説明

輪紋病(M.brassicicola)に対する耐性を有する芽キャベツ(B.oleracea)植物

【課題】 輪点様の病弊を引き起こす輪紋病(M. brassicicola)に耐性を有する芽キャベツ(B. oleracea)植物を提供する。
【解決手段】 輪紋病(Mycosphaerella brassicicola)への耐性を有する芽キャベツ(Brassica oleracea)植物の製造方法であって、(a)輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子を有する第1芽キャベツ(B. oleracea)植物を備える手段と、(b)前記第1芽キャベツ植物と感受性第2芽キャベツ(B. oleracea)植物とを交配させる手段と、(c)1つ若しくはそれ以上の前記耐性遺伝子に連結された特有DNAマーカを用いることによる前記耐性遺伝子への遺伝子移入の存在を発見するための子孫ゲノムDNAを分離する手段と、(d)前記耐性遺伝子への遺伝子移入の存在が手段(c)によって立証された芽キャベツ(B. oleracea)植物の前記子孫ゲノムDNAから選択する手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪点様の病弊を引き起こす輪紋病(Mycosphaerella brassicicola。以下M. brassicicolaと略す。)に対する耐性を有する芽キャベツ(Brassica oleracea。以下B. oleraceaと略す。)植物に関する。本発明はまた、これら輪紋病耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物の種子、果実、及び/又は他の植物部位に関する。本発明は更に、輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性を有する芽キャベツ(B. oleracea)植物の生産方法に関する。本発明はまた、特に耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物の同定目的の為の輪紋病(M. brassicicola)耐性遺伝子に連結された特定DNAマーカの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
輪紋病(M. brassicicolaは、別名でSphaeria brassicicola, Sphaerella brassicicola, Dothidea brassicae, Asteroma brassicae, PhyllosWticta brassicicolaなる学名で表される)(プニタリンガム アンド ホリデイ, デスクリプション オブ パソジェニック フンギ アンド バクテリア, シーエムアイ(コモンウェルス マイコロジカル インスティテュート) イングランド, 468巻, 1975年(Punithalingham and Holliday, Descriptions of Pathogenic Fungi and Bacteria, CMI (Commonwealth Mycological Institute) England, No. 468, 1975):非特許文献1)は、アブラナ属(Brassica)植物において、輪点様の病弊を引き起こす。80年代初めに多くの場所で発生し、時として大流行した、(輪紋病)真菌は、子嚢菌類に属し、芽キャベツ植物の葉に灰褐色の病斑を形成し、ゆくゆく子嚢胞子が形成され。これらの胞子は、前記真菌の散布を意味し、そして主に風及び雨滴によって(真菌が)拡大される。前記真菌は、湿潤且つ温和な条件が一番好適な繁殖条件である。前記条件の組み合わせによって、輪紋病(M. brassicicola)が広い範囲で急速に拡大する。輪紋病(M. brassicicola)の深刻な(感染)影響が、急速な葉の枯化、落葉、そして結果として生じる作物の生産の減少を引き起こす。付け加えると、前述のようなことが、輪紋病(M. brassicicola)の感染が生産作物の保存中に拡大することにより、病斑が二次感染(例えば、ハイイロカビ(Botrytis spp.)による)のための侵入部位を形成することにより、生産作物(植物全体及び/又は植物の一部分)に対して表面的なダメージを導く。
【0003】
輪紋病(M. brassicicola)の宿主植物は、ナノハナ(B. campestris)、アビシニアガラシ(B. carinata)、セイヨウアブラナ(B. napus)、クロガラシ(B. nigra)、芽キャベツ(B. oleracea)等の殆ど全てのアブラナ属(Brassica)と、更にはラディッシュ(Raphanus sativus)、並びにダイコンモドキ(Hirschfeldia incana)、アラセイトウ(Matthiola incana)、カキネガラシ(Sisymbrium officinale)、及びグンバイナズナ(Thlaspi arvense)等のアブラナ科の草である。
【0004】
アブラナ属(Brassica)とは、アブラナ科(Brassicaceae(以前は十字花科(Cruciferae))に属する植物属である。この属に属する植物は、キャベツ或いはカラシの集合体である。アブラナ属は、セイヨウアブラナ、カリフラワー、赤キャベツ、サボイキャベツ、白キャベツ、牛心キャベツ、ちりめんキャベツ、ブロッコリー、芽キャベツ、白菜、スズナ、及びポルトガルキャベツ(ケール)などの多くの重要な農業及び園芸作物を含んでいる。前記アブラナ属植物の殆ど全てが、根(カブ)、茎(スズナ)、葉(白キャベツ)、腋芽(芽キャベツ)、花卉(カリフラワー、ブロッコリー)及び種(セイヨウアブラナ)のように、食物として使用されている。白若しくは紫色の花又は明確な色若しくは形を持つ葉を有する幾つかの種(前記アブラナ属植物)は、観賞目的に栽培される。
【0005】
輪紋病(M. brassicicola)の制御(抑制)には、殺菌剤を使用することが可能(有効)であるにも関わらず、認可済みの殺菌剤の数及び殺菌剤の使用が、環境上及び健康上の理由から制限されている。輪紋病(M. brassicicola)の抑制に対して殺菌剤を使用することは、取り扱いのための的確な時期を決定することが難しいため、それ以上に容易なことではない。それ故、アブラナ科、特に芽キャベツ(B. oleracea)植物を前記真菌に耐性を有するように改良することが好ましい。輪紋病(M. brassicicola)に耐性を有するアブラナ科の植物は得られていない。
【非特許文献1】プニタリンガム アンド ホリデイ, デスクリプション オブ パソジェニック フンギ アンド バクテリア, シーエムアイ(コモンウェルス マイコロジカル インスティテュート) イングランド, 468巻, 1975年(Punithalingham and Holliday, Descriptions of Pathogenic Fungi and Bacteria, CMI (Commonwealth Mycological Institute) England, No. 468, 1975.).
【非特許文献2】マツモト他, マンマリアン ゲノム, 第9巻:531−535ページ, 1998年(Matsumoto et al., Mammalian Genome, 9: 531−535, 1998.).
【非特許文献3】レイター, 「PCR−ベースド マーカ システムズ」(DNA−ベースド マーカーズ イン プランツ), クリューワー アカデミック パブリシャーズ, 第6巻:9−29ページ, 2001年(Reiter, PCR−based marker systems, in: DNA−based markers in plants, Kluwer Academic Publishers, vol. 6: 9−29, 2001.).
【非特許文献4】ウェイシング他, 「ディテクティング DNA ヴァリエーション バイ モレキュラー マーカーズ」(DNA フィンガープリンティング イン プランツ, プリンシプルズ, メソッヅ, アンド アプリケーションズ), シーアールシー セカンドエディション, 第6巻:21−73ページ, 2005年(Weising et al., Detecting DNA variation by molecular markers, in: DNA fingerprinting in plants, principles, methods and applications, CRC Press, 2nd ed. : 21−73, 2005.).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の事情に鑑み、本発明の目的は、輪点様の病弊を引き起こす輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性を有する芽キャベツ(B. oleracea)植物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子を有する芽キャベツ(B. oleracea)植物であって、前記耐性遺伝子が輪紋病(M. brassicicola)に対する単性及び優性耐性を備え、前記耐性遺伝子が、受託番号PTA−7413として2006年3月1日に米国菌培養収集所(エーティーシーシー(ATCC), パテント デポジトリー(Patent Depository), 10801, ユニバーシティ バウルバード(University Boulevard), マナサス(Manassas), バージニア州(VA) 20110, 米国)に蓄積された種から成る、芽キャベツ(B. oleracea)植物に由来することを特徴とすることで達成される。驚いたことには、優れた耐性が輪紋病(M. brassicicola)に対する2種の生理種(physio´s)によって提供されることにより、本発明による耐性遺伝子が発見された。これらは、オランダ国にてしばしば存在する生理種並びに西フランス地方(特にノルマンディ及びブリタニー)のカリフラワー及び中央アメリカ(特にグアテマラ)のキャベツによく見られるより伝染率の高い生理種である。
【0008】
本発明の更に好ましい態様は、芽キャベツ(B. oleracea)植物中の耐性遺伝子が1つ若しくはそれ以上の特有DNAマーカに連結されていることである。これらのマーカは、本発明の耐性遺伝子の存在を立証するために使用される。
【0009】
本発明の好ましい態様は、輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子が、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、最も好ましくは6つのDNAマーカに連結されており、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲むことである。本発明における“エンクローズ(囲む)”とは、DNAマーカが、耐性遺伝子の両側、即ち耐性遺伝子の“アップストリーム(上流)”及び“ダウンストリーム(下流)”にあるゲノムに存在することを意味するものであると理解されたい。複数のDNAマーカの存在を立証するには、DNAマーカが耐性遺伝子に連結されていること、並びに耐性遺伝子を伴った遺伝子移入が実質的に存在していることが確実である耐性遺伝子を囲むことである。
【0010】
本発明によるDNAマーカが、好ましくは、表1から選択され、前記芽キャベツ植物中のゲノム中にある前記DNAマーカの存在が、配列番号1〜6(表2)から成るグループから選択されるプライマー配列を用いることで立証される。
【0011】
本発明に関する研究では、前記関連DNAマーカが輪紋病(M. brassicicola)耐性を有するための遺伝子移入のための特性があることを見出した。本発明におけるDNAマーカは、関連耐性遺伝子に連結され、表1に表示されている(塩基対の)同定サイズを有し、そして特有的プライマーの組み合わせを用いることによって立証される。
【0012】
本発明の植物は、好ましくは、ロマネスコ・カリフラワー(B. oleracea convar. botrytis var. botrytis)、ブロッコリー(B. oleracea convar. botrytis var. cymosa)、スプラウティング・ブロッコリー(B. oleracea convar. botrytis var. asparagoides)、芽キャベツ(B. oleracea convar. oleracea var. gemnifera)、白キャベツ若しくは牛心キャベツ(B. oleracea convar. capitata var. alba)、赤キャベツ(B. oleracea convar. capitata var. rubra)、サボイキャベツ(B. oleracea convar. capitata var. sabauda)、ちりめんキャベツ(B. oleracea convar. acephela var. sabellica)、スズナ(B. oleracea convar. acephela var. gongyloides)、及びポルトガルキャベツ(B. oleracea var. tronchuda syn. costata)から成るグループより選択される。
【0013】
本発明はまた、前記植物の種、果実、及び/又は他の部位に関連する。ここで言う他の部位とは、例えば芽キャベツにおける腋芽などのように、とりわけ植物における可食部を意味するものと理解されたい。
【0014】
本発明はまた、輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性を有する芽キャベツ(B. oleracea)植物を得るための栽培方法であって、前記方法は、少なくとも(a)輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子を有する第1芽キャベツ(B. oleracea)植物を備える手段と、(b)前記第1芽キャベツ植物と感受性第2芽キャベツ(B. oleracea)植物とを交配させる手段と、(c)1つ若しくはそれ以上の前記耐性遺伝子に連結された特有DNAマーカを用いることによる前記耐性遺伝子への遺伝子移入の存在を発見するための子孫ゲノムDNAを分離する手段と、(d)前記耐性遺伝子への遺伝子移入の存在が手段(c)によって立証された芽キャベツ(B. oleracea)植物の前記子孫(ゲノムDNA)から選択する手段とを具備している。
【0015】
本発明の方法によれば、耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物が、本発明の耐性遺伝子の遺伝子移入に特有であるDNAマーカを使用することによって迅速且つ簡便に提供される。
【0016】
輪紋病(M. brassicicola)の病的圧力は、風、気温、空気湿度及び環境(その逆として宿主植物側からも)のような異質な自然因子によってとても変化しやすい。感染度の大きな差は、これによって表れる。更には、その兆候は、黒斑病(Alternaria brassicae)及び黒すす病(A. brassicicola)によって引き起こされた病弊と容易く錯覚されてしまう。本発明による方法と耐性遺伝子に連結された特有DNAマーカを使用することは、植物が耐性遺伝子を含んでいるかどうかを簡便に決定することが可能である。この方法では、耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物がそれ以上に、従来の育種プログラムと比べるとより速く得られる。多くのアブラナ属種は、植物が最初の1年は発育そして花をつけ、2年目は種を生産するという2年に1回というサイクルを有する。耐性遺伝子に連結されている特有DNAマーカを利用することによって、感染テストを実行する必要が無いこと並びに可能な限り選択した親世代に成長されなくてはならない植物が必要ないために、前述の過程が年周期として促進される。このように、多くの年が全てを含めた育種プログラムに蓄えられている。
【0017】
本発明による方法における前記手段(d)によって選択される植物は、感染しやすい芽キャベツ(B. oleracea)植物とともに前記手段(d)によって1回若しくはそれ以上得られる植物と、特有DNAマーカを使用した耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物の子孫からその都度再度選択するといった戻し交配若しくは自家受粉のような従来ある手段に随意的に従う。前述の手段(d)にて得られた植物はまた、例えば、葯及び/又はミクロ胞子培地のような当業者に知られた手法によって、ホモ接合体が作られる。
【0018】
第1芽キャベツ(B. oleracea)植物が、好ましくは、輪紋病(M. brassicicola)に対する単性及び優性耐性を与える耐性遺伝子を備えている。
【0019】
好ましい態様は、第1芽キャベツ(B. oleracea)植物が、受託番号PTA−7413として2006年3月1日に米国菌培養収集所(エーティーシーシー(ATCC), パテント デポジトリー(Patent Depository), 10801, ユニバーシティ バウルバード(University Boulevard), マナサス(Manassas), バージニア州(VA) 20110, 米国)に蓄積された種から成る芽キャベツ(B. oleracea)植物から得られた耐性遺伝子を含んでいることである。
【0020】
本発明の方法による更に好ましい態様は、手段(d)における耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物の選択が、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、最も好ましくは少なくとも6つである耐性遺伝子に連結されたDNAマーカを含んでいる芽キャベツ(B. oleracea)植物を選択することであり、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子に囲まれている。このことによって、植物が耐性遺伝子を伴った遺伝子移入を実質的に有するという確実性を決定することが可能である。
【0021】
本発明によるDNAマーカは、好ましくは表1から選択され、前記植物のゲノム中のDNAマーカの存在が、配列番号1〜6(表2)の群から選択されるプライマーの配列を使用することで立証される。
【0022】
本発明の特に好ましい態様は、第1芽キャベツ(B. oleracea)植物が、受託番号PTA−7413として2006年3月1日に米国菌培養収集所(エーティーシーシー(ATCC), パテント デポジトリー(Patent Depository), 10801, ユニバーシティ バウルバード(University Boulevard), マナサス(Manassas), バージニア州 20110, 米国)に蓄積された種から成る、芽キャベツ(B. oleracea)植物に由来する輪紋病(M. brassicicola)耐性遺伝子を含んでいることである。
【0023】
耐性遺伝子が中に注入された感染しやすい芽キャベツ(B. oleracea)植物とは、好ましくはロマネスコ・カリフラワー(B. oleracea convar. botrytis var. botrytis)、ブロッコリー(B. oleracea convar. botrytis var. cymosa)、スプラウティング・ブロッコリー(B. oleracea convar. botrytis var. asparagoides)、芽キャベツ(B. oleracea convar. oleracea var. gemnifera)、白キャベツ若しくは牛心キャベツ(B. oleracea convar. capitata var. alba)、赤キャベツ(B. oleracea convar. capitata var. rubra)、サボイキャベツ(B. oleracea convar. capitata var. sabauda)、ちりめんキャベツ(B. oleracea convar. acephela var. sabellica)、スズナ(B. oleracea convar. acephela var. gongyloides)、及びポルトガルキャベツ(B. oleracea var. tronchuda syn. costata)から成るグループより選択される。
【0024】
本発明は更に、前記方法によって得られる芽キャベツ(B. oleracea)植物と、前記植物の種及び/又はそれ以外の部位に関する。
【0025】
本発明はまた、輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性を有する芽キャベツ(B. oleracea)植物を同定するための、輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子が連結された少なくとも1つのDNAマーカの使用であって、前記DNAマーカが表1のDNAマーカより選択され、前記DNAマーカが配列番号1〜6(表2)から成るグループから選択される。
【0026】
耐性遺伝子が好ましくは、受託番号PTA−7413として米国菌培養収集所(エーティーシーシー(ATCC))に蓄積された種から成る、芽キャベツ(B. oleracea)植物に由来する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の芽キャベツ(B. oleracea)植物製造方法によって、輪紋病(M. brassicicola)に耐性を有する遺伝子を交配することで、芽キャベツ(B. oleracea)植物が、輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性と、前記芽キャベツ植物の種及び/又はそれ以外の部位に関して、輪紋病耐性を有することが可能になった。
【実施例】
【0028】
本発明の態様を以下の実施例に基いて説明する。
【0029】
[実施例]
輪紋病(M. brassicicola)耐性親系統芽キャベツ(B. oleracea)(9009899, カリフラワー型;受託番号PTA−7413として米国菌培養収集所に蓄積されている)は、異種芽キャベツ(B. oleracea)種(スズナ、ブロッコリー、牛心キャベツ、白キャベツ、赤キャベツ、ちりめんキャベツ、サボイキャベツ、ケール、芽キャベツ及びカリフラワー)と異種交配された。BClポピュレーション(個体群)は、感染しやすい親系統へと戻し交配した後に得られた。
【0030】
フィールドテストは違った年に立証された。(芽キャベツ)植物素材が、輪紋病(M. brassicicola)による感染度が高く、且つ異種芽キャベツ(B. oleracea)種に一様に発生した年に収集された。輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性のためのDNAマーカの発達は、これらの個体群から始まった。該ポピュレーションの殆ど全てが、輪紋病(M. brassicicola)耐性に関して1:1のスプリットを有しており、前記輪紋病耐性は、期待された単一的且つ優れた耐性を示唆する。
【0031】
これらの個体群(牛心キャベツ、ブロッコリー及びスズナ)が、凡そ150個体のそれぞれに使用された。全ての個体のDNAは、リーフパンチ法(1つのリーフパンチあたり大体0.3cm)により分離(単離)された。BSA(バルク分離分析若しくは蛋白包埋)法は、綿密に連結されたDNAマーカを続いて生み出すのに用いられ、BSA法は、RAMP(受容体活性変更タンパク質)法(マツモト他, マンマリアン ゲノム, 第9巻:531−535ページ, 1998年(Matsumoto et al., Mammalian Genome, 9: 531−535, 1998.)(非特許文献2); レイター, 「PCR−ベースド マーカ システムズ」(DNA−ベースド マーカーズ イン プランツ), クリューワー アカデミック パブリシャーズ, 第6巻:9−29ページ, 2001年(Reiter, PCR−based marker systems, in: DNA−based markers in plants, Kluwer Academic Publishers, vol. 6: 9−29, 2001.)(非特許文献3); ウェイシング他, 「ディテクティング DNA ヴァリエーション バイ モレキュラー マーカーズ」(DNA フィンガープリンティング イン プランツ, プリンシプルズ, メソッヅ, アンド アプリケーションズ), シーアールシー セカンドエディション, 第6巻:21−73ページ, 2005年(Weising et al., Detecting DNA variation by molecular markers, in: DNA fingerprinting in plants, principles, methods and applications, CRC Press, 2nd ed. : 21−73, 2005.)(非特許文献4))から作られた。
【0032】
iSSR(単純反復配列間)及びRAPD(無作為増幅多型DNA)プライマーが組み合わされるようにして成るRAMP法は、識別が耐性遺伝子移入を含んだ個体と、遺伝子移入を含まない個体との間で作られるために、その中に具体的には耐性を同時分離したようなDNAフラグメントを有した結合パターンを生産する。
【0033】
RAMPフラグメントをマッピングすることによって、近接的に連結されたRAMPマーカは、遺伝子移入によって落とすことにより、表1に記載されているような耐性遺伝子を囲むことによって同定された。DNAマーカと耐性遺伝子との間の遺伝距離は、センチモルガン(cM。1cM=0.022cm)で表される。
【0034】
マーカ分析及びPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の反応条件
DNAマーカが生成されたPCR反応条件の概要については、以下に記す。
【0035】
RAMP反応のためのPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)混合

【0036】
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)プログラム

【0037】
PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)(Licor社の装置による)
RAMPパターン分析には、“ジェネ リードアイアール 4200 DNA アナライザ(Gene ReadIR 4200 DNA analyzer:Licor社)”から製造されたものが用いられる。6.5%のアクリルアミドを最適濃度として、フラグメントが基礎ベースにまで下がって分離される。このシステムにおいて、前記フラグメントを可視化するには、ラベル化(IR染料ラベル)されたプライマーを使用する必要がある。この目的は、順方向プライマーの3分の1の量が、同じ配列を有するラベル化されたプライマーによって、置換される。
【0038】
マーカの概要
表2に付託される本発明のプライマーを導き出す研究では、表1に付託されるDNAマーカを生成(産出)するのに用いられている。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
プライマーの組み合わせは、耐性遺伝子移入の特有的サイズを有したフラグメントを形成している(表1)。これらのDNAマーカはそれゆえに耐性遺伝子移入によって特徴付けられる。耐性遺伝子を囲んでいるこれらのDNAマーカの組み合わせは、輪紋病(M. brassicicola)耐性遺伝子移入があるという確証を提供している。
【0042】
[定義]
BSA(バルク分離分析若しくは蛋白包埋分析)法:大きな分離集団における選択戦略において、同形質(表現型)若しくはDNAを伴った個体群は、“プール”の中に束ねられる。DNAテクニックを伴ってこれらのプールをスクリーニングした後、マーカは、関連表現型に連結されて同定される。
【0043】
cM−センチモルガン:マーカ間の遺伝距離のための単位であり、100個体あたりの(遺伝)交差数を基にしている。
【0044】
DNAマーカ:ゲノムの既知の位置にある遺伝子又はDNAの別の部位に連結されているDNAフラグメントであって、前記DNAフラグメントは、この遺伝子若しくは位置の遺伝率をモニターするのに使用される。
【0045】
ゲル電気泳動:それらのサイズに基いた分子(DNA、RNA、タンパク質及び関連物質)の分離方法であって、形成若しくはチャージを、電場の影響下でマトリクス(アガロース又はポリアクリルアミド)中で行う。
【0046】
遺伝子移入:例えば、交配によって別の線に挿入された染色体フラグメントの線。
【0047】
IR(可視光)染料ラベル:リコーイメージングシステムに用いられるIRラベルのことであって、700nm又は800nmにて発光する。
【0048】
単一遺伝子:1つの遺伝子によって決定される。
【0049】
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応):特有的DNAフラグメントの増殖のためのインビトロ(in vitro)式拡充方法。この合成反応は、DNA断片とハイブリダイズした最低限のオリゴヌクレオチドを使用した後に、ポリメラーゼが連続的温度サイクルの間の隣接領域を拡充する。
【0050】
プライマー:一本鎖らせんDNA分子の配列と相補的な短いオリゴヌクレオチド(約20〜50塩基対)であって、ポリメラーゼの始点として供給する。
【0051】
RAMPs(受容体活性変更タンパク質法):異種DNA巨大分子間での多型性が検出されることを伴った、RAPD及びiSSRプライマーをベースにしたDNA指紋法。
【0052】
RAPD(無作為増幅多型DNA):無作為増幅多型DNAプライマーとは、“ランダム”配列を有した10merのプライマーであって、グアニン・シトシン含有率が60〜70%であり、前記プライマーが自己補完型ではない。
【0053】
iSSR(単純反復配列間):単純反復配列間プライマーとは、SSR(単純反復配列)の5´末端にて設計されたプライマーであり、2又は3のヌクレオチドの繰り返しを含むDNA断片である。
【0054】
BC(戻し交配):親の1つと個体との交配。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子を有する芽キャベツ(B. oleracea)植物であって、前記耐性遺伝子が輪紋病(M. brassicicola)に対して単性及び優性耐性を有し、前記耐性遺伝子が、受託番号PTA−7413として2006年3月1日に米国菌培養収集所(エーティーシーシー(ATCC), パテント デポジトリー(Patent Depository), 10801, ユニバーシティ バウルバード(University Boulevard), マナサス(Manassas), バージニア州(VA) 20110, 米国)に蓄積された種から成る芽キャベツ(B. oleracea)植物に由来することを特徴とする芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項2】
前記耐性遺伝子が少なくとも1つの特有DNAマーカに連結されている請求項1に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項3】
前記輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子が少なくとも2つのDNAマーカに連結されており、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる請求項2に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項4】
前記輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子が少なくとも3つのDNAマーカに連結されており、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる請求項3に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項5】
前記輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子が少なくとも4つのDNAマーカに連結されており、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる請求項4に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項6】
前記輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子が少なくとも5つのDNAマーカに連結されており、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる請求項5に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項7】
前記輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子が少なくとも6つのDNAマーカに連結されており、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる請求項6に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項8】
前記DNAマーカが表1から選択され、前記芽キャベツ植物中のゲノムにある前記DNAマーカの存在が、配列番号1〜6(表2)を含むグループから選択されるプライマー配列を使用することにより立証される請求項1乃至7のいずれかに記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項9】
前記芽キャベツ植物が、ロマネスコ・カリフラワー(B. oleracea convar. botrytis var. botrytis)、ブロッコリー(B. oleracea convar. botrytis var. cymosa)、スプラウティング・ブロッコリー(B. oleracea convar. botrytis var. asparagoides)、芽キャベツ(B. oleracea convar. oleracea var. gemnifera)、白キャベツ若しくは牛心キャベツ(B. oleracea convar. capitata var. alba)、赤キャベツ(B. oleracea convar. capitata var. rubra)、サボイキャベツ(B. oleracea convar. capitata var. sabauda)、ちりめんキャベツ(B. oleracea convar. acephela var. sabellica)、スズナ(B. oleracea convar. acephela var. gongyloides)、及びポルトガルキャベツ(B. oleracea var. tronchuda syn. costata)から成るグループより選択される請求項1乃至8のいずれかに記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の種、果実及び/又は他の部位。
【請求項11】
輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性を有する芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法であって、
(a)輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性遺伝子を有する第1芽キャベツ(B. oleracea)植物を備える手段と、
(b)前記第1芽キャベツ植物と感受性第2芽キャベツ(B. oleracea)植物とを交配させる手段と、
(c)1つ若しくはそれ以上の前記耐性遺伝子に連結された特有DNAマーカを用いることによる前記耐性遺伝子への遺伝子移入の存在を発見するための子孫ゲノムDNAを分離する手段と、
(d)前記耐性遺伝子への遺伝子移入の存在が手段(c)によって立証された芽キャベツ(B. oleracea)植物の前記子孫ゲノムDNAから選択する手段とを具備することを特徴とする芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項12】
前記耐性遺伝子が輪紋病(M. brassicicola)に対して単性及び優性耐性を有している請求項11に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項13】
前記耐性遺伝子が、受託番号PTA−7413として2006年3月1日に米国菌培養収集所(エーティーシーシー(ATCC), パテント デポジトリー(Patent Depository), 10801, ユニバーシティ バウルバード(University Boulevard), マナサス(Manassas), バージニア州(VA) 20110, 米国)に蓄積された種から成る、芽キャベツ(B. oleracea)植物に由来する請求項11又は12に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項14】
手段(d)における前記耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物は、前記耐性遺伝子に連結されている少なくとも2つのDNAマーカを含み、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる芽キャベツ(B. oleracea)植物から選択されて成る請求項11乃至13のいずれかに記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項15】
手段(d)における前記耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物は、前記耐性遺伝子に連結されている少なくとも3つのDNAマーカを含み、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる芽キャベツ(B. oleracea)植物から選択されて成る請求項14に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項16】
手段(d)における前記耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物は、前記耐性遺伝子に連結されている少なくとも4つのDNAマーカを含み、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる芽キャベツ(B. oleracea)植物から選択されて成る請求項15に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項17】
手段(d)における前記耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物は、前記耐性遺伝子に連結されている少なくとも5つのDNAマーカを含み、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる芽キャベツ(B. oleracea)植物から選択されて成る請求項16に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項18】
手段(d)における前記耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物は、前記耐性遺伝子に連結されている少なくとも6つのDNAマーカを含み、前記DNAマーカが前記耐性遺伝子を囲んでいる芽キャベツ(B. oleracea)植物から選択されて成る請求項11に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項19】
前記DNAマーカが表1に記載のDNAマーカより選択され、前記DNAマーカが配列番号1〜6(表2)から成るグループから選択されたプライマー配列により立証される請求項11乃至18に記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項20】
前記芽キャベツ植物が、ロマネスコ・カリフラワー(B. oleracea convar. botrytis var. botrytis)、ブロッコリー(B. oleracea convar. botrytis var. cymosa)、スプラウティング・ブロッコリー(B. oleracea convar. botrytis var. asparagoides)、芽キャベツ(B. oleracea convar. oleracea var. gemnifera)、白キャベツ若しくは牛心キャベツ(B. oleracea convar. capitata var. alba)、赤キャベツ(B. oleracea convar. capitata var. rubra)、サボイキャベツ(B. oleracea convar. capitata var. sabauda)、ちりめんキャベツ(B. oleracea convar. acephela var. sabellica)、スズナ(B. oleracea convar. acephela var. gongyloides)、及びポルトガルキャベツ(B. oleracea var. tronchuda syn. costata)から成るグループより選択される請求項11乃至19のいずれかに記載の芽キャベツ(B. oleracea)植物の製造方法。
【請求項21】
請求項11乃至20のいずれかに記載の芽キャベツ植物の製造方法によって得られる輪紋病(M. brassicicola)耐性芽キャベツ(B. oleracea)植物。
【請求項22】
輪紋病(M. brassicicola)に対する耐性を有する芽キャベツ(B. oleracea)植物の同定のために、輪紋病(Mycosphaerella brassicicola)に対する耐性遺伝子に連結された少なくとも一つのDNAマーカの使用であって、前記DNAマーカが表1に記載のDNAマーカより選択され、前記DNAマーカが配列番号1〜6(表2)から成るグループから選択されたプライマー配列により立証されることを特徴とする芽キャベツ(B. oleracea)植物の使用。


【公表番号】特表2009−533037(P2009−533037A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504753(P2009−504753)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053570
【国際公開番号】WO2007/116096
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508298260)ベーヨ ザーデン ビー ブイ (1)
【氏名又は名称原語表記】BEJO ZADEN B.V.
【住所又は居所原語表記】Trambaan 1,NL−1749 CZ Warmenhuizen (NL)
【Fターム(参考)】