説明

輻射線−硬化性組成物の粘度安定化

【課題】充填材または充填材の混合物をステレオリソグラフィ系(stereolithography systems)で使用するための輻射線−硬化性組成物への混合の際、組成物の全体における粘度不安定化の問題を解決する手段を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のカチオン重合性化合物および/またはフリーラジカル重合性化合物、少なくとも1種の充填材、及び少なくとも1種のカチオンおよび/またはラジカル重合のための光開始剤よりなる混合物からなる輻射線−硬化性組成物において、該組成物全体の望ましくない粘度増加および続く早期重合を実質的に遅延させまたは防止するために有機粘度安定化材料を前記組成物と接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカチオン重合性化合物および/または少なくとも1種のフリーラジカル重合性化合物、充填材(filler materials) ならびに少なくとも1種のカチオンおよび/またはラジカル重合のための光開始剤に基づく輻射線−硬化性充填材入り組成物を使用するステレオリソグラフィによる三次元製品(three-dimensional articles)の製造方法であって、該組成物をベース樹脂に可溶の有機粘度安定化材料または、粘度の著しい増加を遅延させまたは防止するのに十分な量の少なくとも1種の充填材のいずれかと接触させる方法、ならびに前記方法から得られた硬化した物に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン重合性化合物およびカチオン重合のための光開始剤からなる輻射線−硬化性組成物は工業的によく知られておりおよび、例えば、輻射線−硬化性ペイント、フォトレジストとして、またはステレオリソグラフィによる三次元製品の製造のために使用される。カチオン重合のための光開始剤はこれらの組成物中で強い潜酸(latent acid)、即ち、照射において光反応を起こして強酸を形成する化合物、になりそれは次いでカチオン重合を開始する。
【0003】
光硬化可能なカチオン重合性化合物においては、発生するが、それは配合物の著しいゲル化の形成を生ずることのできない酸は組成物の安定性に最も大きい障害を提示する。カチオン重合が早期に、即ち照射の前であっても開始するので、実際、前記輻射線硬化性組成物が使用される際に厄介な問題が発生する。これは一般に組成物中の酸の早期形成による。望ましくない酸の形成は例えば、水分、熱、意図しない光もしくは散乱光への曝露のためまたは意図しない酸の移動によるような光開始剤の分解のためであり得る。望ましくない酸の形成は、しばしば組成物の粘度を非常に増加させるので組成物はその意図された目的のためには使用不可能になる。
【0004】
この本質的な所望でない粘度増加(粘度の不安定化の問題)はカチオン重合性化合物とカチオン重合のための光開始剤に基づく組成物を使用するステレオリソグラフィによる三次元製品の慣用的製造においてしばしば起こる。米国特許第4,575,330号中により詳細に記載されており、参照によりそのまま本明細書に編入されるようなステレオリソグラフィー法では、三次元製品は最初に組成物の層を画像様(imagewise) に照射することによって層において輻射線−硬化性組成物から構築される。組成物は典型的には層が照射された領域における所望の層厚に固体化するまで、同時に領域全体に渡ってまたは予め決められたパターンで(レーザーまたはベクトル的走査によって)のいずれかで、UV/VIS光源を使用して照射される。輻射線−硬化性組成物の新しい層は次に既に固体化した層上に供給される。新しい層は全ての領域または予め決められたパターンに同様に照射されて、第一層に付着する第二の固体化層を形成する。
【0005】
積層(layering) および照射操作は硬化性組成物の新しい層による前もって固体化された材料のカバーリングおよび続く新しい層の照射の繰り返しが生の成形品(green part))としてまた知られる三次元製品を生成する。所謂「生の成形品」は典型的には、完全に硬化していないが、それ自体の重さに耐えるに十分に固体化している。上記生の成形品は輻射線−硬化性組成物を含む槽から取り出されそして、例えば加熱および/またはよりさらなる照射によって後硬化して最終硬化品または製品を製造できる。
【0006】
プレフォームまたは生の成形品の取り出し後、ステレオリソグラフィー槽は、新しい硬化性組成物を補給され、そしてさらなる生の成形品の製造のために使用される。経済的理
由のため通常補充のみされる、カチオン硬化性ステレオリソグラフィ槽は許容できない粘度の増加を示すことが見いだされている。粘度の増加はステレオリソグラフィ成形品構築パラメーター(stereolithography part building parameter)が材料の特定の特性(例えば狭い特定の粘度範囲)に対してもともと決定されるという事実のため許容できない。粘度は徐々に増加するので、良好な成形品構築を達成するために新しい成形品構築パラメーターは連続的に発生させおよび最適化されなければならない。残念ながらステレオリソグラフィ成形品構築パラメーターの決定および最適化は長時間かつ費用のかかる工程であり、そして高度に専門化した使用者によってのみ行い得る。
【0007】
加えて、所望でない粘度増加は複雑な形の製品の構築に有害である。複雑な成形物は例えば、そこからは高粘度材料が十分な程度にまで流延できない、狭いギャップ、角または非常に小さい孔を介して外部と接続している内部キャビティを持ち得る。
【0008】
高粘度またはチキソトロープな組成物はまた、槽中の液体組成物の最上表面の水平化(leveling) のために必要とされる時間もまた増加させる。水平化のための増加した時間はステレオリソグラフィー装置の生産性を著しく減少させる。従って粘度安定化に対する改良はステレオリソグラフィーの分野において特に重要である。
【0009】
従来において種々の樹脂安定剤が提案されている。ワット(Watt)による米国特許第3,721,617 号はエポキシ樹脂のための様々な環状アミドゲル化抑制剤の使用を提案している。これらはある種の樹脂については有用であるが、これらの環状アミドの幾つかは、例えばポリビニルピロリドンはエポキシ樹脂の重合を著しく抑制することが見出されている。多くの塩基は熱、加水分解、光による活性の結果として発生する酸を中和することができる。しかし、いくつかの塩基は反応または重合(触媒として働く) を引き起こすのに十分強力であり、そしてこのため、粘度安定剤として有益ではない。
【0010】
デュポン(Dupont) 社の国際特許出願の公開公報であるWO96/41238は組成物中の限定された溶解性を有しそして組成物の密度とは異なる密度を有する粘度安定剤であって、該安定剤が第IA族の金属、第IIA族の金属、アンモニアもしくは置換されたアンモニアおよび弱酸の塩であり、そして組成物中の該安定剤がその溶解度より多い量で存在する該安定剤の使用を記載する。配合物中の安定剤の濃度はその限られた溶解度よりも多い塩の存在によって保持されている。その中で示された好ましい安定剤は第IA族の金属および弱無機酸の塩である。
【0011】
米国特許第5,073,476 号は暗所で貯蔵できる樹脂を増強させるために、硬化性組成物がニトリル、アミド、尿素のような弱有機塩基を含むことができることを述べている。意図しない曝露により引き起こされる早期反応を防止するために、少量の紫外線吸収剤および/または有機染料が添加できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,721,617号明細書
【特許文献2】国際公開第96/41238号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,073,476号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
無機材料、セラミック、複合材料、金属充填材、有機高分子のもの、ガラス、サーモプラスチックス、シリカビーズ等々のような充填材の輻射線−硬化性組成物への添加は結果的に生じる硬化製品の主要な機械特性および熱機械特性を改良する。充填材は充填材の表
面の性質に依存して酸性または塩基性または中性のいずれかであってよい。充填材または充填材の混合物のステレオリソグラフィ系(stereolithography systems) で使用するための輻射線−硬化性組成物への混込みは通常組成物の全体における粘度不安定化の問題をもたらす。
本発明は特にステレオリソグラフィ系で使用するための充填材入り組成物における粘度不安定化(粘度増加)に関連した非常に望ましくない問題を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一の側面は、輻射線−硬化性組成物を使用するステレオリソグラフィによる三次元製品の製造方法に関する。該組成物は少なくとも1種のカチオン重合性化合物および/または少なくとも1種のラジカル重合性化合物、少なくとも1種の充填材および少なくとも1種のカチオンおよび/またはラジカル重合のための光開始剤よりなる混合物である。有機粘度安定化材料が該組成物全体の粘度の著しい増加を遅延させまたは防止するのに有効な量で該組成物と接触される。有機安定化材料はベース樹脂に可溶性でありそして好ましくは立体障害性アミンである。そうでなければ、組成物全体の粘度安定性を少なくとも改良する充填材の少なくとも1種を添加する。輻射線−硬化性組成物におけるカチオン重合性化合物は、少なくとも1、2−エポキシド、ビニルエーテル、ラクトン、アセタール、環状スルフィド、環状エーテルまたはシロキサン基を含む少なくとも1種の化合物であり得る。
【0015】
用語として本明細書で使用される粘度安定剤はステレオリソグラフィ組成物の曝露したまたは画像様にした領域を除く領域の遊離酸の存在に起因する組成物全体の粘度の著しい増加を遅延させまたは防止する。表現「著しい粘度の増加を遅延させる」は粘度安定剤を含む充填材入り組成物が安定性を保ちそしてその保存寿命の間を通して、おおかたのステレオリソグラフィの用途に対して許容可能であることを意味する。
【0016】
塩基度の強さ、分子量、化学構造および立体化学に、ならびに特定の化学構造および光酸前駆体(photoacid precursor)の特性、例えば熱安定性、保存寿命等々に依存して、組成物全体における有機塩基安定化材料の濃度は約5重量ppmないし20重量%の範囲にある。
【0017】
輻射線−硬化性組成物はフリーラジカルによって硬化できる化合物またはフリーラジカル重合性化合物の2もしくはそれ以上よりなる混合物、およびフリーラジカル重合のための光開始剤をさらに含むことができる。
【0018】
少なくとも1種の充填材は少なくとも一部分において化学線、カチオンまたはフリーラジカルに曝露したときに非反応性であるかまたは反応可能かのいずれかである化合物−カップリング剤で表面処理が可能である。
【0019】
本発明の第二の側面は少なくとも1種のカチオン重合性化合物、組成物全体の粘度を安定化するために十分な量の少なくとも1種の充填材、ならびにカチオン重合のための光開始剤よりなる混合物を含む輻射線−硬化性組成物を使用するステレオリソグラフィによる三次元製品の製造方法に関する。輻射線−硬化性組成物中のカチオン重合性化合物は少なくとも1,2−エポキシド、ビニルエーテル、ラクトン、アセタール、環状スルフィド、環状エーテルまたはシロキサン基を含む少なくとも1種の化合物であり得る。輻射線−硬化性組成物はフリーラジカルによって硬化できる化合物またはフリーラジカル重合性化合物の2もしくはそれ以上よりなる混合物、およびフリーラジカル重合のための光開始剤をさらに含むことができる。
【0020】
前記第二の側面の好ましい態様において、本発明は少なくとも1種の輻射線重合性化合
物および少なくとも1種の表面処理された充填材よりなる輻射線−硬化性組成物を、前記充填材が表面処理されていないことのほかは同じ前記混合物に比べて前記表面処理が、組成物の粘度安定性を改良するように使用するステレオリソグラフィによる三次元製品の製造方法に関する。輻射線−硬化性組成物は所望により少なくとも1種のカチオン重合性化合物をさらに含む。充填材の表面は好ましくはベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ガンマ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシランで処理される。
【0021】
本発明の第三の側面は少なくとも1種の少なくとも1種のカチオン重合性化合物、約9に等しいかまたはそれより大きいpH値を有する少なくとも1種の充填材、および所望により約9より小さいpH値を有する少なくとも1種の充填材ならびに、カチオン重合のための光開始剤よりなる混合物からなる輻射線−硬化性組成物を使用するステレオリソグラフィによる三次元製品の製造方法に関する。輻射線−硬化性組成物中のカチオン重合性化合物は1,2−エポキシド、少なくとも1種のビニルエーテル、ラクトン、アセタール、環状スルフィド、環状エーテルまたはシロキサン基を含む少なくとも1種の化合物であり得る。輻射線−硬化性組成物はフリーラジカルによって硬化できる化合物またはフリーラジカル重合性化合物の2もしくはそれ以上よりなる混合物、およびフリーラジカル重合のための光開始剤をさらに含むことができる。少なくとも1種の充填材は少なくとも一部分において化学線、カチオンまたはフリーラジカルに曝露したときに非反応性かまたは反応可能かのいずれかである化合物−カップリング剤で表面処理が可能である。有機塩基粘度安定化材料を前記組成物に接触させることもできる。
【0022】
本発明の第四の側面は少なくとも1種のカチオン重合性化合物、少なくとも1種の充填材、カチオン重合のための光開始剤ならびに有機塩基安定化材料よりなる混合物を含有する輻射線−硬化性組成物を化学線に曝露することからなるステレオリソグラフィにより製造された硬化した三次元製品に関する。
【0023】
本発明の第五の側面は少なくとも1種のカチオン重合性化合物、粘度の著しい増加を遅延させまたは防止するのに十分な量の少なくとも1種の充填材ならびにカチオン重合のための光開始剤よりなる混合物からなる輻射線−硬化性組成物を化学線に曝露することからなるステレオリソグラフィにより製造された硬化した三次元製品に関する。
【0024】
本発明の第六の側面はステレオリソグラフィのための安定化された充填材入り組成物の製造方法であって、カチオン重合性化合物、少なくとも1種の充填材、カチオン重合のための光開始剤および有機塩基安定化材料よりなる混合物を反応器内で混合わせることからなる方法に関する。
【0025】
本発明の第七の側面はステレオリソグラフィのための安定化された充填材入り組成物の製造方法であって、少なくとも1種のカチオン重合性化合物、組成物全体の著しい粘度の増加を遅延させまたは防止するのに有効な量の少なくとも1種の充填材およびカチオン重合のための光開始剤よりなる混合物を反応器内で混合わせることからなる方法に関する。
【0026】
本発明の第八の側面は、少なくとも1種の輻射線重合性化合物、少なくとも1種の充填材、少なくとも1種の重合のための光開始剤、および組成物全体の粘度の著しい増加を遅延させまたは防止するのに有効な量の有機塩基の、粘度安定化材料よりなる混合物からなる安定化された輻射線−硬化性組成物に関する。

【0027】
本発明の第九の側面は、少なくとも1種の輻射線重合性化合物、著しい粘度の増加を遅延させまたは防止するのに有効な量の少なくとも1種の充填材および少なくとも1種の重
合のための光開始剤よりなる混合物からなる安定化された輻射線−硬化性組成物に関する。
【0028】
本発明の第十の側面は、少なくとも1種のカチオン重合性化合物および/または少なくとも1種のフリーラジカル重合性化合物、約9に等しいかもしくはそれより大きいpH値を有する少なくとも1種の充填材、約9より小さいpH値を有する少なくとも1種の充填材ならびに、少なくとも1種のカチオンおよび/またはラジカル重合のための光開始剤よりなる混合物からなる安定化された輻射線−硬化性組成物に関する。
【0029】
本発明の前記のおよび他の側面は単独でまたは組み合わせで実施できる。本発明の他の側面は本明細書内の技術の検討において当業者に明らかになるであろう。
【0030】
粘度安定化方法が適当である輻射線−硬化性組成物は、単体で、またはカチオンによりもしくは他の機構、例えばフリーラジカルにより重合できる他の化合物の少なくとも1つとの混合物の形態での何れかの慣用のカチオン重合性有機化合物を含むことができる。
これらは例えば、モノオレフィンおよびジオレフィン例えばイソブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールおよびアクロレイン、あるいはビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリメチルプロパントリビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル;環状ビニルエーテル、例えば3,4−ジヒドロ−2−ホルミル−2H−ピラン(二量体アクロレイン)および2−ヒドロキシメチル−3,4−ジヒドロ−2H−ピランの3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸エステルならびにビニルエステル、例えば酢酸ビニルおよびステアリン酸ビニルのようなカチオン機構により重合できる、エチレン性不飽和化合物を含む。それらはまた、カチオン重合性複素環式化合物、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、グリシジルエーテルまたは、一価アルコールまたはフェノール例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、n−オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルおよびクレジルグリシジルエーテル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレンオキシドおよびシクロヘキサンオキシド;3,3−ジメチルオキセタンおよび3,3−ジ(クロロメチル)オキセタンのようなオキセタン;テトラヒドロフラン;ジオキソラン、トリオキサンおよび1,3,6−トリオキサシクロオクタン;β−プロピオラクトン、γ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトンのようなラクトン;スピロエーテルカーボネートスピロエーテルエステル;エチレンスルフィドおよびプロピレンスルフィドのようなチイラン;エポキシ樹脂;側鎖にグリシジル基を含む線状および枝分かれポリマー、例えばポリアクリレートおよびポリメタクリレートグリシジルエステルのホモポリマーおよびコポリマーである。他の適当なカチオン重合性化合物は、メチロール化合物であり、それらはアミノ樹脂例えばアミドのN−ヒドロキシメチル−、N−メトキシメチル−、N−n−ブトキシメチル−およびN−アセトキシメチル誘導体、またはアミド様化合物例えば環状尿素、例えばエチレン尿素(イミダゾリジン−2−オン)、ヒダントイン、ウロン(テトラヒドロオキサジアジン−4−オン)、1,2−プロピレン尿素(4−メチルイミダゾリジン−2−オン)、1,3−プロピレン尿素(ヘキサヒドロ−2H−ピリミド−2−オン)、ヒドロキシプロピレン尿素(5−ヒドロキシヘキサヒドロ−2H−ピリミド−2−オン)、1,3,5−メラミン、ならびにアセトグアナミン、ベンゾグアナミンおよびアジポグアナミンのような他のポリトリアジンを含む。所望ならば、N−ヒドロキシメチルおよびN−アセトキシメチル基の両方を含むアミノ樹脂、例えばヒドロキシ基の1ないし3個がメチル基によりエーテル化されている、ヘキサメチロールメラミンが使用され得る。他の適当なメチロール化合物はフェノール樹脂、特にフェノールおよびアルデヒドから製造されたレゾールである。この目的に適当なフェノール類はフェノール自体、レゾルシノール、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、p−クロロフェノール;o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、p−第三ブチルフェノールお
よびp−ノニルフェノールのような1ないし9個の炭素原子を有するアルキル基の1ないし2個により置換されたフェノールならびにまたフェニル置換されたフェノール、特にp−フェニルフェノールである。フェノールにより縮合されるアルデヒドは好ましくはホルムアルデヒドであるが、他のアルデヒド例えばアセトアルデヒドおよびフルフラール、もまた適当である。所望ならばこのような硬化性フェノール−アルデヒド樹脂の混合物が使用できる。
【0031】
特に重要なカチオン重合性化合物は、分子中に平均1より多くの1,2−エポキシド基を含む、エポキシ樹脂である。このような樹脂は、脂肪族、芳香族、脂環式、アルアリファチック(araliphatic)または複素環式構造を有し、それらは側鎖としてエポキシド基を含むか、あるいはこれらのグループは脂肪族環系または複素環系の一部分を形成するものである。これらのタイプのエポキシ樹脂は一般的用語として公知でありそして商業的に入手可能である。以下に示すものは、このタイプのエポキシ樹脂の実例により言及される得るべきものである:
【0032】
I)分子中にカルボキシル基を少なくとも2個含む化合物とエピクロロヒドリンまたはグリセロールジクロロヒドリンまたはβ−メチルエピクロロヒドリンとを反応させることによって得られるポリグリシジルおよびポリ(β−メチルグリシジル)エステル。反応は塩基の存在下で都合良く行われる。分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を含む化合物は例えば、脂肪族ポリカルボン酸であってよい。このようなポリカルボン酸の例は、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸または2量体化もしくは3量体化リノレン酸である。しかし、テトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、または4−メチルヘキサヒドロフタル酸のような脂環式ポリカルボン酸もまた使用可能である。芳香族ポリカルボン酸もまた使用でき、例えば、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸およびピロメリット酸である。カルボキシル末端を有する付加物、例えばトリメリット酸およびポリオール、例えばグリセロールもしくは2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンが使用され得る。
【0033】
II) 遊離アルコール系ヒドロキシル基および/またはフェノール系ヒドロキシ基を少なくとも2個含む化合物と適当な置換されたエピクロロヒドリンとを、アルカリ条件下で、または酸触媒の存在下で反応させて次いでアルカリで処理することによって得られるポリグリシジルもしくはポリ(β−メチルグリシジル)エーテル。このタイプのエーテルは例えば、非環式アルコールから、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコールおよび高級ポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン−1,2−ジオールまたはポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールから、ならびにポリエピクロロヒドリンから誘導されたものである。しかし、このエーテルはまた、1,3−もしくは1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンまたは1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ−3−エンのような脂環式アルコールから誘導されていてもよく、あるいは、それらはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリンまたはp,p'−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンのような芳香族環を含む。グリシジルエーテルはまた、単環式フェノールから、例えばレゾルシノールまたはヒドロキノンから誘導されていてもよく、あるいはそれらは多環式フェノール例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〔ビスフェノールF〕、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、あるいは酸性条件下で得られるホルムアルデヒドとフェノールまたはクレゾールとの縮合生成物、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラックに基づくことができる。
【0034】
III )エピクロロヒドリンと少なくとも2つのアミン水素原子を含むアミンとの反応生成物の脱塩酸化により得られるポリ−(N−グリジル)化合物。これらのアミンは代表的にはn−ブチルアミン、アニリン、トルイジン、m−キシリレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、またはビス(4−メチルアミノフェニル)メタンである。しかし、ポリ(N−グリシジル)化合物はまた、エチレン尿素または1,3−プロピレン尿素のようなシクロアルキレン尿素のN,N'−ジグリシジル誘導体および5,5−ジメチルヒダントインのようなヒダントインのジグリシジル誘導体をも含む。
【0035】
IV)適当なポリ(S−グリシジル)化合物の例は、例えばエタン−1,2−ジオールのようなジチオールもしくはビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテルから誘導されたジ−S−グリシジル誘導体である。
【0036】
V)エポキシド基が非環式または複素環系の一部を形成する、エポキシド化合物の例は、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3−エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル、1,2−ビス(2,3−エポキシシクロペンチルオキシ)エタン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタンジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ジ−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、ジ−(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、エチレンビス(3,4−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレート)、エタンジオールジ−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンジエポキシドまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−1,3−ジオキサンである。
【0037】
しかしながら、また1,2−エポキシド基が異なるヘテロ原子または官能基に結合しているエポキシ樹脂を使用することも可能である。これらの化合物は、例えば、4−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、サリチル酸のグリシジルエーテルグリシジルエステル、N−グリシジル−N'−(2−グリシジルオキシプロピル)−5,5−ジメチルヒダントインまたは2−グリシジルオキシ−1,3−ビス(5,5−ジメチル−1−グリシジルヒダントイン−3−イル)プロパンである。このようなエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤との液体予備反応された付加物もまた適当である。
【0038】
カチオン重合用光開始剤は同様にこの目的のために技術的に公知である全ての化合物である。それらは例えば、弱い求核性のアニオンとのオニウム塩を含む。その例はハロニウム塩、ヨードジル塩またはスルホニウム塩であり、それはEP−A−153904号に記載されており、スルホキソニウム塩は、例えばEP−A−35969、44274、54509および164314号に記載されており、また、ジアゾニウム塩、例えば米国特許第3708296号に記載されており、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。他のカチオン性光開始剤は、メタロセン塩、例えばEP−A−94914および94915号に開示されたようなものである。他の慣用のオニウム塩開始剤および/またはメタロセン塩について研究は"UV-Curing, Science and Technology",(Editor: S.P.Pappas,
Technology Marketing Corp.,642 Westover Road, コネチカット、スタンフォード(Stamford)または"Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints", Vol. 3(edited by P.K.T.Oldring) に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
特に適当なカチオン重合用の光開始剤は次式(1)、(2)および(3)
【化1】

(式中 G1 ,G2 ,G3 ,G4 ,G5 ,G6 およびG7 は、未置換または適した基により置換された炭素原子数6ないし18のアリール基を表し、
Lがホウ素原子、リン原子、ヒ素原子またはアンチモン原子を表し、
Qがハロゲン原子を表すか、またはアニオンLQw-中の基Qの一部分はまたヒドロキシ基を表し、および
wがLの原子価+1に相当する整数を表す。)
で表わされる化合物である。炭素原子数6ないし18のアリール基の例は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基である。適した基として存在する置換基は、アルキル基、好ましくは炭素原子数1ないし6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、イソブチル基、第三−ブチル基および種々のペンチル基またはヘキシル異性体、アルコキシ基、好ましくは炭素原子数1ないし6のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基およびヘキソキシ基、アルキルチオ基、好ましくは炭素原子数1ないし6のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基またはヘキシルチオ基、ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基またはアリールチオ基、例えばフェニルチオ基である。特に有利なハロゲン原子Qの例は、塩素原子および特にはフッ素原子であり、アニオンLQw- の例は特にBF4- 、PF6- 、AsF6- 、SbF6- およびSbF5(OH)- である。LQw- タイプのアニオンはまた、CF3SO3- により有利に置換することもできる。分子中に2またそれ以上のオニウム基を含む化合物、例えばジスルホニウム化合物はもちろん開始剤として適当である。G5 ,G6 およびG7 がフェニル基またはビフェニル基である、式(3)のカチオン性光開始剤化合物またはこれらの化合物の混合物が特に頻繁に使用される。
【0040】
カチオン性光開始剤の他の重要なタイプは式(4)
【化2】

(式中 cが1または2を表し、
dが1,2,3,4または5を表し、
Tが求核性でないアニオン、例えば、BF4- 、PF6- 、AsF6- 、SbF6- 、CF3SO3- 、C25SO3-、n−C37SO3-、n−C49SO3- 、n−C613SO3-
n−C817SO3- 、C65SO3- 、リンタングステート(PO40123-)またはシリコンタングステート(SiO40124-)を表し、
8 がπ−アレーンを表し、および
9 がπ−アレーンのアニオン、特にシクロペンタジエニルアニオンを表す。)で表わされる。ここで適当なπ−アレーンG8 およびπ−アレーンG9 のアニオンの例はEP−A−94915に示される。重要なπ−アレーンG8 は、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メトキシベンゼン、メチルナフタレン、ピレン、ペリレン、スチルベン、ジフェニレンオキサイドおよびジフェニレンスルフィドである。特に好ましいものはクメン、メチルナフタレンまたはスチルベンで示される。アニオンTは特にPF6- ,AsF6- ,SbF6- ,CF3SO3- ,C25SO3- ,n−C37SO3- ,n−C49SO3- ,n−C613SO3- またはn−C817SO3- である。メタロセン塩のようなフェロセン塩は一般に、また酸化剤と共に使用され得る。このような組合せはEP−A−126712号に開示されている。
【0041】
カチオン性光開始剤はもちろん、慣用の有効量、例えばおのおのの場合、混合物の総量に基づいて約0.1ないし20重量%、好ましくは1ないし10重量%で添加できる。光収率(light yield) を増加させるために、開始剤の型に依存して、増感剤を使用することも可能である。これらの例は多環式芳香族炭化水素または芳香族ケト化合物である。好ましい増感剤の特別な例はEP−A−153904号に開示されている。
【0042】
充填材は有機のまたは無機のものであってよい。有機充填材の例は高分子化合物、サーモプラスチックス、アラミド、登録商標KEVLAR、コア−シェル樹脂、架橋ポリスチレン、架橋ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレンまたはポリプロピレンである。無機充填材の例は、ガラスもしくはシリカビーズ、ガラスもしくはシリカバブル、ガラスもしくはシリカ粉末、非晶質シリカ、結晶質シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、雲母、金属性充填材、セラミックスおよび複合材料である。有機および/または無機充填材の混合物が使用できる。好ましい充填材の例は微結晶質シリカ、結晶質シリカ、非晶質シリカ、合成シリカ、ウォラストナイト、アルカリアルミノシリケート、長石、表面処理した長石、アルミナ三水和物、表面処理したアルミナ三水和物、カオリン、変性カオリン、および水和カオリンである。市販品の例は、Unimin Corp. (イリノイ州、エルコ(Elco) )から入手できるイムシル(Imsil)、Malvern Mineralsから入手できるノバサイト(Novasite)およびノバキュプ(Novakup) 、K-T Feldspar(ノースカロライナ州、スプルースパイン(Spruce Pine) )から入手できる表面処理したおよび非処理の長石、およびAlcan Chemicals (オハイオ州、クリーブランド(Cleveland) )から入手できるアルミナ三水和物である。最も好ましい充填材は、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはアルミニウムシリケートまたはアルミニウムオキサイドまたはアルミナ三水和物である。
【0043】
酸性充填材、塩基性充填材および中性充填材の混合物が使用できる。さらに、少なくとも1種の酸性充填材、および/または少なくとも1種の塩基性充填材、および/または少なくとも1種の中性充填材の混合物を組成物混合物中に混合できる。充填材のpH値は充填材の水性スラリー懸濁液を製造することにより決定でき、それは5ないし10重量%の充填材の濃度をベースとして慣用的に商業上示されている。
【0044】
充填材は化学線および/またはフリーラジカル重合にかけた場合に非反応性のまたは反応可能なカップリング剤−化合物で処理された表面を持つことができる。例えば充填材はメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ガンマ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシランにより処理した表面を持つことができる。最も好ましい表面処理はベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ガンマ−グリシドオキシプロピルト
リメトキシシランおよびメチルトリエトキシシランを使用する。表面処理された充填材に関していえば、充填材に対するpH値はいずれかの表面処理操作の前に決定される。
【0045】
充填材添加量は充填材入り樹脂組成物の総重量に関して好ましくは約2ないし約90重量%、より好ましくは約5ないし約50重量%、最も好ましくは約5ないし約40重量%である。
【0046】
粘度安定剤として、充填材入り組成物内への適当な有機塩基または求核試薬の混合は酸を中和しおよび早期重合を防止する。有機粘度安定化材料は組成混合物中の1もしくはそれ以上の充填材量が所望でない粘度増加を引き起こす場合に特に有益である。有機粘度安定化材料はベース樹脂に可溶であり、そして好ましくは窒素含有有機化合物、より好ましくは立体障害性の基を(複数の)窒素原子にまたはその近くに有する窒素含有有機化合物よりなる群から選択される。いずれかの特別な技術的な理論と結合させる意図なく、立体障害性はエポキシモノマーにおける著しい求核性攻撃を防止すると信じられている。しかし、有機粘度安定化材料は未だいずれかの早期に発生した酸を有効に中和するに十分な塩基度をもたなければならない。有機粘度安定化材料は粘度安定剤として機能するために非常に少ないレベルで使用するべきである。より高いレベルにおいては、それはステレオリソグラフィー樹脂を重合させる触媒として働くからである。
【0047】
有機塩基または求核試薬、粘度安定化材料は重合性であっても非重合性であってもよい。このような安定剤の例はウレタンアクリレート、窒素含有エポキシド、ポリイミド、ピリジン、フェナルトロリン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、トリアゾール、ピリダジン、インドール等々、第一、第二および第三アミン、ポルフィン、ヒドラジン、尿素、ニトリル、イソニトリル、シアネートおよびアミドである。好ましい安定剤は立体障害性第三アミン、ラクトン、アミドおよび尿素誘導体である。もっとも好ましくは、ベンジル−N,N−ジアルキルアミンおよびN,N−ジアルキル−N−アリールアミンである。
【0048】
有機塩基または求核試薬の、粘度安定化材料の濃度は安定剤の、塩基度の強さ、化学構造、分子量および立体化学に、ならびに特定の化学構造に、および熱安定性、貯蔵寿命等々のような光酸前駆体(photoacid precursor)の特性に非常に依存する。典型的には、光酸前駆体の貯蔵寿命ならびに熱および加水分解安定性がより低いほど、有機塩基、粘度安定化材料の濃度はより高くなる。そのため濃度は充填材入り組成物の5重量ppmないし20重量%で変化できる。例として粘度安定剤である、ベンジル−N,N'−ジメチルアミン(BDMA)に対して、濃度は好ましくは、充填材入り組成物全体における光酸前駆体UVI−6974,Union Carbide(コネチカット州、ダンブリイ(Danbury))の1重量%につき500重量ppmより少ない。即ち、上記光酸前駆体1重量%を含む充填材入り組成物はBDMAの500ppmより少ない量を必要とする。さらに、上記光酸前駆体2重量%を含む充填材入り組成物はBDMAの1000ppmより少ない量を必要とする。さらに好ましくは、BDMA、即ち粘度安定化材料の濃度は充填材入り組成物全体において光酸前駆体(UVI−6974)1重量%につき約5ないし約400重量ppm(安定剤)の範囲であり、より好ましくは光酸前駆体1重量%につき約5ないし約250重量ppm(安定剤)の範囲である。好ましくは、組成物全体における(BDMAの分子量に近似の分子量を有する)ベンジル−N,N'−ジアルキルアミン粘度安定剤の濃度は充填材入り組成物全体において、約5ないし5000重量ppmの範囲、より好ましくは約30ないし1000重量ppmの範囲である。濃度レベルはベンジル−N,N'−ジアルキルアミン族の異なる員が使用される場合に上記例に示した値から変動できる。それらの分子量は増加するので、所望の結果を得るために必要とされる濃度は典型的に増加する。ベンジル−N,N'−ジ−アルキルアミンは高濃度において触媒(重合促進剤)として広く使用されている。例としてのBDMAは約1重量%または1重量%を越える濃度でエポキシ系(epoxy systems) を架橋するための触媒として広く使用されている。しかしBDMA
は、エポキシ系に対する粘度安定剤(重合阻害剤)としては今までに使用されていない。
【0049】
組成物全体の初期粘度に依存して、ステレオリソグラフィ組成物の安定性および貯蔵寿命を特徴付けするための最も重要な因子は粘度増加の速度、および絶対的な最終値である。以下の表は、65℃における25日間の促進熱老化試験にかけた場合、組成物が許容される粘度安定性を有するかどうかを決定するためのガイドラインを提供する。
【表1】

【0050】
ステレオリソグラフィの使用者は安定性に対する上限および非安定性に対する下限の間の仮の安定範囲内に入る粘度を有する65℃にて促進熱老化にかけられた充填材入り組成物が一般的なもしくは特定のステレオリソグラフィへの適用に適当であるかどうかを決定する。一般的な適用のためには成形品構築温度範囲は20ないし45℃である。しかし、充填材入り組成物を含むベース樹脂の化学構造、物理および化学特性に非常に依存する特定のステレオリソグラフィ適用に対しては実質的により高い成形品構築温度が採用できる。
【0051】
輻射線−硬化性組成物はまた光重合性材料の技術において通常使用される他の構成成分、例えば、特定の成分に適当な不活性溶媒、反応性稀釈剤あるいは安定剤のような慣用の添加剤、例えばUV安定剤、離型剤、湿潤剤、流量調節剤、レベリング剤、沈降防止剤、脱泡剤、界面活性剤、染料または顔料を含むことも可能である。上記添加物はおのおの場合、所望の目的のための有効量で使用され、例えば組成物全体の合計20重量%まで量を構成する。
【0052】
本明細書に記載した安定化方法はステレオリソグラフィーにおける使用に特に適当である。従って、本発明の側面は、カチオン重合性化合物およびカチオン重合用光開始剤からなる輻射線−硬化性組成物を使用するステレオリソグラフィーによる三次元製品の製造方法であって、有機塩基安定化材料を該組成物と接触させるかまたは少なくともある程度粘度安定剤として機能する少なくとも1種の充填材を添加する方法に関する。
【0053】
粘度安定剤は、組成物の重合および硬化が望ましい場合を除いて、即ち液状組成物の露光したまたは画像形成された領域を除いて、それらの配合物の領域における遊離酸の存在に起因する組成物の粘度の増加を遅らせまたは防止する。
【0054】
粘度安定化に対する必要性は硬化性組成物が長期間の間、深いバットに貯蔵されるステレオリソグラフィ法の系(systems) において最も重要である。いずれかの理論と結び付けることを意図することなく、ステレオリソグラフィ法の間ではレーザー光線半径をこえる幾つかのポイントで、レーザービーム露光の度合いは、同時に未だ酸を発生させ得るにもかかわらず、エポキシをゲル化の時点まで重合させるための非常に十分な酸濃度を発生させない。この限られた露光の酸は前記バットおよび初期重合との隅々まで自由に移動でき、それは組成物の粘度増加を導き出し得る。生成され、そしてエポキシの著しいゲル化または硬化を引き起こさない酸は組成物の不安定化という最も大きな問題を創出する。この酸は組成物内を移動し、組成物の隅から隅までにおいて多くのエポキシ反応を開始できる。
【0055】
本発明の第一の具体例においては、輻射線−硬化性組成物はカチオン性硬化性化合物、充填材、カチオン重合のための光開始剤および組成物全体を安定するのに十分な量の有機塩基である粘度安定化材料を含むことである。
【0056】
本発明の第二の具体例においては、輻射線−硬化性組成物がカチオン重合性化合物、少なくとも粘度安定剤として機能する少なくとも1種の充填材、所望により他の酸性または塩基性充填材およびカチオン重合のための光開始剤の混合物からなる。粘度安定充填材(類)と該混合物の残りの充填材との比は改良された粘度安定性を示す組成物全体を生成するように実験的に調整できる。この充填材入り組成物は少なくとも粘度安定剤として機能する充填材(類)の存在のために安定化され、そして有機塩基性安定化材料の添加をしばしば必要としない。ステレオリソグラフィ向けの組成物の安定化のために特に好ましい充填材はアルカリアルミノシリケートであるフェルデスパー(Feldspar),ミンスパー(Minspar) 7である。アルミナ三水和物、SF4もまたこの目的に使用できる。有機塩基である粘度安定化材料は所望ならばさらに任意に混合できる。
【0057】
この場合にステレオリソグラフィーのために特に適当な液状硬化性組成物はカチオン硬化性化合物として特に、液状エポキシ樹脂またはビニルエーテルをベースとする。これらは特に好ましくはいわゆるハイブリッド系(hybrid systems)、即ち、フリーラジカルによって硬化できる化合物の少なくとも1種およびそのために適当なフリーラジカル重合光開始剤ならびにカチオン硬化性成分からなる組成物である。このようなハイブリッド系は例えばその記載が本発明の一部分と見なされ、参照により本明細書に組み込まれるEP−A−0360869号およびEP−A−0605361号に記載される。
【0058】
フリーラジカルにより重合できる化合物は、例えば組成物全体に基づいて0ないし80重量%の量で使用できる。例えば、上記組成物は、フリーラジカルにより硬化できる成分1ないし30重量%およびカチオン硬化性成分70ないし95重量%を含む。フリーラジカルにより重合可能な化合物は多くは9までのアクリレート官能価を有するモノアクリレート、ジアクリレートおよびポリアクリレートもしくは相当するメタクリレートまたは6までのビニル官能価を有するビニル化合物である。
【0059】
適当なモノ(メタ)アクリレートの例は、アクリレート;アリルメタクリレート;メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、n−デシルおよびn−ドデシルアクリレートおよびメタクリレート;2−ヒドロキシエチル、2−および3−ヒドロキシプロピルアクリレートおよびメタクリレート;2−メトキシエチル、2−エトキシエチルおよび2−もしくは3−エトキシプロピルアクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート;2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート;シクロヘキシルメタクリレート;2−フェノキシエチルアクリレート;グリシジルアクリレートおよびイソデシルアクリレートであり;ならびに適当なモノ−N−ビニル化合物の例はn−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムである。このような製品は公知であり、また幾つかは、例えばサートーマー社(SARTOMER Company、ペンシルバニア州、エクソン(Exon))から商業的に入手可能である。
【0060】
適当なさらなるジ(メタ)アクリレートの例は環状脂肪族または芳香族ジオールのジ(メタ)アクリレート、例えば1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化もしくはプロポキシル化ビスフェノールFまたは、エトキシル化もしくはプロポキシル化ビスフェノールSである。このようなジ(メタ)アクリレートは公知であり、そして幾つかは商業的に入手可能である。
【0061】
ジ(メタ)アクリレートはまた式(5)、(6)、(7)または(8)
【化3】

(式中、S1 は水素原子またはメチル基を表し、Y1 は直接結合、炭素原子数1ないし6のアルキレン基、−S−、−O−、−SO−、−SO2 −または−CO−を表し;S10は炭素原子数1ないし8のアルキル基、未置換であるか、または1もしくはそれ以上の、炭素原子数1ないし4のアルキル基、ヒドロキシル基またはハロゲン原子で置換されたフェニル基、或いは式:−CH2 −OS11で表される基(基中、S11は炭素原子数1ないし8のアルキル基またはフェニル基を表す。)およびA1 は式
【化4】

で表わされる基から選択された基を表す。)
【0062】
式(5)および(6)で表されるジ(メタ)アクリレートは公知であり、そして幾つかのものは、例えば登録商標SR 349および登録商標Novacure 3700のもとに市販されており、そしてエトキシル化ビスフェノール、特にエトキシル化ビスフェノールAまたはビスフェノールジグリシジルエーテル、特にビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより製造できる。
【0063】
同様に、式(7)および(8)の化合物は式(7a)
【化5】

で表されるジグリシジルエーテルまたは式(8a)
【化6】

(上記各式中、S10、Y1 およびA1 は上記で定義したと同じ意味を表す。)で表されるジグリシジルエステルと、(メタ)アクリル酸とを反応させることにより製造できる。
【0064】
ジアクリレートはさらにまた、式(9)、(10)、(11)または(12)
【化7】

で表される化合物である。
【0065】
これらの化合物は公知であり、そして幾つかのものは市販されている。式(9)および(10)で表される化合物は式(9a)または(10a)
【化8】

で表される脂環式ジエポキシドをそれぞれ(メタ)アクリル酸と反応させることによる公知の方法で製造できる。式(12)で表される化合物は登録商標Kayarad R−604の名称のもとで市販されている。
【0066】
適当なさらに別のポリ(メタ)アクリレートは2より多くの(メタ)アクリレート官能価をもつ単量体または低重合体脂肪族、環状脂肪族または芳香族アクリレートまたはメタアクリレートであり、特にトリ−、テトラ−またはペンタ−官能性アクリレートおよびメタクリレートである。
【0067】
適当な脂肪族多官能性(メタ−)アクリレートの例は、ヘキサン−2,4,6−トリオール、グリセロールまたは1,1,1−トリメチロールプロパンのトリアクリレートおよびトリメタクリレート、エトキシル化もしくはプロポキシル化グリセロールまたは1,1,1−トリメチロールプロパン、およびトリエポキシド化合物、例えば前記したトリオールのトリグリシジリエーテルと(メタ−)アクリル酸との反応により得られるヒドロキシル含有トリ(メタ)アクリレートである。また例えば、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリ−アクリレートもしくはメタアクリレートまたはジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ−アクリレートもしくは−メタアクリレートを使用することも可能である。
【0068】
幾つかの好ましい組成物では、フリーラジカルにより重合可能な他の化合物は6官能性または多官能性ウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレートでもあってよい。これらのウレタン(メタ)アクリレートは当業者に公知であり、および例えばヒドロキシ基を末端とするポリウレタンとアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させることによる、またはイソシアネート基を末端とするプレポリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させることによる公知の方法によって製造できる。
【0069】
適当なトリ(メタ)アクリレートの例は、三価フェノールのトリグリシジルエーテル、および3つのヒドロキシ基を含むフェノールまたはクレゾールノボラックと(メタ)−アクリル酸との反応生成物である。
【0070】
幾つかの好ましい組成物は組成物に可溶な1ないし9のアクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートの少なくとも1つを含む;それらは特に好ましくは2ないし9のアクリレート官能価を有する芳香族、脂肪族または脂環式(メタ)アクリレートの液体混合物を含む。
【0071】
フリーラジカル重合用の他の適当な光開始剤は好適な照射においてフリーラジカルを形成する全ての化合物のタイプである。代表的な公知の光開始剤は、ベンゾイン類、例えば
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルのようなベンゾインエーテル、およびベンゾインアセテート;アセトフェノン類、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノンおよび1,1−ジクロロアセトフェノン;ベンジル、ベンジルケタール類例えばベンジルジメチルケタールおよびベンジルジエチルケタール;アントラキノン類、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−第三ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノン;さらにまたトリフェニルホスフィン;ベンゾイルホスフィンオキシド例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド〔ルツィリン(Luzirin )TPO〕;ベンゾフェノン類例えばベンゾフェノンおよび4,4′−ビス(N,N′−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;チオキサントン類およびキサントン類;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体または1−フェニル−1,2−プロパンジオン 2−O−ベンゾイルオキシム;1−アミノフェニルケトン、または1−ヒドロキシフェニルケトン例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトンおよび4−イソプロピルフェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトンであり、これらの全ては公知である。
【0072】
通常、光源として好ましくは325nmの波長で操作するHeCdレーザーと組み合わせて使用される特に適当な光開始剤は、2,2−ジアルコキシベンゾフェノンのようなアセトフェノンおよび1−ヒドロキシフェニルケトン、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンもしくは(2−ヒドロキシイソプロピル)フェニルケトン(=2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン)であり、特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである。
【0073】
好ましくは351nmの波長で操作するアルゴンイオンレーザーまたは好ましくは355nmの波長で操作するソリッド−ステートレーザーが使用される際に通常使用される、フリーラジカル光開始剤の他の類は、ベンジルケタール例えば、ベンジルジメチルケタールが使用される。光開始剤は特にα−ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタールまたは2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが使用される。
【0074】
他の適当なフリーラジカル光開始剤の類はイオン染料−カウンターイオン化合物(ionic
dye counterion compound) からなり、該化合物は化学線を吸収し、そして(メタ)アクリレートまたはビニル化合物のような物質の重合を開始させるフリーラジカルを生成することができる。イオン染料−カウンターイオン化合物を含む新規な混合物は400ないし700nmの適した波長範囲内の可視光線を使用してこのよう可変的に硬化することができる。イオン染料−カウンターイオン化合物およびその作用機構は公知であり、例えばEP−A−0223587および米国特許第4751102;4772530および4772541号に開示されている。言及し得る適したイオン染料−カウンターイオン化合物の例はアニオン染料−ヨードニウムイオン錯体、アニオン染料−ピリリウムイオン錯体および特に次式:
【化9】

(式中 X+ はカチオン染料およびR'、R"、R"'およびR""は各々独立してアルキル基、アリール基、アルカリル基、アリル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、
または脂環式または飽和もしくは不飽和複素環式基を表す。)で表されるカチオン染料−ボレートアニオン化合物である。
【0075】
各々の選択された光源のために適した光開始剤を選択し、そして必要に応じて増感されなければならないということが当業者に知られている。重合される組成物への輻射線の浸透深度(即ち、1/eのファクタにより輻射線の強度が減衰する距離)および作用曲線(working curve)は、前記光開始剤の吸収係数および濃度に逆比例するということが認識されている。ステレオリソグラフィーにおいては、好ましいものは、設定した硬化深度において最適の強さのプレフォーム(即ち生の成形品)が形成されるように、ある種のレーザーエネルギーに対して最も多くのフリーラジカルもしくはカチオン性粒子を発生させる光開始剤に示される。カチオンおよびフリーラジカル光開始剤の両方はステレオリソグラフィー混合物に有効量で、特に各々の場合混合物の全含有量に基づき約0.1ないし約10重量%で添加され、特にレーザーが輻射線硬化のために使用される場合、硬化深度が約0.1ないし2.5mmになるように光開始剤のタイプおよび濃度によって混合物の吸収能が調整されることが必要である。好ましい組成物中の光開始剤の総量は好ましくは0.5ないし6.5重量%である。
【0076】
もちろん、この技術の通常の添加剤を、本発明のためのステレオリソグラフィ槽内に存在させることも可能である。これらは、例えば、上記添加剤または他の架橋剤、例えばジオールまたはポリオールである。
【0077】
好ましい実例では、組成物全体の粘度は成形品構築温度(大よそ20−45℃)において、好ましくは10,000cspより下、より好ましくは約200ないし5,000cspである。好ましい成形品構築温度は20−45℃ではあるが、温度は好ましい範囲外にも拡張できる。
【0078】
これまでの検討とこれ以降の実施例では、主に輻射線硬化性組成物を使用する三次元製品のステレオリソグラフィ形成に向いているが、本発明に関連してステレオリソグラフィによる物体形成の他の形態が利用できることが、当業者によって理解されるであろう。例えば、前記組成物は光硬化性と対照的なものとして熱硬化性であり得る。このような組成物は光開始剤と対照的なものとして当業者に知られた熱開始剤を含むであろう。
【0079】
実施例1:
充填材入り組成物を反応器で製造する。成分を以下の手法で添加する。ベース液状樹脂LLS71040(Ciba Specialty Chemicals Corporation, ニューヨーク, タリータウン(tarrytown)から入手でき、それはまたCiba Specialty Chemicals Corporationから入手できるLLS71050に非常に類似する)中に、以下の成分を添加する:
TMN−6(湿潤剤、Union Carbide,コネチカット, ダンブリー(Dambury) 0.25重量%
SAG−47(脱泡剤、Osi Chemicals, Corp., ニュージャージー、リッジフィールドパーク(Ridgefield Park)0.08重量%、および
表1に記載した量の、BDMA(有機粘度安定剤)。
得られた溶液を室温で30分間攪拌する。次に沈降防止剤、エーロシル(Aerosil)R972〔沈降防止剤〕を表1に記載した量で添加する。40重量%で充填材〔イムシル(Imsil)A8〕を添加するがその前に混合物を再度室温で20分間混合する。この充填材入り組成物を室温で30分間攪拌し、続いて65℃で1.5時間加熱する。充填材入り系(filled systems)をさらに一夜中速で剪断混合(shear mixing) 下攪拌する。実験の結果を表1に示す。
下記表1に示した結果は420ないし500ppmで使用した(試料116−43Dおよび43E)、ベンジル−N,N'−ジメチルアミン,BDMAのような有機塩基である
、粘度安定化材料が充填材入り組成物を安定化することを証明する。しかし、最適よりも低いレベルでのBDMAの使用では、ゲル化し易い不安定な充填材入り組成物を生成する(試料116−43AAから116−43C)
【0080】
実施例2:
充填材入り組成物を反応器で製造する。成分を以下の手法で添加する。ベース液状樹脂SL5410(Ciba Specialty Chemicals Corporation, ニューヨーク, タリータウンから入手できる)中に、以下の成分を添加する:
TMN−6(湿潤剤) 0.35重量%
SAG−47(脱泡剤)0.10重量%、および
表2に記載した量の、BDMA(有機安定剤)
得られた溶液を室温で30分間攪拌する。次いでエーロシル(Aerosil)R972〔沈降防止剤〕を2.5重量%で添加する。充填材〔イムシル(Imsil)A8〕を添加するがその前に混合物を再度室温で20分間混合する。充填材入り組成物を室温で30分間攪拌し、続いて65℃で1.5時間加熱する。充填材入り系をさらに一夜中速で剪断混合下で攪拌する。実験の結果を表2に示す。
下記表2に示した結果は450ないし1200ppmで使用した(試料116−51Fないし51J)、粘度安定化材料BDMAが充填材入り組成物を安定化することをさらに明らかにする。50−300ppmのような(試料116−51Aないし51E)低濃度では、組成物の粘度が増加し、そして充填材入り組成物は使用不可能である。加えてより高濃度では、BDMAが触媒として作用するので、粘度は許容できない程高い速度で増加する(不安定な系)。本実施例は未だ安定な樹脂を生成するが、この粘度不安定性の増加は116−51Hないし116−51Jにより明白である。
【0081】
実施例3:
充填材入り組成物を反応器で製造する。成分を以下の手法で添加する。ベース液状樹脂SLS5170(Ciba Specialty Chemicals Corporation, ニューヨーク, タリータウンから入手できる)中に、以下の成分を添加する:
TMN−6(湿潤剤) 0.10重量%
SAG−47(脱泡剤)0.10重量%、および
表3に記載した量の、BDMA(有機塩基安定剤)
得られた溶液を室温で30分間攪拌する。次いで沈降防止剤エーロシル(Aerosil)R972〔沈降防止剤〕を2重量%で添加する。充填材〔イムシル(Imsil)A8およびフェルドスパー−ミンスパー(Feldspar-Minsper) 10を表3に記載する量で添加する〕を添加するがその前に混合物を再度室温で20分間混合する。充填材入り組成物を室温で30分間攪拌し、続いて65℃で1.5時間加熱する。充填材入り系をさらに一夜中速で剪断混合下に攪拌する。実験の結果を表3に示す。
表3を参照すると、BDMA0.03%(300ppm)を含む試料116−13Aは完全に安定化されている。BDMA不在下(試料116−9A)では、組成物は7日後使用不可能になり、そして14日後にゲル化する。BDMA1000−5000ppm(試料116−13Bおよび13C)を添加することによって、充填材入り組成物は不安定化しそしてゲルになる。不安定性は高濃度のBDMAにおいてはBDMAが触媒として作用し、これによりゲル反応を開始させるという事実のためであると信じられている。
表3はさらに、9より高いpH値をもつ少なくとも1種の充填材(フェルドスパー、ミンスパー(Minspar)10、試料116−13D及び13E参照)を含む充填材入り組成物を使用することによって、充填材入り組成物が有機塩基安定化材料の不在下においてさえも安定化されることを示す。ミンスパー10の添加なしでは、充填材入り組成物は不安定であり、そして65℃において7日後使用不可能になり、65℃において14日後ゲルになる(試料116−9A)。安定化された試料(116−13Dおよび13−E)は39日間65℃で加熱された後でも低い、使用可能な粘度を示す。
【0082】
実施例4:
充填材入り組成物を反応器で製造する。成分を以下の手法で添加する。ベース液状樹脂SLS5170(Ciba Specialty Chemicals Corporation, ニューヨーク, タリータウンから入手できる)中に、以下の成分を添加する:
TMN−6(湿潤剤) 0.1重量%およびSAG−47(脱泡剤)0.10重量%。得られた溶液を室温で30分間攪拌する。次いでエーロシル(Aerosil)R972〔沈降防止剤〕を2重量%で添加する。充填材混合物イムシル(Imsil)A8、17重量%及びアルミナ三水和物10重量%の充填材混合物を添加するがその前に混合物を再度室温で20分間混合する。充填材入り組成物を室温で30分間攪拌し、続いて65℃で1.5時間加熱する。充填材入り系を一夜中速で剪断混合下にさらに攪拌する。22℃で測定された粘度は2540cpsであった。充填材入り組成物を65℃で18日間老化させた。老化の間粘度は35,000cpsに増加した。粘度の増加はステレオリソグラフィ用途のための安定な組成物としては非常に高い。粘度の問題を克服するため、BDMAを新たに作成した組成物に添加する(150ppm)。新たな充填材入り組成物を65℃において18日間老化させた;その粘度増加は最小限だった。
【0083】
表1
【表2】

【0084】
表2
【表3】

【0085】
表3
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の輻射線重合性化合物、少なくとも1種の充填材、及び少なくとも1種の重合のための光開始剤よりなる混合物からなる輻射線−硬化性組成物を使用するステレオリソグラフィによる三次元製品の製造方法であって、有機塩基の形の有機粘度安定化材料は該組成物全体の粘度増加を遅延させまたは防止するために該組成物の中に配合され、安定化材料が立体障害性第三ベンジル−N,N'−アミンもしくはアリール−N,N'−アミンを組成物の重量に基づいて5重量ppm乃至5000重量ppmの範囲にある、方法。
【請求項2】
前記輻射線重合性化合物がカチオン重合性化合物である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記輻射線重合性化合物がフリーラジカル重合性化合物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記輻射線重合性化合物の少なくとも1種が少なくとも1,2−エポキシド、ビニルエーテル、ラクトン、アセタール、環状スルフィド、環状エーテルまたはシロキサン基を含む請求項2記載の方法。
【請求項5】
有機安定化材料がベンジル−N,N'−ジメチルアミン(BDMA)である請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記輻射線−硬化性組成物が少なくとも1種のフリーラジカルにより硬化可能な化合物、または該フリーラジカル重合性化合物の2またはそれ以上の混合物、およびフリーラジカル重合のための光開始剤を含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のカチオン重合性化合物および/または少なくとも1種のラジカル重合性化合物、少なくとも1種の充填材および、少なくとも1種のカチオンおよび/またはラジカル重合のための光開始剤よりなる混合物ならびに有機塩基安定化材料からなる輻射線−硬化性組成物を化学線に曝露することからなり、前記安定化材料が立体障害性第三ベンジル−N,N'−アミンもしくはアリール−N,N'−アミンを組成物の重量に基づいて5重量ppm乃至5000重量ppmの範囲にある、請求項1で定義された方法により製造された硬化した三次元製品。
【請求項8】
ステレオリソグラフィのための安定化された充填材入り組成物の製造方法であって、少なくとも1種のカチオン重合性化合物および/または少なくとも1種のラジカル重合性化合物、少なくとも1種の充填材、少なくとも1種のカチオンおよび/またはラジカル重合のための光開始剤ならびに有機塩基安定化材料よりなる混合物を反応器内で混合することからなり、前記安定化材料が立体障害性第三ベンジル−N,N'−アミンもしくはアリール−N,N'−アミンを組成物の重量に基づいて5重量ppm乃至5000重量ppmの範囲にある、方法。
【請求項9】
少なくとも1種の輻射線重合性化合物、少なくとも1種の充填材、少なくとも1種の重合のための光開始剤、および有機塩基の形の有機粘度安定化材料よりなる混合物からなる安定化された輻射線−硬化性ステレオリソグラフィ組成物であって、前記安定化材料は、立体障害性第三ベンジル−N,N'−アミンもしくはアリール−N,N'−アミンを組成物の重量に基づいて5重量ppm乃至5000重量ppmの範囲にある、組成物。



【公開番号】特開2010−214960(P2010−214960A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93166(P2010−93166)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【分割の表示】特願2000−504488(P2000−504488)の分割
【原出願日】平成10年7月10日(1998.7.10)
【出願人】(300052420)ハンツマン アドバンスト マテリアルズ (スイッツァランド) ゲーエムベーハー (26)
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN ADVANCED MATERIALS (SWITZERLAND) GMBH
【Fターム(参考)】