農作業機
【課題】適切な耕耘整地作業ができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、耕耘整地作業をする中央作業部11と、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能で展開作業状態時には耕耘整地作業をする延長作業部12とを備える。中央作業部11の左右方向端部には、中央側土寄せ体62を取り付ける。延長作業部12の内端部には、延長側土寄せ体61を取り付ける。これら土寄せ体61,62は、トラクタの走行による土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる。
【解決手段】農作業機1は、耕耘整地作業をする中央作業部11と、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能で展開作業状態時には耕耘整地作業をする延長作業部12とを備える。中央作業部11の左右方向端部には、中央側土寄せ体62を取り付ける。延長作業部12の内端部には、延長側土寄せ体61を取り付ける。これら土寄せ体61,62は、トラクタの走行による土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な耕耘整地作業ができる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された折畳式の農作業機が知られている。
【0003】
この従来の折畳式の農作業機は、走行車であるトラクタの後部に連結され耕耘整地作業をする中央作業部と、この中央作業部の左右方向両端部に回動可能に設けられ回動により折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能となっており展開作業状態時には中央作業部の側方で耕耘整地作業をする左右の延長作業部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−304703号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば圃場の土質等によっては、トラクタの走行により圃場表面部に形成される土盛上り部および走行跡凹部(例えばタイヤ跡凹部)の影響を受けることとなり、適切な耕耘整地作業が行われないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、適切な耕耘整地作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結され、耕耘整地作業をする中央作業部と、この中央作業部に設けられ、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能となっており、展開作業状態時には耕耘整地作業をする延長作業部と、この延長作業部の前記中央作業部側の端部に設けられ、前記走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる延長側土寄せ体とを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、中央作業部の延長作業部側の端部に設けられ、走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる中央側土寄せ体を備えるものである。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、延長作業部の展開作業状態時においては、延長側土寄せ体の土寄せ面と中央側土寄せ体の土寄せ面とが同一面上に位置するものである。
【0010】
請求項4記載の農作業機は、請求項2または3記載の農作業機において、中央側土寄せ体は、中央作業部の中央側クラッチの前方部を覆うように位置するものである。
【0011】
請求項5記載の農作業機は、請求項4記載の農作業機において、中央側土寄せ体の外端部が、中央作業部の中央側クラッチよりも外側方に位置するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せることができるため、適切な耕耘整地作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る農作業機の正面図である。
【図2】同上農作業機の下面図と圃場表面部の正面視断面図とを組み合わせたものである。
【図3】同上農作業機の左側の延長作業部を折り畳んだ状態の正面図である。
【図4】(a)は中央側土寄せ体の正面図であり、(b)は延長側土寄せ体の正面図である。
【図5】(a)は中央側土寄せ体の下面図であり、(b)は延長側土寄せ体の下面図である。
【図6】同上農作業機のクラッチ同士が噛み合った状態の要部下面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る農作業機を示す図で、(a)がその中央側土寄せ体の下面図であり、(b)がその延長側土寄せ体の下面図である。
【図8】同上農作業機のクラッチ同士が噛み合った状態の要部下面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る農作業機のクラッチ同士が噛み合った状態の要部下面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る農作業機の下面図と圃場表面部の正面視断面図とを組み合わせたものである。
【図11】同上農作業機の左側の延長作業部を折り畳んだ状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図6を参照して説明する。
【0015】
図1ないし図3において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば図示しない走行車であるトラクタの後部に連結して使用する牽引式の耕耘整地装置(代掻機)である。
【0016】
つまり、この農作業機1は、トラクタの後部に連結された状態で、トラクタの走行により進行方向である前方に向かって圃場上を移動しながら耕耘整地作業をする折畳式作業機である。
【0017】
なお、トラクタは、車両本体であるトラクタ本体を備え、トラクタ本体の前部には左右1対の前輪2が設けられ、トラクタ本体の後部には前輪2よりも幅寸法が大きな左右1対の後輪(タイヤ)3が設けられている。そして、トラクタ本体のエンジン出力に基づいて前輪2および後輪3が回転してトラクタが圃場上を走行すると、その圃場表面部には、後輪3の通過によって2本の平行な凹溝状の走行跡凹部(タイヤ跡凹部)5が形成されるとともに、各走行跡凹部5の両側方には土盛上り部6が凸状に形成される(図2参照)。
【0018】
農作業機1は、図1ないし図3に示されるように、トラクタの後部の3点リンク(作業機昇降支持装置)に連結されトラクタからの動力によって耕耘整地作業をする左右方向長手状の中央作業部11を備えている。
【0019】
また、農作業機1は、中央作業部11の左右方向両端部に回動支点である回動中心軸(回動中心軸線)10を中心として上下方向に回動可能に設けられその回動により折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能となっており展開作業状態時には中央作業部11からの動力によって耕耘整地作業をする左右方向長手状の左右1対(左右)の折畳作業部である延長作業部12を備えている。さらに、農作業機1は、延長作業部12を中央作業部11に対して回動させる駆動手段である電動油圧シリンダ13を備えている。
【0020】
両延長作業部12は、左右対称の構成のもので、対応する電動油圧シリンダ13の伸縮に応じて中央作業部11に対して回動する。そして、各延長作業部12は、回動中心軸10を中心とする一方向(展開方向)への所定角度、例えば略180度回動により中央作業部11の外側方にこの中央作業部11と並んで位置する展開作業状態になり、この展開作業状態になると図示しないロック手段によってロックされる。また、各延長作業部12は、回動中心軸10を中心とする他方向(折畳方向)への所定角度、例えば略180度回動により中央作業部11の上方に位置する折畳非作業状態になり、この折畳非作業状態になると図示しないロック手段によってロックされる。なお、この各延長作業部12の回動角度は180度以外で、例えば150度や90度等でもよい。
【0021】
中央作業部11は、トラクタの後部の3点リンクに連結される左右方向長手状の機体16と、機体16に回転可能に設けられトラクタからの動力によって所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体17と、機体16の後端部に上下方向に回動可能に設けられ耕耘体17の後方で整地作業をする整地体18とを有している。
【0022】
機体16は、左右方向に細長い円筒状のフレーム部19を有し、このフレーム部19の長手方向中央部にはギアボックス部20が設けられ、このギアボックス部20から入力軸21が前方に向って突出している。入力軸21はトラクタのPTO軸(図示せず)に、ユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等に構成された伝動手段(図示せず)を介して接続される。
【0023】
フレーム部19の長手方向一端部(例えば左端部)には箱状のチェーンケース等の伝動ケース部(一方側軸支部)23の上部が取り付けられ、フレーム部19の長手方向他端部(例えば右端部)には板状のブラケット部(他方側軸支部)24の上部が取り付けられている。なお、伝動ケース部23の下部には、この伝動ケース部23の下部の前後面、左右の側面および下面を覆う有底筒状のケース補強部22が嵌着されている。
【0024】
また、機体16は、耕耘体17の上方部を覆う略円弧板状のカバー手段である耕耘カバー部(中央カバー)25を有し、この耕耘カバー部25の後端部に整地体18の前端部が回動可能に取り付けられている。
【0025】
耕耘体17は、伝動ケース部23の下部とブラケット部24の下部とにて回転可能に水平状に支持された左右方向の耕耘軸である回転軸26を有している。回転軸26は、入力軸21に接続されフレーム部19内および伝動ケース部23内に収納された伝動手段(図示せず)から動力を受けて回転する。
【0026】
回転軸26の軸方向一端部が伝動ケース部23の下部にて回転可能に支持され、この回転軸26の軸方向一端部のうちケース補強部22の外側面から外側方に向って突出する部分には、中央側クラッチ27が固着されている。また同様に、回転軸26の軸方向他端部がブラケット部24の下部にて回転可能に支持され、この回転軸26の軸方向他端部のうちブラケット部24の外側面から外側方に向って突出する部分には、中央側クラッチ27が固着されている。左右の各中央側クラッチ27には、周方向に並ぶ複数の係合凸部27aが形成されている。
【0027】
また、回転軸26には、この回転軸26と一体となって回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪(図示せず)が取り付けられている。複数の耕耘爪は、正面視略く字状のもので、回転軸26の軸方向一端側から他端側にわたって等間隔で配置されている。
【0028】
整地体18は、機体16の耕耘カバー部25の後端部に左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた左右方向長手状の第1整地体である第1整地板(中央均平板)31を有している。第1整地板31の後端部には、左右方向長手状の第2整地体である第2整地板(中央レーキ)32が左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0029】
延長作業部12は、中央作業部11の機体16のフレーム部19の左右方向両端部に回動中心軸10を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた折畳機体である延長機体36と、延長機体36に回転可能に設けられ中央作業部11の耕耘体17からの動力によって所定方向に回転しながら耕耘作業をする折畳耕耘体である延長耕耘体37と、延長機体36の後端部に上下方向に回動可能に設けられ延長作業部12の展開作業状態時には中央作業部11の整地体18と連結された状態となって延長耕耘体37の後方で整地作業をする折畳整地体である延長整地体38とを有している。なお、延長機体36と機体16との間には持上げ補助用のガススプリング39が架設されている。
【0030】
延長機体36は、互いに離間対向する板状の内ブラケット部(一方側支持部)41および板状の外ブラケット部(他方側支持部)42を左右方向両端部に有し、内ブラケット部41の上部と外ブラケット部42の上部との間には、延長耕耘体37の上方部を覆う略円弧板状のカバー手段である耕耘カバー部(サイドカバー)43が架設されている。この耕耘カバー部43の後端部には、延長整地体38の前端部が回動可能に取り付けられている。
【0031】
延長耕耘体37は、内ブラケット部41の下部と外ブラケット部42の下部とにて回転可能に水平状に支持された左右方向の耕耘軸である回転軸46を有している。
【0032】
そして、回転軸46の軸方向一端部(内端部)がサイドブラケットである内ブラケット部41にて回転可能に支持され、この回転軸46の軸方向一端部のうち内ブラケット部41の中央作業部11側の面から内側方に向って突出する部分には、延長作業部12の展開作業状態時に中央作業部11の中央側クラッチ27と噛み合って動力伝達を行う延長側クラッチ47が固着されている。この延長側クラッチ47には、中央側クラッチ27の係合凸部27aと係脱可能に係合する複数の係合凹部47aが形成されている。つまり、中央側クラッチ27の係合凸部27aと延長側クラッチ47の係合凹部47aとが噛み合うことにより中央作業部11の耕耘体17から延長作業部12の延長耕耘体37へ動力が伝達され、これら耕耘体17と延長耕耘体37とが一体となって回転する。なお、回転軸46の軸方向他端部(外端部)は、外ブラケット部42の下部にて回転可能に支持されている。
【0033】
また、回転軸46には、延長作業部12の展開作業状態時において回転軸46と一体となって回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪(図示せず)が取り付けられている。複数の耕耘爪は、正面視略く字状のもので、回転軸の軸方向一端側から他端側にわたって等間隔で配置されている。
【0034】
延長整地体38は、延長機体36の耕耘カバー部43の後端部に左右水平方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた左右方向長手状の第1延長整地体である第1延長整地板(サイド均平板)51を有している。第1延長整地板51の後端部には、左右方向長手状の第2延長整地体である第2延長整地板(サイドレーキ)52が左右水平方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられている。第2延長整地板52の外端部には、追加延長整地体である延長レーキ53が回動可能に取り付けられている。また、延長機体36には、延長レーキ53を第2延長整地板52に対して回動させる延長レーキ用駆動手段54が設けられている。
【0035】
また、農作業機1は、図4ないし図6等にも示されるように、延長作業部12の中央作業部11側の端部である内端部、すなわち例えば内ブラケット部41に固定的に取り付けられ、トラクタの走行により圃場表面部に形成される対をなす土盛上り部6のうちの外側の土盛上り部6の土をこの土盛上り部6に隣接して位置する走行跡凹部5側(つまり中央作業部11側)に寄せる延長側土寄せ体61を備えている。
【0036】
さらに、農作業機1は、中央作業部11の延長作業部12側の端部である左右方向両端部、すなわち例えばケース補強部22およびブラケット部24にそれぞれ固定的に取り付けられ、延長作業部12の展開作業状態時には延長側土寄せ体61と並んだ状態でトラクタの走行により圃場表面部に形成される対をなす土盛上り部6のうちの外側の土盛上り部6の土をこの土盛上り部6に隣接して位置する走行跡凹部5側に寄せる中央側土寄せ体62を備えている。
【0037】
そして、この農作業機1では、延長作業部12の展開作業状態時に、延長側土寄せ体61の前面の土寄せ面61aと中央側土寄せ体62の前面の土寄せ面62aとが、後斜め内側方に向かう傾斜方向に沿って同一面上(略同一面上を含む)に位置する。また、中央側土寄せ体62は、中央作業部11の中央側クラッチ27の前方部を覆うように位置する。
【0038】
ここで、まず、延長側土寄せ体61について説明すると、図4(b)、図5(b)および図6に示されるように、左側の延長側土寄せ体61は、内ブラケット部41に固定的に取り付けられた鉛直状の取付板部63と、この取付板部63の前端部から前斜め外側方に向かって一体に突出する鉛直状の土寄せ板部64と、取付板部63および土寄せ板部64間に架設されこれら取付板部63および土寄せ板部64を連結する水平状の補強板部65とを有している。そして、土寄せ板部64の前面にて、土盛上り部6の土を後斜め内側方に向けて案内して走行跡凹部5側に寄せる土寄せ面61aが構成されている。
【0039】
なお、左側の延長側土寄せ体61と右側の延長側土寄せ体61とは左右対称形状である(図1参照)。
【0040】
また、図4(a)、図5(a)および図6に示されるように、左側の中央側土寄せ体62は、ケース補強部22の外側面に固定的に取り付けられた鉛直状の取付板部66と、この取付板部66の前端部から前斜め外側方に向かって一体に突出して中央側クラッチ27の一部の前方部を覆う鉛直状の土寄せ板部67と、取付板部66および土寄せ板部67間に架設されこれら取付板部66および土寄せ板部67を連結する水平状の補強板部68とを有している。
【0041】
そして、土寄せ板部67の前面にて、土盛上り部6の土を後斜め内側方に向けて案内して走行跡凹部5側に寄せる土寄せ面62aが構成されている。この土寄せ面62aと延長側土寄せ体61の土寄せ面61aとは、図6から明らかなように、延長作業部12の展開作業状態時には、略一直線状となり、連続した1つの作用面として機能する。土寄せ面61aの面積が土寄せ面62aの面積よりも大きい。
【0042】
なお、左側の中央側土寄せ体62と右側の中央側土寄せ体62とは左右対称形状であるが、左側の中央側土寄せ体62の上下方向長さ寸法が右側の中央側土寄せ体62の上下方向長さ寸法よりも大きい点においてのみ異なっている(図1参照)。もっとも図示しないが、左右の両中央側土寄せ体62の上下方向長さ寸法を同じにしてもよい。また、右側の中央側土寄せ体62の取付板部66は、ブラケット部24の外側面に固定的に取り付けられている。
【0043】
次に、上記農作業機1の作用等を説明する。
【0044】
例えば最大の作業幅で作業をする場合には、左右の延長作業部12を中央作業部11に対して回動中心軸10を中心として回動させて展開作業状態に切り換える。
【0045】
延長作業部12が展開作業状態になると、中央作業部11の耕耘体17の中央側クラッチ27と延長作業部12の延長耕耘体37の延長側クラッチ47とが噛み合う。また同時に、中央作業部11の整地体18と延長作業部12の延長整地体38とが嵌合連結される。
【0046】
この状態で、トラクタの走行により農作業機1全体が前方に移動し、中央作業部11の耕耘体17の回転軸26が回転すると、この回転軸26の回転力が両クラッチ27,47を介して延長耕耘体37の回転軸46に伝わり、この延長耕耘体37の回転軸46が回転し、その結果、耕耘体17の耕耘爪と延長耕耘体37の耕耘爪とにて耕耘作業が行われる。
【0047】
また、耕耘体17および延長耕耘体37の後方では、互いに嵌合連結された整地体18および延長整地体38にて整地作業が行われる。
【0048】
さらに、耕耘体17および延長耕耘体37の前方では、耕耘体17および整地体18等による耕耘整地作業に先立って、延長側土寄せ体61および中央側土寄せ体62にて、土盛上り部6を崩して走行跡凹部5を埋め戻す土寄せ作業が行われる。つまり、延長側土寄せ体61の土寄せ面61aおよび中央側土寄せ体62の土寄せ面62aが、走行跡凹部5の左右両側で対をなす土盛上り部6のうちの外側の土盛上り部6の土を走行跡凹部5側に寄せてこの走行跡凹部5を埋め戻す。
【0049】
また、例えば中央作業部11のみで作業する場合或いは中央作業部11と左右いずれかの延長作業部12とで作業をする場合には、両延長作業部12或いは左右いずれかの延長作業部12を中央作業部11に対して回動させて折畳非作業状態に切り換える。すると、両クラッチ27,47同士の噛み合いが解除されて中央側クラッチ27が露出するが、この中央側クラッチ27の一部の前方部は中央側土寄せ体62にて覆われている。
【0050】
そして、このような農作業機1によれば、延長側土寄せ体61および中央側土寄せ体62にて、トラクタの走行により圃場表面部に形成される土盛上り部6の土を走行跡凹部5側に寄せることができるため、走行跡凹部5を埋め戻すことができ、適切な耕耘整地作業ができる。
【0051】
また、延長側土寄せ体61および中央側土寄せ体62にて、延長作業部12側に逃げようとする土を中央作業部11側に寄せることができるため、より一層適切な耕耘整地作業ができる。
【0052】
さらに、延長作業部12の展開作業状態時においては、延長側土寄せ体61の土寄せ面61aと中央側土寄せ体62の土寄せ面62aとが同一面上に位置するため、土盛上り部6の土をスムーズに走行跡凹部5側に移動させることができ、より一層適切な耕耘整地作業ができる。
【0053】
また、中央側土寄せ体62は、中央作業部11の中央側クラッチ27の前方部を覆うように位置するため、中央側クラッチ27を保護でき、中央側クラッチ27の損傷等を防止できる。
【0054】
なお、図7および図8には、第2の実施の形態が示されている。
【0055】
この第2の実施の形態のように、中央側土寄せ体62の土寄せ板部67が中央側クラッチ27全体の前方部を覆うように位置する構成でもよい。つまり、この構成では、中央側土寄せ体62の外端部、すなわち土寄せ板部67の外端部(先端部)が中央側クラッチ27よりも外側方に位置する。また、この中央側土寄せ体62の外端部は、延長作業部12の展開作業状態時には、延長側土寄せ体61の土寄せ板部64の内端部に近接する。
【0056】
そして、この構成にした場合には、中央側クラッチ27をより適切に保護でき、中央側クラッチ27の損傷等を効果的に防止できる。すなわち例えば中央作業部11のみで作業する際に、中央側クラッチ27が畦やコンクリート等に当たることがなく、中央側土寄せ体62がクラッチガードとして機能し、また、中央側土寄せ体62によって畦際の草等を内側に処理できる。
【0057】
また、図9には、第3の実施の形態が示されている。
【0058】
この第3の実施の形態のように、延長側土寄せ体61の土寄せ面61aが中央側土寄せ体62の土寄せ面62aに対して若干前方に突出した構成であっても、土の流れの抵抗にはならず、土盛上り部6の土をスムーズに走行跡凹部5側に移動させることができる。
【0059】
さらに、図10および図11には、第4の実施の形態が示されている。
【0060】
この第4の実施の形態のように、中央側土寄せ体62を備えておらず、延長側土寄せ体61のみで土盛上り部6の土を走行跡凹部5側に寄せる土寄せ作業を行う構成でもよい。この延長側土寄せ体61は、延長作業部12の中央作業部11側の端部である内端部、すなわち例えば耕耘カバー部43の内端部前面に固定的に取り付けられている。
【0061】
この延長側土寄せ体61は、耕耘カバー部43の内端部前面に固定的に取り付けられた断面略L字状で鉛直状の取付板部70と、取付板部70の前端部から前斜め外側方に向かって一体に突出する鉛直状の第1土寄せ板部71と、取付板部70の前端部から後斜め内側方に向かって一体に突出して中央作業部11の前方に位置する鉛直状の第2土寄せ板部72と、取付板部70および第2土寄せ板部72間に架設されこれら取付板部70および土寄せ板部72を連結する水平状の補強板部73とを有している。そして、両土寄せ板部71,72の前面にて、土盛上り部6の土を後斜め内側方に向けて案内して走行跡凹部5側に寄せる土寄せ面74が構成されている。なお、例えばこのような延長側土寄せ体61を延長作業部12の内ブラケット部41に取り付けるようにしてもよい。
【0062】
また一方、上記第1の実施の形態等においては、延長側土寄せ体61が内ブラケット部41に取り付けられ、中央側土寄せ体62がケース補強部22やブラケット部24に取り付けられた構成について説明したが、例えば延長側土寄せ体61が延長機体36の耕耘カバー部43の前面に取り付けられ、中央側土寄せ体62が機体16の耕耘カバー部25の前面に取り付けられた構成等でもよい。
【0063】
また、いずれの実施の形態においても、例えば3分割折畳式の構成には限定されず、例えば中央作業部11と左右いずれか一方の延長作業部12とを備えた構成等でもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 農作業機
5 走行跡凹部
6 土盛上り部
11 中央作業部
12 延長作業部
27 中央側クラッチ
61 延長側土寄せ体
61a 土寄せ面
62 中央側土寄せ体
62a 土寄せ面
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な耕耘整地作業ができる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された折畳式の農作業機が知られている。
【0003】
この従来の折畳式の農作業機は、走行車であるトラクタの後部に連結され耕耘整地作業をする中央作業部と、この中央作業部の左右方向両端部に回動可能に設けられ回動により折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能となっており展開作業状態時には中央作業部の側方で耕耘整地作業をする左右の延長作業部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−304703号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば圃場の土質等によっては、トラクタの走行により圃場表面部に形成される土盛上り部および走行跡凹部(例えばタイヤ跡凹部)の影響を受けることとなり、適切な耕耘整地作業が行われないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、適切な耕耘整地作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結され、耕耘整地作業をする中央作業部と、この中央作業部に設けられ、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能となっており、展開作業状態時には耕耘整地作業をする延長作業部と、この延長作業部の前記中央作業部側の端部に設けられ、前記走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる延長側土寄せ体とを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、中央作業部の延長作業部側の端部に設けられ、走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる中央側土寄せ体を備えるものである。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、延長作業部の展開作業状態時においては、延長側土寄せ体の土寄せ面と中央側土寄せ体の土寄せ面とが同一面上に位置するものである。
【0010】
請求項4記載の農作業機は、請求項2または3記載の農作業機において、中央側土寄せ体は、中央作業部の中央側クラッチの前方部を覆うように位置するものである。
【0011】
請求項5記載の農作業機は、請求項4記載の農作業機において、中央側土寄せ体の外端部が、中央作業部の中央側クラッチよりも外側方に位置するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せることができるため、適切な耕耘整地作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る農作業機の正面図である。
【図2】同上農作業機の下面図と圃場表面部の正面視断面図とを組み合わせたものである。
【図3】同上農作業機の左側の延長作業部を折り畳んだ状態の正面図である。
【図4】(a)は中央側土寄せ体の正面図であり、(b)は延長側土寄せ体の正面図である。
【図5】(a)は中央側土寄せ体の下面図であり、(b)は延長側土寄せ体の下面図である。
【図6】同上農作業機のクラッチ同士が噛み合った状態の要部下面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る農作業機を示す図で、(a)がその中央側土寄せ体の下面図であり、(b)がその延長側土寄せ体の下面図である。
【図8】同上農作業機のクラッチ同士が噛み合った状態の要部下面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る農作業機のクラッチ同士が噛み合った状態の要部下面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る農作業機の下面図と圃場表面部の正面視断面図とを組み合わせたものである。
【図11】同上農作業機の左側の延長作業部を折り畳んだ状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図6を参照して説明する。
【0015】
図1ないし図3において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば図示しない走行車であるトラクタの後部に連結して使用する牽引式の耕耘整地装置(代掻機)である。
【0016】
つまり、この農作業機1は、トラクタの後部に連結された状態で、トラクタの走行により進行方向である前方に向かって圃場上を移動しながら耕耘整地作業をする折畳式作業機である。
【0017】
なお、トラクタは、車両本体であるトラクタ本体を備え、トラクタ本体の前部には左右1対の前輪2が設けられ、トラクタ本体の後部には前輪2よりも幅寸法が大きな左右1対の後輪(タイヤ)3が設けられている。そして、トラクタ本体のエンジン出力に基づいて前輪2および後輪3が回転してトラクタが圃場上を走行すると、その圃場表面部には、後輪3の通過によって2本の平行な凹溝状の走行跡凹部(タイヤ跡凹部)5が形成されるとともに、各走行跡凹部5の両側方には土盛上り部6が凸状に形成される(図2参照)。
【0018】
農作業機1は、図1ないし図3に示されるように、トラクタの後部の3点リンク(作業機昇降支持装置)に連結されトラクタからの動力によって耕耘整地作業をする左右方向長手状の中央作業部11を備えている。
【0019】
また、農作業機1は、中央作業部11の左右方向両端部に回動支点である回動中心軸(回動中心軸線)10を中心として上下方向に回動可能に設けられその回動により折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能となっており展開作業状態時には中央作業部11からの動力によって耕耘整地作業をする左右方向長手状の左右1対(左右)の折畳作業部である延長作業部12を備えている。さらに、農作業機1は、延長作業部12を中央作業部11に対して回動させる駆動手段である電動油圧シリンダ13を備えている。
【0020】
両延長作業部12は、左右対称の構成のもので、対応する電動油圧シリンダ13の伸縮に応じて中央作業部11に対して回動する。そして、各延長作業部12は、回動中心軸10を中心とする一方向(展開方向)への所定角度、例えば略180度回動により中央作業部11の外側方にこの中央作業部11と並んで位置する展開作業状態になり、この展開作業状態になると図示しないロック手段によってロックされる。また、各延長作業部12は、回動中心軸10を中心とする他方向(折畳方向)への所定角度、例えば略180度回動により中央作業部11の上方に位置する折畳非作業状態になり、この折畳非作業状態になると図示しないロック手段によってロックされる。なお、この各延長作業部12の回動角度は180度以外で、例えば150度や90度等でもよい。
【0021】
中央作業部11は、トラクタの後部の3点リンクに連結される左右方向長手状の機体16と、機体16に回転可能に設けられトラクタからの動力によって所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体17と、機体16の後端部に上下方向に回動可能に設けられ耕耘体17の後方で整地作業をする整地体18とを有している。
【0022】
機体16は、左右方向に細長い円筒状のフレーム部19を有し、このフレーム部19の長手方向中央部にはギアボックス部20が設けられ、このギアボックス部20から入力軸21が前方に向って突出している。入力軸21はトラクタのPTO軸(図示せず)に、ユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等に構成された伝動手段(図示せず)を介して接続される。
【0023】
フレーム部19の長手方向一端部(例えば左端部)には箱状のチェーンケース等の伝動ケース部(一方側軸支部)23の上部が取り付けられ、フレーム部19の長手方向他端部(例えば右端部)には板状のブラケット部(他方側軸支部)24の上部が取り付けられている。なお、伝動ケース部23の下部には、この伝動ケース部23の下部の前後面、左右の側面および下面を覆う有底筒状のケース補強部22が嵌着されている。
【0024】
また、機体16は、耕耘体17の上方部を覆う略円弧板状のカバー手段である耕耘カバー部(中央カバー)25を有し、この耕耘カバー部25の後端部に整地体18の前端部が回動可能に取り付けられている。
【0025】
耕耘体17は、伝動ケース部23の下部とブラケット部24の下部とにて回転可能に水平状に支持された左右方向の耕耘軸である回転軸26を有している。回転軸26は、入力軸21に接続されフレーム部19内および伝動ケース部23内に収納された伝動手段(図示せず)から動力を受けて回転する。
【0026】
回転軸26の軸方向一端部が伝動ケース部23の下部にて回転可能に支持され、この回転軸26の軸方向一端部のうちケース補強部22の外側面から外側方に向って突出する部分には、中央側クラッチ27が固着されている。また同様に、回転軸26の軸方向他端部がブラケット部24の下部にて回転可能に支持され、この回転軸26の軸方向他端部のうちブラケット部24の外側面から外側方に向って突出する部分には、中央側クラッチ27が固着されている。左右の各中央側クラッチ27には、周方向に並ぶ複数の係合凸部27aが形成されている。
【0027】
また、回転軸26には、この回転軸26と一体となって回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪(図示せず)が取り付けられている。複数の耕耘爪は、正面視略く字状のもので、回転軸26の軸方向一端側から他端側にわたって等間隔で配置されている。
【0028】
整地体18は、機体16の耕耘カバー部25の後端部に左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた左右方向長手状の第1整地体である第1整地板(中央均平板)31を有している。第1整地板31の後端部には、左右方向長手状の第2整地体である第2整地板(中央レーキ)32が左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0029】
延長作業部12は、中央作業部11の機体16のフレーム部19の左右方向両端部に回動中心軸10を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた折畳機体である延長機体36と、延長機体36に回転可能に設けられ中央作業部11の耕耘体17からの動力によって所定方向に回転しながら耕耘作業をする折畳耕耘体である延長耕耘体37と、延長機体36の後端部に上下方向に回動可能に設けられ延長作業部12の展開作業状態時には中央作業部11の整地体18と連結された状態となって延長耕耘体37の後方で整地作業をする折畳整地体である延長整地体38とを有している。なお、延長機体36と機体16との間には持上げ補助用のガススプリング39が架設されている。
【0030】
延長機体36は、互いに離間対向する板状の内ブラケット部(一方側支持部)41および板状の外ブラケット部(他方側支持部)42を左右方向両端部に有し、内ブラケット部41の上部と外ブラケット部42の上部との間には、延長耕耘体37の上方部を覆う略円弧板状のカバー手段である耕耘カバー部(サイドカバー)43が架設されている。この耕耘カバー部43の後端部には、延長整地体38の前端部が回動可能に取り付けられている。
【0031】
延長耕耘体37は、内ブラケット部41の下部と外ブラケット部42の下部とにて回転可能に水平状に支持された左右方向の耕耘軸である回転軸46を有している。
【0032】
そして、回転軸46の軸方向一端部(内端部)がサイドブラケットである内ブラケット部41にて回転可能に支持され、この回転軸46の軸方向一端部のうち内ブラケット部41の中央作業部11側の面から内側方に向って突出する部分には、延長作業部12の展開作業状態時に中央作業部11の中央側クラッチ27と噛み合って動力伝達を行う延長側クラッチ47が固着されている。この延長側クラッチ47には、中央側クラッチ27の係合凸部27aと係脱可能に係合する複数の係合凹部47aが形成されている。つまり、中央側クラッチ27の係合凸部27aと延長側クラッチ47の係合凹部47aとが噛み合うことにより中央作業部11の耕耘体17から延長作業部12の延長耕耘体37へ動力が伝達され、これら耕耘体17と延長耕耘体37とが一体となって回転する。なお、回転軸46の軸方向他端部(外端部)は、外ブラケット部42の下部にて回転可能に支持されている。
【0033】
また、回転軸46には、延長作業部12の展開作業状態時において回転軸46と一体となって回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪(図示せず)が取り付けられている。複数の耕耘爪は、正面視略く字状のもので、回転軸の軸方向一端側から他端側にわたって等間隔で配置されている。
【0034】
延長整地体38は、延長機体36の耕耘カバー部43の後端部に左右水平方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた左右方向長手状の第1延長整地体である第1延長整地板(サイド均平板)51を有している。第1延長整地板51の後端部には、左右方向長手状の第2延長整地体である第2延長整地板(サイドレーキ)52が左右水平方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられている。第2延長整地板52の外端部には、追加延長整地体である延長レーキ53が回動可能に取り付けられている。また、延長機体36には、延長レーキ53を第2延長整地板52に対して回動させる延長レーキ用駆動手段54が設けられている。
【0035】
また、農作業機1は、図4ないし図6等にも示されるように、延長作業部12の中央作業部11側の端部である内端部、すなわち例えば内ブラケット部41に固定的に取り付けられ、トラクタの走行により圃場表面部に形成される対をなす土盛上り部6のうちの外側の土盛上り部6の土をこの土盛上り部6に隣接して位置する走行跡凹部5側(つまり中央作業部11側)に寄せる延長側土寄せ体61を備えている。
【0036】
さらに、農作業機1は、中央作業部11の延長作業部12側の端部である左右方向両端部、すなわち例えばケース補強部22およびブラケット部24にそれぞれ固定的に取り付けられ、延長作業部12の展開作業状態時には延長側土寄せ体61と並んだ状態でトラクタの走行により圃場表面部に形成される対をなす土盛上り部6のうちの外側の土盛上り部6の土をこの土盛上り部6に隣接して位置する走行跡凹部5側に寄せる中央側土寄せ体62を備えている。
【0037】
そして、この農作業機1では、延長作業部12の展開作業状態時に、延長側土寄せ体61の前面の土寄せ面61aと中央側土寄せ体62の前面の土寄せ面62aとが、後斜め内側方に向かう傾斜方向に沿って同一面上(略同一面上を含む)に位置する。また、中央側土寄せ体62は、中央作業部11の中央側クラッチ27の前方部を覆うように位置する。
【0038】
ここで、まず、延長側土寄せ体61について説明すると、図4(b)、図5(b)および図6に示されるように、左側の延長側土寄せ体61は、内ブラケット部41に固定的に取り付けられた鉛直状の取付板部63と、この取付板部63の前端部から前斜め外側方に向かって一体に突出する鉛直状の土寄せ板部64と、取付板部63および土寄せ板部64間に架設されこれら取付板部63および土寄せ板部64を連結する水平状の補強板部65とを有している。そして、土寄せ板部64の前面にて、土盛上り部6の土を後斜め内側方に向けて案内して走行跡凹部5側に寄せる土寄せ面61aが構成されている。
【0039】
なお、左側の延長側土寄せ体61と右側の延長側土寄せ体61とは左右対称形状である(図1参照)。
【0040】
また、図4(a)、図5(a)および図6に示されるように、左側の中央側土寄せ体62は、ケース補強部22の外側面に固定的に取り付けられた鉛直状の取付板部66と、この取付板部66の前端部から前斜め外側方に向かって一体に突出して中央側クラッチ27の一部の前方部を覆う鉛直状の土寄せ板部67と、取付板部66および土寄せ板部67間に架設されこれら取付板部66および土寄せ板部67を連結する水平状の補強板部68とを有している。
【0041】
そして、土寄せ板部67の前面にて、土盛上り部6の土を後斜め内側方に向けて案内して走行跡凹部5側に寄せる土寄せ面62aが構成されている。この土寄せ面62aと延長側土寄せ体61の土寄せ面61aとは、図6から明らかなように、延長作業部12の展開作業状態時には、略一直線状となり、連続した1つの作用面として機能する。土寄せ面61aの面積が土寄せ面62aの面積よりも大きい。
【0042】
なお、左側の中央側土寄せ体62と右側の中央側土寄せ体62とは左右対称形状であるが、左側の中央側土寄せ体62の上下方向長さ寸法が右側の中央側土寄せ体62の上下方向長さ寸法よりも大きい点においてのみ異なっている(図1参照)。もっとも図示しないが、左右の両中央側土寄せ体62の上下方向長さ寸法を同じにしてもよい。また、右側の中央側土寄せ体62の取付板部66は、ブラケット部24の外側面に固定的に取り付けられている。
【0043】
次に、上記農作業機1の作用等を説明する。
【0044】
例えば最大の作業幅で作業をする場合には、左右の延長作業部12を中央作業部11に対して回動中心軸10を中心として回動させて展開作業状態に切り換える。
【0045】
延長作業部12が展開作業状態になると、中央作業部11の耕耘体17の中央側クラッチ27と延長作業部12の延長耕耘体37の延長側クラッチ47とが噛み合う。また同時に、中央作業部11の整地体18と延長作業部12の延長整地体38とが嵌合連結される。
【0046】
この状態で、トラクタの走行により農作業機1全体が前方に移動し、中央作業部11の耕耘体17の回転軸26が回転すると、この回転軸26の回転力が両クラッチ27,47を介して延長耕耘体37の回転軸46に伝わり、この延長耕耘体37の回転軸46が回転し、その結果、耕耘体17の耕耘爪と延長耕耘体37の耕耘爪とにて耕耘作業が行われる。
【0047】
また、耕耘体17および延長耕耘体37の後方では、互いに嵌合連結された整地体18および延長整地体38にて整地作業が行われる。
【0048】
さらに、耕耘体17および延長耕耘体37の前方では、耕耘体17および整地体18等による耕耘整地作業に先立って、延長側土寄せ体61および中央側土寄せ体62にて、土盛上り部6を崩して走行跡凹部5を埋め戻す土寄せ作業が行われる。つまり、延長側土寄せ体61の土寄せ面61aおよび中央側土寄せ体62の土寄せ面62aが、走行跡凹部5の左右両側で対をなす土盛上り部6のうちの外側の土盛上り部6の土を走行跡凹部5側に寄せてこの走行跡凹部5を埋め戻す。
【0049】
また、例えば中央作業部11のみで作業する場合或いは中央作業部11と左右いずれかの延長作業部12とで作業をする場合には、両延長作業部12或いは左右いずれかの延長作業部12を中央作業部11に対して回動させて折畳非作業状態に切り換える。すると、両クラッチ27,47同士の噛み合いが解除されて中央側クラッチ27が露出するが、この中央側クラッチ27の一部の前方部は中央側土寄せ体62にて覆われている。
【0050】
そして、このような農作業機1によれば、延長側土寄せ体61および中央側土寄せ体62にて、トラクタの走行により圃場表面部に形成される土盛上り部6の土を走行跡凹部5側に寄せることができるため、走行跡凹部5を埋め戻すことができ、適切な耕耘整地作業ができる。
【0051】
また、延長側土寄せ体61および中央側土寄せ体62にて、延長作業部12側に逃げようとする土を中央作業部11側に寄せることができるため、より一層適切な耕耘整地作業ができる。
【0052】
さらに、延長作業部12の展開作業状態時においては、延長側土寄せ体61の土寄せ面61aと中央側土寄せ体62の土寄せ面62aとが同一面上に位置するため、土盛上り部6の土をスムーズに走行跡凹部5側に移動させることができ、より一層適切な耕耘整地作業ができる。
【0053】
また、中央側土寄せ体62は、中央作業部11の中央側クラッチ27の前方部を覆うように位置するため、中央側クラッチ27を保護でき、中央側クラッチ27の損傷等を防止できる。
【0054】
なお、図7および図8には、第2の実施の形態が示されている。
【0055】
この第2の実施の形態のように、中央側土寄せ体62の土寄せ板部67が中央側クラッチ27全体の前方部を覆うように位置する構成でもよい。つまり、この構成では、中央側土寄せ体62の外端部、すなわち土寄せ板部67の外端部(先端部)が中央側クラッチ27よりも外側方に位置する。また、この中央側土寄せ体62の外端部は、延長作業部12の展開作業状態時には、延長側土寄せ体61の土寄せ板部64の内端部に近接する。
【0056】
そして、この構成にした場合には、中央側クラッチ27をより適切に保護でき、中央側クラッチ27の損傷等を効果的に防止できる。すなわち例えば中央作業部11のみで作業する際に、中央側クラッチ27が畦やコンクリート等に当たることがなく、中央側土寄せ体62がクラッチガードとして機能し、また、中央側土寄せ体62によって畦際の草等を内側に処理できる。
【0057】
また、図9には、第3の実施の形態が示されている。
【0058】
この第3の実施の形態のように、延長側土寄せ体61の土寄せ面61aが中央側土寄せ体62の土寄せ面62aに対して若干前方に突出した構成であっても、土の流れの抵抗にはならず、土盛上り部6の土をスムーズに走行跡凹部5側に移動させることができる。
【0059】
さらに、図10および図11には、第4の実施の形態が示されている。
【0060】
この第4の実施の形態のように、中央側土寄せ体62を備えておらず、延長側土寄せ体61のみで土盛上り部6の土を走行跡凹部5側に寄せる土寄せ作業を行う構成でもよい。この延長側土寄せ体61は、延長作業部12の中央作業部11側の端部である内端部、すなわち例えば耕耘カバー部43の内端部前面に固定的に取り付けられている。
【0061】
この延長側土寄せ体61は、耕耘カバー部43の内端部前面に固定的に取り付けられた断面略L字状で鉛直状の取付板部70と、取付板部70の前端部から前斜め外側方に向かって一体に突出する鉛直状の第1土寄せ板部71と、取付板部70の前端部から後斜め内側方に向かって一体に突出して中央作業部11の前方に位置する鉛直状の第2土寄せ板部72と、取付板部70および第2土寄せ板部72間に架設されこれら取付板部70および土寄せ板部72を連結する水平状の補強板部73とを有している。そして、両土寄せ板部71,72の前面にて、土盛上り部6の土を後斜め内側方に向けて案内して走行跡凹部5側に寄せる土寄せ面74が構成されている。なお、例えばこのような延長側土寄せ体61を延長作業部12の内ブラケット部41に取り付けるようにしてもよい。
【0062】
また一方、上記第1の実施の形態等においては、延長側土寄せ体61が内ブラケット部41に取り付けられ、中央側土寄せ体62がケース補強部22やブラケット部24に取り付けられた構成について説明したが、例えば延長側土寄せ体61が延長機体36の耕耘カバー部43の前面に取り付けられ、中央側土寄せ体62が機体16の耕耘カバー部25の前面に取り付けられた構成等でもよい。
【0063】
また、いずれの実施の形態においても、例えば3分割折畳式の構成には限定されず、例えば中央作業部11と左右いずれか一方の延長作業部12とを備えた構成等でもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 農作業機
5 走行跡凹部
6 土盛上り部
11 中央作業部
12 延長作業部
27 中央側クラッチ
61 延長側土寄せ体
61a 土寄せ面
62 中央側土寄せ体
62a 土寄せ面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結され、耕耘整地作業をする中央作業部と、
この中央作業部に設けられ、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能となっており、展開作業状態時には耕耘整地作業をする延長作業部と、
この延長作業部の前記中央作業部側の端部に設けられ、前記走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる延長側土寄せ体と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
中央作業部の延長作業部側の端部に設けられ、走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる中央側土寄せ体を備える
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
延長作業部の展開作業状態時においては、延長側土寄せ体の土寄せ面と中央側土寄せ体の土寄せ面とが同一面上に位置する
ことを特徴とする請求項2記載の農作業機。
【請求項4】
中央側土寄せ体は、中央作業部の中央側クラッチの前方部を覆うように位置する
ことを特徴とする請求項2または3記載の農作業機。
【請求項5】
中央側土寄せ体の外端部が、中央作業部の中央側クラッチよりも外側方に位置する
ことを特徴とする請求項4記載の農作業機。
【請求項1】
走行車に連結され、耕耘整地作業をする中央作業部と、
この中央作業部に設けられ、折畳非作業状態および展開作業状態に選択的に切り換え可能となっており、展開作業状態時には耕耘整地作業をする延長作業部と、
この延長作業部の前記中央作業部側の端部に設けられ、前記走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる延長側土寄せ体と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
中央作業部の延長作業部側の端部に設けられ、走行車の走行により圃場表面部に形成される土盛上り部の土を走行跡凹部側に寄せる中央側土寄せ体を備える
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
延長作業部の展開作業状態時においては、延長側土寄せ体の土寄せ面と中央側土寄せ体の土寄せ面とが同一面上に位置する
ことを特徴とする請求項2記載の農作業機。
【請求項4】
中央側土寄せ体は、中央作業部の中央側クラッチの前方部を覆うように位置する
ことを特徴とする請求項2または3記載の農作業機。
【請求項5】
中央側土寄せ体の外端部が、中央作業部の中央側クラッチよりも外側方に位置する
ことを特徴とする請求項4記載の農作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−10604(P2012−10604A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147541(P2010−147541)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】
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