説明

軽量埋込材

【課題】 スラブ上端筋の被り厚を十分にとることができ、かつ軽量埋込材を設置する際に最低設置間隔を簡単に確保することができる軽量埋込材を提供することである。
【解決手段】 軽量埋込材1は、埋込材本体2の上面におけるスラブ上端筋の配筋箇所に被り厚形成用の切欠溝3が設けられ、埋込材本体2の側面には設置間隔形成用の突起4が設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空スラブを構築する軽量埋込材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の中空スラブとしては、例えば特開2002−21240号の発明が知られている。これはプレキャストコンクリート板の上面から突出したトラス筋間に複数の軽量埋込材が適宜間隔をもって設置され、この上にスラブ上端筋が配筋されてトップコンクリートが打設されたものである。
【特許文献1】特開2002−21240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の中空スラブにおいては、スラブ上端筋が軽量埋込材のすぐ上に配筋されているため、この軽量埋込材との間に十分な被り厚をとるため、不必要にスラブ厚を大きくしなければならなかった。また軽量埋込材の設置間隔は、スラブの強度や遮音性を考慮して最低40mm空ける必要があるが、この最低設置間隔を作業者が軽量埋込材の設置の際に確認することがないため、必要な設置間隔を確保することができないという問題があった。
【0004】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スラブ上端筋の被り厚を十分にとって、なおかつスラブの軽量化のため、埋込材の体積、すなわち中空率を最大にすることができ、また軽量埋込材を設置する際に最低設置間隔を正確に確保することができる軽量埋込材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための軽量埋込材は、埋込材本体の上面におけるスラブ上端筋の配筋箇所に被り厚形成用の切欠溝が設けられ、埋込材本体の側面には設置間隔形成用の突起が設けられてなることを特徴とする。また設置間隔形成用の突起は埋込材本体の角部に設けられたことを含む。また設置間隔形成用の突起は埋込材本体の短辺側の両側面に複数設けられ、これらが段形状または平面L形状であることを含む。また設置間隔形成用の突起は埋込材本体の短辺側の両側面に複数設けられ、これらのうちの半分が嵌合突部であり、残りの半分が嵌合凹部であることを含む。また設置間隔形成用の突起には下面の凹部に接着剤が充填されていることを含む。また設置間隔形成用の突起の下面に切欠部が設けられていることを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
被り厚形成用の切欠溝の上部にスラブ上端筋が配筋されるため、該スラブ上端筋の被り厚を十分に確保することができ、かつスラブの軽量化のため埋込材の中空率を最大にすることができた。また設置間隔形成用の突起を例えば20mm幅にした場合、軽量埋込材を前後左右のいずれかに設置すると、突起同士が突き当たって前後左右のいずれかに40mmの最低設置間隔が形成される。また設置間隔形成用の突起が段形状、平面L形状、嵌合突部および嵌合凹部のいずれかであることにより、プレキャストコンクリート板上に設置した軽量埋込材間に最低設置間隔が形成されると同時に、これらが連結される。また設置間隔形成用の突起下面の接着剤により、軽量埋込材をプレキャストコンクリート板の上面に設置すると同時に固着することができる。切欠部を備えた突起同士が付き合わされると、突起の下部にノロ収容部が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の軽量埋込材の実施の形態を図面に基づいて説明する。また各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0008】
図1は第1の実施の形態の軽量埋込材1である。この軽量埋込材1はポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン樹脂などの発泡樹脂材で平面矩形に形成された埋込材本体2と、この埋込材本体2の上面におけるスラブ上端筋の配筋箇所に設けた被り厚形成用の切欠溝3と、埋込材本体2の側面に設けた設置間隔形成用の突起(以下突起という)4とから構成されている。
【0009】
この被り厚形成用の切欠溝3は埋込材本体2の短辺方向に沿って設けられ、該埋込材本体2を横切るスラブ上端筋の被り厚を十分に確保できる深さを備えている。また切欠溝3はトップコンクリートが充填されやすいように上側に向かって外側に広がっている。
【0010】
また埋込材本体2の両側面には一対の突起4が一体形成され、最低20mm以上の突出幅を備えている。これはスラブの必要強度や十分な遮音性を確保するために、突起4同士を突き当てて軽量埋込材1の間に40mmの最低設置間隔を形成するためである。
【0011】
図2および3は、梁間に設置したプレキャストコンクリート板(以下PC板という)5の上面におけるトラス筋6間に上記の軽量埋込材1を設置したものである。このようにスラブ上端筋7の下側における軽量埋込材1の上面に被り厚形成用の切欠溝3が形成されたので、被り厚8を十分に確保することができる。また軽量埋込材1がPC板5に複数設置されると、突起4同士が付き合わされて軽量埋込材1の前後間に最低設置間隔9が形成される。
【0012】
また図4は、第2の実施の形態の軽量埋込材10である。これは埋込材本体2の四つの角部、すなわち一方の側面から他方の側面にかけた出隅部に突起11が設けられたものであり、これ以外は第1の実施の形態の軽量埋込材1と同じ構成である。これは図示するように、PC板5の縦横方向に軽量埋込材1を設置して突起11を付き合わせると、これらの前後左右間に最低設置間隔9が形成されるとともに、軽量埋込材10が縦横方向に一直線に設置される。
【0013】
また図5は、第3の実施の形態の軽量埋込材12である。これは軽量埋込材12の突起13が段形状に形成されたものであり、これ以外は第1の実施の形態の軽量埋込材1と同じ構成である。これはPC板5上に設置された一方の軽量埋込材12の上向き状の段形突
起13aと、他方の軽量埋込材12の下向き状の段形突起13bとを重ね合わせると、これらの前後間に最低設置間隔9が形成されるとともに、軽量埋込材12が一直線に設置されるものである。
【0014】
また図6は、第4の実施の形態の軽量埋込材14である。これは軽量埋込材14の突起15が平面L形状に形成されたものであり、これ以外は第1の実施の形態の軽量埋込材1と同じ構成である。これはPC板5上に軽量埋込材14を設置して平面L形の突起15同士を嵌め合わせると、軽量埋込材14の前後間に最低設置間隔9が形成されるとともに、左右へのズレも防止されて、軽量埋込材14が一直線に設置されるものである。
【0015】
また図7は、第5の実施の形態の軽量埋込材16である。これは軽量埋込材16の一対の突起17の一方が嵌合突部18に、他の一方が嵌合凹部19に形成されたものであり、これ以外は第1の実施の形態の軽量埋込材1と同じ構成である。これはPC板5に設置した軽量埋込材16の嵌合突部18を、対向した軽量埋込材16の嵌合凹部19に嵌め合わせると、軽量埋込材16の前後間に最低設置間隔9が形成されるとともに、左右方向へのズレが防止され、軽量埋込材16同士が接続されるものである。
【0016】
また図8は、第6の実施の形態の軽量埋込材20である。これは軽量埋込材20の突起21下面(接地面)に凹部22を設け、ここに接着剤23を充填したものであり、これ以外は第1の実施の形態の軽量埋込材1と同じ構成である。この接着剤23によって軽量埋込材20をPC板5上に設置すると、軽量埋込材20の前後間に最低設置間隔9が形成されるとともに、軽量埋込材20がPC板5の上面に接着される。したがって軽量埋込材20を傘釘で固定する手間を省くことができる。
【0017】
なお、この接着剤23を充填した凹部22は、上記の第2〜5の実施の形態の軽量埋込材10、12、14、16の突起11,13、15、17にも設けることができる。
【0018】
また図9は、第7の実施の形態の軽量埋込材24である。これは軽量埋込材24の突起25下側に切欠部26を設けたものであり、これ以外は第1の実施の形態の軽量埋込材1と同じ構成である。この切欠部26は、図示するように、後端から先端に向かって上側に傾斜したものや角形のものがあり、突起25が付き合わされたときに、その下側にノロ収容部27を形成する。このノロ収容部27は未硬化のコンクリート28の上面に軽量埋込材24を設置したときに、押し上げられたノロ29が収容されるところであり、この押し上げられたノロ29が突起25同士の接着面30に入って押し広げられるのを防ぐものである。したがって軽量埋込材24の設置位置の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態の軽量埋込材であり、(1)は平面図、(2)は(1)のA−A線断面図である。
【図2】(1)は第1の実施の形態の軽量埋込材をPC板上に設置した断面図、(2)は(1)のB−B線断面図である。
【図3】第1の実施の形態の軽量埋込材をPC板上に設置した平面図である。
【図4】第2の実施の形態の軽量埋込材の一部省略平面図である。
【図5】第3の実施の形態の軽量埋込材の一部省略断面図である。
【図6】第4の実施の形態の軽量埋込材の一部省略平面図である。
【図7】第5の実施の形態の軽量埋込材の一部省略平面図である。
【図8】第6の実施の形態の軽量埋込材の一部省略断面図である。
【図9】第7の実施の形態の軽量埋込材の一部省略断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1、10、12、14、16、20、24 軽量埋込材
2 埋込材本体
3 切欠溝り
4、11、13、15、17、21、25 突起
5 PC板
6 トラス筋
7 スラブ上端筋
8 被り厚
9 最低設置間隔
18 嵌合突起
19 嵌合凹部
22 凹部
23 接着剤
26 切欠部
27 ノロ収容部
28 未硬化のコンクリート
29 ノロ
30 接着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込材本体の上面におけるスラブ上端筋の配筋箇所に被り厚形成用の切欠溝が設けられ、埋込材本体の側面には設置間隔形成用の突起が設けられてなることを特徴とする軽量埋込材。
【請求項2】
設置間隔形成用の突起は埋込材本体の角部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の軽量埋込材。
【請求項3】
設置間隔形成用の突起は埋込材本体の短辺側の両側面に複数設けられ、これらが段形状または平面L形状であることを特徴とする請求項1に記載の軽量埋込材。
【請求項4】
設置間隔形成用の突起は埋込材本体の短辺側の両側面に複数設けられ、これらのうちの半分が嵌合突部であり、残りの半分が嵌合凹部であることを特徴とする請求項1に記載の軽量埋込材。
【請求項5】
設置間隔形成用の突起には下面の凹部に接着剤が充填されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軽量埋込材。
【請求項6】
設置間隔形成用の突起の下面に切欠部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軽量埋込材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−112181(P2006−112181A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302867(P2004−302867)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(303059990)油化三昌建材株式会社 (29)
【Fターム(参考)】