説明

軸流ファンまたは斜流ファン

【課題】回転音Nz音を低減すると同時に、オバーオールの騒音を低減するとともに送風性能を向上する斜流または軸受ファンおよびこれを有する室外ユニットを搭載した空気調和機を提供する。
【解決手段】本発明の斜流ファンまたは軸流ファンは、主翼2の外周側の弦長2−OUT−COを、主翼2の内周側の弦長2−IN−COより長くする。すなわち、2−OUT−CO>2―IN―COとする。同様に、補助翼3の外周側の弦長3−OUT−COを、補助翼3の内周側の弦長3−IN−COより長くする。すなわち、3−OUT−CO>3−IN―COとする。主翼の前縁を5−2L、補助翼の前縁を5−3Lとすると、いずれも、半径方向に対して回転方向に前傾した螺旋曲線となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンまたは斜流ファンおよびこれを有する室外ユニットを搭載した空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術について、図5、図6、図7、図8を用いて説明する。図5、図6、図7、図8は、従来技術の平面図、子午面図、翼端渦の発生状況を示した模式図、空調用送風機羽根車の動作状況を示した模式図である。
【0003】
図5に於いて、円筒状のハブ4に、複数枚の翼を設けてなるプロペラファン1において、翼枚数が2枚からなる主翼2を設け、主翼の外周側弦長がハブ側弦長より長く、主翼2の間に翼枚数が全体として2枚からなる略扇状の補助翼3を設けている。主翼2の前縁5を半径方向に対して回転方向に前傾した直線または螺旋曲線とし、前記主翼の間に補助翼3を設け、補助翼3の前縁を半径方向の直線とし、前縁から空気が流入し、後縁から流出する。7がチップ部である。また、図6において、補助翼3の半径方向長さL2が主翼の半径方向長さL1より短く、且つ、補助翼の羽根高さH2が主翼の羽根高さH1より低く構成した空調用送風機羽根車を提供するものである。また、図7のように、翼端渦Dは、主翼2の前縁5の外周の角から、発生して主翼2上を移動して、主翼2の途中から剥離する。
【0004】
この羽根車1を、図8のように適当なケ−シング9に収め、モ−タ8により回転させる事で空力仕事をさせるものである。
【0005】
そして、この構成によって、主翼2の枚数が2枚であるので、主に空力性能に寄与する翼面積の投入量が適正であるので、流体摩擦が少なく、ファン効率が高い。また、2枚の主翼2のみでは、羽根車の回転騒音が乱流騒音より非常に高く、とても耳障りである。翼枚数zと回転数Nrpmとすると、主翼2の間に設けられた補助翼3も空力仕事の寄与するので、全体として、翼枚数は4枚と言え、それぞれに空力仕事をするので、空力仕事が分散させるので、翼1枚当たりの翼面上の圧力変動のレベルが小さくなり、回転騒音Nz音
のレベルは、乱流騒音のレベルより低く、聴感も良好である。補助翼3の半径方向長さL2
が主翼の半径方向長さL1より短く、且つ、補助翼の羽根高さH2が主翼の羽根高さH1より低いので、主翼から発生する翼端渦に補助翼が、干渉することがなく、羽根車としての騒音も低くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4492060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術の軸流ファンには、次のような課題がある。従来技術の軸流ファンの主翼と補助翼の形状が異なる。特に前縁形状は回転方向に対して高性能に有利な螺旋形状を有する主翼と、直線形状を有する補助翼と大きく異なる。このような各々異なる翼で形成される流れ場は、流れの乱れが大きくなり、風量性能の低下を招く。
【0008】
また、回転音Nz音のレベルは低減するが、一方で流れが大きく乱れることによる乱流騒音が増大して、オバーオールでの騒音レベルは増大することがある。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、回転音Nz音を低減すると同時に、オバーオールの騒音を低減するとともに送風性能を向上する斜流または軸受ファンおよびこれを有する室外ユニットを搭載した空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、回転駆動する円筒状のハブに、複数枚の翼を設けてなるプロペラファンにおいて、主翼を設け、前記主翼は外周側弦長がハブ側弦長より長く、前記主翼の前縁を半径方向に対して回転方向に前傾した螺旋曲線とし、前記主翼の間に補助翼を設け、前記補助翼は外周側弦長がハブ側弦長より長く、前記補助翼の前縁を回転方向に前傾した螺旋曲線とし、前記補助翼の半径方向長さが前記主翼の半径方向長さより短く、且つ、前記補助翼の羽根高さが前記主翼の羽根高さより低くする。
【0011】
補助翼の形状を主翼から切り抜いた形状、すなわち同じプロポーションの羽根車とする。
羽根設計の考え方として、偶数個の同じ形状の翼を設計して、その半数の翼を同じ補助翼形状として抜き取る。主翼と補助翼が、同じ個数となる。また、主翼を軸中心に回転コピーすると、補助翼を完全包含する位置がある。すなわち、補助翼は、主翼の回転ピッチ角の中間に位置する。
【0012】
前記補助翼の前縁直径が、前記補助翼の後縁直径より長くなることを特徴とする羽根車とする。
【0013】
主翼を2枚、補助翼を2枚から構成されることを特徴とする羽根車とする。
【発明の効果】
【0014】
円筒状のハブに、複数枚の翼を設けてなるプロペラファンにおいて、補助翼の半径方向長さが主翼の半径方向長さより短く、且つ、補助翼の羽根高さが主翼の羽根高さより低く構成することによって、主翼によって、主に空力性能が確保されて、流体摩擦が少なく、ファン効率が高い。また、主翼のみでは、羽根車の回転騒音が乱流騒音より高く、非常に耳障りである。主翼枚数zと回転数Nrpmとすると、主翼の間に設けられた補助翼も空力仕事に寄与するので、全体として、翼枚数は2*z枚と言え、それぞれに空力仕事をするので、空力仕事が分散させるので、翼1枚当たりの翼面上の圧力変動のレベルが小さくなり、回転騒音Nz音のレベルは、乱流騒音のレベルより低く、聴感も良好となる。
【0015】
補助翼の半径方向長さが主翼の半径方向長さより短く、且つ、補助翼の羽根高さが主翼の羽根高さより低いので、主翼から発生する翼端渦に補助翼が、干渉することがなく、羽根車としての騒音も低くできる。
【0016】
主翼、補助翼ともに、前縁を回転方向の螺旋形状にすることにより、主翼間の流れ場に障害を与えることなく、円滑な流れ場を形成することができる。すなわち、両翼の前縁は、回転方向の螺旋形状であるが故に、類似の流れ場が形成されて送風性能が悪化することは無い。
【0017】
補助翼の形状を主翼から切り抜いた形状、すなわち同じプロポーションにすることにより、主翼間の流れ場に障害を与えることなく、円滑な流れ場を形成することができる。類似の流れ場が形成されて送風性能が悪化することは無く、むしろ、最大風量性能は、翼枚数が多いために向上することになる。
【0018】
前記補助翼の前縁直径が、前記補助翼の後縁直径より長くなることにより、徐々に径が変化するチップ部から放出される乱れた流れが不均一となり、Nz音の特異周波数が顕著にならなくなる。
【0019】
これらの特性は、2枚の主翼と2枚の補助翼で構成されている羽根車に対して特に顕著な特性が見られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1のファンを搭載した室外機断面図
【図2】実施形態1のファンの斜視図
【図3】実施形態1のファンの正面図
【図4】実施形態1のファンの子午図
【図5】従来のファンの平面図
【図6】従来のファンの子午図
【図7】従来のファンの翼端渦模式図
【図8】従来のファンの動作状況の模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の発明は、回転駆動する円筒状のハブに、複数枚の翼を設けてなるプロペラファンにおいて、主翼を設け、前記主翼は外周側弦長がハブ側弦長より長く、前記主翼の前縁を半径方向に対して回転方向に前傾した螺旋曲線とし、前記主翼の間に補助翼を設け、前記補助翼は外周側弦長がハブ側弦長より長く、前記補助翼の前縁を回転方向に前傾した螺旋曲線とし、前記補助翼の半径方向長さが前記主翼の半径方向長さより短く、且つ、前記補助翼の羽根高さが前記主翼の羽根高さより低くする。
【0022】
第2の発明は、前記補助翼の形状を主翼から切り抜いた形状、すなわち同じプロポーションの羽根車とする。
【0023】
羽根設計の考え方として、偶数個の同じ形状の翼を設計して、その半数の翼を同じ補助翼形状として抜き取る。主翼と補助翼が、同じ個数となる。また、主翼の軸を中心に回転コピーすると、補助翼を完全包含する位置がある。すなわち、主翼の回転ピッチ角の中間に位置する。
【0024】
第3の発明は、補助翼の前縁直径が、前記補助翼の後縁直径より長くなることを特徴とする羽根車とする。
【0025】
第4の発明は、主翼を2枚、補助翼を2枚から構成されることを特徴とする羽根車とする。
【0026】
上記の形態の場合、主翼枚数zと回転数Nrpmとすると、主翼の間に設けられた補助翼も空力仕事に寄与するので、全体として、翼枚数は2*z枚と言え、それぞれに空力仕事をするので、空力仕事が分散させるので、翼1枚当たりの翼面上の圧力変動のレベルが小さくなり、回転騒音Nz音のレベルは、乱流騒音のレベルより低く、聴感も良好である。
【0027】
補助翼の半径方向長さが主翼の半径方向長さより短く、且つ、補助翼の羽根高さが主翼の羽根高さより低いので、主翼から発生する翼端渦に補助翼が、干渉することがなく、羽根車としての騒音も低くできる。
【0028】
主翼、補助翼ともに、前縁を回転方向の螺旋形状にすることにより、主翼間の流れ場に障害を与えることなく、円滑な流れ場を形成することができる。すなわち、両翼の前縁は、回転方向の螺旋形状であるが故に、類似の流れ場が形成されて送風性能が悪化することは無い。
【0029】
補助翼の形状を主翼から切り抜いた形状、すなわち同じプロポーションにすることにより、主翼間の流れ場に障害を与えることなく、円滑な流れ場を形成することができる。類似の流れ場が形成されて送風性能が悪化することは無く、むしろ、最大風量性能は、翼枚数が多いために向上することになる。
【0030】
前記補助翼の前縁直径が、前記補助翼の後縁直径より長くなることにより、徐々に径が変化するチップ部から放出される乱れた流れが不均一となり、Nz音の特異周波数が顕著にならなくなる。これらの特性は、2枚の主翼と2枚の補助翼で構成されている羽根車に対して特に顕著な特性が見られる。
【0031】
ある実施形態において、前記斜流または軸流ファンは、室外ユニットに備えられ、この室外ユニットは空気調和機に搭載される。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0033】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態におけるファンを備えた空気調和機の室外ユニットの断面図であり、図2は同室外ユニットに搭載されている斜流ファンの斜視図である。図3、図4は、同斜流ファンの正面図、側面図である。
【0034】
図1に示すように、空気調和機の室外ユニットの本体10は、吸込口11と、熱交換器12と、ファン1と、ファン1を駆動させるファンモータ8と、ファン1を取り囲むオリフィス9と、吹出グリル13と、空気調和機に必要な圧縮機14と、それらを分離するための仕切り板15とから構成されている。ファン1は、羽根(ブレードとも称す)2、とハブ4とで構成されている。
【0035】
ファンモータ8を駆動することにより、ファン1の回転によって誘引される空気は、まず、吸い込み口11を経由して、熱交換器12を通過する。この熱交換器12で、空気に熱の授受が行われて、ファン1に流れ込む。ファン1で増速および昇圧され、オリフィス9の近傍で最大風速、最大圧力となる。そして、吹出グリル13を通過して本体10の外部に放出される。矢印は、概略の空気の流れである。
【0036】
図2、図3、図4に示すように、2は主翼で、3は補助翼である。主翼2の外周側の弦長2−OUT−COを、主翼2の内周側の弦長2−IN−COより長くする。
【0037】
すなわち、2−OUT−CO > 2―IN―CO
とする。同様に、補助翼3の外周側の弦長3−OUT−COを、補助翼3の内周側の弦長3−IN−COより長くする。
【0038】
すなわち、3−OUT−CO > 3―IN―CO
とする。
【0039】
主翼の前縁を5−2L、補助翼の前縁を5−3Lとすると、いずれも、半径方向に対して回転方向に前傾した螺旋曲線となる。主翼の半径方向長さを2−Rとして、補助翼の半
径方向長さを3−RMとすると、半径方向長2−Rは、半径方向長3−RMより大きくなる。
【0040】
すなわち、2−R>3−RM
となる。
【0041】
主翼の羽根高さを2−hとして、補助翼の羽根高さを3−hとすると、羽根高さ2−hは、羽根高さ3−hより大きくなる。
【0042】
すなわち、2−h>3−h
となる。
【0043】
(実施の形態2)
基本的な本体構成、空気の流れについては、実施の形態1と同様のため、説明を省略する。
【0044】
本実施の形態を、図3、4を用いて説明する。図3の一点鎖線は、2枚の主翼を軸中心に90°回転移動させたものである。補助翼の形状は、仮想の主翼(一点鎖線で表示)から切り抜いた形状であり、すなわち同じプロポーションの羽根形状となる。図4は、羽根車のメリディアン(子午面)形状、すなわち回転奇跡面を示す。主翼2は、補助翼3を包含していることが分かる。
【0045】
羽根設計の考え方として、偶数個の同じ形状の翼を設計して、その半数の翼を同じ補助翼形状として抜き取る。主翼と補助翼が、同じ個数となる。また、主翼の軸を中心に回転コピーすると、補助翼を完全包含する位置がある。すなわち、主翼の回転ピッチ角の中間に位置することになる。
【0046】
(実施の形態3)
基本的な本体構成、空気の流れについては、実施の形態1と同様のため、説明を省略する。
【0047】
本実施の形態を、図3、4を用いて説明する。補助翼の前縁半径を3−RL、後縁半径3−RT、平均半径3−RMとすると、
3−RL>3−RM>3−RT
となる。すなわち、補助翼の前縁直径が、前記補助翼の後縁直径より長くなり、徐々に直径が変化している。
【0048】
(実施の形態4)
本実施の形態は、主翼を2枚、補助翼を2枚から構成されることを特徴とする羽根車であり、これまでの実施の形態1から3の説明に含まれている。
【0049】
送風性能を向上させるために、主翼の2枚のみで構成されていることが特に有利な条件である時に、課題となる騒音を緩和させるため、補助翼を2枚配置させるものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、騒音を低減するとともに送風性能を向上する斜流または軸受ファンおよびこれを有する室外ユニットが搭載された空気調和機を提供することができる。特に、送風性能が著しく優れているにもかかわらず、騒音が大きい場合、あるいはNZ音が大きく実聴感が悪い場合に有効である。すなわち、空気調和機の室外ユニットにおいて、送風性能を劣化させることなく、騒音(NZ音)を提言させる場合に効果がより顕著に得られ
る。
【符号の説明】
【0051】
1 ファン
2 主翼
3 補助翼
4 ハブ
5 前縁
6 後縁
7 チップ部
8 モータ
9 ケーシング(オリフィス)
10 室外ユニットの本体
11 吸込口
12 熱交換器
13 吹出グリル
14 圧縮機
15 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のハブに、複数枚の翼を設けてなるプロペラファンにおいて、主翼を設け、前記主翼は外周側弦長がハブ側弦長より長く、前記主翼の前縁を半径方向に対して回転方向に前傾した螺旋曲線とし、前記主翼の間に補助翼を設け、前記補助翼は外周側弦長がハブ側弦長より長く、前記補助翼の前縁を回転方向に前傾した螺旋曲線とし、前記補助翼の半径方向長さが前記主翼の半径方向長さより短く、且つ、前記補助翼の羽根高さが前記主翼の羽根高さより低くしたことを特徴とする送風機羽根車。
【請求項2】
前記補助翼の形状を、前記主翼から切り抜いた形状にすることを特徴とする送風機羽根車。
【請求項3】
前記補助翼の前縁直径が、前記補助翼の後縁直径より長くなることを特徴とする請求項1及び2記載の送風機羽根車。
【請求項4】
前記主翼を2枚、補助翼を2枚とすることを特徴とする請求項1から3記載の送風機羽根車。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−83158(P2013−83158A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221608(P2011−221608)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】