近接場光ヘッド及び情報記録再生装置
【課題】小型化を図りながら近接場光を効率良く発生させることができると共に、書き込みの信頼性を向上すること。
【解決手段】ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態で配置され、ディスク面に対向する対向面15aを有するスライダ15と、平面視多角形状に形成された底面16a及び端面16bと、底面及び端面の頂点をそれぞれ結んで形成された複数の側面16cとを有し、底面が対向面に固定された光透過性のコア16と、底面側からコア内に光束Lを導入させる光束導入手段17と、向い合う2つの側面上に形成された第1の磁極18及び第2の磁極19と、第1の磁極と第2の磁極とを接続する磁気回路と、情報に応じて変調された電流が供給され、磁気回路を中心として該磁気回路の周囲を巻回するコイルとを備え、コアの端面が、光束が導入されたときに近接場光を発生させるサイズに形成されている近接場光ヘッド2を提供する。
【解決手段】ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態で配置され、ディスク面に対向する対向面15aを有するスライダ15と、平面視多角形状に形成された底面16a及び端面16bと、底面及び端面の頂点をそれぞれ結んで形成された複数の側面16cとを有し、底面が対向面に固定された光透過性のコア16と、底面側からコア内に光束Lを導入させる光束導入手段17と、向い合う2つの側面上に形成された第1の磁極18及び第2の磁極19と、第1の磁極と第2の磁極とを接続する磁気回路と、情報に応じて変調された電流が供給され、磁気回路を中心として該磁気回路の周囲を巻回するコイルとを備え、コアの端面が、光束が導入されたときに近接場光を発生させるサイズに形成されている近接場光ヘッド2を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を利用して磁気記録媒体に各種の情報を超高密度で記録することができる近接場光ヘッド及び該近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器におけるハードディスク等の容量増加に伴い、単一記録面内における情報の記録密度が増加している。例えば、磁気ディスクの単位面積当たりの記録容量を多くするためには、面記録密度を高くする必要がある。ところが、記録密度が高くなるにつれて、記録媒体上で1ビット当たりの占める記録面積が小さくなっている。このビットサイズが小さくなると、1ビットの情報が持つエネルギーが、室温の熱エネルギーに近くなり、記録した情報が熱揺らぎ等のために反転したり、消えてしまったりする等の熱減磁の問題が生じてしまう。
【0003】
一般的に用いられてきた面内記録方式では、磁化の方向が記録媒体の面内方向に向くように磁気を記録する方式であるが、この方式では上述した熱減磁による記録情報の消失等が起こり易い。そこで、このような不具合を解消するために、記録媒体に対して垂直な方向に磁化信号を記録する垂直記録方式に移行しつつある。この方式は、記録媒体に対して、単磁極を近づける原理で磁気情報を記録する方式である。この方式によれば、記録磁界が記録膜に対してほぼ垂直な方向を向く。垂直な磁界で記録された情報は、記録膜面内においてN極とS極とがループを作り難いため、エネルギー的に安定を保ち易い。そのため、この垂直記録方式は、面内記録方式に対して熱減磁に強くなっている。
【0004】
しかしながら、近年の記録媒体は、より大量且つ高密度情報の記録再生を行いたい等のニーズを受けて、さらなる高密度化が求められている。そのため、隣り合う磁区同士の影響や、熱揺らぎを最小限に抑えるために、保磁力の強いものが記録媒体として採用され始めている。そのため、上述した垂直記録方式であっても、記録媒体に情報を記録することが困難になっていた。
【0005】
そこで、この不具合を解消するために、近接場光により磁区を局所的に加熱して一時的に保磁力を低下させ、その間に書き込みを行うハイブリッド磁気記録方式(近接場光アシスト磁気記録方式)が提供されている。このハイブリッド磁気記録方式は、微小領域と、近接場光ヘッドに形成された光の波長以下のサイズに形成された光学的開口との相互作用により発生する近接場光を利用する方式である。このように、光の回折限界を超えた微小な光学的開口、即ち、近接場光発生素子を有する近接場光ヘッドを利用することで、従来の光学系において限界とされていた光の波長以下となる領域における光学情報を扱うことが可能となる。よって、従来の光情報記録再生装置等を超える記録ビットの高密度化を図ることができる。
なお、近接場光発生素子は、上述した光学的微小開口によるものだけでなく、例えば、ナノメートルサイズに形成された突起部により構成しても構わない。この突起部によっても、光学的微小開口と同様に近接場光を発生させることができる。
【0006】
上述したハイブリッド磁気記録方式による記録ヘッドとしては、各種のものが提供されているが、その1つとして、光スポットのサイズを縮小して記録密度の増大化を図った磁気記録ヘッドが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
この磁気記録ヘッドは、主に主磁極と、補助磁極と、螺旋状の導体パターンが絶縁体の内部に形成されたコイル巻線と、照射されたレーザ光から近接場光を発生させる金属散乱体と、金属散乱体に向けてレーザ光を照射する平面レーザ光源と、照射されたレーザ光を集束させるレンズとを備えている。これら各構成品は、ビームの先端に固定されたスライダの先端面に取り付けられている。
【0007】
主磁極は、一端側が記録媒体に対向した面となっており、他端側が補助電極に接続されている。つまり、主磁極及び補助電極は、1本の磁極(単磁極)を垂直方向に配置した単磁極型垂直ヘッドを構成している。また、コイル巻線は、磁極と補助電極との間を一部が通過するように補助電極に固定されている。これら磁極、補助電極及びコイル巻線は、全体として電磁石を構成している。
主磁極の先端には、金等からなる上記金属散乱体が取り付けられている。また、金属散乱体から離間した位置に上記平面レーザ光源が配置されると共に、該平面レーザ光源と金属散乱体との間に上記レンズが配置されている。
上述した各構成品は、スライダの先端面側から、補助磁極、コイル巻線、主磁極、金属散乱体、レンズ、平面レーザ光源の順に取り付けられている。
【0008】
このように構成された磁気記録ヘッドを利用する場合には、近接場光を発生させると同時に記録磁界を印加することで、記録媒体に各種の情報を記録している。
即ち、平面レーザ光源からレーザ光を照射させる。このレーザ光は、レンズによって集束され、金属散乱体に照射される。すると金属散乱体は、内部の自由電子がレーザ光の電場によって一様に振動させられるのでプラズモンが励起されて先端部分に近接場光を発生させる。その結果、記録媒体の磁気記録層は、近接場光によって局所的に加熱され、一時的に保磁力が低下する。
また、上記レーザ光の照射と同時に、コイル巻線の導体パターンに駆動電流を供給することで、主磁極に近接する記録媒体の磁気記録層に対して記録磁界を局所的に印加する。これにより、保磁力が一時的に低下した磁気記録層に各種の情報を記録することができる。つまり、近接場光と磁場との協働により、記録媒体への記録を行うことができる。
【0009】
更に、上述した磁気記録ヘッドに対して、さらに予熱機構を組み合わせた磁気記録ヘッドも知られている(例えば、特許文献3参照)。
この磁気記録ヘッドは、上述した主磁極と補助磁極との間に、予熱機構である抵抗ヒータを備えている。この抵抗ヒータは、主磁極及び金属散乱体に比べて先端面積が大きいので、加熱する対象領域が広く温度勾配が低い。そのため、抵抗ヒータは、記録媒体の磁気記録層に対して、予め予熱する程度の熱しか加えることができないようになっている。
このように構成された磁気記録ヘッドによれば、予め抵抗ヒータによって磁気記録層を予熱できるので、近接場光を発生させる金属散乱体における発熱を低減することができる。よって、温度上昇による金属散乱体の劣化や、損傷の可能性等を低下させることができ、耐久性の向上化を図ることができる。
【特許文献1】特開2004−158067号公報
【特許文献2】特開2005−4901号公報
【特許文献3】特開2005―78689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の磁気記録ヘッドには、まだ以下の課題が残されていた。
即ち、上記特許文献1及び2に記載されている磁気記録ヘッドでは、平面レーザ光源から金属散乱体にレーザ光を照射することで近接場光を発生させているが、該近接場光を効率良く発生させるためには、できるだけ金属散乱体の先端にレーザ光を照射する必要がある。その一方、レーザ光、レンズや平面レーザ光源を、記録媒体に対して干渉しないように配置する必要がある。
そのため、特許文献1に記載されている磁気記録ヘッドは、平面レーザ光源から金属散乱体に向けて斜めにレーザ光を照射すると共に半円形状のレンズを使用することで、上述した条件を満足させている。
【0011】
ところが、この条件を満足させるために、金属散乱体に対してレーザ光の光軸が斜めになると共に半円形状のレンズを使用せざるを得なかった。そのため、効率良く近接場光を発生させることが難しくなってしまい、レーザ光の出力を上げざるを得なかった。その結果、レーザ平面光源や金属散乱体が過度に発熱する恐れがあり、信頼性に劣るものであった。
【0012】
また、主磁極に対して所定の間隔を空けた状態で、レンズ及びレーザ平面光源を平行に配置する必要があるが、実際上スライダの先端にこのような配置で作りこむことは困難であり、仮に作りこめたとしてもコンパクトにまとめることができず、小型化を図ることが難しいものであった。
なお、平面レーザ光源やレンズに代えて光導波路を使用したり、ミラーを利用することでレーザ光を金属散乱体に向けて直線で照射させたりすることも考えられるが、より構成が複雑化してしまいやはり小型化を図ることが難しいものであった。
【0013】
更に、金属散乱体は、走査方向の最後端に位置するように主磁極の外側に設けられているので、磁気記録層に情報を記録する際に、記録磁界を印加している位置に対して効率良く加熱を行うことが困難なものであった。つまり、記録媒体の回転に伴って磁気記録層は、補助磁極、磁極、金属散乱体の順に移動するので、近接場光で加熱される前に記録磁界が印加されてしまう。そのため、記録磁界が印加された領域外に、近接場光による加熱温度のピーク位置がきてしまい、書き込みの信頼性が劣るものであった。
特に、近接場光による温度勾配は、記録媒体の走査方向に対して遅れる傾向にあるので、加熱温度のピーク位置が金属散乱体の真下からずれてしまうと考えられる。この点を考慮すると、実際には加熱温度のピーク位置が記録磁界の印加領域からさらに外れる方向にずれてしまい、正確な書き込みを行えない可能性が高かった。
【0014】
一方、特許文献3に記載されている磁気記録ヘッドは、主磁極と補助磁極との間に抵抗ヒータ等の予熱機構を備えているので、上述した近接場光を発生させる効率性の問題点、書き込みの信頼性の問題点を解消する構成にはなっているが、その反面、構成品としてさらに予熱機構が加わるので、構成がさらに煩雑になり大型化してしまう不都合があった。
【0015】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、小型化を図りながら近接場光を効率良く発生させることができると共に、書き込みの信頼性が向上した近接場光ヘッド及び該近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る近接場光ヘッドは、導入された光束から近接場光を発生させて、一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱すると共に、該磁気記録媒体に磁界を与えて磁化反転を生じさせ情報を記録させる近接場光ヘッドであって、前記磁気記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置され、磁気記録媒体の表面に対向する対向面を有するスライダと、平面視多角形状に形成された底面と、該底面より小さな面積で形成され、底面から所定距離離間した位置に配された端面と、底面及び端面の頂点をそれぞれ結んで形成された複数の側面とを有し、底面が前記スライダの対向面に固定された光透過性のコアと、前記底面側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段と、前記複数の側面のうち、向い合う2つの側面上に形成された第1の磁極及び第2の磁極と、磁性材料から形成され、前記第1の磁極と前記第2の磁極とを接続する磁気回路と、前記情報に応じて変調された電流が供給され、前記磁気回路を中心として該磁気回路の周囲を巻回するコイルとを備え、前記コアの端面が、前記光束が導入されたときに前記近接場光を発生させるサイズに形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、スライダが一定方向に回転する磁気記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置されている。この際、スライダの対向面は、磁気記録媒体の表面に対向した状態となっている。また、このスライダの対向面には、角錐台状に形成されたコアが底面を面接触させた状態で固定されている。よって、コアの端面は、スライダの対向面と同様に磁気記録媒体の表面に対向した状態となっている。また、この端面は、底面よりも小さいサイズに形成されているので、複数の側面は端面に向かうにしたがって、向い合う側面との間隔が漸次狭まる斜面状態となっている。そして、これら複数の側面のうち向い合う2つの側面上には、第1及び第2の磁極が形成されている。この際、コアの端面のサイズは、光束が内部に導入されたときに近接場光を発生させるサイズ(光束の波長よりも小さい微小開口となる大きさ)に形成されている。そのため、両磁極の間隔(磁気ギャップ)は、磁気記録媒体の表面に対向する端面において近接した状態になっている。つまり、微小な磁気ギャップを作り出している。
【0018】
ここで記録を行う場合には、まず光束導入手段によりコアの内部に底面側から光束を導入する。この際コアの底面は、スライダの対向面に固定されて該スライダの上面側を向いている。そのため光束導入手段は、従来の光の入れ方とは異なり、スライダの上面側から略真下に向けて、光束を容易に導入することができる。また、光透過性のコアの内部に導入された光束は、底面側から端面側に向かって自然に進み、磁気記録媒体の表面に対向する端面から近接場光として外部に漏れ出す。つまり、コアの端面から近接場光を発生させることができる。
【0019】
このように、スライダの上面側からコアの端面に向けて略一直線状に光束を導入できるので、効率良く近接場光を発生させることができる。この近接場光によって磁気記録媒体は、局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
また、上述した光束の導入と同時に、記録する情報に応じて変調した電流をコイルに供給する。すると電磁石の原理により、電流磁界が磁気回路内に磁束を発生させるので、両磁極間に磁界が生じる。これにより、両磁極間の磁気ギャップには、磁気記録媒体に向けて磁界が漏れ出す。この際、上述したように磁気ギャップは、コアの側面に両磁極が形成されていることで、微小な隙間となっている。そのため、磁気ギャップに発生した洩れ磁界は、磁気記録媒体に対して局所的に作用する。これにより、近接場光によって保磁力が低下した磁気記録媒体の局所的な位置に対して、ピンポイントで洩れ磁界を作用させることができる。なお、洩れ磁界は、記録する情報に応じて向きが反転する。そして、磁気記録媒体は、洩れ磁界を受けると、洩れ磁界の方向に応じて磁化の方向が反転する。その結果、情報の記録を行うことができる。つまり、近接場光と両磁極で発生した洩れ磁界とを協働させた、近接場光アシスト磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。
【0020】
特に、近接場光を発生させるコアは、底面及び端面が磁気記録媒体の表面やスライダの対向面と平行になるように設けられているので、光束導入段はスライダの上面から光束を容易且つ確実に導入することができる。
また、スライダの対向面にコアを固定すると共に、コアの側面に両磁極を形成するだけで、近接場光の発生と洩れ磁界の発生とを同時に達成することができるので、従来のように複雑な構成にすることなく、シンプルな構造にすることができる。よって、構成を簡略化することができ、小型化を図ることができる。
【0021】
また、コアの底面側から導入された光束は、自然と端面に向かうので効率良く近接場光を発生させることができる。よって、近接場光と洩れ磁界とをより効率良く協働させることができる。
更に、従来とは異なり、両磁極の間で近接場光を発生させることができるので、洩れ磁界が局所的に作用する範囲内に、近接場光による加熱温度のピーク位置を入れることができる。特に、近接場光による加熱の温度勾配が磁気記録媒体の移動方向に対して遅れたとしても、加熱温度のピーク位置を洩れ磁界の範囲内に留めておくことができる。従って、磁気記録媒体の局所的な位置に対して確実に記録を行うことができ、信頼性の向上化及び
磁気記録媒体のさらなる高密度化を図ることができる。
【0022】
上述したように、本発明に係る近接場光ヘッドによれば、小型化を図りながら近接場光を効率良く発生させることができると共に、書き込みの信頼性を向上することができる。
【0023】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記第1の磁極及び前記第2の磁極と、前記コアの側面との間には、それぞれ金属膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、両磁極とコアの側面との間にそれぞれ金等の金属膜が形成されているので、より強い近接場光を発生させることができる。つまり、コアの内部に導入された光束が金属膜に入射すると、該金属膜には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜の表面とコアの側面との界面をコアの端面に向かって伝播する。そして、コアの端面に達した時点で強い近接場光となって外部に漏れ出す。
従って、磁気記録媒体をより効率良く加熱することができ、情報の記録を容易に行うことができる。
【0025】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記金属膜が、前記複数の側面のうち、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が形成された側面以外の側面上に形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、複数の側面のうち、両磁極が形成された側面上だけでなく、残りの側面上にも金属膜が形成されている。即ち、コアの全ての側面上に、金属膜が形成されている。そのため、コアの内部に導入された光束は、途中で外部に洩れることはなく、全て表面プラズモンとなって端面に集まる。その結果、さらに強い近接場光を効率良く発生させることができる。その結果、情報の記録をさらに容易に行うことができる。
【0027】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記複数の側面のうち、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が形成された側面以外の側面上に、金属膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、複数の側面のうち、両磁極が形成されていない側面上に、金等の金属膜が形成されているので、より強い近接場光を発生させることができる。つまり、コアの内部に導入された光束が金属膜に入射すると、該金属膜には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜の表面とコアの側面との界面をコアの端面に向かって伝播する。そして、コアの端面に達した時点で強い近接場光となって外部に漏れ出す。しかも両磁極は非透過性であるので、導入された光束は途中でコアの外部に漏れることもない。
従って、効率良く強い近接場光を発生させることができる。その結果、磁気記録媒体をより効率良く加熱することができ、情報の記録をさらに容易に行うことができる。
【0029】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明のいずれかの近接場光ヘッドにおいて、前記磁気回路が、前記スライダの対向面に垂直な方向に沿う垂直回路部を一部に有し、前記コイルが、前記対向面に沿って広がるように、前記垂直回路部の周囲を螺旋状に巻回した状態で形成されていることを特徴とするものである。
【0030】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、第1の磁極と第2の磁極とを接続する磁気回路の一部が、スライダの対向面に垂直な方向に沿う垂直回路部となっている。そして、コイルは、スライダの対向面に沿って広がるように、垂直回路部を中心として該垂直回路部の周囲を螺旋状に巻回した状態で形成されている。つまり、コイルは、スライダの対向面に対して平行した状態となっている。
よって、コイルの巻線を増やしたとしても、スライダの厚みに影響しないので、薄型化を図りながら洩れ磁界の強度を高めることができる。また、垂直面ではなく水平面にコイルを作製できるので、特別な方法を用いずとも従来の方法で容易に作製を行える。そのため、コイルを細くしたり巻線を増やしたりする等、設計の自由度を向上することができる。また、コイルを自由に設計できるため、磁気回路についても幅を太くする等自由に設計を行い易い。このように、磁気回路及びコイルを状況に応じて自由に設計でき、信頼性のある電磁石を製造することができる。
【0031】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明のいずれかの近接場光ヘッドにおいて、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が、前記磁気記録媒体の移動方向に沿って並ぶように設けられていることを特徴とするものである。
【0032】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、第1の磁極及び第2の磁極が磁気記録媒体の移動方向に沿って並んでいるので、両磁極を確実に磁気記録媒体のトラック上に位置させることができる。従って、隣接するトラックに記録された情報に影響を与えることなく、所望するトラックに対して情報を正確に記録することができる。
【0033】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記第1の磁極が、前記第2の磁極よりも前記移動方向側に位置すると共に、第2の磁極よりも前記磁気記録媒体の表面に対向する面積が小さく形成されて、該第1の磁極側で前記情報の記録を行うことを特徴とするものである。
【0034】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、第1の磁極が第2の磁極よりも、磁気記録媒体の移動方向側(進行側)に位置している。また、磁気記録媒体の表面に対向する面積は、第2の磁極よりも第1の磁極の方が小さく形成されており、第1の磁極側で情報の記録を行うようになっている。つまり、第1の磁極が主磁極として機能し、第2の磁極は補助磁極として機能するようになっている。
磁気記録媒体に記録を行う際には、第1の磁極側から発生した磁束が磁気記録媒体に作用するので、磁化を表面に対して垂直な方向に向けた状態で記録を行うことができる。なおこの磁束は、磁気記録媒体を経由して第2の磁極に戻る。この際、小さな面積に形成された第1の磁極でのみ記録が行われるので、磁化の方向に影響を与えることがない。
このように、垂直磁気記録方式により情報の記録を行うことができ、熱揺らぎ現象に対して安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性をさらに高めることができる。
【0035】
また、本発明に係る情報記録再生装置は、上記本発明のいずれかの近接場光ヘッドと、前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で、前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、前記光束導入手段に対して前記光束を入射させる光源と、前記ビームの基端側を支持すると共に、該ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、前記コイルに前記電流を供給すると共に前記光源の作動を制御する制御部とを備えていることを特徴とするものである。
【0036】
この発明に係る情報記録再生装置においては、回転駆動部により磁気記録媒体を一定方向に回転させた後、アクチュエータによりビームを移動させて近接場光ヘッドをスキャンさせる。そして、近接場光ヘッドを磁気記録媒体上の所望する位置に配置させる。この際近接場光ヘッドは、磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態、即ち、2軸を中心として捻れることができるようにビームに支持されている。よって、磁気記録媒体にうねりが生じたとしても、うねりに起因する風圧変化を捩じりによって吸収でき、近接場光ヘッドを安定して浮上させることができる。
【0037】
その後、制御部は、光源を作動させると同時に、情報に応じて変調した電流をコイルに供給する。これにより、近接場光ヘッドは、近接場光と洩れ磁界とを協働させて、磁気記録媒体に情報を記録することができる。
特に、小型化を図りながら近接場光を効率良く発生させることができると共に書き込みの信頼性が向上した近接場光ヘッドを備えているので、情報記録再生装置自体の小型化を図ることができ、また、書き込みの信頼性が高まって高品質化を図ることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る近接場光ヘッドによれば、小型化を図りながら近接場光を効率良く発生させることができると共に書き込みの信頼性を向上することができる。
また、本発明に係る情報記録再生装置によれば、小型化を図ることができると共に、書き込みの信頼性が高めて高品質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る近接場光ヘッド及び情報記録再生装置の第1実施形態を、図1から図6を参照して説明する。なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、磁気記録層d3を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、面内記録方式で書き込みを行う場合を例に挙げて説明する。
【0040】
本実施形態の情報記録再生装置1は、図1に示すように、近接場光ヘッド2と、ディスク面(磁気記録媒体の表面)D1に平行なXY方向に移動可能とされ、ディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在な状態で近接場光ヘッド2を先端側で支持するビーム3と、光導波路4の基端側から該光導波路4に対して光束Lを入射させる光信号コントローラ(光源)5と、ビーム3の基端側を支持すると共に、該ビーム3をディスク面D1に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ6と、ディスクDを一定方向に回転させるスピンドルモータ(回転駆動部)7と、情報に応じて変調した電流を後述するコイル21に対して供給すると共に、光信号コントローラ5の作動を制御する制御部8と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9とを備えている。
【0041】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料により、上面視四角形状に形成されていると共に、内側に各構成品を収容する凹部9aが形成されている。また、このハウジング9には、凹部9aの開口を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。
凹部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定される。凹部9aの隅角部には、上記アクチュエータ6が取り付けられている。このアクチュエータ6には、軸受10を介してキャリッジ11が取り付けられており、該キャリッジ11の先端にビーム3が取り付けられている。そして、キャリッジ11及びビーム3は、アクチュエータ6の駆動によって共に上記XY方向に移動可能とされている。
なお、キャリッジ11及びビーム3は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ6の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。また、近接場光ヘッド2とビーム3とで、サスペンション12を構成している。
また、光信号コントローラ5は、アクチュエータ6に隣接するように凹部9a内に取り付けられている。そして、このアクチュエータ6に隣接して、上記制御部8が取り付けられている。
【0042】
上記近接場光ヘッド2は、導入された光束Lから近接場光Rを発生させてディスクDを加熱すると共に、ディスクDに磁界を与えて磁化反転を生じさせ情報を記録させるものである。
即ち、近接場光ヘッド2は、図2及び図3に示すように、ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態で配置され、ディスク面D1に対向する対向面15aを有するスライダ15と、該スライダ15に固定され、近接場光Rを発生させるコア16と、コア16内に光束Lを導入させる光束導入手段17と、コア16に形成された第1の磁極18及び第2の磁極19と、両磁極18、19を接続する磁気回路20と、磁気回路20を中心として該磁気回路20の周囲を巻回するコイル21とを備えている。
【0043】
スライダ15は、石英ガラス等の光透過性材料によって、直方体状に形成されている。このスライダ15は、対向面15aをディスクD側にした状態で、ジンバル部25を介してビーム3の先端にぶら下がるように支持されている。このジンバル部25は、ディスク面D1に垂直なZ方向、X軸回り及びY軸回りにのみ変位するように動きが規制された部品である。これによりスライダ15は、上述したようにディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在とされている。
【0044】
スライダ15の対向面15には、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から、浮上するための圧力を発生させる凸条部15bが形成されている。本実施形態では、レール状に並ぶように、長手方向に沿って延びた凸条部15bを2つ形成している場合を例にしている。但し、この場合に限定されるものではなく、スライダ15をディスク面D1から離そうとする正圧とスライダ15をディスク面D1に引き付けようとする負圧とを調整して、スライダ15を最適な状態で浮上させるように設計されていれば、どのような凹凸形状でも構わない。なお、この凸条部15bの表面はABS(Air Bearing Surface)と呼ばれる面とされている。
【0045】
スライダ15は、この2つの凸条部15bによってディスク面D1から浮上する力を受けていると共に、ビーム3によってディスク面D1側に押さえ付けられる力を受けている。スライダ15は、この両者の力のバランスによって、上述したようにディスク面D1から所定距離H離間した状態で浮上するようになっている。
【0046】
上記コア16は、スライダ15と同様に石英ガラス等の光透過性材料に形成されており、図4に示すように、底面16aと端面16bと4つの側面(複数の側面)16cとを有する四角錐台状に形成されている。具体的には、互いに平行な辺を有するように平面視長方形状に形成された底面16aと、該底面16aより小さな面積で同一形状(平面視長方形状)に形成され、底面16aから所定距離離間した位置に配された端面16bと、底面16a及び端面16bの頂点をそれぞれ結んで形成された4つの側面16cとを有するように加工されている。
但し、コア16としては、4つの側面16cを有する場合に限定されるものではなく、平面視多角形状(例えば、6角形状や8角形状)の底面及び端面と、これら底面及び端面のそれぞれの頂点を結ぶ複数の側面(例えば、底面及び端面が6角形状の場合には6面)とを有するコアとしても構わない。即ち、底面及び端面が平面視多角形状に形成された角錐台状のコアであれば構わない。なお、底面及び端面は、共に同じ形状でなくても構わない。
【0047】
このように構成されたコア16は、図2に示すように、底面16aをスライダ15の対向面15aに面接触させた状態で固定されている。この際、互いに対向する2つの側面16cが、スライダ15の長手方向、即ち、ディスクDの移動方向に沿って並ぶように固定されている。なお、コア16とスライダ15とをそれぞれ別々に作製した後、互いを固定しても構わないし、石英ガラス等から一体的に作製しても構わない。特に、一体的に作製することで、製造工程の簡略化、製造時間の短縮化等を図ることができるので、より好ましい。
【0048】
また、底面16aを対向面15aに面接触させているので、コア16の端面16bも同様にスライダ15の対向面15a及びディスク面D1に対して平行状態となっている。この際、端面16bの高さが凸条部15bの高さと同じになるように、コア16の高さが設定されている。
更に、コア16の端面16bは、光束Lが内部に導入されたときに近接場光Rを発生させるサイズに形成されている。即ち、コア16の端面16bの開口サイズは、光束Lの波長よりも遥かに微細なサイズ(例えば、一辺が数十nm程度のサイズ)となるように設計されており、通常の伝播光を透過させることがないが、近接場光Rを近傍に漏れ出させることを可能にしている。
【0049】
また、スライダ15の上面には、コア16の真上に当たる位置にレンズ26が形成されている。このレンズ26は、例えば、グレースケールマスクを用いたエッチングによって形成される非球面のマイクロレンズである。更に、スライダ15の上面には、光ファイバー等の光導波路4が取り付けられている。この光導波路4は、先端が略45度にカットされたミラー面4aとなっており、該ミラー面4aがレンズ26の真上に位置するように取り付け位置が調整されている。そして、光導波路4は、ビーム3及びキャリッジ11等を介して光信号コントローラ5に引き出されて接続されている。
これにより光導波路4は、光信号コントローラ5から入射された光束Lを先端側まで導き、ミラー面4aで反射させて向きを変えた後、レンズ26に出射することができるようになっている。また、出射された光束Lは、レンズ26によって集束した後、スライダ15を透過してコア16の底面16aに導入されるようになっている。即ち、光導波路4及びレンズ26は、上述した光束導入手段17を構成している。
【0050】
また、図2及び図4に示すように、コア16に形成された4つの側面16cのうち、ディスクDの移動方向に沿うように並んだ互いに向い合う2つの側面(底面16a及び端面16bが有する4つのうち互いに平行な対辺のうちの1辺をそれぞれ有した状態で向い合う側面)16c上には、上記第1の磁極18及び第2の磁極19が形成されている。両磁極18、19は、例えば、磁性体材料を蒸着等の薄膜成膜技術によって側面16c上に形成されたものである。
ここでコア16の端面16bは、上述したように底面16aよりも小さいサイズで該底面16aと同じ形状に形成されているので、4つの側面16cは端面16bに向かうにしたがって向い合う側面16cとの間隔が漸次狭まる斜面状態となっている。特に、コア16の端面16bのサイズは、近接場光Rを発生させる極微小サイズであるので、端面16bにおける両磁極18、19の間隔(磁気ギャップ)Gは非常に近接した状態となっている。つまり、微小な磁気ギャップGとなっている。
【0051】
また、磁気回路20は、図3に示すように、磁性材料によりスライダ15内にパターニングされて形成されている。この磁気回路20は、両端がそれぞれ第1の磁極18及び第2の磁極19に接続されていると共に、図5に示すように、回路の略中間付近にあたる一部分が、スライダ15の対向面15aに垂直な方向に沿って折り曲げられた垂直回路部20aとなっている。
【0052】
そして、コイル21は、磁気回路20のうち上述した垂直回路部20aの周囲を螺旋状に巻回した状態で、スライダ15の対向面15aに沿うように形成されている。この際コイル21は、ショートしないように、隣り合う線材間、磁気回路20との間が絶縁状態とされている。また、このコイル21は、ビーム3やキャリッジ11を介して制御部8に電気的に接続されており、該制御部8から情報に応じて変調された電流が供給されるようになっている。即ち、磁気回路20及びコイル21は、全体として電磁石を構成している。
【0053】
また、スライダ15の先端面16bには、図2及び図3に示すように、ディスクDの磁気記録層d3から洩れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変換する磁気抵抗効果膜27が形成されている。この磁気抵抗効果膜27は、コア16の端面16bと略同じ幅で形成されている。また、この磁気抵抗効果膜27には、図示しないリード膜等を介して制御部8からバイアス電流が供給されている。これにより制御部8は、ディスクDから洩れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することでき、この電圧の変化から信号の再生を行っている。即ち、磁気抵抗効果膜27は、再生素子として機能している。
【0054】
なお、本実施形態のディスクDは、図2に示すように、基板d1上に下地層d2、磁気記録層d3、保護層d4及び潤滑層d5が順に成膜されたものである。
基板d1としては、例えば、アルミ基板やガラス基板等である。下地層d2は、磁気記録層d3が薄くても良好な磁気特性をだすためのもので、例えばCr合金系が使用される。磁気記録層d3は、保磁力を高めるため、例えばCoCrPtTaやCoCrPtB等のCoCr系合金が使用される。保護層d4は、磁気記録層d3を保護するためのもので、例えばDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜が使用される。潤滑層d5は、例えば、フッ素系の液体潤滑材が使用される。
【0055】
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する場合について以下に説明する。
まず、スピンドルモータ7を駆動させてディスクDを一定方向に回転させる。次いで、アクチュエータ6を作動させて、キャリッジ11を介してビーム3をXY方向にスキャンさせる。これにより、図1に示すように、ディスクD上の所望する位置に近接場光ヘッド2を位置させることができる。この際、近接場光ヘッド2は、スライダ15の対向面15aに形成された2つの凸条部15bによって浮上する力を受けると共に、ビーム3等によってディスクD側に所定の力で押さえ付けられる。近接場光ヘッド2は、この両者の力のバランスによって、図2に示すようにディスクD上から所定距離H離間した位置に浮上する。
【0056】
また、近接場光ヘッド2は、ディスクDのうねりに起因して発生する風圧を受けたとしても、ジンバル部25によってZ方向、XY軸回りに変位することができるようになっているので、うねりに起因する風圧を吸収することができる。そのため、近接場光ヘッド2を安定した状態で浮上させることができる。
【0057】
ここで、情報の記録を行う場合、制御部8は光信号コントローラ5を作動させると共に、情報に応じて変調した電流をコイル21に供給する。
光信号コントローラ5は、制御部8からの指示を受けて光束Lを光導波路4の基端側から入射させる。入射した光束Lは、光導波路4内を先端側に向かって進み、図2に示すようにミラー面4aで略90度向きを変えて光導波路4内から出射する。出射した光束Lは、レンズ26によって集束された状態でスライダ15内部を透過すると共に、レンズ26の略真下に設けられたコア16の内部に底面16a側から入射する。つまり、光束Lは、光束導入手段17によってスライダ15の上面側から一直線にコア16に向かって導入される。
【0058】
コア16の内部に導入された光束Lは、底面16a側から端面16b側に向かって進み、図6に示すように、ディスク面D1に対向する端面16bから近接場光Rとして外部に漏れ出す。つまり、コア16の端面16bから近接場光Rを発生させることができる。
このように、スライダ15の上面側からコア16の端面16bに向けて略一直線に光束Lを導入できるので、従来の光の入れ方とは異なり光束Lをスライダ15の上面から容易に導入できると共に、効率良く近接場光Rを発生させることができる。この近接場光Rによって、ディスクDの磁気記録層d3は局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
【0059】
なお、コア16の側面16cに形成された両磁極18、19を光非透過性の材料から形成することが好ましい。こうすることで、両磁極18、19が形成された側面16cからコア16の外部に光束Lが漏れてしまうことを防止でき、光束Lを端面16bにより集光させて、近接場光Rを効率良く発生させることができる。
【0060】
一方、制御部8によってコイル21に電流が供給されると、電磁石の原理により電流磁界が磁気回路20内に磁束を発生させるので、両磁極18、19間に磁界が生じる。これにより、両磁極18、19間の磁気ギャップGには、図6に示すようにディスクDに向けて磁界が漏れ出す。この際、上述したように磁気ギャップGは、コア16の側面16cに両磁極18、19が形成されていることで、微小な隙間となっている。そのため、磁気ギャップGに発生した洩れ磁界は、ディスクDの磁気記録層d3に対して局所的に作用する。これにより、近接場光Rによって保磁力が低下した磁気記録層d3の局所的な位置に対して、ピンポイントで洩れ磁界を作用させることができる。なお、この洩れ磁界は、記録する情報に応じて向きが反転する。
【0061】
そして、ディスクDの磁気記録層d3は、洩れ磁界を受けると、洩れ磁界の向きに応じて磁化の方向が反転する。その結果、ディスクDに情報の記録を行うことができる。つまり、近接場光Rと両磁極18、19で発生した洩れ磁界とを協働させた、近接場光アシスト磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。
【0062】
次に、ディスクDに記録された情報を再生する場合には、スライダ15の先端面16bに形成されている磁気抵抗効果膜27が、ディスクDの磁気記録層d3から洩れ出ている磁界を受けて、その大きさに応じて電気抵抗が変化する。よって、磁気抵抗効果膜27の電圧が変化する。これにより制御部8は、ディスクDから洩れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することができる。そして制御部8は、この電圧の変化から信号の再生を行うことで、情報の再生を行うことができる。
【0063】
特に、近接場光Rを発生させるコア16は、底面16a及び端面16bがディスク面D1やスライダ15の対向面15aと平行になるように設けられているので、光束導入手段17はスライダ15の上面から光束Lを容易且つ確実に導入することができる。
また、スライダ15の対向面15aにコア16を固定すると共に、コア16の側面16cに両磁極18、19を形成するだけで、近接場光Rの発生と洩れ磁界の発生とを同時に達成することができるので、従来のように複雑な構成にすることなく、シンプルな構造にすることができる。よって、構成を簡略化することができ、小型化を図ることができる。
【0064】
また、コア16の底面16a側から導入された光束Lは、自然と端面16bに向かうので効率良く近接場光Rを発生させることができる。よって、近接場光Rと洩れ磁界とをより効率良く協働させることができる。
更に、従来とは異なり、両磁極18、19の間で近接場光Rを発生させることができるので、洩れ磁界が作用する範囲内に、近接場光Rによる加熱温度のピーク位置を入れることができる。特に、近接場光Rによる加熱の温度勾配がディスクDの移動方向に対して遅れたとしても、加熱温度のピーク位置を洩れ磁界の範囲内に留めておくことができる。従って、ディスクDの局所的な位置に対して確実に記録を行うことができ、信頼性の向上化及びディスクDのさらなる高密度化を図ることができる。
【0065】
また、コイル21は、磁気回路20の垂直回路部20aの周囲を螺旋状に巻回した状態で形成され、スライダ15の対向面15aに対して平行している。よって、コイル21の巻線を増やしたとしても、スライダ15の厚みに影響しないので、薄型化を図りながら洩れ磁界の強度を高めることができる。また、垂直面ではなく水平面にコイル21を作製できるので、特別な方法を用いずとも従来の方法で容易に作製を行える。そのため、コイル21を細くしたり巻線を増やしたりする等、設計の自由度を向上することができる。また、コイル21を自由に設計できるため、磁気回路20についても幅を太くする等自由に設計を行い易い。このように、磁気回路20及びコイル21を状況に応じて自由に設計でき、信頼性のある電磁石を製造することができる。
【0066】
また、第1の磁極18及び第2の磁極19がディスクDの移動方向に沿って並んでいるので、両磁極18、19を確実にディスクDのトラック上に位置させることができる。従って、隣接するトラックに記録された情報に影響を与えることなく、所望するトラックに対して情報を正確に記録することができる。
【0067】
上述したように本実施形態の近接場光ヘッド2によれば、小型化を図りながら近接場光Rを効率良く発生させることができると共に書き込みの信頼性を向上することができる。
また、本実施形態の情報記録再生装置1によれば、上述した近接場光ヘッド2を備えているので、該情報記録再生装置1自体の小型化も図ることができ、また、書き込みの信頼性が高まって高品質化を図ることができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る近接場光ヘッドの第2実施形態について、図7を参照して説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、コア16の側面16c上に第1の磁極18及び第2の磁極19が直接形成されていたのに対し、第2実施形態の近接場光ヘッド2のコア16は、図7に示すように、側面16cと両磁極18、19との間にそれぞれ金属膜30が形成されている点である。
【0069】
この金属膜30は、例えばAu膜であり、コア16の側面16c上に蒸着等によって成膜されている。このように構成されたコア16の場合には、内部に導入された光束Lが金属膜30に入射すると、該金属膜30に表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜30の表面とコア16の側面16cとの界面をコア16の端面16bに向かって伝播する。そして、コア16の端面16bに達した時点で、光強度の強い近接場光Rとなって外部に漏れ出す。従って、ディスクDをより効率良く加熱することができ、情報の記録を容易に行うことができる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る近接場光ヘッドの第3実施形態について、図8を参照して説明する。なお、第3実施形態において第2実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、コア16の側面16cと両磁極18、19との間に金属膜30が形成されていたのに対し、第3実施形態の近接場光ヘッド2のコア16は、図8に示すように、両磁極18、19が形成された側面16c以外の側面16c上に金属膜30が形成されている点である。
【0071】
本実施形態においても、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができ、光強度の強い近接場光Rを発生することができる。更に本実施形態では、それに加え全てのコア16の側面16c上に、金属膜30又は光非透過性の両磁極18、19のいずれかが形成されているので、コア16の内部に導入された光束Lは端面16bに向かう途中でコア16の外部に洩れることがない。従って、光束Lを無駄なく端面16bに集光することができ、より効率良く光強度の強い近接場光Rを発生することができる。その結果、ディスクDをより効率良く加熱することができ、情報の記録をさらに容易に行うことができる。
【0072】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0073】
例えば、上記第2実施形態では金属膜30を両磁極18、19とコア16の側面16cとの間に形成し、第3実施形態では金属膜30を両磁極18、19が形成されていない側面16c上に形成したが、これらを組み合わせた形で金属膜30を形成しても構わない。
即ち、コア16の全ての側面16c上に金属膜30を形成しても構わない。こうすることで、第3実施形態と同様に光束Lがコア16の端面16bに向かう途中で外部に洩れることはなく、しかも、全て表面プラズモンとなって端面16bに伝播する。その結果、さらに光強度の強い近接場光Rを効率良く発生させることができ、情報の記録をさらに容易に行うことができる。
【0074】
また、上記各実施形態では、面内記録方式で記録を行う場合を例にして説明したが、この記録方式に限られず、垂直記録方式にも適用可能なものである。
但しこの場合には、図9に示すように、第2の磁極19よりもディスクDの移動方向側に第1の磁極18を配置すると共に、ディスク面D1に対向する面積を第2の磁極19よりも小さくして、該第1の磁極18側で記録を行わせるようにする。つまり、第1の磁極18を主磁極として機能させ、第2の磁極19を補助磁極として機能させるように構成すれば良い。
【0075】
また、この場合に使用するディスクDは、少なくとも、ディスク面D1に垂直な方向に磁化容易軸を有する垂直記録層d6と、高透磁率材料からなる軟磁性層d7との2層で構成される垂直2層膜ディスクを使用する。このようなディスクDとしては、例えば図9に示すように、基板d1上に、軟磁性層d7と、中間層d8と、垂直記録層d6と、保護層d4と、潤滑層d5とを順に成膜したものを使用すると良い。
なお、垂直記録層d6は、垂直異方性磁性層となっており、例えば、CoCrPt系合金が使用される。また、中間層d8は、垂直記録層d6の結晶制御層である。
【0076】
そして、ディスクDに記録を行う場合には、第1の磁極18側から発生した磁束がディスクDの垂直記録層d6を真直ぐ通り抜け、軟磁性層d7に達する。これによって、垂直記録層d6の磁化をディスク面D1に対して垂直に向けた状態で記録を行うことができる。また、軟磁性層d7に達した磁束は、該軟磁性層d7を経由して第2の磁極19に戻る。この際、第1の磁極18側でのみ記録を行うので、第2の磁極19に戻る際には磁化の方向に影響を与えることはない。
このように、垂直磁気記録方式により情報の記録を行えるので、熱揺らぎ現象等の影響を受け難く、安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性をさらに高めることができる。
【0077】
また、上記各実施形態では、コア16の底面16a及び端面16bの形状を上面視正方形状としたが、この場合に限られるものではない。例えば、図10に示すように、上面視平行四辺形状や、図11に示すように、上面視台形状に形成しても構わない。更には、図12に示すように、4辺のいずれもが平行関係とならない上面視四角形状に形成しても構わない。このように、底面16a及び端面16bが平面視四角形状に形成されていれば、コア16をどのような形状に形成しても構わない。また、底面16a及び端面16bを共に同一形状にする必要もなく、それぞれ異なる多角形状に形成しても構わない。
【0078】
また、上記実施形態では、光信号コントローラ5をハウジング9内に取り付け、光束導入手段17を構成する光導波路4の基端側から光束Lを入射させることで、コア16に該光束Lを導いた構成を採用したが、この場合に限定されるものではない。
例えば、図13に示すように、光束導入手段17をレンズ26だけで構成し、該レンズ26とジンバル部25との間に光信号コントローラ5を設けても構わない。なお、この場合には、ビーム3に沿って配線等を這わせることで、光信号コントローラ5と制御部8とを電気的に接続すれば良い。この場合であっても、光信号コントローラ5から光束導入手段17に対して光束Lを確実に入射させることができる。特に、光束Lをレンズ26に直接入射できるので、より効率良く近接場光を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す近接場光ヘッドの拡大断面図である。
【図3】図2に示す近接場光ヘッドを、ディスク面側から見た図である。
【図4】図3に示す近接場光ヘッドのコアを端面側から見た斜視図である。
【図5】図3に示す近接場光ヘッドのコイルと磁気回路との取付位置関係を示す断面図である。
【図6】図2に示す近接場光ヘッドによりディスクに記録を行っている最中の状態を示す図であって、コアを中心とした拡大断面図である。
【図7】本発明に係る近接場光ヘッドの第2実施形態を示す図であって、側面と両磁極との間に金属膜が形成されたコアの斜視図である。
【図8】本発明に係る近接場光ヘッドの第3実施形態を示す図であって、両磁極が形成されていない側面上に金属膜が形成されたコアの斜視図である。
【図9】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、垂直記録方式によりディスクに記録を行っている最中の状態を示す、コアを中心とした拡大断面図である。
【図10】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、底面及び端面が平行四辺形状に形成されたコアを端面側から見た拡大図である。
【図11】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、底面及び端面が台形状に形成されたコアを端面側から見た拡大図である。
【図12】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、4辺のいずれもが平行関係とならないように底面及び端面が四角形状に形成されたコアを端面側から見た拡大図である。
【図13】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、レンズとジンバル部との間に光信号コントローラが設けられた近接場光ヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0080】
D ディスク(磁気記録媒体)
D1 ディスク面(磁気記録媒体の表面)
L 光束
R 近接場光
1 情報記録再生装置
2 近接場光ヘッド
3 ビーム
5 光信号コントローラ(光源)
6 アクチュエータ
7 スピンドルモータ(回転駆動部)
8 制御部
15 スライダ
15a 対向面
16 コア
16a コアの底面
16b コアの端面
16c コアの側面
17 光束導入手段
18 第1の磁極
19 第2の磁極
20 磁気回路
20a 垂直回路部
21 コイル
30 金属膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を利用して磁気記録媒体に各種の情報を超高密度で記録することができる近接場光ヘッド及び該近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器におけるハードディスク等の容量増加に伴い、単一記録面内における情報の記録密度が増加している。例えば、磁気ディスクの単位面積当たりの記録容量を多くするためには、面記録密度を高くする必要がある。ところが、記録密度が高くなるにつれて、記録媒体上で1ビット当たりの占める記録面積が小さくなっている。このビットサイズが小さくなると、1ビットの情報が持つエネルギーが、室温の熱エネルギーに近くなり、記録した情報が熱揺らぎ等のために反転したり、消えてしまったりする等の熱減磁の問題が生じてしまう。
【0003】
一般的に用いられてきた面内記録方式では、磁化の方向が記録媒体の面内方向に向くように磁気を記録する方式であるが、この方式では上述した熱減磁による記録情報の消失等が起こり易い。そこで、このような不具合を解消するために、記録媒体に対して垂直な方向に磁化信号を記録する垂直記録方式に移行しつつある。この方式は、記録媒体に対して、単磁極を近づける原理で磁気情報を記録する方式である。この方式によれば、記録磁界が記録膜に対してほぼ垂直な方向を向く。垂直な磁界で記録された情報は、記録膜面内においてN極とS極とがループを作り難いため、エネルギー的に安定を保ち易い。そのため、この垂直記録方式は、面内記録方式に対して熱減磁に強くなっている。
【0004】
しかしながら、近年の記録媒体は、より大量且つ高密度情報の記録再生を行いたい等のニーズを受けて、さらなる高密度化が求められている。そのため、隣り合う磁区同士の影響や、熱揺らぎを最小限に抑えるために、保磁力の強いものが記録媒体として採用され始めている。そのため、上述した垂直記録方式であっても、記録媒体に情報を記録することが困難になっていた。
【0005】
そこで、この不具合を解消するために、近接場光により磁区を局所的に加熱して一時的に保磁力を低下させ、その間に書き込みを行うハイブリッド磁気記録方式(近接場光アシスト磁気記録方式)が提供されている。このハイブリッド磁気記録方式は、微小領域と、近接場光ヘッドに形成された光の波長以下のサイズに形成された光学的開口との相互作用により発生する近接場光を利用する方式である。このように、光の回折限界を超えた微小な光学的開口、即ち、近接場光発生素子を有する近接場光ヘッドを利用することで、従来の光学系において限界とされていた光の波長以下となる領域における光学情報を扱うことが可能となる。よって、従来の光情報記録再生装置等を超える記録ビットの高密度化を図ることができる。
なお、近接場光発生素子は、上述した光学的微小開口によるものだけでなく、例えば、ナノメートルサイズに形成された突起部により構成しても構わない。この突起部によっても、光学的微小開口と同様に近接場光を発生させることができる。
【0006】
上述したハイブリッド磁気記録方式による記録ヘッドとしては、各種のものが提供されているが、その1つとして、光スポットのサイズを縮小して記録密度の増大化を図った磁気記録ヘッドが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
この磁気記録ヘッドは、主に主磁極と、補助磁極と、螺旋状の導体パターンが絶縁体の内部に形成されたコイル巻線と、照射されたレーザ光から近接場光を発生させる金属散乱体と、金属散乱体に向けてレーザ光を照射する平面レーザ光源と、照射されたレーザ光を集束させるレンズとを備えている。これら各構成品は、ビームの先端に固定されたスライダの先端面に取り付けられている。
【0007】
主磁極は、一端側が記録媒体に対向した面となっており、他端側が補助電極に接続されている。つまり、主磁極及び補助電極は、1本の磁極(単磁極)を垂直方向に配置した単磁極型垂直ヘッドを構成している。また、コイル巻線は、磁極と補助電極との間を一部が通過するように補助電極に固定されている。これら磁極、補助電極及びコイル巻線は、全体として電磁石を構成している。
主磁極の先端には、金等からなる上記金属散乱体が取り付けられている。また、金属散乱体から離間した位置に上記平面レーザ光源が配置されると共に、該平面レーザ光源と金属散乱体との間に上記レンズが配置されている。
上述した各構成品は、スライダの先端面側から、補助磁極、コイル巻線、主磁極、金属散乱体、レンズ、平面レーザ光源の順に取り付けられている。
【0008】
このように構成された磁気記録ヘッドを利用する場合には、近接場光を発生させると同時に記録磁界を印加することで、記録媒体に各種の情報を記録している。
即ち、平面レーザ光源からレーザ光を照射させる。このレーザ光は、レンズによって集束され、金属散乱体に照射される。すると金属散乱体は、内部の自由電子がレーザ光の電場によって一様に振動させられるのでプラズモンが励起されて先端部分に近接場光を発生させる。その結果、記録媒体の磁気記録層は、近接場光によって局所的に加熱され、一時的に保磁力が低下する。
また、上記レーザ光の照射と同時に、コイル巻線の導体パターンに駆動電流を供給することで、主磁極に近接する記録媒体の磁気記録層に対して記録磁界を局所的に印加する。これにより、保磁力が一時的に低下した磁気記録層に各種の情報を記録することができる。つまり、近接場光と磁場との協働により、記録媒体への記録を行うことができる。
【0009】
更に、上述した磁気記録ヘッドに対して、さらに予熱機構を組み合わせた磁気記録ヘッドも知られている(例えば、特許文献3参照)。
この磁気記録ヘッドは、上述した主磁極と補助磁極との間に、予熱機構である抵抗ヒータを備えている。この抵抗ヒータは、主磁極及び金属散乱体に比べて先端面積が大きいので、加熱する対象領域が広く温度勾配が低い。そのため、抵抗ヒータは、記録媒体の磁気記録層に対して、予め予熱する程度の熱しか加えることができないようになっている。
このように構成された磁気記録ヘッドによれば、予め抵抗ヒータによって磁気記録層を予熱できるので、近接場光を発生させる金属散乱体における発熱を低減することができる。よって、温度上昇による金属散乱体の劣化や、損傷の可能性等を低下させることができ、耐久性の向上化を図ることができる。
【特許文献1】特開2004−158067号公報
【特許文献2】特開2005−4901号公報
【特許文献3】特開2005―78689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の磁気記録ヘッドには、まだ以下の課題が残されていた。
即ち、上記特許文献1及び2に記載されている磁気記録ヘッドでは、平面レーザ光源から金属散乱体にレーザ光を照射することで近接場光を発生させているが、該近接場光を効率良く発生させるためには、できるだけ金属散乱体の先端にレーザ光を照射する必要がある。その一方、レーザ光、レンズや平面レーザ光源を、記録媒体に対して干渉しないように配置する必要がある。
そのため、特許文献1に記載されている磁気記録ヘッドは、平面レーザ光源から金属散乱体に向けて斜めにレーザ光を照射すると共に半円形状のレンズを使用することで、上述した条件を満足させている。
【0011】
ところが、この条件を満足させるために、金属散乱体に対してレーザ光の光軸が斜めになると共に半円形状のレンズを使用せざるを得なかった。そのため、効率良く近接場光を発生させることが難しくなってしまい、レーザ光の出力を上げざるを得なかった。その結果、レーザ平面光源や金属散乱体が過度に発熱する恐れがあり、信頼性に劣るものであった。
【0012】
また、主磁極に対して所定の間隔を空けた状態で、レンズ及びレーザ平面光源を平行に配置する必要があるが、実際上スライダの先端にこのような配置で作りこむことは困難であり、仮に作りこめたとしてもコンパクトにまとめることができず、小型化を図ることが難しいものであった。
なお、平面レーザ光源やレンズに代えて光導波路を使用したり、ミラーを利用することでレーザ光を金属散乱体に向けて直線で照射させたりすることも考えられるが、より構成が複雑化してしまいやはり小型化を図ることが難しいものであった。
【0013】
更に、金属散乱体は、走査方向の最後端に位置するように主磁極の外側に設けられているので、磁気記録層に情報を記録する際に、記録磁界を印加している位置に対して効率良く加熱を行うことが困難なものであった。つまり、記録媒体の回転に伴って磁気記録層は、補助磁極、磁極、金属散乱体の順に移動するので、近接場光で加熱される前に記録磁界が印加されてしまう。そのため、記録磁界が印加された領域外に、近接場光による加熱温度のピーク位置がきてしまい、書き込みの信頼性が劣るものであった。
特に、近接場光による温度勾配は、記録媒体の走査方向に対して遅れる傾向にあるので、加熱温度のピーク位置が金属散乱体の真下からずれてしまうと考えられる。この点を考慮すると、実際には加熱温度のピーク位置が記録磁界の印加領域からさらに外れる方向にずれてしまい、正確な書き込みを行えない可能性が高かった。
【0014】
一方、特許文献3に記載されている磁気記録ヘッドは、主磁極と補助磁極との間に抵抗ヒータ等の予熱機構を備えているので、上述した近接場光を発生させる効率性の問題点、書き込みの信頼性の問題点を解消する構成にはなっているが、その反面、構成品としてさらに予熱機構が加わるので、構成がさらに煩雑になり大型化してしまう不都合があった。
【0015】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、小型化を図りながら近接場光を効率良く発生させることができると共に、書き込みの信頼性が向上した近接場光ヘッド及び該近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る近接場光ヘッドは、導入された光束から近接場光を発生させて、一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱すると共に、該磁気記録媒体に磁界を与えて磁化反転を生じさせ情報を記録させる近接場光ヘッドであって、前記磁気記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置され、磁気記録媒体の表面に対向する対向面を有するスライダと、平面視多角形状に形成された底面と、該底面より小さな面積で形成され、底面から所定距離離間した位置に配された端面と、底面及び端面の頂点をそれぞれ結んで形成された複数の側面とを有し、底面が前記スライダの対向面に固定された光透過性のコアと、前記底面側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段と、前記複数の側面のうち、向い合う2つの側面上に形成された第1の磁極及び第2の磁極と、磁性材料から形成され、前記第1の磁極と前記第2の磁極とを接続する磁気回路と、前記情報に応じて変調された電流が供給され、前記磁気回路を中心として該磁気回路の周囲を巻回するコイルとを備え、前記コアの端面が、前記光束が導入されたときに前記近接場光を発生させるサイズに形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、スライダが一定方向に回転する磁気記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置されている。この際、スライダの対向面は、磁気記録媒体の表面に対向した状態となっている。また、このスライダの対向面には、角錐台状に形成されたコアが底面を面接触させた状態で固定されている。よって、コアの端面は、スライダの対向面と同様に磁気記録媒体の表面に対向した状態となっている。また、この端面は、底面よりも小さいサイズに形成されているので、複数の側面は端面に向かうにしたがって、向い合う側面との間隔が漸次狭まる斜面状態となっている。そして、これら複数の側面のうち向い合う2つの側面上には、第1及び第2の磁極が形成されている。この際、コアの端面のサイズは、光束が内部に導入されたときに近接場光を発生させるサイズ(光束の波長よりも小さい微小開口となる大きさ)に形成されている。そのため、両磁極の間隔(磁気ギャップ)は、磁気記録媒体の表面に対向する端面において近接した状態になっている。つまり、微小な磁気ギャップを作り出している。
【0018】
ここで記録を行う場合には、まず光束導入手段によりコアの内部に底面側から光束を導入する。この際コアの底面は、スライダの対向面に固定されて該スライダの上面側を向いている。そのため光束導入手段は、従来の光の入れ方とは異なり、スライダの上面側から略真下に向けて、光束を容易に導入することができる。また、光透過性のコアの内部に導入された光束は、底面側から端面側に向かって自然に進み、磁気記録媒体の表面に対向する端面から近接場光として外部に漏れ出す。つまり、コアの端面から近接場光を発生させることができる。
【0019】
このように、スライダの上面側からコアの端面に向けて略一直線状に光束を導入できるので、効率良く近接場光を発生させることができる。この近接場光によって磁気記録媒体は、局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
また、上述した光束の導入と同時に、記録する情報に応じて変調した電流をコイルに供給する。すると電磁石の原理により、電流磁界が磁気回路内に磁束を発生させるので、両磁極間に磁界が生じる。これにより、両磁極間の磁気ギャップには、磁気記録媒体に向けて磁界が漏れ出す。この際、上述したように磁気ギャップは、コアの側面に両磁極が形成されていることで、微小な隙間となっている。そのため、磁気ギャップに発生した洩れ磁界は、磁気記録媒体に対して局所的に作用する。これにより、近接場光によって保磁力が低下した磁気記録媒体の局所的な位置に対して、ピンポイントで洩れ磁界を作用させることができる。なお、洩れ磁界は、記録する情報に応じて向きが反転する。そして、磁気記録媒体は、洩れ磁界を受けると、洩れ磁界の方向に応じて磁化の方向が反転する。その結果、情報の記録を行うことができる。つまり、近接場光と両磁極で発生した洩れ磁界とを協働させた、近接場光アシスト磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。
【0020】
特に、近接場光を発生させるコアは、底面及び端面が磁気記録媒体の表面やスライダの対向面と平行になるように設けられているので、光束導入段はスライダの上面から光束を容易且つ確実に導入することができる。
また、スライダの対向面にコアを固定すると共に、コアの側面に両磁極を形成するだけで、近接場光の発生と洩れ磁界の発生とを同時に達成することができるので、従来のように複雑な構成にすることなく、シンプルな構造にすることができる。よって、構成を簡略化することができ、小型化を図ることができる。
【0021】
また、コアの底面側から導入された光束は、自然と端面に向かうので効率良く近接場光を発生させることができる。よって、近接場光と洩れ磁界とをより効率良く協働させることができる。
更に、従来とは異なり、両磁極の間で近接場光を発生させることができるので、洩れ磁界が局所的に作用する範囲内に、近接場光による加熱温度のピーク位置を入れることができる。特に、近接場光による加熱の温度勾配が磁気記録媒体の移動方向に対して遅れたとしても、加熱温度のピーク位置を洩れ磁界の範囲内に留めておくことができる。従って、磁気記録媒体の局所的な位置に対して確実に記録を行うことができ、信頼性の向上化及び
磁気記録媒体のさらなる高密度化を図ることができる。
【0022】
上述したように、本発明に係る近接場光ヘッドによれば、小型化を図りながら近接場光を効率良く発生させることができると共に、書き込みの信頼性を向上することができる。
【0023】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記第1の磁極及び前記第2の磁極と、前記コアの側面との間には、それぞれ金属膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、両磁極とコアの側面との間にそれぞれ金等の金属膜が形成されているので、より強い近接場光を発生させることができる。つまり、コアの内部に導入された光束が金属膜に入射すると、該金属膜には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜の表面とコアの側面との界面をコアの端面に向かって伝播する。そして、コアの端面に達した時点で強い近接場光となって外部に漏れ出す。
従って、磁気記録媒体をより効率良く加熱することができ、情報の記録を容易に行うことができる。
【0025】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記金属膜が、前記複数の側面のうち、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が形成された側面以外の側面上に形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、複数の側面のうち、両磁極が形成された側面上だけでなく、残りの側面上にも金属膜が形成されている。即ち、コアの全ての側面上に、金属膜が形成されている。そのため、コアの内部に導入された光束は、途中で外部に洩れることはなく、全て表面プラズモンとなって端面に集まる。その結果、さらに強い近接場光を効率良く発生させることができる。その結果、情報の記録をさらに容易に行うことができる。
【0027】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記複数の側面のうち、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が形成された側面以外の側面上に、金属膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、複数の側面のうち、両磁極が形成されていない側面上に、金等の金属膜が形成されているので、より強い近接場光を発生させることができる。つまり、コアの内部に導入された光束が金属膜に入射すると、該金属膜には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜の表面とコアの側面との界面をコアの端面に向かって伝播する。そして、コアの端面に達した時点で強い近接場光となって外部に漏れ出す。しかも両磁極は非透過性であるので、導入された光束は途中でコアの外部に漏れることもない。
従って、効率良く強い近接場光を発生させることができる。その結果、磁気記録媒体をより効率良く加熱することができ、情報の記録をさらに容易に行うことができる。
【0029】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明のいずれかの近接場光ヘッドにおいて、前記磁気回路が、前記スライダの対向面に垂直な方向に沿う垂直回路部を一部に有し、前記コイルが、前記対向面に沿って広がるように、前記垂直回路部の周囲を螺旋状に巻回した状態で形成されていることを特徴とするものである。
【0030】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、第1の磁極と第2の磁極とを接続する磁気回路の一部が、スライダの対向面に垂直な方向に沿う垂直回路部となっている。そして、コイルは、スライダの対向面に沿って広がるように、垂直回路部を中心として該垂直回路部の周囲を螺旋状に巻回した状態で形成されている。つまり、コイルは、スライダの対向面に対して平行した状態となっている。
よって、コイルの巻線を増やしたとしても、スライダの厚みに影響しないので、薄型化を図りながら洩れ磁界の強度を高めることができる。また、垂直面ではなく水平面にコイルを作製できるので、特別な方法を用いずとも従来の方法で容易に作製を行える。そのため、コイルを細くしたり巻線を増やしたりする等、設計の自由度を向上することができる。また、コイルを自由に設計できるため、磁気回路についても幅を太くする等自由に設計を行い易い。このように、磁気回路及びコイルを状況に応じて自由に設計でき、信頼性のある電磁石を製造することができる。
【0031】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明のいずれかの近接場光ヘッドにおいて、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が、前記磁気記録媒体の移動方向に沿って並ぶように設けられていることを特徴とするものである。
【0032】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、第1の磁極及び第2の磁極が磁気記録媒体の移動方向に沿って並んでいるので、両磁極を確実に磁気記録媒体のトラック上に位置させることができる。従って、隣接するトラックに記録された情報に影響を与えることなく、所望するトラックに対して情報を正確に記録することができる。
【0033】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、上記本発明の近接場光ヘッドにおいて、前記第1の磁極が、前記第2の磁極よりも前記移動方向側に位置すると共に、第2の磁極よりも前記磁気記録媒体の表面に対向する面積が小さく形成されて、該第1の磁極側で前記情報の記録を行うことを特徴とするものである。
【0034】
この発明に係る近接場光ヘッドにおいては、第1の磁極が第2の磁極よりも、磁気記録媒体の移動方向側(進行側)に位置している。また、磁気記録媒体の表面に対向する面積は、第2の磁極よりも第1の磁極の方が小さく形成されており、第1の磁極側で情報の記録を行うようになっている。つまり、第1の磁極が主磁極として機能し、第2の磁極は補助磁極として機能するようになっている。
磁気記録媒体に記録を行う際には、第1の磁極側から発生した磁束が磁気記録媒体に作用するので、磁化を表面に対して垂直な方向に向けた状態で記録を行うことができる。なおこの磁束は、磁気記録媒体を経由して第2の磁極に戻る。この際、小さな面積に形成された第1の磁極でのみ記録が行われるので、磁化の方向に影響を与えることがない。
このように、垂直磁気記録方式により情報の記録を行うことができ、熱揺らぎ現象に対して安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性をさらに高めることができる。
【0035】
また、本発明に係る情報記録再生装置は、上記本発明のいずれかの近接場光ヘッドと、前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で、前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、前記光束導入手段に対して前記光束を入射させる光源と、前記ビームの基端側を支持すると共に、該ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、前記コイルに前記電流を供給すると共に前記光源の作動を制御する制御部とを備えていることを特徴とするものである。
【0036】
この発明に係る情報記録再生装置においては、回転駆動部により磁気記録媒体を一定方向に回転させた後、アクチュエータによりビームを移動させて近接場光ヘッドをスキャンさせる。そして、近接場光ヘッドを磁気記録媒体上の所望する位置に配置させる。この際近接場光ヘッドは、磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態、即ち、2軸を中心として捻れることができるようにビームに支持されている。よって、磁気記録媒体にうねりが生じたとしても、うねりに起因する風圧変化を捩じりによって吸収でき、近接場光ヘッドを安定して浮上させることができる。
【0037】
その後、制御部は、光源を作動させると同時に、情報に応じて変調した電流をコイルに供給する。これにより、近接場光ヘッドは、近接場光と洩れ磁界とを協働させて、磁気記録媒体に情報を記録することができる。
特に、小型化を図りながら近接場光を効率良く発生させることができると共に書き込みの信頼性が向上した近接場光ヘッドを備えているので、情報記録再生装置自体の小型化を図ることができ、また、書き込みの信頼性が高まって高品質化を図ることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る近接場光ヘッドによれば、小型化を図りながら近接場光を効率良く発生させることができると共に書き込みの信頼性を向上することができる。
また、本発明に係る情報記録再生装置によれば、小型化を図ることができると共に、書き込みの信頼性が高めて高品質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る近接場光ヘッド及び情報記録再生装置の第1実施形態を、図1から図6を参照して説明する。なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、磁気記録層d3を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、面内記録方式で書き込みを行う場合を例に挙げて説明する。
【0040】
本実施形態の情報記録再生装置1は、図1に示すように、近接場光ヘッド2と、ディスク面(磁気記録媒体の表面)D1に平行なXY方向に移動可能とされ、ディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在な状態で近接場光ヘッド2を先端側で支持するビーム3と、光導波路4の基端側から該光導波路4に対して光束Lを入射させる光信号コントローラ(光源)5と、ビーム3の基端側を支持すると共に、該ビーム3をディスク面D1に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ6と、ディスクDを一定方向に回転させるスピンドルモータ(回転駆動部)7と、情報に応じて変調した電流を後述するコイル21に対して供給すると共に、光信号コントローラ5の作動を制御する制御部8と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9とを備えている。
【0041】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料により、上面視四角形状に形成されていると共に、内側に各構成品を収容する凹部9aが形成されている。また、このハウジング9には、凹部9aの開口を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。
凹部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定される。凹部9aの隅角部には、上記アクチュエータ6が取り付けられている。このアクチュエータ6には、軸受10を介してキャリッジ11が取り付けられており、該キャリッジ11の先端にビーム3が取り付けられている。そして、キャリッジ11及びビーム3は、アクチュエータ6の駆動によって共に上記XY方向に移動可能とされている。
なお、キャリッジ11及びビーム3は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ6の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。また、近接場光ヘッド2とビーム3とで、サスペンション12を構成している。
また、光信号コントローラ5は、アクチュエータ6に隣接するように凹部9a内に取り付けられている。そして、このアクチュエータ6に隣接して、上記制御部8が取り付けられている。
【0042】
上記近接場光ヘッド2は、導入された光束Lから近接場光Rを発生させてディスクDを加熱すると共に、ディスクDに磁界を与えて磁化反転を生じさせ情報を記録させるものである。
即ち、近接場光ヘッド2は、図2及び図3に示すように、ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態で配置され、ディスク面D1に対向する対向面15aを有するスライダ15と、該スライダ15に固定され、近接場光Rを発生させるコア16と、コア16内に光束Lを導入させる光束導入手段17と、コア16に形成された第1の磁極18及び第2の磁極19と、両磁極18、19を接続する磁気回路20と、磁気回路20を中心として該磁気回路20の周囲を巻回するコイル21とを備えている。
【0043】
スライダ15は、石英ガラス等の光透過性材料によって、直方体状に形成されている。このスライダ15は、対向面15aをディスクD側にした状態で、ジンバル部25を介してビーム3の先端にぶら下がるように支持されている。このジンバル部25は、ディスク面D1に垂直なZ方向、X軸回り及びY軸回りにのみ変位するように動きが規制された部品である。これによりスライダ15は、上述したようにディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在とされている。
【0044】
スライダ15の対向面15には、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から、浮上するための圧力を発生させる凸条部15bが形成されている。本実施形態では、レール状に並ぶように、長手方向に沿って延びた凸条部15bを2つ形成している場合を例にしている。但し、この場合に限定されるものではなく、スライダ15をディスク面D1から離そうとする正圧とスライダ15をディスク面D1に引き付けようとする負圧とを調整して、スライダ15を最適な状態で浮上させるように設計されていれば、どのような凹凸形状でも構わない。なお、この凸条部15bの表面はABS(Air Bearing Surface)と呼ばれる面とされている。
【0045】
スライダ15は、この2つの凸条部15bによってディスク面D1から浮上する力を受けていると共に、ビーム3によってディスク面D1側に押さえ付けられる力を受けている。スライダ15は、この両者の力のバランスによって、上述したようにディスク面D1から所定距離H離間した状態で浮上するようになっている。
【0046】
上記コア16は、スライダ15と同様に石英ガラス等の光透過性材料に形成されており、図4に示すように、底面16aと端面16bと4つの側面(複数の側面)16cとを有する四角錐台状に形成されている。具体的には、互いに平行な辺を有するように平面視長方形状に形成された底面16aと、該底面16aより小さな面積で同一形状(平面視長方形状)に形成され、底面16aから所定距離離間した位置に配された端面16bと、底面16a及び端面16bの頂点をそれぞれ結んで形成された4つの側面16cとを有するように加工されている。
但し、コア16としては、4つの側面16cを有する場合に限定されるものではなく、平面視多角形状(例えば、6角形状や8角形状)の底面及び端面と、これら底面及び端面のそれぞれの頂点を結ぶ複数の側面(例えば、底面及び端面が6角形状の場合には6面)とを有するコアとしても構わない。即ち、底面及び端面が平面視多角形状に形成された角錐台状のコアであれば構わない。なお、底面及び端面は、共に同じ形状でなくても構わない。
【0047】
このように構成されたコア16は、図2に示すように、底面16aをスライダ15の対向面15aに面接触させた状態で固定されている。この際、互いに対向する2つの側面16cが、スライダ15の長手方向、即ち、ディスクDの移動方向に沿って並ぶように固定されている。なお、コア16とスライダ15とをそれぞれ別々に作製した後、互いを固定しても構わないし、石英ガラス等から一体的に作製しても構わない。特に、一体的に作製することで、製造工程の簡略化、製造時間の短縮化等を図ることができるので、より好ましい。
【0048】
また、底面16aを対向面15aに面接触させているので、コア16の端面16bも同様にスライダ15の対向面15a及びディスク面D1に対して平行状態となっている。この際、端面16bの高さが凸条部15bの高さと同じになるように、コア16の高さが設定されている。
更に、コア16の端面16bは、光束Lが内部に導入されたときに近接場光Rを発生させるサイズに形成されている。即ち、コア16の端面16bの開口サイズは、光束Lの波長よりも遥かに微細なサイズ(例えば、一辺が数十nm程度のサイズ)となるように設計されており、通常の伝播光を透過させることがないが、近接場光Rを近傍に漏れ出させることを可能にしている。
【0049】
また、スライダ15の上面には、コア16の真上に当たる位置にレンズ26が形成されている。このレンズ26は、例えば、グレースケールマスクを用いたエッチングによって形成される非球面のマイクロレンズである。更に、スライダ15の上面には、光ファイバー等の光導波路4が取り付けられている。この光導波路4は、先端が略45度にカットされたミラー面4aとなっており、該ミラー面4aがレンズ26の真上に位置するように取り付け位置が調整されている。そして、光導波路4は、ビーム3及びキャリッジ11等を介して光信号コントローラ5に引き出されて接続されている。
これにより光導波路4は、光信号コントローラ5から入射された光束Lを先端側まで導き、ミラー面4aで反射させて向きを変えた後、レンズ26に出射することができるようになっている。また、出射された光束Lは、レンズ26によって集束した後、スライダ15を透過してコア16の底面16aに導入されるようになっている。即ち、光導波路4及びレンズ26は、上述した光束導入手段17を構成している。
【0050】
また、図2及び図4に示すように、コア16に形成された4つの側面16cのうち、ディスクDの移動方向に沿うように並んだ互いに向い合う2つの側面(底面16a及び端面16bが有する4つのうち互いに平行な対辺のうちの1辺をそれぞれ有した状態で向い合う側面)16c上には、上記第1の磁極18及び第2の磁極19が形成されている。両磁極18、19は、例えば、磁性体材料を蒸着等の薄膜成膜技術によって側面16c上に形成されたものである。
ここでコア16の端面16bは、上述したように底面16aよりも小さいサイズで該底面16aと同じ形状に形成されているので、4つの側面16cは端面16bに向かうにしたがって向い合う側面16cとの間隔が漸次狭まる斜面状態となっている。特に、コア16の端面16bのサイズは、近接場光Rを発生させる極微小サイズであるので、端面16bにおける両磁極18、19の間隔(磁気ギャップ)Gは非常に近接した状態となっている。つまり、微小な磁気ギャップGとなっている。
【0051】
また、磁気回路20は、図3に示すように、磁性材料によりスライダ15内にパターニングされて形成されている。この磁気回路20は、両端がそれぞれ第1の磁極18及び第2の磁極19に接続されていると共に、図5に示すように、回路の略中間付近にあたる一部分が、スライダ15の対向面15aに垂直な方向に沿って折り曲げられた垂直回路部20aとなっている。
【0052】
そして、コイル21は、磁気回路20のうち上述した垂直回路部20aの周囲を螺旋状に巻回した状態で、スライダ15の対向面15aに沿うように形成されている。この際コイル21は、ショートしないように、隣り合う線材間、磁気回路20との間が絶縁状態とされている。また、このコイル21は、ビーム3やキャリッジ11を介して制御部8に電気的に接続されており、該制御部8から情報に応じて変調された電流が供給されるようになっている。即ち、磁気回路20及びコイル21は、全体として電磁石を構成している。
【0053】
また、スライダ15の先端面16bには、図2及び図3に示すように、ディスクDの磁気記録層d3から洩れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変換する磁気抵抗効果膜27が形成されている。この磁気抵抗効果膜27は、コア16の端面16bと略同じ幅で形成されている。また、この磁気抵抗効果膜27には、図示しないリード膜等を介して制御部8からバイアス電流が供給されている。これにより制御部8は、ディスクDから洩れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することでき、この電圧の変化から信号の再生を行っている。即ち、磁気抵抗効果膜27は、再生素子として機能している。
【0054】
なお、本実施形態のディスクDは、図2に示すように、基板d1上に下地層d2、磁気記録層d3、保護層d4及び潤滑層d5が順に成膜されたものである。
基板d1としては、例えば、アルミ基板やガラス基板等である。下地層d2は、磁気記録層d3が薄くても良好な磁気特性をだすためのもので、例えばCr合金系が使用される。磁気記録層d3は、保磁力を高めるため、例えばCoCrPtTaやCoCrPtB等のCoCr系合金が使用される。保護層d4は、磁気記録層d3を保護するためのもので、例えばDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜が使用される。潤滑層d5は、例えば、フッ素系の液体潤滑材が使用される。
【0055】
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する場合について以下に説明する。
まず、スピンドルモータ7を駆動させてディスクDを一定方向に回転させる。次いで、アクチュエータ6を作動させて、キャリッジ11を介してビーム3をXY方向にスキャンさせる。これにより、図1に示すように、ディスクD上の所望する位置に近接場光ヘッド2を位置させることができる。この際、近接場光ヘッド2は、スライダ15の対向面15aに形成された2つの凸条部15bによって浮上する力を受けると共に、ビーム3等によってディスクD側に所定の力で押さえ付けられる。近接場光ヘッド2は、この両者の力のバランスによって、図2に示すようにディスクD上から所定距離H離間した位置に浮上する。
【0056】
また、近接場光ヘッド2は、ディスクDのうねりに起因して発生する風圧を受けたとしても、ジンバル部25によってZ方向、XY軸回りに変位することができるようになっているので、うねりに起因する風圧を吸収することができる。そのため、近接場光ヘッド2を安定した状態で浮上させることができる。
【0057】
ここで、情報の記録を行う場合、制御部8は光信号コントローラ5を作動させると共に、情報に応じて変調した電流をコイル21に供給する。
光信号コントローラ5は、制御部8からの指示を受けて光束Lを光導波路4の基端側から入射させる。入射した光束Lは、光導波路4内を先端側に向かって進み、図2に示すようにミラー面4aで略90度向きを変えて光導波路4内から出射する。出射した光束Lは、レンズ26によって集束された状態でスライダ15内部を透過すると共に、レンズ26の略真下に設けられたコア16の内部に底面16a側から入射する。つまり、光束Lは、光束導入手段17によってスライダ15の上面側から一直線にコア16に向かって導入される。
【0058】
コア16の内部に導入された光束Lは、底面16a側から端面16b側に向かって進み、図6に示すように、ディスク面D1に対向する端面16bから近接場光Rとして外部に漏れ出す。つまり、コア16の端面16bから近接場光Rを発生させることができる。
このように、スライダ15の上面側からコア16の端面16bに向けて略一直線に光束Lを導入できるので、従来の光の入れ方とは異なり光束Lをスライダ15の上面から容易に導入できると共に、効率良く近接場光Rを発生させることができる。この近接場光Rによって、ディスクDの磁気記録層d3は局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
【0059】
なお、コア16の側面16cに形成された両磁極18、19を光非透過性の材料から形成することが好ましい。こうすることで、両磁極18、19が形成された側面16cからコア16の外部に光束Lが漏れてしまうことを防止でき、光束Lを端面16bにより集光させて、近接場光Rを効率良く発生させることができる。
【0060】
一方、制御部8によってコイル21に電流が供給されると、電磁石の原理により電流磁界が磁気回路20内に磁束を発生させるので、両磁極18、19間に磁界が生じる。これにより、両磁極18、19間の磁気ギャップGには、図6に示すようにディスクDに向けて磁界が漏れ出す。この際、上述したように磁気ギャップGは、コア16の側面16cに両磁極18、19が形成されていることで、微小な隙間となっている。そのため、磁気ギャップGに発生した洩れ磁界は、ディスクDの磁気記録層d3に対して局所的に作用する。これにより、近接場光Rによって保磁力が低下した磁気記録層d3の局所的な位置に対して、ピンポイントで洩れ磁界を作用させることができる。なお、この洩れ磁界は、記録する情報に応じて向きが反転する。
【0061】
そして、ディスクDの磁気記録層d3は、洩れ磁界を受けると、洩れ磁界の向きに応じて磁化の方向が反転する。その結果、ディスクDに情報の記録を行うことができる。つまり、近接場光Rと両磁極18、19で発生した洩れ磁界とを協働させた、近接場光アシスト磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。
【0062】
次に、ディスクDに記録された情報を再生する場合には、スライダ15の先端面16bに形成されている磁気抵抗効果膜27が、ディスクDの磁気記録層d3から洩れ出ている磁界を受けて、その大きさに応じて電気抵抗が変化する。よって、磁気抵抗効果膜27の電圧が変化する。これにより制御部8は、ディスクDから洩れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することができる。そして制御部8は、この電圧の変化から信号の再生を行うことで、情報の再生を行うことができる。
【0063】
特に、近接場光Rを発生させるコア16は、底面16a及び端面16bがディスク面D1やスライダ15の対向面15aと平行になるように設けられているので、光束導入手段17はスライダ15の上面から光束Lを容易且つ確実に導入することができる。
また、スライダ15の対向面15aにコア16を固定すると共に、コア16の側面16cに両磁極18、19を形成するだけで、近接場光Rの発生と洩れ磁界の発生とを同時に達成することができるので、従来のように複雑な構成にすることなく、シンプルな構造にすることができる。よって、構成を簡略化することができ、小型化を図ることができる。
【0064】
また、コア16の底面16a側から導入された光束Lは、自然と端面16bに向かうので効率良く近接場光Rを発生させることができる。よって、近接場光Rと洩れ磁界とをより効率良く協働させることができる。
更に、従来とは異なり、両磁極18、19の間で近接場光Rを発生させることができるので、洩れ磁界が作用する範囲内に、近接場光Rによる加熱温度のピーク位置を入れることができる。特に、近接場光Rによる加熱の温度勾配がディスクDの移動方向に対して遅れたとしても、加熱温度のピーク位置を洩れ磁界の範囲内に留めておくことができる。従って、ディスクDの局所的な位置に対して確実に記録を行うことができ、信頼性の向上化及びディスクDのさらなる高密度化を図ることができる。
【0065】
また、コイル21は、磁気回路20の垂直回路部20aの周囲を螺旋状に巻回した状態で形成され、スライダ15の対向面15aに対して平行している。よって、コイル21の巻線を増やしたとしても、スライダ15の厚みに影響しないので、薄型化を図りながら洩れ磁界の強度を高めることができる。また、垂直面ではなく水平面にコイル21を作製できるので、特別な方法を用いずとも従来の方法で容易に作製を行える。そのため、コイル21を細くしたり巻線を増やしたりする等、設計の自由度を向上することができる。また、コイル21を自由に設計できるため、磁気回路20についても幅を太くする等自由に設計を行い易い。このように、磁気回路20及びコイル21を状況に応じて自由に設計でき、信頼性のある電磁石を製造することができる。
【0066】
また、第1の磁極18及び第2の磁極19がディスクDの移動方向に沿って並んでいるので、両磁極18、19を確実にディスクDのトラック上に位置させることができる。従って、隣接するトラックに記録された情報に影響を与えることなく、所望するトラックに対して情報を正確に記録することができる。
【0067】
上述したように本実施形態の近接場光ヘッド2によれば、小型化を図りながら近接場光Rを効率良く発生させることができると共に書き込みの信頼性を向上することができる。
また、本実施形態の情報記録再生装置1によれば、上述した近接場光ヘッド2を備えているので、該情報記録再生装置1自体の小型化も図ることができ、また、書き込みの信頼性が高まって高品質化を図ることができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る近接場光ヘッドの第2実施形態について、図7を参照して説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、コア16の側面16c上に第1の磁極18及び第2の磁極19が直接形成されていたのに対し、第2実施形態の近接場光ヘッド2のコア16は、図7に示すように、側面16cと両磁極18、19との間にそれぞれ金属膜30が形成されている点である。
【0069】
この金属膜30は、例えばAu膜であり、コア16の側面16c上に蒸着等によって成膜されている。このように構成されたコア16の場合には、内部に導入された光束Lが金属膜30に入射すると、該金属膜30に表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜30の表面とコア16の側面16cとの界面をコア16の端面16bに向かって伝播する。そして、コア16の端面16bに達した時点で、光強度の強い近接場光Rとなって外部に漏れ出す。従って、ディスクDをより効率良く加熱することができ、情報の記録を容易に行うことができる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る近接場光ヘッドの第3実施形態について、図8を参照して説明する。なお、第3実施形態において第2実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、コア16の側面16cと両磁極18、19との間に金属膜30が形成されていたのに対し、第3実施形態の近接場光ヘッド2のコア16は、図8に示すように、両磁極18、19が形成された側面16c以外の側面16c上に金属膜30が形成されている点である。
【0071】
本実施形態においても、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができ、光強度の強い近接場光Rを発生することができる。更に本実施形態では、それに加え全てのコア16の側面16c上に、金属膜30又は光非透過性の両磁極18、19のいずれかが形成されているので、コア16の内部に導入された光束Lは端面16bに向かう途中でコア16の外部に洩れることがない。従って、光束Lを無駄なく端面16bに集光することができ、より効率良く光強度の強い近接場光Rを発生することができる。その結果、ディスクDをより効率良く加熱することができ、情報の記録をさらに容易に行うことができる。
【0072】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0073】
例えば、上記第2実施形態では金属膜30を両磁極18、19とコア16の側面16cとの間に形成し、第3実施形態では金属膜30を両磁極18、19が形成されていない側面16c上に形成したが、これらを組み合わせた形で金属膜30を形成しても構わない。
即ち、コア16の全ての側面16c上に金属膜30を形成しても構わない。こうすることで、第3実施形態と同様に光束Lがコア16の端面16bに向かう途中で外部に洩れることはなく、しかも、全て表面プラズモンとなって端面16bに伝播する。その結果、さらに光強度の強い近接場光Rを効率良く発生させることができ、情報の記録をさらに容易に行うことができる。
【0074】
また、上記各実施形態では、面内記録方式で記録を行う場合を例にして説明したが、この記録方式に限られず、垂直記録方式にも適用可能なものである。
但しこの場合には、図9に示すように、第2の磁極19よりもディスクDの移動方向側に第1の磁極18を配置すると共に、ディスク面D1に対向する面積を第2の磁極19よりも小さくして、該第1の磁極18側で記録を行わせるようにする。つまり、第1の磁極18を主磁極として機能させ、第2の磁極19を補助磁極として機能させるように構成すれば良い。
【0075】
また、この場合に使用するディスクDは、少なくとも、ディスク面D1に垂直な方向に磁化容易軸を有する垂直記録層d6と、高透磁率材料からなる軟磁性層d7との2層で構成される垂直2層膜ディスクを使用する。このようなディスクDとしては、例えば図9に示すように、基板d1上に、軟磁性層d7と、中間層d8と、垂直記録層d6と、保護層d4と、潤滑層d5とを順に成膜したものを使用すると良い。
なお、垂直記録層d6は、垂直異方性磁性層となっており、例えば、CoCrPt系合金が使用される。また、中間層d8は、垂直記録層d6の結晶制御層である。
【0076】
そして、ディスクDに記録を行う場合には、第1の磁極18側から発生した磁束がディスクDの垂直記録層d6を真直ぐ通り抜け、軟磁性層d7に達する。これによって、垂直記録層d6の磁化をディスク面D1に対して垂直に向けた状態で記録を行うことができる。また、軟磁性層d7に達した磁束は、該軟磁性層d7を経由して第2の磁極19に戻る。この際、第1の磁極18側でのみ記録を行うので、第2の磁極19に戻る際には磁化の方向に影響を与えることはない。
このように、垂直磁気記録方式により情報の記録を行えるので、熱揺らぎ現象等の影響を受け難く、安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性をさらに高めることができる。
【0077】
また、上記各実施形態では、コア16の底面16a及び端面16bの形状を上面視正方形状としたが、この場合に限られるものではない。例えば、図10に示すように、上面視平行四辺形状や、図11に示すように、上面視台形状に形成しても構わない。更には、図12に示すように、4辺のいずれもが平行関係とならない上面視四角形状に形成しても構わない。このように、底面16a及び端面16bが平面視四角形状に形成されていれば、コア16をどのような形状に形成しても構わない。また、底面16a及び端面16bを共に同一形状にする必要もなく、それぞれ異なる多角形状に形成しても構わない。
【0078】
また、上記実施形態では、光信号コントローラ5をハウジング9内に取り付け、光束導入手段17を構成する光導波路4の基端側から光束Lを入射させることで、コア16に該光束Lを導いた構成を採用したが、この場合に限定されるものではない。
例えば、図13に示すように、光束導入手段17をレンズ26だけで構成し、該レンズ26とジンバル部25との間に光信号コントローラ5を設けても構わない。なお、この場合には、ビーム3に沿って配線等を這わせることで、光信号コントローラ5と制御部8とを電気的に接続すれば良い。この場合であっても、光信号コントローラ5から光束導入手段17に対して光束Lを確実に入射させることができる。特に、光束Lをレンズ26に直接入射できるので、より効率良く近接場光を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る近接場光ヘッドを有する情報記録再生装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す近接場光ヘッドの拡大断面図である。
【図3】図2に示す近接場光ヘッドを、ディスク面側から見た図である。
【図4】図3に示す近接場光ヘッドのコアを端面側から見た斜視図である。
【図5】図3に示す近接場光ヘッドのコイルと磁気回路との取付位置関係を示す断面図である。
【図6】図2に示す近接場光ヘッドによりディスクに記録を行っている最中の状態を示す図であって、コアを中心とした拡大断面図である。
【図7】本発明に係る近接場光ヘッドの第2実施形態を示す図であって、側面と両磁極との間に金属膜が形成されたコアの斜視図である。
【図8】本発明に係る近接場光ヘッドの第3実施形態を示す図であって、両磁極が形成されていない側面上に金属膜が形成されたコアの斜視図である。
【図9】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、垂直記録方式によりディスクに記録を行っている最中の状態を示す、コアを中心とした拡大断面図である。
【図10】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、底面及び端面が平行四辺形状に形成されたコアを端面側から見た拡大図である。
【図11】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、底面及び端面が台形状に形成されたコアを端面側から見た拡大図である。
【図12】本発明に係る近接場光記録素子の変形例を示す図であって、4辺のいずれもが平行関係とならないように底面及び端面が四角形状に形成されたコアを端面側から見た拡大図である。
【図13】本発明に係る近接場光ヘッドの変形例を示す図であって、レンズとジンバル部との間に光信号コントローラが設けられた近接場光ヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0080】
D ディスク(磁気記録媒体)
D1 ディスク面(磁気記録媒体の表面)
L 光束
R 近接場光
1 情報記録再生装置
2 近接場光ヘッド
3 ビーム
5 光信号コントローラ(光源)
6 アクチュエータ
7 スピンドルモータ(回転駆動部)
8 制御部
15 スライダ
15a 対向面
16 コア
16a コアの底面
16b コアの端面
16c コアの側面
17 光束導入手段
18 第1の磁極
19 第2の磁極
20 磁気回路
20a 垂直回路部
21 コイル
30 金属膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された光束から近接場光を発生させて、一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱すると共に、該磁気記録媒体に磁界を与えて磁化反転を生じさせ情報を記録させる近接場光ヘッドであって、
前記磁気記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置され、磁気記録媒体の表面に対向する対向面を有するスライダと、
平面視多角形状に形成された底面と、該底面より小さな面積で形成され、底面から所定距離離間した位置に配された端面と、底面及び端面の頂点をそれぞれ結んで形成された複数の側面とを有し、底面が前記スライダの対向面に固定された光透過性のコアと、
前記底面側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段と、
前記複数の側面のうち、向い合う2つの側面上に形成された第1の磁極及び第2の磁極と、
磁性材料から形成され、前記第1の磁極と前記第2の磁極とを接続する磁気回路と、
前記情報に応じて変調された電流が供給され、前記磁気回路を中心として該磁気回路の周囲を巻回するコイルとを備え、
前記コアの端面は、前記光束が導入されたときに前記近接場光を発生させるサイズに形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記第1の磁極及び前記第2の磁極と、前記コアの側面との間には、それぞれ金属膜が形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記金属膜は、前記複数の側面のうち、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が形成された側面以外の側面上に形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記複数の側面のうち、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が形成された側面以外の側面上に、金属膜が形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記磁気回路は、前記スライダの対向面に垂直な方向に沿う垂直回路部を一部に有し、
前記コイルは、前記対向面に沿って広がるように、前記垂直回路部の周囲を螺旋状に巻回した状態で形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記第1の磁極及び前記第2の磁極は、前記磁気記録媒体の移動方向に沿って並ぶように設けられていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記第1の磁極が、前記第2の磁極よりも前記移動方向側に位置すると共に、第2の磁極よりも前記磁気記録媒体の表面に対向する面積が小さく形成されて、該第1の磁極側で前記情報の記録を行うことを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の近接場光ヘッドと、
前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で、前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、
前記光束導入手段に対して前記光束を入射させる光源と、
前記ビームの基端側を支持すると共に、該ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、
前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、
前記コイルに前記電流を供給すると共に前記光源の作動を制御する制御部とを備えていることを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項1】
導入された光束から近接場光を発生させて、一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱すると共に、該磁気記録媒体に磁界を与えて磁化反転を生じさせ情報を記録させる近接場光ヘッドであって、
前記磁気記録媒体の表面から所定距離だけ浮上した状態で配置され、磁気記録媒体の表面に対向する対向面を有するスライダと、
平面視多角形状に形成された底面と、該底面より小さな面積で形成され、底面から所定距離離間した位置に配された端面と、底面及び端面の頂点をそれぞれ結んで形成された複数の側面とを有し、底面が前記スライダの対向面に固定された光透過性のコアと、
前記底面側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段と、
前記複数の側面のうち、向い合う2つの側面上に形成された第1の磁極及び第2の磁極と、
磁性材料から形成され、前記第1の磁極と前記第2の磁極とを接続する磁気回路と、
前記情報に応じて変調された電流が供給され、前記磁気回路を中心として該磁気回路の周囲を巻回するコイルとを備え、
前記コアの端面は、前記光束が導入されたときに前記近接場光を発生させるサイズに形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記第1の磁極及び前記第2の磁極と、前記コアの側面との間には、それぞれ金属膜が形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記金属膜は、前記複数の側面のうち、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が形成された側面以外の側面上に形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記複数の側面のうち、前記第1の磁極及び前記第2の磁極が形成された側面以外の側面上に、金属膜が形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記磁気回路は、前記スライダの対向面に垂直な方向に沿う垂直回路部を一部に有し、
前記コイルは、前記対向面に沿って広がるように、前記垂直回路部の周囲を螺旋状に巻回した状態で形成されていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記第1の磁極及び前記第2の磁極は、前記磁気記録媒体の移動方向に沿って並ぶように設けられていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の近接場光ヘッドにおいて、
前記第1の磁極が、前記第2の磁極よりも前記移動方向側に位置すると共に、第2の磁極よりも前記磁気記録媒体の表面に対向する面積が小さく形成されて、該第1の磁極側で前記情報の記録を行うことを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の近接場光ヘッドと、
前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で、前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、
前記光束導入手段に対して前記光束を入射させる光源と、
前記ビームの基端側を支持すると共に、該ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、
前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、
前記コイルに前記電流を供給すると共に前記光源の作動を制御する制御部とを備えていることを特徴とする情報記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−305185(P2007−305185A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129975(P2006−129975)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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