説明

軸受油回収装置

【課題】回収管部の傾斜が小さくても多量の軸受油を回収できる、軸受油回収装置を提供する。
【解決手段】軸受油を用いた流体軸受32、33から排出された軸受油を貯留する回収室3dを備え、回収室3dに貫通し、砥石台3の進退方向の後方に延伸する回収管37を備える。
回収管37の吸入部37aに、軸受油を回収管37内の軸受油の流出方向へ噴出するノズル38を備え、ノズル38から高速の軸受油を回収管37内に噴射して、軸受油の排出速度を増加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体軸受を備えた装置における軸受油回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削盤の砥石車等の軸受には流体軸受が用いられる。流体軸受の供給口には常に軸受油が供給され、排出口からは使用された軸受油が排出される。この排出される軸受油を回収する装置に関して、特許文献1に記載の従来技術では、図4に示すように、回収室100aに回収管101を砥石軸103の回転軸線と直交する方向にほぼ水平に貫通させて、回収管101の一端にフレキシブル管102を接続している。回収管101をほぼ水平に貫通させるのは、傾斜を大きくすると砥石台100の高さが高くなり砥石台100の運動精度が低下するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−71046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術では、回収管101の傾斜が小さいかほぼ水平である。このため、砥石軸103が高速回転し冷却用の軸受油量が増加し排出油量が多い場合には回収管101の内部に軸受油が停滞し、回収が困難になることがあった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、回収管部の傾斜が小さくても多量の軸受油を回収できる軸受油回収装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、流体軸受から排出された軸受油を貯留する回収室と、
前記回収室の内部に一端が貫通する回収管と、
前記回収室の内部に配置したノズルと、
前記流体軸受に給油する管路から分岐し前記ノズルに前記軸受油を供給する管路を備え、
前記ノズルの噴出口を前記回収管の軸線方向で前記回収管の一端に対向して配置することである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、回収管内の軸受油はノズルから噴出する軸受油により下流方向へ押し流されるので、回収管部の傾斜が小さくても回収管の内部に軸受油が停滞することがなく多量の軸受油を排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の研削盤の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】従来の回収装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を円筒研削盤の事例に基づき、図1〜図3を参照しつつ説明する。
図1に示すように、円筒研削盤1は、ベッド2を備え、ベッド2上にX軸方向に往復可能で送りねじ22(図3参照)を介して送りモータ23で駆動される砥石台3と、X軸に直交するZ軸方向に往復可能なテーブル4を備えている。砥石台3は砥石車8を流体軸受(後で説明する)を介して回転自在に支持し、砥石車8をベルト35を介して回転させる砥石回転モータ36を備えている。砥石台3の後部(工作物Wと対向する面と反対側)には流体軸受の軸受油を回収する回収管37を備え、回収管37に結合されたフレキシブル管71が軸受油供給装置7に接続している。テーブル4上には、工作物Wの一端を把持して回転自在に支持し主軸モータ(図示省略する)により回転駆動される主軸5と、工作物Wの他端を回転自在に支持する心押し台6を備えており、工作物Wは主軸5と心押し台6により支持されて、研削加工時に回転駆動される。
【0010】
図2に示すように、砥石台3は両側面に軸受32、33を備え、軸受32、33は砥石軸31の両端部を支持し、砥石軸31の一方の先端に砥石車8が装着され、他端にはプーリ34が装着されている。プーリ34に系合するベルト35がモータ36(図1参照)に連結されている。
砥石台3には軸受油供給装置7(図1参照)から管路72が接続されており、管路72は砥石台3に設けられた管路3aと連通している。管路3aは軸受32、33の給油口と連通している。砥石台3の軸受32、33装着部の下部に油回収室3dに連通する排出口3cを備えている。
【0011】
図3に示すように、砥石台3は管路3aから分岐し、油回収室3dの下部に到達する管路3bを壁面内に備え、管路3bの終端にノズル38が結合されている。油回収室3dの下部に貫通された回収管37が、砥石台3の進退方向の後方に延伸し砥石台3の後部端から突出している。回収管37にはフレキシブル管71が結合され軸受油供給装置7に接続している。ノズル38の吐出口部38aと回収管37の吸入口37aは近接し略同心位置に配置されている。
【0012】
軸受油供給装置7により管路72に軸受油を供給すると、昇圧された軸受油が管路3aを経由して流体軸受32、33に供給され、砥石軸31を浮上支持した後に大気圧まで減圧して排出口3cを経由して油回収室3dに排出される。油回収室3dに貯留した軸受油は回収管37の吸入口37aから回収管37内に流入し、フレキシブル管71を経由して軸受油供給装置7に回収される。
一方、管路3aと管路3bを経由してノズル38に流入した昇圧された軸受油は、ノズル38の先端で流速を増加して吐出口部38aから回収管37の吸入口37aに流入する。このとき、油回収室3dから回収管37内に流入した軸受油を押し流しながらフレキシブル管71を経由して軸受油供給装置7に回収される。
このため、回収管37の傾斜が小さい場合でも軸受油の流出速度を大きくでき、回収油量を増大できる。
【符号の説明】
【0013】
W:工作物 1:円筒研削盤 3:砥石台 4:テーブル 5:主軸 6:心押し台 8:砥石車 31:砥石軸 37:回収管 38:ノズル 71:フレキシブル管 3a、3b:管路 3c:排出口 3d:油回収室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体軸受から排出された軸受油を貯留する回収室と、
前記回収室の内部に一端が貫通する回収管と、
前記回収室の内部に配置したノズルと、
前記流体軸受に給油する管路から分岐し前記ノズルに前記軸受油を供給する管路を備え、
前記ノズルの噴出口を前記回収管の軸線方向で前記回収管の一端に対向して配置する軸受油回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−83289(P2013−83289A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222687(P2011−222687)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】