説明

農作業機

【課題】入力手段をフレームの左右の側板に対して精度よく、かつ、簡単に取り付ける。
【解決手段】フレーム2の左右の側板21にわたって入力手段5を取り付けるに際して、ギヤボックス51の左右側面に基端が連結されたメインビーム54の先端にフランジ56を設ける一方、左側板21に出力軸53を挿通可能な挿通穴21cが形成されるとともに、右側板21にメインビーム54を収容可能な切欠部21dが形成され、出力軸53に挿通された軸受および左方のメインビーム54のフランジ56が左側板21の外面および内面にそれぞれ配置されて該側板21に固定されるとともに、右方のメインビーム54のフランジ56が右側板21の外面に配置されて該側板21に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転刃を設けた回転軸を回転駆動させて草刈りや耕耘などの作業を行う農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フレールモア(草刈り機)、ロータリー(耕耘機)、ハロー(砕土機)などの農作業機が知られている。この農作業機は、トラクタに牽引されて地表面上を移動する際、トラクタのエンジンなどの動力源からの動力が伝達されて回転軸が回転し、回転軸とともに回転する回転刃によって雑草を刈り取ったり、土を耕したり、砕くものである。
【0003】
このような農作業機において、フレームに対して回転する回転軸の外周面には、軸心方向および周方向にそれぞれ間隔をおいて複数個の取付ブラケットが溶接されるとともに、各取付ブラケットに回転刃がそれぞれ回転自在に設けられている。そして、走行車の動力源を回転軸に伝達するため、農作業機には、トラクタのPTO軸と接続可能な入力軸および入力軸の回転が増減速して伝動される出力軸を備えた入力手段がフレームに設けられており、この出力軸の回転が動力伝達手段を介して回転軸に伝達されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−295915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した入力手段の入力軸および出力軸をそれぞれ軸支して増減速するミッションケースは、作業機本体の主フレームに固定された支持体に回動可能に固定され、出力軸が挿通された出力軸ケースの一端がミッションケースの左右一面に固定されるとともに、その他端が側端板に対して高さを調整自在に固定されており、構造が複雑になって部品点数が増加し、コストがかさむとともに、保守点検などに際して簡単に着脱することが困難であるという欠点がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、入力手段をフレームの左右の側板に対して精度よく、かつ、簡単に取り付けることのできる農作業機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、左右の側板および左右の側板に一体に固定されたカバーからなるフレームと、フレームの左右の側板にそれぞれ軸受を介して水平軸回りに回転自在に軸支された回転軸と、回転軸に軸心方向および周方向にそれぞれ間隔をおいて回転自在に軸支された複数個の回転刃と、フレームの左右の側板にわたって支持された入力手段と、入力手段に入力された動力を回転軸に伝達する動力伝達手段と、を備えた農作業機において、前記入力手段が、互いに噛み合う傘歯車が設けられたギヤボックスと、ギヤボックスに回転自在に軸支されて一方の傘歯車に一体に連結されるとともに、前方に延出された入力軸と、ギヤボックスに回転自在に軸支されて他方の傘歯車に一体に連結されるとともに、左右一方の側方に延出された出力軸と、先端にフランジが一体に設けられてギヤボックスの左右各側面にそれぞれ基端が一体に連結された一対のメインビームとから構成され、出力軸が一方のメインビーム内に挿通されるとともに、その外端縁を越えて外方に突出されて左右一方の側板に軸支され、また、出力軸が突出された側の一方のメインビームのフランジ外面と他方のメインビームのフランジ内面との間隔が、出力軸が軸支される側の側板の内面と他方の側板の外面との間隔に一致し、さらに、左右一方の側板に出力軸を挿通可能な挿通穴が形成される一方、左右他方の側板に他方のメインビームを収容可能な切欠部が形成されてなり、出力軸に挿通された軸受および一方のメインビームのフランジが左右一方の側板の外面および内面にそれぞれ配置されて該側板に固定されるとともに、他方のメインビームのフランジが左右他方の側板の外面に配置されて該側板に固定されることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、入力手段を支持し、その出力軸を左右一方の側板に形成された挿通穴に挿通し、出力軸が挿通された一方のメインビームの先端に設けられたフランジを左右一方の側板の内面側に配置するとともに、出力軸が挿通された一方のメインビームとは反対側の他方のメインビームを左右他方の側板に形成された切欠部に落とし込み、その先端に設けられたフランジを左右他方の側板の外面に配置する。そして、出力軸に軸受を挿通し、軸受を左右一方の側板の外面に配置し、左右一方の側板に一方のメインビームのフランジとともに固定する。また、左右他方の側板に他方のメインビームのフランジを固定する。
【0008】
この結果、入力手段を精度よく、かつ、簡単にフレームに取り付けることができるとともに、保守点検に際して簡単に取り外すことができる。
【0009】
本発明は、左右の側板および左右の側板に一体に固定されたカバーからなるフレームと、フレームの左右の側板にそれぞれ軸受を介して水平軸回りに回転自在に軸支された回転軸と、回転軸に軸心方向および周方向にそれぞれ間隔をおいて回転自在に軸支された複数個の回転刃と、フレームの左右の側板にわたって支持された入力手段と、入力手段に入力された動力を回転軸に伝達する動力伝達手段と、を備えた農作業機において、前記入力手段が、互いに噛み合う傘歯車が設けられたギヤボックスと、ギヤボックスに回転自在に軸支されて一方の傘歯車に一体に連結されるとともに、前方に延出された入力軸と、ギヤボックスに回転自在に軸支されて他方の傘歯車に一体に連結されるとともに、左右一方の側方に延出された出力軸と、先端にフランジが一体に設けられてギヤボックスの左右各側面にそれぞれ基端が一体に連結された一対のメインビームとから構成され、出力軸が一方のメインビーム内に挿通されるとともに、その外端縁を越えて外方に突出されて左右一方の側板に軸支され、また、左右のメインビームのフランジ内面間の間隔が、左右の側板の外面間の間隔に一致し、さらに、左右の側板にメインビームを収容可能な切欠部がそれぞれ形成されてなり、左右のメインビームの各フランジが左右の側板の外面に配置されて該側板にそれぞれ固定されることを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、入力手段を支持し、左右のメインビームに設けられた各フランジの内面を左右の側板の外面にそれぞれ接して配置するとともに、左右のメインビームを左右の側板にそれぞれ形成された切欠部に落とし込む。そして、出力軸に軸受を挿通し、軸受をフランジとともに左右一方の側板に固定するとともに、左右他方の側板に他方のメインビームのフランジを固定する。
【0011】
この結果、入力手段を精度よく、かつ、簡単にフレームに取り付けることができるとともに、保守点検に際して簡単に取り外すことができる。
【0012】
本発明において、前記左右各側板の内面に、その前端縁下端部から下端縁の略中間部にかけて略L字状のガイドが設けられると、作業時において、側板と地面との接触抵抗を減らすことができるとともに、地面に側板の前端下部が食い込むことを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入力手段をフレームの左右の側板に対して精度よく、かつ、簡単に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1乃至図3には、本発明の農作業機1の一実施形態が示されている。
【0016】
この農作業機1は、図示しないトラクタに着脱自在に連結され、トラクタの走行により牽引されて地表面上を移動し、雑草などの草刈り作業を行うフレールモアで例示されている。
【0017】
この農作業機1は、フレーム2と、フレーム2に水平軸回りに回転自在に軸支された回転軸3と、回転軸3に軸心方向および周方向にそれぞれ間隔をおいて回転自在に軸支された複数個の回転刃4と、フレーム2に支持された入力手段5と、入力手段5に入力された動力を回転軸3に伝達する動力伝達手段6と、から主要部が構成されている。
【0018】
フレーム2は、図4に詳細に示すように、左右(農作業機1の移動方向に向かって左、右をいう。)の側板21と、左右の側板21に一体に固定されたカバー22と、からなり、左右の側板21には、その下端部に回転軸3の回転シャフト32を挿入可能な挿入穴21aが形成されるとともに、挿入穴21aに連続して切欠部21bが下端縁にかけて形成されている。また、左右の側板21の内面には、その前端縁下端部から下端縁の略中間部にかけて丸棒やパイプあるいは鉄板などを略L字状に折曲してなるガイド23が設けられており、トラクタに牽引されて移動する際に、側板21の先端縁下部が地面に入り込まないように規制している。さらに、左側板21の上部には、入力手段5の出力軸53を挿通するための挿通穴21cが形成されるとともに、右側板21の上部には、入力手段5のメインビーム54を収容可能な切欠部21d(図5参照)が形成されている。
【0019】
一方、カバー22は、略コ字状の本体部221および該本体部221の移動方向前方となる一方の下端縁に連設されたL字状の屈曲部222からなり、開口部を下方に向けた状態で左右端縁が左右の側板21の内面に溶接されている。そして、カバー22の前後の各下端縁および左右の側板21の各下端縁には、ゴム板24がボルトナットを介して垂設されており、雑草あるいは小石などが外部に飛散することを防止している。また、カバー22は、移動方向前方に屈曲部222を配置して、回転刃4の先端から前端部までの間隔を大きくし、雑草などの取り込み性を向上させる一方、後端部を後方下部に向かって傾斜させて回転刃4の先端から後端部までの間隔を漸増させ、雑草などの排出性を向上させている。また、回転刃4の先端からカバー22の本体部221の後方隅角部までの間隔を大きくして、刈り取った雑草などが固まらないようにほぐすようにしている他、回転刃4の先端からカバー22の屈曲部222と本体部221との連設部までの間隔を小さくし、雑草などの裁断性を向上させている。
【0020】
なお、カバー22の屈曲部222の水平部分の内面には、ゴム板や鉄板などの緩衝板25が貼着されており、回転刃4がはね上げた小石などの異物を衝突させ、エネルギーを減衰させて下方にたたき落とすようにしている。
【0021】
回転軸3は、図6に示すように、左右の側板21の内面間隔よりも若干長さの短い回転パイプ31と、回転パイプ31の左右端部に円板321を介して一体に溶接された回転シャフト32と、からなり、回転シャフト32の先端部が左右の側板21に形成された挿入穴21aを通して外方に突出されている。そして、回転軸3を構成する回転パイプ31の左右各端縁部近傍の外周面には、周方向に設定間隔をおいて複数個の調整穴33aが形成されたリング板33が溶接され、このリング板33には、調整穴33aを通してバランスウエイト34がボルト35によって固定されている。この場合、バランスウエイト34は、左右各側板21の内面に向かって突出するように、リング板33に設けられており、しかも、リング板33に設けられた際、その先端面と左右各側板21の内面との間にわずかな隙間を形成するように長さが設定されている。したがって、回転軸3が回転するとき、バランスウエイト34が側板21の内面と接触することはない。
【0022】
ところで、回転軸3の回転シャフト32を左右各側板21に対してそれぞれ軸支するため、左右各側板21の外面には、軸受36が固定されている。具体的には、左右各側板21には、挿入穴21aの周囲に位置して、軸受36の連結穴に対応して設定間隔をおいて複数個の軸受連結穴(図示せず)が設けられるとともに、これらの軸受連結穴に対応して複数個の締結ナット373を設けたダストカバー37が左右各側板21の内面にそれぞれ配置されている。
【0023】
すなわち、ダストカバー37は、図7に示すように、円板部371および円板部371の外周縁から横方向に延出されたフランジ部372から形成され、円板部371に回転シャフト32を挿通可能な挿通穴37aが形成されるとともに、側板21の軸受連結穴に対応する連結穴37bが形成される一方、該連結穴37bに臨んでフランジ部372が延出された側の一面に複数個の締結ナット373が溶着されている。
【0024】
また、左右各側板21には、挿入穴21aの軸心から同一半径上に位置して被係合部としての複数個の位置決め穴21x(図8(a),(c)参照)が形成される一方、ダストカバー37の円板部371には、側板21の位置決め穴21xに対応して、係合部としての複数個の突出部37xがプレス加工によってフランジ部372が延出された側と反対の他面側に突出するように形成されており、側板21の位置決め穴21xにダストカバー37の突出部37xを係合させた際に、軸受36の連結穴、側板21の軸受連結穴、ダストカバー37の連結穴37bおよび締結ナット373の各軸心が一線上に位置するように設定されている。
【0025】
ここで、ダストカバー37のフランジ部372は、その内径が回転軸3の回転パイプ31の外径よりの若干大きく、かつ、その先端部が、回転軸3を左右の側板21間に配設した際に、回転パイプ31の端縁部に一部被さるように、その延出長さが設定されている。
【0026】
したがって、フレーム2の左右の側板21に回転軸3を回転自在に軸支するには、回転シャフト32にダストカバー37をそのフランジ部372が回転パイプ31の端縁に対向するように挿通穴37aを通して装着した後、ダストカバー37が側板21の内面側に位置するように、左右の側板21の切欠部21bを通して回転軸3の回転シャフト32を挿入し、挿入穴21aに達するまで差し込む。次いで、ダストカバー37を回転させて、その突出部37xを側板21の位置決め穴21xに係合させた後、回転シャフト32に軸受36を挿通し、その連結穴、側板21の軸受連結穴およびダストカバー37の連結穴37bを通してボルト38を差し込み、ダストカバー37に設けた締結ナット373にねじ込めば、回転軸3の回転シャフト32を軸受36によって回転自在に軸支して左右の側板21にわたって固定することができる。
【0027】
この際、ダストカバー37のフランジ部372は、回転パイプ31の端縁部に一部被さって、左右各側板21の内面と、回転パイプ31の左右各端縁との隙間を回転パイプ31の外周面側から覆うことができる。
【0028】
回転刃4は、前述した回転軸3の回転パイプ31の外周面に、その軸心方向および周方向にそれぞれ設定間隔をおいて溶接されたU字状の取付ブラケット41と、く字状に折曲されて各取付ブラケット41内に収容されるとともに、ボルト43およびナット44を介して回転自在に連結された一対の刃体42と、からなり、一対の刃体42は、先端がY字状を形成するように取り付けられている。
【0029】
入力手段5は、ギヤボックス51と、ギヤボックス51から前方に向けて突出された入力軸52と、ギヤボックス51から左側方に向けて突出された出力軸53と、ギヤボックス51の左右側面にそれぞれ一体に溶接されて左右方向に延出されたメインビーム54と、とからなり、出力軸53は、左方のメインビーム54内を挿通され、左側板21に設けた軸受55によって回転自在に軸支されている。
【0030】
ここで、ギヤボックス51には、詳細には図示しないが、軸受を介して回転自在に軸支されて互いに噛み合う一対の傘歯車が収容されており、各傘歯車には、入力軸52および出力軸53がそれぞれ一体に連結されている。
【0031】
また、入力手段5を構成する各メインビーム54の先端部には、フランジ56が一体に溶接されている。そして、左方のフランジ56の外面と右方のフランジ56の内面との間隔は、左側板21の内面と右側板21の外面との間隔に一致されている。したがって、図9に示すように、出力軸53の先端を左側板21の上端部に形成された挿通穴21cを通して外方に突出させるとともに、右方のメインビーム54を右側板21の切欠部21dに収容することにより、左方のフランジ56を左側板21の内面に、右方のフランジ56を右方の側板21の外面にそれぞれ接して配置することができる。そして、出力軸53に挿通した軸受55および左方のフランジ56を左側板21にボルトナットを介して連結するとともに、右方のフランジ56を右側板21にボルトナットを介して連結することにより、入力手段5をフレーム2に精度よく、しかも、簡単に取り付けることができ、また、保守点検に際して、左右の側板21とフランジ56を連結するボルトナットを緩めることにより、簡単に取り外すことができる。しかも、左右のメインビーム54を介して左右の側板21が連結されるため、フレーム2の剛性を向上させることができる。
【0032】
動力伝達手段6は、入力手段5の出力軸53の先端部に一体に固定された駆動プーリー61と、回転軸3の回転シャフト32の先端部に一体に固定された従動プーリー62と、これらの駆動プーリー61および従動プーリー62間に巻回されたVベルト63(図2参照)と、からなり、Vベルト63は、テンションローラー64を介して一定の張力が付与されている。
【0033】
なお、動力伝達手段6を構成する駆動プーリー61、従動プーリー62、Vベルト63およびテンションローラー64は、保護カバー65によって覆われている。
【0034】
また、フレーム2には、刈り取り高さ調整装置7が設けられている。この刈り取り高さ調整装置7は、フレーム2のカバー22に左右方向に間隔をおいてそれぞれ水平軸回りに揺動自在に軸支された揺動アーム71と、各揺動アーム71の先端に連結されたコラム72と、コラム72に回転自在に軸支された車輪73と、左右の揺動アーム71を連結する連結ビーム74と、入力手段5のギヤボックス51に設けたアッパーアーム75と、これらの連結ビーム74およびアッパーアーム75間に設けられたねじを利用した伸縮手段76と、から構成されている。したがって、伸縮手段76を回転操作することにより、伸縮手段76が伸長し、あるいは、縮小し、連結ビーム74を介して揺動アーム71が上下方向に揺動し、車輪73の接地位置に対して側板21に設けた回転軸3の高さ位置、すなわち、回転刃4の先端と地表面との間隔を調整することができる。具体的には、伸縮手段76を伸長させれば、回転軸3を相対的に上方に移動させて回転刃4の先端と地表面との間隔を拡大することができ、逆に縮小させれば、回転軸3を相対的に下方に移動させて回転刃4の先端と地表面との間隔を縮小することができる。
【0035】
次に、このように構成された農作業機1の作動について説明する。
【0036】
なお、組み立てられた農作業機1においては、予め設計されたリング板33の調整穴33aにボルト35を介してバランスウエイト34が取り付けられているが、最終的にバランスウエイト34の取付位置は修正されるようになっている。具体的には、組み立てられた農作業機1は、最終検査において、回転軸3を回転させ、回転軸3の振動を把握した後、その振動を抑制する方向にバランスウエイト34の取付位置を移動させ、調整された調整穴33aを通してバランスウエイト34が取り付けられるようになっている。この際、詳細には図示しないが、バランスウエイト34の重量が不足するときには、薄板状の1枚または複数枚の調整スペーサがバランスウエイト34とリング板33との間に配置されてボルト35により共締めされる。
【0037】
一方、草刈り作業を行うときには、まず、図示しないトラクタの三点リンク機構と農作業機1の三点連結部(トップリンクピン26(図2参照)および一対のロアリンクピン27(図3参照))とを連結し、さらに、トラクタのPTO軸と農作業機1の入力軸52とを連結することにより、トラクタに農作業機1を装着する。この後、トラクタを前進走行させれば、農作業機1も牽引されて地表面上を移動する。同時に、トラクタのPTO軸を回転駆動させれば、農作業機1の入力軸52が回転駆動し、トラクタの動力が農作業機1に伝達される。すなわち、入力手段5の入力軸52が回転駆動すると、出力軸53が回転駆動し、動力伝達手段6の駆動プーリー61、Vベルト63および従動プーリー62を介して回転軸3の回転シャフト32に動力を伝達して回転駆動させる。回転軸3の回転シャフト32が回転駆動すれば、回転シャフト32と一体の回転パイプ31が回転駆動し、回転パイプ31に取付ブラケット41を介して軸支された一対の刃体42も回転することにより、回転する刃体42によって雑草などを刈り取ることができる。
【0038】
この場合、回転軸3の回転数は、1分間当たり約1500〜2000回転に設定されるとともに、その回転方向は、図4において反時計回り方向に設定されており、所謂アップカットに設定されている。したがって、刈り取られた雑草などは、移動方向の前方に持ち上げられ、カバー22の本体部221および屈曲部222の連設部との幅の狭い部分で刃体42によって裁断された後、カバー22の内面に沿って後方に移動し、間隔の広い後部隅角部でほぐされて落下する。
【0039】
また、刃体42が小石などの異物と衝突した際には、異物は、回転する刃体42の円周と接線をなす方向にはね上げられて、カバー22の前方側内面に設けられた緩衝板25、あるいは、カバー22の前後の各下端縁および左右の側板21の各下端縁から垂設されたゴム板24に衝突し、外部に飛散することが防止される。その際、取付ブラケット41に対して刃体42は回転自在に軸支されていることから、刃体42が小石などの異物に衝突したとしても、その衝撃を取付ブラケット41回りに回動して回避することができる。
【0040】
一方、刈り取った雑草などがカバー22の内面に沿って前方から後方に向かって移動する際、回転軸3の周囲、特に、回転パイプ31の端縁部に巻き付こうとした場合には、回転パイプ31の外周面よりも上方に離れた位置において、バランスウエイト34が側板21の内面との間隔を可及的に小さくしてリング板33に固定されていることにより、側板21と回転パイプ31の端縁部に固定されたリング板33との隙間は、回転軸3の回転に連動してバランスウエイト34が回転して塞いでおり、刈り取った雑草などが、回転パイプ31の端縁部に巻き付き、さらには、側板21と回転パイプ31の端縁との隙間に入り込むことを防止することができる。
【0041】
また、雑草などの刈り取りに伴って泥土をはね上げた際において、泥土が側板21と回転パイプ31の端縁との隙間を通して侵入し、さらには、軸受36に入り込もうとした場合には、回転パイプ31の外周面よりも上方に離れた位置において、ダストカバー37のフランジ部372が側板21と回転パイプ31の端縁との隙間を全周にわたって覆っていることにより、泥土が入り込むことを防止することができる。
【0042】
このようにして雑草などの刈り取り作業を一定時間行うことにより、回転軸3の外周面に刈り取った雑草などが巻き付いて刈り取り性能が低下した際には、巻き付いた雑草などを除去する必要がある。具体的には、保護カバー65を取り外してテンションローラー64による付勢を解除してVベルト63を取り外すとともに、回転シャフト32から従動プーリー62を取り外した後、軸受36を固定するボルト38を緩めて抜き取るとともに、軸受36を回転シャフト32から抜き取る。次いで、ダストカバー37を側板21の位置決め穴21xから押し出してその内面から離脱させることにより、回転軸3を側板21の切欠部21bを通して下方に落とし込み、外方に取り出すことができる。回転軸3を取り出せば、その回転パイプ31の外周面に巻き付いた雑草などを容易に除去することができる。
【0043】
回転軸3に巻き付いた雑草などを除去すれば、前述とは逆に操作して回転軸3を側板21に取り付ければよい。具体的には、回転シャフト32に装着されているダストカバー37が側板21の内面側に位置するように、側板21の切欠部21bを通して回転軸3の回転シャフト32を差し込み、そのまま上方に持ち上げた後、ダストカバー37を回転させて、その突出部37xを側板21の位置決め穴21xに係合させる。この状態で、回転シャフト32に軸受36を装着し、その連結穴、側板21の軸受連結穴、ダストカバー37の連結穴37bを通してボルト38を差し込み、締結ナット373にねじ込めば、回転軸3を側板21に固定することができる。次いで、回転シャフト32に従動プーリー62を固定するとともに、駆動プーリー61と従動プーリー62間にVベルト63を巻回した後、テンションローラー64の付勢力をVベルト63に作用させて緊張させ、保護カバー65を取り付けることによって再び草刈り作業を行うことができる。
【0044】
ところで、前述した実施形態においては、左側板21の上端部に挿通穴21cを形成し、入力手段5を構成する各メインビーム54の先端部に一体に設けられたフランジ56のうち、左方のフランジ56を左側板21の内面に接して配置し、ボルトナットを介して連結する場合を例示したが、図10に示すように、右側板21の上端部に形成された切欠部21dと同様の切欠部21dを左側板21に挿通穴21cに代えて形成し、入力手段5の左方のメインビーム54を収容するようにしてもよい。この場合、左方のフランジ56は左側板21の外面に接して配置される。すなわち、左方のフランジ56の内面と右方のフランジ56の内面との間隔は、左側板21の外面と右側板21の外面との間隔に一致されている。
【0045】
したがって、左方のメインビーム54を左側板21の切欠部21dに収容するとともに、右方のメインビーム54を右側板21の切欠部21dに収容することにより、左方のフランジ56を左側板21の外面に、右方のフランジ56を右方の側板21の外面にそれぞれ接して配置することができる。そして、この実施形態においても、出力軸53に挿通した軸受55および左方のフランジ56を左側板21にボルトナットを介して連結するとともに、右方のフランジ56を右側板21にボルトナットを介して連結することにより、入力手段5をフレーム2に精度よく、しかも、簡単に取り付けることができ、また、保守点検に際して、左右の側板21とフランジ56を連結するボルトナットを緩めることにより、簡単に取り外すことができる。しかも、左右のメインビーム54を介して左右の側板21が連結されるため、フレーム2の剛性を向上させることができる。
【0046】
なお、農作業機1として、雑草などの刈り取りを行うフレールモアを例示したが、回転刃を変更することにより、ロータリーやハローなどにも適用することができるとともに、その回転刃の重量バランスの調整に援用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の農作業機の一実施形態を示す背面図である。
【図2】図1の農作業機の左側面図である。
【図3】図1の農作業機の平面図である。
【図4】図1のA−A線に沿って一部省略して示す断面図である。
【図5】右側板と入力手段との連結状態を示す右側面図、右側面図のB−B線に沿って示す断面図である。
【図6】リング板およびバランスウエイトの関係を示す正面図、正面図のC−C線に沿って示す断面図である。
【図7】ダストカバーの正面図、正面図のD−D線に沿って示す端面図である。
【図8】リング板およびバランスウエイトとともに、側板に設けられた軸受およびダストカバーの関係を示す側面図、一部省略して示すその断面図、側面図のE−E線に沿って一部省略して示す断面図である。
【図9】フレームに対する入力手段の取付要領を模式的に説明する分解斜視図である。
【図10】フレームに対する入力手段の他の取付要領を模式的に説明する分解斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 農作業機
2 フレーム
21 側板
22 カバー
3 回転軸
31 回転パイプ
32 回転シャフト
33 リング板
34 バランスウエイト
4 回転刃
41 取付ブラケット
42 刃体
5 入力手段
51 入力軸
52 出力軸
53 メインビーム
6 動力伝達手段
61,62 プーリー
63 Vベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側板および左右の側板に一体に固定されたカバーからなるフレームと、フレームの左右の側板にそれぞれ軸受を介して水平軸回りに回転自在に軸支された回転軸と、回転軸に軸心方向および周方向にそれぞれ間隔をおいて回転自在に軸支された複数個の回転刃と、フレームの左右の側板にわたって支持された入力手段と、入力手段に入力された動力を回転軸に伝達する動力伝達手段と、を備えた農作業機において、前記入力手段が、互いに噛み合う傘歯車が設けられたギヤボックスと、ギヤボックスに回転自在に軸支されて一方の傘歯車に一体に連結されるとともに、前方に延出された入力軸と、ギヤボックスに回転自在に軸支されて他方の傘歯車に一体に連結されるとともに、左右一方の側方に延出された出力軸と、先端にフランジが一体に設けられてギヤボックスの左右各側面にそれぞれ基端が一体に連結された一対のメインビームとから構成され、出力軸が一方のメインビーム内に挿通されるとともに、その外端縁を越えて外方に突出されて左右一方の側板に軸支され、また、出力軸が突出された側の一方のメインビームのフランジ外面と他方のメインビームのフランジ内面との間隔が、出力軸が軸支される側の側板の内面と他方の側板の外面との間隔に一致し、さらに、左右一方の側板に出力軸を挿通可能な挿通穴が形成される一方、左右他方の側板に他方のメインビームを収容可能な切欠部が形成されてなり、出力軸に挿通された軸受および一方のメインビームのフランジが左右一方の側板の外面および内面にそれぞれ配置されて該側板に固定されるとともに、他方のメインビームのフランジが左右他方の側板の外面に配置されて該側板に固定されることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
左右の側板および左右の側板に一体に固定されたカバーからなるフレームと、フレームの左右の側板にそれぞれ軸受を介して水平軸回りに回転自在に軸支された回転軸と、回転軸に軸心方向および周方向にそれぞれ間隔をおいて回転自在に軸支された複数個の回転刃と、フレームの左右の側板にわたって支持された入力手段と、入力手段に入力された動力を回転軸に伝達する動力伝達手段と、を備えた農作業機において、前記入力手段が、互いに噛み合う傘歯車が設けられたギヤボックスと、ギヤボックスに回転自在に軸支されて一方の傘歯車に一体に連結されるとともに、前方に延出された入力軸と、ギヤボックスに回転自在に軸支されて他方の傘歯車に一体に連結されるとともに、左右一方の側方に延出された出力軸と、先端にフランジが一体に設けられてギヤボックスの左右各側面にそれぞれ基端が一体に連結された一対のメインビームとから構成され、出力軸が一方のメインビーム内に挿通されるとともに、その外端縁を越えて外方に突出されて左右一方の側板に軸支され、また、左右のメインビームのフランジ内面間の間隔が、左右の側板の外面間の間隔に一致し、さらに、左右の側板にメインビームを収容可能な切欠部がそれぞれ形成されてなり、左右のメインビームの各フランジが左右の側板の外面に配置されて該側板にそれぞれ固定されることを特徴とする農作業機。
【請求項3】
前記左右各側板の内面に、その前端縁下端部から下端縁の略中間部にかけて略L字状のガイドが設けられることを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−289107(P2007−289107A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122365(P2006−122365)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【特許番号】特許第3836870号(P3836870)
【特許公報発行日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(595152715)コムターズ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】