる固定速度比の数で区別される。平均的な自動車用トランスミッションは4つの速度を有するが5速、6速および7速の自動車用トランスミッションもあるし、トラック用トランスミッションでは32速以上の場合もある。特殊車両、すなわち、オフロード車両・機器、農業車両・機器および船舶には他のトランスミッション形態が適用できる。1つの速度比から別の速度比へ変化させる機能は、完全マニュアル、自動化マニュアル、セミオートマティックまたはオートマチックのいずれかとすることができる。速度比は車両の所望の加速および速度に合わせて適切なトルクおよび速度を提供するように設計される。その結果、自動車の第1速度比は、停止状態から発進するときに必要とされる場合に低車両速度に高いトルクを与えることになる。高トルクは停止状態から車両を加速するのに必要である。車両の速度が増すにつれて、駆動輪によって高い速度を与えてより高い車速まで加速を続けるために第2の速度比が必要である。移動質量を持続させるためにはトルク要求がかなり少なくてよいので、車速が増すにつれて必要なトルク量は減少する。第3、第4などの速度比がこのプロセスを継続させて所望の車速を達成する。同じことがトラックにも当てはまるが、トラックの場合には、かなり大きな車両質量および積載重量の故により多くの速度比を必要とする。特殊速度比、増分速度比間段数、速度比範囲(最低歯車比/最高歯車比)、1つの速度比から別の速度比へのシフト特性、トランスミッションの効率およびコストが、すべて、在来のトランスミッション技術を進展させるときに考慮すべきファクタである。
【0002】
トラック用トランスミッションにおける1つの速度比から別の速度比までの変化移行は、多数の必要な速度比があるために操作者が操作に集中しなければならない。積載重量を含む車両の全質量により、操作者は、速度比を変える毎に、特に停止状態から或る程度の中間車速まで非常に活動的でなければならない。しばしば、停止からほんの10マイル/時(mph)の車速までいくつかの速度比変更が必要である。急斜面(登り、下りを問わず)の場合のモータまたはエンジンについての要求では、トラックの場合、厳しい条件に合わせるために多数の速度比を有するトランスミッションが必要となる。利用できて速度比の数が多くなれば多くなるほど利用できるより多くの速度比選択オプションを操作者が利用して路面条件、積載条件に車両速度および所望の加速を合わせなければならない。残念なことには、トランスミッションにおける速度比が多くなればなるだけトランスミッションが複雑になり、大型となって重くなり、費用も大きくなる。
【0003】
トランスミッション技術を進展させて、エンジンの大気中への排出物質量を減らすと共に車両全体の燃料効率を改善し、トランスミッションを製造、維持する実コストを減らし、限定するつもりはないが発進加速性能、シフト特性、巡航性能、追い越し性能、登下坂性能を含む所望の全車両性能を得ることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、現存する在来型のトランスミッションに作動可能に連結したモジュールとしてまたは在来型のトランスミッションの代わりのスタンドアロン・トランスミッションとして使用できる多速度比装置である。本発明は、駆動部材(たとえばエンジンまたはモータまたはトランスミッション)および被駆動部材(たとえば軸、差動装置または車軸)に作動可能に連結される。さらに、本発明のコンパクト性により、もしあるとして在来の回転装置の一次ハウジングのサイズをそれほど大きくすることなく現存する在来の回転装置(たとえば差動装置)と本発明を一体化できる。本発明は、比較的少ない増分速度比間段数でより大きな速度比範囲と関わり合う多速度比を提供することによって上記の主目的を果す。本発明は、所望の車両性能、たとえば、限定するつもりはないが、発進加速性能、シフト特性、巡航性能、追い越し性能、登下坂性能の諸性能を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成要素、すなわち、必ずしも限定するつもりはないが、共役対のカム部分を有する少なくとも1つの単段回転速度変換機と共役対のカム部間にあるリアクションディスクとを収容しているハウジングを含むことができる。共役対のカム部分は、軸を有する内側カムと外側カムとを含む。リアクションディスクは、軸と、スロットと、スロット内に選択的に配置した接触部材とを含む。接触部材は、ローラ、軸受および/またはローラ装置を含んでいてもよい。本発明の別の実施形態は、より小さい量またはより大きい量の構成要素を含んでいてもよく、リアクションディスクは、同じ機能を果たすのにスロット以外の他の接触部材保持機構を含んでいてもよい。リアクションディスクは共役対のカム部分を作動可能につなぐことができる。さらに、本発明は、たとえば外側カムに作動可能に連結していて、たとえば外側カムをたとえばハウジングに対して選択的に固定し、それによって、速度比を選ぶことができる固定(grounding)部材を含む。しかしながら、回転速度変換機の回転可能な構成要素のうちの任意の構成要素を同じ所望の多速度比結果を得るように固定させてもよい。同様に、固定(grounding)要素が、回転可能構成要素固定動作の際にハウジングの同じ機能を果す任意の固定構造であってもよい。
【0006】
内側カムおよびスロット付きリアクションディスクの軸は、特定の構成に依存して本発明の速度/トルク入力部または出力部のいずれかとして作用する。一実施形態において、内側カムは駆動部材に作動可能に連結した本発明への入力部分として作用し、そして、スロット付きリアクションディスクは被駆動部材に作動可能に連結した本発明への出力部分として作用する。別の実施形態においては、スロット付きリアクションディスクは駆動部材に作動可能に連結した本発明への入力部分として作用する。そして、内側カムは被駆動部材に作動可能に連結した本発明への出力部分として作用する。本発明のさらに別の実施形態は本発明の入力部または出力部のいずれかとして外側カムを含む。さらに、回転変換機の構成要素は入れ子形態などに構成してあってもよい。
【0007】
単段回転変換機は、たとえば、多段実施形態を形成するように直列に整列していてもよい。少なくとも2つの内側カムを有する多段実施形態においては、内側カムは本発明の入力部、出力部の両方として作用できる。同様に、少なくとも2つのリアクションディスクを有する多段構成では、一方のリアクションディスクが入力部分として作用し、他方のリアクションディスクが本発明の出力部分として作用してもよい。
【0008】
本発明によって実現できる速度比の数は、共役対のカム部分、カム・ローブおよび接触部材の数の関数である。1より大きい速度比は減速比であり、1未満の速度比は増速比である。トランスミッションとして構成された本発明には後進速度がある。
【0009】
本発明をその他の目的およびさらなる目的と共により良く理解して貰うために、添付図面および詳細な説明を参照するが、その範囲は添付の特許請求の範囲で指摘されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】後輪駆動列ついての従来技術の概略図である。
【図1B】前輪駆動列についての従来技術の概略図である。
【図1C】総輪駆動列についての従来技術の概略図である。
【図2A】在来の後輪駆動トランスミッションに作動可能に連結した本発明のモジュール実施形態の概略図である。
【図2B】在来の前輪駆動トランスミッションに作動可能に連結した本発明のモジュール実施形態の概略図である。
【図2C】在来の総輪駆動トランスミッションに作動可能に連結した本発明のモジュール実施形態の概略図である。
【図3A】後輪駆動トランスミッションとしての本発明の実施形態の概略図である。
【図3B】前輪駆動トランスミッションとしての本発明の実施形態の概略図である。
【図3C】総輪駆動トランスミッションとしての本発明の実施形態の概略図である。
【図4A】図2Aの典型的なモジュール実施形態の断面図である。
【図4B】図2Bの典型的なモジュール実施形態の概略断面図である。
【図4C】図2Cの典型的なモジュール実施形態の概略断面図である。
【図5A】図3Aの典型的なトランスミッション実施形態の概略断面図である。
【図5B】図3B、3Cの典型的なトランスミッション実施形態の概略断面図である。
【図6】本発明の単段速度変換機の斜視図である。
【図7】内側カムを入力部分として示し、リアクションディスクを出力部分として示す、図6の単段速度変換機の概略断面図である。
【図8】リアクションディスクを入力部分として示し、内側カムを出力部分として示す、図6の単段速度変換機の概略断面図である。
【図9】2つの単段速度変換機を有する本発明の実施形態の断面図である。
【図10】8つの単段速度変換機を有する本発明の別の実施形態の断面図である。
【図11】多段多カム速度変換機を有する本発明の別の実施形態の断面図である。
【図12】図11の別の実施形態の斜視断面図である。
【図13】本発明の多段速度変換機の別の変形例の断面図である。
【図14】本発明の多段速度変換機の別の変形例の断面図である。
【図15】本発明の多段速度変換機の別の変形例の断面図である。
【図16】本発明の入れ子式多段速度変換機の断面図である。
【図17A】本発明の固定部材および外側カムの典型的な実施形態の部分断面図である。
【図17B】図17Aの外側カムの傾斜カム軌道を示す本発明の外側カムの平面図である。
【図17C】図17Aの外側カムおよび固定(grounding)機構の概略断面図である。
【図18】在来の差動装置と一体化した多段速度変換機を有する本発明の典型的なトランスミッションの断面図である。
【図19】本発明のコンピュータ論理制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1A〜1Cに示すように、後輪駆動車両(図1A)用、前輪駆動車両(図1B)用および総輪駆動車両(図1C)用の在来のトランスミッション10は、エンジンまたはモータ(以下、駆動部材12と呼ぶ)を一連の作動可能に連結した軸16、差動装置18および駆動車軸19(以下、ひとまとめにして被駆動部材20と呼ぶ)を通して車輪14と作動可能に連結し、駆動部材回転軸速度出力に対する被駆動部材20の回転速度を制御する。さらに、前輪駆動列(図1B)および総輪駆動列(図1C)はトランスファ・ケース17を含む。さらに、前輪駆動列(図1B)および総輪駆動列(図1C)はトランスファ・ケース17を含む。図1A〜Cの参照符号に続く「F」、「R」なる記号は、駆動列の前部構成要素(「F」)および後部構成要素(「R」)を示している。
【0012】
本発明は、その種々の実施形態において、在来のトランスミッション10と被駆動部材20の間に配置し、それらに作動可能に連結したモジュール24(図2A、2B、2C)、または、駆動部材と被駆動部材20との間に配置したスタンドアロン・トランスミッシ
ョン26(図3A〜3C)のいずれかとして駆動部材12に作動可能に連結される。図4A〜4C(各駆動列用のモジュール実施形態)および図5A〜5B(総輪駆動列用のトランスミッション実施形態)は、上記の種々の実施形態の断面図であり、ハウジング30(図6)内の1つまたはそれ以上の単段速度変換機の配置を示している。単段速度変換機についての参照符号はすべての図において28であるが、図5A〜5Bでは、参照符号50、52、54、56、58を使用して単段速度変換機を前進段1〜4および後進用(以下に詳細に説明する)として区別している。図1A〜1C、2A〜2C、3A〜3Cの参照符号に続く「F」、「R」なる記号は、駆動列の前部構成要素(「F」)および後部構成要素(「R」)を示している。
【0013】
本発明は、モジュール24またはトランスミッション26のいずれかとしての速度変換動力伝達装置である。本発明は、すべてSynkinetics, Inc.に譲渡された
米国特許第6,383,110号、同第6,314,826号、同第6,186,922号、同第6,068,573号および同第6,039,672号(すべて参考資料としてここに援用する)に好ましくは記載されているタイプである1つまたはそれ以上の単段速度変換機28を含む。各単段速度変換機28は、減速機能、増速機能、1:1結合機能を提供する。この単段速度変換機28は、後進駆動可能なまたは後進駆動不能な速度変換装置として機能できる。後進駆動可能という用語は入力経路を逆転させることができることを意味しており、たとえば、かつての出力部分が現在入力部材となり、かつての入力部分が現在出力部材となることを意味している。さらに、この単段速度変換機28は、速度変換比および逆回転出力を提供することができ、後進速度比段として機能できる。
【0014】
ここで参考資料として援用した上記の米国特許に教示されているように、図6の各単段速度変換機28(入れ子構成としても考えることができる)の通常の運動要素は、図7に示すように、入力部材(たとえば、内側カム30)、固定可能な(groundable)部材(たとえば、外側カム33)および出力部材(たとえば、リアクションディスク32)を含む。入力部として作用する内側カム30は、接触部材31(たとえば、ローラまたはローラ装置または軸受)を外方へ変位させ、この接触部材が次いで外側カム33の側面36と相互作用する。接触部材31(たとえば、ローラ)は、内側カム30および外側カム33のカム面間で相互作用し、リアクションディスク32のスロット34内に運動力学的に反動接線方向力を発生させ、これが、リアクションディスク32の出力軸上に所定の減速に比例するトルクを発生させる。この場合、速度変換比は、接触部材(ローラ31)またはリアクションディスク32にあるスロット34の数、内側カム30にあるローブ35の数に等しい。内側カム30上のローブ35の数(たとえば5)をリアクションディスク32のスロット34内のローラ31の数(たとえば14)で割った値は、この実施形態においては、5/14の速度変換比、すなわち、内側カム30の1回転に対する出力リアクションディスク32の1回転につき減速5/14に等しい。図6に示し、表1にも示す単段速度変換機28に対しては5つの付加的な速度比がある。
【0015】
上述したように、各速度変換機28(単段変換機とも呼ぶ)の運動力学は、回転入力装置、回転出力装置、被固定(grounded)装置を合体させて反動力を得る。単段速度変換機28におけるこれらの要素のいずれかが回転装置または被固定装置となり得る。したがって、単段速度変換機28における3つの要素各々の機能を交換するだけで同じ単段速度変換機28が6つの異なった構成を持つことができる。たとえば、(5つの)ローブ35を有する内側カム30と、たとえば、(9つの)ローブ36を有する外側カム33と、たとえば、(14の)スロット34および(14の)ローラ31を有するリアクションディスク32とを有する、図6に示す単段速度変換機28についての互換性の結果が以下の表1に示してある。
【0016】
【表1】

【0017】
表1の速度比番号1、3、4、6によれば、時計回り回転入力で時計回り回転出力が発生する。速度比番号2、5は、同じ時計方向入力回転に対して反時計回り出力回転を発生する。車輛トランスミッションの場合、時計回りの回転出力は前進駆動速度比として使われ、反時計回りの回転出力は後進駆動速度比として使われる。
【0018】
1:1より上の速度変換比は減速比であり、1:1より下の速度変換比は増速比である。たとえば、2.8:1の速度変換比を有する単段速度変換機28に対する1000回転数/分の入力速度は出力(1000/2.8)=357回転数/分となる。一方、速度変換比0.64:1を有する単段速度変換機28への同じ1000回転数/分の入力は出力(1000/.64)=1563回転数/分となる。図6のものと類似した、本発明の実施形態の別の例では、外側カム33が(4つの)ローブを有し、内側カム30が(10の)ローブを有し、リアクションディスク38が(14の)スロット34および(14の)ローラ31を有し、それ故、速度変換比SR=10/14=0.714:1となる。すなわち、増速出力が0.714で割った入力速度に等しくなる。上記の1:1の状態で単段速度変換機28がトルクを与えるためには、単段速度変換機28が特に後進駆動不能であるような設計となる。
【0019】
図7には、(2つの)速度比を与えることができる単段速度変換機28が示してある。この実施形態においては、単段速度変換機28は入力軸38を有し、この入力軸38は本発明22に入力速度を供給する内側カム30と一体になっており、外側カム33が自由に回転するとき(固定していないとき)、1:1の速度比でリアクションディスク32の出力を発生する。外側カム33が或る種の固定機構40(たとえば、クラッチまたはブレーキ)を介して固定されたとき、単段速度変換機28がかみ合い状態または能動状態となり、それによって、入力軸38および内側カム30とは異なった速度状態にあって駆動部材12に作動可能に連結した被駆動部材20に作動可能に連結したリアクションディスク32のところに出力速度を発生する。この速度変換比は、特に、この単段速度変換機28構成の能動速度比である。この実施形態においては、速度変換比は以下の式で決定される。
速度比SR=出力要素上のローブの#/入力要素上のローブの#
ここで、入力要素は内側カム30であり、出力要素はリアクションディスク32である。
【0020】
図8に示す実施形態の場合、外側カム33は(4つの)ローブを有し、内側カム30は(10の)ローブを有し、リアクションディスク32は(14の)スロット34と(14の)ローラ31を有する。速度変換比SR=14/10=1.4:1であり、すなわち、1.4で割った入力速度の減速比が出力速度に等しくなる。上記1:1の状態でトルクを与えるために、単段速度変換機28は特に後進駆動不能であるように設計する。後進駆動不能である単段速度変換機28は、要素のどれもが固定されていないときに1:1軸継手として機能する。後進駆動可能であると考えられる速度比は、要素のうちの2つが固定されているときに1:1軸継手として機能する。ここで、図示してないが、ローブ、スロットおよび/またはローラを変えることは本発明の一部であると考えられることにも注目すべきである。
【0021】
図8において、本発明22は(2つの)速度比を与えることができる。この実施形態においては、単段速度変換機28は入力軸38を有し、この入力軸38は本発明22に入力速度を与えるリアクションディスク32と一体であり、それによって、外側カム33が自由に回転する(固定されていない)とき、内側カム30のところに1:1の速度比で出力を発生する。外側カム33が固定機構40(たとえば、クラッチまたはブレーキ)を介して固定されたとき、単段速度変換機28がかみ合い状態または能動状態となり、それによって、入力軸30およびリアクションディスク32の入力速度と異なる速度であって駆動部材12に作動可能に連結している被駆動部材20に作動可能に連結した内側カム30のところに出力速度を発生する。この速度変換比は、特に、この単段速度変換機28構成の能動速度比である。この実施形態においては、速度変換比は以下の式で決定される。
速度比SR=出力要素上のローブの#/入力要素上のローブの#
ここで、入力要素はリアクションディスク32であり、出力要素は内側カム30である。
【0022】
本発明22からの全回転速度変換比出力は各多段速度変換機28の能動速度比の積によって決まる。このとき、この出力は軸16および駆動車軸19の差動装置18への入力となり得る。前述したように、トランスミッション10の出力部は差動装置18に連結することができ、この差動装置8は駆動輪14の駆動車軸19に作動可能に連結している。差動装置19は、たとえば、コーナリング時に駆動輪14の異なった速度回転に適応する機能を果たす。前輪駆動車両の場合、差動装置を同じようにトランスミッションに一体化できるならば最も有利であるかもしれない(これについては以下に詳細に説明する)。
【0023】
図7、8は、入力部分、出力部分として互換性のある内側カム30、リアクションディスク32を示している。図7は、内側カム30を入力部分として示し、リアクションディスクを出力部分として示している。それに対して、図8は、リアクションディスク32を入力部分として示し、内側カムを出力部分として示している。図7、8では外側カムを被固定部分として示しているが、本発明の他の実施形態(図示せず)では、上述し、図7、8に図示したと同じ要領で外側カムを入力兼出力部分として構成している。
【0024】
ここで図2A〜2Cに戻ると、モジュール24として在来型または他のタイプのオートマチック・トランスミッションに対する本発明22の統合がこのような在来のトランスミッションの機能を拡張する。たとえば、それぞれ速度比1.286:1および0.778:1を有する2つの単段速度変換機を有するモジュール24を、歯数比2.8:1、1.4:1、1:1、0.72:1を有する在来の4速オートマチック・トランスミッション10
に作動可能に連結した場合、モジュール24は、この4速オートマチック・トランスミッションを、より大きな速度比範囲を有し、かつ、より少ない増分速度比間段数を有する10速オートマチック・トランスミッションに拡張される。本発明の一部として論理制御ユニット(LCU)(後にさらに詳しく説明する)を設けることによって、表2A(下記)のものと同様のシフティング・シーケンスを達成できる。
【0025】
【表2】

【0026】
比較のために、表2B(下記)に在来の4速トランスミッション・シフト・シーケンスを示す。
【表3】

【0027】
上述したように、本発明は、後輪駆動車、前輪駆動車および総輪駆動車に適している。総輪駆動車の場合、モジュール24(図2Cに示す)は在来のトランスファ・ケース17を置き換えたものである。駆動部材12(たとえば、エンジンまたはモータ)は、たとえば、流体継手または流体クラッチ44等を介して在来のオートマチック・トランスミッション10へ入力を与える。伝動軸46を経由したトランスミッション出力はモジュール24に入力し、モジュール24は、上述したようにその速度変換機能を果し、軸16R、16Fを介して変換された2つの出力を与える。軸16Rは、後車軸差動装置18Rに入力を与え、この後車軸差動装置18Rは、後車軸19Rを回転させ、最終的に後駆動輪14Rを回転させる。軸16Fは、前車軸差動装置18Fへ入力を与え、この前車軸差動装置18Fは、前車軸19Fを回転させ、最終的に前駆動輪14Fを回転させる。
【0028】
次に図5Aに戻って、駆動部材12(たとえば、モータまたはエンジン)および出力クランク軸48が、たとえば、流体継手またはトルクコンバータまたはクラッチ機構44等を介して多速度比トランスミッション26へ入力する。この実施形態では、多速度比トランスミッション26が、前進方向について4つの前進段、すなわち、第1段50、第2段52、第3段54、第4段56と、後進方向について1つの後進段58とを有する5段トランスミッションとなっており、これは、後部差動装置18Rに出力する速度比を前進方向で16の全速度比、後進方向で1つまたはそれ以上の全速度比を与える。図3B、3C、5Bに示す前輪駆動および総輪駆動用のトランスミッションは、後車輪トランスミッションについて先に述べたと同じ単段速度変換機システムを有する。
【0029】
軸16を介して駆動部材20に出力する多速度比トランスミッション26は入力速度(エンジンまたはモータまたはトランスミッションの速度)に対する速度比にあり、これは、個々の能動状態またはかみ合い状態の速度比(単数または複数)の積である。たとえば、速度比は、以下の通りである。すなわち、後進段58の2.5:1、第1段50の3.25:1、第2段52の1.80:1、第3段54の0.88:1、第4段56の0.75:1である。後進段58は、車両が後進作動するときにのみ考慮される。4つの段50、52、54、56すべてが能動状態すなわちかみ合い状態の場合には、多速度比トランスミッション26の結果として生じた全速度比は、3.25×1.8×0 .88×0.75=3.86:1である。いずれの段も能動状態またはかみ合い状態でない場合には、有効全速度比は1:1である。表3(下記)に示す配列表は、速度比段の種々の組み合わせおよびその結果生じる全部で16の可能性ある全速度変換比(前進方向)を示している。
【0030】
【表4】

【0031】
各速度比段についての種々の要素の固定動作(たとえば、クラッチ動作またはブレーキ動作)は、その特定の単段速度変換機28(図6)の設計に依存する。或る速度比の場合、必要な唯一の固定動作は、図6に示す3つの単段速度変換機28主要素のうちの1つ(たとえば、内側カム30、リアクションディスク32または外側カム33)に対するものである。他の速度比の場合、その速度比段の3つの主要素のうちの2つを固定することが必要であるかもしれない。どの要素が固定動作を必要とするかということに関する決定は
、特殊な単段速度変換機28設計に基づいており、その場合、その単段速度変換機28は後進駆動(入力としての出力および出力としての入力)され得る。後進駆動不能である単段速度変換機28は、要素のいずれもが固定されていないときに1:1軸継手として機能する。後進駆動可能であると考えられる速度比は、要素のうち2つが固定されているとき1:1軸継手として機能する。図5Aの実施形態において、第1段50および第2段52は各々2つのクラッチを必要とし、第3段56および第4段58は各々クラッチを1つだけ必要とする。
【0032】
次に図9を参照して、2段多速度比トランスミッション899は(4つの)速度比を提供する能力がある。この実施形態においては、第1段単段速度変換機900の入力速度は、リアクションディスク903の入力軸901を介して駆動部材12によって与えられる。自由に回転している(ハウジング910に固定されていない)外側カム904は1:1速度比で内側カム902に対する出力速度を発生する。911を接続する或る種の固定方法(たとえば、クラッチ動作またはブレーキ動作)を介してハウジング910に固定されている外側カム904は単段速度変換機900をかみ合わせ状態にするか能動状態にし、それによって、内側カム902のところに、入力速度からの増速または減速である出力速度を発生する。この速度変換比は、特に、この単段速度変換機900構成の能動速度比である。速度変換比は以下の式で決定される。
速度比SR=出力要素上のローブの#/入力要素上のローブの#
ここで、入力要素はリアクションディスク903であり、出力要素は内側カム902である。
【0033】
たとえば、本発明のこの実施形態においては、外側カム904は(4つの)ローブを有し、内側カム902(入力要素)は(18の)ローブを有し、リアクションディスク903(出力要素)は(22の)スロット905と(22の)接触部材906(たとえば、ローラ、ローラ装置または軸受)を有し、速度変換比SR=18/22=0.82:1を発生する。すなわち、0.82で割った入力速度に等しい増速出力を発生する。第1段単段速度変換機900の出力は、ここでは、第2段単段速度変換機920への入力である。
【0034】
第2段単段速度変換機920は、第2段単段速度変換機920に入力速度を与える入力軸921(内側カム923および内側カム902と一体)を有し、外側カム924がハウジング910に対して自由に回転する(固定されていない)ときにリアクションディスク922出力部のところに1:1の速度変換を発生する。第2段単段速度変換機920は、外側カム924が固定部材911(たとえば、クラッチまたはブレーキ)を介してハウジング910に固定されたときにかみ合い状態または能動状態になり、それによって、入力速度からの減速である出力速度をリアクションディスク922のところに発生する。速度変換比は、特に、第2段単段速度変換機920の能動速度比である。この実施形態においては、速度変換比は以下の式で決定される。
速度比SR=入力要素上のローブの#/出力要素上のローブの#
ここで、入力要素は内側カム923であり、出力要素はリアクションディスク922である。
【0035】
図9に示す別の実施形態は、(4つの)ローブを有する外側カム924、(10の)ローブを有する内側カム922、(14の)スロット925および(14の)ローラ926を有するリアクションディスク923を含み、速度変換比SR=14/10=1.4:1
を発生する。すなわち、1.4で割った入力速度に等しい減速出力を発生する。これらの
速度比例を有する図9の実施形態は、4つの異なった全速度変換比、すなわち、1:1, 1.4:1、1.15:1、0.82:1を与える。
【0036】
ここで、第1段単段速度変換機900または第2段単段速度変換機920のいずれかに類似する任意数の単段速度変換機が所望数の速度比段を達成するように構成できることは了解されたい。各単段速度変換機は速度比段と看做される。各速度比段は、すべての部材が自由に回転しているとき、減速または増速のいずれかを発生するか、または、1:1軸継手(出力速度に等しい入力速度)として作用する。多速度比トランスミッションの全速度比は、モジュール24またはトランスミッション26内のすべての段の能動速度比の積によって決まる。
【0037】
16以上の速度比を与えることのできる多段速度変換機モジュールまたはトランスミッションの別の典型的な実施形態499が図10に示してある。この実施形態においては、第1段単段速度変換機500は、リアクションディスク503のところに適用される駆動部材12からの入力を有し、入力速度を第1段単段速度変換機500に与えることができ、外側カム504が自由に回転している(ハウジング510に固定されていない)ときに1:1の速度比で内側カム502の出力を発生する。第1段単段速度変換機500は、外側カム504が或る種の固定動作511(たとえば、クラッチ動作またはブレーキ動作)を経てハウジング510に固定されたときにかみ合い状態または能動状態となり、それによって、入力速度からの増速である出力速度を内側カム502のところに発生する。この速度変換比は、特に、その第1段単段速度変換機50構成の能動速度比である。この実施形態においては、速度変換比は以下の式で決定される。
速度比SR=出力要素上のローブの#/入力要素上のローブの#
ここで、入力要素はリアクションディスク503であり、出力要素は内側カム502である。
【0038】
図10に示し、先に説明した実施形態の場合、外側カム504は(4つの)ローブを有し、内側カム502は(12の)ローブを有し、リアクションディスク503は(16の)スロット505および(16の)接触部材506(たとえば、ローラまたはローラ装置または軸受)を有する。速度変換比SRは12/16=0.75:1、すなわち、0.75で割った入力速度に等しい増速出力である。第1段単段速度変換機500の出力は、ここでは、第2段単段速度変換機520への入力である。
【0039】
第2段単段速度変換機520へ入力速度を与える、内側カム502と一体のリアクションディスク523のところの入力を有する第2段単段速度変換機520は、外側カム524がハウジング510に対して自由に回転する(固定されていない)とき、1:1の速度比で内側カム522を駆動する。第2段単段速度変換機520は、固定機構521(たとえば、クラッチまたはブレーキ等)を経て外側カム524がハウジング510に固定されたときかみ合い状態または能動状態となり、それによって、入力速度からの増速である出力速度を内側カム522のところに発生する。この速度変換比は、特に、その第2段単段速度変換機50構成の能動速度比である。この実施形態においては、速度変換比は以下の式で決定される。
速度比SR=出力要素上のローブの#/入力要素上のローブの#
ここで、入力要素はリアクションディスク523であり、出力要素は内側カム522である。
【0040】
図10に示した実施形態の場合、外側カム524が(2つの)ローブを有し、内側カム522が(12の)ローブを有し、リアクションディスク523が(14の)スロット525および(14の)ローラ526を有する場合、速度変換比SR=12/14=0.857:1となる。すなわち、0.857で割った入力速度に等しい増速出力となる。第2段単段速度変換機520の出力は第3段単段速度変換機530への入力である。
【0041】
内側カム533および内側カム522と一体の入力軸531を有する第3段単段速度変換機530は入力速度を第3段単段速度変換機530に与える。内側カム533は、外側カム534がハウジング510に対して自由に回転する(固定されていない)ときに1:1の速度比でリアクションディスク532を駆動する。外側カム534が固定機構531(たとえば、クラッチまたはブレーキ)を介してハウジング510に固定されたとき、第3段単段速度変換機530がかみ合う状態または能動状態となり、それによって、入力速度からの減速である出力速度をリアクションディスク532のところに発生する。この速度変換比は、特に、第3段単段速度変換機530構成の能動速度比である。この実施形態においては、速度変換比は以下の式で決定される。
速度比SR=入力要素上のローブの#/出力要素上のローブの#
ここで、入力要素は内側カム534であり、出力要素はリアクションディスク532である。
【0042】
図10に示し、先に説明した実施形態の場合、外側カム534は(4つの)ローブを有し、内側カム532は(12の)ローブを有し、リアクションディスク533は(16の)スロット535および(16の)接触部材536(たとえば、ローラ、ローラ装置または軸受)を有する。この実施形態の場合の速度変換比SRは、16/12=1.33:1、すなわち、1.33で割った入力速度に等しい減速出力である。第3段単段速度変換機530の出力は第4段単段速度変換機540への入力である。
【0043】
この実施形態においては、説明の目的だけのために、段3〜8は表4(下記)に示すように同じ速度変換比を有する。この実施形態は、8より大きい速度比範囲を持つ16速オートマチック・トランスミッションである。
【0044】
【表5】

【0045】
図10の構成および表4のシフティング・シーケンスを採用する本発明のさらに別の実施形態において、トランスミッションが、表4に掲げた他のすべての全速度比に関わるシフティング・シーケンスで作動し、関わった6つすべての減速比(速度比段3〜8)でこのトランスミッションが始動するときに極めて滑らかで高い性能、高速巡航を通じての停止からの効率的な加速を達成できることが示される。さらに、このトランスミッションは、速度比がまったく関わっていない場合に全速度比速度変換比が1:1となるまで、各シフトポイントで減速比の1つを外すことによって次の速度比にシフトするようにプログラムされ、したがって、固定部材またはクラッチが付勢されることがない。それによって、非常に効果的な作動状態を与える。このシーケンス中、全シーケンスを通じて任意のシフトポイントでの動力中断はない。
【0046】
本発明22のさらに別の実施形態79が図11に示してある。駆動部材12(たとえば、エンジンまたはモータまたはトランスミッション)からの入力軸60は、接触部材68(たとえば、ローラ)を介してそれぞれ外側カム61、62、63と相互作用する第1段多カム速度変換機69の内側カム70、71、72を回転させる。ピン67がリアクションディスク77と相互作用し、このリアクションディスク77が第1段多カム速度変換機69の出力軸となる。油圧シリンダ80、81、82が第1段多カム速度変換機69内のどの外側カム61、62、63をかみ合い状態または能動状態にするかを選択する。たとえば、アクチュエータ80が、たとえば、ブレーキバンド86によって外側カム61を固定したとき、ローラ68およびピン67を通る内側カム70、外側カム61の速度比がリアクションディスク77の出力速度となる。同様にして、内側カム71、外側カム62の組み合わせがリアクションディスク77の第2速度比、そして異なった出力速度を発生させることになり、内側カム72、外側カム63の組み合わせがリアクションディスク77のさらに別の異なった出力速度を発生することになる。
【0047】
リアクションディスク77は、また、内側カムともなり、第2段多カム速度変換機78へ入力すると共に第1段多カム速度変換機69へ出力する。リアクションディスク77は、第2段多カム速度変換機78の内側カム73、74、75を回転させる。内側カム73、74、75は、3つの特殊な速度変換比を得るように67、68のそれぞれと同様に接触部材87(たとえば、ローラ、ローラ装置または軸受)およびピン88を介して外側カム64、65、66と相互作用する。油圧シリンダ83、84、85の作動がリアクションディスク69を通る出力に対する速度比を選ぶ。たとえば、油圧シリンダ85の作動はバンド76を作動させて外側カム66を固定し、接触部材87およびピン88を介して内側カム75と相互作用させ、或る速度変換比を発生する。第2段多カム速度変換機78の速度変換比は第1段多カム速度変換機78の速度変換比と組み合ってトランスミッション79の全出力速度変換を行う。かみ合い状態にない第1段多カム速度変換機78は空回りすることになる。同様に、他の出力変換速度も可能である。なんとなれば、全部で9つの速度比を得るために第1段多カム速度変換機78の3つの段と第2段多カム速度変換機78の3つの段が可能だからである。図12は、図11に示す実施形態のトランスミッション、あるいは、速度変換モジュールの斜視図である。
【0048】
上述したように、多段トランスミッションまたは速度変換モジュールのカムの数を変化させることによって本発明には可能な速度比が多数ある。たとえば、多段変換機内の2つの単段4カム速度変換機は(16の)速度変換比を発生する。多段変換機内の3つの単段3カム速度変換機は(27の)速度変換比を発生する。したがって、単段多カム段の数および/または各段における単段単カム速度変換機28の数を変えることによって、複数の速度比を有する多段トランスミッションまたは速度変換モジュールを得ることができる。
【0049】
さらに別の実施形態139が図13に示してあり、これは、入力内側カム140、リアクションディスク141、外側カム142、接触部材143(たとえば、ローラ、ローラ装置または軸受)および4つの面クラッチ・アセンブリ145、146、147、148を含む。各面クラッチ・アセンブリ、たとえば、146は、円形リング・ピストン150、軸受151、クラッチプレート152、キー153および摩擦パッド154を含む。内側カム140は摩擦パッド162を含み、リアクションディスク141は摩擦パッド169を含む。回転時、内側カム140はキー157、153を介して2つの入力面クラッチ145、146に回転を与える。入力面クラッチ145、146は、それぞれの軸受156、151上で自由回転する。円形リング・ピストン150、160が不作動となっているとき、入力面クラッチ145、146は回転するが、入力カム140またはリアクションディスク141に回転を与えることはない。円形リング・ピストン150、160のうちの一方が作動すると、直線変位で面クラッチ・アセンブリ145または146を並進させて係合状態にし、適切な圧力で摩擦パッドを効果的に結合させ、トランスミッションまたは速度変換機139のその要素に入力回転速度を与える。作動状態にないピストンは、たとえば、スプリング179によって所定位置に留まることになり、入力面クラッチ145または146は、内側カム140の速度でその軸受151上で自由に回転することになる。これら4つの面クラッチ145、146、147、148の組み合わせを作動させることによって、表1の1番、6番の速度比を実現できる。
【0050】
したがって、1番の速度比は、円形リング・ピストン160を作動させ、これがクラッチ・アセンブリ145を並進させて内側カム140と係合させ、摩擦パッド162、168を結合させ、入力軸155の回転速度を内側カム140に伝えることによって達成される。同時に、ピストン167が作動すると、面クラッチ・アセンブリ148を並進させ、摩擦パッド175、177を結合させ、リアクションディスク141の速度をその速度比に従って変換された速度に調節し、それを出力軸165に伝えることができる。2つの作動していない面クラッチ・アセンブリは入力速度または出力速度に従ってそれぞれ回転することになる。同様にして、ピストン150、166が作動すると、表1の6番の速度比が選ばれ、第2の速度変換比を実現できる。両方の構成において、バンドブレーキ170を作動させて外側カム142を固定し、トランスミッションまたは速度変換機139の運動機能を完成する。
【0051】
さらに、先に説明したように、第3の出力速度、すなわち、1:1の速度が可能である。この場合、4つすべての面クラッチ・アセンブリ145、146、147、148を作動させると共に、ブレーキバンド170を非作動とし、外側カム142をその軸受171上で回転させることによって入力軸155および出力軸165が同じ速度で回転する。実際上、トランスミッションまたは速度変換機139がロックアップされ、入力軸155が出力軸165に直結し、これら両方の軸が同じ速度で回転する。
【0052】
したがって、このようなトランスミッションまたは速度変換機アセンブリ139の多重アセンブリは、極めて少ない単段速度変換機による多数の速度比を有するより大きいトランスミッションまたは速度変換機を提供する。たとえば、限定するつもりはないが、図13に示すような2つのトランスミッションまたは速度変換機アセンブリ139の構成では9つの速度比が可能である。
【0053】
図14は、上述し、図13に示したような2つの単段速度変換機180、190を組み合わせた単一のトランスミッションまたは速度変換機ユニット199として速度変換機ユニット199を示している。2つの速度変換機180、190は、図13の単段トランスミッションまたは速度変換機アセンブリ139について先に説明したクラッチ・ブレーキ配置に類似した適切な固定機構を含む。駆動部材12は第1単段速度変換機180の入力軸181に入力速度を与える。第1単段速度変換機180は選択速度比で軸135に出力速度を出力する。次に、この出力速度が第2単段速度変換機190に入力される。この場合、第2単段速度変換機190は選択速度変換比で出力速度を軸191に出力する。全変換比は、これら2つの単段速度変換機180、190における2つの選択速度比の積である。各単段速度変換機について適切な速度比で、2つの単段速度変換機180、190を利用する9つの前進速度の自動車トランスミッションが提供される。次いで、トランスミッションに加えられた付加的な単段速度変換機がより多い数の速度比を発生することになる。たとえば、3つの単段速度変換機、12のクラッチおよび3つのブレーキを使用する場合、トランスミッションは27の速度変換比を提供することができる。
【0054】
(4つの)単段速度変換機、(4つの)バンドブレーキ273および(2つの)面クラッチ203、250を利用する9速トランスミッションを有するさらにまた別の実施形態が図15に示してある。駆動部材12に作動可能に連結した入力軸200が、図11の単段多カム速度変換機69、78について説明したと同様のやり方で、第1多段速度変換機280の2つの単段速度変換機201、202を駆動する。アクチュエータ209、210がそれぞれ2つの単段速度変換機201、202を選択的に固定し、単段多カム速度変換機201、202をそれぞれ能動化する。2つの単段多カム速度変換機201、202の出力軸215は第2多段速度変換機281への入力軸となる。
【0055】
しかしながら、たとえば、クラッチ・アセンブリ203によって能動化したとき第1の多段速度変換機280に第3の出力がある。この実施形態において、キー206を介して入力軸200に一体的に連結したクラッチ・アセンブリ203は入力軸200と共に、たとえば、軸受205上で回転する。ピストン204によって変位させて摩擦パッド213、214を互いに押し付けたとき、クラッチ・アセンブリ203も軸線方向に自由に摺動することになる。この状態において、2つの単段速度変換機201、202の内側カムと共に入力軸200が出力リアクションディスク215でロックされ、ロックされた第1段を創り出し、これが出力軸215を経て1:1の速度変換比を出力することになり、それによって、第3の可能性ある出力変換比を与える。圧力が適正レベルでピストン204に加えられて摩擦パッド境界面での滑りを確実になくす。不要時には適切な弁操作によって圧力が解放される。ダイアフラムスプリング220が圧力を伝えて変位力を加え、クラッチハブ225を介して摩擦パッド213、214を確実に完全に係合させる。ダイアフラムスプリング220内の蓄積したエネルギと協力して作動する付勢されたスプリング207、208は、ピストン204が不作動となったときに全潜在エネルギを解き放ち、クラッチ・アセンブリ203を入力軸200上でその中立位置すなわち非係合位置に戻し、リアクションディスク215を外す。入力軸200およびリアクションディスク出力軸215を支持するために適切な軸受211、212、216、217が設けてある。
【0056】
入力は、たとえば、入力スプライン230を経て2つの単段速度変換機240、245を含む第2多段速度変換機281に伝えられる。入力スプライン230はクラッチ・アセンブリ250を有し、このクラッチ・アセンブリ250はピストン260によって付勢されたときに第1多段速度変換機280と同様の要領で作用することになる。適切な圧力がピストン260によって加えられ、軸受265を介してハブ252を係合させ、クラッチ・パッド255、256の係合を確実にする。ダイアフラムスプリング251は、撓みながらこのような係合を確実にすると共に、適切な弁操作によって圧力が解放されたときにスプリング253,254と一緒に入力軸23および出力軸270を外すことができる。軸235、270がアセンブリ・クラッチ250を介して完全に係合したとき、第2多段速度変換機281の速度変換比は1:1である。軸270は1速度比にあり、それによって、第1多段速度変換機280の3つの速度比と相互作用するように3つの速度比を与え、その結果、4つの単段速度変換機28を利用する9速トランスミッションとなる。ここでも、第1多段速度変換機281におけると同様に、入力軸235および出力軸270の回転支持のために適切な軸受236、237、271、272が設けてある。単段速度変換機240、245は、それぞれ、油圧シリンダ241、246によって能動化される。
【0057】
さらにまた別の実施形態999が図16に示してある。入れ子式2段速度変換機モジュールまたはトランスミッション999は(4つの)速度比を与えることができる。この実施形態においては、2つの段1000、1020が入れ子になっていて速度変換機またはトランスミッション999の軸線方向長さを最小限に抑えている。この実施形態においては、第1段単段速度変換機1000に入力速度を与えるリアクションディスク1003のところに入力を有する第1段単段速度変換機1000は、外側カム1004がハウジング1010に対して自由に回転する(固定されていない)とき、1:1の速度比で内側カム1002の出力を発生する。油圧ピストン1018が加圧されて外側カム1004がハウジング1010に固定されたとき、固定機構1011(たとえば、クラッチ)が能動化し、第1段単段速度変換機1000がかみ合い状態または能動状態となり、それによって、入力速度からの増速である出力速度を内側カム1002のところに発生する。この速度変換比は、特に、その第1段単段速度変換機1000構成の能動速度比である。この速度変換比は以下の式によって決定される。
速度比SR=出力要素上のローブの#/入力要素上のローブの#
ここで、入力要素はリアクションディスク1003であり、出力要素は内側カム1002である。
【0058】
上述したように、第1段単段速度変換機1000はかみ合い状態または能動的状態のとき増速出力を与える。第1段単段速度変換機1000の出力は第2段単段速度変換機1020への入力となる。第2単段速度変換機1020に入力速度を与えるリアクションディスク1023のところに入力を有する第2段単段速度変換機1020は、外側カム1024がハウジング1010に対して自由に回転する(クラッチが作動していない)ときに、1:1の速度比で内側カム1022の出力を発生する。ピストン1028を加圧することによって外側カム1024がハウジング1010に固定されたとき、クラッチ1029が能動化され、第2段単段速度変換機1020がかみ合い状態または能動状態となり、それによって、入力速度からの増速である出力速度を内側カム1022のところに発生する。速度変換比は、第1段単段速度変換機1000と同様のやり方で決定される。全速度変換比は各能動段の単段速度変換機1000、1020の積である。
【0059】
上述し、図16に示した入れ子式の2段速度変換機モジュールまたはトランスミッション999は2速度比増速を行う。しかしながら、限定するつもりはないが、減速機として両方の段を有する2段速度変換機モジュールまたはトランスミッション、増速機として1つの単段速度変換機を有する2段速度変換機モジュールまたはトランスミッションおよび増速機としての他の単段速度変換機のような、この入れ子式形態を利用する他のアセンブリを構成することも可能である。
【0060】
多入力カム実施形態のさらにまた別の実施形態1100が図17Aに示してある。この実施形態1100は、3つの一体内側カム1110、1111、1112のクラスタで構成した入力クランク軸1130を有し、回転するときに、接触部材1135(たとえば、ローラ、ローラ装置または軸受)を外方へ変位させ、この接触部材が外側カム1114、1115、1116の側面1136と相互作用する。こうして生じた相互作用は、出力軸1117と一体でもある反動要素1139のスロット1138によって作用を受ける接線方向力となる。各相互作用カム・サブセットは、出力軸1117が最終的に回転することになる速度を決定することになる或る特定の速度変換比を発生できる。その所定速度は、ハウジング1154にうまく固定された3つの外側カム1114、1115、1116のうちの1つで決定されることになる。各外側カム1114、1115、1116は、図17Bに開示した固定機構1149のうちの1つが能動化され、それによって、関連した外側カム1114または1115または1116を固定するまで軸受1118内で自由に回転する。固定機能を果すのに適していると考えられる別の固定機構(たとえば、クラッチまたはブレーキ)はいくらでもある。固定されておらず、自由に回転する残りの2つの外側カムは、この特別な多入力カム実施形態の出力軸1117の速度を決定することに関与
することはない。外側カム1114、1115、1116の1つだけが任意の時点で固定され、したがって、その速度変換比、そして出力軸1117の速度を決定することになる。
【0061】
図17Aに示すように、第1多入力カム実施形態1100の出力軸1117は第2多入力カム実施形態1101の入力軸となる。この場合、速度比の1つは第1多入力カム実施形態1100およびその出力軸1117と同様に選ばれる。次に、第2多入力カム実施形態1101の出力軸(図示せず)が第3多入力カム実施形態1101等への入力軸となり、最終的に被駆動部材20への入力となる。この最終的な回転速度変換比出力は各多入力カム実施形態の能動速度比の積で決定される。最終出力は、図1Aに示すような駆動車軸19Rの差動装置18Rへの入力となる。
【0062】
上述した回転している外側カム1114、1115、1116を固定する方法の1つは、アクチュエータ1141、油圧作動式ローラ1151、油圧シリンダ1153、図17Bおよび17Cに示す360度の傾斜式カム軌道1150を含む。傾斜式カム軌道1150が圧縮スプリング1152の影響によって回転すると、ローラ1151が傾斜式カム軌道1150と常時接触する。適切な時点で、油圧シリンダ1153が加圧され、ローラ1151が傾斜式カム軌道1150に対して付加的な垂直力を加える。油圧シリンダ1153の直線的な前進でローラ1151がハウジング1154に対して固定される。このことは、関連した外側カム1114または1115または1116が停止、保持されることを意味する。
【0063】
図17B〜17Cに示す固定機構においては、傾斜式カム軌道1150は、0度で出発し、或る特定の率で270度のその最大高さまで上昇し、0度で中立高さに戻るように示してある。図17Cに示すように、出力傾斜式カム軌道50の回転は、0度位置から出発して、ローラ1151が傾斜式カム軌道1150の270度回転にわたって圧縮スプリング1152に押し付けられ、残りの90度にわたってスプリング力によってその当初の位置に戻されるようになっている。したがって、油圧シリンダ1153が起動されたとき、ローラ1151は、円形の傾斜式カム軌道1150に付加的な垂直力を加え、直線位置を保持する。その結果、ローラ1151が油圧シリンダ1153の力に打ち勝つことができないとき、上昇しつつある傾斜路が動かなくなることになる。その結果、外側カムが固定され、その特定の速度比が能動的となる。ここで再び、この方法が、適用される他の方法、たとえば、電気機械式のような方法を限定するものではなく、電磁式の方法にさえ限定するものではなく、または、カムの形態を限定するものではないことに注目されたい。
【0064】
上記の基本原理を使用する他の固定形態、たとえば、急速作用カム式クラッチも固定機能を果すことができる。本発明の実施形態の例がこのクラッチ作用機構の開示構成に限定されることはない。
【0065】
図18は、差動アセンブリに組み込まれた複数の単段多入力カムを備えたさらに別のトランスミッション実施形態2125を示している。このトランスミッション2125への入力は、流体継手(図示せず)の出力軸に設けた歯車とかみ合う歯車2090を経由する。歯車1090は単段速度変換機2096、2097、2098からなる第1単段多入力カム2095の入力軸2091に固定してある。出力リアクションディスク2099は、第2単段多入力カム2100への入力軸であり、単段速度変換機2101、2102、2103を含む。第2単段多入力カム2100への入力部は、図11の実施形態におけるような内側カムの代わりにリアクションディスク2099となる。油圧シリンダ(図示せず)が図11と同様なやり方で外側カムを固定する。しかしながら、内側カム/出力軸2104は、単段速度変換機2096、2097、2098、2101、2102、2103がすべて後進駆動可能であるから、差動装置または差動アセンブリ2130への入力部と
なる。
【0066】
出力軸2104は差動アセンブリ2130に直結しており、差動装置入力軸として作用する。出力軸2104は、フォーク状端部2109がその端に一体形成されているような構成となっている。出力軸2104は、また、そのフォーク状端部2109に固定された少なくとも2つの横軸2110、2111も含み、出力軸2104はベベル・スパイダ歯車2107、2108を支持する。また、差動装置設計には、車軸2115、2120にそれぞれ固定された2つの他のベベル・サイド歯車2106、2112も設けてあり、それによって、作動アセンブリ2130を駆動輪14に連結している。出力軸2104が回転するにつれて、フォーク状端部2109が回転し、同じ速度で回転する軸2110、2111に伝える。スパイダ歯車2107、2108は軸2104と共に回転するが、車両が直線移動するという通常の場合のように駆動輪が同じ速度で回転している限りそれ自体の軸線まわりに回転することはない。車軸2115、2120に連結したベベル・サイド歯車2106、2112が同じ速度で回転している場合、出力軸2104および車軸2115、2120も同じ速度で回転しており、差動装置は入力軸2104および車軸2115、2120と同じ速度で回転している。通常の車両が旋回移動する場合などで2つの車軸2115、2120を異なった速度で回転させたい場合には、速度差が発生し、よりゆっくり回転している車輪のスキッドを避けるために、スパイダ歯車2107、2108がそれ自体の軸線まわりに回転し、2つの車軸2115、2120の速度差に順応する。2つのベベル・サイド歯車2106、2112は、代表的には、スプライン結合していて駆動輪の車軸2115、2120を駆動する。本発明2125は、トランスミッションの一部として差動装置または作動アセンブリ2130を含む。
【0067】
このような多速度トランスミッションを有するということは、車両製造業者および運転者の両方に対して多くのオプションを提供する。個々の単段速度変換機の各々をコンピュータ制御することで運転者またはコンピュータ・プログラムまたは両方による選択が容易になる。任意の速度比段を容易に選ぶことができるという能力は、このようなトランスミッションの成功にとって必要かつ有意な機能である。
【0068】
本発明22のここに開示した実施形態のうち任意のものを制御する方法は多数ある。たとえば、コントロールパネル、シフト機構、パドル式シフタ、プログラム選択可能オートマチック・セッティング等がある。完全な自動動作では、本発明22は、ネットワーク308、たとえば、コントローラ地域ネットワーク(controller area network)を通じて
論理制御ユニット(LCU)300を経て制御される。アクセルまたはスロットの位置および開度、エンジン速度、車輪速度、多軸加速度計のような車両データ302ならびに本発明22内の特定のフィードバック・センサ306のデータは論理制御ユニット(LCU)300に入力され、この論理制御ユニット300はデータを処理し、適切な制御信号304を本発明22のアクチュエータ・ユニット(クラッチ、摩擦ブレーキ、摩擦ベルトその他適当な手段を含む)に出力し、モジュール24またはトランスミッション26の形をした速度変換機の特定の要素をかみ合わせたり(固定したり)、かみ合いを外したり(固定を解いたり)する。LCU300は、本発明22の機能、たとえば、速度比選択、シフト・シーケンス・スケジュールおよびかみ合い・かみ合い外しタイミングを制御する。図19は、上記のように本発明22にLCU300を組み込んだ場合を示す概略図である。
【0069】
速度変換機の独特な特性が、在来のトランスミッションに作動可能に連結したモジュールとしても、または、在来のトランスミッションの代わりのスタンドアロン・トランスミッションとしても、多速度比トランスミッションの代替配置を可能にするということをさきに示してきた。ここに説明した本発明の実施形態は、速度変換機モジュールまたはトランスミッションの設計を限定するのではなく、速度変換機、ブレーキおよびクラッチ等のどのような配置が、速度変換式動力伝達を必要とする自動車、トラック、バス、特殊車両
、オフロード車両・機器、農業車両・機器、船舶その他の用途のためのどのくらいの数のトランスミッションを形成できるかを示す単なる例である。
【0070】
今や、他の実施形態、改良、詳細および用途が前述の開示の文面、精神と矛盾することがなく、特許請求の範囲によってのみ限定され、均等論を含めて特許法に従って解釈されるこの特許の範囲内にあるものであることは当業者には明らかとなろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に作動可能に連結した少なくとも3つの回転可能な構成要素を有する回転速度変換機を含み、
上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの1つの構成要素が上記回転速度変換機に対する入力部分となり、
上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの別の構成要素が上記回転速度変換機の出力部分となり、そして、
上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つに作動可能に連結してあって、
これら3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つを選択的に固定する固定部材を含む、
出力を制御する多速度比装置。
【請求項2】
さらにハウジングを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素がハウジングに固定される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも3つの回転可能な構成要素のうち少なくとも1つが、内側カム、リアクションディスクまたは外側カムのいずれかを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも3つの回転可能な構成要素が内側カム、リアクションディスクおよび外側カムを含み、さらに、該リアクションディスクに設けた複数のスロットと、これら複数のスロットのうちの少なくとも1つのスロット内に選択的に配置される接触部材とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
接触部材がローラを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
接触部材が軸受を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
接触部材がローラ装置を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
入力部分が内側カムであり、出力部分がリアクションディスクであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が外側カムである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
入力部分がリアクションディスクであり、出力部分が内側カムであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が外側カムである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
入力部分が外側カムであり、出力部分が内側カムであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素がリアクションディスクである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
入力部分が内側カムであり、出力部分が外側カムであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素がリアクションディスクである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
入力部分がリアクションディスクであり、出力部分が外側カムであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が内側カムである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
入力部分が外側カムであり、出力部分がリアクションディスクであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が内側カムである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
回転速度変換機の少なくとも3つの回転可能な構成要素が入れ子式構成からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
少なくとも3つの回転可能な構成要素のうち少なくとも1つが、内側カム、リアクションディスクまたは外側カムのいずれか1つを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
入力部分が内側カムであり、出力部分がリアクションディスクであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの1つの固定可能な構成要素が外側カムである、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
入力部分がリアクションディスクであり、出力部分が内側カムであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が外側カムである、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
入力部分が外側カムであり、出力部分が内側カムであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素がリアクションディスクである、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
入力部分が内側カムであり、出力部分が外側カムであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素がリアクションディスクである、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
入力部分がリアクションディスクであり、出力部分が外側カムであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が内側カムである、請求項15に記載の装置。
【請求項22】
入力部分が外側カムであり、出力部分がリアクションディスクであり、そして少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が内側カムである、請求項15に記載の装置。
【請求項23】
回転速度変換機が共役対の回転可能な部分を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
少なくとも3つの回転可能な構成要素のうち少なくとも1つが、内側カム、リアクションディスクまたは外側カムのいずれかを含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
入力部分が内側カムであり、出力部分がリアクションディスクであり、少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が外側カムであり、そして内側カムおよび外側カムが共役である、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
入力部分がリアクションディスクであり、出力部分が内側カムであり、少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が外側カムであり、そして内側カムおよび外側カムが共役である、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
入力部分が外側カムであり、出力部分が内側カムであり、少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素がリアクションディスクであり、そして内側カムおよび外側カムが共役である、請求項23に記載の装置。
【請求項28】
入力部分が内側カムであり、出力部分が外側カムであり、少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素がリアクションディスクであり、そして内側カムおよび外側カムが共役である、請求項23に記載の装置。
【請求項29】
入力部分がリアクションディスクであり、出力部分が外側カムであり、少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が内側カムであり、そして内側カムおよび外側カムが共役である、請求項23に記載の装置。
【請求項30】
入力部分が外側カムであり、出力部分がリアクションディスクであり、少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つの固定可能な構成要素が内側カムであり、そして内側カムおよび外側カムが共役である、請求項23に記載の装置。
【請求項31】
入力部分が駆動部材に作動可能に連結してある、請求項1に記載の装置。
【請求項32】
駆動部材がエンジンを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
駆動部材がモータを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
駆動部材がトランスミッションを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
駆動部材が別の回転速度変換機を含む、請求項31に記載の装置。
【請求項36】
出力部分が駆動可能な部材に作動可能に連結してある、請求項1に記載の装置。
【請求項37】
駆動可能な部材が別の回転速度変換機である、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
駆動可能な部材が差動装置を含む、請求項36に記載の装置。
【請求項39】
さらにハウジングを含み、差動装置が該ハウジング内に収容してある、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
後進駆動可能である請求項1に記載の装置。
【請求項41】
後進駆動不能である請求項1に記載の装置。
【請求項42】
リアクションディスクが共役対のカム部分の間に入れ子になっている、請求項5に記載の装置。
【請求項43】
固定部材が摩擦部材を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項44】
固定部材がブレーキ要素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項45】
固定部材がクラッチを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項46】
ハウジングを含み、
共役対のカム部分と、この共役対のカム部分の間に作動可能に相互連結したリアクションディスクとを有し、上記ハウジング内に収容してある単段回転速度変換機を含み、
上記共役対のカム部分のうち1つの部分が内側カムおよび入力軸を含み、この内側カムが所定の入力回転速度を発生できる駆動部材によって駆動可能であり、
上記共役対のカム部分の別の部分が外側カムを含み、
上記リアクションディスクがスロットおよび出力軸を含み、上記共役対のカム部分を作動可能に連結することができ、ここでこの出力軸が所定の出力回転速度を発生することができ、そしてさらに駆動可能な部材を駆動することができ、
上記スロットのうち少なくとも1つの中に選択的に配置された接触部材を含み、そして
上記外側カムに作動可能に連結してあり、上記ハウジングに対してこの外側カムを選択的に固定できる固定部材を含む、
軸の回転運動を発生するための速度変換機。
【請求項47】
ハウジングを含み、
共役対のカム部分と、この共役対のカム部分の間に作動可能に相互連結したリアクションディスクとを有し、上記ハウジング内に収容してある単段回転速度変換機を含み、
上記共役対のカム部分のうち1つの部分が内側カムおよび出力軸を含み、この出力軸が所定の出力回転速度を有することができると共にさらに駆動可能な部材を駆動することができ、
上記共役対のカム部分の別の部分が外側カムであり、
上記リアクションディスクがスロットおよび入力軸を含み、このスロット付きリアクションディスクが上記共役対のカム部分を作動可能に連結することができ、ここでこのリアクションディスクが所定の入力回転速度を有することができる駆動部材によって駆動可能であり、
上記スロットのうちの少なくとも1つの中に選択的に配置される接触部材を含み、そして
上記外側カムに作動可能に連結してあり、上記ハウジングに対してこの外側カムを選択的に固定できる固定部材を含む、
軸の回転運動を発生するための速度変換機。
【請求項48】
ハウジングを含み、
共役対のカム部分と、この共役対のカム部分の間に作動可能に相互連結したリアクションディスクとを有し、上記ハウジング内に収容してある単段回転速度変換機を含み、
上記共役対のカム部分のうち1つの部分が内側カムおよび出力軸を含み、この出力軸が所定の出力回転速度を有することができ、さらに駆動可能な部材を駆動することができ、
上記共役対のカム部分の別の部分が外側カムであり、
上記リアクションディスクがスロットおよび入力軸を含み、このスロット付きのリアクションディスクが上記共役対のカム部分を作動可能に連結することができ、このリアクションディスクが所定の入力回転速度を発生できる駆動部材によって駆動可能であり、
上記スロットのうちの少なくとも1つの中に選択的に配置される接触部材を含み、そして
上記外側カムに作動可能に連結してあり、上記ハウジングに対してこの外側カムを選択的に固定できる固定部材を含む、
軸の回転運動を発生するための速度変換機。
【請求項49】
入力カム、出力カム、リアクションディスクおよび接触部材を有し、これらすべてが共通軸線上にあり、互いに作動可能に相互連結している少なくとも1つの単段速度変換機を含み、
この少なくとも1つの単段速度変換機がトランスミッションと車軸の間に配置してあり、
上記入力カムおよび出力カムが互いに共役であり、
上記リアクションディスクが複数のスロットを有し、これら複数のスロットの各々が上記接触部材を受け入れることができ、
上記入力カムがトランスミッションに作動可能に連結してあり、
上記リアクションディスクが車軸に作動可能に連結してあり、そして
上記外側カムに作動可能に連結してあり、上記外側カムを選択的に固定できる固定部材を含み、それによって上記少なくとも1つの単段速度変換機に適用された回転速度をトランスミッションによって別の回転速度に変換できる、
トランスミッションに作動可能に連結することができる多速度比速度変換機。
【請求項50】
少なくとも1つの単段速度変換機を所定の速度比に設定できる、請求項49に記載の多速度比速度変換機。
【請求項51】
さらに少なくとも1つの単段速度変換機を複数含み、各単段速度変換機が他の単段速度変換機に作動可能に連結してあり、かつ、トランスミッションと車軸の間に配置してある、請求項49に記載の多速度比速度変換機。
【請求項52】
入力カム、出力カム、リアクションディスクおよび接触部材を有し、これらすべてが共通軸線上にあり、互いに作動可能に相互連結している少なくとも1つの単段速度変換機を含み、
上記少なくとも1つの単段速度変換機がトランスミッションと車軸の間に配置してあり、
上記入力カムおよび出力カムが互いに共役であり、
上記リアクションディスクが複数のスロットを有し、これら複数のスロットの各々が上記接触部材を受け入れることができ、
上記入力カムがトランスミッションに作動可能に連結してあり、
上記リアクションディスクが車軸に作動可能に連結してあり、そして
上記外側カムに作動可能に連結してあり、この外側カムを選択的に固定できる固定部材を含み、それによって少なくとも1つの単段速度変換機に適用された回転速度をトランスミッションによって別の回転速度に変換できる、
多速度比速度トランスミッション・モジュール。
【請求項53】
入力カム、出力カム、リアクションディスクおよび接触部材を有し、これらすべてが共通軸線上にあり、互いに作動可能に相互連結している少なくとも1つの単段速度変換機を含み、
上記少なくとも1つの単段速度変換機が動力源と車軸の間に配置してあり、
上記入力カムおよび出力カムが互いに共役であり、
上記リアクションディスクが複数のスロットを有し、これら複数のスロットの各々が上記接触部材を受け入れることができ、
上記入力カムが動力源に作動可能に連結してあり、
上記リアクションディスクが車軸に作動可能に連結してあり、そして、
上記外側カムに作動可能に連結してあり、この外側カムを選択的に固定できる固定部材を含み、それによって上記少なくとも1つの単段速度変換機に適用された回転速度を動力源によって別の回転速度に変換できる、
多速度比速度トランスミッション。
【請求項54】
少なくとも3つの回転可能な構成要素を有する少なくとも1つの回転速度変換機を含み、
上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの1つの構成要素が上記少なくとも1つの回転速度変換機への入力部であり、
上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの別の構成要素が上記少なくとも1つの回転速度変換機への出力部であり、そして
上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つに作動可能に連結してあって、上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つを選択的に固定する固定部材を含む、
トランスミッション。
【請求項55】
少なくとも3つの回転可能な構成要素を有する少なくとも1つの回転速度変換機を含み、
上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの1つの構成要素が上記少なくとも1つの回転速度変換機への入力部であり、
上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの別の構成要素が上記少なくとも1つの回転速度変換機への出力部であり、そして
上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの1つに作動可能に連結してあって、上記少なくとも3つの回転可能な構成要素のうちの少なくとも1つを選択的に固定する固定部材を含む、
差動装置。
【請求項56】
共通ハウジング内で差動装置に作動可能に連結した、請求項1に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−52830(P2011−52830A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249787(P2010−249787)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2005−501427(P2005−501427)の分割
【原出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(505141440)シンキネティクス・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】