説明

軽量性に優れた建築用材料とその製造方法

【課題】瓦や壁材などの建築用材料に使用する軽量性、耐候性、強度に優れた建築用材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】材料主体1が、発泡ガラス粒2とセラミックス粒3を均一に混合して所定形状に焼成したものであり、前記発泡ガラス粒2の表面の溶融によって内部に気泡を有する発泡ガラス粒2とセラミックス粒3とが結合され、かつ、この結合した粒子間に多数の独立気泡5が形成された構造となっている。また、前記発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率は、3:7〜7:3の範囲とするのが好ましい。前記発泡ガラス粒とセラミックス粒は、廃材を使用して得られる粒径が3mm以下のものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦や壁材などの建築用材料に使用する軽量性に優れた建築用材料とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されている一般的な瓦やタイル等は、粘土で瓦等を形成し、これを焼成して製造したもので耐候性、耐久性に優れており、何百年も同じ状態を保てることが知られている。ただし、このような瓦等はかさ比重が約2.0と重いため、これを支持するのに十分な強度を有する家屋構造である必要があり、建築費を高くする原因の一つになっていた。
【0003】
また、地震の場合に屋根が重い建物は倒壊しやすいため、従来の粘土瓦の利点は認めるものの、最近では軽量で安価なスレート瓦やセメント瓦や金属屋根を採用した家屋等の建築物が増加している。しかしながら、スレート瓦やセメント瓦は軽量化が図れるものの、粘土瓦のような風合いや耐候性及び耐久性を出すことができないという問題点があった。
【0004】
一方、特許文献1に示されるように、軽量骨材とガラス粉・粘土・セメントからなるバインダーを混合して焼成した軽量瓦や、特許文献2に示されるように、合成樹脂発泡体を骨材として含有させた軽量コンクリート瓦など、種々の軽量瓦が提案されている。しかしながら、瓦は単に軽量性だけでなく、耐候性、十分な強度、低価格等の条件を備えていることも要求されており、これら全ての条件を満足する瓦の開発はなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2624592号
【特許文献2】特開平9−184247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、十分な軽量性を発揮することができ、また優れた耐候性と十分な強度も発揮することができ、しかも安価に製造することができる軽量性に優れた建築用材料とその製造方法を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の軽量性に優れた建築用材料は、材料主体が、発泡ガラス粒とセラミックス粒を均一に混合して所定形状に焼成したものであって、前記発泡ガラス粒表面の溶融により内部に気泡を有する発泡ガラス粒とセラミックス粒とが結合され、かつ、この結合した粒子間に多数の独立気泡が形成された構造となっていることを特徴とするものである。
【0008】
また、発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率は、3:7〜7:3の範囲であるものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
前記発泡ガラス粒は、ガラス廃材と発泡剤を使用して製造した発泡ガラスを粉砕処理して得られる粒径が3mm以下のものが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【0010】
前記セラミックス粒は、900℃以上で焼成したセラミックス廃材を粉砕処理して得られる粒径が3mm以下のものが好ましく、これを請求項4に係る発明とする。
【0011】
また、材料主体の重量が、25kg/m以下であるものが好ましく、これを請求項5に係る発明とする。
【0012】
また、材料主体が、瓦、壁材、タイルのいずれかに用いられるのが好ましく、これを請求項6に係る発明とする。
【0013】
更に、発泡ガラス粒とセラミックス粒を主原料とし、発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率を3:7〜7:3の範囲で均一に混合した混合物を加圧成形して所定形状の素成形材とした後、この素成形材を700〜900℃で焼成することにより、前記発泡ガラス粒表面のみを溶融して内部に気泡を有する発泡ガラス粒とセラミックス粒を結合するとともに、結合した粒子間に多数の独立気泡を形成することを特徴とする軽量性に優れた建築用材料の製造方法を請求項7に係る発明とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、材料主体が、発泡ガラス粒とセラミックス粒を均一に混合して所定形状に焼成したものであって、前記発泡ガラス粒表面の溶融により内部に気泡を有する発泡ガラス粒とセラミックス粒とが結合され、かつ、この結合した粒子間に多数の独立気泡が形成された構造となっているので、発泡ガラス粒及び独立気泡により軽量化が図られ、また発泡ガラス粒とセラミックス粒との結合により強度も確保することが可能となる。
【0015】
請求項2に係る発明では、発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率を、3:7〜7:3の範囲としたので、軽量性と強度のバランスをとることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、発泡ガラス粒は、ガラス廃材と発泡剤を使用して製造した発泡ガラスを粉砕処理して得られる粒径が3mm以下のものとしたので、廃材の有効利用を図ることができ、また成形性及び表面仕上がりも良好なものとすることができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、セラミックス粒は、900℃以上で焼成したセラミックス廃材を粉砕処理して得られる粒径が3mm以下のものとしたので、廃材の有効利用を図ることができ、また成形性及び表面仕上がりも良好なものとすることができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、材料主体の重量が、25kg/m以下であるので、大幅な軽量化を実現することができる。
【0019】
請求項6に係る発明では、材料主体を、瓦、壁材、タイルのいずれかに用いたので、十分な軽量性を発揮することができ、また優れた耐候性と十分な強度も発揮することができる。
【0020】
また、請求項7に係る発明では、発泡ガラス粒とセラミックス粒を主原料とし、発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率を3:7〜7:3の範囲で均一に混合した混合物を加圧成形して所定形状の素成形材とした後、この素成形材を700〜900℃で焼成することにより、前記発泡ガラス粒表面のみを溶融して内部に気泡を有する発泡ガラス粒とセラミックス粒を結合するとともに、結合した粒子間に多数の独立気泡を形成するので、軽量性、耐候性、強度に優れた建築用材料を製造することができ、また熱収縮が少なく歩留まり率が高いので安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【図2】本発明を瓦に適用した場合を示す斜視図である。
【図3】本発明をタイルに適用した場合を示す斜視図である。
【図4】本発明の製造工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を示す。
本発明の建築用材料は、材料主体が発泡ガラス粒とセラミックス粒を均一に混合して所定形状に焼成(700〜900℃)したものである。即ち、従来の粘土瓦のように粘土を焼成して製造したものと異なり、発泡ガラス粒とセラミックス粒を主原料に使用することで軽量化と優れた耐候性、強度向上を図っている。
【0023】
また本発明の建築用材料は、前記発泡ガラス粒の溶融により発泡ガラス粒とセラミックス粒とが結合され、かつ、この結合した粒子間に多数の独立気泡が形成された構造となっている。
図1に、本発明に係る建築用材料の要部の拡大断面図を示す。図において、1は材料主体であり、2は発泡ガラス粒、3はセラミックス粒である。本発明では、焼成時の温度を700〜900℃に調整して処理するので、セラミックス粒3(900℃以上で焼成されている)は溶融させずに発泡ガラス粒2のみを溶融させることとなる。そして、比較的大きな粒径の発泡ガラス粒2は表面のみが溶融してセラミックス粒3や他の発泡ガラス粒2と融着結合し、比較的小さな粒径の発泡ガラス粒2は溶融ガラス4となって各粒子間を埋めることになる。
その結果、内部に気泡を有する発泡ガラス粒2が均一に分散しているとともに、結合した粒子間に多数の独立気泡5が形成された構造となり、これらの発泡ガラス粒2と粒子間の多数の独立気泡5とによって大幅な軽量化が図られることとなる。また、発泡ガラス粒2が溶融してセラミックス粒3と溶融結合することによって大幅な強度の向上も図られることとなる。
【0024】
前記発泡ガラス粒2は、ガラス廃材と発泡剤を使用して製造した発泡ガラスを粉砕処理して得るもことができる。即ち、ガラス廃材を例えば0.1〜3.0mm程度に粉砕したものに、適量の発泡剤を加えて均一に混合した後、加熱溶融して発泡ガラスとし、これに冷水(5℃以下)をかけて粉砕し、更にクラッシャーにより細かい粒子に粉砕したものである。ガラス廃材を使用するので、資源の再利用を図ることができ、また安価に製造することが可能となる。ただし、廃材に限定されないことは勿論である。
【0025】
なお、発泡ガラス粒2は、発泡剤の添加量を調整することで任意の比重に調整することができる。例えば、ガラス廃材に対して1〜5重量%の割合で調整することができる。また、発泡ガラス粒は粒径が3mm以下、好ましくは2mm以下のものが好ましい。これより大きい粒径では表面性状がデコボコして仕上がりが悪くなるからである。下限は特に規制しないが、0.5mm以上のものが好ましい。更に、内部に気泡を有する発泡ガラス粒を存在させて軽量化を図るため、1mm以上の粒径のものをガラス原料全体の10質量%以上とすることが好ましい。
【0026】
前記発泡剤としては、カルシウム、アルミナ、炭化珪素、ホウ素、その他従来ガラスの発泡に使用できた発泡剤は全て使用することができる。発泡剤は単独または混合して用いることができる。
【0027】
セラミックス粒3は、900℃以上で焼成したセラミックス廃材を粉砕処理して得ることができる(瓦業界では、シャモットと称される)。セラミックス廃材としては、瓦、タイル、衛生陶器、食器などの廃材がある。廃材を使用するので、資源の再利用を図ることができ、また安価に製造することが可能となる。ただし、廃材に限定されないことは勿論である。
なお、セラミックスは900℃以上で焼成してあるので、本発明の建築用材料の焼成時(700〜900℃)においてセラミックス粒3が溶融することはない。
また、表面性状の仕上がりを良くするために粒径が3mm以下、好ましくは2mm以下のものとするのが好ましい。下限は特に規制しないが、0.5mm以上のものが好ましい。
【0028】
前記発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率(質量比)は、3:7〜7:3の範囲とするのが好ましい。軽量化を高めるには、発泡ガラス粒の配合比率を多くすればよいが、7:3より多く含有させると建築材料としての強度の確保が難しくなり、一方、3:7より少ないと軽量化の効果を十分に得られないので、3:7〜7:3の範囲が好ましい。
【0029】
また、材料主体1の重量は、25kg/m以下とすることが好ましい。
従来の粘土瓦のかさ比重は約2.0と重く、m当りの重量は約40kgであるので、厚みを薄くした軽量瓦が多く開発されてきた。しかし、施工現場における踏み割れを考慮すると、強度を確保するには薄くするにも制限があり約30kg/mが限界であった。
これに対し、本発明は発泡ガラス粒2とセラミックス粒3を混合したものを主原料とすることにより、材料主体1の重量を25kg/m以下にすることを目標に開発したもので、軽量化を測るという技術的課題と、踏み割れを生じない強度の確保という技術的課題の相反する技術的課題の双方を解決したものである。
【0030】
本発明の建築用材料は軽量性と強度を兼ね備えているので、瓦や壁材やタイルとして好適に用いることができる。図2に瓦10の一例を示し、図3にタイル11の一例を示す。瓦であれば、厚みを4〜20mmの範囲、またタイルであれば、4〜50mmの範囲で用途に応じて任意に設計される。
【0031】
次に、本発明の建築用材料の製造方法につき説明する。
図4に、本発明の製造工程の示すフロー図を示す。主原料は、発泡ガラス粒とセラミックス粒である。この発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率を3:7〜7:3の範囲で均一に混合し、得られた混合物を加圧成形して所定形状の素成形材とする。なお、加圧する圧力は前記発泡ガラス粒の構造を破壊しない程度の圧力とすることが好ましい。乾燥後、この素成形材に施釉を施し、ローラハース等の加熱炉に投入して700〜900℃で約1〜5時間焼成する。高い寸法精度が求められる場合は、研磨処理を行って最終製品とし、梱包して出荷する。
【0032】
前記発泡ガラス粒の融点は約700℃以下であり、一方、セラミックス粒は900℃以上で焼成してあるので、700〜900℃の焼成処理を施すと、発泡ガラス粒のみが溶融することとなる。この結果、比較的大きな粒径の発泡ガラス粒2は表面のみが溶融してセラミックス粒3や他の発泡ガラス粒2と融着結合する。この大きな粒径の発泡ガラス粒は内部に気泡を有しているため、軽量化に大いに寄与することとなる。また、比較的小さな粒径の発泡ガラス粒2は溶融ガラス4となって各粒子間を埋めることで結合した粒子間に多数の独立気泡5を形成した構造となるため、より軽量化を促進することとなる。更には、各粒子間は溶融した発泡ガラス粒によって強固に結合されているので、十分な機械的強度も得られることとなる(図1を参照)。
また本発明では、従来のように粘土を焼成(約1130〜1150℃)するのと異なり、700〜900℃と低温で焼成するので、その後の冷却工程における熱収縮が生じないため製品の歩留まり率を大幅に向上させることが可能となる。
【0033】
このように本発明で得られる建築用材料は、均一に発泡ガラス粒2が分散しているとともに、結合した粒子間に多数の独立気泡5が形成された構造であるため大幅な軽量化が図られることとなり、施工性や取扱性に優れ、また台風や地震に強い屋根を提供することができる。また、発泡ガラス粒の溶融による発泡ガラス粒2とセラミックス粒3との結合によって機械的強度の向上も図られるので、施工現場における踏み割れも防止できることとなる。更には、発泡ガラス粒2及び独立気泡5により熱伝導率を低く抑えることができるため、建材として使用する上で外部からの熱の流入を抑える効果も得ることができる。
【実施例】
【0034】
ガラス廃材を3.0mm以下に粉砕したものに、3重量%の割合で発泡剤(カルシウム)を加えて均一に混合した後、加熱溶融して発泡ガラスとし、これに冷水(5℃以下)をかけて粉砕し、更にクラッシャーにより細かい粒子に粉砕して、発泡ガラス粒を得た。一方、粘土瓦の廃棄物をクラッシャーにより細かい粒子に粉砕して、セラミックス粒を得た。
得られた発泡ガラス粒とセラミックス粒を均一に混合し、半乾式プレス成形により所定形状の瓦素成形材とした。乾燥後、この素成形材に施釉を施し、ローラハースに投入して所定温度で約3時間焼成して、瓦を得た。
【0035】
表1に、発泡ガラス粒とセラミックス粒の粒径、混合比率、焼成温度を示す。重量は、25kg/mを閾値として、それより重いものを×、軽いものを○、特に軽いものを◎で評価した。破壊荷重については、33kgfを閾値として、それより小さいものを×、大きいものを○で評価した。踏みワレについては、屋根葺きしたときに1枚でもワレが発生したものを△、ワレが発生しなかったものを○で評価した。外観については、表面の凹凸状況を目視検査により評価した。
この結果、発泡ガラス粒の配合を多くすると軽量性がよくなる傾向があるが、多過ぎると破壊荷重が小さくなって踏みワレを発生させることとなり、一方、セラミックス粒を多くすると強度は大きくなる傾向があるが、多過ぎると軽量化が図れないことが確認できた。また、この表1から、発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率(質量比)は、3:7〜7:3の範囲が好ましいことが確認できた。
【0036】
【表1】

【符号の説明】
【0037】
1 材料主体
2 発泡ガラス粒
3 セラミックス粒
4 溶融ガラス
5 独立気泡
10 瓦
11 タイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料主体が、発泡ガラス粒とセラミックス粒を均一に混合して所定形状に焼成したものであって、前記発泡ガラス粒表面の溶融により内部に気泡を有する発泡ガラス粒とセラミックス粒とが結合され、かつ、この結合した粒子間に多数の独立気泡が形成された構造となっていることを特徴とする軽量性に優れた建築用材料。
【請求項2】
発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率は、3:7〜7:3の範囲である請求項1に記載の軽量性に優れた建築用材料。
【請求項3】
発泡ガラス粒は、ガラス廃材と発泡剤を使用して製造した発泡ガラスを粉砕処理して得られる粒径が3mm以下のものである請求項1または2に記載の軽量性に優れた建築用材料。
【請求項4】
セラミックス粒は、900℃以上で焼成したセラミックス廃材を粉砕処理して得られる粒径が3mm以下のものである請求項1または2に記載の軽量性に優れた建築用材料。
【請求項5】
材料主体の重量が、25kg/m以下である請求項1〜4のいずれかに記載の軽量性に優れた建築用材料。
【請求項6】
材料主体が、瓦、壁材、タイルのいずれかに用いられる請求項1〜5のいずれかに記載の軽量性に優れた建築用材料。
【請求項7】
発泡ガラス粒とセラミックス粒を主原料とし、発泡ガラス粒:セラミックス粒の配合比率を3:7〜7:3の範囲で均一に混合した混合物を加圧成形して所定形状の素成形材とした後、この素成形材を700〜900℃で焼成することにより、前記発泡ガラス粒表面のみを溶融して内部に気泡を有する発泡ガラス粒とセラミックス粒を結合するとともに、結合した粒子間に多数の独立気泡を形成することを特徴とする軽量性に優れた建築用材料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−153568(P2012−153568A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14348(P2011−14348)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(392005470)新東株式会社 (15)
【出願人】(390008796)川村工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】