説明

農園芸用機械

【課題】不用意に動作中の農園芸用機械の作業部に近づいてしまう事態の発生を抑制すべく、農園芸用機械による作業中であることを遠方から音以外の手段により確認できるようにする。
【解決手段】農園芸用機械である動力刈払機に、動力部1と、前記動力部1から動力の供給を受けて回転動作することにより刈払作業を行う作業部かつ回転刈払体である回転刃41を有する刈払部4と、前記回転刃41以外の箇所に設けてなり前記回転刃41が回転動作中であることを視認可能な手段で外部に示す警告手段5とを具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸作業を行うときに作業者が携帯して使用する農園芸用機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動力部と、当該動力部を基端として延伸する柄杆と、当該柄杆の先端に設けられ前記動力部から動力の供給を受けて回転動作することにより刈払作業を行う作業部である回転刈払体を有する刈払部とを具備し、動力部から刈払部の回転刈払体に動力を供給して回転刈払体を回転動作させることにより草を刈り払う動力刈払機が知られている。この種の動力刈払機の動力部は、従来、小型エンジンを利用するものがほとんどであった。しかしながら、動力部にエンジンを利用する動力刈払機は、騒音が激しく、住宅街で使用すると近所迷惑となることがある。そこで、エンジンに代わってモータを利用して動力部を構成している動力刈払機が広く採用されている。
【0003】
しかし、このようにモータを利用して動力部を構成する場合、動作時の音が小さくなることから、次に述べるような不具合が発生しうる。すなわち、動作時の音が小さいので、動力刈払機による刈払作業中であることを遠方から音により判断することが困難であり、不用意に動力刈払機の回転刈払体に近づいてしまう事態が発生しやすくなる。
【0004】
一方、エンジンを利用して動力部を構成しているものであっても、聴力に障害がある者においては、動力刈払機による刈払作業中であることを遠方から音により判断することが困難であり、このような者が不用意に動力刈払機の回転刈払体に近づいてしまう事態は発生しうる。
【0005】
そして、以上に述べた不具合、すなわち音による作業中であることの認識が困難であることに起因して不用意に作業部に近づいてしまうことがあるという不具合は、動力刈払機に限らず、モータやエンジンを利用した動力部を有する農園芸用機械において一般的に存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−97449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に着目し、作業中であることを遠方から音以外の手段により確認できるようにすることにより、不用意に動作中の農園芸用機械の作業部に近づいてしまう事態の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る農園芸用機械は、動力部と、前記動力部から動力の供給を受けて動作する作業部と、前記作業部以外の箇所に設けてなり前記作業部が作業中であることを視認可能な手段で外部に示す警告手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、警告手段により作業部が作業中であることを視認可能に示されるので、離れた箇所にいる者に対しても、また、聴力に障害を有する者に対しても、音以外の手段により作業部が作業中であることをより明確に認識させることができる。
【0010】
前段で述べた効果を特に有効に得るには、前記動力部が、電力の供給を受け回転刈払体を駆動するモータを利用するものであるものが望ましい。このようなものであれば、モータを利用して動力部を構成することにより静音化を図りつつ、警告手段により回転刃が回転動作中であることを遠方から視認可能にできるからである。
【0011】
また、このような動力刈払機を実現するための具体的な態様の一例として、前記動力部が、動力源と、動力源を収納するカバーとを備えてなるとともに、このカバーを基端として延伸する柄杆をさらに具備し、この柄杆の先端に前記刈払部を取り付けてなり、前記動力部又は柄杆の少なくとも一方に前記警告手段を設けてなるものが挙げられる。
【0012】
このような動力刈払機における警告手段の具体的な構成の一例として、前記警告手段が、複数個の発光体を発光させることにより前記回転刈払体が回転動作中であることを視認可能な手段で外部に示すものであるものが挙げられる。このようなものであれば、発光体からの光を視認させることにより、回転刈払体が回転動作中であることを遠方にいる者にも認識させることができる。
【0013】
特に、前記警告手段が、複数個の発光体を所定の順序で点滅させるものであれば、発光箇所が移動するので、より前記回転刈払体が回転動作中であることをより効果的に示すことができる。
【0014】
そして、本発明の好適な使用例として、前記作業部が、前記動力部から動力の供給を受けて回転動作することにより刈払作業を行う回転刈払体であるものが挙げられる。なお、本発明において、「回転刈払体」とは、回転刃や、回転動作により刈払作業を行うことが可能なナイロン製紐状体(ナイロンコード)等、回転動作により刈払作業を行うことが可能なもの全般を示す概念である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、警告手段により作業部が作業中であることを視認可能に示すことにより、離れた箇所にいる者に対しても、また、聴力に障害を有する者に対しても、音以外の手段により作業部が作業中であることをより明確に認識させることができる。従って、動力部をモータにより構成して動作時の音を小さくしても不用意に作業中の農園芸用機械の作業部に近づいてしまう事態の発生を抑制できる。また、エンジンを利用して動力部を構成した場合であっても、聴力に障害がある者が不用意に作業中の農園芸用機械の作業部に近づいてしまう事態の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る動力刈払機を示す斜視図。
【図2】同実施形態に係る動力刈払機を示す回路図。
【図3】同実施形態に係る警告手段の制御部による制御の手順を示すフローチャート。
【図4】本発明の他の実施形態に係る動力刈払機を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る農園芸用機械である動力刈払機は、図1に示すように、動力を発するモータ11、このモータ11に電力を供給するバッテリ12、及び前記モータ11を収納するカバー13を有する動力部1と、当該動力部1のカバー13を基端として延伸する柄杆2と、前記柄杆2の中間部から、左右両側に延伸させて設けてなるハンドル3と、前記柄杆2の先端に取り付けられ前記動力部1から動力の供給を受けて回転動作することにより刈払作業を行う本発明の作業部である回転刃41を有する刈払部4と、前記刈払部4の回転刃41が回転動作中であることを視認可能な手段で外部に示すべく前記回転刃41以外の箇所、具体的には前記動力部1のカバー13に設けてなる警告手段5とを具備する両手ハンドル型のものである。なお、モータ11は本発明の動力源である。また、回転刃41は本発明の回転刈払体である。
【0019】
具体的には、前記動力部1は、上述したように、また、前記図1に示すように、前記回転刃41を駆動するモータ11と、このモータ11に電力を供給するバッテリ12と、前記モータ11を収納するカバー13とを有する。前記モータ11は、図示しない出力軸に回転駆動力を出力する。そして、前記カバー13を基端として柄杆2を延伸させて設けているとともに、モータ11の出力軸をこの柄杆2の内部に収納してなる。
【0020】
前記柄杆2は、上述したように、また、前記図1に示すように、基端部を前記動力部1のカバー13に接続しているとともに、図示はしないが、内部にモータ11の出力軸を収納してなる中空の部材である。また、この柄杆2の先端部には刈払部4を設けている。さらに、これも上述したように、前記柄杆2の中間部から、左右両側にハンドル3を延伸させて設けている。なお、本実施形態では、この柄杆2の前記ハンドル3の基端と前記駆動部1との間の部位に、使用者の肩に掛けるための肩掛けベルト6を取り付けるようにしている。
【0021】
前記ハンドル3は、また、前記図1に示すように、前記柄杆2の中間部から該柄杆2の延伸方向に対して垂直に延伸するハンドル基部31と、このハンドル基部31から上方に屈曲させて設けてなるとともに使用者が把持するためのグリップ33を先端部に設けてなる把持部32とを有する。また、一方の把持部32には、前記モータ11の電源スイッチとして機能する主電源スイッチ34及びスイッチレバー35を設けている。前記主電源スイッチ34は、ON及びOFFの2つの状態を選択的にとることができる。一方、前記スイッチレバー35は、使用者が刈払動作を行うべくグリップ33を把持した際に操作力を受け、図2に電気回路を概略的に示すように、前記主電源スイッチ34がONである状態でこのスイッチレバー35が操作力を受けた状態ではモータ11を通電状態とし、その他の状態ではモータ11を非通電状態とする。
【0022】
前記刈払部4は、前述したように、また、前記図1に示すように、前記動力部1の出力軸を介して付与された動力によって所要の回転速度で回転する回転刃41と、前記柄杆2の先端に位置し前記回転刃41を着脱可能に支持する取付部42とを有するものである。ここで、前記回転刃41と前記出力軸との間には図示しない傘歯車を介在させている。また、前記柄杆2の刈払部4に隣接する部位には、安全カバー43を設けている。なお、この刈払部4においては既存の種々の構成を採用することができる。例えば、回転刃41に替えて、ナイロン製紐状体等、回転動作により刈払作業を行うことが可能なものを採用することができる。
【0023】
前記警告手段5は、本実施形態では、前記図1に示すように、前記動力部1のカバー13に取り付けられた複数のLED51、及びこれら複数のLED51の点滅を制御する制御部52を利用してなるものである。ここで、LED51は本発明の発光体である。また、前記制御部52は、図示はしないが、CPU、記憶装置、入出力インタフェース等を備えた一般的なマイクロコンピュータシステムを利用して形成していて、入出力インタフェースにLED51を接続している。
【0024】
より具体的には、前記図2に示すように、この警告手段5の制御部52には、前記主電源スイッチ34がONである状態でスイッチレバー35に操作力が加えられた際に前記モータ11と同時に通電するようにしている。また、この警告手段5の制御部52の記憶装置には、CPUが実行することにより、いずれか1個のLED51のみ消灯し、残りのLED51は点灯している状態にするとともに、消灯するLED51を、所定時間間隔で変化させる制御を行うプログラムを内蔵している。このプログラムは、制御部52への通電開始すなわち回転刃41の回転動作の開始時点で実行を開始し、制御部52への通電期間中、すなわち回転刃41が回転動作を行う期間中継続して実行するようにしている。この制御部52が行う具体的な制御の手順について、フローチャートである図3を参照しつつ以下に述べる。ここで、各LED51に対して、回転刃41から最も遠い位置に配したものから順に1〜n(nはLED51の個数)の番号を付している。
【0025】
まず、ステップS1において、消灯させるLED51の番号を示す変数である変数Iを1にセットする。
【0026】
それから、ステップS2において、変数Iの値がn以下であるか否かを判定する。変数Iの値がn以下である場合には、ステップS3に進む。一方、変数Iの値がnより大きい場合には、ステップS6に進む。
【0027】
ステップS3において、変数Iが示す番号のLED51のみを消灯させ、他のLED51は点灯させた状態にする。すなわち、変数Iが示す番号のLED51以外の全てのLED51を点灯させた状態にする。
【0028】
ステップS4では、ステップS3の実行から所定時間が経過するまで待機する。
【0029】
ステップS5では、変数Iの値に1を加える。そして、ステップS2に戻る。
【0030】
ステップS6では、変数Iの値を1にセットする。そして、ステップS3に進む。
【0031】
このような制御を行うことにより、通電開始直後は番号1のLED51すなわち刈払部4から最も遠いLED51のみが消灯した状態となり、その後、所定時間が経過するごとに、消灯していたLED51が点灯し、消灯していたLED51の刈払部4側に位置するLED51が消灯する。そして、番号nのLED51すなわち刈払部4に最も近いLED51が消灯してからさらに所定時間が経過すると、番号nのLED51が点灯し、番号1のLED51が再び消灯する。その後、モータ11の運転中、上述した制御が繰り返される。すなわち、モータ11の運転中は、見かけ上、LED51による光の帯が途切れる位置が刈払部4に向けて移動する動きが繰り返される。
【0032】
なお、LED51の配置は種々に変更してよい。例えば、LED51を柄杆2に直交する平面に沿って環状に配置するようにしてもよく、また、LED51を複数列配置してもよい。
【0033】
以上に述べたように、本実施形態に係る動力刈払機の構成によれば、警告手段5が、音以外の手段、具体的にはLED51を点滅させるという手段により、回転刃41が回転動作中であることを遠方にいる者にも視認可能な形で示すようにしているので、モータ11を利用して動力部1を構成することにより騒音の低減を図りつつ、前記LED51の点滅により遠方にいる者も回転刃41が回転動作中であることを認識することができる。従って、騒音の低減と、不用意に回転動作中の動力刈払機の回転刃41に近づいてしまう事態の発生の抑制とを両立できる。
【0034】
また、前記警告手段5が、複数個のLED51を発光させることにより前記回転刃41が運転中であることを視認可能な手段で外部に示すものであるので、遠方にいる者に対してより効果的に回転刃41が回転動作中であることを認識させることができる。また、発光体としてLED51を採用しているので、消費電力の低減を図りつつ、遠方にいる者に対して回転刃41が回転動作中であることを認識させるのに十分な光量を確保することができる。
【0035】
そして、前記警告手段5が、複数個のLED51を所定の順序で点滅させるものであるので、この警告手段5の表示は、LED51が消灯する箇所を所定の速度で動かしているものであるように認識され、従って回転刃41が回転動作中であることをさらに効果的に認識させることができる。
【0036】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0037】
例えば、エンジンを利用して動力部を構成した動力刈払機に、上述した実施形態に係る警告手段を設けるようにしてもよい。この場合、例えば発光体であるLEDを利用して警告手段を構成するとともに、エンジンにより発電を行い、発電された電力を警告手段に供給するようにするとよい。このようなものであれば、聴力に障害がある者に対しても、回転刃が回転動作中であることを認識させることができるからである。
【0038】
また、発光体の点滅により回転刃が回転動作中であることを視認可能な手段で外部に示す警告手段において、発光体として、白熱電球等、LED以外のものを採用してもよい。
【0039】
また、発光体の点滅により回転刃が回転動作中であることを視認可能な手段で外部に示す警告手段の代わりに、例えば、回転動作可能な表示板を設け、回転刈払体が回転動作中である場合にのみこの表示板を回転させるように構成した警告手段や、回転刈払体が回転動作中である場合にのみ例えば動力部のモーターケースの外部に突出し、回転刈払体が回転動作中でない場合には動力部のモーターケースに収納される警告手段を設けるようにしてもよい。
【0040】
さらに、発光体を利用して警告手段を形成する場合、発光体は1つだけ設けるようにしてもよい。この場合、発光体を所定時間ごとに点滅させる態様を採用してもよく、また、回転刈払体が回転動作中である際には発光体を常時点灯させる態様を採用してもよい。加えて、発光体を複数個設ける場合であっても、複数個設けた発光体の全てを所定時間ごとに同時に点滅させるようにする態様や、いずれか1個の発光体のみを点灯させるようにするとともに点灯させる発光体を所定時間ごとに切り替える態様や、回転刈払体が回転動作中である際には複数個設けた発光体を常時点灯させる態様等、上述した実施形態におけるもの以外の態様を採用してもよい。
【0041】
そして、図4に示すように、LED等の発光体を利用した警告手段5を、動力部1だけでなく、柄杆2にも設けるようにしてもよい。このようなものであれば、回転刃41等の回転刈払体により近い部位に警告手段5が位置するため、より効果的に回転刈払体が回転動作中であることを認識させることができる。なお、この図4を参照しつつ述べた実施形態については、以上に述べた点以外は上述した実施形態におけるものと共通の構成を有し、対応する部位には同一の名称及び符号を付している。
【0042】
加えて、動力刈払機に限らず、作業部として噴霧ノズルを有する背負い式動力噴霧機や、作業部として排気口を有するブロアーや、作業部として柳刃を有するカルチ等、エンジンやモータ等の動力源を備えた動力部を有し、農園芸作業を行うときに作業者が携帯して使用する農園芸用機械全般に本発明を適用してよい。
【0043】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0044】
1…動力部
11…モータ(動力源)
13…カバー
2…柄杆
4…刈払部
41…回転刃(作業部、回転刈払体)
5…警告手段
51…LED(発光体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力部と、前記動力部から動力の供給を受けて動作する作業部と、前記作業部以外の箇所に設けてなり前記作業部が作業中であることを視認可能な手段で外部に示す警告手段とを具備することを特徴とする農園芸用機械。
【請求項2】
前記動力部が、電力の供給を受け作業部を駆動するモータを利用するものである請求項1記載の農園芸用機械。
【請求項3】
前記動力部が、動力源と、動力源を収納するカバーとを備えてなるとともに、このカバーを基端として延伸する柄杆をさらに具備し、この柄杆の先端に前記作業部を取り付けてなる請求項1又は2記載の農園芸用機械。
【請求項4】
前記警告手段が、複数個の発光体を発光させることにより前記作業部が動作中であることを視認可能な手段で外部に示すものである請求項1、2又は3記載の農園芸用機械。
【請求項5】
前記警告手段が、複数個の発光体を所定の順序で点滅させるものである請求項4記載の農園芸用機械。
【請求項6】
前記作業部が、前記動力部から動力の供給を受けて回転動作することにより刈払作業を行う回転刈払体である請求項1、2、3、4又は5記載の農園芸用機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−125292(P2011−125292A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288295(P2009−288295)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(304065879)株式会社 マルナカ (12)
【Fターム(参考)】