説明

迅速プロトタイプ作成のためのシステムおよび樹脂

本発明は、迅速プロトタイプ作成に関するシステムおよび樹脂に関する。このシステムは、(a)光感応性材料から3次元物体を作製する装置であり、入力光学系(IO)および出力光学系(OO)が、照明源から発せられた光が、空間光変調器(SLM)の個別に制御可能な光変調器(LM)を通して照明領域(IA)へ透過するのを容易にし、前記出力光学系(OO)が、空間光変調器(SLM)からの光のパターンを、照明領域(IA)上に集束させることを可能にする、装置と、(b)(A)アクリラート成分と、(B)メタクリラート成分と、(C)光開始剤とを含む樹脂組成物とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横断面の付加的処理(additive treatment)による3次元物体の迅速プロトタイプ作成およびその製造のためのシステムおよび樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元迅速プロトタイプ作成法では、時間集約的な洗浄の原因、または取替えの原因ともなりうる、光感応性材料との接触による露光システムの光学系の汚染が起こらないことが重要である。したがって、露光システムと光感応性材料とが接触する危険を回避するため、一般に、出力光学系と照明領域との間の距離は比較的に大きいことが好ましい。
【0003】
したがって、従来、硬化可能な液体光感応性材料の層の表面に所定のパターンに従って照射して、必要な3次元固体物体を積層式(layer wise)に生成する目的には、高強度レーザースポットが使用されている。レーザーを用いたこの最初の硬化の後、固化した物体は、いわゆるグリーン強度(green strength)、すなわち物品(article)が自立することができる強度を示す。後に、このような物体は、その最適な機械特性を獲得するため、高強度紫外線(UV)ランプを用いた後硬化(post cure)にかけられる。
【0004】
しかしながら、光硬化可能な液体の表面に高エネルギーレーザースポットを照射するこの工程では、大きな表面を、高速かつ正確に硬化させることができない。さらに、レーザービームによって大量のエネルギーを非常に小さな表面に短時間のうちに送達すると、材料内に大きな熱応力および機械応力が生じ、その結果、大きな収縮およびカーリング(curling)が起こる。さらに、レーザーは、ごく少数の特定の光開始剤だけが活性であり、ごく少数の特定の光開始剤だけしか使用することができない非常に独特な波長でのみ発光する。
【0005】
レーザーの代わりに、非コヒーレント(incoherent)UV光源が使用される場合、前記源は、必然的により低い放射強度を示す。したがって、大きな表面上に分散した低強度の非コヒーレントUV光源を有するマスクを導入しなければならない(WO00/21735、EP1250997)。
【0006】
しかしながら、このような機器を使用すると、このような低強度の非コヒーレント低強度放射は、高強度のレーザー放射と同じ硬化速度を達成することができず、物品が構築されている間、ならびに最後のUVフラッド硬化(UV flood cure)およびその後の物品が構築された浴からの取出しの前まで、物品が自立することができる十分なグリーン強度を提供するために、はるかに速く硬化する樹脂組成物を使用する必要があるという問題が生じる。WO2005/092598は、硬化速度が速いアクリルベースの配合物を記載している。
【0007】
しかしながら、速く硬化するポリマーは、硬化後にもろくなり、相当に収縮する傾向があり、それによって模型の正確さが低下し、模型の一部がカールする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明によって解決される課題は、大きな表面を短時間のうちに高い正確さで硬化させることができ、それによって、作製される物品が、高いグリーン強度、良好な機械特性、高い靭性、ならびに小さなカーリングおよび収縮を示す迅速プロトタイプ作成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、独立請求項1から11の諸特徴によって解決された。
システム
本発明は、光感応性材料から3次元物体を作製するシステムに関し、前記システムは、
照明源を備える露光システムと、
制御ユニットと
を備え、
それによって、前記露光システムが、
個別に制御可能な複数の光変調器を備える少なくとも1つの空間光変調器と、
前記少なくとも1つの空間光変調器に光学的に結合された入力光学系と、
前記少なくとも1つの空間光変調器に光学的に結合された出力光学系と
を備え、
前記入力光学系および前記出力光学系が、前記照明源から発せられた光が、前記空間光変調器の前記個別に制御可能な光変調器を通して照明領域へ透過するのを容易にし、
前記空間光変調器が、前記制御ユニットから発せられた制御信号に従って、前記入力光学系を透過した光のパターンを確立することを可能にし、
前記出力光学系が、前記少なくとも1つの空間光変調器からの光のパターンを、照明領域上に集束させることを可能にする。
【0010】
このシステムはさらに、光感応性材料として、
(A)少なくとも1種のアクリラート成分と、
(B)少なくとも1種のメタクリラート成分と、
(C)光開始剤と
を含む樹脂組成物を含む。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態によれば、出力光学系と照明領域との間の距離dは0.5から20mmであり、かつ/または照明源は非コヒーレント光を発生させる。
本発明の他の有利な実施形態では、この装置が、光感応性材料の所望の部分を照明し、この所望の部分に照射するために、露光システムを移動させ、前記光感応性材料の表面を横切って走査することができることを容易にする走査バー(scanning bar)を備える。
【0012】
3次元迅速プロトタイプ作成法では、露光システムの出力光学系が短時間でも光感応性材料と接触した場合、このことが、時間集約的な洗浄または取替えを出力光学系が必要とするような態様での出力光学系の汚染を引き起こすことがある。したがって、露光システムと光感応性材料の間の接触の危険を回避するため、一般に、出力光学系と照明領域の間の距離が比較的に大きいことが好ましい。
【0013】
このような配置では、たとえ個々の光ビームの方向間の不正確(inaccuracy)が小さくても、そのことが、深刻な問題となる可能性があり、一部のボクセル(voxel)が意図された位置から外れる原因となることもある。複数のビームの位置合せに関する問題を低減させるため、光学系の設計を変更することによって位置合せを向上させることに、相当の努力が注入された。このようにしてある向上が見られたとはいえ、個々の光ビームの位置合せをよりいっそう良好にすることが求められている。
【0014】
本発明の好ましい一実施形態によれば、出力光学系と光感応性材料の間の距離を0.5ないし20mmの値まで小さくすることによって、不良位置合せの不都合な結末の有利な低減を観察することができることが示された。このことは、個々の光ビームが、光感応性材料に最も近い出力光学系の部分から適当な小さな距離のところに集束するような特性を有する出力光学系を使用することによって可能になる。これによって、装置の効率が低下する危険を冒すことなく、光学系の設計における生産コストを減らすことができる。光ビームによる焦点は、全体として、製造中、少なくとも部分的に光感応性材料の上面と同一平面をなす照明領域を確立する。
【0015】
さらに、出力光学系と光感応性材料の間の距離を小さくすることによって、他の有益な利点も見られる。光の強度のより大きな部分が光感応性材料に伝達され、このことが、照明されたボクセルのより速い固化を促進し、したがってより高速な走査工程を容易にする。これによって、3次元物体のより効率的な製造が達成される。
【0016】
上記の有利な結果を得ることができる最大距離として、20mmが確立された。樹脂と接触する危険をあまり大きくすることなく適用できる最短距離として、0.5mmが確立された。
【0017】
本発明の実施形態によれば、他の手段を使用して、露光システムと光感応性材料の間の接触を防ぐことができ、それによって、距離が小さいことに関する以前には危ぶまれた問題が、このような距離が使用されない理由となる必要はないことが認められた。
【0018】
本発明の照明源は、深UVから遠IRまで、例えば200nmから100000nmまでの範囲の放射を発することができる。したがって用語「光」は、深UVから遠IRまで、例えば200nmから100000nmまでの範囲の放射に対応する。硬化可能な液体樹脂のステレオリソグラフィ浴(stereo lithography bath)を使用する用途は、波長200nmから500nmまでの紫外エネルギー範囲で実施されることが好ましい。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態では、このシステムの装置がさらに、光感応性材料を入れる槽(バット)を備える。しかしながら、槽を使用しないロールからロールへのウェブ付着(roll−to−roll web deposition)を使用することもできる。
【0020】
本発明に基づくシステムは、光感応性材料の表面が照明領域と実質的に一致するような量の光感応性材料、すなわち硬化可能な樹脂組成物を含む槽を備えることが好ましい。
前記出力光学系と前記光感応性材料の前記表面との間の好ましい距離は、この場合、0.5mmから20mm、好ましくは1mmから10mmである。
【0021】
出力光学系と照明領域の間の距離が小さいとき、このシステムは、硬化可能な樹脂組成物の浴の表面を、低エネルギー非コヒーレント光によって生み出される比較的に大きな照明領域で硬化させなければならない。
【0022】
前述のとおり、走査を実行して樹脂の表面を露光するとき、露光システムは、樹脂から小さな距離を置いた樹脂の上方を移動することができる。この非常に小さな距離のため、樹脂表面を横切る走査中に露光システムの下面に樹脂が付着する汚染の危険がある。このような汚染は例えば、製造中に表面からわずかに突き出ることがある構築された製品の部分によって起こることがある。これは例えば、塗り重ね装置(リコータ)が、構築プレートの一部に偶然に触れることによって、または、ある樹脂に関して、既に構築されたその下に広がる層内の応力が、この以前の層の構築された表面に凹凸を生じさせることがあることによって、引き起こされることがある。汚染は、例えばトラップされた体積を含む部分および広い平らな領域を重ね塗りした結果、層の質が不良になることによって起こることもある。
【0023】
露光システムが突き出た部分に触れた場合には、露光システムの下面が樹脂で汚染される。その結果として、表面を洗浄して樹脂を洗い流してからでないと、露光を再開することはできない。洗浄は、時間とコストのかかる工程である。さらに、露光システム内の微小光学系およびSLMモジュールが汚染され、または損傷する危険もある。
【0024】
結論として、下面の汚染を防ぎ、または減らす必要がある。
したがって、本発明の好ましい一実施形態によれば、本発明のシステムは、出力光学系と照明領域との間に少なくとも1つのリリース可能な保護窓を含む。
【0025】
本発明の高速プロトタイプ作成システムは、複数のビームで照明する能力を有し、これらの複数のビームは保護されることが望ましく、したがって何らかの保護が望まれる。しかしながら、異なる媒質中を伝搬する光は強度を緩める傾向があり、異なる媒質間の界面を通過すると光ビームは変位するため、これらの複数のビームの経路上に保護窓を含めると、起こりうる厄介な位置合せの問題が持ち込まれる。
【0026】
媒質の遷移による光ビームの変位は、どの種類の迅速プロトタイプ作成装置でも問題となりうるが、多ビーム装置が使用されるときには、例えば異なるビーム間の個々の偏向変位(deviating displacement)に関する問題が生じない単一ビームレーザーシステムに比べて、この変位は特に問題になる。
【0027】
本発明によれば、光感応性材料の近くに露光システムを移動させることによって、保護窓を通って光が進むことに関する(商標)を回避することができることが認められた。例えば、出力光学系からの距離が光感応性材料から10mmよりも小さいときに、それは有利であることがある。
【0028】
本発明の実施形態によれば、保護窓が汚染されまたは汚れた場合の保護窓の容易な取替えを助長するため、保護窓がリリース可能である。
下面の汚染を防ぎ、または減らす代替法および追加の方法、特に露光システムと樹脂中の可能な突出部との衝突を防ぐ代替法および追加の方法も可能である。
【0029】
本発明に基づくシステムの装置は、照明領域と出力光学系との間の障害物を検出する少なくとも1つの衝突防止検出システムを含むことが好ましい。
3次元迅速プロトタイプ作成法では、例えば露光システムの出力光学系が短時間でも例えば障害物と接触した場合、このことが、時間集約的な洗浄または取替えを出力光学系が必要とするような態様での出力光学系の汚染を引き起こすことがある。したがって、露光システムの部分と、光感応性材料、槽からの突出部などの障害物との間の接触を防ぐのを助ける必要がある。
【0030】
本発明のこの好ましい実施形態の重要な特徴は、それが衝突防止検出システムであることである。すなわち、可能な将来の衝突が、実際に起こる前に検出される。このことは、露光システムも、装置の他の構成要素も、例えば槽の表面から障害物が突き出ていることによって、損傷したり、または汚染されたりしないことを意味する。
【0031】
このように、障害物が装置の汚染を引き起こす可能性があり、その結果、時間のかかる洗浄工程、あるいは装置の要素の少なくとも一部のコストのかかる取替えが必要となることがある先行技術に比べて装置を汚染することなく、槽の表面から突き出た障害物を検出し、除去することができることで、システムの停止で無駄になる時間を大幅に減らすことができる。
【0032】
発明に基づく衝突防止検出システムは、露光システムと光感応性材料の表面との間の距離が比較的に小さい距離、例えば0.5ないし20mmに維持される露光システムにおいて特に有利である。このことは、表面からの非常に小さな突出部でさえも問題となる可能性があり、そのような突出部を衝突前に検出しなければならないことを意味する。
【0033】
本発明の一実施形態では、前記衝突防止検出システムが、少なくとも1つの衝突防止光ビームを提供する能力を有する少なくとも1つの発光体および少なくとも1つの光センサを備える。
【0034】
本発明の有利な実施形態によれば、衝突防止検出システムが、光感応性材料の表面から適当な距離、すなわち1mmのところで表面を走査する光ビームを含む。この光ビームは、当業者によく知られたさまざまな照明源、例えばレーザーから発射することができる。この光ビームは、関連する表面を横切った後に光センサによって検出され、光センサは、例えば表面からの突出部などの障害物に光ビームが衝突した結果として、光ビームの強度が低下したかどうかを検出することができる。
【0035】
この光ビームは一般に、樹脂表面と走査バーの下面の間ではなく、走査バーの前に配置される。
本発明の好ましい一実施形態によれば、光センサと発光体はともに、露光システム上に直接に取り付けられる。これによって、センサおよび発光体は走査バーと同時に移動し、それによって、樹脂表面のある領域の可能な障害物を、露光システムが樹脂表面のその領域に到達する直前に感知することができる。
【0036】
本発明の一実施形態では、露光システムが、照明源として、1つまたは複数の発光ダイオードを備える。
本発明の一実施形態によれば、発射される光の強度を増大させるため、2つ以上の発光ダイオードが使用される。光の強度を大きくすると、照明領域を横切る露光システムの走査速度を増大させることができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、特定の1つの発光ダイオードからの光が特定の1つの空間光変調器を照明する。
本発明の一実施形態によれば、特定の1つの発光ダイオードが、特定の1つの空間光変調器だけに対して使用される。物体の1つの層を構築するのに、複数の空間光変調器のうちの1つの空間光変調器からのパターン形成された光を使用する必要がない場合に、1つの発光ダイオードを完全にオフにすることが可能になるため、このことが非常に有利なことがある。1つの発光ダイオードをオフにすれば、エネルギー消費および発熱が低減する。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、発光ダイオードと空間光変調器の関係が1対1の関係である。この1対1の関係は高度な融通性を提供し、例えば、露光システムが、それぞれの個々の空間光変調器をオンまたはオフにすることを可能にする。
【0039】
しかしながら、発光ダイオードアレイを直接照明源として使用することができ、それらの光を、空間光変調器を必要とすることなく照明領域上に直接に集束させることができる。
【0040】
本発明の一実施形態では、前記装置が、硬化可能な樹脂の必要な領域に照射するために、前記光感応性材料を横切って前記露光システムを走査し、移動させることを容易にする。
【0041】
本発明の有利な実施形態では、光感応性材料を横切って露光システムを走査し、移動させる。空間光変調器は、光をパターニングして、光感応性材料を横切って露光システムが走査されたときに、光感応性材料上の照明領域を硬化させる。露光ヘッドは、光感応性材料を横切って、構築される物体の層あたり少なくとも1回、走査され、硬化可能な樹脂の領域に照射する。
樹脂組成物
本発明のシステムの部分は、特許請求の範囲に記載の樹脂組成物である。
【0042】
本発明によれば、このシステムはさらに、
(A)少なくとも1種のアクリラート成分と、
(B)少なくとも1種のメタクリラート成分と、
(C)光開始剤と
を含む樹脂組成物を含む。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態によれば、このシステムの樹脂組成物は、樹脂組成物の総重量に基づいて、
(A)15〜40重量%の少なくとも2種類の異なるアクリラート成分と、
(B)50〜80重量%の少なくとも2種類の異なるメタクリラート成分と、
(C)0.1〜7重量%の光開始剤と
を含む。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態によれば、アクリラート成分は、脂肪族アクリラートまたは環式脂肪族アクリラート、好ましくは環式脂肪族ジアクリラートであり、あるいはこれらの任意の混合物である。
【0045】
特に、アクリラート成分は、ポリエチレングリコールアクリラート、好ましくはポリエチレングリコールジアクリラートとすることができる。
意外にも、(A)、(B)および(C)を組み合わせると、高い硬化速度、高いグリーン強度、小さな収縮、高い靭性および作製された3−D物体の良好な機械特性を示す光硬化可能な組成物が得られ、そのため、このような組成物は、前述の諸特徴を特徴とする装置内で使用するのに特に適していることが分かった。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態によれば、メタクリラート成分は、脂肪族ウレタンメタクリラートである。
本発明の好ましい一実施形態によれば、メタクリラート成分は、エトキシル化ビスフェノールメタクリラート、好ましくはエトキシル化ビスフェノールジメタクリラートである。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態によれば、このシステムの樹脂組成物はさらに、組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%の多官能チオールを含む。
【0048】
この樹脂組成物に多官能チオールを加えると、意外にも、作製される物体のグリーン強度および靭性が劇的に増大し、収縮が急激に低減する。
本発明の好ましい一実施形態によれば、このシステムの樹脂組成物はさらに、安定剤(stabilizer)、好ましくは下記の構造を有するN−ニトロソヒドロキシルアミン錯体を含み、
【0049】
【化1】

【0050】
式中、Rは芳香族炭化水素残基(rest)、Sは塩である。
特に、このニトロソヒドロキシルアミン錯体は、アルミニウム塩錯体とすることができる。
【0051】
本発明の他の目的は、少なくとも1種のアクリラート成分(A)と、脂肪族ウレタンメタクリラート成分(B)と、光開始剤(C)とを含む樹脂組成物に関する。
意外にも、(A)、(B)および(C)を組み合わせると、高い硬化速度、高いグリーン強度、小さな収縮、高い靭性および作製された3−D物体の良好な機械特性を示す光硬化可能な組成物が得られ、そのため、このような組成物は、前述の諸特徴を特徴とする装置内で使用するのに特に適していることが分かった。
【0052】
この樹脂組成物は、
(A)ポリエチレングリコールジアクリラートもしくは環式脂肪族ジアクリラート、またはこれらの任意の混合物、および/あるいは
(D)多官能チオール
を含むことが好ましい。
【0053】
特に、この樹脂組成物は、組成物の総重量に基づいて、
(A)5〜60重量%の少なくとも1種のアクリラート成分、好ましくはポリエチレングリコールジアクリラートおよび/または環式脂肪族ジアクリラートと、
(B)20〜50重量%%の少なくとも1種の脂肪族ウレタンメタクリラートと、
(C)0.5〜5重量%の光開始剤と、
(D)任意選択の多官能チオールと
を少なくとも含む。
【0054】
好ましい一実施形態では、この樹脂組成物が、組成物の総重量に基づいて、
(A1)5〜15重量%のポリエチレングリコールジアクリラートと、
(A2)5〜15重量%の脂肪族または環式脂肪族ジアクリラートと、
(B1)20〜50重量%%の脂肪族ウレタンメタクリラートと、
(B2)20〜50重量%%のエトキシル化ビスフェノールメタクリラートと、
(C)0.5〜5重量%の光開始剤と、
(D)0.1〜10重量%の多官能チオールと、
(E)0.01から0.5重量%%の安定剤と
を少なくとも含む。
【0055】
この樹脂組成物に多官能チオールを加えると、予想外に、作製される物体のグリーン強度および靭性が相当に増大し、収縮が著しく低減する。
(A)アクリラート成分
以下の段落では、本発明に基づく樹脂組成物に対する適当なアクリラート成分を列挙する。アクリラート成分は、単一のアクリラート化合物または異なるアクリラート化合物の混合物を指すことがある。適当なアクリラート成分は、単官能または二官能アクリラート成分、あるいはより高い官能性を有するアクリラート成分であることができる。
【0056】
単官能アクリラートを使用して、樹脂特性を変更することができる。
単官能アクリラートの例には、イソボルニルアクリラート、テトラヒドロフルフリルアクリラート、エトキシル化フェニルアクリラート、ラウリルアクリラート、ステアリルアクリラート、オクチルアクリラート、イソデシルアクリラート、トリデシルアクリラート、カプロラクトンアクリラート、ノニルフェノールアクリラート、環式トルメチロールプロパンホルマールアクリラート、メトキシポリエチレングリコールアクリラート、メトキシポリプロピレングリコールアクリラート、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、グリシジルアクリラートなどがある。このリストは全てを網羅したものではなく、それぞれの場合に、それらのアクリラートのエトキシル化および/またはプロポキシル化を使用して、特性をさらに変更することができる。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態によれば、アクリラートが二官能アクリラートである。好ましい脂肪族または環式脂肪族ジアクリラートの例には、トリシクロデカンジメタノールジアクリラート(Sartomer(商標) 833s)、ジオキサングルセロールジアクリラート(Sartomer(商標) CD 536)、1,6ヘキサンジオールジアクリラート(Sartomer(商標) 238)、3−メチル1,5−ペンタンジオールジアクリラート(Sartomer(商標) 341)、トリプロピレングリコールジアクリラート(Sartomer(商標) 306)、ネオペンチルグリコールジアクリラート(Sartomer(商標) 247)、ジメチロールトリシクロデカンジアクリラート(Kayarad R−684)、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジアクリラート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジアクリラート、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタンジアクリラートなどがある。非環式脂肪族ジアクリラートの例には、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,413,697号の式(F−I)から(F−IV)の化合物が含まれる。可能なジアクリラートの他の例は、米国特許第6,413,697号の式(F−V)から(F−VIII)の化合物である。それらの調製も、参照によって本明細書に組み込まれるEP−A−0 646 580に記載されている。式(F−I)から(F−VIII)のいくつかの化合物は市販されている。このリストは全てを網羅したものではなく、それぞれの場合に、それらのジアクリラートのエトキシル化および/またはプロポキシル化を使用して、特性をさらに変更することができる。
【0058】
芳香族ジアクリラートの例には、ビスフェノールAポリエチレングリコールジエーテルジアクリラート(Kayarad R−551)、2,2’−メチレンビス[p−フェニレンポリ(オキシエチレン)オキシ]−ジエチルジアクリラート(Kayarad R−712)、ヒドロキノンジアクリラート、4,4’−ジヒドロキシビフェニルジアクリラート、ビスフェノールAジアクリラート、ビスフェノールFジアクリラート、ビスフェノールSジアクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールAジアクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールFジアクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールSジアクリラート、ビスフェノール−Aエポキシジアクリラート(Ebecryl(商標) 3700 UCB Surface Specialties)などがある。
【0059】
本発明に基づく樹脂中で使用される好ましいポリエチレングリコールジアクリラートの例は、トラエチレングリコールジアクリラート(Sartomer(商標) 268)、ポリエトレングリコール(200)ジアクリラート(Sartomer(商標) 259)、ポリエトレングリコール(400)ジアクリラート(Sartomer(商標) 344)である。このリストは全てを網羅したものではなく、それぞれの場合に、それらのジアクリラートのエトキシル化および/またはプロポキシル化を使用して、特性をさらに変更することができる。
【0060】
トリアクリラートまたはよりいっそう高い官能性を有するアクリラートの例は、ヘキサン−2,4,6−トリオールトリアクリラート、グルセロールトリアクリラート、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化グルセロールトリアクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリトリトールテトラアクリラート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリラート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトリアクリラート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリラート、ジペンタエリトリトールペンタアクリラート(Sartomer(商標) 399)、ペンタエリスリトールトリアクリラート(Sartomer(商標) 444)、ペンタエリトリトールテトラクリラート(Sartomer(商標) 295)、トリメチロールプロパントリアクリラート(Sartomer(商標) 351)、トリス(2−アクリルオキシエチル)イソシアヌラートトリアクリラート(Sartomer(商標) 368)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリラート(Sartomer(商標) 454)、ジペンタエリトリトールペンタアクリラートエステル(Sartomer(商標) 9041)である。適当な芳香族トリアクリラートの例は、三価フェノールのトリグリシジルエーテルおよびヒドロキシル基を3つ含むフェノールまたはクレゾールノボラックと、アクリル酸との反応生成物である。このリストは全てを網羅したものではなく、それぞれの場合に、それらのトリアクリラートのエトキシル化および/またはプロポキシル化を使用して、特性をさらに変更することができる。
【0061】
ポリアクリラートはさらに多官能ウレタンアクリラートとすることができる。ウレタンアクリラートは、例えばヒドロキシル末端ポリウレタンをアクリル酸と反応させ、またはイソシアナート末端プリポリマーをヒドロキシアルキルアクリラートと反応させて、ウレタンアクリラートを得ることによって調製することができる。ポリエステルジオール、脂肪族イソシアナートおよびヒドロキシアルキルアクリラートから調製されたウレタンアクリラートが好ましい。アクリラート多官能性を有するもの、または混合されたアクリル官能性とメタクリル官能性とを有するものも好ましい。
【0062】
さらに、ハイバーブランチポリエステル型を含むより高い官能性を有するアクリラートを使用して、樹脂を変更することもできる。市販の例には、Sartomer社のCN2301、CN2302、CN2303、CN2304などがある。
【0063】
配合物に使用することができるアクリラートの追加の例には、Kayarad社のD−310、D−330、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−21、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、T−1420、PET−30、THE−330およびRP−1040、日本化薬株式会社のR−526、R−604、R−011、R−300およびR−205、東亜合成化学工業株式会社のAronix M−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200およびM−6400、共栄社化学株式会社のLight acrylate BP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PAおよびDCP−A、第一工業製薬株式会社のNew Frontier BPE−4、TEICA、BR−42MおよびGX−8345、新日鉄化学株式会社のASF−400、昭和高分子株式会社のRipoxy SP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010およびSP−4060、新中村化学工業株式会社のNK Ester A−BPE−4、三菱化学株式会社のSA−1002、大阪有機化学工業株式会社のViscoat−195、Viscoat−230、Viscoat−260、Viscoat−310、Viscoat−214HP、Viscoat−295、Viscoat−300、Viscoat−360、Viscoat-GPT、Viscoat−400、Viscoat−700、Viscoat−540、Viscoat−3000およびViscoat−3700などがある。
(B)メタクリラート成分
以下では、本発明に基づく樹脂組成物に対する適当なメタクリラート成分を列挙する。メタクリラート成分は、単一のメタクリラート化合物または異なるメタクリラート化合物の混合物を指すことがある。適当なメタクリラート成分は、単官能または二官能メタクリラート成分、あるいはより高い官能性を有するメタクリラート成分であることができる。
【0064】
単官能メタクリラートを使用して、樹脂特性を変更することができる。
単官能メタクリラートの例には、イソボルニルメタクリラート、テトラヒドロフルフリルメタクリラート、エトキシル化フェニルメタクリラート、ラウリルメタクリラート、ステアリルメタクリラート、オクチルメタクリラート、イソデシルメタクリラート、トリデシルメタクリラート、カプロラクトンメタクリラート、ノニルフェノールメタクリラート、環式トルメチロールプロパンホルマールメタクリラート、メトキシポリエチレングリコールメタクリラート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、グリシジルメタクリラートなどがある。このリストは全てを網羅したものではなく、それぞれの場合に、それらのメタクリラートのエトキシル化および/またはプロポキシル化を使用して、特性をさらに変更することができる。
【0065】
本発明に基づく樹脂中で使用される好ましい芳香族ジメタクリラートの例には、エトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリラート(Sartomer(商標) 101K)、エトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリラート(Sartomer(商標) 348L)、エトキシル化(3)ビスフェノールAジメタクリラート(Sartomer(商標) 348C)、エトキシル化(4)ビスフェノールAジメタクリラート(Sartomer(商標) 150)、エトキシル化(4)ビスフェノールAジメタクリラート(Sartomer(商標) 540)、エトキシル化(10)ビスフェノールAジメタクリラート(Sartomer(商標) 480)、ヒドロキノンジメタクリラート、4,4’−ジヒドロキシビフェニルジメタクリラート、ビスフェノールAジメタクリラート、ビスフェノールFジメタクリラート、ビスフェノールSジメタクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールAジメタクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールFジメタクリラート、およびエトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールSジメタクリラートなどがある。
【0066】
脂肪族または環式脂肪族ジメタクリラートの例には、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジメタクリラート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)プロパンジメタクリラート、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタンなどがある。
【0067】
非環式脂肪族ジメタクリラートの例には、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,413,697号の式(F−I)から(F−IV)の化合物が含まれる。可能なジメタクリラートの他の例は、米国特許第6,413,697号の式(F−V)から(F−VIII)の化合物である。それらの調製も、参照によって本明細書に組み込まれるEP−A−0 646 580に記載されている。式(F−I)から(F−VIII)のいくつかの化合物は市販されている。このリストは全てを網羅したものではなく、それぞれの場合に、それらのジメタクリラートのエトキシル化および/またはプロポキシル化を使用して、特性をさらに変更することができる。
【0068】
トリメタクリラートまたはよりいっそう高い官能性を有するメタクリラートの例には、トリシクロデカンジメタノールジメタクリラート(Sartomer(商標) 834)、トリメチロールプロパントリメタクリラート(Sartomer(商標) 350)、テトラメチロールメタンテトラメタクリラート(Sartomer(商標) 367)、ヘキサン−2,4,6−トリオールトリメタクリラート、グルセロールトリメタクリラート、1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化グルセロールトリメタクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリラート、ペンタエリトリトールテトラメタクリラート、ビストリメチロールプロパンテトラメタクリラート、ペンタエリトリトールモノヒドロキシトルメチアクリラート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタメタクリラートなどがある。適当な芳香族トリメタクリラートの例は、三価フェノールのトリグリシジルエーテルおよびヒドロキシル基を3つ含むフェノールまたはクレゾールノボラックと、メタクリル酸との反応生成物である。このリストは全てを網羅したものではなく、それぞれの場合に、それらのメタクリラートのエトキシル化および/またはプロポキシル化を使用して、特性をさらに変更することができる。適当な芳香族トリメタクリラートの例は、三価フェノールのトリグリシジルエーテルおよびヒドロキシル基を3つ含むフェノールまたはクレゾールノボラックと、メタクリル酸との反応生成物である。
【0069】
ポリメタクリラートを使用することができる。ポリメタクリラートは多官能ウレタンメタクリラートとすることができる。ウレタンメタクリラートは、例えばヒドロキシル末端ポリウレタンをメタクリル酸と反応させ、またはイソシアナート末端プリポリマーをヒドロキシアルキルメタクリラートと反応させて、ウレタンメタクリラートを得ることによって調製することができる。ポリエステルジオール、脂肪族イソシアナートおよびヒドロキシアルキルメタクリラートから調製されたウレタンメタクリラートが好ましい。メタクリラート多官能性を有するもの、または混合されたアクリル官能性とメタクリル官能性とを有するものも好ましい。
【0070】
本発明に基づく樹脂中で使用される好ましい脂肪族ウレタンメタクリラートの例には、Genomer(商標) 4205、Genomer(商標) 4256およびGenomer(商標) 4297などがある。
【0071】
さらに、ハイバーブランチポリエステル型を含むより高い官能性を有するメタクリラートを使用して、樹脂を変更することもできる。
(C)光開始剤
本発明に基づく樹脂組成物は、少なくとも1種の光開始剤を含む。光開始剤は、異なる光開始剤および/または増感剤(sensitizer)の組合せを含む光開始系とすることができる。しかし、この光開始系は、単独で使用されたときに光開始特性を一切示さないが、一緒にすると光開始特性を示す、異なる化合物の組合せを含む系とすることもできる。
【0072】
光開始剤は、ラジカル光重合を開始させるのに一般的に使用されている光開始剤の中から選択することができる。
フリーラジカル光開始剤の例には、ベンゾイン類、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテルおよびベンゾインアセタート;アセトフェノン類、例えばアセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノンおよび1,1−ジクロロアセトフェノン;ベンジルケタール類、例えばベンジルジメチルケタールおよびベンジルジエチルケタール;アントラキノン類、例えば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノン;トリフェニルホスフィン;ベンゾイルホスフィンオキシド類、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイ−ジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(商標) TPO);ビスアシルホスフィンオキシド;ベンゾフェノン類、例えばベンゾフェノンおよび4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;チオキサントンおよびキサントン;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体;1−フェニル−1,2−プロパンジオン2−O−ベンゾイルオキシム;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−プロピル)ケトン(Irgacure 2959。Ciba Specialty Chemicals社);1−アミノフェニルケトンまたは1−ヒドロキシフェニルケトン、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン、フェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトンおよび4−イソプロピルフェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトンなどがある。
【0073】
この用途に対しては、ラジカル光開始剤を選択することが好ましく、ラジカル光開始剤の濃度は、硬化の深さが約0.05から約2.5mmとなるような吸収能力を達成するように調整されることが好ましい。
(D)チオール
本発明の好ましい一実施形態によれば、樹脂組成物は、少なくとも1種の単官能または多官能チオールを含む。多官能チオールは、2つ以上のチオール基を有するチオールを意味する。多官能チオールは、異なる多官能チオールの混合物とすることができる。
【0074】
本発明の組成物の多官能チオール成分は、分子あたり2つ以上のチオール基を有する任意の化合物とすることができる。適当な多官能チオールは、米国特許第3,661,744号の8列、76行から9列46行、米国特許第4,119,617号の7列40〜57行、米国特許第3,445,419号および4,289,867号に記載されている。ポリオールとチオグリコール酸、β−メルカプトプロピオン酸などのαまたはβ−メルカプトカルボン酸とのエステル化によって得られる多官能チオールが特に好ましい。
【0075】
本発明に基づく組成物中で使用される好ましいチオールの例には、ペンタエリトリトールテトラ−(3−メルカプトプロピオナート)(PETMP)、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトブチラート)(PETMB)、トリメチロールプロパントリ−(3−メルカプトプロピオナート)(TMPMP)、グリコールジ(3−メルカプトプロピオナート)(GDMP)、ペンタエリトリトールテトラメルカプトアセタート(PETMA)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセタート(TMPMA)、グリコールジメルカプトアセタート(GDMA)、エトキシル化トリメチルプロパントリ(3−メルカプト−プロピオナート)700(ETTMP 700)、エトキシル化トリメチルプロパントリ(3−メルカプト−プロピオナート)1300(ETTMP 1300)、プロピレングリコール3−メルカプトプロピオナート800(PPGMP 800)、プロピレングリコール3−メルカプトプロピオナート2200(PPGMP 2200)などがある。
【0076】
(エン(ene)基を含む)メタクリラートおよびアクリラート成分と多官能チオール成分の数比(number ratio)は、広範囲に変化させることができる。一般に、エン基とチオ基の比は、10:1から2:1、例えば9:1から4:1、例えば8:1から5:1であることが好ましいが、本明細書の発明から逸脱することなく、この範囲以外の比を有用に使用することができることもある。
【0077】
本発明の化合物を使用する硬化可能組成物は、二官能メタクリラートおよびアクリラート化合物と、二官能チオール化合物の両方を含むことができるが、好ましくは、硬化したときに架橋した生成物を生成するように、これらの成分のうちの少なくとも1つの成分の少なくとも一部分が、分子あたり3つ以上の官能基を含むべきであることが理解される。すなわち、架橋された硬化した生成物が所望のときには、メタクリラートおよびアクリラート成分の分子あたりのエン基の平均数と多官能チオールの分子あたりの共反応性(co−reactive)チオール基の平均数の合計は、5以上であるべきである。
(E)安定剤
本発明の好ましい一実施形態によれば、樹脂組成物は、安定剤または阻害剤(inhibitor)、すなわち、加えられたUV放射にさらされる前に組成物が反応することを防ぐために組成物に加えられる化合物、を含むことができる。
【0078】
好ましい安定剤は、以下の一般構造を有するN−ニトロソヒドロキシルアミン錯体であり、
【0079】
【化2】

【0080】
式中、Rは芳香族炭化水素残基、Sは塩である。
N−ニトロソヒドロキシルアミン錯体は、例えば以下の構造を有するアルミニウム塩錯体とすることができる。
【0081】
【化3】

【0082】
作製された3次元物体の分解能(resolution)を向上させるため、本発明に基づく樹脂組成物は、ナノフィラー(nanofiller)、例えばナノアルミナ(nanoalumina)(Nanobyk 3600、3601、3602)またはナノシリカ(nanosilica)粒子(Nanocryl、Nanoresins)、あるいは他の任意のナノフィラーを含むことができる。
【0083】
本発明に基づく樹脂組成物はさらに、染料および/または光沢剤(brightening agent)を含むことができる。
次に、図を参照して、本発明に基づくシステムの装置の特定の発明実施形態および例をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】ステレオリソグラフィ装置の簡略化された断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に基づく露光システムの一部分を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に基づく衝突防止検出システムを備えるステレオリソグラフィ装置の一部分の断面図である。
【図4】図3を90°回転させた図である。
【図5】本発明の一実施形態に基づく衝突防止検出システムを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に基づく保護窓を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に基づく保護窓を含む取替え可能なモジュールを示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に基づく取替え可能なモジュールを備えるステレオリソグラフィ装置の一部分の断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に基づくステレオリソグラフィ装置の一例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に基づくステレオリソグラフィ装置の他の例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に基づくステレオリソグラフィ装置の他の例を示す図である。
【図12】収縮差用のHベンチ測定装置およびHベンチの寸法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
システム
光を平行にし、照明する本発明の実施形態に適した方法を説明する、媒質をポイント照明するための方法および照明ユニットの例は、例えば参照によって本明細書に組み込まれるWO98/47048に出ている。
【0086】
本発明の実施形態に適した光弁配置を介して少なくとも1つの照明面を照明するように配置された光ガイドの形態の複数の発光体を含む、媒質をポイント照明するための照明ユニットおよび方法の例は、例えば参照によって本明細書に組み込まれるWO98/47042に出ている。
【0087】
完全にまたは部分的に光感応性の材料を含む横断面の加法的処理による迅速プロトタイプ作成装置の一例が、参照によって本明細書に組み込まれるWO00/21735に記載されている。この装置は、個別に制御可能な光変調器の少なくとも1つの空間光変調器によって光感応性材料の横断面を照明する少なくとも1つの光源を備え、少なくとも1つの光源は、複数の光ガイドに光学的に結合され、これらの複数の光ガイドは、それぞれの光ガイドが横断面の副領域(sub−area)を照明するような態様で空間光変調器配置に対して配置される。
【0088】
この説明および添付の特許請求の範囲の文脈において、用語「照明領域」は、出力光学系から発せられた個々の光ビームのいくつかの焦点によって画定される近似された平面を意味する。
【0089】
この説明および添付の特許請求の範囲の文脈において、用語マイクロレンズは、一般に直径が1ミリメートル(mm)未満の小さなレンズを意味する。
この説明および添付の特許請求の範囲の文脈において、用語集束距離dは、出力光学系から照明領域までの最大距離を意味する。
【0090】
この説明および添付の特許請求の範囲の文脈において、用語光感応性材料は、光に感応する、3次元迅速プロトタイプ作成法に適した材料を意味する。このような材料は、当業者によく知られており、有利には、さまざまな種類の樹脂とすることができる。したがって、本明細書では、用語樹脂、樹脂組成物および用語光感応性材料が、相互に交換可能に使用される。
【0091】
この説明および添付の特許請求の範囲の文脈において、用語照明領域は、光ビームが最もよく集束した距離における光ビームの横断領域を意味する。
この説明および添付の特許請求の範囲の文脈において、光のパターンは、光変調器の任意の組合せによって生じさせることができ、例えば、全ての光変調器が開いているとき、光変調器の単一のラインが開いているとき、一部の個々の光変調器が開いているときに、または光変調器の設定の他の任意の組合せによって生じさせることができる。
【0092】
図1は、3次元物体OBを構築する、本発明の一態様に基づくステレオリソグラフィ装置SAの簡略化された断面図を示す。この3次元物体OBは、露光システムESからの光で露光されたときに、光感応性材料LSMの硬化によって積層式に構築される。
【0093】
ステレオリソグラフィ装置SAは、その上で1つまたは複数の3次元物体OBが構築される構築プレートBPを備える。構築プレートBPは、エレベータELによって、光感応性材料LSMを含む槽Vの中へ垂直に移動する。塗り重ね装置RECは、本発明のある態様に従って、光感応性材料LSMの新たな層を横切って走査されて、その新たな層の均一性を保証する。露光システムESの走査方向SDが矢印によって示されている。
【0094】
上記の説明に従って、3次元物体OBは、光感応性材料LSMの層を、露光システムESからのパターン形成された光で露光することによって構築される。露光に使用されたこの光のパターンに従った光感応性材料LSMの部分が硬化する。第1の層が硬化すると、光感応性材料LSMの新しい上位層を確立するため、3次元物体OBの硬化した第1の層を有する構築プレートBPが槽Vの中へ下げられ、塗り重ね装置RECが、光感応性材料LSMの層を横切って走査する。次いで、光感光材料LSMを横切って露光システムESが再び走査され、3次元物体OBの新たな層を硬化させる。
【0095】
前述のとおり、ステレオリソグラフィ装置SAは露光システムESを備える。露光システムESは非コヒーレント照明源を備え、非コヒーレント照明源は、UVランプ、ダイオード、いくつかのダイオード、または光感応性材料を硬化させる目的に適した当業者に知られている他の照明源手段とすることができる。照明源に続いて、入力光学系IO、光空間変調器SLMおよび出力光学系OOとともに照明源からの光を平行光に変換する手段がある。この光を平行にする手段に続く露光システムの部分が、図2に示されている。
【0096】
露光システムESの少なくとも一部分が、光感応性材料LSMを横切って走査方向SDに走査され、3次元物体OBのディジタル積層表現に基づいて、光感応性材料LSMの表面の照明領域IAを照明する。本発明の一態様によれば、露光システムESは、照明領域IA内の光感応性材料LSMを硬化させ、それによって3次元物体OBを形成する。
【0097】
本発明の一態様では、槽Vが、車輪、レールとの相互作用、軌道、フォークリフトなど、槽Vを移動させる手段を備えることができる。したがって、ステレオリソグラフィ装置SA内に位置する槽Vは取出し可能とすることができ、例えば槽Vに光感応性材料LSMを補充するため、または構築プレートBPからの3次元物体OBの取出しを容易にするために、開口OPを通してアクセス可能とすることができる。
【0098】
構築プレートBPを移動させる代わりに、例えば図示されたエレベータELまたは他の装置によって、槽Vを垂直に移動させることが可能であることに留意すべきである。
本発明の一態様によれば、3次元物体OBのディジタル積層表現は、インタフェースユニットIFUを介してステレオリソグラフィ装置SAに提供することができる。例えばLAN(LAN;ローカルエリアネットワーク)、WLAN(WLAN;無線ローカルエリアネットワーク)、シリアル通信などのインタフェースを介した通信を処理するため、インタフェースユニットIFUは、例えばキーボード、ポインタなどの入力インタフェース、および例えばスクリーン、プリンタなどの出力インタフェースを備えることができる。さらに、インタフェースユニットIFUは、データ処理装置、記憶装置、および/またはデータを永続的に記憶する手段を備えることができる。
【0099】
図2は、光を平行にする手段に続く、露光システムの本発明の一態様に基づく部分の簡略化された断面図を示す。
本発明の一態様によれば、照明源からの光を、少なくとも1つの空間光変調器SLMの光変調器LMの少なくとも一部分に透過させるため、平行化手段と入力光学系IOの間で、光ガイドが使用される。上記の態様と組み合わせることができる本発明の他の態様では、照明源と平行化手段の間で、光ガイドが使用される。このような光ガイドは例えば、光ファイバ(例えばポリマー製、プラスチック製、ガラス製など)、光学系、レンズアレイ、反射器などを含むことができる。
【0100】
本発明の一態様によれば、光感応性材料LSMが、照明源を選択する決定因子となることがある。一般に、光感応性材料LSMは、波長200〜500nmの高強度の光で露光され、または照明されると硬化する。一般に、好ましいタイプの光感応性材料LSMを硬化させるためには、300から400nmまでの間に波長ピークを有する光が最も適している。当然ながら、特殊な光感応性材料LSMが必要な場合には、上記の波長以外の波長を有する光を使用することもできる。この照明源は非コヒーレント源であるため、幅広い波長範囲の光が発せられ、光感応性材料中のいくつかの化合物および光開始剤を活性化することができる。
【0101】
光感応性材料LSMは、例えば室内の拡散照明配光からの広域スペクトル光(broad−spectrum light)にさらされたときにも硬化することに留意すべきである。これは、室内の拡散照明配光がしばしば、光感応性材料LSMが反応する波長を有する光も含むためである。このような迷光による光感応性材料LSMの硬化は、遅く、制御不能であるため、望ましくない。
【0102】
本発明の一態様によれば、照明源から発せられる光の強度は異なることがある。強度が高いほど、硬化させるために光感応性材料LSMを露光しなければならない時間は短くなる。これによって、光感応性材料LSMを走査する露光システムESの速度を速くすることができる。当然ながら、光感応性材料LSMのタイプ、空間光変調器SLM内の応答時間など、他の因子も、走査速度を決定する。
【0103】
本発明の一態様によれば、露光システムは、入力光学系IO、少なくとも1つの空間光変調器SLMおよび出力光学系00を備える。したがって、照明源からの光は、入力光学系IOによって少なくとも部分的に平行にされ、この少なくとも1つの空間光変調器SLMの孔のうちの少なくとも一部の孔上に集束する。この少なくとも1つの空間光変調器SLMは次いで、出力光学系OO上で光のパターンを確立し、出力光学系OOは、このパターン形成された光を、光感応性材料LSMの表面の照明領域IA上に再び集束させる。
【0104】
光のパターンはさらに、空間光変調器SLMの全ての個々の光変調器LMが、空間光変調器SLMの全ての孔が光を通過させる位置にある状況、または、空間光変調器SLMの全ての個々の光変調器LMが、空間光変調器SLMの孔が光を全く通過させない位置にある状況を含むことに留意すべきである。
【0105】
本発明の好ましい一態様によれば、ステレオリソグラフィ装置SAは、48よりも多くの空間光変調器SLMを備える。ステレオリソグラフィ装置SAを、空間光変調器SLMの数に関して非常に融通性が高いものにすることができることに留意すべきである。したがって、空間光変調器SLMの数は、1から例えば100超の間で変更することができる。
【0106】
本発明の一態様によれば、個々の空間光変調器SLMを結合して、4つ一組のモジュールにすることができる。したがって、本発明の好ましい一態様によれば、空間光変調器SLMが5つ以上必要なときには、2つ以上のモジュールを一体に結合して露光システムESを形成する。
【0107】
本発明の一態様によれば、空間光変調器SLMはそれぞれ、500よりも多くの個別に制御可能な光変調器LMを備える。当然ながら、500とは異なる数の個別に制御可能な光変調器LMを有する空間光変調器SLMを使用することもできる。図を簡略化するため、この説明の全体を通じて、図は、例えば4つの光変調器を有する空間光変調器SLMだけを示す。とは言うものの、前述のとおり、500よりも多くの光変調器LMを備えることもできる。
【0108】
本発明の一態様によれば、入力光学系IOは、図2に示されているように、マイクロレンズアレイを備えることができる。他の実施形態では、入力光学系に、追加のマイクロレンズおよび他の光学要素を含めることができる。
【0109】
入力光学系の目的は、平行光CLを、この少なくとも1つの空間光変調器SLM上に集束させることである。後に説明するとおり、この少なくとも1つの空間光変調器SLMは複数の孔を備え、マイクロレンズMLが平行光CLを集束させているのは、これらの孔上、またはこれらの孔を下方へ通過したところである。
【0110】
本発明の一態様によれば、この少なくとも1つの空間光変調器SLMを使用して、平行にされ、集束したこの光をパターニングし、光感光材料LSMの表面の照明領域IA上に照射することができる。この少なくとも1つの空間光変調器SLMは、光スイッチ、光弁、マイクロシャッタなどとも呼ばれる複数の個々の光変調器LMを備える。
【0111】
本発明の一態様によれば、個々の制御可能な光変調器LMが、制御ユニットCUによって制御される。制御ユニットCUは、構築される3次元物体OBのディジタル積層表現に従って、露光システムESを制御することができる。図示された制御ユニットCUは、この少なくとも1つの空間光変調器SLMの個々の制御可能な光変調器LMを制御することができ、個々の発光ダイオードLDの場合には、これらも、制御ユニットCUによって制御することができる。
【0112】
発光ダイオードLDが使用される本発明の一態様によれば、発光ダイオードLDを制御することが、例えば、露光システムESに含まれる少なくとも1つの空間光変調器SLMからのパターン形成された光を必要としない物体の小部分だけまたは小さな物体を構築する場合に、発光ダイオードLDをオフにすることを意味する。
【0113】
本発明の一態様によれば、この少なくとも1つの空間光変調器SLM内の光変調器LMの制御を、このパターンに従って光変調器LMをアドレス指定することによって実施することができる。このパターンは、構築される3次元物体の1つの層を表すことがある。
【0114】
本発明の一実施形態では、図示された制御ユニットCUがさらに、露光システムES以外のステレオリソグラフィ装置SAの他の部分を制御することができる。あるいは、ステレオリソグラフィ装置SAに関する別の制御システムに、制御ユニットCUを含めてもよい。
【0115】
本発明の一態様によれば、ステレオリソグラフィ装置SAが、構築される3次元物体のディジタル積層記述を含むことができる。構築工程中に3次元物体が支持を必要とする場合、この3次元物体の積層記述は支持構造を含むことができる。3次元物体の層ごとに、光感応性材料LSMを横切って露光システムESが走査され、3次元物体の個々のディジタル積層記述が、空間光変調器SLMからの光のパターンを決定する。
【0116】
本発明の一態様によれば、出力光学系OOは、空間光変調器SLMからのパターン形成された光を、光感応性材料LSMの表面の1つまたは複数の照明領域IA上に集束させる。入力光学系IOと同様に、出力光学系OOは、2つ以上のレンズ系、例えばマイクロレンズMLの2つ以上のアレイを備えることができる。
【0117】
露光システムの一部分の好ましい一実施形態が図2に示されている。平行光CLは、入力光学系IOの一部である第1のマイクロレンズアレイを通して送られる。この第1のマイクロレンズアレイは、平行光CLを集束させて、光変調器LM上のそれぞれの個々のシャッタに入射するのに適したいくつかの集束光ビームFLBにするように機能する。
【0118】
開いたそれぞれの光変調器LMに関して、この光は、光変調器LMを通過し、光変調器LMを通過した後で再び広がる。この示された実施形態では、出力光学系OOが、光を集束させるために、互いに直に継続した2つのマイクロレンズアレイを備え、それによって、距離dが約2〜3mmの焦点面である照明領域IA上に、直径約100μmの所望の光スポットが得られる。
【0119】
この示された実施形態では、所望の距離でのこの非常に有利な光の集束が、適当なパラメータ、すなわち曲率半径365μmおよび後部焦点距離499μmを有する互いに直に継続した前述の2つのマイクロレンズアレイを使用することによって得られた。入力光学系の屈曲半径328.5μm、後部焦点距離および425μmの単一のマイクロレンズアレイの使用とともに、この組合せは、露光システム内の非常に有利な光学系の組合せを提供することを照明した。しかしながら、見つけられたこのような値の周囲のある範囲内にこれらのパラメータの値がある他の光学要素が、有利な結果を提供することも示されている。
【0120】
この実施形態では、使用されるマイクロレンズが、一片として製造されたいくつかのレンズを含むアレイの一分である。明らかに、本発明の範囲内で、それぞれの個々のシャッタに対して個々のレンズを製造し、挿入することが可能であると考えられ、または、示された数とは異なる任意の数のレンズを、1枚のマイクロレンズプレート上で一体に結合することができる。
【0121】
図2に示された実施形態は単に一例として示されたものであり、それらのマイクロレンズアレイの1つまたは複数のアレイを置き換えることによって、適当な実施形態を得ることができることは明白である。
【0122】
後部焦点距離および屈曲半径は当業者によく知られた用語である。しかし、明瞭にするため、これらを定義すれば、以下のとおりである。
球面レンズは、系の局所的な光軸に沿った、またはこの光軸から外れた座標(x、y、z)に位置する曲率中心を有する。レンズ表面の頂点は、この局所的な光軸上に位置する。この頂点から曲率中心までの距離がレンズの曲率半径である。
【0123】
後部焦点距離(BFL)は、系の最後の光学表面の頂点から後部焦点までの距離である。
本発明によれば、1つまたは複数の保護窓を使用することによって、露光システムの汚染を防ぎ、または少なくともある最低レベルに維持することができる。
【0124】
図6は、本発明の一実施形態に基づく保護窓PWの一例を示す。
図7は、本発明の一実施形態に基づく取替え可能なモジュールRMの一例を示す。示された取替え可能なモジュールRMは16個の保護窓PWを含むが、この数を他の適当な数にすることもできる。この示された実施形態では、走査領域の全幅をカバーするため、個々の保護窓PWが互いに変位している。走査領域のサイズなどのさまざまなパラメータに応じて、これらの保護窓PWをさまざまに分布させることができることは明らかである。
【0125】
図8は、保護窓PWを含む取替え可能なモジュールRMが、取替え可能なモジュールRMを保持する固定手段FMの中に取り付けられた露光システムESを示す。この示された実施形態では、これらの固定手段FMが単に、露光システムESの両側のレールである。
【0126】
他の有利な実施形態では、固定手段FMが、取替え可能なモジュールRMを凹みに押し込み、次いで固定位置にスナップばめすることができるシステムである。
しかし、当業者には、いくつかの異なる適当な固定手段が明白である。
【0127】
図8には、突出部PRが示されており、示されたケースでは、これが、樹脂LSMの上面USの気泡である。このような気泡は、大部分の樹脂タイプではめったに生じない突出部PRの一例である。しかしながら、気泡が生じる場合、これは、全く突然に生じることがあり、それによって、装置上のどこかほかの位置に取り付けられた可能な検出システムは、有効ではあっても、十分ではない可能性がある。
【0128】
保護窓(1つまたは複数)PWがあれば、このような気泡が、保護窓(1つまたは複数)の表面に少量の樹脂を残す可能性があるが、光学系は、損傷を受けたり、または汚染されたりすることがない。これによって、このような気泡が発生した後に装置を再始動することができるようにするためには、取替え可能なモジュールRMを取り替える比較的に単純な工程で十分である。
【0129】
突出部の原因の他の例は、樹脂の硬化によってわずかな収縮が生じることがあることである。このような収縮によって、硬化した領域の周囲の硬化していない樹脂LSMが、周囲の樹脂の高さよりもわずかに高く押し上げられることがある。このように、このような樹脂は露光システムESに接近することがあり、または露光システムESと接触することさえある。
【0130】
本発明によれば、露光システムの汚染を防ぎ、構築された部分の損傷を防止するために、センサを使用して、加法的製造の際の、露光システムと樹脂の間の障害物を検出することができる。
【0131】
図3は、露光システムESの主要部分を示し、露光システムESは、光感応性材料LSMを含む槽Vの通常ならば平らな表面から突き出た突出部PRに向かって左へ移動している。槽V内にはさらに、その上面を、意図されたとおりに、すなわち光感応性材料LSMの上面USと本質的に同一平面をなすように維持しているアイテム(item)ITの一部分が示されている。この示された実施形態では、衝突防止検出システムが、ハウジングHSaから発せられる2本のレーザービームLBaおよびLBbを含む。衝突防止検出システムについては、図5を参照してより詳細に説明する。この示された実施形態では、この示された実施形態において露光システムESが左へ移動するのか、または右へ移動するのかに関わらず、突出部を検出することができるように、2本のレーザービームLBaおよびLBbが、露光システムESの両側に配置されていることが注目される。しかしながら、本発明の他の実施形態では、1本のレーザービームだけを使用すること、または2本よりも多いレーザービームを使用することができる。
【0132】
図4は、図3と同じ据え付けを90°回転させた図を示す。すなわち、露光システムESは、突出部PRに向かって、見ている人から遠ざかる方向へ移動する。これによって、露光システムESの全幅の下を、発光ハウジングHSaから光センシングハウジングHSbまで延びる一方のレーザービームLBbを見ることができる。なお、示されたレーザービームは、移動方向の背面のレーザービームであり、移動方向の前面のレーザービームは、図3にも描かれている背面のレーザービームの後ろに位置するため、この図では見えない。
【0133】
この図から、この図ではレーザービームLBbの後ろに位置する前面のレーザービームLBaは、移動中のある段階で突出部PRに到達することが分かり、それによってレーザービームLBaは突出部PRによって遮られ、その結果、光センシングハウジングHSbに届く光強度が低下する。これによって、露光システムを汚染する危険となる可能性がある突出部PRが、露光システムESの前にあると結論することができる。次いで、操作員がこの問題を解決することができるように、例えば装置を停止させる信号を送ることができる。このようにして、突出部を容易に除去し、または低くすることができ、おそらく数分後に装置を再始動させることができる。突出部PRが露光システムESと接触した場合には、洗浄または取替えが必要となることがあり、その結果、大きな時間の消費と費用が発生する。
【0134】
本発明を機能させるための重要な要素は、センサの部品のサイズである。露光システムの下面と樹脂の表面との間の距離は一般に2mmと小さいため、光ビームを生み出す部品は小さくなければならず、小さな公差で製作されなければならない。一例として走査バーの幅が670mmである場合、この値はさらに、発光体とセンサの間の距離の下限を設定し、この下限は一般にこの値よりもわずかに大きい。角度のずれ(angular misalignment)に関して、露光システムの下面と樹脂の間の距離の半分を許容可能とすることができると仮定すると、角度のずれは0.08°よりも小さくなければならない。ビームの直径に関して、露光システムの下面と樹脂の間の距離の半分を使用することができると仮定すると、ビームサイズは1mmよりも少なくなければならない。これによって、受信器が、発光体からの実際の源と樹脂表面からの反射の2つの源を見ることを防ぐことができる。これは、発光体およびセンサ内の光学部品に対する要件、ならびに位置合せの微調整に使用される手段に対する要件を例示する。
【0135】
図5は、光学部品の設計の一例を示し、これには、2つの異なるハウジングHSaおよびHSbが示されている。一般に、前面セットと背面セットは同じであり、よってこの図には一方のセットだけが示されている。
【0136】
この例では、レーザーダイオードLDがレーザービームLBを発射し、レーザービームLBは絞りDPを通して成形された後、プリズムPRaで90°に反射され、それによって、ビームは、樹脂の表面よりもわずかに高い高さに誘導される。樹脂LSMの表面USよりも高く、露光システムESよりも低い高さを進んだ後、ビームLBは第2のプリズムPRbで反射され、光センシングハウジングHSb内へ誘導される。このハウジング内のフォトダイオードPDに到達する前に、光ビームLBは、例えば迷光がフォトダイオードPDの測定を妨害することを防ぐために、干渉フィルタIFを通過する。
【0137】
プリズムPRaおよびPRbの使用は、コンパクトな設計を得ること、およびレーザーダイオードLDまたはフォトダイオードPDを樹脂LSMの表面USの近くに置く必要性を排除することを狙ったものである。本発明の範囲内において、90°以外の角度を使用することもできることは明らかである。
【0138】
プリズムは、内部反射器として、または外部反射器として使用することができ、図5に示された実施形態では、プリズムが内部反射器として使用されている。プリズムを内部反射器として使用する利点は、プリズムの表面をハウジングと同じ高さにすることができ、したがって洗浄可能性がより良好となる点である。プリズムの壊れやすい縁を保護するため、図5に示されているように、縁を単純に切り落とすことができ、これは、クリップされた(clipped)ビームの使用を可能にし、それによって、切り落とされた部分に当たる光ビームの部分が本質的に曲げられず、これによって、レーザーからの迷光ビームが発光体とセンサの間で樹脂に衝突する危険が生じない。これによって、迷光を乱す危険なしに、光ビームを、できるだけ樹脂の表面の近くで、すなわち図5の右へ移動させることができる。この方法は、外部反射実施形態でも使用することができる。
【0139】
本発明の有利な実施形態では、この装置が再始動ボタンを備え、それによって、この装置は、装置の停止に至るレーザービームLBaの遮断後、製造工程を直ぐに続けることができる。これは例えば、樹脂中の気泡などにより遮断が生じた場合に有利であり、それによって、機械への操作者の介入によってこの問題を解決することができる。
【0140】
本発明の有利な一実施形態では、露光システムが、空間光変調器(SLM)のモジュールを備え、それぞれのモジュールは2つ以上の空間光変調器を備える。
本発明の有利な一実施形態では、入力光学系がモジュールからなり、したがって、1つの入力光学系モジュールが空間光変調器の1つのモジュールに対応する。
【0141】
本発明の有利な一実施形態では、出力光学系がモジュールからなり、したがって、1つの出力光学系モジュールが空間光変調器の1つのモジュールに対応する。露光システム、入力光学系および出力光学系のモジュール構造は、例えば照明システムのサイズに対するユーザ定義の特定の要求を満たすための露光システムの容易な変更を助長する。
【0142】
本発明の有利な一実施形態では、入力出力光学系および出力光学系がモジュールからなり、したがって、1つの入力光学系モジュールおよび1つの出力光学系モジュールが1つの空間光変調器に対応する。
【0143】
本発明の有利な一実施形態では、空間光変調器の光変調器が、照明源からの光をパターニングする。光感応性材料は、空間光変調器内の光変調器の位置に応じたあるパターンで硬化する。
【0144】
図9〜11は、ステレオリソグラフィ装置SAの1つの可能な実施形態だけを示す。ステレオリソグラフィ装置SAが動作するのに、後述する全ての特徴が必要というわけではないことに留意すべきである。さらに、ステレオリソグラフィ装置SAの全ての詳細が示されるわけではないこと、および示されない追加の部分が有利であることがあることにも留意すべきである。
【0145】
図9は、本発明の一態様に基づくステレオリソグラフィ装置SAの正面/側面図を示す。
ステレオリソグラフィ装置SAは、例えば、例えば押す、回すなどによって操作する摺動式槽扉ハンドルSVDHによって開くことができる、1つまたは複数の摺動式槽扉SVDを備えることができる。摺動式槽扉SVDは、一方の側へ摺動することによって、あるいは1つまたは複数の蝶番を軸にピボット回転することによって、槽V(図示せず)へのアクセスを提供することができる。
【0146】
1枚または数枚の前面パネルFPおよび側面パネルSPに関して、1つまたは複数の摺動式前面扉SFDを配置することができる。
摺動式前面扉SFDは、一方の側へ摺動することによって、あるいは1つまたは複数の蝶番を軸にピボット回転することによって、露光システムES(図示せず)へのアクセスを提供することができる。摺動式前面扉SFDを開かなくても構築工程を監視することができるように、摺動式前面扉SFDを透明にすることができることに留意すべきである。
【0147】
1枚または数枚の前面パネルFPは、ステレオリソグラフィ装置SAの側面まで延びることができる。1枚または数枚の前面パネルFPは、機械の状態(例えば動作中、停止、故障など)、または所与の時点においてステレオリソグラフィ装置SAが構築工程のどの段階にあるのかを指示する1つまたは複数の機械状態指示器MSIを備えることができる。機械状態指示器MSIは、ステレオリソグラフィ装置SAの天板ROまたは側面に配置することもでき、例えばディスプレイ、ランプ、サイレンなどを備えることができる。
【0148】
さらに、ステレオリソグラフィ装置SAは、ステレオリソグラフィ装置SAの正常動作時には使用されない1つまたは複数の側面扉SIDおよび1つまたは複数の下側面パネルLSPを備えることができる。側面扉SIDおよび下側面パネルLSPは、ステレオリソグラフィ装置SAの部品を保守しなければならないときにだけ取り外され、または開かれる。
【0149】
本発明の一態様によれば、側面扉SIDを摺動式前面扉SFDの一部とすることができ、本発明の一態様によれば、下側面パネルLSPを摺動式槽扉SVDの一部とすることができることに留意すべきである。
【0150】
図10は、本発明の一態様に基づくステレオリソグラフィ装置SAの背面/側面図を示し、この図では、側面扉SIDおよび摺動式前面扉SFDは取り外されており、露光システムESが見えている。
【0151】
本発明の一態様によれば、ステレオリソグラフィ装置SAは、調整可能とすることができる1つまたは複数の機械足(machine foot)の上に立つことができる。これによって、ステレオリソグラフィ装置SA内に槽V(図示せず)が配置されたときに、光感応性材料LSMの表面と出力光学系OP(図示せず)とが実質的に平行になるように、ステレオリソグラフィ装置SAを据え付けることをより容易にすることができる。
【0152】
図示された露光システムESは、露光システムESを保守し、または露光システムESに対してサービス作業を実施するときに使用される左上側面扉UDおよび左下側面扉LDを備える。さらに、露光システムは、照明源IS(図示せず)にアクセスするためのランプハウジング扉LHDを備える。さらに、露光システムESは、照明ユニットIU(図示せず)のさまざまな部分を保護する保護プレートPPを備える。図10にはさらに、保護窓PWの側面が、露光バーの外枠OFEBとともに示されている。
【0153】
保護窓PW(図示せず)をリリースするためのハンドルHDを、露光システムケーシングESC内に配置することができる。
図11は、本発明の一態様に基づくステレオリソグラフィ装置SAの正面図を示し、この図では、摺動式前面扉SFDが取り外されている。光感応性材料LSM(図示せず)を横切って走査するとき、露光システムESは、露光システムキャリッジスリットESCSの中を移動する。さらに、図11は、その周りに機械が構築された機械フレームMFR、および露光システムエネルギー鎖SBECの支持ベースを示す。
【0154】
上述のステレオリソグラフィ装置SAでは、光変調器LM上のそれぞれの個々のシャッタに入射するのに適したいくつかの集束光ビームFLBとして集束した低強度の非コヒーレント平行光CLによって、光感応性材料LSMが照明される。光感応性材料LSMの上面USが位置する焦点面である照明領域IA上に、直径約100μmの所望の光スポットが得られる。
【0155】
したがって、アクリラートまたはメタクリラートベースの樹脂組成物を、システム内の光感応性材料として使用しなければならない。これは、アクリラートまたはメタクリラート化合物が、低強度の非コヒーレント光によっても硬化しうるためである。
【0156】
以上に開示された装置では、低粘度の樹脂組成物が好ましい。これは、このような組成物が、高速リコーティング(fast recoating)工程の実施を可能にするためである。
・樹脂組成物
・組成物の調製
本発明に基づく樹脂組成物の例を以下に開示する。表1aは、前記例で使用された化合物の商品名、供給会社および化学名を示す。
【0157】
【表1a】

【0158】
Genomer(商標) 4205は脂肪族ウレタンメタクリラート、Sartomer(商標) 348Cはエトキシル化ビスフェノールAジメタクリラート、Sartomer(商標) 349はエトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリラート、Sartomer(商標) 833はトリシクロデカンジメタノールジアクリラート、Sartomer(商標) 344はポリエチレングリコールジアクリラートである。使用されたThiocureおよびKarenz化合物はチオールである。
【0159】
例中の組成物は、60℃の液体成分に全ての固体成分を入れ、撹拌によって完全に溶解させることによって調製した。配合物にチオール成分が含まれる場合、チオール成分は、最後の成分として、撹拌しながら加えた。固体成分が溶解した後、配合物は放置して、室温まで冷却した。
【0160】
表2〜7は、本発明に基づく樹脂組成物の異なる例を示す。対照組成物(例1)、さらに他の組成物が示されており、Sartomer 833が0から40重量%の間で変更されており(表2の例2〜5)、または、Genomer 4205が0から40重量%の間で変更されており(表3の例6〜9)、または、Sartomer 349が0から20重量%の間で変更されており(表4の例10〜11)、または、Sartomer 344が0から20重量%の間で変更されている(表4の例12〜13)。例14(表4)では、Sartomer 348が20重量%存在する。表5(例15〜16)および表6(例17〜20)は、PETMPを、0%から9重量%の濃度で加える影響を示す。最後に、表7(例21〜28)は、濃度5重量%のさまざまなチオールの影響を示す。表2〜7には、樹脂組成物ごとに、前記樹脂組成物の粘度、対応する樹脂を硬化させることによって作製された物体のグリーン強度、および後硬化後に得られた3次元物体の機械特性が示されている。
・試験部品の硬化/作製
前述の露光システムを含むステレオリソグラフィ装置SAを使用して、配合物を硬化させた。
【0161】
ステレオリソグラフィ装置SAとともに使用するように設計された約30℃の槽に、光硬化可能組成物を入れる。紫外/可視光源によって、組成物の表面全体に照射し、または所定のパターンに従って組成物の表面に照射して、被照射領域の所望の厚さの層が硬化し、固化するようにする。固化した層上に光硬化可能組成物の新たな層を形成する。同様に、この新たな層の表面全体に照射し、または所定のパターンに照射する。新たに固化した層はその下の固化した層に接着する。この層形成ステップおよび照射ステップを、固化した複数の層の「グリーン模型(green model)」が作製されるまで繰り返す。
【0162】
「グリーン模型」は、積層化および光硬化のステレオリソグラフィ工程によって最初に形成される3次元物品であり、それらの層は一般に完全には硬化していない。このことにより、連続する層は、さらに硬化したときに互いに結合することで、より良好に接着する。「グリーン強度」は、モジュラス、歪み、強度、硬度および層−層接着を含む、グリーン模型の機械的性能特性の全体的な用語である。例えば、グリーン強度は、(ASTM D 790に従って)曲げ弾性率(flexural modulus)を測定することによって報告することができる。グリーン強度の低い物体は、硬化中に、それ自体の重量によって変形したり、またはだれたり(sag)、あるいはつぶれたりすることがある。
【0163】
次いで、グリーン模型をイソプロパノール中で洗浄し、続いて圧縮空気で乾燥させる。次に、乾燥したグリーン模型を、後硬化装置(postcure apparatus)(「PCA」)内で、UV放射を用いて60から90分間後硬化させる。「後硬化」は、グリーン模型を反応させて、部分的に硬化した層をさらに硬化させる工程である。グリーン模型は、熱または化学線放射、あるいはその両方にさらすことによって後硬化させることができる。
【0164】
ステレオリソグラフィ装置SA内での機械試験用試料の硬化を、10mm/秒(硬化速度)で移動する走査バーを用い、多キャビティ(multicavity)槽システム内で、穴のあいた標準構築プレートを使用して実施して、機械試験部品を作製した。
【0165】
照明領域上に集束した光のパワーフラックス(power flux)は約25mW/cmであった。累積露光時間は約0.68秒であった。しかしながら、前述のステレオリソグラフィ装置SAは、5mW/cmから60mW/cmのパワーフラックスを照明領域に送達することができる。
【0166】
次いで、このようにして作製した部品をイソプロパノール中で洗浄し、後硬化装置(PCA)内で90分間、最終的に硬化させた。23℃、50%室湿度(room humidity)で3〜5日間、状態調節した後、後硬化させた部品に対して機械試験特性を測定した。
・粘度測定
液体混合物の粘度は、Rheostress RS80レオメータ(Rheometer)を使用して30℃で決定する。
・機械試験手順
表1bに記載された対応するISO/ASTM規格に従って、作製された試料の機械特性を測定した。
【0167】
【表1b】

【0168】
・Hベンチによる収縮測定またはモールド測定(体積%)
モールド法(mould method)による体積収縮は、100mm×5mm×5mmの部品を作製するために使用されたモールド(型)の長さを測定することによって決定する。硬化した最終部品の長さの測定値を、その部品を作製するために使用されたモールドの長さと比較して、部品の線収縮(%)の指示を得、計算によって部品の体積収縮(%)の指示を得る(全ての方向の収縮が等しいと仮定する)。測定は全て、23℃/相対湿度50%で実施する。
【0169】
Hベンチ(H−Bench)による収縮差(differential shrinkage)の測定は、図12に示された機器を用いて、23℃/相対湿度50%で実施する。
【0170】
図12を参照すると、ステレオリソグラフィ装置SAを使用して、細長い中心部分を有する「H」に似た部品を、Hの2つの垂直部分が垂直方向にまっすぐに構築されるような方法で構築する。次いで、図12の装置に示されているように、この部品を緩く保持し、Focodynレーザープロフィルメータ(profilometer)を使用して、表面プロファイルを測定する。収縮差は、ミクロンで表した、測定された表面プロファイルの最大点と最小点の間の距離である。図12には、「H」部品の寸法も示されている。
・光感度(Dp/Ec)の決定
組成物の光感度(photosensitivity)は、硬化した組成物の「細片(stripe)」を使用して決定する。この決定では、ステレオリソグラフィ装置SAを使用し、異なる硬化速度、したがって異なる量のエネルギーで、単層試験片を作製する。次いで、これらの細片の層厚を測定する。グラフ上で、得られた層厚を、使用された照射エネルギーの対数に対してプロットすると、いわゆる「検量線」が与えられる。この検量線の傾きはDp(depth of Penetration(硬化深度)、ミクロン)と呼ばれる。検量線がx軸と交わる点のエネルギー値はEc(Critical Exposure Energy(臨界露光量)、mJ/cm)と呼ばれる(P.Jacobs、Rapid Prototyping and Manufacturing、Soc.Of Manufacturing Engineers、1992、pp270ff参照)。
・機械試験の結果
表2では、組成物中のSartomer 833が0%から40重量%まで増大していることを認めることができる。表2では、この組成物が、意外にも予想外に、5%から15重量%のSartomer 833濃度で、最大の靭性(K1c、G1c、破断点伸度)および引張強度を示すことを認めることができ、この濃度範囲が、この環式脂肪族ジアクリラート成分に対する最適化された濃度範囲であることが分かった。
【0171】
表3では、組成物中のGenomer 4205の0%から40重量%への増大が、グリーン強度の著しい増大(35から65MPa)、および曲げ強度の著しい増大(75から85MPa)を引き起こすことを認めることができる。したがって、この脂肪族ウレタンメタクリラート成分の濃度を20ないし50重量%にすることによって、満足のいく機械特性を達成することができる。
【0172】
表4では、組成物中のSartomer 349の0%から20重量%への増大が、剛性(rigidity)(引張弾性率、ベンド弾性率、曲げ強度)および靭性(K1c、G1c)の増大を引き起こすことを認めることができる。したがって、この芳香族ジアクリラート成分を5%から15重量%組成物に加えることによって、満足のいく衝撃強度を達成することができる。
【0173】
表4では、組成物中のSartomer 344の0%から20重量%への増大が、柔軟性(flexibility)(引張弾性率、ベンド弾性率、曲げ強度)および靭性(K1c、G1c)の劇的な増大、ならびに粘度の劇的な低下を引き起こすことを認めることができる。したがって、このポリエチレングリコールジアクリラート成分の最適濃度は5%から15重量%であることが分かった。
【0174】
表4ではさらに、組成物中のSartomer 348の40%から20重量%への減少が、この樹脂組成物を使用して作製された物体の柔軟性および靭性のわずかな増大を引き起こすことを認めることができる。このエトキシル化ビスフェノールメタクリラート成分の最適濃度は20%から50重量%であることが分かった。
【0175】
この樹脂組成物は、UV硬化に必要な光開始剤を0.5〜5重量%含む。単波長において高い吸光係数を有する1つの光開始剤(Irgacure 651)は表面硬化用に使用され、より長い波長において低から中程度の吸光係数を有するもう1つの光開始剤(Lucirin TPO)は、スルーキュア(through cure)用に使用される。
【0176】
表2〜4は、少なくとも1種、好ましくは2種類の異なるメタクリラート成分、少なくとも1種、好ましくは2種類の異なるアクリラート成分、および光開始剤が、意外にも、高いグリーン強度、良好な機械特性、高い靭性、小さなカーリングおよび収縮を示し、特に、低強度の非コヒーレント照射を照明領域IAに供給する前述のステレオリソグラフィ装置SA内で、許容される速度で硬化させるのに非常によく適したパフォーミング樹脂組成物を形成することができることを指摘している。
【0177】
表2〜4はさらに、
(A1)5〜15重量%の少なくとも1種のポリエチレングリコールジアクリラートと、
(A2)5〜15重量%の少なくとも1種の環式脂肪族ジアクリラートと、
(B)20〜50重量%%の少なくとも1種の脂肪族ウレタンメタクリラートと、
(C)0.5〜5重量%の少なくとも1種の光開始剤と
を含む樹脂組成物が、予想外にも、低強度の非コヒーレント照射を照明領域IAに供給する前述のステレオリソグラフィ装置SAによって提供される硬化条件下で、高いグリーン強度、高い靭性、小さいカーリングおよび収縮、ならびに最適な機械特性を、許容される反応速度で達成することができることを指摘している。
【0178】
表5は、多官能チオールを含まない本発明に基づく樹脂組成物(例15)、および5重量%の多官能チオール(PETMP)を含む本発明に基づく樹脂組成物(例16)を示す。
【0179】
表5には、前記樹脂組成物の粘度、対応する樹脂を硬化させることによって作製される物体のグリーン強度、および後硬化後に得られる3次元物体OBの機械特性が、樹脂組成物ごとに示されている。
【0180】
表5では、組成物中のPETMPの0%から5重量%への増大が、全ての機械特性の向上、50から650MPaへのグリーン強度の劇的な予想外の驚くべき増大、靭性(K1c、G1c)の著しい増大、さらには臨界露光量(Ec)の著しい増大を引き起こすことを認めることができる。同時に、収縮が、(315から248ミクロンへ)予想外に急激に低減する。
【0181】
意外にも、メタクリラートおよびアクリラートベースの樹脂組成物中の濃度0.1%から10重量%、好ましくは1%から8重量%、より好ましくは2%から7重量%の多官能チオールは、グリーン強度および靭性を劇的に増大させ、樹脂組成物の硬化によって作製される3次元物体OBの収縮を低減させることができ、これにより、低強度の非コヒーレント照射を照明領域IAに供給する前述のステレオリソグラフィ装置SA内で硬化させるのに最適な樹脂組成物が得られることが分かった。
【0182】
表6は、本発明に基づく異なる樹脂組成物を示し、それによって多官能チオールPETMPは0から9重量%まで変更されている(例17〜20)。
表6には、前記樹脂組成物の粘度および後硬化後に得られる3次元物体OBの機械特性が、樹脂組成物ごとに示されている。
【0183】
表6では、組成物中のPETMPの0%から9重量%への増大が、靭性(K1c、G1c)の劇的な驚くべき増大を引き起こすことを認めることができる。意外にも、引張弾性率、引張強度および曲げ強度は、5重量%のPETMPで最大を示し、したがって、この値が、この多官能チオール成分の最も有利な濃度値であると思われる。
【0184】
したがって、予想外にも、濃度0.1%から10重量%、好ましくは1%から8重量%、より好ましくは2%から7重量%の多官能チオールは、対応する樹脂の硬化によって作製される3次元物体OBの靭性を劇的に増大させ、引張弾性率、引張強度および曲げ強度を最大にすることができ、これにより、低強度の非コヒーレント照射を照明領域IAに供給する前述のステレオリソグラフィ装置SA内で硬化させるのに最適な樹脂組成物が得られることが分かった。
【0185】
表7は、本発明に基づく樹脂組成物を示し、それによって多官能チオールのタイプは変更されており、5%重量の濃度で存在している(例21〜27)。使用された異なる多官能チオールのタイプは表1aに記載されている。多官能チオールのタイプに関係なく、予想外にも、多官能チオールを含む樹脂は、多官能チオールを含まない樹脂(例15)と比較して、靭性(K1cおよびG1c)の劇的な増大を示すことを認めることができる。多官能チオールを含む樹脂はさらに、意外にも、多官能チオールを含まない樹脂(例15)に比べて、有利に高い引張弾性率、強度および破断点伸度を示す。
【0186】
【表2】

【0187】
【表3】

【0188】
【表4】

【0189】
【表5】

【0190】
【表6】

【0191】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光感応性材料から3次元物体を作製する装置であり、
照明源を備える露光システム(ES)と、
制御ユニット(CU)とを備え、
それによって、前記露光システム(ES)が、
個別に制御可能な複数の光変調器(LM)を備える少なくとも1つの空間光変調器(SLM)と、
前記少なくとも1つの空間光変調器(SLM)に光学的に結合された入力光学系(IO)と、
前記少なくとも1つの空間光変調器(SLM)に光学的に結合された出力光学系(OO)とを備え、
前記入力光学系(IO)および前記出力光学系(OO)が、前記照明源から発せられた光が、前記空間光変調器(SLM)の前記個別に制御可能な光変調器(LM)を通して照明領域(IA)へ透過するのを容易にし、
前記空間光変調器(SLM)が、前記制御ユニット(CU)から発せられた制御信号に従って、前記入力光学系(I0)を透過した光のパターンを確立することを可能にし、
前記出力光学系(OO)が、前記少なくとも1つの空間光変調器(SLM)からの前記光のパターンを、照明領域(IA)上に集束させることを可能にする、装置と、
(b)
(A)少なくとも1種のアクリラート成分と、
(B)少なくとも1種のメタクリラート成分と、
(C)光開始剤とを含む樹脂組成物と
を含むシステム。
【請求項2】
前記装置が、前記露光システム(ES)が取り付けられた走査バーを備え、かつ/または前記出力光学系(OO)と前記照明領域(IA)との間の距離dが0.5から20mmであり、かつ/または前記照明源が非コヒーレント光を発生させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記樹脂組成物の総重量に基づいて、
(A)15〜40重量%の少なくとも2種類の異なるアクリラート成分と、
(B)50〜80重量%の少なくとも2種類の異なるメタクリラート成分と、
(C)0.1〜7重量%の光開始剤と
を含む、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項4】
アクリラート成分が、脂肪族アクリラートまたは環式脂肪族アクリラート、好ましくは環式脂肪族ジアクリラートであり、あるいはこれらの任意の混合物である、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
アクリラート成分が、ポリエチレングリコールアクリラート、好ましくはポリエチレングリコールジアクリラートである、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
メタクリラート成分が、脂肪族ウレタンメタクリラートである、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
メタクリラート成分が、エトキシル化ビスフェノールメタクリラート、好ましくはエトキシル化ビスフェノールジメタクリラートである、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記樹脂組成物がさらに、前記組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%の1種または数種の多官能チオールを含む、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記樹脂組成物がさらに、安定剤、好ましくは下記の構造を有するN−ニトロソヒドロキシルアミン錯体を含み、
【化1】

式中、Rが芳香族炭化水素残基、Sが塩である、
前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記N−ニトロソヒドロキシルアミン錯体がアルミニウム塩錯体である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
(A)アクリラート成分と、
(B)脂肪族ウレタンメタクリラート成分と、
(C)光開始剤と
を含む樹脂組成物。
【請求項12】
(A)ポリエチレングリコールジアクリラートもしくは環式脂肪族ジアクリラート、またはこれらの任意の混合物、および/あるいは
(D)多官能チオール
を含む、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記組成物の総重量に基づいて、
(A)5〜60重量%の少なくとも1種のアクリラート成分、好ましくはポリエチレングリコールジアクリラートもしくは環式脂肪族ジアクリラート、またはこれらの任意の混合物と、
(B)20〜50重量%%の少なくとも1種の脂肪族ウレタンメタクリラート成分と、
(C)0.5〜5重量%の光開始剤と、
(D)任意選択の多官能チオールと
を含む請求項11または12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記組成物の総重量に基づいて、
(A1)5〜15重量%の1種または数種のポリエチレングリコールジアクリラートと、
(A2)5〜15重量%の1種または数種の脂肪族または環式脂肪族ジアクリラートと、
(B1)20〜50重量%%の1種または数種の脂肪族ウレタンメタクリラートと、
(B2)20〜50重量%%の1種または数種のエトキシル化ビスフェノールメタクリラートと、
(C)0.5〜5重量%の光開始剤と、
(D)0.1〜10重量%の1種または数種の多官能チオールと、
(E)0.01から0.5重量%%の1種または数種の安定剤と
を少なくとも含む、請求項11または12または13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1から10のいずれかに記載のシステムおよび/または請求項11から14のいずれかに記載の樹脂を用いて3次元物体(OB)を製造する方法であって、
a)液体光感応性材料の第1の層を作製するステップと、
b)前記第1の層をUV放射で露光して、所定のパターンを有する前記第1の層を固化させるステップと、
c)固化した前記第1の層上に、液体光感応性材料の第2の層を付着させるステップと、
d)前記第2の層をUV放射で露光して、所定のパターンを有する前記第2の層を固化させるステップと、
e)所定の3次元物体(OB)が形成されるまで、ステップa)からd)を繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって得られた硬化した物品。
【請求項17】
光感応性材料から3次元物体を作製する前記装置が、前記出力光学系(OO)と前記照明領域(IA)との間に少なくとも1つのリリース可能な保護窓(PW)を含む、請求項1から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
光感応性材料から3次元物体を作製する前記装置が、前記照明領域(IA)と前記出力光学系(OO)との間の障害物を検出する少なくとも1つの衝突防止検出システム(LBa、LBb、HSa、HSb)を含む、請求項1から10のいずれかまたは請求項17に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−505775(P2012−505775A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531424(P2011−531424)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061958
【国際公開番号】WO2010/043463
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(504177804)ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】