軽量耐火間仕切壁の目地構造及びその施工方法
【課題】面材を付加的に施工せず、しかも、特殊な耐火目地材、耐火ジョイナー等を使用することもなく、軽量耐火間仕切壁の壁面に目透し目地を簡易に形成する。
【解決手段】下張り面材(5)を横張り形態に間柱(4)に固定し、下張り面材の室内側に上張り面材(6)を縦張り形態に固定し、隣接する上張り面材の側面(62)を相互離間して目透し目地(31)を形成する。目透し目地の目地底(33)に位置する下張り面材の突付け目地(22)を目地幅(W)に亘ってシール材(15)で気密処理した後、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材(10)を目透し目地の目地底に敷設し、目地底を帯状材によって室内空間(R)から隠蔽する。
【解決手段】下張り面材(5)を横張り形態に間柱(4)に固定し、下張り面材の室内側に上張り面材(6)を縦張り形態に固定し、隣接する上張り面材の側面(62)を相互離間して目透し目地(31)を形成する。目透し目地の目地底(33)に位置する下張り面材の突付け目地(22)を目地幅(W)に亘ってシール材(15)で気密処理した後、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材(10)を目透し目地の目地底に敷設し、目地底を帯状材によって室内空間(R)から隠蔽する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量耐火間仕切壁の目地構造及びその施工方法に関するものであり、より詳細には、乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目透し目地の目地構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁体は、建築物単体又は建築物固有の条件や、建築物の敷地及び配置等の集団的又は都市計画的な条件等に基づき、強度、防耐火性能、耐震性能等の諸性能に関する建築基準法上の各種規制を受ける。一般に、防火区画、竪穴区画、排煙区画等を構成する耐火間仕切壁は、鉄筋コンクリート構造の壁体、コンクリートブロック等のブロック構造の壁体、PCa板、ALC板等のパネル構造の壁体、或いは、所定の板厚・材質・枚数の面材(石膏ボード、珪酸カルシウム板等)を建込んで壁面を形成する乾式工法の耐火間仕切壁によって施工される。
【0003】
一般に、PCa板、ALC板等の高重量パネルより形成される乾式工法のパネル構造壁では、隣接するパネル同士の接合部に生じる継目を気密処理又は水密処理する必要が生じる。パネル構造壁の継目処理は、紐状又はチューブ状の弾性目地材や発泡材等をパネル間の目地部に挿入又は充填し、所望により、目地部の表層部分をシーリング材等によって仕上げる構成の目地構造が採用されている。この種の目地は、通常は、パネル構造壁全体の耐火性能を損なわない性能を要求されるが、パネル自体が比較的厚い板厚(例えば、50〜200mm程度)を有するので、例えば、耐火性目地材を目地部に装着し又は充填し、或いは、目地部の断面を構造的に工夫するといった対策を採用し、これにより、所望の耐火性能を発揮する耐火目地をパネル構造壁に施工することができる(特開昭63−32039号公報、特開2007−70834号公報等)。
【0004】
他方、所定の板厚・材質・枚数の面材(石膏ボード、珪酸カルシウム板等)を建込んで壁面を形成する乾式工法の耐火間仕切壁(以下、「軽量耐火間仕切壁」という。)においては、一枚の面材の板厚が5〜30mm程度であるにすぎないので、パネル構造壁の目地のような複雑な目地構造を採用し難い事情がある。軽量耐火間仕切壁の壁面において一般に採用されている目地の種類として、面材の縁部を互いに突き付ける突付け目地、所定間隔を隔てて面材の縁部を離間させる目透し目地、樹脂製ジョイナー等の目地材によって面材を連接するジョイナー目地、目透し目地の目地部にアクリル系シーラント等のシーリング材を充填して仕上げたシーリング目地等が挙げられるが、このような汎用の目地構造では、目地部分において局所的に耐火性能が低下又は劣化する傾向がある。
【0005】
本発明者等の実験によれば、突付け目地を備えた軽量耐火間仕切壁に関して耐火試験を実施すると、加熱される面(炉内側の加熱面又は受熱面)とは反対の側の面(非加熱面又は放熱面)において、表層の面材の継目(突付け目地)に生じた微小な隙間から熱風又は熱ガスが室内側に吹抜け、漏出し又は噴流する現象がしばしば発生する。このような状態では、目地部及びその近傍の温度は許容温度(約200℃)を超えるので、耐火間仕切壁に要求される所望の耐火性能は得られない。これは、局所的な耐火性能の劣化又は欠損が目地部に生じ、火災時に熱気が目地部から室内側に漏出し、これにより、局部的な高温域が目地部又はその近傍に発生することに起因する。この現象が目透し目地において更に顕著に生じることはいうまでもないが、このような現象は、汎用のジョイナー材を用いたジョイナー目地においても、同様に生じる。
【0006】
このため、この種の目地を軽量耐火間仕切壁に施工する場合、目地を設けた壁体表層の面材を除いた状態の壁体で所期の耐火性能を確保し、或いは、耐火性能を有する特殊な目地材等を目地部に施工する対策を採用する必要が生じる。前者の場合、壁体表層に付加的な面材を更に施工して面材の枚数を増大する必要が生じるので、壁厚及び工事費が増大する問題が生じる。後者の場合、壁厚が増大しない点で優位性があるが、反面、特殊な目地材等が必要とされる。後者の事例として、本出願人は、金属板を所定形状に成形してなる目地材、或いは、長尺且つ方形断面の不燃材を帯板状金属板に一体化してなる目地材を面材の目地部に挿入した構成の目地構造を特許第4021156号において提案している。また、耐火性能を有するシーリング材又はジョイナー部材や、熱膨張性耐火材料等によって目地部等の耐火欠損を防止することが、特開2005−290243号公報、特開2001−105517号公報、特開2006−97466号公報、特開2006−9428号公報に記載されている。
【0007】
本出願人は又、軽量耐火間仕切壁に関し、鋼製スタッドの片側面のみに石膏ボード又は珪酸カルシウム板等の面材を張り付けた構成を有する耐火間仕切壁を特開2002−369891号公報において提案している。本出願人は、このような形式の耐火間仕切壁構造に関し、耐火試験を繰返し実施した結果、上記のとおり、隣接するボード材料の間の継目又は目地の構造・形態等が間仕切壁の耐火性能に極めて大きく影響する現象を認識した。このため、この種の軽量耐火間仕切壁を施工する場合には、目地部の室内側表面にガラス繊維製補強テープ等を張った後、ジョイントコンパウンド等によって目地部の表面を平滑に仕上げ、これにより、目地部を実質的に完全に閉塞し、所望の耐火性能を確保する対策が採られている。本出願人は又、このような軽量耐火間仕切壁構造の改良技術として、上張り面材と下張り面材との間に面材背後間隙及び隠蔽溝を形成し、シーリング材を面材背後間隙及び隠蔽溝に圧入又は充填してなる耐火間仕切壁構造を特開2010−59634号公報において提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−32039号公報
【特許文献2】特開2007−70834号公報
【特許文献3】特許第4021156号公報
【特許文献4】特開2005−290243号公報
【特許文献5】特開2001−105517号公報
【特許文献6】特開2006−97466号公報
【特許文献7】特開2006−9428号公報
【特許文献8】特開2002−369891号公報
【特許文献9】特開2010−59634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
壁面に塗装仕上げ又はクロス仕上げを施した軽量耐火間仕切壁が、多くの建築物において施工されている。このような間仕切壁においては、地震等の外力が間仕切壁に作用すると、塗装皮膜にクラックが発生したり、クロスの捩れ等の不具合が生じることが懸念される。このため、廊下等のように長さ10mを超える間仕切壁や、壁の高さが高い間仕切壁等に関して、塗装皮膜のクラックやクロスの捩れ等の発生を未然に回避すべく、壁面表層に予め目透し目地を形成したいという建築設計者又は建設工事関係者等の要望が潜在的に存在する。
【0010】
軽量耐火間仕切壁に目透し目地を形成するには、壁体表層に付加的な面材を施工するとともに、この面材を除いた状態の壁体で所期の耐火性能を確保することも考えられるが、このような間仕切壁では、前述のとおり、壁面の面材枚数が増加する結果、壁厚が増大するとともに、間仕切壁の材料費、作業工数、工期等が増大するという問題が生じる。
【0011】
他方、前述の如く、特殊な構造又は素材の目地材等を用いて目透し目地を施工することも考えられるが、これも又、間仕切壁の材料費、作業工数、工期等を増大させる要因となる。
【0012】
従って、面材を付加的に施工せず、しかも、特殊な耐火目地材、耐火ジョイナー等を使用することもなく、軽量耐火間仕切壁の壁面に目透し目地を簡易に形成することができる技術を開発することが望まれる。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、面材を付加的に施工せず、しかも、特殊な耐火目地材、耐火ジョイナー等を使用することもなく、軽量耐火間仕切壁の壁面に目透し目地を簡易に形成することができる軽量耐火間仕切壁の目地構造及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成すべく、下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁の目地構造において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設し、該目地底を前記帯状材によって室内空間から隠蔽したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造を提供する。
【0015】
他の観点より、本発明は、下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目地の施工方法において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設し、該目地底を前記帯状材によって室内空間から隠蔽することを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地施工方法を提供する。
【0016】
本発明の上記構成によれば、目透し目地は、壁体表面を分断し、内装仕上げ材料の連続面を分割することができるので、地震時等の壁体の挙動・変形等に起因したクラック又は捩れ等が連続塗装表面又は連続クロス面に発生するのを防止することができる。また、上張り面材の表面に施工される塗装又はクロス等の内装仕上げ材料の縁部を目透し目地の目地内に延入させることができるので、内装仕上げ材料の縁部の損傷、捲れ等を回避することができる。
【0017】
また、火災時に目透し目地内に吹抜けようとする火災空間の熱ガス流は、上記帯状材によって規制される。通気性を有する帯状材は、熱ガスが一気に目地内に流出するのを阻止し、熱ガスを徐々に目地内に流出させる。このため、目地内空間の温度は次第に上昇するが、上記帯状材を使用しない場合と比較すると、かなり遅延する。よって、上記構成の目地構造によれば、軽量耐火間仕切壁の耐火性能は大きく低下又は劣化せず、従って、軽量耐火間仕切壁は、所要の耐火時間(1時間耐火)の耐火性能を発揮することができる。
【0018】
更に、上記目地構造を施工する本発明の目地施工方法によれば、上張り面材の施工後に下張り面材の突き付け目地を目透し目地の目地幅に亘ってのみ気密処理すれば良いので、作業上及び工程管理上、極めて有利である。
【0019】
本発明は又、上記構成の目地構造において、前記目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘って気密シール材によって気密処理し、該シール材を前記帯状材と前記下張り面材との間に介挿したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造を提供する。
【0020】
他の観点より、本発明は、上記構成の目地施工方法において、隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成した後、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理し、しかる後、前記帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設することを特徴とする目地施工方法を提供する。
【0021】
このような本発明の構成によれば、シール材は、熱ガスのガス圧上昇に起因して過大な隙間が下張り面材の目地部に発生するのを効果的に防止する。このようにシール材及び帯状材の双方を備えた本発明の目地構造によれば、シール材及び帯状材の相乗効果により、非火災空間に位置する目地内空間の温度上昇をかなり抑制することができ、従って、軽量耐火間仕切壁は、所要の耐火時間(1時間耐火)の耐火性能を確実に発揮する。また、このような目地構造を施工するための本発明の目地施工方法によれば、上張り面材の施工後に下張り面材の突き付け目地を目透し目地の目地幅に亘ってのみ気密処理すれば良いので、作業上又は工程管理上、極めて有利である。
【0022】
本発明は更に、下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁の目地構造において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造を提供する。
【0023】
他の観点より、本発明は、下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目地の施工方法において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理することを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地施工方法を提供する。
【0024】
本発明の上記構成によれば、シール材は、熱ガスのガス圧上昇に起因して過大な隙間が下張り面材の目地部に発生するのを効果的に防止する。このような構成の目地構造によれば、軽量耐火間仕切壁の耐火性能は大きく低下又は劣化せず、従って、軽量耐火間仕切壁は、所要の耐火時間(1時間耐火)の耐火性能を発揮する。また、目透し目地は、上記の如く、クラック又は捩れ等が連続塗装表面又は連続クロス面に発生するのを防止する。更には、上張り面材の表面に施工される塗装又はクロス等の内装仕上げ材料の縁部を目透し目地の目地内に延入させることができるので、内装仕上げ材料の縁部の損傷、捲れ等を回避することができる。また、上記目地構造を施工するための本発明の目地施工方法によれば、上張り面材の施工後に下張り面材の突き付け目地を目透し目地の目地幅に亘ってのみ気密処理すれば良いので、作業上又は工程管理上、極めて有利である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の目地構造及びその施工方法によれば、面材を付加的に施工せず、しかも、特殊な耐火目地材、耐火ジョイナー等を使用することもなく、軽量耐火間仕切壁の壁面に目透し目地を簡易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の好適な実施例に係る目地構造を備えた間仕切壁の部分斜視図及び部分拡大横断面図である。
【図2】図2は、図1に示す間仕切壁の縦断面図及び部分拡大縦断面図である。
【図3】図3(A)は、図1(C)のI−I線における断面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す目地部の正面図である。
【図4】図4は、下張り面材の施工工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図5】図5は、上張り面材の施工工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図6】図6は、下張り面材の横目地の目地処理工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図7】図7は、不燃帯状材料を目透し目地の縦目地内に挿入する目地処理工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図8】図8は、塗装又はクロス等の内装仕上げ材料を上張り面材に施工する仕上げ工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図9】図9は、図1〜図8に示す間仕切壁の耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図10】図10は、下張りシール材の施工を省略した間仕切壁に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図11】図11は、不燃帯状材料の施工を省略した構成の間仕切壁に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図12】図12は、下張りシール材及び不燃帯状材料の双方の施工を省略した間仕切壁(比較例1)に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図13】図13は、図12に示す間仕切壁においてパテ材を下張り面材の横目地内に充填した間仕切壁(比較例2)に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図14】図14は、本発明の目地構造の原理を説明するための横断面図、部分拡大横断面図及び縦断面図であり、間仕切壁構造は、下張り面材及び上張り面材によって概念的且つ概略的に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好適な実施形態によれば、上記下張り面材及び上張り面材として、石膏ボード、強化石膏ボード、構造用石膏ボード、シージング石膏ボード、化粧石膏ボード、普通硬質石膏ボード、石膏板、ガラス繊維不織布(グラスティッシュ)入り石膏板等の石膏系面材の他、珪酸カルシウム板、セメント板等を好適に使用し得る。好ましくは、上記不燃帯状材料は、ロックウール、グラスウール、セラミックウール等の不燃繊維材料のフェルト又は板体からなり、上記シール材は、ウレタン樹脂系シーリング材や変性シリコン系シーリング材からなる。
【0028】
本発明の好適な実施形態においては、上張り面材を構成する石膏ボードの板厚は9.5mm以上、例えば、12.5mmに設定され、ロックウールのフェルト又は板体の厚さは、2〜6mmの範囲、好適には、3〜5mmの範囲、例えば、4mmに設定される。好ましくは、目透し目地の目地幅は、上張り面材の板厚以下の寸法に設定され、例えば、板厚12.5mmの石膏ボードを上張り面材として用いた場合、目透し目地の目地幅は、12.5mm以下に設定される。
【0029】
好ましくは、下張り面材は、横張り形態に施工され、上張り面材は、縦張り形態に施工される。ベベルエッジを有する石膏ボードを面材として使用した場合、V字形溝が目透し目地の目地底に形成されるので、上記シール材は、上張り面材の施工後にV字形溝に充填される。上記不燃帯状材料は、シール材施工後に目透し目地内に敷設され、シール材の粘着性又は接着性によって目透し目地の目地底に保持される。
【実施例1】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例に係る間仕切壁構造について詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の好適な実施例に係る目地構造を備えた間仕切壁の構成を示す部分斜視図及び部分拡大横断面図であり、図2は、図1に示す間仕切壁の縦断面図及び部分拡大縦断面図である。
【0032】
図1及び図2に示す如く、間仕切壁1は、鉄筋コンクリート構造の建築物内に構築される乾式工法且つ耐火構造の間仕切壁、即ち、軽量耐火間仕切壁であり、間仕切壁1の両側には、室内空間Rが区画又は画成される。鉄筋コンクリート構造の床構造体F1、F2及び梁Bが、建築物の構造躯体として図1及び図2に示されている。間仕切壁1の壁芯方向の端部、即ち、終端部(図示せず)は、柱又は壁等(図示せず)に接続される。
【0033】
図2に示すように、梁Bの下端面Ba及び梁Bの側面Bdは、セメントモルタル等の左官材料Bcによって左官仕上げされ、左官仕上面からなる塗装下地又はクロス下地等の内装下地面が形成される。本例においては、間仕切壁1の下端部は、間仕切壁1を構築する階の床構造体F1に支持され、間仕切壁1の上端部は、上階の梁Bに固定される。間仕切壁1の上端部は、上階の床構造体F2を構成するコンクリート床スラブ等の下面に固定しても良い。また、間仕切壁1の下端部は、床構造体F1上に構築される二重床の床面に固定しても良い。
【0034】
間仕切壁1は、アンカー等の固定具(図示せず)によって床スラブ等の床構造体F1上に固定された下部ランナ2と、同様の固定具(図示せず)によって梁Bの下面Baに固定された上部ランナ3と、上下のランナ2、3の間に垂直に建込まれた多数の間柱4とから構成される。間柱4は、軽量形鋼の鋼製スタッド(軽量鉄骨製スタッド)からなり、壁芯に沿って整列配置される。下張り面材5及び上張り面材6は、間柱4の両側に建込まれる。下張り面材5及び上張り面材6の上端部及び下端部は、梁Bの下面Ba及び床構造体F1の上面に突き付けられる。壁体両側の下張り面材5の間には、実質的に密閉された隠蔽空間が中空層(中空部)9として形成される。所望により、断熱・吸音材9'(図2に破線で示す)が中空層9に配設される。
【0035】
図1に示す如く、下張り面材5がボード固定用のスクリュービス(タッピン螺子)8によって間柱4に固定される。ビス8は、200mm以下の間隔を隔てて配置され、間柱4に沿って配列される。下張り面材5は横張り方向に配置され、下張り面材5の目地20が縦横(垂直・水平)に延在する。目地20は、縦目地21と横目地22とから構成される。図1(B)に示すように、縦目地21は突付け目地であり、左右に隣接する下張り面材5の端面51は互いに突き付けられる。図2(B)に示すように、横目地22も又、縦目地21と同じく、突付け目地であり、上下に隣接する下張り面材5の側面52は互いに突き付けられる。下張り面材5は、標準的なベベルエッジ形態の側縁部を有する強化石膏ボードであり、V字形の溝23がベベル面53によって横目地22の室内側部分に形成される。
【0036】
上張り面材6がステープル及び接着剤(図示せず)によって下張り面材5の室内側面に固定される。上張り面材6は、下張り面材5と同じく、標準的なベベルエッジ形態の側縁部を有する強化石膏ボードである。図1に示すように、上張り面材6は縦張り方向に配置され、上張り面材6の目地30が縦横(垂直・水平)に延びる。目地30は、縦目地31と横目地32とから構成される。図1(C)に示すように、縦目地31は目透し目地であり、左右に隣接する上張り面材6の側面62は目地幅Wだけ相互離間する。縦目地31の目地底33には、厚さ約4mmの不燃帯状材料10が敷設される。他方、横目地32は突付け目地であり、上下に隣接する上張り面材6の端面61は互いに突き付けられる。
【0037】
間仕切壁1を構成する部材として、例えば、以下の建築材料が使用される。
・下部ランナ2 :軽量形鋼(鋼製ランナ)C−65mm×40mm×0.8mm
・上部ランナ3 :軽量形鋼(鋼製ランナ)C−65mm×40mm×0.8mm
・間柱4:軽量形鋼(鋼製スタッド)C−65mm×45mm×0.8mm
・下張り面材5:強化石膏ボード・厚さ12.5mm(吉野石膏株式会社製品「タイガーボード(登録商標)・タイプZ」)、910mm×1820mm
・上張り面材6:強化石膏ボード・厚さ12.5mm(吉野石膏株式会社製品「タイガーボード(登録商標)・タイプZ」)、910mm×1820mm
・断熱・吸音材9':グラスウール密度24kg/m3・厚さ50mm
・目地幅W:12.5mm
【0038】
図2に示すように、室内空間Rの内装壁面を構成する塗膜又はクロス等の内装仕上げ材料7が、上張り面材6の表面に塗着又は貼着される。内装仕上げ材料7は、上張り面材6と梁Bの下面Baとの連接部(入隅部)を介して梁Bの下面Ba及び側面Bdに連続する。従って、内装仕上げ材料7は、上張り面材6及び梁Bの表面全域に延在する。
【0039】
図3(A)は、図1(C)のI−I線における断面図である。図3(B)は、図3(A)に示す目地部の正面図である。
【0040】
図3(A)には、上張り面材6の縦目地31の背後に位置する下張り面材5の横目地22が示されている。ベベル面53によって形成されたV字形溝23には、目地幅Wの範囲内において下張りシール材15が充填される。下張りシール材15として、ウレタン樹脂系シーリング材(例えば、吉野石膏株式会社製品「タイガーUタイト」(登録商標))、変性シリコン系シーリング材(例えば、吉野石膏株式会社製品「タイガー耐火シーラント」)等を好適に使用し得る。下張りシール材15の室内側面は、下張り面材5の室内側面と概ね同一の面内に位置しており、下張りシール材15の室内側面と下張り面材5の室内側面とは、概ね面一である。所望により、室内側表面が室内側に隆起し又は盛り上がるように下張りシール材15を施工しても良い。好ましくは、下張りシール材15の比重は、0.8〜2.0、好ましくは1.0〜1.7、より好ましくは1.3〜1.5である。
【0041】
不燃帯状材料10は、縦目地31内に敷設され、下張りシール材15の粘着性又は接着性によって目地底33に保持される。不燃帯状材料10は、不燃繊維材料の集合体からなり、通気性を有する。不燃繊維材料として、ロックウール、グラスウール、セラミックウール等が挙げられる。不燃帯状材料10は、このような不燃繊維材料のフェルト又は板体からなり、通過熱ガス量を考慮するとその比重は80〜250kg/m3、好ましくは150〜220kg/m3、より好ましくは200〜220kg/m3である。不燃帯状材料10として、吉野石膏株式会社製「タイガーロックフェルト」(登録商標)又は「タイガー目地フェルト」(商標出願中)を好適に使用し得る。図1(C)に示すように、面材背後間隙11が下張り面材5と上張り面材6との間に形成される。面材背後間隙11は、面材5、6間の接着剤層(図示せず)の厚さによって決定されるが、概ね3mm以下の寸法であり、通常は、2mm以下の寸法である。火災時には、火災空間の熱ガスが中空部9から面材背後間隙11に流入し、破線の矢印で図1(C)に示すように縦目地31の目地内に吹抜けようとするが、不燃帯状材料10は、熱ガスが一気に縦目地31の目地内に流出するのを阻止し、熱ガスを徐々に縦目地31の目地内に流出させるように機能する。即ち、不燃帯状材料10は、熱ガスが縦目地31の目地内に流出するのを規制し、従って、縦目地31の目地内空間の温度上昇は遅延する。また、下張りシール材15は、火災側空間における熱ガスのガス圧上昇に起因して過大な隙間が横目地22又はその近傍に発生するのを防止する。
【0042】
図4〜図8は、縦目地31の施工方法を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【0043】
図4は、下張り面材の施工工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。図4には、下張り面材5をスクリュービス8によって間柱4に固定した状態が示されている。下張り面材5の横目地22には、V字形溝23がベベル面53によって形成される。
【0044】
図5は、上張り面材の施工工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。図5に示すように上張り面材6がステープル及び接着剤(図示せず)によって下張り面材5の室内側面に固定される。上張り面材6は、側面62が目地幅Wだけ離間するように配置され、左右の側面62の間には、目透し目地の縦目地31が形成される。下張り面材5の横目地22は、縦目地31の目地底33に露出する。
【0045】
図6は、下張り面材の横目地の気密処理工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図であり、図7は、不燃帯状材料を目透し目地の縦目地内に挿入する帯状材料敷設工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。下張り面材5の横目地22には、下張りシール材15が目地幅Wに亘って図6に示す如く充填される。更に、不燃帯状材料10が、図7に示すように縦目地31内に敷設される。不燃帯状材料10は、板材等の治具を利用して縦目地31内に押し込まれ、下張りシール材15の粘着性又は接着性によって目地底33に保持される。
【0046】
図8は、塗装又はクロス等の内装仕上げ材料を上張り面材に施工する仕上げ工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。塗膜又はクロス等の内装仕上げ材料7(斜線で示す)が、上張り面材6の表面に施工され、内装仕上げ材料7の縁部は、縦目地31内に延入し、上張り面材6の側面62において終端する。内装仕上げ材料7の縁部が目地内において終端するので、内装仕上げ材料7の縁部の損傷、捲れ等を回避することができる。
【0047】
かくして、縦目地31と交差する横目地22のV字形溝23内に下張りシール材15を充填し、縦目地31の目地底33に不燃帯状材料10を敷設してなる目透し目地が室内壁面に形成される。また、内装仕上げ材料7を縦目地31によって分断し、内装仕上げ材料7の連続面を確実に分割することができるので、地震時等の壁体の挙動・変形等に起因したクラック又は捩れ等が連続塗装表面又は連続クロス面に発生するのを確実に防止することができる。本発明者等の耐火試験の結果、上記構造の縦目地31は、間仕切壁1に要求される耐火性能を損なわないことが判明した。以下、間仕切壁1の耐火性能について説明する。
【0048】
図9は、間仕切壁1の耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。図10は、下張りシール材15の施工を省略した構成の間仕切壁1'に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。図11は、不燃帯状材料10の施工を省略した構成の間仕切壁1"に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。図12は、下張りシール材15及び不燃帯状材料10の双方の施工を省略した間仕切壁100(比較例1)に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。図13は、パテ材102を目地幅Wの範囲内において横目地22のV字形溝23内に充填した間仕切壁101(比較例2)に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【0049】
各図において、α、βは、非加熱側の表面の温度測定点を示しており、耐火試験において計測された計測点α、βの上昇温度が併記されている。なお、計測は、熱電対を用いて実施され、計測点α、βは、具体的には、各熱電対の設置位置を示す。
【0050】
各図における温度計測点α、βの位置は、次のとおりである。
【0051】
(1)図9及び図10に示す温度測定点αは、横目地22から上方に離間した不燃帯状材料10の室内側面であり、温度測定点βは、横目地22の直近に位置する不燃帯状材料10の室内側面である。
【0052】
(2)図11に示す温度測定点αは、横目地22から上方に離間した目地底33の室内側面であり、温度測定点βは、横目地22に充填された下張りシール材15の室内側面である。
(3)図12に示す温度測定点αは、横目地22から上方に離間した目地底33の室内側面であり、温度測定点βは、横目地22の室内側面である。
【0053】
(4)図13に示す温度測定点αは、横目地22から上方に離間した目地底33の室内側面であり、温度測定点βは、横目地22に充填されたパテ材102の室内側面である。
【0054】
軽量耐火間仕切壁は、非耐力壁であるので、耐火構造として要求される耐火時間は、1時間である。一般に、耐火試験においては、壁の供試体が耐火炉(加熱炉)に設置され、炉内バーナの燃焼作動により炉内温度が標準加熱曲線に従って上昇せしめられる。バーナに面しない非加熱側の壁体表面温度、壁の倒壊、亀裂・損傷等が耐火試験により計測又は観察される。1時間耐火の耐火性能試験では、加熱時間は1時間であるが、加熱終了後3時間経過時の観察により、壁体の安全性等が確認されるとともに、耐火試験開始時の初期温度(室温)を基準とした非加熱側の壁体表面温度の上昇温度が以下の条件に適合するか否か、という点が判定される。
【0055】
イ)平均上昇温度が140℃を超えないこと(表面温度が160℃(室温+140℃)に達しないこと)。
ロ)最高上昇温度が180℃を超えないこと(表面温度が200℃(室温+180℃)を超えないこと)。
【0056】
下張り面材5及び上張り面材6からなる両側2枚張りの中空の間仕切壁1において上張り面材6に目透し目地を形成すると、目地底部分は、下張り面材5の単枚張り構成となるので、耐火上の弱点、即ち、耐火欠損となる。このため、目地底部分に位置する温度測定点α、βにおける上昇温度の測定値に基づいて図9〜図13に示す各間仕切壁1、1'、1"、100、101の耐火性能を実質的に評価することができる。
【0057】
図9に示すとおり、本実施例の間仕切壁1に関する耐火試験において、温度測定点α、βの上昇温度は、72℃及び76℃であった。また、間仕切壁1の非加熱側面の平均上昇温度は、73℃であった。従って、間仕切壁1は、上昇温度に関する上記判定条件に適合した。また、間仕切壁1の倒壊、亀裂・損傷等は観察されず、従って、間仕切壁1は、軽量耐火間仕切壁に要求される1時間耐火の耐火性能を発揮することが認められた。
【0058】
図10及び図11に示すように、不燃帯状材料10又は下張りシール材15の一方を省略した間仕切壁1'、1"においては、温度測定点α、βの上昇温度は、72〜171℃であり、非加熱側面の平均上昇温度は、77〜78℃であった。従って、間仕切壁1'、1"は、上昇温度に関する上記判定条件に適合した。また、間仕切壁1'、1"の倒壊、亀裂・損傷等は観察されず、従って、間仕切壁1は、軽量耐火間仕切壁に要求される1時間耐火の耐火性能を発揮することが認められた。
【0059】
他方、下張りシール材15及び不燃帯状材料10の双方の施工を省略した比較例1(図12)の間仕切壁100では、温度測定点αの上昇温度は、141℃であり、温度測定点βの上昇温度は、245℃であった。また、間仕切壁100の非加熱側面の平均上昇温度は、99℃であった。従って、間仕切壁100は、上昇温度に関する上記判定条件(最高上昇温度<180℃)に適合せず、軽量耐火間仕切壁に要求される1時間耐火の耐火性能を発揮しないことが認められた。
【0060】
また、間仕切壁100においてジョイントセメント等のパテ材102を横目地22のV字形溝23内に充填した間仕切壁101においては、温度測定点αの上昇温度は、141℃であり、温度測定点βの上昇温度は、202℃であった。また、間仕切壁101の非加熱側面の平均上昇温度は、91℃であった。従って、間仕切壁101は、上昇温度に関する上記判定条件(最高上昇温度<180℃)に適合せず、軽量耐火間仕切壁に要求される1時間耐火の耐火性能を発揮しないことが認められた。
【0061】
図14は、本発明の目地構造の原理を説明するための横断面図、部分拡大横断面図及び縦断面図である。
【0062】
一方の室に火災が発生した状況が図14に示されている。火災によって発生した熱ガスGが間仕切壁1の中空部9内に流入する。中空部9の熱ガスGは、破線の矢印で示すように、下張り面材5の縦目地21及び横目地22を介して面材背後間隙11に流入する。面材背後間隙11に流入した熱ガスGは、破線矢印で示すように縦目地31の目地内空間に吹抜けようとする。熱ガスGは又、横目地22を介して縦目地31の目地内空間に吹抜けようとする。このため、図12に示す比較例1の間仕切壁100では、縦目地21の目地内空間の上昇温度は、200℃を超えたと考えられる。また、図13に示す比較例2の間仕切壁101においては、熱ガスGは、縦目地31の目地内空間への流出をパテ材102によって初期的に阻止されるが、パテ材102の亀裂・損傷等によって熱ガスGが一気に目地内空間に流出し、この結果、縦目地21の目地内空間の温度が急激に上昇し、目地内空間の上昇温度が200℃を超えたと考えられる。
【0063】
他方、不燃帯状材料10は、熱ガスGが一気に縦目地31の目地内に流出するのを阻止するだけではなく、その通気性により、熱ガスGを徐々に縦目地31の目地空間に流出させる。縦目地31内の目地内空間の温度は次第に上昇するが、縦目地31の目地内空間の温度上昇は、比較例1、2に比べて、かなり遅延する。このような不燃帯状材料10の作用により、図9及び図10に示す間仕切壁1、1’においては、縦目地31の目地内空間の温度上昇が抑制されたものと考えられる。また、下張りシール材15は、横目地32から熱ガスGが一気に室内側に吹き抜けるのを阻止するとともに、熱劣化時においても、パテ材102のように大きな亀裂等を横目地32に形成しない。即ち、図11に示す間仕切壁1”においては、下張りシール材15が、熱ガスのガス圧上昇に起因して横目地22又はその近傍に過大な隙間が発生するのを防止するので、縦目地31の目地内空間の温度上昇を抑制し得たものと考えられる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能であることはいうまでもない。
【0065】
例えば、上記実施例の間仕切壁は、上張り面材の縦目地を目透し目地に形成したものであるが、上張り面材の横目地を目透し目地に形成することも可能である。
【0066】
また、上記実施例では、下張り面材及び上張り面材は、ベベルエッジを有する石膏系面材であるが、テーパエッジ又はスクエアエッジを有する石膏系面材を下張り面材及び上張り面材として使用しても良い。
【0067】
更に、下張り面材及び上張り面材として、石膏ボード(商品名「タイガーボード」(登録商標、吉野石膏株式会社製品))、硬質・高強度せっこうボード(商品名「タイガースーパーハード」(登録商標、吉野石膏株式会社製品))、超硬質・高強度せっこうボード(商品名「タイガーハイパーハードC」(登録商標、(吉野石膏株式会社製品))、構造用石膏ボード、シージング石膏ボード、化粧石膏ボード等の石膏ボード製品、ガラス繊維不織布入り石膏板(商品名「タイガーグラスロック」(登録商標、吉野石膏株式会社製品))、スラグ石膏板(商品名「アスノン」(登録商標、エヌビーエル株式会社製品)等)、セメント板(「デラクリート」(登録商標、ユナイテッド・ステイツ・ジプサム社製品)等)、繊維混入石膏板(商品名「エフジーボード」(株式会社エーアンドエーマテリアル製品)等)、押し出し成型板(商品名「クリオンスタッドレスパネル」(クリオン株式会社製品)等)、珪酸カルシウム板等を使用しても良い。
【0068】
また、本発明の目地構造の構成は、鋼製スタッド(間柱)を有する軸組構造且つ中空の軽量耐火間仕切壁のみならず、木製間柱を用いた中空の軽量耐火間仕切壁や、ノンスタッド構造又はスタッドレス構造の中空の軽量耐火間仕切壁、或いは、鋼製スタッドの片側面のみに面材を取付けた構成を有する軽量耐火間仕切壁等に適用し得るものである。
【0069】
更には、上記不燃帯状材料として、ロックウールのフェルト又は板体の他、グラスウール、セラミックウール等のフェルト又は板体を使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、下張り面材及び上張り面材を建込んで両側の壁面を形成する乾式工法の耐火間仕切壁に設けられる目地構造及びその施工方法に適用される。本発明の目地構造及びその施工方法によれば、面材を付加的に施工せず、しかも、特殊な耐火目地材、耐火ジョイナー等を使用することもなく、軽量耐火間仕切壁の壁面に目透し目地を簡易に形成することができるので、実用的に極めて有利である。
【符号の説明】
【0071】
1、1'、1" 軽量耐火間仕切壁
2 下部ランナ
3 上部ランナ
4 間柱
5 下張り面材
6 上張り面材
7 内装仕上げ材料
8 スクリュービス
9 中空部
10 不燃帯状材料(不燃繊維材料の帯状材)
15 下張りシール材
20、30 目地
21、31 縦目地
22、32 横目地
23 V字形溝
33 目地底
R 室内空間
G 熱ガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量耐火間仕切壁の目地構造及びその施工方法に関するものであり、より詳細には、乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目透し目地の目地構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁体は、建築物単体又は建築物固有の条件や、建築物の敷地及び配置等の集団的又は都市計画的な条件等に基づき、強度、防耐火性能、耐震性能等の諸性能に関する建築基準法上の各種規制を受ける。一般に、防火区画、竪穴区画、排煙区画等を構成する耐火間仕切壁は、鉄筋コンクリート構造の壁体、コンクリートブロック等のブロック構造の壁体、PCa板、ALC板等のパネル構造の壁体、或いは、所定の板厚・材質・枚数の面材(石膏ボード、珪酸カルシウム板等)を建込んで壁面を形成する乾式工法の耐火間仕切壁によって施工される。
【0003】
一般に、PCa板、ALC板等の高重量パネルより形成される乾式工法のパネル構造壁では、隣接するパネル同士の接合部に生じる継目を気密処理又は水密処理する必要が生じる。パネル構造壁の継目処理は、紐状又はチューブ状の弾性目地材や発泡材等をパネル間の目地部に挿入又は充填し、所望により、目地部の表層部分をシーリング材等によって仕上げる構成の目地構造が採用されている。この種の目地は、通常は、パネル構造壁全体の耐火性能を損なわない性能を要求されるが、パネル自体が比較的厚い板厚(例えば、50〜200mm程度)を有するので、例えば、耐火性目地材を目地部に装着し又は充填し、或いは、目地部の断面を構造的に工夫するといった対策を採用し、これにより、所望の耐火性能を発揮する耐火目地をパネル構造壁に施工することができる(特開昭63−32039号公報、特開2007−70834号公報等)。
【0004】
他方、所定の板厚・材質・枚数の面材(石膏ボード、珪酸カルシウム板等)を建込んで壁面を形成する乾式工法の耐火間仕切壁(以下、「軽量耐火間仕切壁」という。)においては、一枚の面材の板厚が5〜30mm程度であるにすぎないので、パネル構造壁の目地のような複雑な目地構造を採用し難い事情がある。軽量耐火間仕切壁の壁面において一般に採用されている目地の種類として、面材の縁部を互いに突き付ける突付け目地、所定間隔を隔てて面材の縁部を離間させる目透し目地、樹脂製ジョイナー等の目地材によって面材を連接するジョイナー目地、目透し目地の目地部にアクリル系シーラント等のシーリング材を充填して仕上げたシーリング目地等が挙げられるが、このような汎用の目地構造では、目地部分において局所的に耐火性能が低下又は劣化する傾向がある。
【0005】
本発明者等の実験によれば、突付け目地を備えた軽量耐火間仕切壁に関して耐火試験を実施すると、加熱される面(炉内側の加熱面又は受熱面)とは反対の側の面(非加熱面又は放熱面)において、表層の面材の継目(突付け目地)に生じた微小な隙間から熱風又は熱ガスが室内側に吹抜け、漏出し又は噴流する現象がしばしば発生する。このような状態では、目地部及びその近傍の温度は許容温度(約200℃)を超えるので、耐火間仕切壁に要求される所望の耐火性能は得られない。これは、局所的な耐火性能の劣化又は欠損が目地部に生じ、火災時に熱気が目地部から室内側に漏出し、これにより、局部的な高温域が目地部又はその近傍に発生することに起因する。この現象が目透し目地において更に顕著に生じることはいうまでもないが、このような現象は、汎用のジョイナー材を用いたジョイナー目地においても、同様に生じる。
【0006】
このため、この種の目地を軽量耐火間仕切壁に施工する場合、目地を設けた壁体表層の面材を除いた状態の壁体で所期の耐火性能を確保し、或いは、耐火性能を有する特殊な目地材等を目地部に施工する対策を採用する必要が生じる。前者の場合、壁体表層に付加的な面材を更に施工して面材の枚数を増大する必要が生じるので、壁厚及び工事費が増大する問題が生じる。後者の場合、壁厚が増大しない点で優位性があるが、反面、特殊な目地材等が必要とされる。後者の事例として、本出願人は、金属板を所定形状に成形してなる目地材、或いは、長尺且つ方形断面の不燃材を帯板状金属板に一体化してなる目地材を面材の目地部に挿入した構成の目地構造を特許第4021156号において提案している。また、耐火性能を有するシーリング材又はジョイナー部材や、熱膨張性耐火材料等によって目地部等の耐火欠損を防止することが、特開2005−290243号公報、特開2001−105517号公報、特開2006−97466号公報、特開2006−9428号公報に記載されている。
【0007】
本出願人は又、軽量耐火間仕切壁に関し、鋼製スタッドの片側面のみに石膏ボード又は珪酸カルシウム板等の面材を張り付けた構成を有する耐火間仕切壁を特開2002−369891号公報において提案している。本出願人は、このような形式の耐火間仕切壁構造に関し、耐火試験を繰返し実施した結果、上記のとおり、隣接するボード材料の間の継目又は目地の構造・形態等が間仕切壁の耐火性能に極めて大きく影響する現象を認識した。このため、この種の軽量耐火間仕切壁を施工する場合には、目地部の室内側表面にガラス繊維製補強テープ等を張った後、ジョイントコンパウンド等によって目地部の表面を平滑に仕上げ、これにより、目地部を実質的に完全に閉塞し、所望の耐火性能を確保する対策が採られている。本出願人は又、このような軽量耐火間仕切壁構造の改良技術として、上張り面材と下張り面材との間に面材背後間隙及び隠蔽溝を形成し、シーリング材を面材背後間隙及び隠蔽溝に圧入又は充填してなる耐火間仕切壁構造を特開2010−59634号公報において提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−32039号公報
【特許文献2】特開2007−70834号公報
【特許文献3】特許第4021156号公報
【特許文献4】特開2005−290243号公報
【特許文献5】特開2001−105517号公報
【特許文献6】特開2006−97466号公報
【特許文献7】特開2006−9428号公報
【特許文献8】特開2002−369891号公報
【特許文献9】特開2010−59634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
壁面に塗装仕上げ又はクロス仕上げを施した軽量耐火間仕切壁が、多くの建築物において施工されている。このような間仕切壁においては、地震等の外力が間仕切壁に作用すると、塗装皮膜にクラックが発生したり、クロスの捩れ等の不具合が生じることが懸念される。このため、廊下等のように長さ10mを超える間仕切壁や、壁の高さが高い間仕切壁等に関して、塗装皮膜のクラックやクロスの捩れ等の発生を未然に回避すべく、壁面表層に予め目透し目地を形成したいという建築設計者又は建設工事関係者等の要望が潜在的に存在する。
【0010】
軽量耐火間仕切壁に目透し目地を形成するには、壁体表層に付加的な面材を施工するとともに、この面材を除いた状態の壁体で所期の耐火性能を確保することも考えられるが、このような間仕切壁では、前述のとおり、壁面の面材枚数が増加する結果、壁厚が増大するとともに、間仕切壁の材料費、作業工数、工期等が増大するという問題が生じる。
【0011】
他方、前述の如く、特殊な構造又は素材の目地材等を用いて目透し目地を施工することも考えられるが、これも又、間仕切壁の材料費、作業工数、工期等を増大させる要因となる。
【0012】
従って、面材を付加的に施工せず、しかも、特殊な耐火目地材、耐火ジョイナー等を使用することもなく、軽量耐火間仕切壁の壁面に目透し目地を簡易に形成することができる技術を開発することが望まれる。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、面材を付加的に施工せず、しかも、特殊な耐火目地材、耐火ジョイナー等を使用することもなく、軽量耐火間仕切壁の壁面に目透し目地を簡易に形成することができる軽量耐火間仕切壁の目地構造及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成すべく、下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁の目地構造において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設し、該目地底を前記帯状材によって室内空間から隠蔽したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造を提供する。
【0015】
他の観点より、本発明は、下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目地の施工方法において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設し、該目地底を前記帯状材によって室内空間から隠蔽することを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地施工方法を提供する。
【0016】
本発明の上記構成によれば、目透し目地は、壁体表面を分断し、内装仕上げ材料の連続面を分割することができるので、地震時等の壁体の挙動・変形等に起因したクラック又は捩れ等が連続塗装表面又は連続クロス面に発生するのを防止することができる。また、上張り面材の表面に施工される塗装又はクロス等の内装仕上げ材料の縁部を目透し目地の目地内に延入させることができるので、内装仕上げ材料の縁部の損傷、捲れ等を回避することができる。
【0017】
また、火災時に目透し目地内に吹抜けようとする火災空間の熱ガス流は、上記帯状材によって規制される。通気性を有する帯状材は、熱ガスが一気に目地内に流出するのを阻止し、熱ガスを徐々に目地内に流出させる。このため、目地内空間の温度は次第に上昇するが、上記帯状材を使用しない場合と比較すると、かなり遅延する。よって、上記構成の目地構造によれば、軽量耐火間仕切壁の耐火性能は大きく低下又は劣化せず、従って、軽量耐火間仕切壁は、所要の耐火時間(1時間耐火)の耐火性能を発揮することができる。
【0018】
更に、上記目地構造を施工する本発明の目地施工方法によれば、上張り面材の施工後に下張り面材の突き付け目地を目透し目地の目地幅に亘ってのみ気密処理すれば良いので、作業上及び工程管理上、極めて有利である。
【0019】
本発明は又、上記構成の目地構造において、前記目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘って気密シール材によって気密処理し、該シール材を前記帯状材と前記下張り面材との間に介挿したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造を提供する。
【0020】
他の観点より、本発明は、上記構成の目地施工方法において、隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成した後、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理し、しかる後、前記帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設することを特徴とする目地施工方法を提供する。
【0021】
このような本発明の構成によれば、シール材は、熱ガスのガス圧上昇に起因して過大な隙間が下張り面材の目地部に発生するのを効果的に防止する。このようにシール材及び帯状材の双方を備えた本発明の目地構造によれば、シール材及び帯状材の相乗効果により、非火災空間に位置する目地内空間の温度上昇をかなり抑制することができ、従って、軽量耐火間仕切壁は、所要の耐火時間(1時間耐火)の耐火性能を確実に発揮する。また、このような目地構造を施工するための本発明の目地施工方法によれば、上張り面材の施工後に下張り面材の突き付け目地を目透し目地の目地幅に亘ってのみ気密処理すれば良いので、作業上又は工程管理上、極めて有利である。
【0022】
本発明は更に、下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁の目地構造において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造を提供する。
【0023】
他の観点より、本発明は、下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目地の施工方法において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理することを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地施工方法を提供する。
【0024】
本発明の上記構成によれば、シール材は、熱ガスのガス圧上昇に起因して過大な隙間が下張り面材の目地部に発生するのを効果的に防止する。このような構成の目地構造によれば、軽量耐火間仕切壁の耐火性能は大きく低下又は劣化せず、従って、軽量耐火間仕切壁は、所要の耐火時間(1時間耐火)の耐火性能を発揮する。また、目透し目地は、上記の如く、クラック又は捩れ等が連続塗装表面又は連続クロス面に発生するのを防止する。更には、上張り面材の表面に施工される塗装又はクロス等の内装仕上げ材料の縁部を目透し目地の目地内に延入させることができるので、内装仕上げ材料の縁部の損傷、捲れ等を回避することができる。また、上記目地構造を施工するための本発明の目地施工方法によれば、上張り面材の施工後に下張り面材の突き付け目地を目透し目地の目地幅に亘ってのみ気密処理すれば良いので、作業上又は工程管理上、極めて有利である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の目地構造及びその施工方法によれば、面材を付加的に施工せず、しかも、特殊な耐火目地材、耐火ジョイナー等を使用することもなく、軽量耐火間仕切壁の壁面に目透し目地を簡易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の好適な実施例に係る目地構造を備えた間仕切壁の部分斜視図及び部分拡大横断面図である。
【図2】図2は、図1に示す間仕切壁の縦断面図及び部分拡大縦断面図である。
【図3】図3(A)は、図1(C)のI−I線における断面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す目地部の正面図である。
【図4】図4は、下張り面材の施工工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図5】図5は、上張り面材の施工工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図6】図6は、下張り面材の横目地の目地処理工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図7】図7は、不燃帯状材料を目透し目地の縦目地内に挿入する目地処理工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図8】図8は、塗装又はクロス等の内装仕上げ材料を上張り面材に施工する仕上げ工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【図9】図9は、図1〜図8に示す間仕切壁の耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図10】図10は、下張りシール材の施工を省略した間仕切壁に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図11】図11は、不燃帯状材料の施工を省略した構成の間仕切壁に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図12】図12は、下張りシール材及び不燃帯状材料の双方の施工を省略した間仕切壁(比較例1)に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図13】図13は、図12に示す間仕切壁においてパテ材を下張り面材の横目地内に充填した間仕切壁(比較例2)に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【図14】図14は、本発明の目地構造の原理を説明するための横断面図、部分拡大横断面図及び縦断面図であり、間仕切壁構造は、下張り面材及び上張り面材によって概念的且つ概略的に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好適な実施形態によれば、上記下張り面材及び上張り面材として、石膏ボード、強化石膏ボード、構造用石膏ボード、シージング石膏ボード、化粧石膏ボード、普通硬質石膏ボード、石膏板、ガラス繊維不織布(グラスティッシュ)入り石膏板等の石膏系面材の他、珪酸カルシウム板、セメント板等を好適に使用し得る。好ましくは、上記不燃帯状材料は、ロックウール、グラスウール、セラミックウール等の不燃繊維材料のフェルト又は板体からなり、上記シール材は、ウレタン樹脂系シーリング材や変性シリコン系シーリング材からなる。
【0028】
本発明の好適な実施形態においては、上張り面材を構成する石膏ボードの板厚は9.5mm以上、例えば、12.5mmに設定され、ロックウールのフェルト又は板体の厚さは、2〜6mmの範囲、好適には、3〜5mmの範囲、例えば、4mmに設定される。好ましくは、目透し目地の目地幅は、上張り面材の板厚以下の寸法に設定され、例えば、板厚12.5mmの石膏ボードを上張り面材として用いた場合、目透し目地の目地幅は、12.5mm以下に設定される。
【0029】
好ましくは、下張り面材は、横張り形態に施工され、上張り面材は、縦張り形態に施工される。ベベルエッジを有する石膏ボードを面材として使用した場合、V字形溝が目透し目地の目地底に形成されるので、上記シール材は、上張り面材の施工後にV字形溝に充填される。上記不燃帯状材料は、シール材施工後に目透し目地内に敷設され、シール材の粘着性又は接着性によって目透し目地の目地底に保持される。
【実施例1】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例に係る間仕切壁構造について詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の好適な実施例に係る目地構造を備えた間仕切壁の構成を示す部分斜視図及び部分拡大横断面図であり、図2は、図1に示す間仕切壁の縦断面図及び部分拡大縦断面図である。
【0032】
図1及び図2に示す如く、間仕切壁1は、鉄筋コンクリート構造の建築物内に構築される乾式工法且つ耐火構造の間仕切壁、即ち、軽量耐火間仕切壁であり、間仕切壁1の両側には、室内空間Rが区画又は画成される。鉄筋コンクリート構造の床構造体F1、F2及び梁Bが、建築物の構造躯体として図1及び図2に示されている。間仕切壁1の壁芯方向の端部、即ち、終端部(図示せず)は、柱又は壁等(図示せず)に接続される。
【0033】
図2に示すように、梁Bの下端面Ba及び梁Bの側面Bdは、セメントモルタル等の左官材料Bcによって左官仕上げされ、左官仕上面からなる塗装下地又はクロス下地等の内装下地面が形成される。本例においては、間仕切壁1の下端部は、間仕切壁1を構築する階の床構造体F1に支持され、間仕切壁1の上端部は、上階の梁Bに固定される。間仕切壁1の上端部は、上階の床構造体F2を構成するコンクリート床スラブ等の下面に固定しても良い。また、間仕切壁1の下端部は、床構造体F1上に構築される二重床の床面に固定しても良い。
【0034】
間仕切壁1は、アンカー等の固定具(図示せず)によって床スラブ等の床構造体F1上に固定された下部ランナ2と、同様の固定具(図示せず)によって梁Bの下面Baに固定された上部ランナ3と、上下のランナ2、3の間に垂直に建込まれた多数の間柱4とから構成される。間柱4は、軽量形鋼の鋼製スタッド(軽量鉄骨製スタッド)からなり、壁芯に沿って整列配置される。下張り面材5及び上張り面材6は、間柱4の両側に建込まれる。下張り面材5及び上張り面材6の上端部及び下端部は、梁Bの下面Ba及び床構造体F1の上面に突き付けられる。壁体両側の下張り面材5の間には、実質的に密閉された隠蔽空間が中空層(中空部)9として形成される。所望により、断熱・吸音材9'(図2に破線で示す)が中空層9に配設される。
【0035】
図1に示す如く、下張り面材5がボード固定用のスクリュービス(タッピン螺子)8によって間柱4に固定される。ビス8は、200mm以下の間隔を隔てて配置され、間柱4に沿って配列される。下張り面材5は横張り方向に配置され、下張り面材5の目地20が縦横(垂直・水平)に延在する。目地20は、縦目地21と横目地22とから構成される。図1(B)に示すように、縦目地21は突付け目地であり、左右に隣接する下張り面材5の端面51は互いに突き付けられる。図2(B)に示すように、横目地22も又、縦目地21と同じく、突付け目地であり、上下に隣接する下張り面材5の側面52は互いに突き付けられる。下張り面材5は、標準的なベベルエッジ形態の側縁部を有する強化石膏ボードであり、V字形の溝23がベベル面53によって横目地22の室内側部分に形成される。
【0036】
上張り面材6がステープル及び接着剤(図示せず)によって下張り面材5の室内側面に固定される。上張り面材6は、下張り面材5と同じく、標準的なベベルエッジ形態の側縁部を有する強化石膏ボードである。図1に示すように、上張り面材6は縦張り方向に配置され、上張り面材6の目地30が縦横(垂直・水平)に延びる。目地30は、縦目地31と横目地32とから構成される。図1(C)に示すように、縦目地31は目透し目地であり、左右に隣接する上張り面材6の側面62は目地幅Wだけ相互離間する。縦目地31の目地底33には、厚さ約4mmの不燃帯状材料10が敷設される。他方、横目地32は突付け目地であり、上下に隣接する上張り面材6の端面61は互いに突き付けられる。
【0037】
間仕切壁1を構成する部材として、例えば、以下の建築材料が使用される。
・下部ランナ2 :軽量形鋼(鋼製ランナ)C−65mm×40mm×0.8mm
・上部ランナ3 :軽量形鋼(鋼製ランナ)C−65mm×40mm×0.8mm
・間柱4:軽量形鋼(鋼製スタッド)C−65mm×45mm×0.8mm
・下張り面材5:強化石膏ボード・厚さ12.5mm(吉野石膏株式会社製品「タイガーボード(登録商標)・タイプZ」)、910mm×1820mm
・上張り面材6:強化石膏ボード・厚さ12.5mm(吉野石膏株式会社製品「タイガーボード(登録商標)・タイプZ」)、910mm×1820mm
・断熱・吸音材9':グラスウール密度24kg/m3・厚さ50mm
・目地幅W:12.5mm
【0038】
図2に示すように、室内空間Rの内装壁面を構成する塗膜又はクロス等の内装仕上げ材料7が、上張り面材6の表面に塗着又は貼着される。内装仕上げ材料7は、上張り面材6と梁Bの下面Baとの連接部(入隅部)を介して梁Bの下面Ba及び側面Bdに連続する。従って、内装仕上げ材料7は、上張り面材6及び梁Bの表面全域に延在する。
【0039】
図3(A)は、図1(C)のI−I線における断面図である。図3(B)は、図3(A)に示す目地部の正面図である。
【0040】
図3(A)には、上張り面材6の縦目地31の背後に位置する下張り面材5の横目地22が示されている。ベベル面53によって形成されたV字形溝23には、目地幅Wの範囲内において下張りシール材15が充填される。下張りシール材15として、ウレタン樹脂系シーリング材(例えば、吉野石膏株式会社製品「タイガーUタイト」(登録商標))、変性シリコン系シーリング材(例えば、吉野石膏株式会社製品「タイガー耐火シーラント」)等を好適に使用し得る。下張りシール材15の室内側面は、下張り面材5の室内側面と概ね同一の面内に位置しており、下張りシール材15の室内側面と下張り面材5の室内側面とは、概ね面一である。所望により、室内側表面が室内側に隆起し又は盛り上がるように下張りシール材15を施工しても良い。好ましくは、下張りシール材15の比重は、0.8〜2.0、好ましくは1.0〜1.7、より好ましくは1.3〜1.5である。
【0041】
不燃帯状材料10は、縦目地31内に敷設され、下張りシール材15の粘着性又は接着性によって目地底33に保持される。不燃帯状材料10は、不燃繊維材料の集合体からなり、通気性を有する。不燃繊維材料として、ロックウール、グラスウール、セラミックウール等が挙げられる。不燃帯状材料10は、このような不燃繊維材料のフェルト又は板体からなり、通過熱ガス量を考慮するとその比重は80〜250kg/m3、好ましくは150〜220kg/m3、より好ましくは200〜220kg/m3である。不燃帯状材料10として、吉野石膏株式会社製「タイガーロックフェルト」(登録商標)又は「タイガー目地フェルト」(商標出願中)を好適に使用し得る。図1(C)に示すように、面材背後間隙11が下張り面材5と上張り面材6との間に形成される。面材背後間隙11は、面材5、6間の接着剤層(図示せず)の厚さによって決定されるが、概ね3mm以下の寸法であり、通常は、2mm以下の寸法である。火災時には、火災空間の熱ガスが中空部9から面材背後間隙11に流入し、破線の矢印で図1(C)に示すように縦目地31の目地内に吹抜けようとするが、不燃帯状材料10は、熱ガスが一気に縦目地31の目地内に流出するのを阻止し、熱ガスを徐々に縦目地31の目地内に流出させるように機能する。即ち、不燃帯状材料10は、熱ガスが縦目地31の目地内に流出するのを規制し、従って、縦目地31の目地内空間の温度上昇は遅延する。また、下張りシール材15は、火災側空間における熱ガスのガス圧上昇に起因して過大な隙間が横目地22又はその近傍に発生するのを防止する。
【0042】
図4〜図8は、縦目地31の施工方法を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。
【0043】
図4は、下張り面材の施工工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。図4には、下張り面材5をスクリュービス8によって間柱4に固定した状態が示されている。下張り面材5の横目地22には、V字形溝23がベベル面53によって形成される。
【0044】
図5は、上張り面材の施工工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。図5に示すように上張り面材6がステープル及び接着剤(図示せず)によって下張り面材5の室内側面に固定される。上張り面材6は、側面62が目地幅Wだけ離間するように配置され、左右の側面62の間には、目透し目地の縦目地31が形成される。下張り面材5の横目地22は、縦目地31の目地底33に露出する。
【0045】
図6は、下張り面材の横目地の気密処理工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図であり、図7は、不燃帯状材料を目透し目地の縦目地内に挿入する帯状材料敷設工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。下張り面材5の横目地22には、下張りシール材15が目地幅Wに亘って図6に示す如く充填される。更に、不燃帯状材料10が、図7に示すように縦目地31内に敷設される。不燃帯状材料10は、板材等の治具を利用して縦目地31内に押し込まれ、下張りシール材15の粘着性又は接着性によって目地底33に保持される。
【0046】
図8は、塗装又はクロス等の内装仕上げ材料を上張り面材に施工する仕上げ工程を示す縦断面図、正面図及び横断面図である。塗膜又はクロス等の内装仕上げ材料7(斜線で示す)が、上張り面材6の表面に施工され、内装仕上げ材料7の縁部は、縦目地31内に延入し、上張り面材6の側面62において終端する。内装仕上げ材料7の縁部が目地内において終端するので、内装仕上げ材料7の縁部の損傷、捲れ等を回避することができる。
【0047】
かくして、縦目地31と交差する横目地22のV字形溝23内に下張りシール材15を充填し、縦目地31の目地底33に不燃帯状材料10を敷設してなる目透し目地が室内壁面に形成される。また、内装仕上げ材料7を縦目地31によって分断し、内装仕上げ材料7の連続面を確実に分割することができるので、地震時等の壁体の挙動・変形等に起因したクラック又は捩れ等が連続塗装表面又は連続クロス面に発生するのを確実に防止することができる。本発明者等の耐火試験の結果、上記構造の縦目地31は、間仕切壁1に要求される耐火性能を損なわないことが判明した。以下、間仕切壁1の耐火性能について説明する。
【0048】
図9は、間仕切壁1の耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。図10は、下張りシール材15の施工を省略した構成の間仕切壁1'に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。図11は、不燃帯状材料10の施工を省略した構成の間仕切壁1"に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。図12は、下張りシール材15及び不燃帯状材料10の双方の施工を省略した間仕切壁100(比較例1)に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。図13は、パテ材102を目地幅Wの範囲内において横目地22のV字形溝23内に充填した間仕切壁101(比較例2)に関する耐火試験の概要を示す縦断面図及び横断面図である。
【0049】
各図において、α、βは、非加熱側の表面の温度測定点を示しており、耐火試験において計測された計測点α、βの上昇温度が併記されている。なお、計測は、熱電対を用いて実施され、計測点α、βは、具体的には、各熱電対の設置位置を示す。
【0050】
各図における温度計測点α、βの位置は、次のとおりである。
【0051】
(1)図9及び図10に示す温度測定点αは、横目地22から上方に離間した不燃帯状材料10の室内側面であり、温度測定点βは、横目地22の直近に位置する不燃帯状材料10の室内側面である。
【0052】
(2)図11に示す温度測定点αは、横目地22から上方に離間した目地底33の室内側面であり、温度測定点βは、横目地22に充填された下張りシール材15の室内側面である。
(3)図12に示す温度測定点αは、横目地22から上方に離間した目地底33の室内側面であり、温度測定点βは、横目地22の室内側面である。
【0053】
(4)図13に示す温度測定点αは、横目地22から上方に離間した目地底33の室内側面であり、温度測定点βは、横目地22に充填されたパテ材102の室内側面である。
【0054】
軽量耐火間仕切壁は、非耐力壁であるので、耐火構造として要求される耐火時間は、1時間である。一般に、耐火試験においては、壁の供試体が耐火炉(加熱炉)に設置され、炉内バーナの燃焼作動により炉内温度が標準加熱曲線に従って上昇せしめられる。バーナに面しない非加熱側の壁体表面温度、壁の倒壊、亀裂・損傷等が耐火試験により計測又は観察される。1時間耐火の耐火性能試験では、加熱時間は1時間であるが、加熱終了後3時間経過時の観察により、壁体の安全性等が確認されるとともに、耐火試験開始時の初期温度(室温)を基準とした非加熱側の壁体表面温度の上昇温度が以下の条件に適合するか否か、という点が判定される。
【0055】
イ)平均上昇温度が140℃を超えないこと(表面温度が160℃(室温+140℃)に達しないこと)。
ロ)最高上昇温度が180℃を超えないこと(表面温度が200℃(室温+180℃)を超えないこと)。
【0056】
下張り面材5及び上張り面材6からなる両側2枚張りの中空の間仕切壁1において上張り面材6に目透し目地を形成すると、目地底部分は、下張り面材5の単枚張り構成となるので、耐火上の弱点、即ち、耐火欠損となる。このため、目地底部分に位置する温度測定点α、βにおける上昇温度の測定値に基づいて図9〜図13に示す各間仕切壁1、1'、1"、100、101の耐火性能を実質的に評価することができる。
【0057】
図9に示すとおり、本実施例の間仕切壁1に関する耐火試験において、温度測定点α、βの上昇温度は、72℃及び76℃であった。また、間仕切壁1の非加熱側面の平均上昇温度は、73℃であった。従って、間仕切壁1は、上昇温度に関する上記判定条件に適合した。また、間仕切壁1の倒壊、亀裂・損傷等は観察されず、従って、間仕切壁1は、軽量耐火間仕切壁に要求される1時間耐火の耐火性能を発揮することが認められた。
【0058】
図10及び図11に示すように、不燃帯状材料10又は下張りシール材15の一方を省略した間仕切壁1'、1"においては、温度測定点α、βの上昇温度は、72〜171℃であり、非加熱側面の平均上昇温度は、77〜78℃であった。従って、間仕切壁1'、1"は、上昇温度に関する上記判定条件に適合した。また、間仕切壁1'、1"の倒壊、亀裂・損傷等は観察されず、従って、間仕切壁1は、軽量耐火間仕切壁に要求される1時間耐火の耐火性能を発揮することが認められた。
【0059】
他方、下張りシール材15及び不燃帯状材料10の双方の施工を省略した比較例1(図12)の間仕切壁100では、温度測定点αの上昇温度は、141℃であり、温度測定点βの上昇温度は、245℃であった。また、間仕切壁100の非加熱側面の平均上昇温度は、99℃であった。従って、間仕切壁100は、上昇温度に関する上記判定条件(最高上昇温度<180℃)に適合せず、軽量耐火間仕切壁に要求される1時間耐火の耐火性能を発揮しないことが認められた。
【0060】
また、間仕切壁100においてジョイントセメント等のパテ材102を横目地22のV字形溝23内に充填した間仕切壁101においては、温度測定点αの上昇温度は、141℃であり、温度測定点βの上昇温度は、202℃であった。また、間仕切壁101の非加熱側面の平均上昇温度は、91℃であった。従って、間仕切壁101は、上昇温度に関する上記判定条件(最高上昇温度<180℃)に適合せず、軽量耐火間仕切壁に要求される1時間耐火の耐火性能を発揮しないことが認められた。
【0061】
図14は、本発明の目地構造の原理を説明するための横断面図、部分拡大横断面図及び縦断面図である。
【0062】
一方の室に火災が発生した状況が図14に示されている。火災によって発生した熱ガスGが間仕切壁1の中空部9内に流入する。中空部9の熱ガスGは、破線の矢印で示すように、下張り面材5の縦目地21及び横目地22を介して面材背後間隙11に流入する。面材背後間隙11に流入した熱ガスGは、破線矢印で示すように縦目地31の目地内空間に吹抜けようとする。熱ガスGは又、横目地22を介して縦目地31の目地内空間に吹抜けようとする。このため、図12に示す比較例1の間仕切壁100では、縦目地21の目地内空間の上昇温度は、200℃を超えたと考えられる。また、図13に示す比較例2の間仕切壁101においては、熱ガスGは、縦目地31の目地内空間への流出をパテ材102によって初期的に阻止されるが、パテ材102の亀裂・損傷等によって熱ガスGが一気に目地内空間に流出し、この結果、縦目地21の目地内空間の温度が急激に上昇し、目地内空間の上昇温度が200℃を超えたと考えられる。
【0063】
他方、不燃帯状材料10は、熱ガスGが一気に縦目地31の目地内に流出するのを阻止するだけではなく、その通気性により、熱ガスGを徐々に縦目地31の目地空間に流出させる。縦目地31内の目地内空間の温度は次第に上昇するが、縦目地31の目地内空間の温度上昇は、比較例1、2に比べて、かなり遅延する。このような不燃帯状材料10の作用により、図9及び図10に示す間仕切壁1、1’においては、縦目地31の目地内空間の温度上昇が抑制されたものと考えられる。また、下張りシール材15は、横目地32から熱ガスGが一気に室内側に吹き抜けるのを阻止するとともに、熱劣化時においても、パテ材102のように大きな亀裂等を横目地32に形成しない。即ち、図11に示す間仕切壁1”においては、下張りシール材15が、熱ガスのガス圧上昇に起因して横目地22又はその近傍に過大な隙間が発生するのを防止するので、縦目地31の目地内空間の温度上昇を抑制し得たものと考えられる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能であることはいうまでもない。
【0065】
例えば、上記実施例の間仕切壁は、上張り面材の縦目地を目透し目地に形成したものであるが、上張り面材の横目地を目透し目地に形成することも可能である。
【0066】
また、上記実施例では、下張り面材及び上張り面材は、ベベルエッジを有する石膏系面材であるが、テーパエッジ又はスクエアエッジを有する石膏系面材を下張り面材及び上張り面材として使用しても良い。
【0067】
更に、下張り面材及び上張り面材として、石膏ボード(商品名「タイガーボード」(登録商標、吉野石膏株式会社製品))、硬質・高強度せっこうボード(商品名「タイガースーパーハード」(登録商標、吉野石膏株式会社製品))、超硬質・高強度せっこうボード(商品名「タイガーハイパーハードC」(登録商標、(吉野石膏株式会社製品))、構造用石膏ボード、シージング石膏ボード、化粧石膏ボード等の石膏ボード製品、ガラス繊維不織布入り石膏板(商品名「タイガーグラスロック」(登録商標、吉野石膏株式会社製品))、スラグ石膏板(商品名「アスノン」(登録商標、エヌビーエル株式会社製品)等)、セメント板(「デラクリート」(登録商標、ユナイテッド・ステイツ・ジプサム社製品)等)、繊維混入石膏板(商品名「エフジーボード」(株式会社エーアンドエーマテリアル製品)等)、押し出し成型板(商品名「クリオンスタッドレスパネル」(クリオン株式会社製品)等)、珪酸カルシウム板等を使用しても良い。
【0068】
また、本発明の目地構造の構成は、鋼製スタッド(間柱)を有する軸組構造且つ中空の軽量耐火間仕切壁のみならず、木製間柱を用いた中空の軽量耐火間仕切壁や、ノンスタッド構造又はスタッドレス構造の中空の軽量耐火間仕切壁、或いは、鋼製スタッドの片側面のみに面材を取付けた構成を有する軽量耐火間仕切壁等に適用し得るものである。
【0069】
更には、上記不燃帯状材料として、ロックウールのフェルト又は板体の他、グラスウール、セラミックウール等のフェルト又は板体を使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、下張り面材及び上張り面材を建込んで両側の壁面を形成する乾式工法の耐火間仕切壁に設けられる目地構造及びその施工方法に適用される。本発明の目地構造及びその施工方法によれば、面材を付加的に施工せず、しかも、特殊な耐火目地材、耐火ジョイナー等を使用することもなく、軽量耐火間仕切壁の壁面に目透し目地を簡易に形成することができるので、実用的に極めて有利である。
【符号の説明】
【0071】
1、1'、1" 軽量耐火間仕切壁
2 下部ランナ
3 上部ランナ
4 間柱
5 下張り面材
6 上張り面材
7 内装仕上げ材料
8 スクリュービス
9 中空部
10 不燃帯状材料(不燃繊維材料の帯状材)
15 下張りシール材
20、30 目地
21、31 縦目地
22、32 横目地
23 V字形溝
33 目地底
R 室内空間
G 熱ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁の目地構造において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設し、該目地底を前記帯状材によって室内空間から隠蔽したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造。
【請求項2】
下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁の目地構造において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造。
【請求項3】
前記目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理し、該シール材を前記帯状材と前記下張り面材との間に介挿したことを特徴とする請求項1に記載の目地構造。
【請求項4】
前記下張り面材及び上張り面材は、石膏ボードであり、前記帯状材は、ロックウールのフェルト又は板体からなることを特徴とする請求項1又は3に記載の目地構造。
【請求項5】
前記シール材は、ウレタン樹脂系シーリング材からなることを特徴とする請求項2又は3に記載の目地構造。
【請求項6】
下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目地の施工方法において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設し、該目地底を前記帯状材によって室内空間から隠蔽することを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地施工方法。
【請求項7】
下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目地の施工方法において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理することを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地施工方法。
【請求項8】
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成した後、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理し、しかる後、前記帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設することを特徴とする請求項6に記載の目地施工方法。
【請求項9】
前記下張り面材及び上張り面材は、石膏ボードであり、前記帯状材は、ロックウールのフェルト又は板体からなることを特徴とする請求項6又は8に記載の目地施工方法。
【請求項10】
前記シール材は、ウレタン樹脂系シーリング材からなることを特徴とする請求項7又は8に記載の目地施工方法。
【請求項1】
下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁の目地構造において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設し、該目地底を前記帯状材によって室内空間から隠蔽したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造。
【請求項2】
下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁の目地構造において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理したことを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地構造。
【請求項3】
前記目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理し、該シール材を前記帯状材と前記下張り面材との間に介挿したことを特徴とする請求項1に記載の目地構造。
【請求項4】
前記下張り面材及び上張り面材は、石膏ボードであり、前記帯状材は、ロックウールのフェルト又は板体からなることを特徴とする請求項1又は3に記載の目地構造。
【請求項5】
前記シール材は、ウレタン樹脂系シーリング材からなることを特徴とする請求項2又は3に記載の目地構造。
【請求項6】
下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目地の施工方法において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、通気性を有する不燃繊維材料の帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設し、該目地底を前記帯状材によって室内空間から隠蔽することを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地施工方法。
【請求項7】
下張り面材及び上張り面材を建込んで壁面を形成する乾式工法の軽量耐火間仕切壁における目地の施工方法において、
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成し、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理することを特徴とする軽量耐火間仕切壁の目地施工方法。
【請求項8】
隣接する前記上張り面材の側面を相互離間して目透し目地を形成した後、該目透し目地の目地底に位置する前記下張り面材の突付け目地を前記目透し目地の目地幅に亘ってシール材によって気密処理し、しかる後、前記帯状材を前記目透し目地の目地底に敷設することを特徴とする請求項6に記載の目地施工方法。
【請求項9】
前記下張り面材及び上張り面材は、石膏ボードであり、前記帯状材は、ロックウールのフェルト又は板体からなることを特徴とする請求項6又は8に記載の目地施工方法。
【請求項10】
前記シール材は、ウレタン樹脂系シーリング材からなることを特徴とする請求項7又は8に記載の目地施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−144962(P2012−144962A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15369(P2011−15369)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000160359)吉野石膏株式会社 (48)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000160359)吉野石膏株式会社 (48)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]