説明

近接検出装置及び近接検出方法

【課題】 物体の接近を電極の浮遊容量により検出近接センサーにおいて、ノイズの影響を除去し、物体との距離が大きい場合でも高速で精度の高い位置検出を行うことの出来る近接検出装置を提供する。
【解決手段】 差動電極に位相の反転した充放電を行い、充放電の特性から差動電極の浮遊容量の和を求めることにより、ノイズをキャンセルされた浮遊容量から物体の接近や位置を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体固有の静電容量である浮遊容量により人の指などの物体の接近や位置を検出する近接検出装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人など浮遊容量を持つ物体が電極に接近すると、電極の見かけの浮遊容量が増加することが知られている。この原理を応用して、静電タッチセンサなどの近接検出装置が実用化されている。
【0003】
このような近接検出装置では、電極の浮遊容量を検出するために、電極への充電時あるいは放電時の電圧と電荷の関係から電極の見かけの浮遊容量を求めている。しかし、人などの接近による電極の浮遊容量の増加は1pF程度の微小な値のために、電極の浮遊容量への1回の充電あるいは放電で正確な浮遊容量を求めることは困難である。このため、交流を印加したりスイッチを切換えたりすることにより電極への充放電を繰り返して、充放電特性を累積することにより浮遊容量の検出精度を向上させるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来の近接検出装置について、図2を基に説明する。
【0005】
図2において、電極101は物体の接近を検出する面積を持つ導電体であり、それ自体が浮遊容量を持っている。この電極101に、例えば浮遊容量を持つ人の指などが接近すると、電極自体の見かけの浮遊容量が増加する。浮遊容量検出手段2は、この電極の浮遊容量を検出する。このため、浮遊容量検出手段2は、電極への充放電を繰り返す充放電手段104と、充放電特性を累積することにより精度の高い浮遊容量を得る容量累積手段105とにより構成されている。
【0006】
浮遊容量検出手段2で検出した浮遊容量は、近接演算手段3で、容量変化の度合いなどから想定された物体の近接であるかどうかを判定する。
【0007】
しかし、このような従来の方法では、電極自体の浮遊容量に較べて、物体の接近により増加する浮遊容量が小さいため、高精度の検出が困難であった。
【0008】
この困難を解決するために、例えば図3に示すように、物体が接近していない場合の浮遊容量がほぼ等しい一対の差動電極1に、同相充放電手段114で同位相の充放電を行い、容量差累積手段115で充放電特性の差を累積することにより、一対の差動電極の浮遊容量の差を検出することができるため、浮遊容量の微妙な変化まで高精度に検出することができる。しかし、対となる差動電極同士が接近すると物体の接近による容量変化が一対の差動電極において同様となるために容量差が検出困難となるし、逆に対となる差動電極が離れた位置にあるとノイズの影響も異なるためにノイズの除去が困難になってしまう。
【0009】
また、一対の差動電極の代わりに、一つの電極と非接近時の電極の浮遊容量と同じ値のコンデンサを用いて、差動電極を構成して、電極の浮遊容量の変化のみを捉えるようにしていた(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
さらに、同様の目的のために、例えば図4に示すように、一対の差動電極1に、差動充放電手段4で位相が反転した充放電を行い、容量差累積手段115で充放電特性の和を累積するようにしても、一対の差動電極の浮遊容量の差を検出することができるため、浮遊容量の微妙な変化まで高精度に検出することができる(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
つまり、差動電極もしくは同容量のコンデンサとの容量差のみを検出し、容量差累積手段で静電容量の差を求めることにより、電極の浮遊容量変化を高精度に検出するようにしたものである。
【0012】
以上に説明した近接検出装置は、電極が一つもしくは一対であり、物体の接近のみを検出する。次に、浮遊容量をもった物体の接近及び位置の両方を検出するために、複数の電極を支持手段に配置した従来の近接検出装置について、図5を基に説明する。
【0013】
図5において、複数の電極101は、異なる位置に設けられており、電極101の位置毎に浮遊容量の増加から物体の接近を検出する。また、2軸の検出方向を持つ複数の電極を用いることにより、2次元の接近位置を検出することが出来る(例えば、特許文献4参照)。
【0014】
浮遊容量検出手段2は、各電極の浮遊容量を検出するためのもので、近接検出のための図2での浮遊容量検出手段2と同様のものである。浮遊静電容量検出手段2は、個々の電極ごとに別々のものを用いても良いが、共通に使える部分は共用しても良い。
【0015】
近接演算手段3では、位置の異なる電極ごとの浮遊容量の変化から、物体の接近及び位置を検出する(例えば、特許文献5参照)。
【0016】
いずれの方法においても、電極の浮遊容量が小さいためにインピーダンスが高く、検出した浮遊容量はノイズ等の影響を受けやすい。特に、支持手段と電極を透明にして、液晶等の表示装置の表示面上に重ねて配置する場合には、表示装置と接近するために、表示装置からのノイズの影響が大きかった。
【0017】
この表示装置からのノイズの影響を解決するために、表示装置の信号が変化してノイズを発生する瞬間だけ、浮遊容量検出をおこなわないようにする方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0018】
しかし、表示装置の信号の変化だけがノイズの発生源ではないため、必ずしも充分な解決には至っていない。このため、近接検出装置と表示装置との距離を大きくして装置全体の厚みが大きくなる、あるいは、近接検出装置のカバーの厚みを充分厚くできないと言う課題が残っている。また、ノイズの影響を排除するために、繰り返しの回数を増やしてしまうと、検出の応答速度が遅くなってしまい、短い時間にノイズの影響の小さい正確な検出をすることができないという課題があった。
【特許文献1】特開平8−194025号公報
【特許文献2】特開2006−146895号公報
【特許文献3】特開2003−214807号公報
【特許文献4】米国特許6,970,160B2号
【特許文献5】米国特許6,535,200B2号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
このように、従来の近接検出装置やその方法には、検出誤差が大きかったり、ノイズの影響を排除するために応答速度が遅くなったり、ノイズの発生源からの距離を大きくして配置する必要があったり、装置のカバーの厚みを薄くしたりしなければならないという課題があった。
【0020】
そこで本発明では、これらの課題を解決して、ノイズの発生源から近く、装置のカバーの厚みが大きい場合でも、応答速度の速い安定した検出の出来る近接検出装置あるいはその方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明による近接検出装置は、物体の接近を浮遊容量の変化として検出する差動電極と、前記差動電極の見かけの浮遊容量の合成値を求める浮遊容量検出手段と、前記浮遊容量の合成値から想定する物体の接近を検出する近接演算手段とにより構成した。また、前記浮遊容量検出手段は、前記差動電極に繰り返し充放電を行う差動充放電手段と、前記差動電極への前記差動充放電手段による繰り返しの充放電の特性を累積して前記差動電極の見かけの浮遊容量の合成値を求める容量累積合成手段とにより構成した。
【0022】
同様に、本発明による近接検出方法は、物体の接近を浮遊容量の変化として検出する差動電極に繰り返し充放電を行う差動充放電工程と前記差動電極への前記差動充放電工程による繰り返しの充放電の特性を累積して前記差動電極の見かけの浮遊容量の合成値を求める容量累積合成工程とからなる浮遊容量検出工程と、前記浮遊容量の合成値から想定する物体の接近を検出する近接演算工程と、からなる近接検出方法により実現した。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、近接検出装置がノイズの発生源に近い場合や、装置のカバーの厚みが大きい場合でも、応答速度の速い、安定した検出の出来る近接検出装置あるいはその方法を実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
【実施例1】
【0025】
本発明の好適な実施例を、図1を基に説明する。
【0026】
本発明による近接検出装置は、物体の接近を浮遊容量の変化として検出する差動電極と、前記差動電極の見かけの浮遊容量の合成値を求める浮遊容量検出手段と、前記浮遊容量の合成値から想定する物体の接近を検出する近接演算手段とにより構成した。また、前記浮遊容量検出手段は、前記差動電極に繰り返し充放電を行う差動充放電手段と、前記差動電極への前記差動充放電手段による繰り返しの充放電の特性を累積して前記差動電極の見かけの浮遊容量の合成値を求める容量累積合成手段とにより構成した。
【0027】
これより、本発明による近接検出装置における各構成手段及び本発明による近接検出方法における各工程について詳細に説明する。
【0028】
差動電極1は、物体の接近により見かけの浮遊容量を増加させる。ここで、差動電極1は、図6に示すように、正の属性を持ち正電極端子epに接続されている正の素電極41と、負の属性を持ち負電極端子emに接続されている負の素電極51とにより構成される。差動電極1を構成する正の素電極41および負の素電極51は、物体が接近すると見かけの浮遊容量を増加させる。ここで、一対の正の素電極41と負の素電極51は、略平行もしくは撚り線状に接近して配置することにより、ノイズが発生した場合にも、同様の影響を受けやすくすることが出来る。同様に、差動電極1と浮遊容量検出手段2との間の配線においても、略平行もしくは撚り線状に接近させることにより、ノイズの影響を軽減して同じものに近づけることが出来るのは言うまでもない。
【0029】
また、差動電極は、図7に示すように、より細分化して、複数の正の素電極41と複数の負の素電極51を交互に配置することにより、正の素電極41と負の素電極51の位置が更に近づくため、正電極端子41と負電極端子51へのノイズの差を更に小さくすることが出来る。
【0030】
さらに、差動電極1を線順次駆動の表示装置の上に重ねて使用する場合には、素電極(41,51)の方向を線順次駆動の線方向と平行にしないことにより、ノイズの影響を小さくすることが出来る。
【0031】
このように電極を細分化することにより個々の素電極のインピーダンスは高くなるが、並列に接続されるため、トータルとしてのインピーダンスはほとんど増加することはなく、細分化したことによりノイズに弱くなるものではない。
【0032】
なお、これより説明の便宜上、図6に示すような一対の素電極を用いた場合について詳細に説明するが、図7に示すような細分化された素電極を用いた場合についても同様である。
【0033】
浮遊容量検出手段2は、差動電極1の浮遊容量の合成値を検出する。このため、浮遊容量検出手段2は、差動電極1に繰り返し充放電を行う差動充放電手段4と、前記充放電の特性を累積して前記差動電極1の浮遊容量の合成値に変換する容量累積合成手段5とにより構成した。
【0034】
差動充放電手段4は、図8及び図9に示すように、充放電制御手段6と正充放電手段11と負充放電手段21とにより構成した。また、容量累積合成手段5は、正累積手段12と負累積手段22と容量演算手段7とにより構成した。
【0035】
図10に示すように、充放電制御手段6は浮遊容量検出手段2の動作を制御する。つまり、浮遊容量検出手段2の初期化を行った後に、所定回数の充電と放電を繰り返して、浮遊容量検出するまでの一連のシーケンスを司る。ただし、図10においては、異なるステップで動作するスイッチが同時にオンすることのないような時間を各ステップ間に設けても良いことは言うまでもない。
【0036】
このため、ステップ1において、繰り返しサイクル数のカウント値Nを0に初期化するとともに、スイッチSW1,11をオンにして、正累積手段の帰還コンデンサCapと負累積手段の帰還コンデンサCamの両端をショートさせて初期化を行う。
【0037】
ステップ2において、繰り返しサイクル数Nに1を加算して、スイッチSW2,12のみをオンして、差動電極に充電する。
【0038】
ステップ3において、スイッチSW3,13のみをオンして、差動電極から放電するとともに、放電した電荷を容量累積合成手段に累積する。
【0039】
ステップ4において、ステップ2,3を所定回数繰り返したことを判定すると、ステップ5において、容量演算手段で差動電極の浮遊容量の合成値を求めるようにした。但し、ステップ4で所定回数により判定する代わりに、後述する容量演算手段での浮遊容量が収束した段階で、ステップ2,3の繰り返しを終了するようにしても良い。
【0040】
正充放電手段11は、ステップ2において、正の電圧を供給する直流電源Vddを、スイッチSW2をオンにすることにより正電極端子epに接続して、正の属性を持つ素電極に正の電荷を充電する。この場合にスイッチSW3はオフしている。また、ステップ3において、スイッチSW2をオフしてスイッチ3をオンすることにより正の属性を持つ素電極に充電されていた正の電荷を演算増幅器OP1の反転入力端子に放電させる。このように、正充放電手段11は、充電時に正の素電極に電流を流し込み、放電時に正の素電極から電流を引き出すように充放電を行うものであればどのようなものでもよい。
【0041】
同様に、負充放電手段21は、ステップ2において、0Vを供給するグランドを、スイッチSW12をオンにすることにより負電極端子emに接続して、負の属性を持つ素電極に負の電荷を充電する。この場合にスイッチSW13はオフしている。また、ステップ3において、スイッチSW12をオフしてスイッチ13をオンすることにより負の属性を持つ素電極に充電されていた負の電荷を演算増幅器OP2のマイナス入力端子に放電させる。負充放電手段21は、正充放電手段11と逆に、充電時に負の素電極から電流を引き出し、放電時に負の素電極に電流を流し込むように充放電を行うものであればどのようなものでもよい。
【0042】
正累積手段12は、演算増幅器OP1の帰還コンデンサCapに正の素電極から放電された正の電荷を蓄積して電圧Vapに変換する。このため、帰還コンデンサCapはステップ1においてスイッチSW1により初期化されている。同様に、負累積手段22は、演算増幅器OP2の帰還コンデンサCamに負の素電極から放電された負の電荷を蓄積して電圧Vamに変換する。ここで、正累積手段のコンデンサの静電容量Capと負累積手段のコンデンサの静電容量Camは同じ値Caに設定したが、その限りではない。また、帰還コンデンサCamはステップ1においてスイッチSW11により初期化されている。なお、演算増幅器OP1,2の非反転入力端子は、直流電源Vddとグランド間で抵抗分圧された電圧Vmになっているが、中間電位であればどのようなものでも良い。また、演算増幅器OP1,2の回路の特性上、本実施例では正累積手段と負累積手段の出力電圧はマイナス1倍されているが、この限りではない。
【0043】
容量演算手段7では、電荷の総量保存の関係より得られる数1などにより、差動電極の浮遊容量、つまり正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemの和を、正累積手段12と負累積手段22の出力電圧の差から求めるようにした。また、右辺全体にマイナスの符号がついているのは、正累積手段と負累積手段で極性が反転したためである。
(数1) Cep+Cem=−Ca×(Vap−Vam)÷(N×Vdd÷2)
ここで、ノイズを除去しつつ差動電極の浮遊容量の和を検出する動作について、図11により説明する。
【0044】
差動電極に物体が接近した場合には、図11(a)に示すように、正の素電極と負の素電極の両方の見かけの浮遊容量が増加するため、充電時に両素電極に蓄えられる電荷が増大する。このため、放電時に正累積手段と負累積手段のコンデンサに累積される電荷も増大して、正累積手段の演算増幅器OP1の出力電圧Vapは低くなり、負累積手段の演算増幅器OP2の出力電圧Vamは高くなる。このため、容量演算手段で検出される浮遊容量が増加する。
【0045】
一方、図11(b)に示すように、ノイズにより正の素電極と負の素電極の両方の電圧が引き上げられた場合には、正累積手段と負累積手段の演算増幅器の出力Vap,Vamの両方の電圧が低くなり、容量演算手段で互いに打ち消しあうことにより、ノイズの影響を除去することができる。ノイズにより正の素電極と負の素電極の両方の電圧が引き下げられた場合にも、同様にノイズの影響を除去することができる。
【0046】
このように差動電極へのノイズの影響は同様なので、差動電極の浮遊容量の和を求めながらノイズをキャンセルするためには、差動電極に逆位相の充放電を行う必要がある。言い換えると、本発明の特徴は、差動電極に逆位相の充放電を行い、差動電極の浮遊容量の和を求めることにより、ノイズの影響を除去することである。
【0047】
以上に演算増幅器を用いた容量累積合成手段の一例を示したが、回路コストを削減するために、汎用的なCPU等を活用することにより、正累積手段及び負累積手段において演算増幅器を使わずに単にコンデンサに累積することも出来る。この場合も、差動充放電手段の動作や図10に示した浮遊容量検出手段全体の動作ステップは、演算増幅器を用いた前述の場合とほぼ同様である。したがって、ここでは演算増幅器を用いた前述の場合との相違点を中心に、図12,13を基に詳細に説明する。
【0048】
正累積手段では、ステップ1において、コンデンサCapの電圧Vapを0Vに初期化する。ステップ3においては、演算増幅器を使わずに単にコンデンサCapに累積するだけなので、正の素電極から放電された正の電荷の累積を繰り返しても、コンデンサCapの電圧Vapは繰り返しサイクル数Nには比例せずに、正の素電極の浮遊容量Cepと正累積手段のコンデンサCapの比率により、数2に示すようにVddに近づく。
(数2) Vap=Vdd×[1−{Ca÷(Cep+Ca)}のN乗]
同様に、負累積手段では、ステップ1において、コンデンサCamの電圧VamをVddの電圧に初期化する。ステップ3においては、負累積手段のコンデンサCamの電圧Vamは、負の素電極の浮遊容量Cemと負累積手段のコンデンサCapの比率により、数3に示すように0Vに近づく。
(数3) Vam=Vdd×[{Ca÷(Cem+Ca)}のN乗]
容量演算手段では、正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemを各々求めて、その和を計算する。容量演算手段での演算は、例えばCPU等を用いると容易に演算することが出来る。
【0049】
正の素電極の浮遊容量Cepは、図13に示すように、正累積手段の出力電圧Vapが予め定められたリファレンス電圧Vrpより大きくなるまでのサイクル数Nから求める。計算式は、数2のVapをVrefに置き換えて、Cepについて予め解いておいたものなどである。
【0050】
負の素電極の浮遊容量Cemは、図13に示すように、負累積手段の出力電圧Vamが予め定められたリファレンス電圧Vrmより小さくなるまでのサイクル数Nから求める。計算式は、同様に数3から容易に解いておいたものなどである。
【0051】
ここで、正累積手段と負累積手段で演算増幅器を使わずに単にコンデンサに累積した場合のノイズ除去効果について説明する。仮にノイズにより正の素電極と負の素電極の両方の電圧が高くなった場合には、正累積手段のコンデンサの電圧Vapも負累積手段のコンデンサの電圧Vamも高くなる。ここで、正累積手段のコンデンサの電圧Vapの値は0VからVddに向かって大きくなるのでVrpに早く到達するようになるために、正の素電極の浮遊容量Cepを求める場合のサイクル数Nは少なくなり、求められる浮遊容量Cepは大きくなる。逆に、負累積手段のコンデンサの電圧Vapの値はVddから0Vに向かって小さくなるのでVrmに遅く到達するようになるために、負の素電極の浮遊容量Cemを求める場合のサイクル数Nは多くなり、求められる浮遊容量Cemは小さくなる。したがって、正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemの和を計算することにより、ノイズの影響は互いに打ち消しあって、大幅に軽減されるのである。
【0052】
ここでは、正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemを各々求めてからその和を計算したが、図7に示すように差動電極が充分細分化されて正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemの値がほぼ同じ場合には、正累積手段のコンデンサの電圧Vapから負累積手段のコンデンサの電圧Vamを差し引いたものがリファレンス電圧Vrに到達するまでのサイクル数Nから正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemの和を求めるようにしても良い。
【0053】
また、容量累積合成手段は、図14,15に示すように、正累積手段の機能と負累積手段の機能を一つにまとめた差動累積手段8と容量演算手段7により構成しても良い。
【0054】
さらに、この場合には、図16に示すように、ステップ4において容量演算手段7のスイッチSW7をオンにすることによって、差動累積手段8のコンデンサの両端の電圧の差を得ることが出来る。この電圧の差から前述の方法で差動電極の浮遊容量の和を求めれば良い。
【0055】
以上に、ノイズを除去しながら差動電極の浮遊容量を検出する浮遊容量検出手段について説明したが、これより物体が接近していない場合の差動電極自体の浮遊容量も除去して、物体の接近による浮遊容量の増加分を高精度に検出することのできる浮遊容量検出手段について、図17を基に説明する。
【0056】
図17に示す浮遊容量検出手段は、図12に示した浮遊容量検出手段に、差動電極自体の浮遊容量を除去するための手段を追加したものである。図17において、コンデンサCrpとスイッチSW22とスイッチSW23は正の素電極の固有の浮遊容量を除去するためのものであり、コンデンサCrmとスイッチSW32とスイッチSW33は、負の素電極の固有の浮遊容量を除去するためのものである。このため、コンデンサCrpは、物体が接近していない場合の正の素電極の浮遊容量と同じ値で、コンデンサCrmは、物体が接近していない場合の負の素電極の浮遊容量と同じ値にした。
【0057】
ステップ2における充電時にはスイッチSW22によりコンデンサCrpには正の素電極と逆の電圧である0Vからの負の充電を行ない、ステップ3における放電時にはスイッチSW23により正の素電極からの放電による正の累積手段への累積をキャンセルするように動作する。同様に、ステップ2における充電時にはスイッチSW32によりコンデンサCrmには負の素電極と逆の電圧であるVddからの充電を行ない、ステップ3における放電時にはスイッチSW33により負の素電極からの放電による負の累積手段への累積をキャンセルするように動作する。こうすることにより、正の累積手段及び負の累積手段では、差動電極の物体の接近による浮遊容量の増加に対応した電荷が累積される。したがって、容量演算手段からは物体の接近により増加した浮遊容量の増加分のみが高精度に検出されて、近接演算手段での物体の接近の判定をより正確にすることが出来るようになる。
【0058】
ここでは、位相の反転した充電を行い放電時に加算して非接近時の容量を打ち消しあう方法を示したが、同じ位相の充電を行って減算により打ち消しあうようにしても同様の効果を得ることが出来る。
【0059】
スイッチ切換えによる浮遊容量検出手段はこの限りでなく、差動充放電手段により差動電極への充放電の電流が同時に逆向きになるような充放電を繰り返して、その特性から差動電極の合成浮遊容量を求めるようなものであればどのようなものでもよい。
【0060】
以上にスイッチ切換えにより差動電極に充放電を行う浮遊容量検出手段の例について説明したが、差動電極への充放電は交流印加によっても実現することができる。例えば、交流電圧を電極に印加する浮遊容量検出手段では、容量検出制御手段やスイッチなどが不要で、アナログ回路として実現される。交流電圧の印加により差動電極に充放電を行う浮遊容量検出手段の例について、図18,19を基に詳細に説明する。
【0061】
交流電圧の印加により差動電極に充放電を行う浮遊容量検出手段は、スイッチ切換えによる浮遊容量検出手段と同様に、正充放電手段11と負充放電手段21とにより構成される差動充放電手段4と、容量累積合成手段5とにより構成される。但し、正充放電手段11は交流電圧発生手段13と正電気抵抗手段14とにより構成され、負充放電手段21は反転手段23と負電気抵抗手段24とにより構成した。また、容量累積合成手段5も、同様に正累積手段12と負累積手段22と容量演算手段7とにより構成した。
【0062】
交流電圧発生手段13は、電極の浮遊容量を検出するために交流電圧Voを発生する。正電気抵抗手段14は、交流電圧発生手段で発生した電圧を、インピーダンスを高くして正の素電極に供給する。インピーダンスを高くすることにより、数4に示すように、交流電圧の周波数fと正の素電極の浮遊容量Cepと正電気抵抗手段の抵抗値Rとにより電圧降下を生じ、正電極端子の電圧Vepは交流電圧Voより小さくなる。ここで、πは、円周率である。
(数4) Vep=Vo÷[{(2×π×f×Cep×R)の2乗+1}の0.5乗]
反転手段23は、交流電圧発生手段で発生する交流電圧と位相が反転した交流電圧を発生する。また、負電気抵抗手段24の抵抗値は、正電気抵抗手段の抵抗値と同じである。したがって、負電極端子の電圧Vemは、同様に数5に示す電圧に降下する。ここで、Cemは、負の素電極の浮遊容量である。
(数5) Vem=Vo÷[{(2×π×f×Cem×R)の2乗+1}の0.5乗]
正累積手段12では、正電極端子の電圧Vepを抽出する。このため、正累積手段では、充分高いインピーダンスで入力して、交流電圧を検波した後に、フィルタリングして直流成分を抽出する。負累積手段22も、同様に負電極端子の電圧Vemを抽出する。正累積手段及び負累積手段で直流成分を抽出する検波及びフィルタリングの機能は、繰り返される充放電の特性から得られる浮遊容量を累積することに対応する。
【0063】
容量演算手段7では、正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemを個別に求めた後に、両者の和を求めるようにした。ここで、正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemを求めるために、数4と数5から予め正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemについて解いたものを用意しておき、VepとVemにそれぞれ正累積手段12で抽出した電圧と負累積手段22で抽出した電圧を代入する。交流電圧発生手段13および反転手段23で発生する交流電圧の電圧値Voと、周波数fと、正電気抵抗手段14及び負電気抵抗手段24の抵抗値Rは通常定数であるため、数4と数5から予め正の素電極の浮遊容量Cepと負の素電極の浮遊容量Cemについて解いたものは、1次元のテーブルとして用意しておくこともできる。
【0064】
交流電圧を印加した場合も、ノイズによる電流は正の素電極と負の素電極で同じ方向であり、充放電による電流は正の素電極と負の素電極で逆のため、差動電極の合成浮遊容量を求めることにより、ノイズの影響は打ち消しあうことになる。
【0065】
以上に、交流印加により差動電極に充放電を行う浮遊容量検出手段の例について説明したが、交流電圧の印加により差動電極に充放電を行う場合も、スイッチ切換えにより充放電を行う場合と同様に、差動電極自体の浮遊容量を除去した物体の接近による浮遊容量の微小な増加分のみを抽出して高精度に検出することが出来る。その方法について、図20を基に説明する。
【0066】
図20において、コンデンサCrpは、正の素電極に物体が接近していない場合の浮遊容量と同じ値の静電容量を持ち、交流電圧発生手段に正電気抵抗手段の抵抗値と同じ値の電気抵抗を介して接続されている。正減算手段15では、正の素電極の電圧VepからコンデンサCrpの電圧を差し引くことにより、正の素電極の見かけの浮遊容量の物体の接近による増加分に対応した交流電圧を正電極端子電圧として出力する。
【0067】
同様に、コンデンサCrmと負減算手段25も、負の素電極の見かけの浮遊容量の物体の接近による増加分に対応した交流電圧を負電極端子電圧として出力する。
【0068】
ここで得られた正電極端子電圧と負電極端子は、図18に示す容量累積合成手段5の正累積手段12と負累積手段22に各々入力され、差動電極の浮遊容量の変化分を求めることが出来る。
【0069】
図20に示す例ではコンデンサCrpと正の素電極に同位相の交流電圧を印加して減算することにより正の素電極自体の浮遊容量を打ち消すようにしたが、図21に示すようにコンデンサCrpと正の素電極に位相の反転した交流電圧を印加して加算するようにしても同様の効果が得られる。コンデンサCrmと負の素電極に関しても、同様である。この場合、図20の正減算手段と負減算手段はそれぞれ正加算手段16と負加算手段26とになる。
【0070】
また、図22,23に示すように、物体が接近していない場合の正の素電極の浮遊容量と負の素電極の浮遊容量がほぼ等しい場合には、図20,21でのコンデンサCrpとコンデンサCrmとを一つのコンデンサCrにまとめても、ほぼ同様の効果を得ることができる。
【0071】
以上に、スイッチ切換えを用いる場合と交流印加を行う場合の浮遊容量検出手段の例について説明したが、差動電極に互いに位相の反転した電流を流して、その特性から差動電極の浮遊容量の合成値を求める手段であれば、どのような手段を用いても良い。
【0072】
同様に、浮遊容量検出工程は、物体の接近により変化する差動電極の浮遊容量を検出する。このため、浮遊容量検出工程は、差動電極に繰り返し充放電を行う差動充放電工程と、前記充放電の特性を累積して浮遊容量に変換する容量累積合成工程とにより実現した。
【0073】
近接演算手段では、浮遊容量検出手段で求めた正確な浮遊容量の値が予め設定した値より大きくなった場合には、予め想定した物体の接近として検出するようにした。このため、近接演算手段では、ノイズの影響のほとんどない正確な検出を行うことができる。ここで、浮遊容量の値から物体の接近や位置を検出する方法はさまざまな方法が知られている。近接演算手段は、浮遊容量から物体の接近や位置を検出する手段であればどのような手段を用いても良い。
【0074】
同様に、近接演算工程では、浮遊容量検出工程で求めた正確な浮遊容量の値が予め設定した値より大きくなった場合などには、予め想定した物体の接近として正確に検出するようにすれば良い。
【0075】
以上に本発明による近接検出装置および近接検出方法の例を示したが、このように差動電極に位相の反転した充放電を行い、さらに浮遊容量検出中に差動電極の浮遊容量の合成値が求まるように演算を行う装置や方法であれば、どのようなものでもノイズの除去された正確な浮遊容量を得ることが出来るため、物体の接近を正確に検出することが可能になる。
【実施例2】
【0076】
実施例1では、一対の差動電極により物体の接近を検出する近接検出装置について説明した。本実施例2では、複数の差動電極を用いることにより、物体の接近ばかりでなくその位置まで検出することの出来る近接検出装置について説明する。
【0077】
このため、実施例2では、図24に示すように、支持手段61によって支持された複数の差動電極1と、前記複数の差動電極のそれぞれの浮遊容量を検出する浮遊容量検出手段2と、前記浮遊容量検出手段で求めた前記複数の差動電極の位置とそれぞれの浮遊容量から物体の接近及び位置を演算する近接演算手段3とにより構成した。
【0078】
これより、各構成手段について、詳細に説明する。
【0079】
図25において、支持手段上61に、差動電極が一軸の検出方向(図中上下方向)に等間隔に配置されている。なお、図25では、便宜上4対の差動電極となっているが、この限りではない。ここで、4対の差動電極は各々正の素電極42と負の素電極52により構成されており、4対の正の素電極と4対の負の素電極はすべて同一形状かつ同一特性とした。
【0080】
浮遊容量検出手段2は、これら4対の差動電極のそれぞれについて、実施例1で説明した浮遊容量検出手段と同じものを用いて、それぞれの差動電極の浮遊容量を検出するようにした。ここで、回路規模を小さくするために、同一の回路を時分割して共用できる部分については共用してもよいことは言うまでもない。
【0081】
近接演算手段では、浮遊容量検出手段で検出したそれぞれの差動電極の浮遊容量から、物体の接近及び位置を検出する。
【0082】
このため、近接演算手段では、それぞれの差動電極の浮遊容量のいずれかが予め定められた値より大きくなった場合に物体の接近を検出するようにしたが、この限りではない。
【0083】
また、物体の接近を検出した場合には、位置を求める。位置の求め方は、最も大きい浮遊容量の差動電極の位置を接近した物体の検出位置としても良いが、さらに補正量を加算して検出位置精度を上げることも出来る。そのための補正量は、例えば、最も大きい浮遊容量の差動電極の上側に隣り合う差動電極と下側に隣り合う差動電極の浮遊容量を最も大きい浮遊容量で割って正規化して得られた値により、2次元補正量テーブルを参照するようにした。ここで用いる2次元補正量テーブルは、実験により予め定められた値を格納しておけば良い。
【0084】
また、近接演算手段は、この例以外にも、複数の差動電極の位置と浮遊容量から物体の接近及び位置を求めることの出来る手段であれば、どのような手段を用いても良い。
【0085】
このように、本発明による近接検出装置では、複数の差動電極を検出方向に並べて配置することにより、ノイズの影響を除去した物体の接近及び位置を検出することが出来る。
【0086】
以上に、1軸の検出方向に差動電極を並べて、物体の接近と検出方向の正確な位置を検出することの出来る近接検出装置について説明した。これより、2軸の検出方向を持つ近接検出装置について説明する。
【0087】
2軸の検出方向を持つ近接検出装置は、前述の1軸の検出方向の近接検出装置と同様に、複数の差動電極と、前記複数の差動電極のそれぞれの浮遊容量を検出する浮遊容量検出手段と、前記浮遊容量検出手段で求めた前記複数の差動電極の位置とそれぞれの浮遊容量から物体の接近及び位置を演算する近接演算手段とにより構成した。
【0088】
2軸の複数の差動電極は、例えば図26に示すように、1軸の複数の差動電極2組(縦方向の位置を検出する正の素電極42および負の素電極52の組と横方向の位置を検出する正の素電極43および負の素電極53の組)を検出方向が互いに直交するように絶縁層を介して重ねて、差動電極どうしが交差する部分の幅を互いに干渉しないように細くしたものである。
【0089】
この場合に、さらに各素電極の形状を図28に示すようにジグザグに配置することにより、線順次駆動の表示装置の上に重ねて使用する場合にもノイズの影響を受けにくくすることが出来る。
【0090】
浮遊容量検出手段では、これら2軸の複数の差動電極それぞれの浮遊容量を、1軸の場合と同様に求める。
【0091】
近接演算手段では、浮遊容量検出手段で求めた2軸の複数の差動電極それぞれの浮遊容量の中で最も大きな値が予め定められた値よりおおきくなった場合に、予め想定した物体が接近したことを検出する。物体の位置については、2軸の検出方向ごとに1軸の場合と同様の方法で位置を求めるようにした。
【0092】
このように、本発明による近接検出装置では、複数の差動電極を2軸の検出方向ごとに並べて配置することにより、ノイズの影響を除去した物体の接近及び2次元位置を検出することが出来る。
【0093】
以上に、1軸と2軸の検出方向に複数の差動電極を配置する方法について、例を挙げて示したが、同様に多軸の検出方向ごとに複数の差動電極を並べて配置して、多軸の位置まで検出できるようにすることが出来る。
【0094】
以上に、差動電極ごとに浮遊容量を求める近接検出装置について説明したが、複数の差動電極を組織的にグルーピングして、グループごとにまとめて浮遊容量を求めることにより、全体の規模を大きくせずに物体の接近位置を求めることができる方法について説明する。このための複数の差動電極の配置およびグルーピンクの方法について、図27を基に説明する。
【0095】
図27において、正の素電極42と負の素電極52により構成される横方向全体にわたる複数の差動電極は、前述の1軸の検出方向の場合と同様に、図中縦方向である検出方向に等間隔に同じものが配置され、それぞれの浮遊容量により接近した物体の縦方向の位置を求めることができる。
【0096】
一方、横方向を2分割するように配置された複数の差動電極(44、54)は、接近した物体の位置が検出範囲の右半分なのか左半分なのかを検出するためのもので、例えば、左半分に配置された複数の差動電極は同一グループとしてまとめられ、正の素電極と負の素電極ごとに同一の電極端子に接続される。右半分に配置された複数の差動電極についても、同様である。
【0097】
同様に、横方向を4分割するように配置された複数の差動電極(45、55)は、横方向を2分割した右半分と左半分の各々をさらに2分割したもので、各々の右半分に属する複数の差動電極と左半分に属する差動電極の2つのグループにまとめられ、グループ内の差動電極は正の素電極と負の素電極ごとに同一の電極端子に接続される。
【0098】
この場合に、近接演算手段で横方向の位置を求める方法として、全体の右半分に対応する浮遊容量と全体の左半分に対応する浮遊容量を比較して大きい浮遊容量の側に物体の位置があることがわかり、さらに横方向を2分割した浮遊容量の大小関係からさらに2分割した位置を検出することが出来る。
【0099】
また、単に大小関係を比較するのでなく、1軸の場合と同様に、実験により得られたテーブルを用いて浮遊容量の比率により参照して補正を加えるなどして、より精度の高い検出をすることができる。
【0100】
さらに、ここでは横方向を4分割までする場合の例を示したが、より細分化することにより、より精度の高い検出を行うことが可能である。
【0101】
このように、1層の電極で多軸の位置検出を行うには、多数の差動電極が必要になる。差動電極のグルーピングを行わないと、電極端子以降の浮遊容量検出手段や近接検出手段の規模が差動電極の数にほぼ比例して大きくなるが、このように差動電極のグルーピングを行う近接検出装置では、それほど全体の規模を大きくすることなく、多軸の物体の接近位置まで正確に検出することが可能になる。
【0102】
なお、実施例2においても実施例1の場合と同様に、線順次駆動の表示装置の上に重ねて使用する場合には、素電極の方向を線順次駆動の線方向と平行にしないことにより、ノイズの影響を小さくすることが出来る。このために、他軸の検出方向が直交しなくても、CPU等により斜交座標から直交座標への座標変換を行うことにより、直交座標における位置を容易に求めることが出来る。
【実施例3】
【0103】
実施例2では、差動充放電の特性から差動電極対の合成容量を求めることによりノイズを除去した浮遊容量を検出して、物体の接近及び位置を正確に検出する近接検出装置について説明した。しかし、この場合には1箇所の静電容量を求めるために1対の差動電極が必要で、従来の単純な浮遊容量の測定に比べ電極の数が倍必要となり検出回路の規模が大きくなってしまう。
【0104】
そこで、本実施例3では、ノイズを除去しながら近接した差動電極を構成する両電極各々の静電容量を求めることにより、電極の数や検出回路の規模をほとんど大きくせずに物体の接近及び位置を正確に検出することのできる近接検出装置について説明する。
【0105】
本実施例3は、図29に示すように、支持基板61上の複数の差動電極1と、複数の差動電極を構成する正の属性の差動電極と負の属性の差動電極の個々の浮遊容量を検出する個別容量検出手段32と、物体の接近及び位置を検出する近接演算手段3とにより構成されている。近接演算手段3は、実施例2と同様の手段を用いることができる。以下においては、差動電極1と個別容量検出手段32について、詳細に説明する。
【0106】
差動電極は、物体の接近及び位置を浮遊容量の変化として検出する。例えば、X軸およびY軸の2方向の位置を検出する場合には、図30に示すように支持手段上に図中縦方向であるY軸と横方向であるX軸の2軸の座標に対応した複数の電極を交差することなく配置する。
【0107】
Y軸は、Y座標ごとにY1A,Y2B,Y3A,Y4B,Y5A,Y6Bの電極端子に接続される電極が等間隔に配置される。ここで、Y1AとY2B,Y3AとY4B,Y5AとY6Bの電極端子に接続される電極はそれぞれ差動電極対であるが、本実施例3では個々の静電容量を検出するためのものである。この場合、差動電極対を構成する素電極は、位置的に1座標分離れるが、それでも同一基板上にほぼ同一形状で配置されるため、ノイズの受け方はほぼ同様である。
【0108】
X軸も同様に、X座標ごとにX1A,X2B,X3A,X4Bの電極端子に接続される電極が等間隔に配置される。ここで、X1AとX2B,X3AとX4Bの電極端子に接続される電極はそれぞれ差動電極対であるが、個々の静電容量を検出するためのものである。この場合、差動電極対を構成する素電極は、位置的に1座標分離れるが、それでも同一基板上にほぼ同一形状で配置されるため、ノイズの受け方はほぼ同様である。
【0109】
支持手段は操作するためにある程度の面積が必要で、電極を交差するように配置すると製造コストが大きくなるため、支持手段上では電極を交差しないようにX軸の電極はY軸の電極により分断されている。その代わりに、電極端子への配線において同一X座標の電極を並列に接続するようにした。
【0110】
このため、支持手段上でX軸の電極を配線するためのパターンが他のX座標を通過してしまう。例えば、X2Bの電極端子に接続するためのパターンは、支持手段上でX3AやX4Bの電極端子に対応するX座標を通過するため、そこに指が接近した場合でもX2B端子から検出する静電容量も大きくなってしまう。この影響を取り除くには、例えばX2Bに対応するX座標に物体の接近を検出した場合には、X座標とY座標とからX1A,X2B,X3Aの配線パターンの静電容量の増加を想定して、検出した静電容量から除去するようにすれば良い。
【0111】
また、X軸の電極をくさび型にしたり、図27に示すような座標の分割コード化を用いたりすると電極端子数を通常減らすことが出来るが、本実施例3では例えば2本の指が同時に接近した場合に両方の位置の中央や間隔までも検出できるようにするために、座標毎に電極を配置した。
【0112】
さらに、同相で駆動される電極を接近させることにより、支持手段上の面積をより有効に活用することが出来る。例えば、図31の場合には、X1AとX3Aの電極端子に対応する電極は、同時に同相で駆動されるようにしたために、パターン間のギャップを狭くすることができる。X2BとX4Bの電極端子に対応する電極についても同様である。同時に同相で駆動する電極については、相互の電荷の移動が小さいため、検出される静電容量にパターン間の静電容量がほとんど加わらなくなるからである。
【0113】
また、図32に示すように、Y方向については実施例2と同様に差動電極の正電容量の和を検出して、X方向についてのみ個別の静電容量を求めるようにしても良い。その逆についても同様である。
【0114】
個別容量検出手段32は、図33に示すように、容量和検出手段33と容量差検出手段34と個別容量演算手段37とにより構成した。容量和検出手段33は、実施例2での浮遊容量検出手段と同様で、各差動電極の静電容量を合成した和を検出する。従って、以下では容量差検出手段34と個別容量演算手段37の各手段について、詳細に説明する。
【0115】
容量差検出手段34は、ノイズを除去しながら差動電極の静電容量の差を検出する。このため、容量差検出手段は、図34に示すように、同相充放電手段114と容量差累積手段115とにより構成した。
【0116】
同相充放電手段114は、差動電極を構成する電極に同位相の充放電を行う。
【0117】
容量差累積手段115では、同相充放電手段114での複数回の充放電の特性を累積して、差動電極を構成する正負の電極の静電容量を検出してその差を求めるようにした。このため、例えば数6に示す演算を行ったが、この他にもテーブルを用いるなど静電容量の差に応じた値を得られるものであれば、どのように方法を用いても良い。
(数6)(静電容量差)=(正の電極の静電容量)−(負の電極静電容量)
差動電極を構成する正負の電極に同様のノイズが印加された場合には、正負の電極の静電容量の検出に同様の影響があるために、引き算で差を求めることによりノイズの影響をキャンセルすることが出来る。
【0118】
容量差検出手段は、この限りでなく、同位相の充放電の特性から差動電極を構成する正負の電極の静電容量の差に対応した値を求める工程や手段であれば、どのようなものを用いても良い。
【0119】
個別容量演算手段37では、容量和検出手段33で検出した差動電極を構成する正負の電極の静電容量の和に対応する値と、容量差検出手段34で検出した差動電極を構成する正負の電極の静電容量の差に対応する値とから、差動電極を構成する正負の電極個々の静電容量に対応する値を、演算して求める。このため、例えば数7に示すように、加算したものと減算したものを2で割って、正負の電極の静電容量の個々の値として求めることが可能である。
(数7)(正の電極の静電容量)={(静電容量和)+(静電容量差)}÷2
(負の電極の静電容量)={(静電容量和)−(静電容量差)}÷2
この他にも、テーブルを使うなど、静電容量和と静電容量差から正負の電極個々の静電容量を求める方法であれば、どのようなものを用いても良い。
【0120】
このようにして求めた正負の電極個々の静電容量の値は、ノイズを除去した静電容量和とノイズを除去した静電容量差とから用いられているため、ノイズの影響を除去した値である。
【0121】
以上に1対の差動電極について個別容量演算手段の説明をしたが、これらは差動電極対の数相応に工程や手段が必要であることは言うまでもない。
【0122】
また、ここで説明した個別容量検出手段や近接演算手段は、汎用のプログラマブルデバイスで実現することが可能で、製造コストは電極端子数に依存する傾向がある。
【0123】
以上に示したように、実施例3では、逆相充放電特性からノイズを除去して求めた静電容量の和と、同相充放電特性からノイズを除去して求めた静電容量の差とから、ノイズを除去した各差動電極の個々の静電容量を求めることが出来るため、電極や電極端子の数を増やさずにノイズを除去した正確な物体の接近や位置を検出することの出来る近接検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明に係る近接検出装置の第1の実施例を示すブロック図
【図2】従来の近接検出装置のブロック図
【図3】従来の近接検出装置のブロック図
【図4】従来の近接検出装置のブロック図
【図5】従来の近接検出装置のブロック図
【図6】本発明に係る差動電極を示す構造図
【図7】本発明に係る差動電極を示す構造図
【図8】本発明に係る浮遊容量検出手段を示すブロック図
【図9】本発明に係る浮遊容量検出手段を示す接続図
【図10】本発明に係る浮遊容量検出手段を示す検出ステップ図
【図11】本発明の効果を示す概念図
【図12】本発明に係る浮遊容量検出手段を示す接続図
【図13】本発明に係る浮遊容量検出手段を示すタイミング図
【図14】本発明に係る浮遊容量検出手段を示すブロック図
【図15】本発明に係る浮遊容量検出手段を示す接続図
【図16】本発明に係る浮遊容量検出手段を示す接続図
【図17】本発明に係る浮遊容量検出手段を示す接続図
【図18】本発明に係る浮遊容量検出手段を示すブロック図
【図19】本発明に係る差動充放電手段の接続図
【図20】本発明に係る差動充放電手段の接続図
【図21】本発明に係る差動充放電手段の接続図
【図22】本発明に係る差動充放電手段の接続図
【図23】本発明に係る差動充放電手段の接続図
【図24】本発明に係る近接検出装置の第2の実施例を示すブロック図
【図25】本発明に係る差動電極を示す構造図
【図26】本発明に係る差動電極を示す構造図
【図27】本発明に係る差動電極を示す構造図
【図28】本発明に係る差動電極を示す構造図
【図29】本発明に係る近接検出装置の第2の実施例を示すブロック図
【図30】本発明の第3の実施例に係る差動電極の配置例を示す構造図
【図31】本発明の第3の実施例に係る差動電極の配置例を示す構造図
【図32】本発明の第3の実施例に係る差動電極の配置例を示す構造図
【図33】本発明に係る個別容量検出手段を示すブロック図
【図34】本発明に係る容量差検出手段を示すブロック図
【符号の説明】
【0125】
1 差動電極
2 浮遊容量検出手段
3 近接演算手段
4 差動充放電手段
5 容量累積合成手段
6 充放電制御手段
7 容量演算手段
8 差動累積手段
11 正充放電手段
12 正累積手段
13 交流電圧発生手段
14 正電気抵抗手段
15 正減算手段
16 正加算手段
21 負充放電手段
22 負累積手段
23 反転手段
24 負電気抵抗手段
25 負減算手段
26 負加算手段
32 個別容量検出手段
33 容量和検出手段
34 容量差検出手段
37 個別容量演算手段
41 正の素電極
42 縦方向の位置を検出する正の素電極
43 横方向の位置を検出する正の素電極
44 横方向を2等分する正の素電極
45 横方向を4等分する正の素電極
51 負の素電極
52 縦方向の位置を検出する負の素電極
53 横方向の位置を検出する負の素電極
54 横方向を2等分する負の素電極
55 横方向を4等分する負の素電極
61 支持手段
114 同相充放電手段
115 容量差累積手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊容量により物体の接近を検出する近接検出装置において、前記物体の接近により見かけの浮遊容量を変化させる差動電極と、位相の反転した充放電を前記差動電極に繰り返し行うことにより前記差動電極の見かけの合成浮遊容量を求める浮遊容量検出手段と、前記合成浮遊容量により前記物体の接近を検出する近接演算手段とを有することを特徴とする近接検出装置。
【請求項2】
浮遊容量により物体の接近を検出する近接検出装置において、前記物体の接近により見かけの浮遊容量を変化させる差動電極と、位相の反転した充放電を前記差動電極に繰り返し行うことにより得られる前記差動電極の浮遊容量と同位相の充放電を前記差動電極に繰り返し行うことにより得られる前記差動電極の浮遊容量とから前記差動電極の個別浮遊容量を検出する個別容量検出手段と、前記個別浮遊容量により前記物体の接近を検出する近接演算手段とを有することを特徴とする近接検出装置。
【請求項3】
浮遊容量により物体の接近や位置を検出する近接検出装置において、支持基板上に配置された複数の差動電極と、位相の反転した充放電を前記複数の差動電極のそれぞれに繰り返し行うことにより前記複数の差動電極それぞれの合成浮遊容量を求める浮遊容量検出手段と、前記複数の差動電極それぞれの合成浮遊容量から物体の接近や位置を演算する近接演算手段とを有することを特徴とする近接検出装置。
【請求項4】
浮遊容量により物体の接近や位置を検出する近接検出装置において、支持基板上に配置された複数の差動電極と、位相の反転した充放電を前記複数の差動電極それぞれに繰り返し行うことにより得られる前記差動電極の浮遊容量と同位相の充放電を前記複数の差動電極それぞれに繰り返し行うことにより得られる前記差動電極の浮遊容量とから前記複数の差動電極を構成する個々の電極の個別浮遊容量を検出する個別容量検出手段と、前記複数の差動電極の個別浮遊容量から物体の接近や位置を演算する近接演算手段とを有することを特徴とする近接検出装置。
【請求項5】
前記複数の差動電極は、一軸または多軸の位置検出方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載の近接検出装置。
【請求項6】
前記差動電極は、2つ以上の複数の素電極からなり、それら複数の素電極のそれぞれは正負いずれかの属性を持ち、ひとつの差動電極に属する同一の属性を有する素電極は対応するひとつの端子に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の近接検出装置。
【請求項7】
前記複数の差動電極は、組織的にグルーピングされ、各差動電極が2つ以上の複数の素電極からなり、それら複数の素電極のそれぞれが正負いずれかの属性を持ち、同一グループかつ同一属性の素電極が対応する同一の端子に電気的に接続されていることを特徴とする請求項3または4に記載の近接検出装置。
【請求項8】
前記差動電極を構成する前記複数の素電極は、互いに略平行または撚り線状に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の近接検出装置。
【請求項9】
前記差動電極を構成する前記複数の素電極は、正負の属性ごとに交互に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の近接検出装置。
【請求項10】
前記差動電極を構成する前記複数の素電極は、ジグザグな形状で配置されていることを特徴とする請求項6に記載の近接検出装置。
【請求項11】
前記複数の差動電極は、支持手段上に2軸の座標値に対応して存在し、第1の座標軸の座標値に対応する差動電極と第2の座標軸の座標値に対応する差動電極は交差することなく前記支持手段の外部に接続されることを特徴とする請求項3または4に記載の近接検出装置。
【請求項12】
前記複数の差動電極はおのおの複数の素電極から構成されており、前記素電極において同時に同位相で充放電される素電極間の間隔は同時に同位相で充放電されない素電極間の間隔より狭いことを特徴とする請求項3または4に記載の近接検出装置。
【請求項13】
前記浮遊容量検出手段は、前記差動電極に繰り返し位相の反転した充放電を行う差動充放電手段と、前記差動電極に繰り返される充電または放電または充放電の特性から前記差動電極の合成浮遊容量を求める容量累積合成手段とを有することを特徴とする請求項1または3に記載の近接検出装置。
【請求項14】
前記差動充放電手段は、前記差動電極に物体が接近していない場合の浮遊容量に対応するコンデンサに充放電を行い、前記差動電極への充放電特性と前記コンデンサへの充放電特性を差し引く演算手段とを有することを特徴とする請求項13に記載の近接検出装置。
【請求項15】
前記差動充放電手段は、第一の充放電手段と第二の充放電手段を有し、第一の充放電手段の充放電と第二の充放電手段の充放電の位相が反転していることを特徴とする請求項13に記載の近接検出装置。
【請求項16】
前記第一の充放電手段及び前記第二の充放電手段の各々は、電荷を供給する直流電源手段と、充電時に接続する切換えスイッチと、放電時に接続する切換えスイッチを有することを特徴とする請求項15に記載の近接検出装置。
【請求項17】
前記第一の充放電手段及び前記第二の充放電手段の各々は、電荷を供給する交流電源手段と、前記交流電源のインピーダンスを高くする電気抵抗手段とを有し、各々の交流電源手段の位相が反転していることを特徴とする請求項15に記載の近接検出装置。
【請求項18】
前記容量累積合成手段は、前記第一の充放電手段による充電または放電または充放電の特性を累積する第一の累積手段と、前記第二の充放電手段による充電または放電または充放電の特性を累積する第二の累積手段と、前記第一の累積手段と前記第二の累積手段で累積した特性から前記差動電極の合成浮遊容量を求める容量演算手段を有することを特徴とする請求項13に記載の近接検出装置。
【請求項19】
前記第一の累積手段及び前記第二の累積手段は、前記差動充放電手段または差動電極からの電荷を累積するコンデンサと、前記コンデンサを初期電圧に接続して初期化するスイッチとを有することを特徴とする請求項18に記載の近接検出装置。
【請求項20】
前記第一の累積手段及び前記第二の累積手段は、前記差動電極への前記差動充放電手段による繰り返される充放電の波形を検波する検波手段と、前記検波手段の出力をフィルタリングするフィルタ手段とを有することを特徴とする請求項18に記載の近接検出装置。
【請求項21】
浮遊容量により物体の接近を検出する近接検出方法において、前記物体の接近により見かけの浮遊容量を変化させる差動電極に位相の反転した充放電を繰り返し行うことにより前記差動電極の見かけの合成浮遊容量を求める浮遊容量検出工程と、前記合成浮遊容量により前記物体の接近を検出する近接演算工程とを有することを特徴とする近接検出方法。
【請求項22】
浮遊容量により物体の接近を検出する近接検出方法において、前記物体の接近により見かけの浮遊容量を変化させる差動電極に位相の反転した充放電を前記差動電極に繰り返し行うことにより得られる前記差動電極の浮遊容量と同位相の充放電を前記差動電極に繰り返し行うことにより得られる前記差動電極の浮遊容量とから前記差動電極の個別浮遊容量を求める個別容量検出工程と、前記個別浮遊容量により前記物体の接近を検出する近接演算工程とを有することを特徴とする近接検出方法。
【請求項23】
浮遊容量により物体の接近や位置を検出する近接検出方法において、支持基板上に配置された複数の差動電極それぞれに繰り返し位相の反転した充放電を行うことにより前記複数の差動電極のそれぞれの合成浮遊容量を求める浮遊容量検出工程と、前記複数の差動電極のそれぞれの合成浮遊容量から物体の接近や位置を演算する近接演算工程とを有することを特徴とする近接検出方法。
【請求項24】
浮遊容量により物体の接近や位置を検出する近接検出方法において、支持基板上に配置された複数の差動電極それぞれに、位相の反転した充放電を繰り返し行うことにより得られる前記差動電極の浮遊容量と同位相の充放電を繰り返し行うことにより得られる前記差動電極の浮遊容量とから前記複数の差動電極を構成する個々の電極の個別浮遊容量を求める個別容量検出工程と、前記複数の差動電極の個別浮遊容量から物体の接近や位置を演算する近接演算工程とを有することを特徴とする近接検出装置。
【請求項25】
前記浮遊容量検出工程は、前記差動電極に繰り返し位相の反転した充放電を行う差動充放電工程と、前記差動電極に繰り返される充電または放電または充放電の特性から前記差動電極の合成浮遊容量を求める容量累積合成工程とを有することを特徴とする請求項21または23に記載の近接検出方法。
【請求項26】
前記差動充放電工程は、前記差動電極への充放電特性から前記差動電極に物体が接近していない場合の浮遊容量に対応するコンデンサへの充放電特性を差し引く演算工程を有することを特徴とする請求項25に記載の近接検出方法。
【請求項27】
前記差動充放電工程は、第一の充放電工程と第二の充放電工程を有し、第一の充放電工程の充放電と第二の充放電工程の充放電の位相が反転していることを特徴とする請求項25に記載の近接検出装置。
【請求項28】
前記容量累積合成工程は、前記第一の充放電工程による充電または放電または充放電の特性を累積する第一の累積工程と、前記第二の充放電工程による充電または放電または充放電の特性を累積する第二の累積工程と、前記第一の累積工程と前記第二の累積工程で累積した特性から前記差動電極の合成浮遊容量を求める容量演算工程を有することを特徴とする請求項25に記載の近接検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2008−292446(P2008−292446A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267476(P2007−267476)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】