説明

農作業機

【課題】走行機体の後部に装着し、作業時に耕耘体に障害物などにより衝撃的な負荷増大があった場合でも作業機の破損を防止でき安定した作業が行える農作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】耕耘体13は、本体フレーム部に対して回動移動する機構であり、本体フレーム部と耕耘体13の間には、回動移動により耕耘体13が被作業部から離れる方向に移動すると縮む方向に力が作用する弾性減衰体1が装着され、弾性減衰体1は、弾性体2と減衰体3とを有し、耕耘体13から弾性減衰体1にかかる力が一定以上のである場合に弾性体2の力に抗して縮むことを特徴とする農作業機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関し、特に、走行機体の後部に装着し、作業時に耕耘体に障害物などにより衝撃的な負荷増大があった場合でも作業機の破損を防止でき安定した作業が行える農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクター等の走行機体の後部に装着する農作業機は、農作業機本体に対し耕耘体は一体に支持されていたり、位置調整が可能となるように支持されていたりする。
【0003】
一方、特許文献1には、センサーによりロータリー作業体を自動的に深浅調節する耕耘装置が記載されている。
【特許文献1】特開平11−32509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、農作業機の作業時において、耕耘体に障害物などにより衝撃的な負荷増大があった場合には、その負荷は作業機全体の重量で受け止めることになるか、若しくは、トラクターの動力が直接耕耘体にかかることになる。これらは、農作業機の破損の原因となっていた。
【0005】
また、特許文献1に記載の発明は、条件に応じた耕耘作業のための深浅調節であって、障害物などによる破損の防止を目的としているものではない。
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明は、走行機体の後部に装着し、作業時に耕耘体に障害物などにより衝撃的な負荷増大があった場合でも作業機の破損を防止でき安定した作業が行える農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の農作業機は、走行機体の後部に装着され、前記走行機体に装着される本体フレーム部と、前記走行機体からの動力により耕耘作業を行う耕耘体とを有する農作業機において、前記耕耘体は、前記本体フレーム部に対して上下移動又は回動移動する機構であり、前記本体フレーム部と前記耕耘体の間には、前記上下移動又は前記回動移動により前記耕耘体が被作業面から離れる方向に移動すると弾性減衰体に対して縮む方向に力が作用するように弾性減衰体が装着され、前記弾性減衰体は、弾性体と減衰体とを有し、前記耕耘体から当該弾性減衰体にかかる力が一定以上である場合に前記弾性体の力に抗して縮むことを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の農作業機は、前記弾性減衰体は、前記耕耘体の土に対する通常の作業において前記耕耘体から当該弾性減衰体にかかる力では縮まないことを特徴とする。さらに本発明の農作業機は、前記弾性減衰体は、長さの調節が可能な調節体に取り付けられ、当該調節体の長さの調節により前記耕耘体の前記本体フレームに対する位置関係を調節できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、走行機体の後部に装着する農作業機において、作業時に耕耘体に障害物などにより衝撃的な負荷増大があった場合でも作業機の破損を防止でき安定した作業が行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明における弾性減衰体の一例を示す図である。第1取付部7と第2取付部8の間には、減衰体であるダンパー3が取り付けられている。そして、第1取付部7側には、第1止め板5が装着され、第2取付部8側には、第2止め板6が装着されている。これら、第1止め板5と第2止め板6の間には、弾性体であるバネ2が取り付けられている。これにより、バネ2の内側にダンパー3を備える構成となっている。
【0012】
ダンパー3のロッド4は弾性減衰体1を組み付けた状態で何らかの手段で一定以上の伸びが規制される。バネ2は、ロッド4が規制された最大伸びの状態においても一定以上の力で第1止め板5と第2止め板6を弾性減衰体1が伸びる方向に押している。すなわち、バネ2の自然長は、ロッド4が規制された最大伸びの状態における、第1止め板5と第2止め板6の間の長さよりも長いことになる。
【0013】
そして、第1取付部7と第2取付部8にかかる圧縮力が、バネ2の伸びる力よりも大きくなると、弾性減衰体1は縮んでいく。このとき、ダンパー3が作用し、例え大きな力であっても、一気には縮まない。また、弾性減衰体1が圧縮された状態から、力が解放された場合、弾性減衰体1はバネ2の力により伸びていくが、ダンパー3の作用により、振動が生じることを軽減又は防止することができる。
【0014】
図1の構成以外に、ダンパー3をバネ2の内側でなく直列に備える構成とすることも可能である。また、バネ2をガススプリングにすることも可能であり、この場合は、ダンパー3と直列の構成となる。なお、図1のバネ2の内側にダンパー3を備える構成は、弾性減衰体1の長さを短くでき、省スペース化を図れる効果を有する。
【実施例1】
【0015】
図2〜4に、本発明の実施例1のロータリーの各図を示す。ロータリー10は、ヒッチ取付板25に取付けられるヒッチなどを介してトラクターの後部に取付けられる。そして、トラクターからの動力は、入力軸(ロータリー)11から、ミッションケース24や駆動パイプ20、チェーンケース12の内部に備えられた、ベベルギアや軸、チェーンなどにより耕耘部13に伝えられる。そして、耕耘部13が回転することにより、耕耘作業が行える構成である。耕耘部13には、耕耘爪などが装着されている。また、ゲージ輪18はロータリー10を降ろして作業するとき、耕耘の深さを決めるためのものである。
【0016】
チェーンケース12は、回動中心17を中心として、駆動パイプ20や補強パイプ21、ミッションケース24などの本体フレーム部に対して回動可能に装着されている。ブラケット19も、回動中心17を中心として、本体フレーム部に対して回動可能に装着されている。そして、チェーンケース12と、ブラケット19の間には、耕耘部13、耕耘部カバー14、均平板15が取付けてある。これにより、回動中心17を中心としてチェーンケース12が、回動すると耕耘部13や耕耘部カバー14、均平板15も同じく回動する構成となっている。
【0017】
一方、駆動パイプ20と、補強パイプ21には、取付体16がそれぞれ装着されている。取付体16と耕耘部カバー14の間には、両端(第1取付部7と第2取付部8)が回動可能な支点(第1支点22、第2支点23)により弾性減衰体1が取り付けられている。これらの支点は、回動中心17の回動軸と平行な回動軸を有する回動可能な支点である。なお、弾性減衰体1は、図2において2箇所で取り付けされているが、この数は2つに限定されるものではない。
【0018】
図3には、通常作業時のロータリー10が示されている。耕耘部13は、地面31より下の土を耕耘し、作業を行う。この状態において、弾性減衰体1は伸びた状態であり、通常の土に対する作業において、弾性減衰体1が縮むことはない。これは、バネ(弾性体)2の力によるものである。
【0019】
図4には、ロータリー10の耕耘部13が障害物30に当った場合の例が示されている。このとき、耕耘部13は、障害物30に当った衝撃により、回動中心17を中心として図の矢印Aの方向に回動しようとする。その力は、弾性減衰体1に伝わり、弾性減衰体1は、バネ(弾性体)2の力に抗して縮む。このことにより、耕耘部13は、障害物30から回避でき、その衝撃力を抑えることができ、ロータリー10の破損を防止できる。一方、弾性減衰体1のダンパー(減衰体)3の作用により、耕耘部13が、障害物30を通過したあとに余分な振動を抑制でき、安定した作業が行える。
【実施例2】
【0020】
図5〜7に、本発明の実施例2の畦塗り機の各図を示す。畦塗り機32は、ヒッチ取付部51に取付けられるヒッチなどを介してトラクターの後部に取付けられる。そして、トラクターからの動力は、入力軸(畦塗り機)49から、ジョイント50を介して、ミッションケース部53やチェーンケース部54、第1フレームパイプ47、第2フレームパイプ48、耕耘体チェーンケース37の内部に備えられた、ベベルギアや軸、チェーンなどにより耕耘体35とディスク36に伝えられる。畦塗り機32は、耕耘体チェーンケース37の先に備えられる耕耘体35により、かき出した旧畦の土をディスク36により畦形状に成形する構成である。
【0021】
耕耘体チェーンケース37は、回動中心38を中心として、装着部52やミッションケース部53、第1フレームパイプ47、第2フレームパイプ48などの本体フレーム部に対して回動可能に装着されている。そして、耕耘体カバー46は、耕耘体チェーンケース37に装着されており、回動中心38を中心として耕耘体チェーンケース37が回動すると、耕耘体35や耕耘体カバー46も同じく回動する構成となっている。
【0022】
一方、第1フレームパイプ47には、調節体取付フレーム40が装着されている。調節体取付フレーム40には、第1の支点39を介し、調節体41が取り付けられている。そして、調節体41の先の取付部44には、弾性減衰体1の第1取付部7が固定されている。さらに、弾性減衰体1の先端の第2取付部8は、耕耘体チェーンケース37に有する第2の支点45に取り付けされている。上記の第1の支点39と第2の支点45は、回動中心38の回動軸と平行な回動軸を有する回動可能な支点である。
【0023】
また、調節体41は、ねじにより伸縮する構成であり、ハンドル42を回転させると、調節ロッド43が伸び縮みし、調節体41を伸縮させることができる。これにより、耕耘体35の耕耘深さを調節でき、ディスク36へかき出す土の量を調節できる。
【0024】
図6には、通常作業時の畦塗り機32が示されている。耕耘体35は、地面31より下の土を耕耘し、作業を行う。この状態において、弾性減衰体1は伸びた状態であり、通常の土に対する作業において、弾性減衰体1が縮むことはない。これは、バネ(弾性体)2の力によるものである。
【0025】
図7には、畦塗り機32の耕耘体35が障害物30に当った場合の例が示されている。このとき、耕耘体35は、障害物30に当った衝撃により、回動中心38を中心として図の矢印Bの方向に回動しようとする。その力は、弾性減衰体1に伝わり、弾性減衰体1は、バネ(弾性体)2の力に抗して縮む。このことにより、耕耘体35は、矢印Bの方向に回動し、障害物30から回避でき、その衝撃力を抑えることができ、畦塗り機32の破損を防止できる。一方、弾性減衰体1のダンパー(減衰体)3の作用により、耕耘体35が、障害物30を通過したあとに余分な振動を抑制でき、安定した作業が行える。
【0026】
以上、実施例1や実施例2のように、トラクターなどの走行機体の後部に装着する農作業機において、走行機体に装着される本体フレーム部に対して回動可能な耕耘体(耕耘部)が持ち上がる(耕耘体が被作業面から離れる方向に移動する)とき、弾性減衰体1が縮むようになる位置に弾性減衰体1を装着すれば、障害物などにより過負荷が耕耘体にかかったとき、それを回避することが可能となる。また、通常の作業時において、作業時の力で弾性減衰体1が容易に縮み、作業ができなくならないように、弾性減衰体1のバネ(弾性体)2の伸びる力(付勢力)が伸びの状態でかかるように設定しておく。実施例1と2では、耕耘部がチェーンケースの回動中心を中心として回動する構成であった。これにより、簡便な構成で本発明を実施できるが、この他に、耕耘部が上下動する構成であり、かつ、耕耘体が持ち上がる(耕耘体が被作業面から離れる方向に移動する)と弾性減衰体1が縮むようになる位置に弾性減衰体1を装着する構成であれば本発明を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明における弾性減衰体の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1のロータリーの平面図である。
【図3】本発明の実施例1のロータリーの第1の側面図である。
【図4】本発明の実施例1のロータリーの第2の側面図である。
【図5】本発明の実施例2の畦塗り機の平面図である。
【図6】本発明の実施例2の畦塗り機の第1の側面図である。
【図7】本発明の実施例2の畦塗り機の第2の側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 弾性減衰体
2 バネ(弾性体)
3 ダンパー(減衰体)
4 ロッド
5 第1止め板
6 第2止め板
7 第1取付部
8 第2取付部
10 ロータリー
12 チェーンケース
13 耕耘部
16 取付体
30 障害物
32 畦塗り機
35 耕耘体
37 耕耘体チェーンケース
40 調節体取付フレーム
41 調節体
44 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に装着され、前記走行機体に装着される本体フレーム部と、前記走行機体からの動力により作業を行う耕耘体とを有する農作業機において、
前記耕耘体は、前記本体フレーム部に対して上下移動又は回動移動する機構であり、前記本体フレーム部と前記耕耘体の間には、前記上下移動又は前記回動移動により前記耕耘体が被作業面から離れる方向に移動すると弾性減衰体に対して縮む方向に力が作用するように弾性減衰体が装着され、
前記弾性減衰体は、弾性体と減衰体とを有し、前記耕耘体から当該弾性減衰体にかかる力が一定以上である場合に前記弾性体の力に抗して縮むことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機において、前記弾性減衰体は、前記耕耘体の土に対する通常の作業において前記耕耘体から当該弾性減衰体にかかる力では縮まないことを特徴とする農作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機において、前記弾性減衰体は、長さの調節が可能な調節体に取り付けられ、当該調節体の長さの調節により前記耕耘体の前記本体フレームに対する位置関係を調節できることを特徴とする農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−301786(P2008−301786A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153701(P2007−153701)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】