説明

農作業機

【課題】構成の簡素化を図ることができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、凹凸部35を有する駆動側歯車36と、駆動側歯車36の凹凸部35と噛合する凹凸部37を有する従動側歯車38を備える。駆動側歯車36には、係合受凸部を有する係合受体43を固設する。従動側歯車38には、係合受凸部と係合する係合面部を有する係合体44を固設する。駆動側歯車36の回動に基づく従動側歯車38の回動によって係合面部が係合受凸部と対向した状態になる。この状態時には、係合面部と係合受凸部との係合により、従動側歯車38の回動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成の簡素化を図ることができる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、走行車であるトラクタの後部に連結される中央の本体部と、本体部に回動可能に設けられ回動により折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられる左右の折畳作業部とを備えている。
【0004】
また、農作業機は、折畳作業部を展開作業状態にロックする展開ロック機構を備え、この展開ロック機構は、本体部の外端部下側に軸を介して回動可能に取り付けられた展開用ロック用フックと、本体部の外端部上側に軸を介して回動可能に取り付けられたアームと、下端部が展開用ロック用フックに回動可能に連結され上端部がアームに回動可能に連結された連結リンクとを有している。
【特許文献1】特開2004−208584号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、近年では、このような回動可能な作業部を備えた農作業機において、構成の簡素化を図ることが要求されている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、構成の簡素化を図ることができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農作業機は、凹凸部を有する駆動側歯車と、この駆動側歯車の凹凸部と噛合する凹凸部を有する従動側歯車と、前記駆動側歯車に設けられ、係合受部を有する係合受体と、前記従動側歯車に設けられ、前記係合受部と係合する係合部を有する係合体とを備え、前記駆動側歯車の回動に基づく前記従動側歯車の回動によって前記係合部が前記係合受部と対向した状態になり、この状態時に前記係合部が前記係合受部と係合して前記従動側歯車の回動が規制されるものである。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、係合体の係合部は、係合受体の係合受部の回動軌跡に沿った形状に形成されているものである。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、係合体の係合部が係合受体の係合受部と対向した状態時には、駆動側歯車の凹凸部と従動側歯車の凹凸部との噛合が解除されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動側歯車の回動に基づく従動側歯車の回動によって係合体の係合部が係合受体の係合受部と対向した状態になり、この状態時に係合部が係合受部と係合して従動側歯車の回動が規制される構成であるから、例えば従来必要であった複雑なロック機構等が不要となり、構成の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結されトラクタの走行により圃場を前方に移動しながら代掻き作業等をする3分割折畳式の代掻装置である。
【0013】
農作業機1は、図1に示されるように、トラクタの後部の3点リンク(作業機昇降支持装置)に連結され、トラクタからの動力によって耕耘整地作業をする左右方向長手状の本体部である中央作業部2を備えている。また、農作業機1は、中央作業部2の左右方向両端部に回動支点である前後方向の折畳用軸4を中心として上下方向に回動可能に設けられ、その回動により折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換えられ、展開作業状態には中央作業部2からの動力によって耕耘整地作業をする左右方向長手状の左右の折畳作業部である延長作業部3とを備えている。
【0014】
両延長作業部3は左右対称の構成とされ、各延長作業部3は折畳用軸4を中心とする一方向への所定角度、例えば略180度回動により中央作業部2の外側方に位置する展開作業状態になり、折畳用軸4を中心とする他方向への所定角度、例えば略180度回動により中央作業部2の上方に位置する折畳非作業状態になる。
【0015】
中央作業部2は、トラクタの後部の3点リンクに連結される左右方向長手状の機体6と、機体6に回転可能に設けられトラクタからの動力によって所定方向に回転して耕耘作業をする耕耘体7と、機体6の後端部に上下回動可能に設けられ耕耘体7の後方で整地作業をする整地体8とを有している。
【0016】
機体6は、左右方向中央部にギアボックス(図示せず)を有し、このギアボックスには入力軸が回転可能に設けられている。入力軸はトラクタのPTO軸にユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続される。
【0017】
耕耘体7は、機体6の左右両側部にて回転可能に支持され入力軸に接続した伝動手段側から動力を受けて駆動回転する左右方向の耕耘軸である駆動回転軸13を有し、この駆動回転軸13には複数の耕耘爪(図示せず)が取り付けられている。また、整地体8は、第1整地板(均平板)16およびこの第1整地板16に上下回動可能に連結された第2整地板(レーキ)17等にて構成されている。
【0018】
また、延長作業部3は、中央作業部2の機体6の左右方向両端部に折畳用軸4を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた延長機体21と、延長機体21に回転可能に設けられ中央作業部2の耕耘体7からの動力によって所定方向に回転して耕耘作業をする延長耕耘体22と、延長機体21の後端部に上下回動可能に設けられ延長耕耘体22の後方で整地作業をする延長整地体23とを有している。
【0019】
延長耕耘体22は、延長機体21の左右両側部にて回転可能に支持され耕耘体7の駆動回転軸13からクラッチ爪19,20を介して動力を受けて従動回転する左右方向の耕耘軸である従動回転軸26を有し、この従動回転軸26には複数の耕耘爪(図示せず)が取り付けられている。また、延長整地体23は、第1整地板(均平板)28およびこの第1整地板28に上下回動可能に連結された第2整地板(レーキ)29等にて構成されている。
【0020】
さらに、農作業機1は、延長作業部3を折畳用軸4を中心として中央作業部2に対して上下方向に回動させる左右の開閉装置である回動駆動手段31を備えている。
【0021】
回動駆動手段31は、図2にも示すように、伸縮可能な駆動部であるシリンダ32と、このシリンダ32の伸縮に応じて作動して延長作業部3を中央作業部2に対して回動させる歯車部33とにて構成されている。
【0022】
歯車部33は、円弧状の凹凸部35を外周部に有する略半円板状の回動可能な駆動側歯車36と、この駆動側歯車36の凹凸部35と噛合する円弧状の凹凸部37を外周部に有し径寸法が駆動側歯車36の径寸法より小さい略半円板状の回動可能な従動側歯車38とを備えている。
【0023】
なお、駆動側歯車36の凹凸部35は、円板部39の外周部に突設されその円板部39の周方向に等間隔をおいて並ぶ複数の歯40にて構成されている。同様に、従動側歯車38の凹凸部37は、円板部41の外周部に突設されその円板部41の周方向に等間隔をおいて並ぶ複数の歯42にて構成されている。
【0024】
駆動側歯車36は中央作業部2の機体6の外端部のフレーム部6aにて回動支点である回動中心軸線X1を中心として回動可能に軸36aを介して支持され、従動側歯車38はフレーム部6aにて回動支点である回動中心軸線X2を中心として回動可能に軸38aを介して支持されている。また、従動側歯車38は延長作業部3の延長機体21の内端部に固着されており、これら従動側歯車38と延長作業部3とは互いに一体となって回動中心軸線X2を中心つまり折畳用軸4を中心として回動する。
【0025】
また、歯車部33は、駆動側歯車36の一面側に固設された係合受体43と、従動側歯車38の一面側に固設され係合受体43と当接係合する係合体44とを備えている。係合受体43は駆動側歯車36の円弧状の凹凸部35の一端側に設けられ、係合体44は従動側歯車38の円弧状の凹凸部37の一端側に設けられている。
【0026】
係合受体43は、正面視略コ字状をなすもので、一方側の先端部に先細状の係合受部である係合受凸部45を有している。係合受凸部45は、駆動側歯車36の凹凸部35より駆動側歯車36の径方向外方に位置する。また、係合受凸部45は、凹凸部35を構成する複数の歯40のうちの係合受体43側の端にある1つの歯40と対向して位置する。
【0027】
係合体44は、凹部50を有する正面視略L字状をなすもので、係合受凸部45と係合する係合部である係合面部46を先端部に有している。係合面部46は、係合受体43の係合受凸部45の先端の回動軌跡に沿った形状である円弧面状に形成されている。
【0028】
シリンダ32は、シリンダ本体51と、このシリンダ本体51内に対して出入りするロッド52とを備えている。シリンダ本体51の基端部は機体6の連結部6bに回動可能に連結され、ロッド52の先端部は駆動側歯車36に固着されたシリンダ取付板等からなる連結体53に回動可能に連結されている。
【0029】
そして、シリンダ32が縮むと、歯車部33の両平歯車である駆動側歯車36および従動側歯車38が互いに異なる方向に回動し、この回動により延長作業部3が中央作業部2の被当接部に当接するまで一方向である展開方向に回動して展開作業状態になる。
【0030】
この際、駆動側歯車36の回動に基づく従動側歯車38の回動によって係合面部46が係合受凸部45と近接対向した状態になり、この状態時である延長作業部3の展開作業状態時において、延長作業部3に何らかの原因により上向きの外力aが作用した場合には、係合面部46が係合受凸部45と当接係合して従動側歯車38の回動つまり延長作業部3の折畳方向への回動が規制され、延長作業部3の展開作業状態が維持される。
【0031】
また逆に、シリンダ32が伸びると、駆動側歯車36および従動側歯車38が互いに異なる方向に回動し、この回動により延長作業部3が中央作業部2の被当接部に当接するまで他方向である折畳方向に回動して折畳作業状態になる。
【0032】
次に、上記農作業機1の作用等を説明する。
【0033】
図3は延長作業部3の展開作業状態を示し、この状態では、係合受体43の係合受凸部45と係合体44の係合面部46とが互いに近接して対向した状態になっている。すなわち例えば係合受凸部45と係合面部46とは若干の隙間を介して近接対向している。なお係合受凸部45と係合面部46とが隙間なく近接対向してもよい。また、この状態では、駆動側歯車36の凹凸部35と従動側歯車38の凹凸部37との噛合が解除されており、凹凸部35と凹凸部37とが離反している。このとき、延長作業部3に外力が加わり、延長作業部3が折畳方向に回動しようとしても、係合面部46が係合受凸部45に当接係合して従動側歯車38の回動が規制されるため、延長作業部3は折畳方向へ回動せず、展開作業状態のままである。
【0034】
そして、この図3に示す状態で、シリンダ32が伸びると、図4に示すように、まず駆動側歯車36のみが回動し、係合受凸部45が凹部50に当接係合すると同時に、駆動側歯車36の凹凸部35と従動側歯車38の凹凸部37とが噛合し、その結果、従動側歯車38および延長作業部3が回動を開始する。すなわち、延長作業部3の回動開始時には、係合受凸部45と凹部50との当接係合および駆動側歯車36の凹凸部35と従動側歯車38の凹凸部3との噛合の両方によって、延長作業部3が持ち上げられる。
【0035】
図5に示すように、延長作業部3の折畳方向への回動途中で、係合受体43の係合受凸部45は、係合体44の凹部50から離反する。
【0036】
そして、延長作業部3は、図6および図7に示すように駆動側歯車36の回動に基づく従動側歯車38の回動に伴って折畳方向へさらに回動し、180度回動した時点で停止して図8に示す折畳非作業状態になる。
【0037】
このようにシリンダ32の伸び動作により駆動側歯車36および従動側歯車38が回動し、延長作業部3が展開作業状態から折畳非作業状態に切り換えられる。
【0038】
なお、延長作業部3を展開作業状態に切り換える場合は、シリンダ32の縮み動作により駆動側歯車36および従動側歯車38を回動させることで、延長作業部3を展開方向へ回動させる。
【0039】
こうして延長作業部3を展開作業状態または折畳非作業状態に設定した後、トラクタの走行により農作業機1を移動させて耕耘整地作業を行う。
【0040】
そして、農作業機1によれば、延長作業部3を中央作業部2に対して展開作業状態にロックする展開ロック機構(ロック手段)の機能を兼ね備えた回動駆動手段31を備え、この回動駆動手段31にて延長作業部3を中央作業部2に対して回動できるとともに延長作業部3を展開作業状態にロックできるため、例えば従来必要であった複雑な展開ロック機構等が不要となり、構成の簡素化を図ることができる。
【0041】
なお、上記実施の形態では、係合受体43を駆動側歯車36の片側のみに設けかつ係合体44を従動側歯車38の片側のみに設けた構成について説明したが、図9ないし図12に示すように、係合受体43を駆動側歯車36の両側つまり凹凸部35の両端側に設けかつ係合体44を従動側歯車38の両側つまり凹凸部37の両端側に設けて、回動駆動手段31が延長作業部3を中央作業部2に対して展開作業状態にロックする展開ロック機構の機能と延長作業部3を中央作業部2に対して折畳非作業状態にロックする折畳ロック機構の機能との両機能を兼ね備えるようにしてもよい。
【0042】
また、駆動側歯車36を回動させる駆動部は、流体圧シリンダ等のシリンダ32には限定されず、例えば図13に示すモータ61でもよい。このモータ61は、モータ出力軸に固着されたモータ歯車62を有し、このモータ歯車62は、駆動側歯車36の軸36aに固着された歯車63と噛合している。
【0043】
さらに、駆動側歯車36の凹凸部35の長さおよび従動側歯車38の凹凸部37の長さは任意、つまり回動駆動手段31による延長作業部3(回動部)の回動角度は任意であり、例えば図14および図15に示すように、180度以外の回動角度でもよい。
【0044】
また、農作業機1は代掻装置には限定されず、上下方向或いは水平方向に回動する回動部を有しその回動部をロックする必要があるあらゆる農作業機に適用可能である。
【0045】
例えば図16および図17に示す農作業機1は、2つの回動駆動手段31を備えた畦塗り機である。
【0046】
この農作業機1は、トラクタの後部の3点リンクに連結される本体部71を備え、この本体部71には連結アーム部72の一端部が回動可能に連結され、この連結アーム部72の他端部には可動支持部73が回動可能に連結され、この可動支持部73にて畦塗り作業部74が支持されている。一方の回動駆動手段31は連結アーム部72を本体部71に対して回動させるものあり、他方の回動駆動手段31は可動支持部73を連結アーム部72に対して回動させるものである。また、畦塗り作業部74は、土を盛り上げる盛土体76と、この盛土体76の進行方向後方でこの盛土体76による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成体77とを有している。
【0047】
そして、図16に示す状態では、2つの回動駆動手段31によって畦塗り作業部74はトラクタの前進走行に基づいて畦塗り作業をする前進作業状態にロックされ、図17に示す状態では、2つの回動駆動手段31によって畦塗り作業部74はトラクタのバック走行に基づいて畦塗り作業をするリターン作業状態にロックされている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の後面図である。
【図2】同上農作業機の回動駆動手段の正面図である。
【図3】同上農作業機の回動駆動手段の動作説明図である。
【図4】図3に続く動作説明図である。
【図5】図4に続く動作説明図である。
【図6】図5に続く動作説明図である。
【図7】図6に続く動作説明図である。
【図8】図7に続く動作説明図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る農作業機の回動駆動手段の動作説明図である。
【図10】図9に続く動作説明図である。
【図11】図10に続く動作説明図である。
【図12】図11に続く動作説明図である。
【図13】本発明のさらに他の実施の形態に係る農作業機の回動駆動手段の正面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施の形態に係る農作業機の回動駆動手段の動作説明図である。
【図15】図14に続く動作説明図である。
【図16】本発明のさらに他の実施の形態に係る農作業機の前進作業状態の平面図である。
【図17】同上農作業機のリターン作業状態の平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 農作業機
35,37 凹凸部
36 駆動側歯車
38 従動側歯車
43 係合受体
44 係合体
45 係合受部である係合受凸部
46 係合部である係合面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸部を有する駆動側歯車と、
この駆動側歯車の凹凸部と噛合する凹凸部を有する従動側歯車と、
前記駆動側歯車に設けられ、係合受部を有する係合受体と、
前記従動側歯車に設けられ、前記係合受部と係合する係合部を有する係合体とを備え、
前記駆動側歯車の回動に基づく前記従動側歯車の回動によって前記係合部が前記係合受部と対向した状態になり、この状態時に前記係合部が前記係合受部と係合して前記従動側歯車の回動が規制される
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
係合体の係合部は、係合受体の係合受部の回動軌跡に沿った形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
係合体の係合部が係合受体の係合受部と対向した状態時には、駆動側歯車の凹凸部と従動側歯車の凹凸部との噛合が解除されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−195180(P2009−195180A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40974(P2008−40974)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】