説明

載荷試験方法、及び損傷検知方法

【課題】簡易な構成で歪み箇所を検出でき、しかも所要の歪み量にも対応できる歪み検出の技術を利用した載荷試験方法、及び損傷検知方法を提供する。
【解決手段】柱状の試験体の特性を試験するために当該試験体を圧縮・引張する載荷試験方法である。導電性ゴムからなる歪み検出部の周縁に対し互いに距離をあけて3個以上の電極を設け、各電極間の電気抵抗を個別に測定することで、上記歪み検出部における変形位置を特定する歪み検出装置を使用する。上記歪み検出部を上記試験体22の表面に沿って配置し、各電極間の電気抵抗を検出することで、上記試験体の面歪みを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪み変形を検出するための歪み検出の技術を利用した載荷試験方法、及び損傷検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に接触させて1方向の歪みを測定する装置として、ワイヤーストレンジゲージが多く普及している。この場合、ワイヤーストレンジゲージを測定対象の試料に直接貼付け、白金の抵抗値の変化により試料の歪みを測定する。このワイヤーストレンジゲージで測定可能な歪みの範囲は25000με(2.5%)程度である。また、試料表面の特定点の距離を測定する間接的な測定方法として、光ファイバーを利用した測定方法がある。この光ファイバーによる測定方法で測定可能な歪みの範囲は、40000με程度(4%)程度と小さい。
【0003】
また、面の歪みを測定する方法として、光弾性皮膜、光干渉法や画像処理法がある。これらの方法は、測定物と測定装置の間に空間を設ける必要があり、直接、面に貼り付けて測定する方法では無い。このため、測定物に接触して面歪みを測定する必要がある場合に不適な測定方法である。
なお、上記ワイヤーストレンジゲージを格子状に配置して面の歪みを測定することも考えられるが、上述のように測定可能な歪みは小さい。
【0004】
また、導電性ゴムを使用した検出方法として、特許文献1に記載の技術がある。この技術は、検体であるゴムの内部に、導電性ゴムを間隔をあけて2層配置する。そして、検体の屈曲に伴う各導電性ゴム全体の電気抵抗値を測定し、その2つの導電性ゴムの電気抵抗値の比から検体の変形度を検出する。
【0005】
また、遮水ゴムシートの漏水箇所検知装置として、特許文献2に記載の技術がある。特許文献2の従来例には、例えば遮水ゴムシートに対し、複数本のワイヤーを網目状に設ける技術が開示されている。しかしこの技術は、線状のワイヤー位置から離れた箇所での漏水や損傷を検知しがたい。また、特許文献2に記載の発明では、上下2枚の遮水ゴムシートの各対向面に対しそれぞれ所要面積の導電性ゴムシートを隙間をあけて対向して取り付け、これら対向する導電性ゴムシート毎に漏水検知箇所を区画すると共に、対向する導電性ゴムシート間を絶縁保持する。そして、対向する導電性ゴムシートに電源を直列に接続し、通電の有無によって、遮水ゴムシートの漏水箇所を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−332707号公報
【特許文献2】特開平10−281918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ワイヤーストレンジゲージを使用した測定では数10%を超える大きな歪みを測定出来ない。ここで、地盤から採掘した粘土や砂などの試験体の圧縮試験などにあっては、数10%を超えるような大きな歪みが発生する可能性がある。これに対応して、レーザーやLVDT(差動変圧器)などで変位を測定することで歪みを換算する方法があるが、変形試験をする際の試験体全体の歪みしか測定できず、本来の変形の集中箇所である中心部など局所的な歪みの測定はできていない。
【0008】
また、面歪みの検出が必要な箇所の例としては、トンネルや擁壁等の損傷箇所、処分場やトンネルの遮水ゴムシート等がある。
トンネルや擁壁等の損傷箇所の有無の検知は、通常、目視に頼っており、手間とコストが掛かる。また、処分場やトンネルの遮水ゴムシートは地中に埋設されてしまうため、遮水用のゴムシートの劣化の対策として、ゴムを繊維等で強化し、物性の強化により孔が空き難くする技術開発が進められている。
【0009】
ここで、特許文献2の技術は、遮水ゴムシートで実際に発生した漏水(穴空き)を検知するものであって、漏水が発生するおそれのある位置を検出するものではない。また、各区画毎にそれぞれ、1対の導電性ゴムシート及びその間の絶縁を確保する絶縁物質を介装する必要があり、検出装置の構成が複雑でコストが掛かる。特に、漏水箇所の検出精度を上げようとすると、区画を小さくせざるを得ず、このことは1対の導電性ゴムシートの数が増える等さらに手間やコストが掛かる。なお、特許文献2の技術は、導電性ゴムシートの変形による抵抗変化を利用するものではない。
【0010】
また、特許文献1の技術は、導電性ゴムシートの曲げ変形を抵抗値によって検出するものであるが、導電性ゴムシート全体の曲げ変形による抵抗値を検出するものである。すなわち、特許文献1の技術は、検体の曲げ変形を測定するものであって、歪みを検出するもの技術では無い。また、2枚の導電性ゴムシートで検体全体に発生している曲げ変形を検出するものである。
【0011】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、簡易な構成で歪み箇所を検出でき、しかも所要の歪み量にも対応できる歪み検出の技術を利用した載荷試験方法、及び損傷検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、柱状の試験体の特性を試験するために当該試験体に対し圧縮及び引張の少なくとも一方の力を載荷する載荷試験方法において、
シート状若しくは板状の形状の導電性ゴムからなる歪み検出部の周縁に対し互いに距離をあけて3個以上の電極を設け、各電極間の電気抵抗を個別に測定することで、上記歪み検出部における変形位置を特定する歪み検出装置を使用し、
その歪み検出装置における上記歪み検出部を上記試験体の表面に沿って配置し、各電極間の電気抵抗を検出することで、上記試験体の面歪みを検出することを特徴とするものである。
【0013】
圧縮等による試験体の面歪みを検出可能となる。このとき、歪み検出部がゴムからなるので、例えば試験体が円柱形状であれば、その側面に沿って巻き付けるようにして歪み検出部を取り付けることが出来るなど、取付けも容易である。
そして、3個以上の電極における2つの電極間の電気抵抗値をそれぞれ測定することで、導電性ゴムからなる歪み検出部における複数箇所の歪み発生を検出することが可能となる。また、電極の数を増やすほど、歪みの検出可能な箇所を増やすことが可能となる。
【0014】
ここで、導電性ゴムに設けた1対の電極間に電流を流した場合、導電性ゴム内に複数の電流の通路が一時的に形成されると考えられる。しかし、電流は抵抗が小さい通路に流れやすいことから、1対の電極間である最短距離での電流量が支配的と考えられるので、1対の電極間を直線で結んだ位置での抵抗変化に敏感に反応する。このため、1対の電極間の抵抗は、1対の電極間を直線で結んだ箇所の抵抗が支配的である。また、導電性ゴムの一部に面外変形(伸び変形)が発生すると、その変形部での磁性体粒子間の距離が大きくなって抵抗が増大(場合によっては一時的に電流遮断)するか、若しくは上記支配的な電流の通路が、直進路から上記変形部分を迂回する通路となることで抵抗値が増大する。
【0015】
このため、選択した2つの電極間の電気抵抗値を測定することで、2つの電極間を結んだ導電性ゴムの部分、若しくはその近傍に対し、歪みが発生しているか否かを検出することが出来る。また、電気抵抗値の変化によって歪みの大きさも推定可能である。
そして、本発明では、互いに離れた3箇所以上に電極を設けているため、導電性ゴム内において、少なくとも2箇所以上の電極間を結ぶ位置での各歪みを検出することが可能となる。すなわち、1つの導電性ゴムの面上における2箇所以上の歪みを検出可能となる。
【0016】
なお、歪みの発生箇所が分かっている場合には、その箇所を挟むようにして2つの電極を配置すればよい。
そして、2つの電極間の電気抵抗値が有意な量だけ変化すれば、その2つの電極間を結ぶ位置若しくはその近傍で変形があったことを検出することが出来る。また、抵抗値の変化から変形(歪み)の量も推定可能である。なお、2つの電極間を結ぶライン上での変形(歪み)を主として検出するので、そのラインと交叉するラインを形成するように他の2つの電極間を配置して抵抗値を検出すれば、その2つのラインの交差点若しくは交差点近傍での変形(歪み)を検出することが可能である。
【0017】
次に、請求項2に記載した載荷試験方法は、上記歪み検出部を構成する導電性ゴムにおける上記試験体に近い面側にシート状の非導電性防水ゴムを配置すると共に、上記導電性ゴムにおける上記試験体から離れた面側に防水シート部材を配置して、上記非導電性防水ゴムと上記防水シート部材とによって上記導電性ゴムを被覆して当該導電性ゴムを防水状態とし、更に上記導電性ゴムは上記非導電性防水ゴムに対し接着によって固定され、且つ、上記非導電性防水ゴムが筒形状となっていることを特徴とするものである。
【0018】
次に、請求項3に記載した載荷試験方法は、上記非導電性防水ゴムへの上記導電性ゴムの接着は、溶融接着であることを特徴とするものである。
これによって、より容易に面での接着が可能となる。
次に、請求項4に記載した発明の載荷試験方法は、上記3個以上の電極は、2組以上の電極群からなり、各電極群を2以上の電極から構成すると共に、各電極群を構成する電極の並び位置を、各電極群で互いに異にすることを特徴とするものである。
【0019】
次に、請求項5に記載した載荷試験方法は、上記3個以上の電極は、同方向で対向配置する複数対の電極からなることを特徴とするものである。例えば、導電性ゴムの形状が四角形形状であれば、対向する2辺に対し、辺に沿って並ぶように電極を配置する。
【0020】
なお、抵抗値を測定する2つの電極は、対を成す電極に限定されない。対象とする2つの電極間を結ぶライン上で歪みが発生しているか否かを検出することが可能となる。電極間を結ぶラインの中に交叉するラインが形成される箇所があれば、そのラインの交差点近傍での歪み発生を局所的に検出可能となる。
【0021】
次に、請求項6に記載した載荷試験方法は、上記3個以上の電極は、1の方向で対向配置する複数対の電極と、上記1の方向とは異なる方向で対向配置する複数対の電極と、からなることを特徴とするものである。例えば、それぞれの対をなす電極間を結ぶラインを、格子状(マトリックス状)に配置する。
【0022】
異なる2方向でそれぞれ電極を対向配置することで、電極間を結ぶラインが確実に交叉する箇所を設けることが出来る。この結果、導電性ゴム内における変形(歪み)発生箇所をより局所的に検出可能となる。なお、抵抗値を測定する2つの電極は、対を成す電極に限定されない。
【0023】
次に、請求項7に記載した発明は、構造物の損傷を検知する方法であって、
シート状若しくは板状の形状の導電性ゴムからなる歪み検出部の周縁に対し互いに距離をあけて3個以上の電極を設け、各電極間の電気抵抗を個別に測定することで、上記歪み検出部における変形位置を特定する歪み検出装置を使用し、上記導電性ゴムを非導電性防水ゴムで被覆した防水状態で、
対象とする構造物に対し、上記歪み検出装置の歪み検出部を埋設しておき、各電極間の電気抵抗を検出することで、損傷の発生若しくは損傷発生の恐れを検知することを特徴とするものである。
【0024】
例えば、トンネルや擁壁等の壁面内に沿って歪み検出部を埋設したり、遮水ゴムシートに沿って歪み検出部を配置したりして歪み検出部を埋設しておく。これによって、対象とする構造物の歪みを検出することで、損傷発生、若しくは損傷発生の可能性を検出可能となる。また、上述のように1枚の歪み検出部によって複数箇所での歪み検出が可能となる。
【0025】
ここで、被検出物の被検出面に発生した歪みを検出する歪み検出方法であって、上述のような歪み検出装置における歪み検出部を上記被検出面に沿って配置し各電極間の電気抵抗を検出することで、上記被検出面の歪みを検出することを特徴としても良い。
【0026】
被検出面の面外方向への変形(歪み)に応じて、ゴムからなる歪み検出部も変形する。その変形箇所を電気抵抗値の変化で検出することで被検出面の歪み発生箇所を検出可能となる。なお、面外変形の場合には、ゴムは伸び方向への変形となるので、電気抵抗値は増大する方向に変化する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、1つの歪み検出部によって複数箇所の歪みを検出可能となる。また、歪みを検出する部分は、導電性ゴムであるので、変形自由度が高く所要の歪みにも追従が出来る。また、ゴムのため、歪み検出部を取り付ける検出面が曲面形状であっても対応可能である。この結果、簡易な構成で歪み箇所を検出でき、しかも所要以上の歪み量にも対応できる歪み検出の技術の技術を提供可能となる。
【0028】
そして、請求項1に係る発明に適用すれば、圧縮等による試験体の面歪みを検出可能となる。このとき、歪み検出部がゴムからなるので、例えば柱状の試験の側面に沿って巻き付けるようにして歪み検出部を取り付けることが出来るなど、取付けも容易である。
【0029】
ここで、特許文献1の曲げ検出の技術を仮に歪み測定に流用するとした場合、測定面に導電性ゴムシートを貼り付け、測定面全体の変形だけを測定することが想定される。この場合、導電性ゴムシートを貼り付けた位置の測定面全体の歪みしか測定はできず、複数箇所の歪みを精度良く取ろうとするほど、多数の小さな導電性ゴムを測定体に貼り付ける必要が発生する。なお、上記仮定した使用方法は、特許文献1には何ら記載も示唆もされていない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る歪み検出装置の構成を示す模式的平面図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る歪み検出装置の側方からみた模式的断面図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る抵抗値を測定するライン及び変形発生部を説明するための図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係るトモグラフィーの理論を適用する場合の抵抗値を測定するラインを示す図である。
【図5】遮水ゴムシートに適用する場合の例を示す図である。
【図6】トンネル内壁に対し適用する場合の例を示す図である。
【図7】1軸剪断試験に適用する場合の例を示す図である。
【図8】3軸圧縮試験に適用する場合の例を示す図である。
【図9】3軸圧縮試験に適用する場合の防水構造を示す展開図である。
【図10】筒形状の非導電性防水ゴムと導電性ゴムとの配置関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の歪み検出装置1を示す模式的平面図である。図2は、その歪み検出装置1を示す側方から見た模式的断面図である。
【0032】
(歪み検出装置の構成)
歪み検出装置1は、導電性ゴムからなる歪み検出部2(導電性ゴム2とも呼ぶ。)、3本以上の電極3、及び非導電性防水ゴム4を備える。本実施形態の歪み検出部2は、四角形形状のシート状若しくは平板状の形状となっている。
【0033】
歪み検出部2を構成する導電性ゴムは、内部にカーボンブラックなどの導電性付与材料からなる導電性粒子2aが多数埋入していることで、導電性を有する。そして、導電性ゴムに圧力が作用すると、ゴム内の導電性粒子2a同士の接触面積が変化して抵抗値が変化する。導電性ゴムとしては、通常使用されている導電性ゴムであれば特に問題はない。なお、本実施形態では、圧に対する抵抗値の変化ではなく、歪みに対する抵抗値の変化を利用する。
【0034】
電極3の数は3本以上とする。その複数の電極3を、歪み検出部2の周縁に対して互いに距離をあけて設定する。本実施形態では、歪み検出部2の外縁に対し22本の電極3を設ける場合を例示している。また本実施形態では、22本の電極3を4組の電極群に区分し、各電極群を構成する電極3を、歪み検出部2の各辺に沿ってそれぞれ配列するように設ける。これによって、図1における上辺及び下辺にそれぞれ設けた2つの電極群の電極3は、図1中縦方向で対向配置し、左右の辺にそれぞれ設けた2つの電極群の電極3は、図1中横方向で対向配置する。すなわち互いに異なる2つの方向で対向するように配置される。2つの方向は直交している必要は無い。なお、本実施家形態では、対向する電極3の数を同数としているが、これに限定しない。例えば、図1中、上下の辺に設ける各電極3をそれぞれ6本としているが、例えば上辺の電極3を6本、下辺の電極3を5本など、電極の個数が異なっていても良い。なお、各組毎の電極3若しくはそのケーブルを可撓性の素材で連結しておくと良い。
【0035】
上記各電極3は、先端部が上記歪み検出部2を構成する導電性ゴム内に埋設しており、そのゴムから露出している部分は、被覆されている。上記歪み検出部2への電極3の先端部の埋設部は、Oリングなどの圧力シールでシールしておく。
【0036】
図1では、非導電性防水ゴム4が、上記歪み検出部2を完全に覆うように配置されている。非導電性防水ゴム4は、例えばシリコンから構成する。これによって、歪み検出部2への外部からの水の浸入が回避される。もっとも、含水環境での使用でなければ、上記非導電性防水ゴム4は必ずしも必要はない。但し、図2に示すように、非導電性防水ゴム4に各電極3間を連結する作用を持たせることが可能となる。また、後述するように、圧縮試験等に適用する場合のように、一方の面上記のような上記非導電性防水ゴム4を積層配置し、他方の面に防水シートを積層配置して防水加工を施しも良い(図9参照)。防水シートは、強度的な点を満足すればビニールなどであっても良い。
【0037】
また本実施形態では、上記歪み検出装置1に対し、歪み位置特定手段を設ける。
なお、歪み位置特定手段は、上記歪み検出装置1の各電極3と一体的に接続しても良いし、電極3に対し着脱可能になっていても良い。上記歪み検出装置1を地中などに埋設して使用する場合には、着脱可能とすることが好ましい。着脱可能とする場合には、歪み検出していないときの保護のために、各電極3の他端部に取り付けるキャップ(不図示)を設けると良い。
【0038】
次に、歪み位置特定手段の例を、模式図である図1を参照して説明する。
各電極群単位に電極切替スイッチ5を設ける。そして、対向する電極群の電極切替スイッチ5に電源6(バッテリ)を電気的に接続すると共に、電流を計測する電流計8を設ける。各電極切替スイッチ5は、それぞれスイッチ制御部7によって上記電源6に接続する電極3が切り替えられる。各スイッチ制御部7は、コントローラ9からの指令によって電源6に接続する電極3を決定する。
【0039】
コントローラ9には、プログラム及び検出情報を記憶するメモリ10と、検出結果を表示する表示部11が接続する。
コントローラ9は、例えば、作動指令が入力されると、電流計8での検出値をモニタしつつ、歪み検出部2の対向する辺に設けた対向する電極3同士を順番に電源6に接続する。これによって、各対向する電極3間の電流を取得し、電圧に基づき各電極3間の抵抗値を演算してメモリ10に保存する。なお、電圧計も設けて、実際の電圧値も取得するようにしても良い。
【0040】
ここで、上記のような処理をした場合における、電気的に接続する対向する電極3間を結んだラインLを破線で示すと、図3のような状態となる。すなわち、上記処理によっては、各対向する電極3間のラインL上の抵抗値を主として検出することになる。
例えば、試験前の歪み検出部2の設置時や地中などの埋設した際に定常状態となったら、1度比較のための抵抗値を測定し、その抵抗値を基準抵抗値として各対向する電極3間毎に記憶しておく。
【0041】
そして、コントローラ9は、歪み検出のために各電極3間の抵抗値を測定すると、上記の予め取得した基準抵抗値との差が所定偏差以上発生した部分を、検出すべき歪み発生位置として検出する。上記有意な歪み発生か否かを判定する偏差値は、基準抵抗値に応じて変えてもよい。
【0042】
このとき、例えば、歪み検出部2の面上に対して、2次元座標を予め設定しておく(原点は角部など特定位置に設定しておく。)。また、各対応する電極3間を結ぶ各ラインL位置(若しくは電極3先端部の位置)について、上記設定した座標系においての座標を特定しておく。このように設定しておけば、歪み発生位置を検出して、例えば表示部11に対して歪み位置を画像として表示することが可能である。
【0043】
(動作、作用)
検出面の一部が面外変形することで、それに当接する歪み検出部2の一部に対し、図3のように変形が発生したとする。このとき、横方向で対向する所定の電極3間で抵抗値が増大すると共に、縦方向で対向する所定の電極3間で抵抗値が増大する。従って、その2箇所の電極3間を結ぶラインLの交点若しくはその近傍で歪みが発生していることを検出出来る。また、抵抗値の偏差から歪みの大きさも推定可能となる。
【0044】
図3では、1箇所だけが面外歪みを起こした場合を例示している。2箇所以上で歪みが発生していても、その2箇所以上の位置を、個別に検出することが出来る。
また、歪み検出部2は、導電性ゴムで出来ているので、当接する面に追従して当接できると共に、その変形量が大きいので、一部に大きな歪みが発生した場合であっても検出は可能である。
【0045】
また、歪み検出部2をゴムやシリコン等の絶縁物質で覆って密封することで、水分や水がある環境下でも測定ができる。
ここで、上記説明では、図3の破線で示すように、歪み検出部2を構成する導電性ゴムにおける、上記のような電極3の配置によって出来る格子状のラインL上の各抵抗値、つまり歪みを検出する場合を例示している。しかしこれに限定しない。
【0046】
図4に示すように、全電極3間を掃引するように、電気的に接続して抵抗値を測定しても良い。すなわち、反時計回りに各電極3をNo.1〜No.22と定義した場合に、まずNo.1に定電流を流して、No.2、No.3・・・No.22の順に抵抗値を測定する。次にNo.2に定電流を流して、No.3、No.4・・・No.22の順に抵抗値を測定する。次にNo.3に定電流を流して、No.4、No.5・・・No.22の順に抵抗値を測定する。このようして、全電極3間の抵抗値を測定する。なお、同一の電極群間の抵抗値は測定する必要な無いので、省略することが好ましい。
【0047】
このようにして取得した抵抗値を、トモグラフィー(断層画像)の理論に基づき演算することで、面全体の抵抗値分布を求めて画像化することも出来る。
ここで、発明者らが導電性ゴムについて確認したところ、導電性ゴムの応力と歪の関係には履歴特性があるが、歪み量と抵抗値との関係には履歴現象は無い。また、導電性ゴムと歪には線形的な関係を示す範囲が存在し、その範囲で歪測定を実施すれば、精度良く抵抗値から歪み量を推定することが可能である。また、導電性ゴムの抵抗値は温度に依存するので、温度補償用のダミーゲージを適用して温度変化の影響を小さくするようにすることが好ましい。なお、電流を流すことによる発熱は無いか小さく、計測される抵抗値への影響は殆どないものと考えられる。
【0048】
(本実施形態の歪み検出装置1の適用)
上記のような歪み検出装置1の適用箇所としては、次の箇所を例示列挙することが出来る。
【0049】
・トンネル、擁壁、橋脚などのコンクリート構造物のクラックによる損傷箇所の検知
・地滑りや土圧により生じる地盤やトンネル・擁壁や空気抵抗により生じる材料の変形箇所の検出
・廃棄物処分場やトンネルなどの漏水により生じる遮水ゴムシート(導電性ゴム製)の変形箇所の検出
・粘土、砂、軟岩、硬岩・免震ゴム等の1軸・3軸圧縮(引張)試験(載荷試験)、剪断試験に使う軸方向歪み、および横(周)方向の測定
・粘土、砂、軟岩、硬岩・免震ゴム等の1軸・3軸圧縮(引張)試験(載荷試験)に使う円柱供試体表面の面歪みの測定や角柱供試体のある面(剪断面に対し垂直な面)の表面の面歪みの測定
【0050】
(遮水ゴムシートへの適用例)
図5に示すように、2枚の遮水ゴムシート20間に上記歪み検出装置1の歪み検出部2を介装する。若しくは、上記歪み検出装置1の歪み検出部2自体を遮水ゴムシート20として使用する。
【0051】
なお、2枚の遮水ゴムシート20間に上記歪み検出装置1の歪み検出部2を介装する場合、遮水ゴムシート20と歪み検出部2とを被着して一体化しても良いし、両者1,2の間で滑りを許容するようにしても良い。遮水ゴムシート20と歪み検出部2との間で滑りを許容するようにした場合には、遮水ゴムシート20からの剪断方向の力が入らないか小さくなる。この結果、歪み検出部2には、面外方向(上下方向)の歪みを主体的に検出可能となる。積極的に滑りを許容する場合には、遮水ゴムシート20と歪み検出部2との間に潤滑剤を介挿させておく。なお、この使用例の場合には、局所的な集中荷重によって歪み検出部2の一部分だけが多く圧縮されることで厚さが薄くなり、その部分の抵抗が相対的に増加すると思われる。廃棄物が増えるに連れて、歪み検出部2全体の抵抗も増大する可能性はあるが、上述のように一部の抵抗値が異常に増大することで、異常部分を検出出来る。
【0052】
ここで、廃棄物処分場は遮水ゴムシート20により外部地盤と隔離されている。しかし、長期の劣化や歪み集中(角張った廃棄物による内部からの圧力によるものや角張った石による外部からの圧力によるものなど)により遮水ゴムシート20に孔があき遮水性能が失われることがある。遮水ゴムシート20の代わりに導電性ゴムを使う(導電性ゴムをゴムやシリコン等の絶縁物質(遮水材料)で挟み)ことで、孔の開いた箇所もしくは開きそうな前兆を検知することができる。
【0053】
(トンネルへの適用)
図6中、符号21はトンネル内壁面である。図6のように、トンネルの内壁面21に沿って、歪み検出部2を予め埋設しておく。そして、不図示の電極3の他端部に対して、保守時に通電を行って抵抗値を測定することで、歪発生箇所の有無を検出する。
【0054】
(1面剪断試験への適用について)
図7のように、試験体22の1面に対して上記歪み検出部2を貼り付ける。そして、荷重を負荷して、試験体22に剪断を発生させて、剪断箇所を特定する。図7中、23は剪断箇所である。
【0055】
ここで、粘土、砂、軟岩、硬岩・免震ゴム等の1軸・3軸圧縮(引張)試験(載荷試験)、剪断試験で測定される歪みは数%(例えば、5%程度)までしか測定できず、10%を超える大きな歪みの測定は困難であった。これに対し、本実施形態の歪み検出装置1を使用すれば、大きな歪みの測定が出来るようになる。
【0056】
(圧縮試験への適用について)
図8に示す例は、載荷試験としての3軸圧縮試験を行う装置に、上記歪み検出装置1を適用した例である。地盤やコンクリートから採取した柱状の一つである円柱状の試験体22の側面に対して上記歪み検出部2を巻き付けるように貼り付けた状態で、試験体22を圧縮試験装置に設定して圧縮試験を行う。
【0057】
図8中、符号24はペデスタル、符号25は、水や油などの圧力媒体、符号26はゴムスリーブ、符号27は加圧ピストン、符号28は圧力容器である。
三軸方向から加圧することで、試験体22の面に面外変形及び剪断が発生する。それによる試験体22の面の歪みに追従して、歪み検出部2が同じように変形することで、歪を検出することが可能となる。なお、面外方向への変形を主として検出する場合には、試験体22と歪み検出部2との間の滑りを許容するようにすればよい。
【0058】
これまで、粘土、砂、軟岩、硬岩、免震ゴム等の3軸圧縮試験での面歪みの測定は光弾性皮膜、光干渉法や画像処理法などで可能であった。しかしながら、特に3軸圧縮試験は水や油の媒体の入った圧力容器内で行われるため、上記の方法で面歪みを測定することは困難であった。これに対し、本実施形態を採用すれば、圧力容器内で行う変形実験(3軸圧縮試験)の歪みを面でとらえることが可能となる。
【0059】
上記説明では、載荷試験として圧縮試験で説明したが、引張試験や圧縮引張試験であっても適用可能である。
ここで、歪み検出部2を構成する導電性ゴムは、加圧によって水が侵入してくる恐れがある。このため、上記導電性ゴムには防水加工が施されている。
防水加工は、本実施形態では、展開した断面図である図9に示すような構造となっている。すなわち、導電性ゴム2の一方の面(内面)2a側に対し、シート状の非導電性防水ゴム30を積層配置し、導電性ゴムの他方の面(外面)側に対し、ビニールなどの防水シート31を積層配置する。防水シートも筒状であることが望ましい。また、防水シート31も非導電性防水ゴムから構成されていても良い。
【0060】
上記非導電性防水ゴム30は、防水シート31を省略した配置状態を示す図10のように、円筒形状となっていて、無負荷状態で上記試験体22の外径よりも内径が若干小さい値となっている。その円筒形状の非導電性防水ゴム30の外径面30aに上述の通り、導電性ゴム2が配置されて固定される。非導電性防水ゴム30のヤング率は、導電性ゴムのヤング率と等しいか近いことが好ましい。上記非導電性防水ゴム30の厚みは導電性ゴム2の厚みよりもよりも薄いことが好ましい。また、防水シート31は、導電性ゴム2よりも、弾性変形若しくは塑性変形によって伸びやすい素材が好ましい。
【0061】
また、図8のように、導電性ゴム2は、端部周辺に電極を配置する関係から、導電性ゴム2を無端環状とするのは困難である。無端環状としない場合には、試験体22の変形に伴い、試験体表面に対し導電性ゴム2が面内方向に相対変位する。この結果、導電性ゴム2における周方向で対向する端面間の間隔が変化して、検出精度を悪くする。
ここで、導電性ゴム2における対向する端面間を、1又は2以上の剛体で接続することが考えられる。しかし、剛体との接続部分で局所的に伸縮してしまい、やはり検出精度を悪くする。
【0062】
また、非導電性防水ゴム30に導電性ゴム2が貼り付いていない場合には、試験体22の変形に伴い、非導電性防水ゴム30と導電性ゴム2との間で面方向の滑りが生じて、やはり検出精度を悪くする。
このとき、対向する面同士である、非導電性防水ゴム30の面と導電性ゴム2の面とを粗面として、滑り難くする方法も考えられる。しかし、粗面とすることは導電性ゴム2の抵抗値を乱すこととなるので、好ましくない。
【0063】
以上のような考察から、本実施形態では、非導電性防水ゴム30の面30aと導電性ゴム2の面2aとを接着剤で接着して両者30,2を固定する。接着は、接着剤による接着よりも有機溶媒を使用した溶融接着の方が好ましい。溶融接着の方が、対向する全面に渡って非導電性防水ゴム30の面30aと導電性ゴム2の面2aと全面接着出来るからである。
【0064】
なお、外径側の防水シート31と導電性ゴム2との間には面滑りが生じても構わない。防水シート31は加圧によって破れない程度の強度を有していれば、弾性変形する必要がない。ただし、試験体の変形に伴う非導電性防水ゴム30と導電性ゴム2の弾性変形を拘束しないだけの伸びを発生する材料とする。
上記のように、円筒形状の非導電性防水ゴム30に導電性ゴム2を接着されて固定しておくことで、導電性ゴム2が無端状の筒状でなくても、精度良く試験体22の変形を検出することができる。
【0065】
(本実施形態の効果)
導電性ゴムが変形することで抵抗値が変わることを利用して、抵抗値の変化を測定することで、1方向および面歪みを測定することが出来るようになる。
また、防水非導電性のゴム・シリコンで導電性ゴムをコーティングし電極3を設置することで、水のある環境(地中など)での1方向および面歪みを測定することが出来るようになる。
【0066】
また、面歪みを直接的(対象物に密着させた状態で)に測定できることで、変形のモニタリングが容易にかつ省スペース(地中でも可能)でできるようなる。
さらに、1軸・3軸圧縮試験を始めとした載荷試験の実験において、低コストかつ容易な方法で10%以上の大きな歪みの測定が可能となる。
【0067】
このとき、筒形状の非導電性防水ゴム30に導電性ゴム2を接着によって固定することで、試験体25への導線性ゴム2の装着が容易となると共に、歪検出の精度も向上させることが出来る。
【0068】
また、面歪みの測定が出来るようになることで、各種(処分場やトンネル)構造物の損傷モニタリング(面的な)が低コストで行えるようになる。また、これまでの使われていたゴムシートを置き換えるだけで済むので、方法も簡単である。
【0069】
(変形例)
上記実施形態では、図1に示すように、縦方向及び横方向の両方で対向するように電極3を配置する場合を例示した。しかしこれに限定しない。
【0070】
例えば、縦方向でだけ対向するように電極3を配置しても良い。対向する電極3間での抵抗によってどの電極3間で歪が発生したかを検出することが可能である。またこの場合でも、総当たりで全ての電極3間の抵抗値を求めれば、各電極3間を結ぶラインLの交差点若しくはその近傍での歪みを検出することが出来る。
【0071】
また、歪み検出部2を構成する導電性ゴムの平面形状は、四角形形状である必要はない。設置場所に応じて形状を決めれば良い。例えば導電性ゴムの形状が円形であれば、放射状に電極3を配置するなどすれば良い。
【符号の説明】
【0072】
1 歪み検出装置
2 歪み検出部
2a 導電性粒子
3 電極
4 非導電性防水ゴム
5 電極切替スイッチ
6 電源
7 スイッチ制御部
8 電流計
9 コントローラ
10 メモリ
11 表示部
20 遮水ゴムシート
21 トンネルの内壁面
22 試験体
30 非導電性防水ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の試験体の特性を試験するために当該試験体に対し圧縮及び引張の少なくとも一方の力を載荷する載荷試験方法において、
シート状若しくは板状の形状の導電性ゴムからなる歪み検出部の周縁に対し互いに距離をあけて3個以上の電極を設け、各電極間の電気抵抗を個別に測定することで、上記歪み検出部における変形位置を特定する歪み検出装置を使用し、
その歪み検出装置における上記歪み検出部を上記試験体の表面に沿って配置し、各電極間の電気抵抗を検出することで、上記試験体の面歪みを検出することを特徴とする載荷試験方法。
【請求項2】
上記歪み検出部を構成する導電性ゴムにおける上記試験体に近い面側にシート状の非導電性防水ゴムを配置すると共に、上記導電性ゴムにおける上記試験体から離れた面側に防水シート部材を配置して、上記非導電性防水ゴムと上記防水シート部材とによって上記導電性ゴムを被覆して当該導電性ゴムを防水状態とし、
更に上記導電性ゴムは上記非導電性防水ゴムに対し接着によって固定され、且つ、上記非導電性防水ゴムが筒形状となっていることを特徴とする請求項1に記載した載荷試験方法。
【請求項3】
上記非導電性防水ゴムへの上記導電性ゴムの接着は、溶融接着であることを特徴とする請求項2に記載した載荷試験方法。
【請求項4】
上記3個以上の電極は、2組以上の電極群からなり、各電極群を2以上の電極から構成すると共に、各電極群を構成する電極の並び位置を、各電極群で互いに異にすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した載荷試験方法。
【請求項5】
上記3個以上の電極は、同方向で対向配置する複数対の電極からなることを特徴とする請求項4に記載した載荷試験方法。
【請求項6】
上記3個以上の電極は、1の方向で対向配置する複数対の電極と、上記1の方向とは異なる方向で対向配置する複数対の電極と、からなることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載した載荷試験方法。
【請求項7】
構造物の損傷を検知する方法であって、
シート状若しくは板状の形状の導電性ゴムからなる歪み検出部の周縁に対し互いに距離をあけて3個以上の電極を設け、各電極間の電気抵抗を個別に測定することで、上記歪み検出部における変形位置を特定する歪み検出装置を使用し、
上記導電性ゴムを、非導電性防水ゴムで被覆した防水状態とし、
対象とする構造物に対し、上記歪み検出装置の歪み検出部を埋設しておき、各電極間の電気抵抗を検出することで、損傷の発生若しくは損傷発生の恐れを検知することを特徴とする損傷検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−22140(P2011−22140A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138158(P2010−138158)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【Fターム(参考)】