説明

農産物の内部品質測定装置

【課題】測定精度を常に良好とすることができるとともに、製造コスト及びランニングコストを低減させることができる農産物の内部品質測定装置を提供する。
【解決手段】投光手段1と、該投光手段1から照射されて農産物Nを透過した検出光を導く第1導光手段2と、投光手段1から照射される光を参照光として導く第2導光手段3と、第1導光手段2で導かれた検出光又は第2導光手段3で導かれた参照光を任意選択的に通過させ又は遮光する選択手段4と、該選択手段4により通過した検出光を分析又は参照光により校正される分光分析手段5とを具備し、分光分析手段5による検出光の分析に基づき農産物Nの内部品質を測定し得る農産物の内部品質測定装置において、選択手段4は、第2導光手段3で導かれた参照光を内部で拡散反射させつつ第1導光手段2の光軸L1まで導く拡散板7を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミカンやリンゴ等の農産物の内部品質を非破壊にて測定するための農産物の内部品質測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、近赤外光を利用した分光法により、農産物の糖度や酸度など内部品質を非破壊で測定し得る装置が提案されている。かかる農産物の内部品質測定装置の多くは、投光手段から農産物に光を照射し、その農産物を透過した透過光若しくは農産物から反射した反射光から吸光度(特定成分による光の吸収度)を算出することにより糖度や酸度などの内部品質を測定するよう構成されている。
【0003】
即ち、サンプルとなる農産物に光を照射し、その農産物を透過若しくは反射した光から吸光度スペクトルを求めた後、該サンプルとなる農産物の糖度又は酸度を周知の破壊試験(糖度については屈折糖度計、酸度については電気伝導率メータなどを用いた試験が挙げられる)にて求め、吸光度スペクトルと糖度或いは酸度の相関関係を表す式を作成し、これを検量線として予め記憶するとともに、農産物の透過光若しくは反射光から算出された吸光度を当該検量線に代入することで、その農産物の糖度や酸度に係る内部品質が測定されていたのである。
【0004】
通常、上記の如き農産物の内部品質測定装置においては、農産物を透過した透過光若しくは農産物から反射した反射光(これらを便宜上「検出光」という)を分析する分光分析手段を具備しており、この分光分析手段による分析に基づき農産物の内部品質を測定し得るようになっている。然るに、分光分析手段においては、経時変化等による測定誤差を回避すべく測定前に校正を行う必要があるが、当該校正のために投光手段から照射される光を参照光として直接導くことが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1で開示された内部品質測定装置においては、参照光又は検出光を選択的に分光分析手段に取り込むためのファイバ支持体(選択手段)を具備し、該ファイバ支持体が上下に移動することにより、参照光を取り込みつつ検出光を遮光して分光分析手段の校正を行うとともに、検出光を取り込みつつ参照光を遮光して分光分析手段による当該検出光の分析を行うよう構成されている。
【特許文献1】特開2000−206037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の農産物の内部品質測定装置においては、分光分析手段に対して検出光を導く光路、及び参照光を導く光路の各々に複数の鏡(ミラー)を配設する必要があったため、当該鏡の経時変化(剥離や酸化による劣化)により測定精度が悪化してしまう虞があった。また、鏡の取り付け位置や角度を精度よく行うには高度な加工精度が要求されることから製造コストが嵩んでしまうとともに、メンテナンスも困難となることからランニングコストも嵩んでしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、測定精度を常に良好とすることができるとともに、製造コスト及びランニングコストを低減させることができる農産物の内部品質測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、農産物に対して光を照射する投光手段と、該投光手段から照射されて前記農産物を透過又は反射した検出光を導く第1導光手段と、前記投光手段から照射される光を参照光として導くとともに、前記第1導光手段と光軸が異なる第2導光手段と、前記第1導光手段で導かれた検出光又は前記第2導光手段で導かれた参照光を任意選択的に通過させ又は遮光する選択手段と、該選択手段により通過した検出光を分析又は参照光により校正される分光分析手段とを具備し、前記分光分析手段による検出光の分析に基づき農産物の内部品質を測定し得る農産物の内部品質測定装置において、前記選択手段は、前記第2導光手段で導かれた参照光を内部で拡散反射させつつ前記第1導光手段の光軸まで導く拡散板を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の農産物の内部品質測定装置において、前記選択手段には、前記検出光又は参照光の通過又は遮光を任意に行わせる複数の光路形成部位が形成され、所望の光路形成部位が前記第1導光手段及び第2導光手段の光軸と対応した位置となるよう当該選択手段を駆動する駆動手段を具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の農産物の内部品質測定装置において、前記光路形成部位は、前記拡散板を介して参照光を通過させつつ検出光を遮光する校正用光路形成部位と、参照光を遮光しつつ検出光を通過させる測定用光路形成部位とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の農産物の内部品質測定装置において、前記拡散板は、前記第2導光手段の光軸上の部位であって参照光を取り込む導入部と、前記第1導光手段の光軸上の部位であって前記分光分析手段へ参照光を通過させる導出部とを有した保持部材にて保持されたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の農産物の内部品質測定装置において、前記拡散板は、前記導入部及び導出部に対応する部分を除く少なくとも表面及び裏面に反射率が高い反射部材を被覆して成ることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の農産物の内部品質測定装置において、前記保持部材の内面は、反射率が高い反射部材を被覆して成ることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項2〜6の何れか1つに記載の農産物の内部品質測定装置において、前記選択手段は、円板状の回転板から成り、当該回転板の周方向に前記光路形成部位が並んで形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項2〜6の何れか1つに記載の農産物の内部品質測定装置において、前記選択手段は、直線状の平板から成り、当該平板の長手方向に前記光路形成部位が並んで形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、第2導光手段で導かれた参照光を内部で拡散反射させつつ第1導光手段の光軸まで導く拡散板を具備しているので、分光分析手段に対して検出光を導く光路、及び参照光を導く光路の途中に鏡(ミラー)が不要となることから、測定精度を常に良好とすることができるとともに、製造コスト及びランニングコストを低減させることができる。また、拡散板の内部で参照光が拡散反射しつつ分光分析手段まで導かれることとなるので、当該拡散反射により参照光が均一化され、当該分光分析手段の校正を精度よく行うことができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、選択手段には、検出光又は参照光の通過又は遮光を任意に行わせる複数の光路形成部位が形成され、所望の光路形成部位が第1導光手段及び第2導光手段の光軸と対応した位置となるよう当該選択手段を駆動する駆動手段を具備したので、当該選択手段による選択をよりスムーズ且つ容易に行わせることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、光路形成部位は、拡散板を介して参照光を通過させつつ検出光を遮光する校正用光路形成部位と、参照光を遮光しつつ検出光を通過させる測定用光路形成部位とを有するので、分光分析手段による分析、校正の選択をよりスムーズ且つ容易に行わせることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、拡散板は、第2導光手段の光軸上の部位であって参照光を取り込む導入部と、第1導光手段の光軸上の部位であって分光分析手段へ参照光を通過させる導出部とを有した保持部材にて保持されたので、より確実に拡散板の内部で参照光を拡散反射させつつ分光分析手段まで導くことができ、精度よく参照光による校正を行わせることができる。
【0020】
請求項5、6の発明によれば、拡散板は、導入部及び導出部に対応する部分を除く少なくとも表面及び裏面に反射率が高い反射部材を被覆して成り、或いは保持部材の内面は、反射率が高い反射部材を被覆して成るので、拡散板内での拡散反射をより良好に行わせることができる。
【0021】
請求項7、8の発明によれば、選択手段が円板状の回転板から成り、当該回転板の周方向に光路形成部位が並んで形成され、或いは選択手段が直線状の平板から成り、当該平板の長手方向に光路形成部位が並んで形成されたので、当該選択手段による選択をより容易且つスムーズに行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る農産物の内部品質測定装置は、ミカンやリンゴ等の農産物の内部品質を非破壊にて測定するためのものであり、図1、2に示すように、光源から成る投光手段1と、第1導光手段2と、第2導光手段3と、選択手段4と、分光分析手段5とから主に構成されている。
【0023】
投光手段1は、ハロゲンランプ等の光源kを用い、搬送コンベアHの搬送面上にある農産物Nに対して光(例えば600〜1100nmの光)を照射するもので、図10、11に示すように、冷却フィン11aが外周面に形成されたケーシング11と、冷却ファンfとを有して構成されている。ケーシング11は、その内部に光源kから放射された光がリフレクターrにより集光され、その集光された位置にケーシング11内の乱反射による影響を取り除くマスクmと、集光レンズR2とを収容して成るものであり、これにより集光レンズR2を透過した光が農産物N側に照射されるよう構成されている。
【0024】
第1導光手段2は、投光手段1から照射されて農産物Nを透過した光(これを「検出光」という)を導くためのものであり、農産物Nを挟んで投光手段1と対向配置された受光部2aを有した光ファイバーから成るとともに、集光レンズR1を内在したレンズ鏡筒部2cと接続されている。即ち、農産物Nを透過して受光部2aで受光された検出光は、光ファイバーを介してレンズ鏡筒部2cに至り、その基端2bから分光分析手段5側に導かれるのである。尚、本実施形態においては、第1導光手段2が農産物Nを透過した光を導いているが、農産物Nを反射した光(この場合も「検出光」という)を導くものとしてもよい。
【0025】
第2導光手段3は、投光手段1から照射される光を参照光として導くとともに、第1導光手段2と光軸が異なるものであり、先端3aが投光手段1を臨みつつ基端3bが分光分析手段5を臨ませた光ファイバーから成る。即ち、第1導光手段2が農産物Nを透過又は反射した検出光を導くものであるのに対し、第2導光手段3は、投光手段1の使用環境(温度等)による光源kの光量のばらつきや経時変化による光源kの光量の変化を校正するための参照光として直接導くよう構成されているのである。尚、便宜上、第1導光手段2の光軸を符号L1、第2導光手段3の光軸を符号L2で示すこととする(図4参照)。
【0026】
より具体的には、第2導光手段3の先端3a側は、図10、11で示すように、取付金具12の取付孔12bから挿通されてスリット12aにより嵌合されることにより固定され、第2導光手段3の先端3aが光源kのフィラメント(不図示)に向くように、所定角度α(35度程度)だけ屈曲して形成されることにより、投光手段1の光をより確実に導き得るよう構成されている。また、第2導光手段3の基端3b側は、第1導光手段2のレンズ鏡筒部2cと略平行に延びて支持されており、当該レンズ鏡筒部2cの基端2bからの検出光と、第2導光手段3の基端3bからの参照光とが略平行になるよう設定されている。これにより、第1導光手段2の光軸L1と第2導光手段3の光軸L2とが異なるようになっている。
【0027】
選択手段4は、図3、4に示すように、第1導光手段2で導かれた検出光又は第2導光手段3で導かれた参照光を任意選択的に通過させ又は遮光するものであり、図3、4に示すように、円板状の回転板から成り、当該回転板の周方向に複数の光路形成部位4a〜4eが並んで形成されている。この選択手段4は、駆動手段としてのモータMにより回転駆動され、所望の光路形成部位(光路形成部位4a〜4eの何れか)が第1導光手段2及び第2導光手段3の光軸L1、L2と対応した位置となるよう構成されている。
【0028】
分光分析手段5は、選択手段4により通過した検出光又は参照光を受光し、検出光を分析又は参照により校正を行うものであり、図1に示すように、反射鏡A1、凹面回析格子A2及び受光センサBと不図示の制御装置を具備している。そして、受光センサBで検出光が検出されると、検出光の情報が不図示の制御装置に送信され、制御装置は受光情報を分析して農産物の内部品質を測定し得るようになっている。尚、分光分析手段5の校正については後述することとする。
【0029】
一方、選択手段4に形成された光路形成部位4a〜4eは、検出光又は参照光の通過又は遮光を任意行わせるものであり、主に校正用光路形成部位と測定用光路形成部位とに大別される。校正用光路形成部位は、校正を行わせるべく拡散板7を介して参照光を通過させつつ検出光を遮光するものであり、図中の符号4a、4bで示すものがこれに相当する。測定用光路形成部位は、分光分析手段5による検出光の分析を行わせるべく参照光を遮光しつつ検出光を通過させるものであり、図中の符号4c〜4eで示すものがこれに相当する。尚、分光分析手段5側へ通過する検出光及び参照光は、当該分光分析手段5に形成されたスリット5aから取り入れられるようになっている。
【0030】
校正用光路形成部位4aは、光源kの経時変化による影響を取り除くための校正を行うために用いられ、参照光を分光分析手段5側へ通過させるための光路を形成する部位(校正用光路形成部位)であり、図5に示すように、拡散板7と、保持部材Cと、カットフィルタ6とを具備している。拡散板7は、第2導光手段3で導かれた参照光を内部で拡散反射させつつ第1導光手段2の光軸L1まで導くためのものであり、例えばガラス内に乳白色の光拡散物質を分散させることで拡散特性を利用したオパールガラス製のもの、或いは研磨剤により基板を磨りガラス(砂面)とすることで、つや消し効果を利用したフロスト型のものを適用することができる。
【0031】
また、拡散板7は、図9に示すように、導入部4ab及び導出部4aaに対応する部分を除く少なくとも表面及び裏面に反射率が高い反射部材7aを被覆して成るものである。この被覆として、例えばアルミ、金、銀を蒸着した部位とするのが好ましい。更に、保持部材Cの内面が、反射率が高い反射部材(アルミ、金、銀の蒸着等)を被覆して成るものとするのが好ましい。このような構成によれば、拡散板7内での拡散反射をより良好に行わせることができる。
【0032】
カットフィルタ6は、投光手段1からの参照光の波長を選択するためのものであり、所望波長域の参照光を通過させる一方、それ以下の波長域の参照光を遮光し得るようになっている。保持部材Cは、拡散板7を選択手段4に固定させつつ保持するためのものであり、第2導光手段3の光軸L2上の部位であって参照光を取り込む導入部4abと、第1導光手段2の光軸L1上の部位であって分光分析手段5へ参照光を通過させる導出部4aaとを有している。導出部4aaは、分光分析手段5に形成されたスリット5aの形状に合わせて楕円状に形成されている(図3参照)。尚、後述する導出部4ba、通過口4ca、通過口4da(4ea)も同様の形状である。
【0033】
従って、拡散板7が、導入部4abと導出部4aaとを有した保持部材Cにて保持されたので、より確実に拡散板7の内部で参照光を拡散反射させつつ分光分析手段5まで導くことができ、精度よく参照光による校正を行わせることができる。また、保持部材Cにより、第1導光手段2からの検出光は遮光されることとなり、第2導光手段3からの参照光のみが選択的に分光分析手段5へ導かれることとなる。
【0034】
波長校正用光路形成部位4bは、上記光路形成部位4aと同様、参照光を検出して分光分析手段5の校正を行うための光路を形成する部位(校正用光路形成部位)であり、図6に示すように、拡散板7と、保持部材Cと、カットフィルタ6と、波長校正フィルタEとを具備している。拡散板7、保持部材C及びカットフィルタ6については、光路形成部位4aのものと同様であり、拡散板7が導入部4bbと導出部4baとを有した保持部材Cにて保持されている。
【0035】
尚、波長校正フィルタEは、保持部材Cの導光部4baに設けられ、分光分析手段5の校正(具体的には受光センサBの波長校正)を行わせるためのフィルタである。また、保持部材Cにより、第1導光手段2からの検出光は遮光されることとなり、第2導光手段3からの参照光のみが選択的に分光分析手段5へ導かれることとなる。
【0036】
測定用光路形成部位4cは、検出光を分光分析手段5側へ通過させて当該検出光の分析を行わせるための部位(測定用光路形成部位)であり、図7に示すように、通過口4ca、4cbと、光トラップ8とを具備している。通過口4ca、4cbは、第1導光手段2で導かれた検出光を分光分析手段5側へ通過させるためのものである。また、光トラップ8は、第2導光手段3で導かれた参照光を導入口8aから取り込み、参照光が迷光となって検出光に影響を与えないようにするためのものであり、これにより、第1導光手段2からの検出光のみが選択的に分光分析手段5へ導かれることとなる。
【0037】
測定用光路形成部位4d(4e)は、光路形成部位4cと同様、検出光を分光分析手段5側へ通過させて当該検出光の分析を行わせるための部位(測定用光路形成部位)であり、図8に示すように、通過口4da(4ea)、4db(4eb)と、光トラップ8と、減光フィルタ9(10)とを具備している。通過口4da(4ea)、4db(4eb)、及び光トラップ8については、光路形成部位4cのものと同様である。減光フィルタ9(10)は、測定対象の農産物Nに合わせて選択されるべきもので、減光率が互いに異なる減光フィルタが光路形成部位4d、4eの通過口4da(4ea)、4db(4eb)内にそれぞれ形成されている。
【0038】
次に、上記農産物の内部品質測定装置における作用について説明する。
まず、モータMを駆動して選択手段4を回転させ、光路形成部位4aが第1導光手段2及び第2導光手段3の光軸L1、L2と対応した位置となるようにする。かかる状態においては、第1導光手段2で導かれた検出光は、保持部材Cにて遮光されるとともに、第2導光手段3で導かれた参照光が拡散板7を介して分光分析手段5側に導かれることとなり、この導かれた参照光が受光センサBにて検出されることとなる。光源kは、周囲の状況(温度)やランプの劣化等により光量が経時的に変化するため、この影響を取り除くための校正を行うこととなる。
【0039】
その後、再びモータMを駆動して選択手段4を回転させ、光路形成部位4bが第1導光手段2及び第2導光手段3の光軸L1、L2と対応した位置となるようにする。かかる状態においては、第1導光手段2で導かれた検出光は、保持部材Cにて遮光されるとともに、第2導光手段3で導かれた参照光が拡散板7及び波長校正フィルタEを介して分光分析手段5側に導かれることとなり、この導かれた参照光が受光センサBにて検出されることとなる。これにより、分光分析手段5の校正(波長校正)が行われることとなる。
【0040】
更にその後、モータMを駆動して選択手段4を僅かに回転させ、何れの光路形成部位4a〜4eも第1導光手段2及び第2導光手段3の光軸L1、L2と対応した位置とならないようにする。かかる状態においては、第1導光手段2で導かれた検出光、及び第2導光手段3で導かれた参照光は、何れも分光分析手段5側に導かれることがなく、これによりダーク値測定(暗電流測定)を行うことができる。
【0041】
上記の如き一連の前処理工程(準備工程)が終了すると、モータMを再び駆動して、光路形成部位4c〜4eの何れかが第1導光手段2及び第2導光手段3の光軸L1、L2と対応した位置となるようにする。例えば、内部品質を測定すべき農産物Nに応じ、検出光をそのまま分光分析手段5側へ導く場合は、光路形成部位4cが第1導光手段2及び第2導光手段3の光軸L1、L2と対応した位置となるようにするとともに、検出光を所定の減光率で減光しつつ分光分析手段5側へ導く場合は、光路形成部位4d又は4eが第1導光手段2及び第2導光手段3の光軸L1、L2と対応した位置となるようにする。
【0042】
しかして、参照光は、光トラップ8で遮光されるとともに、検出光が分光分析手段5の受光センサBに至ることとなり、当該検出光の波長の分析がなされることとなる。例えば光路形成部位4aにより得られた参照光の光量R(λ)と、光路形成部位4c〜4eのいずれかにより得られた検出光の光量T(λ)と、ダーク値D(λ)とから各波長における吸光度K(λ)を次式により計算する。
【0043】
K(λ)=log{(R(λ)−D(λ))/(T(λ)−D(λ))}
上記吸光度K(λ)から吸光度スペクトルを検出する一方、糖度或いは酸度の相関関係を表す式を作成し、これを検量線として予め記憶するとともに、農産物の透過光から算出された吸光度を二次微分した後に当該検量線に代入することで、その農産物Nの糖度や酸度に係る内部品質を測定することができるのである。
【0044】
上記構成によれば、第2導光手段3で導かれた参照光を内部で拡散反射させつつ第1導光手段2の光軸L1まで導く拡散板7を具備しているので、分光分析手段5に対して検出光を導く光路、及び参照光を導く光路の途中に鏡(ミラー)が不要となることから、測定精度を常に良好とすることができるとともに、製造コスト及びランニングコストを低減させることができる。また、拡散板7の内部で参照光が拡散反射しつつ分光分析手段5まで導かれることとなるので、当該拡散反射により参照光が均一化され、当該分光分析手段5の校正を精度よく行うことができる。
【0045】
更に、選択手段4には、検出光又は参照光の通過又は遮光を任意に行わせる複数の光路形成部位4a〜4eが形成され、所望の光路形成部位が第1導光手段2及び第2導光手段3の光軸L1、L2と対応した位置となるよう当該選択手段4を駆動するモータM(駆動手段)を具備したので、当該選択手段4による選択をよりスムーズ且つ容易に行わせることができる。また更に、選択手段4が円板状の回転板から成り、当該回転板の周方向に光路形成部位4a〜4eが並んで形成されたので、当該選択手段4による選択をより容易且つスムーズに行わせることができる。
【0046】
また、光路形成部位は、拡散板を介して参照光を通過させつつ検出光を遮光する校正用光路形成部位(4a、4b)と、参照光を遮光しつつ検出光を通過させる測定用光路形成部位(4c〜4e)とを有するので、分光分析手段5による分析、校正の選択をよりスムーズ且つ容易に行わせることができる。
【0047】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図12、13に示すように、農産物Nの両側から光を照射する一対の投光手段1a、1bを具備し、これら投光手段1a、1bからそれぞれ参照光を導く第2導光手段13a、13bが延設されたものに適用してもよい。この場合、図12に示すように、第2導光手段13a、13bの各先端13aa、13baが光源側を向くよう屈曲形成しておくのが好ましく、図13に示すように、一対の第2導光手段13a、13bを途中でまとめ、一つの導光手段13cとして選択手段4側へ導くようにするのが好ましい。尚、一対の第2導光手段13a、13bを複数の光ファイバから成るものとした場合、導光手段13cにおいては導光手段13cの先端13caにて均一な光となるように、各複数の光ファイバをランダムに配置したものとするのが好ましい。
【0048】
更に、上記実施形態においては、選択手段4が円板状の回転板から成り、当該回転板の周方向に光路形成部位4a〜4eが並んで形成されているが、これに代え、図14に示すように、選択手段14が直線状の平板から成り、当該平板の長手方向に光路形成部位14a〜14dが並んで形成されたものとしてもよい。この場合、選択手段14は、ラックアンドピニオン機構15により駆動され、所望の光路形成部位(14a〜14d)が第1導光手段2及び第2導光手段3の光軸L1、L2と対応した位置となるようにする。この場合であっても、選択手段14による選択をより容易且つスムーズに行わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
選択手段が第2導光手段で導かれた参照光を内部で拡散反射させつつ第1導光手段の光軸まで導く拡散板を備えた農産物の内部品質測定装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る農産物の内部品質測定装置を示す平面模式図
【図2】同農産物の内部品質測定装置を示す側面模式図
【図3】同農産物の内部品質測定装置における選択手段を示す模式図
【図4】同選択手段を示す斜視図
【図5】同農産物の内部品質測定装置に係る校正用光路形成部位を示す模式図
【図6】同農産物の内部品質測定装置に係る波長校正用光路形成部位を示す模式図
【図7】同農産物の内部品質測定装置に係る測定用光路形成部位を示す模式図
【図8】同農産物の内部品質測定装置に係る他の測定用光路形成部位を示す模式図
【図9】同農産物の内部品質測定装置における拡散板を示す(a)斜視図(b)縦断面図
【図10】同農産物の内部品質測定装置における投光手段を示す平面図
【図11】同投光手段を示す断面図
【図12】本発明の他の実施形態に係る農産物の内部品質測定装置における投光手段等を示す模式図
【図13】同他の実施形態に係る農産物の内部品質測定装置における選択手段及び分光分析手段近傍を示す模式図
【図14】本発明の更に他の実施形態に係る農産物の内部品質測定装置における選択手段を示す模式図
【符号の説明】
【0051】
1 投光手段
2 第1導光手段
3 第2導光手段
4 選択手段
4a〜4e 光路形成部位
5 分光分析手段
6 カットフィルタ
7 拡散板
8 光トラップ
9、10 減光フィルタ
11 ケーシング
12 取付金具
13a、13b 第2導光手段
14 選択手段
14a〜14d 光路形成部位
N 農産物
M モータ(駆動手段)
C 保持部材
L1 (第1導光手段の)光軸
L2 (第2導光手段の)光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農産物に対して光を照射する投光手段と、
該投光手段から照射されて前記農産物を透過又は反射した検出光を導く第1導光手段と、
前記投光手段から照射される光を参照光として導くとともに、前記第1導光手段と光軸が異なる第2導光手段と、
前記第1導光手段で導かれた検出光又は前記第2導光手段で導かれた参照光を任意選択的に通過させ又は遮光する選択手段と、
該選択手段により通過した検出光を分析又は参照光により校正される分光分析手段と、
を具備し、前記分光分析手段による検出光の分析に基づき農産物の内部品質を測定し得る農産物の内部品質測定装置において、
前記選択手段は、前記第2導光手段で導かれた参照光を内部で拡散反射させつつ前記第1導光手段の光軸まで導く拡散板を備えたことを特徴とする農産物の内部品質測定装置。
【請求項2】
前記選択手段には、前記検出光又は参照光の通過又は遮光を任意に行わせる複数の光路形成部位が形成され、所望の光路形成部位が前記第1導光手段及び第2導光手段の光軸と対応した位置となるよう当該選択手段を駆動する駆動手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の農産物の内部品質測定装置。
【請求項3】
前記光路形成部位は、前記拡散板を介して参照光を通過させつつ検出光を遮光する校正用光路形成部位と、参照光を遮光しつつ検出光を通過させる測定用光路形成部位とを有することを特徴とする請求項2記載の農産物の内部品質測定装置。
【請求項4】
前記拡散板は、前記第2導光手段の光軸上の部位であって参照光を取り込む導入部と、前記第1導光手段の光軸上の部位であって前記分光分析手段へ参照光を通過させる導出部とを有した保持部材にて保持されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の農産物の内部品質測定装置。
【請求項5】
前記拡散板は、前記導入部及び導出部に対応する部分を除く少なくとも表面及び裏面に反射率が高い反射部材を被覆して成ることを特徴とする請求項4記載の農産物の内部品質測定装置。
【請求項6】
前記保持部材の内面は、反射率が高い反射部材を被覆して成ることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の農産物の内部品質測定装置。
【請求項7】
前記選択手段は、円板状の回転板から成り、当該回転板の周方向に前記光路形成部位が並んで形成されたことを特徴とする請求項2〜6の何れか1つに記載の農産物の内部品質測定装置。
【請求項8】
前記選択手段は、直線状の平板から成り、当該平板の長手方向に前記光路形成部位が並んで形成されたことを特徴とする請求項2〜6の何れか1つに記載の農産物の内部品質測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−298466(P2008−298466A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141995(P2007−141995)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(508134337)静岡シブヤ精機株式会社 (20)
【Fターム(参考)】