農作業機
【課題】対地作業装置をコンパクトに構成する。
【解決手段】走行車体(1)の後方に左右方向の軸回りに回転しながら対地作業を行なう対地作業装置(38,38,41)を設け、対地作業装置(38,38,41)を左右に分割して互いに前後位置を異なるように配置し、走行車体(1)から前後方向の伝動軸(44)を介して後側に配置した対地作業装置(38)に動力を伝達し、伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39)を介して前側に配置した前記対地作業装置(41)に動力を伝達するように構成する。
【解決手段】走行車体(1)の後方に左右方向の軸回りに回転しながら対地作業を行なう対地作業装置(38,38,41)を設け、対地作業装置(38,38,41)を左右に分割して互いに前後位置を異なるように配置し、走行車体(1)から前後方向の伝動軸(44)を介して後側に配置した対地作業装置(38)に動力を伝達し、伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39)を介して前側に配置した前記対地作業装置(41)に動力を伝達するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機等の農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
田植機において、走行車体の後部に、複数の苗植付装置と圃場面を滑走するフロートを有する苗植付部を配設し、苗植付装置の前側部に強制回転駆動される3個の代掻きロータリを横方向に配列し、中間の代掻きロータリを左右両側のものよりも前方に配設するものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−125617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術では、走行車体の後部に複数の代掻きロータリを配設するにあたり、中央の代掻きロータリを前側に、左右の代掻きロータリを後側に配置し、後側の左右代掻きロータリを後部代掻き軸により連結し動力を伝達するように構成している。従って、前側の代掻きロータリの後方に後部代掻き軸が位置することとなり、代掻きロータリの後方に苗植付部を配置すると、苗植付部のセンターフロートを後部代掻き軸の後方に配置することとなり、苗植付部を走行車体に近づけて連結することができず、機体をコンパクトに構成できないという不具合があった。そこで、この発明は、このような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、走行車体(1)の後方に左右方向の軸回りに回転して対地作業を行なう対地作業装置(38,38,41)を設け、前記対地作業装置(38,38,41)を左右に分割して互いに前後方向に異なるように配置し、前記走行車体(1)から前後方向の伝動軸(44)を介して後側に配置した前記対地作業装置(38)に動力を伝達し、前記伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側に配置した前記対地作業装置(41)に動力を伝達するように構成したことを特徴とする農作業機とする。
【0005】
前記構成によると、走行車体(1)の後方には、左右方向の軸回りに回転して対地作業を行なう前側の対地作業装置(41)と、後側の対地作業装置(38,38)が配設されていて、走行車体(1)から前後方向の伝動軸(44)を介して先ず後側の対地作業装置(38)に動力が伝達され、次いで、伝動軸(44)から前方へ迂回した伝動経路(39a)を介して前側の対地作業装置(41)に動力が伝達される。
【0006】
請求項2の発明は、前側の前記対地作業装置(41)を左右方向の中央に、後側の前記対地作業装置(38,38)を左右両側に配置し、前記伝動軸(44)から左右一側の後側の対地作業装置(38)に先ず動力を伝達し、次いで前記伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側の前記対地作業装置(41)の左右一側に動力を伝達し、次いで前側の対地作業装置(41)の左右他側から前後方向の伝動経路(39a)を介して後側の左右他側の前記対地作業装置(38)に動力を伝達することを特徴とする請求項1に記載の農作業機とする。
【0007】
前記構成によると、請求項1の発明の前記作用に加えて、伝動軸(44)から先ず左右一側の後側の対地作業装置(38)に動力が伝達され、次いで、伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側の対地作業装置(41)の左右一側に動力が伝達され、次いで、前側の対地作業装置(41)の左右他側から伝動経路(39a)を介して後側の左右他側の対地作業装置(38)に動力が伝達される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、左右方向の幅の広い対地作業装置(38,38,41)を走行車体(1)に接近して配置することができ、機体のコンパクト化を図ることができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明の前記効果に加えて、前側の対地作業装置(41)の後方空間に後側の対地作業装置(38,38)への伝動経路(39a)を配置しないようにすることとができ、その空間部に他の作業装置を配置することもできて空間部を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面に基づきこの発明の実施形態について説明する。図1〜図5には、この発明を具備した6条植え乗用田植機が図示されている。図1は全体側面図、図2は全体平面図、図3は一部省略した全体平面図、図4は苗植付装置の側面図、図5は苗植付装置の切断平面図、図6はロータリ部の一部省略した背面図である。
【0010】
走行車体1の後側部には昇降用リンク装置2により苗植付装置3を昇降自在に連結し、走行車体1は駆動輪である左右一対の前輪4,4及び後輪5,5を有する四輪駆動車体とし、全体を乗用田植機に構成している。
【0011】
左右メインフレーム7,7の前側端部にはミッションケース8をボルトにより取り付け、左右メインフレーム7,7の前後方向中間部にはゴムマウントを介してエンジン12を搭載し、ミッションケース8の例えば左側壁面に油圧式無段変速装置HSTをボルトにより一体的に組み付け、エンジン12からの動力を前後進無段変速するように構成している。
【0012】
ミッションケース8の前側部からステアリング軸(図示省略)を上方に向けて突設し、ステアリング軸の上端部にステアリングハンドル10を取り付け、ステアリングハンドル10の下方部位に操作パネル9を設けている。また、左右メインフレーム7,7上方にはフロアとなる合成樹脂製の機体カバー11を取り付け、エンジン12の上方部位に操縦席13を設置し、操縦席13の後方には施肥装置6は配設している。
【0013】
また、図3に示すように、ミッションケース8の前側部から左右フロントアクスルケース14,14を左右両側に向けて延出し、左右フロントアクスルケース14,14の端部に縦軸回りに回動可能に左右前輪支持ケース15,15を取り付け、左右前輪支持ケース15,15に左右前輪4,4を支架している。
【0014】
また、左右メインフレーム7,7の後側端部に横フレーム7aを連結し、この横フレーム7aに設けたローリング軸16aにケース連結フレーム16をロワーリンク自在に支持し、その左右両側部に左右後輪伝動ケース17,17を取り付けている。また、左右メインフレーム7,7の後端部には左右縦フレーム7b,7bを立設し、この左右縦フレーム7b,7bに前記昇降用リンク装置2の前端部を上下回動自在に支持している。
【0015】
エンジン12の回転動力はベルト伝動装置18を介して油圧式無段変速装置HSTの入力軸に伝達され、油圧式無段変速装置HSTにより前後進切替及び前後進の無段変速され、出力軸を経てミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された動力は、ケース内のギヤ式変速装置、デフ機構を経由してミッションケース8の左右両側部から取り出され、前記左右フロントアクスルケース14,14内の左右前輪駆動軸(図示省略)、伝動ギヤ群を経て左右前輪4,4に伝達されている。
【0016】
また、ミッションケース8内のデフ機構を経由した後輪動力は、ケース内の左右後輪サイドクラッチ機構を経由して左右後輪伝動軸19,19に取り出され、左右後輪伝動ケース17,17内の減速機構を経て左右後輪5,5に伝達されている。また、ミッションケース8の前側部右側から作業動力がPTO伝動軸21に取り出され、PTO伝動軸21からPTO軸22を経て苗植付装置3に伝達されている。
【0017】
苗植付装置3は、複数の伝動ケース25,…と、これら伝動ケース25,…を相互に連結している駆動軸ケース26,26と、この駆動軸ケース26,26内の伝動横軸(図示省略)と、伝動ケース25,…に対して上下回動する複数の植付伝動ケース27,…と、植付伝動ケース27,…により所定の植付軌跡に沿って駆動される複数の苗植付具28,…と、横方向に往復移動する苗載せ台29等により構成されている。
【0018】
また、左右両側の植付伝動ケース27,27の下方には車輪跡を消す左右フロート30L,30Rを昇降調節自在に設け、また、中央の植付伝動ケース27の下方にはセンターフロート30Cを昇降調節自在に設けている。このセンターフロート30Cの昇降移動をフロートセンサ(図示省略)により検出し、この検出値により制御弁(図示省略)を作動し昇降シリンダ31を伸縮調節し、苗植付装置3を所定の植付深さに調節するように構成している。また、センターフロート30Cを左右フロート30L,30Rよりも前後方向に長く構成し、センターフロート30Cの前側端部を左右フロート30L,30Rよりも前方に配設している。
【0019】
次に、図4乃至図7に基づき苗植付装置3の前方に配設しているロータリ代掻き装置について説明する。
苗植付装置3の左右植付フレーム36,36には、上下アーム36a,36bを介して前方に位置するように左右ロータリフレーム37,37を取り付け、この左右ロータリフレーム37,37の左右両側に屈折した下端部に左右ロータリ38,38の軸部38a,38aの中間部を軸支している。この左右ロータリ38,38の軸部38a,38aの内側端部に左右ロータリ伝動ケース39,39の後端部を支架し、左右ロータリ伝動ケース39,39の前端部により中央ロータリ41の軸部41aを軸架し、左右ロータリ伝動ケース39,39の中間部を連結枠体39bにより連結補強している。そして、左右後輪5,5の内側に左右補助車輪5a,5aを取り付け、左右補助車輪5a,5aの内側に中央ロータリ41を配置している。
【0020】
また、例えば、左側の後輪伝動軸19からチエン伝動装置42を介してロータリ伝動軸43にロータリ動力を分岐し、更に、ロータリ自在継手44、ギヤ45,45を介して左ロータリ38の軸部38aに動力を伝達している。しかして、左ロータリ38の軸部38aに伝達された動力は、左ロータリ伝動ケース39のチエン伝動装置39aを経由して中央ロータリ41の軸部41aの左側端部に伝達され、軸部41aの右側端部から右ロータリ伝動ケース39のチエン伝動装置39aを経て右ロータリ38の軸部38b左側端部に伝達される。
【0021】
また、左右ロータリ38,38をロータリカバー38b,38bで覆い、中央ロータリ41をロータリカバー41bにより覆っている。そして、植付フレーム36から垂下した吊下ロッド45、バネ46により中央ロータリ41を上下動自在に遊動的に支持している。
【0022】
前記構成によると、中央ロータリ41を前方に、左右ロータリ38,38を後方に配設し、これらのロータリ38,38、41を前後方向に沿った左右ロータリ伝動ケース39,39により動力を伝達しているので、これらのロータリ38,38、41をセンターフロート30C,左右フロート30L,30Rの前方に接近して配置することができ、機体構成を短くコンパクトに構成することができる。また、分割した中央ロータリ38,左右ロータリ38,41を幅狭に構成することができ、苗植付後の整地跡の残りを少なくすることができる。
【0023】
また、前記構成によると、中央ロータリ41を左右後輪5,5の内側に配置し、中央ロータリ41の後部左右両側に左右ロータリ38L,38Rを配置しているので、中央ロータリ41の後方に空間部が形成されて、中央ロータリ41の後方に配置するセンターフロート41を大きくすることができ、整地性能を高めることができる。
【0024】
また、左右後輪5,5の内側に左右補助車輪5a,5aを取り付け、中央ロータリ41を左右補助車輪5a,5aの内側に配置したので、苗植付装置3及びフロート30C,30L,30Rを走行車体1に接近して連結することができる。
【0025】
また、植付フレーム36から垂下した吊下ロッド45及びバネ46により中央ロータリ41を上下動自在に遊動的に支持しているので、前方の中央ロータリ41が圃場の凹凸に対して上下遊動しながら追従して、表土を均平しながら耕耘作業をすることができ、後続のセンターフロート30Cによる植付深さの検出精度を高めることができる。
【0026】
また、図4及び図8に示すように、中央ロータリ41をロータリカバー41bにより覆い、植付フレーム36から垂下した吊下ロッド45及びバネ46により中央ロータリ41を遊動的に支持し、ロータリカバー41aの上部にはローラ47を取り付けている。
【0027】
前記構成によると、昇降リンク装置2により苗植付装置3及び中央ロータリ41、左右ロータリ38,38を上昇させたときに、中央ロータリ41側のローラ47が昇降リンク装置2の下部リンク2aに当接すると、中央ロータリ41が下部リンク2aにより押し下げられ、中央ロータリ41と昇降リンク装置2、ロータリ自在継手44との干渉を回避し、走行車体1に苗植付装置3を接近して連結することができる。
【0028】
また、図3及び図7に示すように、ミッションケース8の前側部右側から作業動力を取り出し、PTO伝動軸21、PTO軸22、平面視で昇降リンク装置2よりも右側に位置するPTO自在継手48を経由して、苗植付装置3に動力を伝達し、このPTO自在継手48を左側回転(軸部の左側部が下向きに回転)するように構成している。また、左側の後輪伝動軸19からクラッチケース53で覆っているチエン伝動装置42を介してロータリ伝動軸43にロータリ動力を分岐し、平面視で昇降リンク装置2よりも左側に位置しているロータリ自在継手44、ギヤ45群を介して左ロータリ38の軸部38aに動力を伝達し、ロータリ自在継手44を右側回転するように構成している。
【0029】
前記構成によると、リフトレバー60の操作に関連してPTOクラッチ及びロータリクラッチ53a同時に入りとなり、苗植付装置3及びロータリ38,38,41に同時に動力が伝動されても、機体震動を小さくすることができる。
【0030】
次に、図9及び図10について説明する。
左右メインフレーム7,7の後端部に立設した右縦フレーム7bにブラケット50を取り付け、このブラケット50にクラッチアーム51を左右方向の軸で軸支している。また、左右縦フレーム7b,7bの下部にはブラケットを介して昇降用リンク装置2の前側端を左右方向の軸で軸支し、昇降リンク装置2の下部リンク2aの基部にはクラッチローラ52を取り付けている。そして、前記クラッチアーム51における等径カム面51bと拡大カム面51cからなるカム面51aにクラッチローラ52の外周面を当接連係している。
【0031】
また、後輪伝動軸19の後側端部にはクラッチケース53を設けて、チエン伝動走行42を介してロータリ動力を分岐し、シフトアーム54によりクラッチケース53内のクラッチ53aを入切可能に構成している。このシフトアーム54の端部にクラッチワイヤ55の一端を連結し、クラッチワイヤ55の他端をクラッチアーム51に連結し、また、クラッチワイヤ55の一端に連動ワイヤ56の後側端部を連結し、クラッチワイヤ55の前側端部を昇降リンク装置2昇降用のリフトレバー60に連結している。
【0032】
前記構成によると、下部リンク2aの下方回動状態の作業中には、下部リンク21a側のクラッチローラ52がクラッチアーム51の等径カム面51bに接触し、クラッチワイヤ55は前方移動状態となって53aが入り状態となる。また、下部リンク2aの上方回動状態の作業停止時には、下部リンク21a側のクラッチローラ52がクラッチアーム51の拡大カム面51cに接触してクラッチワイヤ55が後方移動状態となり、53aは切り状態とななる。従って、ロータリ18,18,41の昇降移動に関連して自動的にロータリクラッチ53aの入切をすることができる。
【0033】
また、図7に示すように、左右フロート30L,30Rには平面視L型の左右支持アーム57,57(右支持アームは図示省略)を左右両側に向けて延出し、この左右支持アーム57,57の先端部に左右横軸回りに自由回転する防波円板58,58を取り付け、左右ロータリ38L,38Rの側方を防波円板58,58で覆っている。
【0034】
前記構成によると、左右防波円板58,58により、左右ロータリ38L,38Rの回転作業時に発生する耕土の側方への拡がりを抑制し、植付苗のの倒伏を防止することができる。
【0035】
また、図7に示すように、左右ロータリ38L,38Rにおけるロータリカバー38b,38bの内側端部には左右ゴムベラ59,59を取り付け、また、中央ロータリ41のカバー41aの左右両端部に左右ゴムベラ59,59を取り付け、左右ゴムベラ59,59により表土を押さえるようにすると、整地性能を高めることができる。
【0036】
また、図11に示すように、左右ロータリ38L,38Rのロータリカバー38b,38b、及び、中央ロータリ41のカバー41aの全幅後側端部にゴムベラ59,…を取り付け、左右ゴムベラ59,59で表土を押さえるようにすると、整地性能を高めることができる。
【0037】
次に、図12乃至図14に基づき苗植付装置3の植付深さ調節の感度制御構成について説明する。
前記センターフロート30Cはその前側部を上下回動自在に構成し、表土面の凹凸に応じてその前端部が上下動するように構成している。植付作業時にセンターフロート30C前側部の上下動を上下動検出機構71を介してフロートセンサ63に伝達される。フロートセンサ63のの検出結果に関連して昇降用油圧制御バルブ65が切り替えられ、前記昇降シリンダ31を伸縮し苗植付装置3を昇降するように構成している。
【0038】
センターフロート30Cの水平面に対する角度、即ち、フロート向い角度が上下動検出機構71を介してフロートセンサ63に検出され、その検出結果に基づいて昇降用油圧制御バルブ65が作動される。例えば、表土面が高くなっているところでは、センターフロート30Cの前側部が押し上げられ、フロート向い角が小さく検出される。すると、昇降用油圧制御バルブ65に制御指令を出し昇降シリンダ31を伸長させて苗植付装置3を上昇させる。また、表土面が低くなっているところでは、センターフロート30Cの前側部が下がり、フロート向い角が大きく検出される。すると、昇降用油圧制御バルブ65に制御指令を出し昇降シリンダ31を短縮させて苗植付装置3を下降させる。このように、表土面の高低に応じて苗植付装置3の対地高さを調節し、苗の植付深さを一定に維持する。
【0039】
また、図13に示すように、制御部61の入力側には、入力インターフェイスを介してロータリ38L,38R及び中央ロータリ41のロータリクラッチ53aの入切を検出するロータリ入切レバーセンサ62、フロートセンサ63、苗植付装置3の植付深さ調節感度を設定する感度設定ダイヤル64を接続し、また、制御部61の出力側には出力インターフェイスを介して昇降リンク2昇降用の油圧電磁バルブ65を接続している。
【0040】
次に、図14により制御内容を説明する。
制御が開始されると、ロータリ入切レバーセンサ62が入りか否かを判定し(ステップS1)、ロータリクラッチ53a入りでロータリ38,38,41が駆動されているときには、フロートセンサ63の制御目標値を鈍感側(前上り側)に補正する(ステップS2)。また、ロータリクラッチ53a切りでロータリ38,38,41が駆動されていないとには、フロートセンサ63の制御目標値を感度設定ダイヤル64の設定値に応じた制御目標値に設定する(ステップS3)。
【0041】
次いで、ロータリ入切レバーセンサ62が入り検出のときには、感度設定ダイヤル64の設定値が変化したか否かを判定し(ステップS4)、変化したときには、フロートセンサ63の制御目標値を感度設定ダイヤル64の設定値に応じて補正する(ステップS5)。次いで、ロータリ入切レバーセンサ62が切りか否かの判定をし(ステップS6)、ロータリクラッチ53a切りのときには、前記ステップS1に戻り、また、ロータリクラッチ53a入りのときには、前記ステップS4に戻る。
【0042】
前記構成によると、苗植付装置3により苗植付作業をするにあたり、ロータリ38,38,41により耕耘代掻き作業をしながら苗植付作業をする場合には、植付深さ調節の感度を鈍感側に補正するので、センターフロート30Cにより泥押しが生じても苗の植付深さを適正に保つことができる。
【0043】
また、図15に示すように、中央ロータリ41のロータリカバー41bの後側端部に、植付深さ感度調節用の感度調節センサ72を設け、感度調節センサ72の検出値により植付深さの制御目標値を鈍感側あるいは敏感側に補正するように構成してもよい。即ち、感度調節センサ72を、中央ロータリ30Cの耕耘土壌により上下回動する検出板72aと、検出板72aの回動状態を検出するポテンショメータ72bとにより構成している。
【0044】
しかして、ロータリ38,38,41で耕耘作業をしながら苗植付作業をする場合には、ポテンショメータ72bが検出板72aの上方への回動を検出すると、植付深さの感度を鈍感側に補正することにより、センターフロート30Cによる泥押しが生じても植付深さを適正に保つことができる。
【0045】
また、図16に示すように構成してもよい。センターフロート30Cの前部の上下動を上下動検出機構71を介してフロートセンサ63に伝達し、フロートセンサ63の検出結果に関連して前記昇降用油圧制御バルブ65を切り替え、昇降シリンダ31を伸縮して苗植付装置3を昇降し苗植付装置3の植付深さを一定に保持するように構成する。
【0046】
また、中央ロータリ41のロータリカバー41bの後側端部には、中央ロータリ30Cの耕耘土壌により上下回動する検出板72aと、検出板72aの回動状態を検出するポテンショメータ72bとからなる植付深さの感度調節センサ72を設け、感度調節センサ72の検出値により植付深さの制御目標値を鈍感側あるいは敏感側に補正するように構成する。
【0047】
そして、苗植付装置3の昇降制御をするにあたり、センターフロート30Cが所定高さ以下のときには、フロートセンサ63の検出値に基づき苗植付装置3の昇降制御を実行し、また、センターフロート30Cが所定高さ以上になると、フロートセンサ63による制御を停止し、中央ロータリ41側の感度調節センサ72の検出値に基づき苗植付装置3の昇降制御を実行する。
【0048】
前記構成によると、畔際での植付作業時において、センターフロート30Cが畔に接触し検出値が大きくずれることがあるが、このようなときには、中央ロータリ41側の感度調節センサ72の検出値基準に基づき昇降制御をすることにより、苗植付装置3を適正に昇降制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】乗用田植機の一部省略した平面図
【図4】苗植付装置部の側面図
【図5】苗植付装置部の平面図
【図6】ロータリ部の背面図
【図7】苗植付装置及びロータリ部分の平面図
【図8】ロータリ部の側面図
【図9】昇降リンク装置部の側面図
【図10】昇降リンク装置部の平面図
【図11】ロータリ部の斜視図
【図12】センターフロート部の側面図
【図13】制御ブロック図
【図14】フローチャート
【図15】中央ロータリ部の側面図
【図16】中央ロータリ部の側面図
【符号の説明】
【0050】
1 走行車体
38 対地作業装置(ロータリ)
39a 伝動経路(チエン伝動装置)
41 対地作業装置(ロータリ)
44 伝動軸(ロータリ自在継手)
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機等の農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
田植機において、走行車体の後部に、複数の苗植付装置と圃場面を滑走するフロートを有する苗植付部を配設し、苗植付装置の前側部に強制回転駆動される3個の代掻きロータリを横方向に配列し、中間の代掻きロータリを左右両側のものよりも前方に配設するものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−125617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術では、走行車体の後部に複数の代掻きロータリを配設するにあたり、中央の代掻きロータリを前側に、左右の代掻きロータリを後側に配置し、後側の左右代掻きロータリを後部代掻き軸により連結し動力を伝達するように構成している。従って、前側の代掻きロータリの後方に後部代掻き軸が位置することとなり、代掻きロータリの後方に苗植付部を配置すると、苗植付部のセンターフロートを後部代掻き軸の後方に配置することとなり、苗植付部を走行車体に近づけて連結することができず、機体をコンパクトに構成できないという不具合があった。そこで、この発明は、このような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、走行車体(1)の後方に左右方向の軸回りに回転して対地作業を行なう対地作業装置(38,38,41)を設け、前記対地作業装置(38,38,41)を左右に分割して互いに前後方向に異なるように配置し、前記走行車体(1)から前後方向の伝動軸(44)を介して後側に配置した前記対地作業装置(38)に動力を伝達し、前記伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側に配置した前記対地作業装置(41)に動力を伝達するように構成したことを特徴とする農作業機とする。
【0005】
前記構成によると、走行車体(1)の後方には、左右方向の軸回りに回転して対地作業を行なう前側の対地作業装置(41)と、後側の対地作業装置(38,38)が配設されていて、走行車体(1)から前後方向の伝動軸(44)を介して先ず後側の対地作業装置(38)に動力が伝達され、次いで、伝動軸(44)から前方へ迂回した伝動経路(39a)を介して前側の対地作業装置(41)に動力が伝達される。
【0006】
請求項2の発明は、前側の前記対地作業装置(41)を左右方向の中央に、後側の前記対地作業装置(38,38)を左右両側に配置し、前記伝動軸(44)から左右一側の後側の対地作業装置(38)に先ず動力を伝達し、次いで前記伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側の前記対地作業装置(41)の左右一側に動力を伝達し、次いで前側の対地作業装置(41)の左右他側から前後方向の伝動経路(39a)を介して後側の左右他側の前記対地作業装置(38)に動力を伝達することを特徴とする請求項1に記載の農作業機とする。
【0007】
前記構成によると、請求項1の発明の前記作用に加えて、伝動軸(44)から先ず左右一側の後側の対地作業装置(38)に動力が伝達され、次いで、伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側の対地作業装置(41)の左右一側に動力が伝達され、次いで、前側の対地作業装置(41)の左右他側から伝動経路(39a)を介して後側の左右他側の対地作業装置(38)に動力が伝達される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、左右方向の幅の広い対地作業装置(38,38,41)を走行車体(1)に接近して配置することができ、機体のコンパクト化を図ることができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明の前記効果に加えて、前側の対地作業装置(41)の後方空間に後側の対地作業装置(38,38)への伝動経路(39a)を配置しないようにすることとができ、その空間部に他の作業装置を配置することもできて空間部を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面に基づきこの発明の実施形態について説明する。図1〜図5には、この発明を具備した6条植え乗用田植機が図示されている。図1は全体側面図、図2は全体平面図、図3は一部省略した全体平面図、図4は苗植付装置の側面図、図5は苗植付装置の切断平面図、図6はロータリ部の一部省略した背面図である。
【0010】
走行車体1の後側部には昇降用リンク装置2により苗植付装置3を昇降自在に連結し、走行車体1は駆動輪である左右一対の前輪4,4及び後輪5,5を有する四輪駆動車体とし、全体を乗用田植機に構成している。
【0011】
左右メインフレーム7,7の前側端部にはミッションケース8をボルトにより取り付け、左右メインフレーム7,7の前後方向中間部にはゴムマウントを介してエンジン12を搭載し、ミッションケース8の例えば左側壁面に油圧式無段変速装置HSTをボルトにより一体的に組み付け、エンジン12からの動力を前後進無段変速するように構成している。
【0012】
ミッションケース8の前側部からステアリング軸(図示省略)を上方に向けて突設し、ステアリング軸の上端部にステアリングハンドル10を取り付け、ステアリングハンドル10の下方部位に操作パネル9を設けている。また、左右メインフレーム7,7上方にはフロアとなる合成樹脂製の機体カバー11を取り付け、エンジン12の上方部位に操縦席13を設置し、操縦席13の後方には施肥装置6は配設している。
【0013】
また、図3に示すように、ミッションケース8の前側部から左右フロントアクスルケース14,14を左右両側に向けて延出し、左右フロントアクスルケース14,14の端部に縦軸回りに回動可能に左右前輪支持ケース15,15を取り付け、左右前輪支持ケース15,15に左右前輪4,4を支架している。
【0014】
また、左右メインフレーム7,7の後側端部に横フレーム7aを連結し、この横フレーム7aに設けたローリング軸16aにケース連結フレーム16をロワーリンク自在に支持し、その左右両側部に左右後輪伝動ケース17,17を取り付けている。また、左右メインフレーム7,7の後端部には左右縦フレーム7b,7bを立設し、この左右縦フレーム7b,7bに前記昇降用リンク装置2の前端部を上下回動自在に支持している。
【0015】
エンジン12の回転動力はベルト伝動装置18を介して油圧式無段変速装置HSTの入力軸に伝達され、油圧式無段変速装置HSTにより前後進切替及び前後進の無段変速され、出力軸を経てミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された動力は、ケース内のギヤ式変速装置、デフ機構を経由してミッションケース8の左右両側部から取り出され、前記左右フロントアクスルケース14,14内の左右前輪駆動軸(図示省略)、伝動ギヤ群を経て左右前輪4,4に伝達されている。
【0016】
また、ミッションケース8内のデフ機構を経由した後輪動力は、ケース内の左右後輪サイドクラッチ機構を経由して左右後輪伝動軸19,19に取り出され、左右後輪伝動ケース17,17内の減速機構を経て左右後輪5,5に伝達されている。また、ミッションケース8の前側部右側から作業動力がPTO伝動軸21に取り出され、PTO伝動軸21からPTO軸22を経て苗植付装置3に伝達されている。
【0017】
苗植付装置3は、複数の伝動ケース25,…と、これら伝動ケース25,…を相互に連結している駆動軸ケース26,26と、この駆動軸ケース26,26内の伝動横軸(図示省略)と、伝動ケース25,…に対して上下回動する複数の植付伝動ケース27,…と、植付伝動ケース27,…により所定の植付軌跡に沿って駆動される複数の苗植付具28,…と、横方向に往復移動する苗載せ台29等により構成されている。
【0018】
また、左右両側の植付伝動ケース27,27の下方には車輪跡を消す左右フロート30L,30Rを昇降調節自在に設け、また、中央の植付伝動ケース27の下方にはセンターフロート30Cを昇降調節自在に設けている。このセンターフロート30Cの昇降移動をフロートセンサ(図示省略)により検出し、この検出値により制御弁(図示省略)を作動し昇降シリンダ31を伸縮調節し、苗植付装置3を所定の植付深さに調節するように構成している。また、センターフロート30Cを左右フロート30L,30Rよりも前後方向に長く構成し、センターフロート30Cの前側端部を左右フロート30L,30Rよりも前方に配設している。
【0019】
次に、図4乃至図7に基づき苗植付装置3の前方に配設しているロータリ代掻き装置について説明する。
苗植付装置3の左右植付フレーム36,36には、上下アーム36a,36bを介して前方に位置するように左右ロータリフレーム37,37を取り付け、この左右ロータリフレーム37,37の左右両側に屈折した下端部に左右ロータリ38,38の軸部38a,38aの中間部を軸支している。この左右ロータリ38,38の軸部38a,38aの内側端部に左右ロータリ伝動ケース39,39の後端部を支架し、左右ロータリ伝動ケース39,39の前端部により中央ロータリ41の軸部41aを軸架し、左右ロータリ伝動ケース39,39の中間部を連結枠体39bにより連結補強している。そして、左右後輪5,5の内側に左右補助車輪5a,5aを取り付け、左右補助車輪5a,5aの内側に中央ロータリ41を配置している。
【0020】
また、例えば、左側の後輪伝動軸19からチエン伝動装置42を介してロータリ伝動軸43にロータリ動力を分岐し、更に、ロータリ自在継手44、ギヤ45,45を介して左ロータリ38の軸部38aに動力を伝達している。しかして、左ロータリ38の軸部38aに伝達された動力は、左ロータリ伝動ケース39のチエン伝動装置39aを経由して中央ロータリ41の軸部41aの左側端部に伝達され、軸部41aの右側端部から右ロータリ伝動ケース39のチエン伝動装置39aを経て右ロータリ38の軸部38b左側端部に伝達される。
【0021】
また、左右ロータリ38,38をロータリカバー38b,38bで覆い、中央ロータリ41をロータリカバー41bにより覆っている。そして、植付フレーム36から垂下した吊下ロッド45、バネ46により中央ロータリ41を上下動自在に遊動的に支持している。
【0022】
前記構成によると、中央ロータリ41を前方に、左右ロータリ38,38を後方に配設し、これらのロータリ38,38、41を前後方向に沿った左右ロータリ伝動ケース39,39により動力を伝達しているので、これらのロータリ38,38、41をセンターフロート30C,左右フロート30L,30Rの前方に接近して配置することができ、機体構成を短くコンパクトに構成することができる。また、分割した中央ロータリ38,左右ロータリ38,41を幅狭に構成することができ、苗植付後の整地跡の残りを少なくすることができる。
【0023】
また、前記構成によると、中央ロータリ41を左右後輪5,5の内側に配置し、中央ロータリ41の後部左右両側に左右ロータリ38L,38Rを配置しているので、中央ロータリ41の後方に空間部が形成されて、中央ロータリ41の後方に配置するセンターフロート41を大きくすることができ、整地性能を高めることができる。
【0024】
また、左右後輪5,5の内側に左右補助車輪5a,5aを取り付け、中央ロータリ41を左右補助車輪5a,5aの内側に配置したので、苗植付装置3及びフロート30C,30L,30Rを走行車体1に接近して連結することができる。
【0025】
また、植付フレーム36から垂下した吊下ロッド45及びバネ46により中央ロータリ41を上下動自在に遊動的に支持しているので、前方の中央ロータリ41が圃場の凹凸に対して上下遊動しながら追従して、表土を均平しながら耕耘作業をすることができ、後続のセンターフロート30Cによる植付深さの検出精度を高めることができる。
【0026】
また、図4及び図8に示すように、中央ロータリ41をロータリカバー41bにより覆い、植付フレーム36から垂下した吊下ロッド45及びバネ46により中央ロータリ41を遊動的に支持し、ロータリカバー41aの上部にはローラ47を取り付けている。
【0027】
前記構成によると、昇降リンク装置2により苗植付装置3及び中央ロータリ41、左右ロータリ38,38を上昇させたときに、中央ロータリ41側のローラ47が昇降リンク装置2の下部リンク2aに当接すると、中央ロータリ41が下部リンク2aにより押し下げられ、中央ロータリ41と昇降リンク装置2、ロータリ自在継手44との干渉を回避し、走行車体1に苗植付装置3を接近して連結することができる。
【0028】
また、図3及び図7に示すように、ミッションケース8の前側部右側から作業動力を取り出し、PTO伝動軸21、PTO軸22、平面視で昇降リンク装置2よりも右側に位置するPTO自在継手48を経由して、苗植付装置3に動力を伝達し、このPTO自在継手48を左側回転(軸部の左側部が下向きに回転)するように構成している。また、左側の後輪伝動軸19からクラッチケース53で覆っているチエン伝動装置42を介してロータリ伝動軸43にロータリ動力を分岐し、平面視で昇降リンク装置2よりも左側に位置しているロータリ自在継手44、ギヤ45群を介して左ロータリ38の軸部38aに動力を伝達し、ロータリ自在継手44を右側回転するように構成している。
【0029】
前記構成によると、リフトレバー60の操作に関連してPTOクラッチ及びロータリクラッチ53a同時に入りとなり、苗植付装置3及びロータリ38,38,41に同時に動力が伝動されても、機体震動を小さくすることができる。
【0030】
次に、図9及び図10について説明する。
左右メインフレーム7,7の後端部に立設した右縦フレーム7bにブラケット50を取り付け、このブラケット50にクラッチアーム51を左右方向の軸で軸支している。また、左右縦フレーム7b,7bの下部にはブラケットを介して昇降用リンク装置2の前側端を左右方向の軸で軸支し、昇降リンク装置2の下部リンク2aの基部にはクラッチローラ52を取り付けている。そして、前記クラッチアーム51における等径カム面51bと拡大カム面51cからなるカム面51aにクラッチローラ52の外周面を当接連係している。
【0031】
また、後輪伝動軸19の後側端部にはクラッチケース53を設けて、チエン伝動走行42を介してロータリ動力を分岐し、シフトアーム54によりクラッチケース53内のクラッチ53aを入切可能に構成している。このシフトアーム54の端部にクラッチワイヤ55の一端を連結し、クラッチワイヤ55の他端をクラッチアーム51に連結し、また、クラッチワイヤ55の一端に連動ワイヤ56の後側端部を連結し、クラッチワイヤ55の前側端部を昇降リンク装置2昇降用のリフトレバー60に連結している。
【0032】
前記構成によると、下部リンク2aの下方回動状態の作業中には、下部リンク21a側のクラッチローラ52がクラッチアーム51の等径カム面51bに接触し、クラッチワイヤ55は前方移動状態となって53aが入り状態となる。また、下部リンク2aの上方回動状態の作業停止時には、下部リンク21a側のクラッチローラ52がクラッチアーム51の拡大カム面51cに接触してクラッチワイヤ55が後方移動状態となり、53aは切り状態とななる。従って、ロータリ18,18,41の昇降移動に関連して自動的にロータリクラッチ53aの入切をすることができる。
【0033】
また、図7に示すように、左右フロート30L,30Rには平面視L型の左右支持アーム57,57(右支持アームは図示省略)を左右両側に向けて延出し、この左右支持アーム57,57の先端部に左右横軸回りに自由回転する防波円板58,58を取り付け、左右ロータリ38L,38Rの側方を防波円板58,58で覆っている。
【0034】
前記構成によると、左右防波円板58,58により、左右ロータリ38L,38Rの回転作業時に発生する耕土の側方への拡がりを抑制し、植付苗のの倒伏を防止することができる。
【0035】
また、図7に示すように、左右ロータリ38L,38Rにおけるロータリカバー38b,38bの内側端部には左右ゴムベラ59,59を取り付け、また、中央ロータリ41のカバー41aの左右両端部に左右ゴムベラ59,59を取り付け、左右ゴムベラ59,59により表土を押さえるようにすると、整地性能を高めることができる。
【0036】
また、図11に示すように、左右ロータリ38L,38Rのロータリカバー38b,38b、及び、中央ロータリ41のカバー41aの全幅後側端部にゴムベラ59,…を取り付け、左右ゴムベラ59,59で表土を押さえるようにすると、整地性能を高めることができる。
【0037】
次に、図12乃至図14に基づき苗植付装置3の植付深さ調節の感度制御構成について説明する。
前記センターフロート30Cはその前側部を上下回動自在に構成し、表土面の凹凸に応じてその前端部が上下動するように構成している。植付作業時にセンターフロート30C前側部の上下動を上下動検出機構71を介してフロートセンサ63に伝達される。フロートセンサ63のの検出結果に関連して昇降用油圧制御バルブ65が切り替えられ、前記昇降シリンダ31を伸縮し苗植付装置3を昇降するように構成している。
【0038】
センターフロート30Cの水平面に対する角度、即ち、フロート向い角度が上下動検出機構71を介してフロートセンサ63に検出され、その検出結果に基づいて昇降用油圧制御バルブ65が作動される。例えば、表土面が高くなっているところでは、センターフロート30Cの前側部が押し上げられ、フロート向い角が小さく検出される。すると、昇降用油圧制御バルブ65に制御指令を出し昇降シリンダ31を伸長させて苗植付装置3を上昇させる。また、表土面が低くなっているところでは、センターフロート30Cの前側部が下がり、フロート向い角が大きく検出される。すると、昇降用油圧制御バルブ65に制御指令を出し昇降シリンダ31を短縮させて苗植付装置3を下降させる。このように、表土面の高低に応じて苗植付装置3の対地高さを調節し、苗の植付深さを一定に維持する。
【0039】
また、図13に示すように、制御部61の入力側には、入力インターフェイスを介してロータリ38L,38R及び中央ロータリ41のロータリクラッチ53aの入切を検出するロータリ入切レバーセンサ62、フロートセンサ63、苗植付装置3の植付深さ調節感度を設定する感度設定ダイヤル64を接続し、また、制御部61の出力側には出力インターフェイスを介して昇降リンク2昇降用の油圧電磁バルブ65を接続している。
【0040】
次に、図14により制御内容を説明する。
制御が開始されると、ロータリ入切レバーセンサ62が入りか否かを判定し(ステップS1)、ロータリクラッチ53a入りでロータリ38,38,41が駆動されているときには、フロートセンサ63の制御目標値を鈍感側(前上り側)に補正する(ステップS2)。また、ロータリクラッチ53a切りでロータリ38,38,41が駆動されていないとには、フロートセンサ63の制御目標値を感度設定ダイヤル64の設定値に応じた制御目標値に設定する(ステップS3)。
【0041】
次いで、ロータリ入切レバーセンサ62が入り検出のときには、感度設定ダイヤル64の設定値が変化したか否かを判定し(ステップS4)、変化したときには、フロートセンサ63の制御目標値を感度設定ダイヤル64の設定値に応じて補正する(ステップS5)。次いで、ロータリ入切レバーセンサ62が切りか否かの判定をし(ステップS6)、ロータリクラッチ53a切りのときには、前記ステップS1に戻り、また、ロータリクラッチ53a入りのときには、前記ステップS4に戻る。
【0042】
前記構成によると、苗植付装置3により苗植付作業をするにあたり、ロータリ38,38,41により耕耘代掻き作業をしながら苗植付作業をする場合には、植付深さ調節の感度を鈍感側に補正するので、センターフロート30Cにより泥押しが生じても苗の植付深さを適正に保つことができる。
【0043】
また、図15に示すように、中央ロータリ41のロータリカバー41bの後側端部に、植付深さ感度調節用の感度調節センサ72を設け、感度調節センサ72の検出値により植付深さの制御目標値を鈍感側あるいは敏感側に補正するように構成してもよい。即ち、感度調節センサ72を、中央ロータリ30Cの耕耘土壌により上下回動する検出板72aと、検出板72aの回動状態を検出するポテンショメータ72bとにより構成している。
【0044】
しかして、ロータリ38,38,41で耕耘作業をしながら苗植付作業をする場合には、ポテンショメータ72bが検出板72aの上方への回動を検出すると、植付深さの感度を鈍感側に補正することにより、センターフロート30Cによる泥押しが生じても植付深さを適正に保つことができる。
【0045】
また、図16に示すように構成してもよい。センターフロート30Cの前部の上下動を上下動検出機構71を介してフロートセンサ63に伝達し、フロートセンサ63の検出結果に関連して前記昇降用油圧制御バルブ65を切り替え、昇降シリンダ31を伸縮して苗植付装置3を昇降し苗植付装置3の植付深さを一定に保持するように構成する。
【0046】
また、中央ロータリ41のロータリカバー41bの後側端部には、中央ロータリ30Cの耕耘土壌により上下回動する検出板72aと、検出板72aの回動状態を検出するポテンショメータ72bとからなる植付深さの感度調節センサ72を設け、感度調節センサ72の検出値により植付深さの制御目標値を鈍感側あるいは敏感側に補正するように構成する。
【0047】
そして、苗植付装置3の昇降制御をするにあたり、センターフロート30Cが所定高さ以下のときには、フロートセンサ63の検出値に基づき苗植付装置3の昇降制御を実行し、また、センターフロート30Cが所定高さ以上になると、フロートセンサ63による制御を停止し、中央ロータリ41側の感度調節センサ72の検出値に基づき苗植付装置3の昇降制御を実行する。
【0048】
前記構成によると、畔際での植付作業時において、センターフロート30Cが畔に接触し検出値が大きくずれることがあるが、このようなときには、中央ロータリ41側の感度調節センサ72の検出値基準に基づき昇降制御をすることにより、苗植付装置3を適正に昇降制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】乗用田植機の一部省略した平面図
【図4】苗植付装置部の側面図
【図5】苗植付装置部の平面図
【図6】ロータリ部の背面図
【図7】苗植付装置及びロータリ部分の平面図
【図8】ロータリ部の側面図
【図9】昇降リンク装置部の側面図
【図10】昇降リンク装置部の平面図
【図11】ロータリ部の斜視図
【図12】センターフロート部の側面図
【図13】制御ブロック図
【図14】フローチャート
【図15】中央ロータリ部の側面図
【図16】中央ロータリ部の側面図
【符号の説明】
【0050】
1 走行車体
38 対地作業装置(ロータリ)
39a 伝動経路(チエン伝動装置)
41 対地作業装置(ロータリ)
44 伝動軸(ロータリ自在継手)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)の後方に左右方向の軸回りに回転して対地作業を行なう対地作業装置(38,38,41)を設け、前記対地作業装置(38,38,41)を左右に分割して互いに前後方向に異なるように配置し、前記走行車体(1)から前後方向の伝動軸(44)を介して後側に配置した前記対地作業装置(38)に動力を伝達し、前記伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側に配置した前記対地作業装置(41)に動力を伝達するように構成したことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前側の前記対地作業装置(41)を左右方向の中央に、後側の前記対地作業装置(38,38)を左右両側に配置し、前記伝動軸(44)から左右一側の後側の対地作業装置(38)に先ず動力を伝達し、次いで前記伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側の前記対地作業装置(41)の左右一側に動力を伝達し、次いで前側の対地作業装置(41)の左右他側から前後方向の伝動経路(39a)を介して後側の左右他側の前記対地作業装置(38)に動力を伝達することを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【請求項1】
走行車体(1)の後方に左右方向の軸回りに回転して対地作業を行なう対地作業装置(38,38,41)を設け、前記対地作業装置(38,38,41)を左右に分割して互いに前後方向に異なるように配置し、前記走行車体(1)から前後方向の伝動軸(44)を介して後側に配置した前記対地作業装置(38)に動力を伝達し、前記伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側に配置した前記対地作業装置(41)に動力を伝達するように構成したことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前側の前記対地作業装置(41)を左右方向の中央に、後側の前記対地作業装置(38,38)を左右両側に配置し、前記伝動軸(44)から左右一側の後側の対地作業装置(38)に先ず動力を伝達し、次いで前記伝動軸(44)から前方へ迂回する伝動経路(39a)を介して前側の前記対地作業装置(41)の左右一側に動力を伝達し、次いで前側の対地作業装置(41)の左右他側から前後方向の伝動経路(39a)を介して後側の左右他側の前記対地作業装置(38)に動力を伝達することを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−195417(P2007−195417A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15069(P2006−15069)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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