説明

農産物から農薬を除去する方法

【課題】
茶葉、米類、麦類、薬草、コーヒー豆の農産物から残留農薬を大量、安価、品質、組成を劣化させること無く除去する方法に関する。
【解決手段】
農産物を過熱水蒸気の雰囲気中、180〜280℃の温度で加熱乾燥することを特徴とする。
上記農産物が茶葉であって、加熱時間が60〜180秒であることを特徴とする。
上記農産物が玄米、玄麦であって、加熱時間が2〜4分で4〜6回繰り返し行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物から農薬を除去する方法に係わり、更に詳しくは、茶葉、米類、麦類、薬草等の農産物から農薬を除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶葉、米類、麦類、薬草、コーヒー豆の農産物は人間の飲食に供されるもので無農薬で栽培されることが望ましいが、現実は農薬が散布されている。
従来茶葉等の農産物から農薬を除去する方法としては、洗浄水の超音波振動で除去する方法(特許文献1)、酸化チタンの触媒を利用して除去する方法(特許文献2)、スフェロゾームを含有する非水溶性農薬除去剤(特許文献3)が開示されているがいずれも除去しきれず農薬が残留する欠点、コスト高、鮮度が落ちる等の欠点がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−321021号公報
【特許文献2】特開2004−357668号公報
【特許文献3】特開2002−35158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、安価、簡単、成分、品質、鮮度を劣化させること無く農薬を完全除去出来る方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点に関して鋭意研究を行った結果、下記の知見を得た。
すなわち茶葉、米類、麦類、薬草、コーヒー豆の農産物を、過熱水蒸気の雰囲気中、
180〜280℃の温度で加熱乾燥し、茶葉にあっては、加熱時間60〜180秒が好ましいこと、そして玄米、玄麦にあっては、加熱時間2〜4分で4〜6回繰り返し行うことが好ましいことを見出した。
本発明の以上の知見に基づいてなされたもので、下記の構成からなるものである。
1.農産物を過熱水蒸気の雰囲気中、180〜280℃の温度で加熱乾燥することを特徴とする農産物から農薬を除去する方法。
2.上記農産物が茶葉であって、加熱時間が60〜180秒であることを特徴とする上記1に記載の農産物から農薬を除去する方法。
3.上記農産物が玄米、玄麦であって、加熱時間が2〜4分で4〜6回繰り返し行うことを特徴とする上記1に記載の農産物から農薬を除去する方法。
【発明の効果】
【0006】
農薬除去率が高い(農薬が残存しない)
鮮度、成分、品質が劣化しない
大量処理が可能である
極めて安価である
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
茶葉の農薬除去処理
茶葉に対して荒茶の工程で行う。
すなわち茶園で摘んだ茶葉を洗浄した後、温度180〜280℃の過熱水蒸気の雰囲気に60〜180秒当てると表面に残存する農薬成分が揮散蒸発する。
過熱水蒸気は無酸素状態であるので、茶葉は鮮度、品質、成分が劣化することも無く、農薬成分のみを揮散除去できる。
加熱後の茶葉は粗揉、揉捻、中揉、精揉、乾燥等の処理をして荒茶として、ついで火入れ、篩分け等の仕上げ処理をして製品とする。
加熱温度、時間が上限を越えたとき、鮮度、品質、成分劣化するので好ましくない。
下限未満では農薬の揮散除去が不十分で一部残留するので、下限以上が好ましい。
薬草については、茶葉と同じ条件で処理できる。
【0008】
米類、麦類、コーヒー豆等については、茶葉と同じく温度180〜280℃の過熱水蒸気の雰囲気で、加熱時間2〜4分で4〜6回(トータル8〜24分)繰り返すと表面に残存する農薬成分が揮散蒸発する。
米類、麦類は玄米、玄麦の状態で加熱することが出来る。
加熱温度、時間が上限を越えたとき、鮮度、品質、成分劣化するので好ましくない。
下限未満では農薬の揮散除去が不十分で一部残留するので、下限以上が好ましい。
コーヒー豆等については、米類、麦類と同じ条件で処理できる。
【実施例1】
【0009】
茶葉の加熱テスト
生茶葉に農薬クロチアニジンの1000倍液に浸漬後、取り出して乾燥してすりつぶして残留農薬量をガスクロマトグラフ法で定量した。
次に、農薬クロチアニジンの1000倍液に浸漬後、取り出して乾燥した生茶葉500gをステンレス製の箱に入れて、内容積500×500×500mmの過熱水蒸気加熱炉に入れて、250℃で60秒加熱後、取り出して冷却した。
取り出した生茶葉をすりつぶして残留農薬量を定量した。
【0010】
結果
加熱処理前の残留農薬量と加熱後の農薬量を比較すると、加熱前の農薬は過熱水蒸気による加熱で100%揮散除去できた。
また脱色、香味が消えることも無かった。
カフェイン、タンニン、ビタミンCの成分変化も認められなかった。
【実施例2】
【0011】
米の加熱テスト
玄米を農薬アグロスリンの2000倍液に浸漬後、取り出して乾燥して、すりつぶして粉にして残留農薬量をガスクロマトグラフ法で定量した。
次に、農薬アグロスリンの2000倍液に浸漬後、取り出して乾燥した玄米500gをステンレス製の箱に入れて、内容積500×500×500mmの過熱水蒸気加熱炉に入れて、200℃で3分/1回、5回繰り返して加熱した。
冷却後、玄米をすりつぶして粉にして残留農薬量を定量した。
【0012】
結果
加熱処理前の残留農薬量と加熱後の農薬量を比較すると、加熱前の農薬は過熱水蒸気による加熱によって100%揮散除去できた。
【産業上の利用可能性】
【0013】
茶葉、米等の農産物の残留農薬を大量、かつ安価に完全除去処理できるので、農業分野で極めて有用な技術である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
農産物を過熱水蒸気の雰囲気中、180〜280℃の温度で加熱乾燥することを特徴とする農産物から農薬を除去する方法。
【請求項2】
上記農産物が茶葉であって、加熱時間が60〜180秒であることを特徴とする請求項1に記載の農産物から農薬を除去する方法。
【請求項3】
上記農産物が玄米、玄麦であって、加熱時間が2〜4分で4〜6回繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の農産物から農薬を除去する方法。


【公開番号】特開2006−325405(P2006−325405A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149289(P2005−149289)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(301047957)株式会社テラボンド (11)
【Fターム(参考)】