説明

軽油代替燃料の製造方法とその装置

【課題】
粗製グリセリンの分離回収量が毎回変化する廃食油や廃油脂を出発原料として使用する場合でも、貴重な粗製メチルエステルを確実に残して、その粗製グリセリンだけを分離回収させる。
【解決手段】
反応タンク(A)から分離タンク(B)に向かって垂下する分離路(P)の中途高さ位置へ自動開閉弁(32)を介挿設置すると共に、これよりも下段位置へエステル交換反応直後に分離する粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面検知センサー(S)を臨ませて、エステル交換反応直後の静置中分離路(P)の閉鎖状態にある自動開閉弁(32)を、その静置時間経過後に初めて開放させ、その分離路(P)を流下中にある上下2層の界面を検知するや否や、その界面検知センサー(S)からの検知出力信号を受けた上記自動開閉弁(32)が、その分離路(P)を閉鎖するように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新鮮な食用油やその使用済みの廃食油、廃油脂を原料として、ディーゼル燃料に利用できる高級脂肪酸メチルエステルを効率良く生成する軽油代替燃料の製造方法と、そのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種、軽油代替燃料の製造方法や製造装置としては、特開平10−182518号や特開2003−306685号、特開2004−27170号、特開2004−67937号などが提案されている。
【0003】
これらのうち、特に特開2003−306685号発明はエステル交換反応後比重差によって分離する2層の界面を問題視し、その上下2層の液体が混ざり合うことの防止を目的としている点で、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【特許文献1】特開平10−182518号公報
【特許文献2】特開2003−306685号公報
【特許文献3】特開2004−27170号公報
【特許文献4】特開2004−67937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開2003−306685号発明の場合、その特許請求の範囲・請求項2に次のとおり記載されている。
【0005】
−記−
第1、第2又は第3のタンク(Th1)(Tt1)(Ts1)は、それぞれの下方に連結配管(Cr1)(Cr2)(Cr3)を介して第1、第2又は第3の回収タンク(Th2)(Tt2)(Ts2)とそれぞれ連結され、
連結配管(Cr1)(Cr2)(Cr3)は、開状態にて内容物の移動を妨げず閉状態にて内容物の移動を遮断する開閉手段(B1a)(B2a)(B3a)とを備え、
それぞれの連結配管(Cr1)(Cr2)(Cr3)における開閉手段(B1a)(B2a)(B3a)の位置より下方側の容積(D1)(D2)(D3)とこれに連結される回収タンク(Th2)(Tt2)(Ts2)の容積との和は、第1、第2又は第3の分離工程(V1)(V2)(V3)において比重差によって下方に分離される液体の体積より大きく、
前記第1、第2又は第3の分離工程(V1)(V2)(V3)は、連結配管(Cr1)(Cr2)(Cr3)の開閉手段(B1a)(B2a)(B3a)が閉状態にて第1、第2又は第3のタンク(Th1)(Tt1)(Ts1)において内容物を混合した後、連結配管(Cr1)(Cr2)(Cr3)の開閉手段(B1a)(B2a)(B3a)を開状態とし、混合された内容物が第1、第2又は第3の回収タンク(Th2)(Tt2)(Ts2)にも満たされた状態で静置し、混合された内容物が比重差により上下層に分離した後、連結配管(Cr1)(Cr2)(Cr3)の開閉手段(B1a)(B2a)(B3a)を閉状態とし、
その後、第1、第2又は第3のタンク(Th1)(Tt1)(Ts1)から上層の液体を排出し、次いで第1、第2又は第3の回収タンク(Th2)(Tt2)(Ts2)から下層の液体を排出することを特徴とする請求項1記載の軽油代替燃料の製造方法。
【0006】
つまり、上記特許請求の範囲・請求項2と発明の詳細な説明との照合から明白であるように、第1〜3連結配管(Cr1)(Cr2)(Cr3)における分離バルブ(B1a)(B2a)(B3a)の位置より下方側の容積(D1)(D2)(D3)と第1〜3回収タンク(Th2)(Tt2)(Ts2)の容積との和が、各々比重差に基いて下方へ分離される液体の体積よりも大きく設定されており、しかも上記分離バルブ(B1a)(B2a)(B3a)を開放したままとし、各分離工程(V1)(V2)(V3)での混合された内容物が、第1〜3回収タンク(Th2)(Tt2)(Ts2)にも満たされた状態のもとで静置することにより、その比重差に基く分離を行なわせるようになっている。内容物の比重差に基く分離を行なわせる静置中、上記分離バルブ(B1a)(B2a)(B3a)が開放状態に保たれているのである。
【0007】
ところが、今エステル交換反応を行なわせる第1分離工程(V1)について言えば、上記公知発明の構成では出発原料の廃食油とアルカリ触媒並びにメタノールとの混合液が静置中、その第1タンク(反応タンク)(Th1)と第1回収タンク(グリセリン回収タンク)(Th2)とは連通開放状態にあるため、下方へ分離されるべき液体の粗製グリセリンのみならず、追って製品となる貴重な粗製メチルエステルまでも、そのグリセリン回収タンク(Th2)へ流下・排出されてしまうおそれがある。
【0008】
特に、廃食油や廃油脂を出発原料として使用する場合、これから分離回収されることになる粗製グリセリンの量は一定せず、毎回千変万化であるため、そのグリセリン回収タンク(Th2)としても上記公知発明のように予じめ大容積とし、且つオーバーフローの予防上密閉しなければならず、そうするとグリセリン回収タンク(Th2)の内部へ、貴重な粗製メチルエステルがますます多く流下・排出されてしまいやすくなり、歩留りの低下を余儀なくされるのである。覗き窓からの注意深い観察に基いて、分離バルブ(B1a)を人為的に閉鎖する操作法と大差がない。
【0009】
そして、このような粗製メチルエステルがいたづらに多く排出される事態は、当初のエステル交換反応を行なわせる第1分離工程(V1)のみならず、引き続き粗製メチルエステルを微酸性の中和液により中和反応させる第2分離工程(V2)と、その後メチルエステルを温水により洗浄する第3分離工程(V3)でも起る結果、その全体として折角収集した貴重な出発原料が大きく浪費されることになる。
【0010】
この点、上記公知発明の明細書段落〔0068〕には、「上下2層の界面の高さを検知するレベル計を設けておき、この界面が連結配管(Cr1)(Cr2)(Cr3)における開閉手段(B1a)(B2a)(B3a)の位置より下方側にあることを確認したり、自動的に検出することは実施に応じ可能である。」と記載されているが、その連結配管(Cr1)(Cr2)(Cr3)の開閉手段(B1a)(B2a)(B3a)を開放したままとして、第1〜3タンク(Th1)(Tt1)(Ts1)と連通する第1〜3回収タンク(Th2)(Tt2)(Ts2)の内部にも混合液を満たした状態のもとで静置させる構成である限り、仮りにレベル計を設置したとしても、上記問題を解決することは到底不可能である。
【0011】
殊更、出発原料の廃食油や廃油脂からエステル交換反応を行なわせる第1分離工程(V1)では、上記したとおり分離回収される粗製グリセリンの量が一定しないため、静置中に開閉手段の分離バルブ(B1a)が開放状態にあると、粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面も毎回高低変化し、その上下2層の界面が上記分離バルブ(B1a)よりも下方側で、且つ第1回収タンク(グリセリン回収タンク)(Th2)よりも上方側を占める高さ位置へ、必らず決定されることになるとは限らない。
【0012】
その場合、上記公知発明の構成ではその分離バルブ(B1a)の位置より下方側の容積(D1)と、第1回収タンク(グリセリン回収タンク)(Th2)の容積との和が、下方へ分離される液体(粗製グリセリン)の体積よりも予じめ大きく設定されている関係上、上記2層の界面が第1回収タンク(グリセリン回収タンク)(Th2)の内部へ位置決めされてしまう高さとなることも起り得る。しかも、その第1回収タンク(グリセリン回収タンク)(Th2)は密閉式の槽であるとされているため、レベル計を予じめの一定高さとして設置することもできない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では出発原料の食用油やその廃食油、廃油脂と、アルカリ触媒が溶解されたメタノールとを、反応タンク内での混合液としてエステル交換反応させ、その反応直後の静置時間中比重差に基き、粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの上下2層に分離するエステル交換反応工程と、
【0014】
次いで、上記粗製メチルエステルに微酸性中和液と温水とを混合して中和反応させ、その反応直後の静置時間中比重差に基き、精製メチルエステルと水との上下2層に分離する中和反応工程と、
【0015】
引き続き、上記精製メチルエステルに温水だけを混合することにより洗浄して、その洗浄直後の静置時間中比重差に基き、高級脂肪酸メチルエステルと水との上下2層に分離する洗浄工程とを経由する軽油代替燃料の製造方法において、
【0016】
上記反応タンクから分離タンクに向かって垂下する分離路の中途高さ位置へ、その分離路の自動開閉弁を介挿設置すると共に、これよりも下段位置へ少なくとも上記エステル交換反応直後に分離する粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面を検知し得るセンサーを臨ませて、
【0017】
エステル交換反応直後の静置時間中分離路の閉鎖状態に保たれた上記自動開閉弁を、その静置時間の経過後に開放させて、その分離路の流下中にある粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面を上記検知センサーによって検知するや否や、その界面検知センサーからの検知出力信号を受けた上記自動開閉弁が、その分離路を閉鎖するように定めたことを特徴とする。
【0018】
又、請求項1に従属する請求項2では、分離路の自動開閉弁を空気用圧力スイッチによって開閉作動されるボールバルブとし、
【0019】
界面検知センサーを透過型光電スイッチとして、上記分離路の中途高さ位置へ介挿設置した透明管路を挟む設置状態に臨ませたことを特徴とする。
【0020】
同じく請求項1に従属する請求項3では、界面検知センサーを可視光線より狭い波長域で透過率が変化する赤外線センサー、又はパルス伝播速度と減衰率が変化する超音波流速センサーとして、
【0021】
エステル交換反応直後に分離する粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面のみならず、中和反応直後に分離する精製メチルエステルと水との界面や、洗浄直後に分離する高級脂肪酸メチルエステルと水との界面も検知し得るように定めたことを特徴とする。
【0022】
更に、請求項1に従属する請求項4では、中和反応工程と洗浄工程において使用されるフロート式レベルセンサーを分離タンクに設置して、
【0023】
中和反応直後と洗浄直後との静置時間中分離路の閉鎖状態に保たれた自動開閉弁を、その静置時間の経過後に開放させて、その分離路から流下して分離タンク内に溜まった水の一定レベルを、上記レベルセンサーによって検知するや否や、そのレベルセンサーからの検知出力信号を受けた上記自動開閉弁が、その分離路を閉鎖するように定めたことを特徴とする。
【0024】
他方、請求項5では出発原料の食用油やその廃食油、廃油脂と、アルカリ触媒が溶解されたメタノールとを混合して行なうエステル交換反応工程のみならず、その工程で生成された粗製メチルエステルへ、次に微酸性中和液と温水とを混合して行なう中和反応工程と、その工程で精製されたメチルエステルへ、引き続き温水を混合して行なう洗浄工程にも兼用される反応タンクと、
【0025】
その反応タンクから垂下する分離路を介して連通接続されることにより、上記各工程での副生成物である粗製グリセリンと中和液並びに洗浄水を回収すべく兼用される分離タンクとを備えた1槽式の軽油代替燃料製造装置において、
【0026】
上記各工程の終了直後に副生成物をメチルエステルから比重差により分離させるべき静置時間中には、上記分離路を閉鎖状態に保ち、且つその静置時間経過後には開放状態に切り換えるための自動開閉弁を、その分離路の中途高さ位置へ介挿設置すると共に、
【0027】
上記分離路における自動開閉弁よりも高い上段位置から、高級脂肪酸メチルエステルをその製品タンクへ移し入れるための製品回収バイパス路を分岐状態に接続配管する一方、
【0028】
同じく分離路における上記自動開閉弁よりも低い下段位置へ、その自動開閉弁により開放された分離路の流下中にある上記メチルエステルと副生成物との分離界面検知センサーを臨ませて、
【0029】
その界面検知センサーの検知出力信号により上記自動開閉弁が分離路を閉鎖することとなるように制御して、上記副生成物だけを分離タンクへ回収し得るように設定したことを特徴とする。
【0030】
又、請求項6では出発原料の食用油やその廃食油、廃油脂と、アルカリ触媒が溶解されたメタノールとを混合するための反応タンクと、
【0031】
その反応タンク内でのエステル交換反応工程により生成された粗製メチルエステルへ、次に微酸性中和液と温水とを混合するための別個な中和タンクと、
【0032】
その中和タンク内での中和反応工程により精製されたメチルエステルへ、引き続き温水を混合するための別個な洗浄タンクと、
【0033】
上記反応タンクと中和タンク並びに洗浄タンクから各々対応的に垂下する第1〜3分離路を介して連通接続されることにより、上記各工程での副生成物である粗製グリセリンと中和液並びに洗浄水を回収するための第1〜3分離タンクとを備えた3槽式の軽油代替燃料製造装置において、
【0034】
上記各工程の終了直後に副生成物をメチルエステルから比重差により分離させるべき静置時間中には、上記第1〜3分離路を各々閉鎖状態に保ち、且つその静置時間経過後には開放状態に切り換えるための第1〜3自動開閉弁を、その対応的な第1〜3分離路の中途高さ位置へ各々介挿設置すると共に、
【0035】
上記第1分離路における第1自動開閉弁よりも高い上段位置から、メチルエステルを中和タンクへ移し入れるための第1製品回収バイパス路と、上記第2分離路における第2自動開閉弁よりも高い上段位置から、メチルエステルを洗浄タンクへ移し入れるための第2製品回収バイパス路と、上記第3分離路における第3自動開閉弁よりもやはり高い上段位置から、高級脂肪酸メチルエステルをその製品タンクへ移し入れるための第3製品回収バイパス路とを、各々分岐状態に接続配管する一方、
【0036】
同じく第1〜3分離路における上記第1〜3自動開閉弁よりも低い下段位置へ、その自動開閉弁により各々開放された第1〜3分離路の流下中にある上記メチルエステルと副生成物との第1〜3分離界面検知センサーを各々臨ませて、
【0037】
その第1〜3分離界面検知センサーの検知出力信号により上記第1〜3自動開閉弁が第1〜3分離路を各々閉鎖することとなるように制御して、上記副生成物だけを対応する第1〜3分離タンクへ各々回収し得るように設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
請求項1の構成によれば、エステル交換反応工程とその後の中和反応工程並びに引き続く洗浄工程のうち、その少なくともエステル交換反応直後での静置時間中には、反応タンクから分離タンクに向かって垂下する分離路が、その中途高さ位置の自動開閉弁により閉鎖状態に保たれているため、冒頭に述べた従来技術の特開2003−306685号発明と異なり、自動開閉弁よりも上方位置の反応タンク側において、粗製メチルエステルと粗製グリセリンとが比重差に基き、上側の粗製メチルエステル層と下側の粗製グリセリン層に自づと分離されることとなり、静置時間中に粗製メチルエステルが分離タンクへ流下・排出されてしまうおそれはない。
【0039】
そして、上記静置時間の経過後に初めて分離路の自動開閉弁が開放され、その開放した分離路をゆっくりと流下中にある粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面が、上記自動開閉弁よりも下段位置へ臨む分離界面検知センサーによって、自づと確実に位置検知されることとなり、その検知出力信号を受けた上記自動開閉弁が、分離路を閉鎖するようになっている。
【0040】
その結果、粗製グリセリンの分離回収量が毎回千変万化する廃食油や廃油脂を出発原料として使用する場合でも、追って製品となる貴重な粗製メチルエステルを、上記分離路の自動開閉弁よりも上側へ確実に残して、粗製グリセリンだけを分離タンクへ流下・排出させることができ、歩留りが著しく向上するのである。
【0041】
又、上記粗製グリセリンの分離回収量が一定せず、これと粗製メチルエステルとの分離界面が毎回高低変化するも、そのための分離界面センサーを常に一定の高さ位置として、上記分離路における自動開閉弁の下段位置へ取り付けることができ、常に安定・確実な検知作用を営ませ得る効果もある。
【0042】
このことは、エステル交換反応工程に引き続く中和反応工程での精製メチルエステルや、その後の洗浄工程における高級脂肪酸メチルエステルについても、全く同様に言えることであり、これらのメチルエステルから比重差により分離された排水だけを、分離タンクへ回収することができ、冒頭に述べた従来技術の課題が悉く解決される。
【0043】
特に、請求項2の構成を採用するならば、粘度や密度が顕著に相違する粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面を、透過型光電スイッチから成る界面検知センサーによって確実に位置検知することができ、これからの検知出力信号を受けた分離路の自動開閉弁としても、空気用圧力スイッチにより作動されるボールバルブとして、その分離路を瞬時に閉鎖させ得るのであり、上記歩留りがますます向上する。
【0044】
又、請求項3の構成を採用するならば、上記分離界面検知センサーを赤外線センサー又は超音波流速センサーとすることにより、エステル交換反応直後に分離する粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面は勿論のこと、中和反応直後に分離する精製メチルエステルと排水との界面や、洗浄直後に分離する高級脂肪酸メチルエステルと排水との界面も、その同じ共通する分離界面検知センサーによって確実に検知することができ、利便性の向上に役立つ。
【0045】
更に、請求項4の構成を採用するならば、上記分離界面検知センサーに代るフロート式レベルセンサーを分離タンクへ設置することにより、中和反応工程と洗浄工程での分離タンク内に溜まった排水の一定レベルを、そのフロート式レベルセンサーにより検知して、これに基き分離路の自動開閉弁を閉鎖制御することにより、やはり排水だけを分離タンクへ回収し、貴重なメチルエステルを確実に残溜させることができる。
【0046】
上記製造方法の実施に供する軽油代替燃料製造装置として、請求項5に記載の1槽式を採用するならば、その運転採算上必要となる量の廃食油や廃油脂を、狭い地域からでも定期的に安定良く収集することができ、そのため市町村単位の規模において容易に実施し得るのであり、普及しやすくなる。
【0047】
他方、請求項6の構成を備えた3槽式の軽油代替燃料製造装置によれば、反応タンクと中和タンク並びに洗浄タンクが、その対応的なエステル交換反応工程と中和反応工程並びに洗浄工程に供されるそれとして、互いに別個独立しているため、順次連続して効率良く多量の高級脂肪酸メチルエステルを生成することができ、しかも前工程での残渣物がたとえタンクへ付着したとしても、これが後工程のタンクへ移し入れられてしまい、混ざり合うことを徐々に減少させ得るのであり、高純度な製品の確保に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、図面に基いて本発明を詳述すると、図1〜12はその本発明の第1実施形態として、1槽式(バッチ式)の軽油代替燃料製造装置を示しており、これでは反応タンク(A)が新鮮な食用油やその使用済みの廃食油、廃油脂から出発する原料と、アルカリ触媒を溶解したメタノールとの混合によるエステル交換反応工程のみならず、引き続く微酸性中和液の混合による中和反応工程並びに最終的な温水での洗浄工程にも兼用され、又分離タンク(B)もこれらの各工程における副生成物である粗製グリセリンや中和液、洗浄水を回収するために悉く兼用されるようになっている。
【0049】
即ち、このような製造装置の全体構成が明らかな図1〜6において、(F)は形鋼材から一定な大きさ(例えば幅:約1000mm×奥行:約1000mm×高さ:約1700mm)の直方体に枠組み一体化された剛性な据付フレームであり、その水平な下枠(1)の4隅部には据付高さや水平度の調整可能な接地脚座(2)又は/及び据付場所を移動できるキャスター(3)が取り付けられている。
【0050】
(4)は上記据付フレーム(F)におけるフロントカバープレート(5)の約上半部に嵌め付け設置された制御盤であり、その制御盤(4)上のシーケンス制御回路に基いて、後述する各種自動開閉弁の開閉やシーズヒーターの温度調整、各工程での作用時間、その他の全工程を電気的に自動制御できるようになっている。
【0051】
尚、その制御用の主回路を図7に示しているが、操作パネル上の自動運転スイッチボタンやその停止スイッチボタン、後述するメタノールの攪拌機作動用スイッチボタン、洗浄用スイッチボタン、製品移送用渦巻ポンプの作動選択スイッチボタンなどは図示省略してある。
【0052】
先に一言した反応タンク(A)は、ステンレス鋼板から一定の容量(例えば約76リットル)を有する密閉漏斗型に造形されており、上記制御盤(4)における背後の約左半部を占める位置関係として、据付フレーム(F)の上段仕切り桟(6)に固定支持されている。(7)は反応タンク(A)におけるフラットな頂面の中央部へ、架台(8)を介して据え付け搭載された攪拌機であり、そのギヤードモーター(9)によって回転駆動される攪拌羽根(10)が、反応タンク(A)の内部に臨んでいることは言うまでもない。
【0053】
(11)は上記反応タンク(A)の内部へ上下2段の並列設置状態に差し込まれた加熱用シーズヒーターであり、その複数が何れも平面視のリング型として、上記攪拌機(7)の攪拌羽根(10)と干渉しないようになっている。(12)は同じく反応タンク(A)の胴面に差し込み設置された加熱温度センサー(測温抵抗体)であって、両シーズヒーター(11)の上下相互間を指向しており、これが予じめ設定された加熱温度を検知するや否や、その検知出力信号を受けた後述のメタノール供給用定量ポンプが作動することになる。
【0054】
又、(13)は上記反応タンク(A)における頂面の周辺部から一旦右方向へ導出された上、引き続き前方へ屈曲配管された温水供給路であり、その約前半部の途中には温水流量計(14)がフランジ接合されている。(15)は上記据付フレーム(F)の角隅部に対応位置する温水供給路(13)の上向き温水供給口であり、湯沸かし機やボイラーなどの温水供給源(図示省略)と接続使用される。(16)は同じく温水供給路(13)における反応タンク(A)内への温水流入口であるが、その温水流入口(16)の付近には温水用の空気圧式自動開閉弁(ボールバルブ)(17)も介挿設置されており、これによって温水供給路(13)をすばやく開閉するようになっている。
【0055】
(18)は上記温水供給路(13)の温水供給口(15)よりも下方位置において、据付フレーム(F)の対応的な角隅部に固定支持された原料供給用ギヤーポンプであり、その吐出側が上記制御盤(4)の背後に沿い上方へ延長配管された原料供給路(19)を経て、上記温水供給路(13)における空気圧式自動開閉弁(17)と温水流入口(16)との隣り合う相互間へ連通接続されている。新鮮な食用油やその廃食油、廃油脂から成る出発原料を、これにふさわしいギヤーポンプ(18)の原料供給口(20)から吸い込み、その原料供給路(19)を通じて上記反応タンク(A)の内部へ圧送できるようになっているのである。
【0056】
更に、(21)は上記反応タンク(A)における頂面の周辺部に差し込み設置されたリード式液面スイッチであり、これが反応タンク(A)内の予じめ設定された液面を検知するや否や、その検知出力信号を受けた上記シーズヒーター(11)と攪拌機(7)が作動するようになっている。(22)はその液面スイッチ(21)との並列状態として、やはり反応タンク(A)の頂面に差し込み設置されたオーバーフロー用のレベルセンサーであり、これが反応タンク(A)のオーバーフロー状態を検知した時には、その製造装置の自動運転を非常停止すべく制御されることになる。(23)は同じく頂面の点検用開閉蓋を示している。
【0057】
次に、上記分離タンク(B)はやはりステンレス鋼板から、反応タンク(A)よりも少ない一定の容量(例えば約20リットル)を有する非密閉漏斗型に造形されており、上記据付フレーム(F)の下段仕切り桟(24)へ固定支持されることによって、反応タンク(A)の下方に対応位置している。(L)はその反応タンク(A)と分離タンク(B)との偏心間隔距離を示している。
【0058】
(25)はこのような分離タンク(B)におけるフラットな頂面の周辺部に差し込み設置されたオーバーフロー用のレベルセンサーであり、これが分離タンク(B)のオーバーフロー状態を検知した時にも、製造装置の自動運転を非常停止すべく制御されるようになっている。
【0059】
(26)は上記オーバーフロー用レベルセンサー(25)との並列状態として、図8のようにやはり分離タンク(B)の頂面へ差し込み設置された中和液用と洗浄水用のフロート式レベルセンサーであり、これはエステル交換反応工程において使用されず、その後の中和反応工程と洗浄工程において使用され、上記分離タンク(B)内に溜まった中和液と洗浄水の液面レベルを各々検知し、そのレベルセンサー(26)からの検知出力信号を受けた後述の分離用空気圧式自動開閉弁が、分離路をすばやく閉鎖するようになっている。
【0060】
尚、このようなレベルセンサー(25)(26)の設置されていない頂面の約前半部は、図外の点検用開閉蓋によって開閉することができ、その意味から分離タンク(B)を非密閉式と上記した次第である。
【0061】
他方、(27)は分離タンク(B)の底面から側面視の倒立T字型として導出配管された回収液排出路であり、その垂直な中途高さ位置には回収液用の空気圧式自動開閉弁(ボールバルブ)(28)が介挿設置されている。これによって、回収液排出路(27)の開閉を行なう。
【0062】
(29)は同じく回収液排出路(27)の下端交叉部に介挿設置された空気圧式の自動方向切換弁(ボールバルブ)であり、これによって回収液排出路(27)の後方に向かう粗製グリセリン排出口(30)と、前方に向かう中和液や洗浄水の排出口(31)とを切り換え使用するようになっている。
【0063】
又、(P)は上記反応タンク(A)の底面から分離タンク(B)の内部へ連通配管状態に垂下された分離路であって、その中途高さ位置には分離用の空気圧式自動開閉弁(ボールバルブ)(32)が介挿設置されており、これによって分離路(P)の開閉を行なう。(S)はその自動開閉弁(32)よりも下段位置において、上記分離路(P)に臨まされた分離界面検知センサーであり、エステル交換反応工程に供される混合液がその反応直後の静置中、比重差によって分離する上下2層の界面を位置検知し、その界面検知センサー(S)からの検知出力信号を受けた上記空気圧式自動開閉弁(32)が、分離路(P)をすばやく閉鎖するようになっている。
【0064】
この点、本発明の第1実施形態では上記分離路(P)の約下半部を、特にアクリル樹脂などから成る透明管路(33)としてフランジ接合すると共に、その透明管路(33)の部位へ上記界面検知センサー(S)としての光電スイッチ(34)を臨ませている。
【0065】
つまり、図9〜11に抽出拡大して示す如く、上記据付フレーム(F)の下段仕切り桟(24)から一体的に起立する支持ステー(35)の上端部には、光電スイッチ用取付金具(M)の水平なネジ脚(六角ボルト)(36)が複数の固定ナット(37)を介して締結一体化されている。そのネジ脚(36)が上記支持ステー(35)から透明管路(33)まで張り出す長さについては、これを進退調整することができる。
【0066】
茲に、光電スイッチ用取付金具(M)は上記分離路(P)の透明管路(33)を挟む平面視のコ字型として、その向かい合う一対の板片(38)に開口分布された複数づつの差込み孔(39)へ、透過型光電スイッチ(34)のレーザー投光器(34a)とレーザー受光器(34b)とが、各々差し込み状態に取り付けられており、その取付高さを調整することもできるようになっている。
【0067】
(40)は適当な長さのシールド線(41)を介して、上記レーザー投光器(34a)とレーザー受光器(34b)に接続配線されたビームセンサー(アンプ)であるが、このようなアンプ分離型に代るアンプ内蔵型の光電スイッチ(34)を採用しても勿論良い。尚、(42)は上記透明管路(33)のフランジ接合部に介挿設置された液密用シートパッキング、(43)は同じくフランジ接合部の着脱可能なネジ締結具である。
【0068】
但し、上記分離路(P)に臨む界面検知センサー(S)としては、エステル交換反応工程での混合液から比重差により分離される粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの粘度や密度が顕著に相違する関係上、その上下2層の界面を可視光線の減衰度又は遮光度によって検知する上記光電スイッチ(34)のみならず、可視光線より狭い波長域で透過率が変化する所謂赤外線センサー(図示省略)を用いて、上記した上下2層の分離界面を検知しても勿論さしつかえない。
【0069】
更に、上記光電スイッチ(34)に代る界面検知センサー(S)として、図12に示すような超音波流速センサー(44)を採用することも可能である。つまり、上記分離路(P)における空気圧式自動開閉弁(32)の下段位置へ、超音波のパルス発信器(44a)とパルス受信器(44b)とを、向かい合う設置状態に埋め込み一体化させて、その超音波のパルス伝播速度と減衰度が変化することに基き、上記粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面を検知するのである。
【0070】
このような界面検知センサー(S)としての赤外線センサーや超音波流速センサー(44)は、むしろ中和反応工程での比重差により分離される粗製メチルエステルと微酸性中和液との界面検知や、引き続く洗浄工程での比重差により分離される精製メチルエステルと洗浄水(温水)との界面検知に各々使用して、特に有効となる。
【0071】
蓋し、メチルエステルと中和液や洗浄水との相互間では、可視光線の波長域で透過率に顕著な差を生じないが、分子構造や粘度、密度に明らかな相違を有するため、その上下2層の分離界面を上記光電スイッチ(34)に代る赤外線センサーや超音波流速センサー(44)によって、確実に検知することができるからであり、その限りでは上記分離路(P)における空気圧式自動開閉弁(32)の電気的な制御信号を出力する自動粘度計などの採用も考えられる。
【0072】
更に、図2〜6の符号(C)は水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの各種アルカリ触媒と、メタノールとの混合液を収容するメタノールタンクであって、これはステンレス鋼板から一定な容量(例えば約30リットル)の密閉角筒型に造形されており、上記分離タンク(B)の右隣り位置へ並列する如く、据付フレーム(F)の下枠(1)に固定支持されている。
【0073】
そして、メタノールタンク(C)におけるフラットな頂面の中央部にも攪拌機(45)が据え付け搭載されており、そのギヤードモーター(46)によって回転駆動される攪拌羽根(47)が、上記メタノールとアルカリ触媒との混合液を攪拌するようになっている。
【0074】
(48)は上記メタノールタンク(C)における頂面の周辺部から横向きに導出されたメタノール投入口筒であり、ここからメタノールとアルカリ触媒が投入されることになる。(49)は同じくメタノールタンク(C)における頂面の周辺部に差し込み垂下されたレベルセンサー(電極棒)であり、これよってメタノールタンク(C)の液面レベルが過不足なく検知された時に初めて、製造装置が自動運転できる状態となる。
【0075】
(50)は上記メタノールタンク(C)の底面中央部から横向きに導出配管された排液路であり、その排出口(51)には手動開閉弁(ボールバルブ)(52)が設置されている。(53)はメタノールタンク(C)の外部から監視できるレベル計である。
【0076】
他方、(54)はメタノールタンク(C)における胴面の下端部と、上記反応タンク(A)における頂面の周辺部とを連通状態に接続配管する比較的長いメタノール供給路であり、その中途高さ位置へフランジ接合されたメタノール供給用定量ポンプ(55)によって、上記アルカリ触媒とメタノールとの混合液をメタノールタンク(C)から、反応タンク(A)の内部へ圧送できるようになっている。(56)はその反応タンク(A)に対するメタノール流入口(57)の付近において、上記メタノール供給路(54)の上段位置にフランジ接合された背圧弁である。
【0077】
又、(58)(59)は一定の容量(例えば約3リットル)を有する第1、2中和液貯溜容器の前後一対であって、何れも合成樹脂から成り、その第1中和液貯溜容器(58)の内部には希塩酸が、第2中和液貯溜容器(59)の内部には硫酸亜鉛が各々貯溜されている。
【0078】
そして、このような第1、2中和液貯溜容器(58)(59)は上記原料供給用ギヤーポンプ(18)と対応位置する据付フレーム(F)の角隅部において、その据付フレーム(F)の下段仕切り桟(24)上へ安定良く並列設置されており、各々フレキシブルな第1、2中和液供給ホース(60)(61)を介して、上記反応タンク(A)における頂面の周辺部と連通接続されている。(62)(63)はその反応タンク(A)に対する第1、2中和液供給ホース(60)(61)の中和液流入口を示している。
【0079】
(64)(65)は上記第1、2中和液供給ホース(60)(61)の中途部に各々介在する中和液供給用の第1、2電磁定量ポンプであって、据付フレーム(F)の上段仕切り桟(6)上へ対応的な前後一対として並列設置されており、これによって上記中和液の希塩酸と硫酸亜鉛を、その貯溜容器(58)(59)から各々反応タンク(A)の内部へ圧送できるようになっている。
【0080】
更に、(D)は最終的な軽油代替燃料となる高級脂肪酸メチルエステルを収容する製品タンクであって、やはりステンレス鋼板から一定な容量(例えば約105リットル)の密閉漏斗型に造形されており、上記制御盤(4)の下方位置を占有する如く、その据付フレーム(F)の下枠(1)に据え立て固定されている。
【0081】
その場合、製品タンク(D)の底面は左下がりの傾斜状態にあり、その最下端部から導出配管されたドレン(66)には、手動開閉弁(ボールバルブ)(67)が設置されている。(68)は同じく製品タンク(D)における底面の中途高さ位置から、後向きに導出配管された製品排出路であり、これに介在する製品移送用渦巻ポンプ(69)によって、その製品タンク(D)から製品の高級脂肪酸メチルエステルを吸い出し、不純物の濾過タンク(70)へ移し入れることができるようになっている。
【0082】
尚、渦巻ポ7プ(69)は上記据付フレーム(F)の下枠(1)に固定支持されているが、濾過タンク(70)は本発明に係る製造装置の外部に別途設置されている。(71)は上記製品排出路(68)の排出口に取り付けられた手動開閉弁(ボールバルブ)を示している。
【0083】
他方、製品タンク(D)におけるフラットな頂面の周辺部は、上記反応タンク(A)から分離タンク(B)に向かって垂下する分離路(P)のうち、その空気圧式自動開閉弁(32)よりも高い上段位置から分岐配管された側面視のほぼ倒立L字型に屈曲する製品回収バイパス路(72)を介して、その分離路(P)との連通接続状態にある。
【0084】
しかも、その製品回収バイパス路(72)のほぼ水平な中途部には、製品用の空気圧式自動開閉弁(ボールバルブ)(73)が介挿設置されており、上記分離用の自動開閉弁(32)が分離路(P)を閉鎖した状態のもとで、その製品用の自動開閉弁(73)が製品回収バイパス路(72)を開放した時、上記反応タンク(A)から製品の高級脂肪酸メチルエステルがその製品回収バイパス路(72)を経て、製品タンク(D)の内部へ自づと移し入れ貯溜されることになる。(74)は上記製品タンク(D)における頂面の点検用開閉蓋である。
【0085】
又、(75)は空気用のピストン型圧力スイッチであって、製造装置の周辺部へ別途設置されたコンプレッサー(76)と、図外の圧縮空気供給ホースを介して連通接続されている一方、上記温水供給路(13)の自動開閉弁(17)と回収液排出路(27)の自動方向切換弁(29)、同じく回収液排出路(27)の自動開閉弁(28)、上記分離路(P)の自動開閉弁(32)並びに製品回収バイパス路(72)の自動開閉弁(73)を各々開閉制御する対応的な第1〜5電磁弁(77)(78)(79)(80)(81)と電気的に接続配線されており、これらを各々瞬時に開閉できるようになっている。
【0086】
尚、このような第1〜5電磁弁(77)(78)(79)(80)(81)は予備品も含む合計6個として、上記据付フレーム(F)の上段仕切り桟(6)上へ集中的に並列設置されていると共に、これらに共通する上記圧力スイッチ(75)の1個も、同じく据付フレーム(F)の上段仕切り桟(6)に付属一体化されている。(82)は自動運転中に点灯表示するシグナルタワーである。
【0087】
本発明の第1実施形態に係る軽油代替燃料製造装置は1槽式(バッチ式)として、上記した構成を備えており、その自動運転による軽油代替燃料の製造方法を説明すると、次のとおりである。
【0088】
即ち、先ず新鮮な食用油やその使用済みの廃食油、廃油脂を出発原料として、その約50リットルを図外の貯蔵タンクから上記ギヤーポンプ(18)により、原料供給路(19)を通じて反応タンク(A)の内部へ圧送する。その際、原料供給路(19)との交叉状態に連通している温水供給路(13)の空気圧式自動開閉弁(17)が、その温水供給路(13)を閉鎖していることは言うまでもない。
【0089】
尚、出発原料の食用油としてはなたね油やごま油、大豆油、ひまわり油、とうもろこし油、紅花油、パーム油、ヤシ油などの1種又は2種以上の混合物(ブレンド油)が使用される。
【0090】
他方、メタノールタンク(C)の内部ではメタノールと、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ触媒とが所定比率として、メタノールタンク(C)の攪拌機(45)により約60分間攪拌・混合され、そのアルカリ触媒がメタノールへ溶解された準備状態にある。
【0091】
又、反応タンク(A)から垂下している分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)と、回収液排出路(27)の空気圧式自動開閉弁(28)並びに製品回収バイパス路(72)の空気圧式自動開閉弁(73)は、その悉く閉鎖状態に保たれている。
【0092】
上記出発原料がやがて反応タンク(A)内での予じめ設定されたレベルに到達すると、これが反応タンク(A)のリード式液面スイッチ(21)により検知され、その検知出力信号を受けたシーズヒーター(11)が、出発原料を加熱することになる一方、同じく液面スイッチ(21)の検知出力信号を受けた反応タンク(A)の攪拌機(7)が作動されて、その出発原料を約40分間攪拌することになる。
【0093】
そして、上記出発原料の加熱温度が予じめ設定された約60℃に達すると、これを検知した加熱温度センサー(12)からの出力信号により、メタノール供給用の定量ポンプ(55)が作動されて、上記メタノールタンク(C)内でアルカリ触媒が溶解済みのメタノールを、そのメタノールタンク(C)から反応タンク(A)の内部へ圧送し、茲に出発原料との混合によるエステル交換反応を行なわせる。
【0094】
上記反応タンク(A)の攪拌機(7)により、約40分間の攪拌を行なったエステル交換反応直後では、その生成された粗製メチルエステルに対して、余剰メタノールや余剰アルカリ、ナトリウムセッケン、上記出発原料の残渣物などを含有した粗製グリセリンが未だ混合状態にあるため、上記反応タンク(A)の攪拌機(7)を停止して、約30分間だけ静置させる。
【0095】
その静置中にも、上記分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)は依然として閉鎖状態にあるため、その分離路(P)の自動開閉弁(32)よりも上方位置の反応タンク(A)側において、親油性の粗製メチルエステルと親水性の粗製グリセリンとが比重差に基き、やがて自づと上側の粗製メチルエステル層と下側の粗製グリセリン層に分離することとなる。
【0096】
上記静置時間の約30分が経過するや否や、タイマーによって分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)が、それまでの閉鎖状態から開放状態へ切り換えられ、そうすれば上記粗製グリセリンがその開放された分離路(P)を、分離タンク(B)に向かってゆっくりと流下し始める。
【0097】
その分離路(P)における自動開閉弁(32)よりも低い下段位置には、上記光電スイッチ(34)から成る分離界面検知センサー(S)が臨まされているため、上記分離タンク(B)への流下中にある粗製グリセリン層と粗製メチルエステル層との界面を、その言わば先行する粗製グリセリンが後続する粗製メチルエステルへ変化した瞬間に、上記検知センサー(S)によって位置検知することができ、しかもその界面検知センサー(S)の検知出力信号を受けた上記自動開閉弁(32)が空気圧式として、分離路(P)をすばやく閉鎖する。
【0098】
その結果、貴重な粗製メチルエステルを分離路(P)の自動開閉弁(32)よりも上側へ確実に残して、粗製グリセリンだけを上記分離路(P)から分離タンク(B)の内部へ流下させることができ、特に出発原料としてエステル交換反応による粗製グリセリンの分離回収量が一定せず、毎回千変万化である廃食油や廃油脂を使用する場合に、その変化に常時対応して、歩留りを著しく向上できる効果があり、そのための界面検知センサー(S)を取り付ける位置としても、上記分離路(P)における空気圧式自動開閉弁(32)の下段へ、常に一定高さとして決定することができる。
【0099】
尚、上記分離タンク(B)の内部に溜まった粗製グリセリンは、その後回収液排出路(27)における空気圧式自動開閉弁(28)の開放と、同じく空気圧式自動方向切換弁(29)の切り換えにより、その回収液排出路(27)の開放したグリセリン排出口(30)から排出されることとなる。その粗製グリセリンの排出所要時間は約4分である。
【0100】
上記のようなエステル交換反応工程が終了すると、次に第1回中和反応工程として、温水供給路(13)の空気圧式自動開閉弁(17)を開放状態に保ち、流量計(14)により計量された約10.2リットルの温水を、その温水供給路(13)から上記反応タンク(A)の内部へ供給する一方、第1中和液貯溜容器(58)に貯溜されている希塩酸の約150ccを、その第1電磁定量ポンプ(64)により第1中和液供給ホース(60)を通じて、同じく反応タンク(A)の内部へ圧送する。
【0101】
そして、このような温水と希塩酸との中和混合液をやはり反応タンク(A)のシーズヒーター(11)によって加熱すると共に、反応タンク(A)の攪拌機(7)により約10分間攪拌して、その反応タンク(A)の内部に滞溜している上記粗製メチルエステルを希塩酸によって第1次的に中和させるのである。その第1回中和反応工程での加熱温度は、上記加熱温度センサー(12)により約65℃に維持制御される。
【0102】
茲に、第1回中和反応を行なわせると、上記アルカリ触媒が除去されたメチルエステルと、塩並びに水との混合液になるため、上記分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)を閉鎖した復帰状態に保ち、反応タンク(A)の攪拌機(7)を停止して、約15分間だけ静置させる。
【0103】
その静置中には、塩やその他の残溜物が混合・溶解された水と、上記メチルエステルとが比重差に基き、やがて上側のメチルエステル層と下側の水層に自づと分離するため、上記静置時間の約15分間経過後やはりタイマーにより、分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)を開放状態に切え換えて、その開放した分離路(P)から水を分離タンク(B)に向かって流下させるのである。
【0104】
そして、その水が分離タンク(B)の内部に一定レベルまで溜まると、分離タンク(B)のフロート式レベルセンサー(26)によって検知され、これからの検知出力信号を受けた上記分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)が、その分離路(P)を瞬時に閉鎖する。
【0105】
つまり、上記分離タンク(B)へ供給される温水は、流量計(14)によって計量されており、これが中和反応工程での粗製メチルエステルから分離回収される量も一定として、予測できる数値範囲内にあるため、上記分離タンク(B)の内部に溜まる水のレベルを検知することにより、そのレベルセンサー(26)を上記分離界面検知センサー(S)の代替品として、これと同様に機能させることができる。
【0106】
その結果、貴重なメチルエステルが依然として分離路(P)の自動開閉弁(32)よりも上側に残り、分離タンク(B)の内部へ流下してしまうおそれはない。その流下した水だけが上記回収液排出路(27)における空気圧式自動開閉弁(28)の開放と、同じく空気圧式自動方向切換弁(29)の切り換えにより、その回収液排出路(27)の開放した中和液排出口(31)から排出される。その水の排出所要時間は約4分、同じく排出量は約15リットルである。
【0107】
又、上記のような第1回中和反応工程が終了すると、引き続き第2回中和反応工程として、やはり流量計(14)により計量された温水の約12リットルを、その温水供給路(13)から反応タンク(A)の内部へ供給する一方、別個な第2中和液貯溜容器(59)に貯溜されている硫酸亜鉛の約150ccを、その対応的な第2電磁定量ポンプ(65)により第2中和液供給ホース(61)を経て、上記反応タンク(A)の内部へ圧送する。
【0108】
そして、このような温水と硫酸亜鉛との中和混合液を第1回中和反応工程と同様に、シーズヒーター(11)により加熱する一方、反応タンク(A)の攪拌機(7)により約12分間攪拌して、その反応タンク(A)の内部に依然滞溜している上記メチルエステルを、硫酸亜鉛により第2次的に中和させるのである。その第2回中和反応工程での加熱温度はやはり加熱温度センサー(12)によって、第1回中和反応工程でのそれよりも高い約80℃に維持制御される。
【0109】
茲に、第2回中和反応を行なわせると、ナトリウムセッケンが除去された精製メチルエステルと、水との混合液になるため、その上記分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)を再度閉鎖した復帰状態に保った上、反応タンク(A)の攪拌機(7)を停止して、第1回中和反応工程と同じ約15分間だけ静置させる。
【0110】
そうすれば、その静置中やはり比重差に基いて、上側の精製メチルエステル層と下側の水層に自づと分離するため、上記静置時間の約15分経過後タイマーにより、分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)を開放状態に切り換えて、その開放した分離路(P)から水を分離タンク(B)に向かい流下させるのである。
【0111】
そして、その水が分離タンク(B)の内部に一定レベルまで溜まったことを、第1回中和反応工程と同様に、分離タンク(B)のフロート式レベルセンサー(26)により検知して、その検知出力信号を受けた上記空気圧式自動開閉弁(32)が、やはり分離路(P)をすばやく閉鎖する。
【0112】
その結果、やはり貴重なメチルエステルは洩れなく分離路(P)の自動開閉弁(32)よりも上側に残り、分離タンク(B)の内部へ少しも流下しない。その分離タンク(B)に溜まった水だけが第1回中和反応工程と同様にして、回収液排出路(27)の開放する中和液排出口(31)から排出される。その水の排出所要時間も第1回中和反応工程でのそれと同じ約4分、排出量は約15リットルである。
【0113】
尚、上記第1、2回中和反応工程では各々反応タンク(A)に対する温水の供給と、第1、2電磁定量ポンプ(64)(65)の作動による第1、2中和液の圧送とがほぼ同時に行なわれ、その反応タンク(A)の攪拌機(7)による中和混合液の攪拌と、同じくシーズヒーター(11)での加熱も併行的に遂行されるようになっている。
【0114】
上記のような第2回中和反応工程を終了すると、次に第1回洗浄工程として、依然開放状態にある温水供給路(13)から、流量計(14)により計量された約13.5リットルの温水だけを上記反応タンク(A)の内部へ供給し、その反応タンク(A)の内部に滞溜している精製メチルエステルとの混合状態に保つ。
【0115】
そして、その精製メチルエステルと温水との混合液を、シーズヒーター(11)により加熱する一方、反応タンク(A)の攪拌機(7)により約15分間攪拌して、上記メチルエステルを温水により洗浄する。その第1回洗浄工程での加熱温度は、上記加熱温度センサー(12)により約85℃に維持制御される。
【0116】
又、上記第1回洗浄工程の終了後には引き続き第2回洗浄工程として、やはり温水供給路(13)から反応タンク(A)の内部へ、同じ約13.5リットルの温水だけを供給することにより、その反応タンク(A)内での精製メチルエステルと再度混合状態に保った上、シーズヒーター(11)により加熱すると共に、反応タンク(A)の攪拌機(7)により同じ約15分間だけ攪拌する。
【0117】
つまり、第1、2回洗浄工程でも各々反応タンク(A)に対する温水の供給と、その反応タンク(A)の攪拌機(7)による攪拌並びにシーズヒーター(11)での加熱が、ほぼ同時併行的に遂行されるようになっている。
【0118】
但し、第2回洗浄工程での加熱温度はその反応タンク(A)の加熱温度センサー(12)により、第1回洗浄工程でのそれよりも高い約90℃に維持制御されて、精製メチルエステルを乾燥できるようになっている。
【0119】
上記第1、2回洗浄工程の何れにあっても、温水による精製メチルエステルの洗浄後、そのたび毎に分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)を一旦閉鎖状態に保ち、反応タンク(A)の攪拌機(7)を停止して、約10分間づつ静置させる。
【0120】
そうすれば、上記約10分間づつの静置中、比重差により上側の精製メチルエステル層と下側の水層とが自づと分離するため、その静置時間経過後やはりタイマーにより、分離路(P)の空気圧式自動開閉弁(32)を開放状態に切り換えて、その開放した分離路(P)から水を分離タンク(B)に向かって流下させる。
【0121】
そして、その水が分離タンク(B)の内部に一定レベルまで溜まったことを、上記中和反応工程と同様にして、分離タンク(B)のフロート式レベルセンサー(26)により各々検知し、そのレベルセンサー(26)の検知出力信号を受けた自動開閉弁(32)が空気圧式として、分離路(P)を瞬時に閉鎖するのである。
【0122】
その結果、貴重なメチルエステルは依然として分離路(P)の自動開閉弁(32)よりも上側へ、確実に残ることとなる。尚、第1、2回洗浄工程を終了するたび毎に、上記回収液排出路(27)の開放状態となる洗浄水排出口(31)から排出される水の排出所要時間は約4分、同じく排出量は約15リットルである。
【0123】
上記第1実施形態に基いて説明した製造方法の場合、エステル交換反応工程において分離される粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面を、特に透過型光電スイッチ(34)から成る界面検知センサー(S)により検知する一方、第1、2回中和反応工程において分離される粗製メチルエステルと中和液との界面や、その後の第1、2回洗浄工程において分離される精製メチルエステルと洗浄水との界面を、何れも分離タンク(B)の内部に溜まる中和液用や洗浄水用のフロート式レベルセンサー(26)により検知する結果となっているが、これらの検知出力信号を受けた分離路(P)の自動開閉弁(32)が、その分離路(P)を瞬時に閉鎖し得る限りでは、上記中和反応工程と洗浄工程において使用される分離タンク(B)のフロート式レベルセンサー(26)を省略し、これに代る赤外線センサーや図12のような超音波流速センサー(44)などから成る界面検知センサー(S)を、上記分離路(P)における自動開閉弁(32)の下段位置へ臨ませても良い。
【0124】
又、エステル交換反応工程において使用される上記光電スイッチ(34)も、これに代る赤外線センサーや超音波流速センサー(44)などとして、そのエステル交換反応工程と中和反応工程並びに洗浄工程に悉く共通する界面検知センサー(S)を採用してもさしつかえない。
【0125】
何れにしても、上記エステル交換反応工程から第1、2回中和反応工程を経て、第1、2回洗浄工程まで終了することにより、水分やその他の残溜物が除去された高級脂肪酸メチルエステルを得ることができ、これは未だ反応タンク(A)の内部に滞溜している。
【0126】
そこで、最後に反応タンク(A)内の高級脂肪酸メチルエステルを約99.9℃の高い加熱温度に維持制御しつつ、その反応タンク(A)の攪拌機(7)により約40分間攪拌して、完全に脱水させた上、製品回収バイパス路(72)の中途部に介在している空気圧式自動開閉弁(73)を開放させる。
【0127】
そうすれば、上記高級脂肪酸メチルエステルは反応タンク(A)から製品タンク(D)へ自づと移動して、その製品タンク(D)の内部に溜まるため、これを製品タンク(D)から移送用渦巻ポンプ(69)により濾過タンク(70)へ移し入れて、残渣物や不純物を完全に濾過した上、ディーゼル燃料として有効に利用することができる。その高級脂肪酸メチルエステルが上記反応タンク(A)から製品タンク(D)へ移動する所要時間は、約3〜4分である。
【0128】
因みに、上記した数値のもとで自動制御される製造方法の場合、エステル交換反応工程の所要時間が約70分5秒、第1、2回中和反応工程の所要時間が約52分10秒、第1、2回洗浄工程の所要時間が約50分5秒、その後の最終的な高級脂肪酸メチルエステルの攪拌(脱水)作用とその反応タンク(A)から製品タンク(D)への移し入れ所要時間が約43分5秒として、上記出発原料である約50リットルの廃食油から約45リットルの高級脂肪酸メチルエステル(製品)を短時間での高速に、しかもロスなく生成することができ、歩留りが著しく向上する。
【0129】
更に言えば、上記製造方法の実施に供した製造装置は1槽式(バッチ式)として、例示した数値の大きさに小型コンパクト化されているため、その運転採算上必要となる量の廃食油や廃油脂を狭い地域から定期的に収集しやすく、市町村単位の規模でも広く採用・普及できる利点がある。
【0130】
次に、図13は本発明の第2実施形態に係る3槽式(連続式)の軽油代替燃料製造装置を示している。これでは、図6と図13との対比から明白なように、上記第1実施形態の反応タンク(A)がエステル交換反応工程と中和反応工程並びに洗浄工程での各別に使用される反応タンク(A1)と中和タンク(A2)並びに洗浄タンク(A3)として、又、第1実施形態の分離タンク(B)もこれらと対応する別個独立の第1〜3分離タンク(B1)(B2)(B3)として、その全体的な連立状態に並列設置されている。
【0131】
つまり、反応タンク(A1)と中和タンク(A2)並びに洗浄タンク(A3)が別個独立しているため、上記第1実施形態の反応タンク(A)に付属している攪拌機(7)やシーズヒーター(11)、加熱温度センサー(12)、温水用の空気圧式自動開閉弁(17)、リード式液面スイッチ(21)、オーバーフロー用レベルセンサー(22)なども、図示符号(x)(y)(z)を付加した同じ数字から明白なように、各々対応的な3個づつとして設置されている。但し、その反応タンク(A1)と中和タンク(A2)並びに洗浄タンク(A3)の合計3槽は、共通の温水供給路(13)から並列回路として分岐配管された状態にある。
【0132】
又、第1分離タンク(粗製グリセリン回収タンク)(B1)と第2分離タンク(中和液回収タンク)(B2)並びに第3分離タンク(洗浄水回収タンク)(B3)は別個独立しているため、上記第1実施形態の分離タンク(B)に付属しているオーバーフロー用レベルセンサー(25)や回収液排出路(27)、回収液用の空気圧式自動開閉弁(28)なども、やはり図示符号(x)(y)(z)を付加した同じ数字から明白なように、各々対応的な3個づつとして設置されている。
【0133】
しかも、上記反応タンク(A1)と中和タンク(A2)並びに洗浄タンク(A3)の合計3槽は、そのエステル交換反応工程から洗浄工程へ進むに連れて、順次低くなる高さ位置に据え付け固定されており、言わば全体的な階段状態にある。
【0134】
そして、その反応タンク(A1)の底面から第1分離タンク(粗製グリセリン回収タンク)(B1)へ垂下する第1分離路(P1)の中途部には分離用の空気圧式自動開閉弁(32x)と、光電スイッチ(34)から成る第1分離界面検知センサー(S1)との上下一対が、又上記中和タンク(A2)の底面から第2分離タンク(中和液回収タンク)(B2)へ垂下する第2分離路(P2)の中途部にはやはり空気圧式自動開閉弁(32y)と、赤外線センサー又は超音波流速センサー(44)から成る第2分離界面検知センサー(S2)との上下一対が、更に上記洗浄タンク(A3)の底面から第3分離タンク(洗浄水回収タンク)(B3)へ垂下する第3分離路(P3)の中途部には同じく空気圧式自動開閉弁(32z)と、赤外線センサー又は超音波流速センサー(44)から成る第3分離界面検知センサー(S3)との上下一対が、各々対応設置されている。
【0135】
上記第1実施形態の製品回収バイパス路(72)が第2実施形態の場合、反応タンク(A1)でのエステル交換反応工程により生成された粗製メチルエステルを、中和タンク(A2)へ移し入れる第1製品回収バイパス路(72x)と、その中和タンク(A2)での中和反応工程により中和された精製メチルエステルを、引き続き洗浄タンク(A3)へ移し入れる第2製品回収バイパス路(72y)と、その洗浄タンク(A3)での洗浄工程により洗浄された高級脂肪酸メチルエステルを、最終的に製品タンク(D)へ移し入れる第3製品回収バイパス路(72z)との合計3個として、その言わば連通状態に接続配管されている。
【0136】
そのため、上記第1実施形態における製品回収バイパス路(72)の中途部に介在する空気圧式自動開閉弁(73)も、その第1〜3製品回収バイパス路(72x)(72y)(72z)の中途部に同様な第1〜3自動開閉弁(73x)(73y)(73z)として、各々介挿設置されている。
【0137】
尚、第2実施形態では第1中和液貯溜容器(58)内の希塩酸と、第2中和液貯溜容器(59)内の硫酸亜鉛とが、上記中和タンク(A2)へ圧送されるようになっていることは言うまでもない。第2実施形態におけるその他の配管系統は上記第1実施形態と実質的に同一であるため、図13に図6との対応符号を記入するにとどめて、その構成の詳細な説明を省略する。
【0138】
本発明に係る第2実施形態の自動運転による軽油代替燃料製造方法では、先ずエステル交換反応工程において上記第1実施形態のそれと同様に生成された粗製メチルエステルが、その反応タンク(A1)から垂下する第1分離路(P1)の自動開閉弁(32x)を閉鎖した状態のもとで、第1製品回収バイパス路(72x)の自動開閉弁(73x)を開放することにより、その第1製品回収バイパス路(72x)を移動して中和タンク(A2)の内部へ貯溜され、次に第1、2中和反応工程が行なわれることとなる。第1、2回中和反応工程の内容は上記第1実施形態のそれと実質的に同じである。
【0139】
第1、2回中和反応工程での第1、2中和液により中和された精製メチルエステルは、その中和タンク(A2)から垂下する第2分離路(P2)の自動開閉弁(32y)を閉鎖した状態のもとで、第2製品回収バイパス路(72y)の自動開閉弁(73y)を開放した時、その第2製品回収バイパス路(72y)を通じて洗浄タンク(A3)の内部へ移し入れられ、引き続き第1、2回洗浄工程が実行されることになる。第1、2回洗浄工程の内容も上記第1実施形態のそれと実質的に同じである。
【0140】
そして、その第1、2回洗浄工程での温水により繰り返し洗浄された最終的な製品の高級脂肪酸メチルエステルが、洗浄タンク(A3)から垂下する第3分離路(P3)の自動開閉弁(32z)を閉鎖した状態において、第3製品回収バイパス路(72z)の自動開閉弁(73z)を開放することにより、その第3製品回収バイパス路(72z)を経て製品タンク(D)の内部へ移し入れ貯溜される。その後脱水作用を受けることは、上記第1実施形態と同様である。
【0141】
他方、エステル交換反応工程での粗製メチルエステルと分離する粗製グリセリンは、上記第1分離路(P1)における自動開閉弁(32x)の下段位置へ臨む第1分離界面検知センサー(光電スイッチ)(S1)により、その粗製メチルエステル層との界面が位置検知されて、粗製グリセリンだけが第1分離タンク(粗製グリセリン回収タンク)(B1)へ流下することになる。
【0142】
又、中和反応工程での粗製メチルエステルと分離する第1、2中和液は、上記第2分離路(P2)の自動開閉弁(32y)よりも下段位置へ臨む第2分離界面検知センサー(赤外線センサー又は超音波流速センサー)(S2)により、そのメチルエステル層との界面がやはり位置検知されて、中和液だけが第2分離タンク(中和液回収タンク)(B2)へ流下する。
【0143】
更に、洗浄工程での精製メチルエステルと分離する洗浄水(温水)は、上記第3分離路(P3)の自動開閉弁(32z)よりもやはり下段位置へ臨む第3分離界面検知センサー(赤外線センサー又は超音波流速センサー)(S3)により、そのメチルエステル層との界面が位置検知されて、洗浄水だけが第3分離タンク(洗浄水回収タンク)(B3)へ流下することになる。
【0144】
そのため、上記第1実施形態と同様に、追って製品となる貴重なメチルエステルがそのエステル交換反応工程と中和反応工程並びに洗浄工程の何れにおいても、第1〜3分離タンク(B1)(B2)(B3)へ流下・排出されてしまうおそれはなく、その歩留りが著しく向上する結果、廃食油や廃油脂を出発原料とする場合に、特に有効となる。
【0145】
上記第2実施形態の製造方法によれば、反応タンク(A1)と中和タンク(A2)並びに洗浄タンク(A3)の合計3槽が別個独立している関係上、初回の出発原料について中和反応工程や洗浄固定を終了するまでの間に、次回の出発原料についてエステル交換反応工程を開始する如く、順次連続して効率良く高級脂肪酸メチルエステルを生成することができ、しかもその前工程での残渣物がタンクに付着したとしても、これが後工程のタンクへ移し入れられて混ざり合うことも徐々に減少し、高純度の製品を得ることに役立つ。
【0146】
尚、第1、2回中和反応工程において分離される粗製メチルエステルと中和液との界面や、その後の第1、2回洗浄工程において分離される精製メチルエステルと洗浄水との界面は、上記赤外線センサー又は超音波流速センサー(44)から成る第2、3分離界面検知センサー(S2)(S3)での検知方法に代えて、その何れも上記第2、3分離タンク(B2)(B3)の内部に溜まる中和液用や洗浄水用のフロート式レベルセンサー(26)により検知し、これから検知出力信号を受けた上記第2、3分離路(P2)(P3)の空気圧式自動開閉弁(32y)(32z)が、その第2、3分離路(P2)(P3)を各々閉鎖するように設定してもさしつかえない。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の第1実施形態に係る1槽式の軽油代替燃料製造装置を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の背面図である。
【図4】図2の平面図である。
【図5】図2の5−5線矢印方向から見た平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る軽油代替燃料製造装置の配管系統図である。
【図7】同じく軽油代替燃料製造装置のシーケンス制御回路図である。
【図8】分離タンクを抽出して示す断面図である。
【図9】図3から分離界面検知センサー(光電スイッチ)の取付部分を抽出して示す拡大図である。
【図10】図9の10−10線断面図である。
【図11】図9の11−11線断面図である。
【図12】別な分離界面検知センサー(超音波流速センサー)の取付状態を示す断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る3槽式の軽油代替燃料製造装置を示す図6に対応する配管系統図である。
【符号の説明】
【0148】
(4)・制御盤
(7)(7x)(7y)(7z)(45)・攪拌機
(11)(11x)(11y)(11z)・シーズヒーター
(12)(12x)(12y)(12z)・加熱温度センサー
(13)・温水供給路
(14)・温水流量計
(17)(17x)(17y)(17z)(28)(28x)(28y)(28z)(32)(32x)(32y)(32z)(73)(73x)(73y)(73z)・空気圧式自動開閉弁
(19)・原料供給路
(21)(21x)(21y)(21z)・液面スイッチ
(22)(22x)(22y)(22z)(25)(26)(49)・レベルセンサー
(27)(27x)(27y)(27z)・回収液排出路
(29)・空気圧式自動方向切換弁
(33)・透明管路
(34)・光電スイッチ
(34a)・レーザー投光器
(34b)・レーザー受光器
(44)・超音波流速センサー
(44a)・パルス発信器
(44b)・パルス受信器
(48)・メタノール投入口筒
(50)・排液路
(54)・メタノール供給路
(55)・定量ポンプ
(56)・背圧弁
(58)・第1中和液貯溜容器
(59)・第2中和液貯溜容器
(60)・第1中和液供給ホース
(61)・第2中和液供給ホース
(64)・第1電磁定量ポンプ
(65)・第2電磁定量ポンプ
(68)・製品排出路
(69)・渦巻ポンプ
(72)(72x)(72y)(72z)・製品回収バイパス路
(75)・圧力スイッチ
(77)(78)(79)(80)(81)・第1〜5電磁弁
(A)(A1)・反応タンク
(A2)・中和タンク
(A3)・洗浄タンク
(B)(B1)(B2)(B3)・分離タンク
(C)・メタノールタンク
(D)・製品タンク
(F)・据付フレーム
(M)・界面検知センサー用取付金具
(P)(P1)(P2)(P3)・分離路
(S)(S1)(S2)(S3)・分離界面検知センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発原料の食用油やその廃食油、廃油脂と、アルカリ触媒が溶解されたメタノールとを、反応タンク内での混合液としてエステル交換反応させ、その反応直後の静置時間中比重差に基き、粗製メチルエステルと精製グリセリンとの上下2層に分離するエステル交換反応工程と、
次いで、上記粗製メチルエステルに微酸性中和液と温水とを混合して中和反応させ、その反応直後の静置時間中比重差に基き、精製メチルエステルと水との上下2層に分離する中和反応工程と、
引き続き、上記精製メチルエステルに温水だけを混合することにより洗浄して、その洗浄直後の静置時間中比重差に基き、高級脂肪酸メチルエステルと水との上下2層に分離する洗浄工程とを経由する軽油代替燃料の製造方法において、
上記反応タンクから分離タンクに向かって垂下する分離路の中途高さ位置へ、その分離路の自動開閉弁を介挿設置すると共に、これよりも下段位置へ少なくとも上記エステル交換反応直後に分離する粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面を検知し得るセンサーを臨ませて、
エステル交換反応直後の静置時間中分離路の閉鎖状態に保たれた上記自動開閉弁を、その静置時間の経過後に開放させて、その分離路の流下中にある粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面を上記検知センサーによって検知するや否や、その界面検知センサーからの検知出力信号を受けた上記自動開閉弁が、その分離路を閉鎖するように定めたことを特徴とする軽油代替燃料の製造方法。
【請求項2】
分離路の自動開閉弁を空気用圧力スイッチによって開閉作動されるボールバルブとし、
界面検知センサーを透過型光電スイッチとして、上記分離路の中途高さ位置へ介挿設置した透明管路を挟む設置状態に臨ませたことを特徴とする請求項1記載の軽油代替燃料の製造方法。
【請求項3】
界面検知センサーを可視光線より狭い波長域で透過率が変化する赤外線センサー、又はパルス伝播速度と減衰率が変化する超音波流速センサーとして、
エステル交換反応直後に分離する粗製メチルエステルと粗製グリセリンとの界面のみならず、中和反応直後に分離する精製メチルエステルと水との界面や、洗浄直後に分離する高級脂肪酸メチルエステルと水との界面も検知し得るように定めたことを特徴とする請求項1記載の軽油代替燃料の製造方法。
【請求項4】
中和反応工程と洗浄工程において使用されるフロート式レベルセンサーを分離タンクに設置して、
中和反応直後と洗浄直後との静置時間中分離路の閉鎖状態に保たれた自動開閉弁を、その静置時間の経過後に開放させて、その分離路から流下して分離タンク内に溜まった水の一定レベルを、上記レベルセンサーによって検知するや否や、そのレベルセンサーからの検知出力信号を受けた上記自動開閉弁が、その分離路を閉鎖するように定めたことを特徴とする請求項1記載の軽油代替燃料の製造方法。
【請求項5】
出発原料の食用油やその廃食油、廃油脂と、アルカリ触媒が溶解されたメタノールとを混合して行なうエステル交換反応工程のみならず、その工程で生成された粗製メチルエステルへ、次に微酸性中和液と温水とを混合して行なう中和反応工程と、その工程で精製されたメチルエステルへ、引き続き温水を混合して行なう洗浄工程にも兼用される反応タンクと、
その反応タンクから垂下する分離路を介して連通接続されることにより、上記各工程での副生成物である粗製グリセリンと中和液並びに洗浄水を回収すべく兼用される分離タンクとを備えた1槽式の軽油代替燃料製造装置において、
上記各工程の終了直後に副生成物をメチルエステルから比重差により分離させるべき静置時間中には、上記分離路を閉鎖状態に保ち、且つその静置時間経過後には開放状態に切り換えるための自動開閉弁を、その分離路の中途高さ位置へ介挿設置すると共に、
上記分離路における自動開閉弁よりも高い上段位置から、高級脂肪酸メチルエステルをその製品タンクへ移し入れるための製品回収バイパス路を分岐状態に接続配管する一方、
同じく分離路における上記自動開閉弁よりも低い下段位置へ、その自動開閉弁により開放された分離路の流下中にある上記メチルエステルと副生成物との分離界面検知センサーを臨ませて、
その界面検知センサーの検知出力信号により上記自動開閉弁が分離路を閉鎖することとなるように制御して、上記副生成物だけを分離タンクへ回収し得るように設定したことを特徴とする軽油代替燃料の製造装置。
【請求項6】
出発原料の食用油やその廃食油、廃油脂と、アルカリ触媒が溶解されたメタノールとを混合するための反応タンクと、
その反応タンク内でのエステル交換反応工程により生成された粗製メチルエステルへ、次に微酸性中和液と温水とを混合するための別個な中和タンクと、
その中和タンク内での中和反応工程により精製されたメチルエステルへ、引き続き温水を混合するための別個な洗浄タンクと、
上記反応タンクと中和タンク並びに洗浄タンクから各々対応的に垂下する第1〜3分離路を介して連通接続されることにより、上記各工程での副生成物である粗製グリセリンと中和液並びに洗浄水を回収するための第1〜3分離タンクとを備えた3槽式の軽油代替燃料製造装置において、
上記各工程の終了直後に副生成物をメチルエステルから比重差により分離させるべき静置時間中には、上記第1〜3分離路を各々閉鎖状態に保ち、且つその静置時間経過後には開放状態に切り換えるための第1〜3自動開閉弁を、その対応的な第1〜3分離路の中途高さ位置へ各々介挿設置すると共に、
上記第1分離路における第1自動開閉弁よりも高い上段位置から、メチルエステルを中和タンクへ移し入れるための第1製品回収バイパス路と、上記第2分離路における第2自動開閉弁よりも高い上段位置から、メチルエステルを洗浄タンクへ移し入れるための第2製品回収バイパス路と、上記第3分離路における第3自動開閉弁よりもやはり高い上段位置から、高級脂肪酸メチルエステルをその製品タンクへ移し入れるための第3製品回収バイパス路とを、各々分岐状態に接続配管する一方、
同じく第1〜3分離路における上記第1〜3自動開閉弁よりも低い下段位置へ、その自動開閉弁により各々開放された第1〜3分離路の流下中にある上記メチルエステルと副生成物との第1〜3分離界面検知センサーを各々臨ませて、
その第1〜3分離界面検知センサーの検知出力信号により上記第1〜3自動開閉弁が第1〜3分離路を各々閉鎖することとなるように制御して、上記副生成物だけを対応する第1〜3分離タンクへ各々回収し得るように設定したことを特徴とする軽油代替燃料の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2006−274043(P2006−274043A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95257(P2005−95257)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(500236095)コマツ三重株式会社 (1)
【Fターム(参考)】