説明

農作業機の反転リンク装置

【課題】農作業機の反転リンク装置において、案内軸が案内孔部の幅方向両側に同時に接することがあっても案内軸を滑らかに移動させることが可能な反転リンク装置の提供。
【解決手段】畦塗り機の反転リンク装置70において、ガイド溝73aに沿って移動することで作業部の前後反転を行うガイドピン72はガイド溝73aを貫通する軸心棒72aと、ガイド溝73aに挿通される回動部72cと、ガイド溝73aからのガイドピン72の脱落を防止する拡径部72b1を備えるフランジ部72bとを有し、回動部72cとフランジ部72bとを互いに軸心棒72a回りに相対回動自在とする。拡径部72b1と回動部72cとがガイド溝73aに同時に接してもフランジ部72bと回動部72cとは互いに異なる方向に回動するので、ガイドピン72はガイド溝73aに沿って滑らかに移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクタの後部に装着され、トラクタからの動力を受けて駆動する作業部を前進作業位置から後進作業位置もしくはその逆方向へ移行させる際に作業部を反転動作させる農作業機の反転リンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの後部に装着され、トラクタからの動力を受けて駆動する作業部を前進作業位置(右オフセット作業位置)から後進作位置(左オフセット作業位置)もしくはその逆方向に移行させる際に作業部を前後反転させる反転リンク装置を有した農作業機として、リバース畦塗り機、リバース溝掘機等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の農作業機の反転リンク装置にあっては、トラクタの後部に装着される固定機枠3に、トラクタからの動力を受けて駆動する土作業手段(作業部)10を有する可動機枠5が連結アーム4によって垂直軸回りに回動自在に接続される。また、連結アーム4と可動機枠5とに第1リンク47及び第2リンク50が架設され、これら第1リンク47と第2リンク50との節に突設された案内軸49が固定機枠3に形成された案内孔部52に挿通される。
【0004】
そして、連結アーム4を回動させて、土作業手段(作業部)10を前進作業位置から後進作業位置もしくはその逆方向に移行させる際に、案内孔部52に沿って移動する案内軸49が第1リンク47及び第2リンク50の動作を規制することで土作業手段(作業部)10を前後反転させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−254617号公報(段落0027〜0029、図1〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の農作業機の反転リンク装置にあっては、案内軸49は、図8(a)に示すように上下方向に延びた軸心棒49a回りにフランジ付きの回動部49bが回動自在に配されている場合がある。案内孔部52の溝幅は回動部49bの外径より少し大きく、摺動がスムースに行えるようになっている。この場合、案内孔部52に挿通される回動部49bの上部には、半径方向に張り出された拡径部49b1が設けられており、この拡径部49b1により案内孔部52から案内軸49が脱落するのが防止される。
【0007】
ところで、このような案内軸49にあっては、図8(a)に示すように案内孔部52の溝幅方向両側が水平であるならば、回動部49bが案内孔部52の溝幅方向片側に接しながら回動することで案内軸49に沿って滑らかに移動する。
しかしながら、例えば長年の使用により機体フレームにガタが生じ、図8(b)に示すように案内孔部52の溝幅方向両側が上下方向にずれたり、図8(c)に示すように案内孔部52の溝幅方向両側が斜めに傾くと、案内孔部52の溝幅方向一方側に拡径部49b1、他方側に回動部49bがそれぞれ接することがある。案内軸49が偏荷重を受けて案内孔部52に対して斜めに傾いた場合も同様である。すると、拡径部49b1と回動部49bとに互いに異なる向きに回動させる力が加わった案内軸49は滑らかに移動し難くなり、土作業手段(作業部)10の前後反転がスムーズに行われない虞がある。
【0008】
本発明は、上記背景により、案内軸が案内孔部の幅方向両側に同時に接することがあっても案内軸を滑らかに移動させることが可能な農作業機の反転リンク装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明の農作業機の反転リンク装置は、トラクタの後部に垂直軸回りに回動自在に装着された伝動フレームと前記伝動フレームの先端側に支持された作業部との間に架設された複数のリンク部材と、前記複数のリンク部材の継ぎ手となる節に突設された案内軸と、前記案内軸が摺動する案内孔部とを有し、前記伝動フレームが、前記作業部を前進作業位置から後進作業位置もしくはその逆方向に移行させている際に前記作業部を前後反転させる農作業機の反転リンク装置において、
前記案内軸は、前記案内孔部に挿通される回動部と、前記案内孔部からの前記案内軸の脱落を防止するフランジ部とを有し、前記回動部と前記フランジ部とは互いに垂直軸回りに相対回動自在とされていることを構成要件とする。
【0010】
農作業機は、前進作業で残った部分は作業部を前後反転させて後進作業で行うリバース式農作業機であれば作業部の形態は一切問われない。リバース式農作業機は具体的にはリバース畦塗り機、リバース溝堀機等がある。
【0011】
作業部は前進作業位置では前進作業姿勢をとり、後進作業位置では後進作業姿勢をとる。作業部が前進作業位置から後進作業位置もしくはその逆方向に移行するとは、伝動フレームが垂直軸回りに回動して作業部を前進作業位置から後進作業位置に至るまで、もしくその逆方向に移動させることである。伝動フレームの回動は、シリンダ(油圧式、電動式、電動油圧式)によって行われる場合と、手動によって行われる場合とがある。
【0012】
前進作業位置とは、走行機体の前進走行により作業可能な位置で、本実施例では作業部が前進方向右側にオフセットされた作業位置のことであり、後進作業位置とは、走行機体の後進走行により作業可能な位置で、本実施例では作業部が後進方向右側にオフセットされた作業位置のことである。オフセット量は、作業形態に応じて任意に設定される。例えば前進3段階、後進1段階にオフセットをとることもできる。
【0013】
反転リンク装置は、トラクタの後部に垂直軸回りに回動自在に装着された伝動フレームとその伝動フレームの先端側に支持された作業部との間に架設された複数のリンク部材と、複数のリンク部材の継ぎ手となる節に突設された案内軸(ガイドピン)と、案内軸(ガイドピン)が摺動する案内孔部(ガイド溝)とを有し、伝動フレームが、作業部を前進作業位置から後進作業位置もしくはその逆方向に移行させている際に作業部を前後反転させる。なお、案内軸(ガイドピン)が設けられる節は、任意である。また、案内孔部(ガイド溝)が設けられる位置も、任意である。
【0014】
前記したように案内孔部の水平な溝幅方向両側に段差(上下変化)が生じたり、傾いた際に、フランジ付きの案内軸が案内孔部に沿って滑らかに移動するには、案内孔部に挿通される回動部と、案内孔部からの案内軸の脱落を防止するフランジ部とが互いに垂直軸回りに相対回動自在とすることで可能となる。そこで、案内軸は、案内孔部に挿通される回動部と、案内孔部からの案内軸の脱落を防止するフランジ部とを有し、回動部とフランジ部とは互いに垂直軸回りに相対回動自在とされていることで(請求項1)、回動部とフランジ部とが案内孔部に同時に接してもフランジ部と回動部とは互いに異なる方向に回動する。従って、案内軸は案内孔部に沿って滑らかに移動することとなる。その結果、案内軸が案内孔部の幅方向両側に同時に接することがあっても案内軸を滑らかに移動させることが可能な農作業機の反転リンク装置が実現する。
【0015】
具体的には、案内軸は案内孔部を貫通する軸心部(軸心棒)を有し、その軸心部回りにフランジ部と回動部とが互いに相対回動自在に配されることで(請求項2)、回動部とフランジ部とが案内孔部に同時に接してもそれぞれが互いに異なる方向に回動することができる。
【0016】
この案内軸は、リンク部材の節や、回動部、フランジ部及び軸心部の各隙間(摺動面)にグリスを給油するグリスニップルを有している。グリスニップルが配置される位置は、上端部、下端部、外周面等、任意である。フランジ部及び回動部をスムーズに回動させる状態に維持するには回動部、フランジ部及び軸心部の各隙間(摺動面)に適量のグリス(潤滑油)を保持させておく必要がある。すなわち、各部材間同士(フランジ部、回動部及び軸心部)の摺動面積を広くすればするほど、そこに保持されるグリス(潤滑油)量が増えることになる。そこで、フランジ部は軸心部の長さ方向に向かって延設され、内周面が軸心部の外周面に接し、外周面が回動部の内周面に接する延設部を有していることで(請求項3)、各部材間同士(回動部、フランジ部及び軸心部)の摺動面積を広くすることができて、回動部、フランジ部及び軸心部との各隙間(摺動面)に適量のグリス(潤滑油)を保持させておくことが可能となる。
【0017】
さらに、回動部の下部は軸心部の半径方向に向かって延設され、その先端部が軸心部の外周面に接する延設部を有することで(請求項4)、回動部、フランジ部及び軸心部との各隙間(摺動面)に保持されたグリス(潤滑油)が下方へ流出するのを阻止することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
リバース式の農作業機において、案内孔部に沿って移動することで作業部の前後反転を行う案内軸は 案内孔部に挿通される回動部と、案内孔部からの案内軸の脱落を防止するフランジ部とが互いに垂直軸回りに相対回動自在とされている。これにより、回動部とフランジ部とが案内孔部に同時に接しても回動部とフランジ部とは互いに異なる方向に回動するので、案内軸は案内孔部に沿って滑らかに移動することができる。
その結果、案内軸が案内孔部の幅方向両側に同時に接することがあっても案内軸を滑らかに移動させることが可能な農作業機の反転リンク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図6中のA−A矢視断面図であり、リンク部材の節に突設された案内軸が案内孔部を貫通している様子が示されている。
【図2】トラクタの後部に装着された農作業機の側面図である。
【図3】作業部が前進作業位置と後進作業位置との間の格納位置に移動した状態の農作業機に、一対のスタンドが装着された様子を示した平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】(a)、(b)は、図4の斜視図である。
【図6】作業部が移動、格納位置に移動し、チェーンケースが取り外された状態の農作業機の幅方向片側にスタンドが装着された様子を示した平面図である。
【図7】リンク部材の節に突設された案内軸が案内孔部奥に位置している様子を示した平面図である。
【図8】従来の農作業機における案内孔部に案内軸が挿通された状態を示す断面図であって、(a)は案内孔部の溝幅方向両側が水平である場合、(b)は案内孔部の溝幅方向両側が上下にずれている場合、(c)は案内孔部の溝幅方向両側が斜めに傾いている場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
【0021】
図面では、伝動フレームに支持された作業部が畦塗り作業部であり、農作業機が畦塗り機である場合を示しているが、農作業機(作業部)の形態は一切問われず、オフセット作業が可能な農作業機全般を含む。
【0022】
図1はトラクタ100(図2参照)の後部に垂直軸回りに回動自在に装着された伝動フレーム51と伝動フレーム51の先端側に支持された作業部50(図2参照)との間に架設された複数のリンク部材71a〜71d(図7参照)と、リンク部材71bとリンク部材71cの継ぎ手となる節に突設されたガイドピン(案内軸)72と、ガイドピン72が摺動するガイド溝(案内孔部)73aとを有し、伝動フレーム51が、作業部50を前進作業位置から後進作業位置もしくはその逆方向に移行させている際に作業部50を前後反転させる畦塗り機(以下、作業機)10の反転リンク装置70において、
ガイドピン72は、ガイド溝73aに挿通される回動部72cと、ガイド溝73aからのガイドピン72の脱落を防止する拡径部72b1を備えるフランジ部72bとを有し、回動部72cとフランジ部72bとは互いに垂直軸回りに相対回動自在とされている様子を示す。
【0023】
作業機10の本体10Aは図2に示すようにトラクタ100後部のトップリンク101とロアリンク102からなる3点ヒッチ機構に連結フレーム(カプラ)103を介して連結されるトップマスト11と、ロアリンク連結部12を備え、この3点ヒッチ機構によりトラクタ100の後部に昇降可能に装着される。トップマスト11の下方には、トラクタ100のPTO出力軸(図示せず)にユニバーサルジョイント、伝動シャフト等を有するジョイント軸(図示せず)を介して連結されるギヤボックス13が配置され、ギヤボックス13から本体の幅方向に前フレーム14が架設される。
【0024】
図2〜図6に示されるように、前フレーム14の幅方向両端に前向きに突設されたブラケット15にロアリンク連結部12が接合され、前フレーム14の幅方向中央部にトップマスト11が接合されることによりトップマスト11及びロアリンク連結部12は前フレーム14に支持される。また、図3、図5(a)、(b)に示すように前フレーム14の幅方向両端に横向きに突設されたブラケット16、17にスタンド装着部18、19が接合されることにより作業機10の幅方向両側にスタンド20、21が装着される。
【0025】
PTO出力軸からの動力はギヤボックス13のPIC入力軸(図示せず)に伝達され、PIC入力軸でうけた動力は前フレーム14内部の直交軸ギヤ(図示せず)により上向きに90度曲げられて伝動フレーム51の回動中心軸としての回動軸(動力伝達軸)53に伝達される(図5参照)。
【0026】
図6に示すように伝動フレーム51の前部は前フレーム14の長さ方向中央部に垂直軸回りに回動自在に支持される。伝動フレーム51は、その上部にPIC入力軸からの動力を作業部50側に伝達するチェーン及び、前記チェーンが巻装される一対のスプロケット(いずれも図示せず)を用いた動力伝達機構を格納するチェーンケース52(図3参照)を有し、回動軸(動力伝達軸)53から作業部50(畦塗り作業部)側へ張り出すように架設され、先端部分(移動側端部)に作業部50(畦塗り作業部)が接続される。
【0027】
具体的には、図6に示すように前フレーム14の長手方向中央からはこれを貫通する回動軸(動力伝達軸)53が上下方向に突出し、その上部に駆動側のスプロケットが接続され、下部に直交軸ギヤを介してPIC入力軸が接続される。また、伝動フレーム51の先端部(移動端部)からはこれを貫通する回動軸(動力伝達軸)54(作業部側)が上下方向に突出し、その上端部に従動側のスプロケットが連結され、下端部に直交軸ギヤ(図示せず)を介して作業部50が連結される。
【0028】
作業部50側の回動軸(動力伝達軸)54は、図2、図4、図5(a)、(b)に示すように、互いに相対回転可能な上側軸部550、中央軸部551、下側軸部552からなる回動軸部55によって包囲される。上側軸部550は伝動フレーム51の先端部に接続され、下側軸部552は、前段に記した直交軸ギヤを収納し、かつ作業部50を支持するデフケース56に接続される。
【0029】
図5(a)、(b)、図7に示すように中央軸部551と下側軸部552とはリンク部材71a〜71dを介して連接される。すなわち、中央軸部551に一端部が接続されたリンク部材71aの他端部はリンク部材71bの一端部に垂直軸回りに回動自在に接続される。リンク部材71bの他端部はリンク部材71cの一端部に垂直軸回りに回動自在に接続される。このリンク部材71cの一端部は図7に示すように上下に離間した二又部71c1を有しており、その二又部71c1の対向面間にリンク部材71bの他端部が挿入された状態でガイドピン72により回動自在に接続される。すなわち、図1、図2に示すように、リンク部材71bとリンク部材71cとの継ぎ手部分となる節にはガイドピン72が上向きに突設される。
【0030】
ガイドピン72は、図7に示すように伝動フレーム51の下面に設けられたガイド部材73のガイド溝73aに沿って移動自在、かつガイド溝73aの開口部73bから離脱自在とされる。ガイドピン72が開口部73bから抜出されている場合は作業部50は前進作業位置とされ、ガイド溝73a奥に位置している場合は作業部は後進作業位置とされる。
すなわち、ガイドピン72が開口部73bからガイド溝73a奥側に向かって移動している場合は作業部50は前進作業位置から後進作業位置に移行している状態にある。これに対し、ガイドピン72がガイド溝73a奥側から開口部73bに向かって移動している場合は作業部50は後進作業位置から前進作業位置に移行している状態にある。なお、このガイドピン72についての説明は後述する。
【0031】
また、リンク部材71cの他端部はリンク部材71dの一端部に垂直軸回りに回動自在に接続され、さらにこのリンク部材71dの一端部は下側軸部552に作業部支持フレーム58を介して接続される。この作業部支持フレーム58は、下側軸部552から後述する前処理体500に向かって延設されており、その先端側の下方に前処理体500が支持される(図6参照)。
【0032】
図2〜図5(a)、図6に示すように伝動フレーム51の側方に、伝動フレーム51を垂直軸(回動軸53)回りに回動させる(電動油圧式)シリンダ57が配される。シリンダ57のロッド先端部は取付ブラケット21を介して前フレーム14に接続され、シリンダ側取付部は取付ブラケット22を介して伝動フレーム51に接続されており、シリンダ57の伸張動作により伝動フレーム51は本体の右側(前進作業位置)に向けて回動し、短縮動作により本体の左側(後進作業位置)に向けて回動する。なお、シリンダ57は、トラクタ100に乗ったまま手元で伸縮が行えるリモコン(図示せず)に接続される。
【0033】
さらに、前フレーム13と中間軸部551との間には平行リンク部材59が架設されている。平行リンク部材59の移動端部側(作業部50側)は、リンク部材71aの下面側に接続されたブラケット60に垂直軸回りに回動自在に接続されることで、伝動フレーム51の回動動作に応じて中間軸部551を回動させる。
【0034】
図2〜図6に示すように作業部50(畦塗り作業部)は、圃場の周辺に沿って形成された旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理部500と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部501とを有する。前処理部500は、回転自在に支持された耕耘ロータ(図示せず)を有し、耕耘ロータは、デフケース56に駆動ケース61(図2、図4参照)を介して連結される。整畦部501は、回転可能に支持された多面体ドラム502を備え、多面体ドラム502はデフケース56に駆動ケース(図示せず)を介して連結される。耕耘ロータと多面体ドラム502には、伝動フレーム51に支持されたチェーンケース52内の動力伝達機構及びデフケース56を介して動力が伝達される。
【0035】
これにより、シリンダ57の伸縮動作に応じて伝動フレーム51が回動し、作業部50を前進作業位置と後進作業位置との間で移動させると共に、作業部50を移動させている間に、図7に示すようにガイドピン72が伝動フレーム51下面に設けられたガイド部材73のガイド溝73aに沿って移動することで作業部50が前後反転する。
【0036】
シリンダ57のロッド先端部の下方に位置する前フレーム14には、伝動フレーム51の下面から下方に向かって突設された係合ピン(図示せず)に離脱可能に係合する回動アーム部(図示せず)が回動自在に設けられ、作業部50が後進作業位置にあるときの伝動フレーム51の回動を拘束し、後進作業位置から前進作業位置、もしくは移動、格納時に切り替えるときに拘束を解除する拘束・解除装置(図示せず、具体的には電動アクチュエータ)が配置される。なお、作業部50が前進作業位置にあるときの伝動フレーム51の回動は、シリンダ57により拘束される。
【0037】
ここでガイドピン(案内軸)72についての説明を図1を用いて行う。
ガイドピン72は、図1に示すようにリンク部材71b及びリンク部材71cの継ぎ手部分の下方からガイド溝73aの上方に至るまでガイド溝73aを貫通する軸心棒(軸心部)72aを有している。この軸心棒72a回りにフランジ部72bと回動部72cとが互いに相対回動自在に配されている。
【0038】
また、このガイドピン72(軸心棒72a)の下端部には、リンク部材71b及びリンク部材71cの継ぎ手部分や、軸心部72a、フランジ部72b及び回動部72cの各隙間(摺動面)にグリスを給油するグリスニップル72dが設けられている。
【0039】
回動部72cはその上部から下部に至るまでガイド溝73aに挿通される径状(外径寸法)を有している。この回動部72cの内周面と軸心棒72aの外周面との間には、後述するフランジ部72bの延設部72b2が、回動部72cの上方から下方に向かって挿入可能とされる隙間が形成されている。また、この回動部72cの内周面の下部には、軸心棒72aの半径方向に向かって延設され、その先端部が軸心棒72aの外周面に接する延設部72c1が設けられている。これにより、軸心部72a、フランジ部72b及び回動部72cの各隙間(摺動面)に給油されたグリスを保持する油溜まりが形成され、下方への流出が阻止される。
【0040】
フランジ部72bの上部は回動部72cよりも拡径された拡径部72b1を有しており、ガイドピン72がガイド溝73aから脱落するのが防止される。また、このフランジ部72bの一部(内周面側)は、軸心棒72aの長さ方向に向かって延設され、内周面が軸心棒72aの外周面に接し、外周面が回動部72cの内周面に接する筒状の延設部72b2を有している。なお、この延設部72b2の下端部は延設部72c1とは接しておらず、延設部72b2の下端部と延設部72cとの間にグリスを保持する隙間が形成される。また、この延設部72bと接するガイドピン72aの外周面にもグリスを保持するための凹部72a1が形成される。
これにより、各部材間同士(軸心棒72a、フランジ部72b(拡径部72b1)及び回動部72c)の摺動面積を広くとることができ、またそこに適量のグリス(潤滑油)が保持させることで、軸心棒72a回りにフランジ部72b(拡径部72b1)及び回動部72cをスムーズに回動させる状態に維持することができる。
【0041】
以上述べたように、拡径部72b1と回動部72cとがガイド溝73aの幅方向両側にそれぞれ接しても軸心棒72a回りにフランジ部72bと回動部72cとが互いに異なる方向に回動するので、ガイドピン72はガイド溝73aに沿って滑らかに移動することが可能となる。その結果、ガイドピン72がガイド溝73aの幅方向両側に同時に接することがあってもガイドピン72を滑らかに移動させる作業機10の反転リンク装置70が実現する。
【符号の説明】
【0042】
10……畦塗り機(農作業機)、10A……本体、11……トップマスト、12……ロアリンク連結部、13……ギアボックス、14……前フレーム、15……ブラケット、16、17……ブラケット、18、19……スタンド装着部、20、21……スタンド、22……ブラケット

50……作業部、500……前処理体、501……整畦部、502……多面体ドラム、51……伝動フレーム、53、54……回動軸(動力伝達軸)、55……軸部、550……上側軸部、551……中央軸部、552……下側軸部、56……デフケース、57……シリンダ、58……作業部支持フレーム、59……平行リンク部材、60……ブラケット、61……駆動ケース、

70……反転リンク機構、71a〜71d……リンク部材、72……ガイドピン(案内軸)、72a……軸心棒(軸心部)、72a1……凹部、72b……フランジ部、72b1……拡径部、72b2……延設部、72c……回動部、72c1……延設部、72d……グリスニップル、73……ガイド部材、73a……ガイド溝(案内孔部)、73b……開口部

100……トラクタ、101……トップリンク、102……ロアリンク、103……連結フレーム(カプラ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後部に垂直軸回りに回動自在に装着された伝動フレームと前記伝動フレームの先端側に支持された作業部との間に架設された複数のリンク部材と、前記複数のリンク部材の継ぎ手となる節に突設された案内軸と、前記案内軸が摺動する案内孔部とを有し、前記伝動フレームが、前記作業部を前進作業位置から後進作業位置もしくはその逆方向に移行させている際に前記作業部を前後反転させる農作業機の反転リンク装置において、
前記案内軸は、前記案内孔部に挿通される回動部と、前記案内孔部からの前記案内軸の脱落を防止するフランジ部とを有し、前記回動部と前記フランジ部とは互いに垂直軸回りに相対回動自在とされていることを特徴とする農作業機の反転リンク装置。
【請求項2】
前記案内軸は前記案内孔部を貫通する軸心部を有し、その軸心部回りに前記回動部及び前記フランジ部が互いに相対回動自在に配されていることを特徴とする請求項1に記載の農作業機の反転リンク装置。
【請求項3】
前記フランジ部は前記軸心部の長さ方向に向かって延設され、内周面が前記軸心部の外周面に接し、外周面が前記回動部の内周面に接する延設部を有していることを特徴とする請求項2に記載の農作業機の反転リンク装置。
【請求項4】
前記回動部の下部は前記軸心部の半径方向に向かって延設され、その先端部が前記軸心部の外周面に接する延設部を有していることを特徴とする請求項2もしくは請求項3に記載の農作業機の反転リンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−213588(P2010−213588A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61578(P2009−61578)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】