説明

近接通過音発生装置

【課題】仮想空間内を移動するオブジェクトがゲーム視点位置に接近した場合、リアルタイムで風切り音などの近接通過音を効果音として付加する近接通過音発生装置を提供する。
【解決手段】ゲーム視点位置が設定された仮想空間を生成し、該仮想空間内に、1個以上の移動物体をゲーム視点位置に対して接近離反させる形で移動制御することのできるゲーム装置において、移動物体とゲーム視点位置の間の距離を測定し、移動物体がゲーム視点位置に接近した状態になったことを検出判定する手段、接近した状態となった移動物体を特定し、移動物体に対応した近接通過音に使用する音源を決定する手段、移動物体のゲーム視点位置に対する相対速度を演算し、相対速度が所定値以上であるか否かを判定する手段、相対速度が所定値以上の場合に、決定された音源を用いて近接通過音の音声データを生成し、再生する近接通過音再生手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームなどの仮想空間内で、移動するオブジェクトがプレイヤキャラクタ(仮想カメラ)に近接した位置を通過した際に、風切り音などの近接通過音を発生させることの出来る近接通過音発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のゲーム装置においては、キャラクタの動作などに応じて所定の効果音を発生させることが行われている(特許文献1)。たとえば、キャラクタの繰り出したパンチが相手のキャラクタに当たって、「バジッ」といった効果音が生成・再生されるなどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−298305
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、そうした効果音は、もともとキャラクタの動作、例えばパンチ動作などのモーションデータに付随した形で準備されているものであり、当該動作に固有のデータであった。こうした効果音データには、他にも多くのものがあり、モーションデータに限らず、オブジェクトに付随させて再生するように構成する場合もある。例えば、小鳥のオブジェクトにその鳴き声や羽ばたき音の効果音データを付随させておき、小鳥が空を飛んでいる時には、羽ばたき音の効果音データを再生し、木の枝に止まっているときには、鳴き声の効果音データを再生して、場面の臨場感を増すように演出する。
【0005】
こうした方法は、個別のオブジェクトに当該オブジェクトに付随する効果音データを準備して、対応する場面になったところで、当該効果音データを再生することでシナリオを進めてゆくが、これらの効果音は、すべてある特定のオブジェクトに付随するものであった。しかし、ゲームにより多くの臨場感を持たせるためには、仮想空間内を移動するオブジェクトがプレイヤキャラクタや仮想カメラ位置などのゲーム視点位置付近を通過した際に、例えば「ビュッ」というような、風切り音などの近接通過音を効果音として付加することが望まれる。
【0006】
しかし、仮想空間内を所定の移動プログラムに基づいてはいるものの、自由に移動するオブジェクトがゲーム視点位置に何時、接近するかは予測できず、不明であることから、リアルタイムにそうした処理をすることはいままで、行われていなかった。
【0007】
本発明は、そうした事情に鑑み、仮想空間内を移動するオブジェクトがゲーム視点位置に接近した場合、リアルタイムで風切り音などの近接通過音を効果音として付加することが出来る近接通過音発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、所定のゲーム視点位置(VP)が設定された仮想空間(VS)を生成し、該仮想空間内に、1個以上の移動物体(MO)を前記ゲーム視点位置に対して接近離反させる形で移動制御することのできるゲーム装置(1)において、
前記移動物体とゲーム視点位置の間の距離(L)を測定し、該距離が所定値以下となって、該移動物体がゲーム視点位置に接近した状態(例えば、図4の(a)の状態)になったことを検出判定する接近検知手段(7)、
前記接近した状態となった移動物体(MO)を特定し、当該移動物体に対応した近接通過音に使用する音源(SC1〜SC5)を決定する音源決定手段(7)、
前記移動物体のゲーム視点位置に対する相対速度を演算し、当該相対速度が所定値以上であるか否かを判定する速度判定手段(7)、
前記相対速度が所定値以上の場合に、前記決定された音源を用いて近接通過音の音声データを生成し、再生する近接通過音再生手段(9、10、11)、
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点は、前記移動物体(MO)の仮想質量を格納するオブジェクトパラメータテーブル(PTL)、及び、
前記ゲーム視点位置に接近した状態となった移動物体の仮想質量を前記オブジェクトパラメータテーブルを参照して求め、前記ゲーム視点位置に設定された仮想質量との比を、仮想質量比として演算する仮想質量比演算手段(7)を有し、
前記音源決定手段は、複数の音源から、前記演算された仮想質量比に対応した音源を決定することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、前記移動物体とゲーム視点位置の周囲に相互の接触を判定するための接触判定領域(ARA,ara)をそれぞれ設定する接触判定領域設定手段(5)、
前記接近検知手段で、ゲーム視点位置に接近した状態となった移動物体の前記接触判定領域と前記ゲーム視点位置の接触判定領域が接触したか否かを判定する接触判定手段(7)、を有し、
前記近接通過音再生手段は、前記相対速度が所定値以上であることに加えて、接触判定手段が前記移動物体の接触判定領域と前記ゲーム視点位置の接触判定領域が接触したと判定した場合に、前記近接通過音の音声データを生成し、再生する、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、前記接触判定手段は、前記移動物体の接触判定領域と前記ゲーム視点位置の接触判定領域の接触が、移動物体の接触判定領域がゲーム視点位置の接触判定領域に突入した際の最新のものか否かを判定する突入タイミング判定手段(7)を有し、
前記通過音再生手段は、前記突入タイミング判定手段が、前記接触が、移動物体の接触判定領域がゲーム視点位置の接触判定領域に突入した際の最新のものと判定した場合にのみ、前記近接通過音の音声データを生成し、再生する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の観点によれば、ゲーム視点位置に接近する移動物体を接近検知手段により検知して、所定値以上の相対速度を持った移動物体について、移動物体に対応した音源で通過音再生手段が近接通過音の音声データを生成し、再生する。これにより、仮想空間内を移動するオブジェクトがゲーム視点位置に接近した場合、リアルタイムで風切り音などの近接通過音を効果音として付加することが出来、ゲーム場面の臨場感を増す演出が可能となる。
【0013】
本発明の第2の観点によれば、仮想質量比演算手段により移動物体の質量に応じた音源で接近通過音を効果音として付加することが出来るので、より決めの細かな演出が可能となる。
【0014】
本発明の第3の観点によれば、移動物体とゲーム視点位置の周囲に接触判定領域を設けることで、各移動物体の大きさに応じて、ゲーム視点位置に対する適切な位置で接近通過音を効果音として付加することが出来るので、より決めの細かな演出が可能となる。
【0015】
本発明の第4の観点によれば、移動物体の接触判定領域がゲーム視点位置の接触判定領域に最初に突入した場合にだけ、近接通過音の音声データを生成し、再生するので、複雑な動きをする移動物体に対して、何度も連続的に近接通過音を再生するといった不自然な再生制御を防止することが出来る。
【0016】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明である近接通過音発生装置の1実施例が適用されるゲーム機のブロック図。
【図2】図2は、オブジェクトパラメータテーブルの一例を示す模式図。
【図3】図3は、音源ID格納テーブルの一例を示す模式図。
【図4】図4は、移動物体とゲーム視点位置との関係を示す模式図。
【図5】図5は、近接通過音発生プログラムの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0019】
図1はコンピュータを構成するゲーム機1を示している。ゲーム機1は、図1に示すように、主制御部2を有しており、主制御部2にはバス線3を介して、シナリオ進行制御部5,ハードディスクや半導体メモリなどからなるゲームプログラムメモリ6,オブジェクト接近判定部7,効果音生成部9、音響制御部10,入力手段としてのコントローラ11及び表示制御部12などが接続している。表示制御部12には、平面ディスプレイ16が接続されており、音響制御部10には、フロント右スピーカー11A、フロント左スピーカー11B、リア右スピーカー11D及びリア左スピーカー11Cが接続している。これら4台のスピーカー11は、四角形(正方形や長方形に限らず、台形の場合もある)の四つの頂点に配置される形で配置され、音響制御部10はゲームプログラムにおいて、各スピーカー11A,11B、11C、11D専用にデフォルトで準備された4つの音声チャンネルに割り当てられた音声トラックデータを再生して各スピーカー11A,11B、11C、11Dに供給し、それらの音声を各音声チャンネル毎に各スピーカー10で独立した形で再生することが出来る。これにより、スピーカー11A,11B、11C、11Dは所謂サラウンドシステム13を構築し、各スピーカー11A,11B、11C、11Dからほぼ等しい距離の中央位置に位置するプレイヤ15は、それらのスピーカー11A,11B、11C、11Dから出力される4つの音声チャンネルからの音により、立体的で臨場感に富む音場を体験することが出来る。
【0020】
なお、サラウンドシステム13を構成するスピーカーの数及びその配置態様は、任意であり、図1に示すような4個のスピーカーに限らず、5個以上とすることも可能である。また、本発明が適用されるスピーカーシステムは、サラウンドシステムである必要はなく、左右のスピーカーから構成される2チャンネルのステレオシステムでもよく、更に、複数の音声チャンネルがそれぞれ再生される複数のスピーカーが配置されて、それらにより音場が構成されるシステムでも良い。
【0021】
また、表示制御部9には、既に述べたように平面ディスピレイ16が、表示面16aをプレイヤ15側に向けた形で配置されている。なお、ゲーム機1には、このほかにハードディスク、光学ディスク入出力装置など各種のハードウエアが接続しているが、本発明に直接関連のない部分は、その図示及び説明を省略する。ゲーム機1では、図示しない光学ディスクなどから読み込まれ、又は図示しないインターネットなどの通信回線を介してダウンロードされ、ゲームプログラムメモリ6に格納されたゲームプログラムGPRに基づいて、主制御部2が所定のシナリオを、シナリオ進行制御部5を介して進行制御させてゆくことで、プレイヤは所定のゲームを楽しむことが出来る。
【0022】
なお、本発明に係るゲームプログラムを機能させるコンピュータとして、例えば家庭用ゲーム機1を一例として説明したが、ゲーム機1としては、ゲーム専用の装置でなく、一般的な音楽や映像の記録媒体の再生なども可能な装置であってもよく、これに限らず、コンピュータとして、例えばパーソナルコンピュータ、携帯電話機など、つまりゲームプログラムを機能させることのできるものであれば何れのものでもよい。
【0023】
なお、ゲームプログラムGPRを構成する各種のプログラム及び音響データを含む各種のデータは、ゲームプログラムGPRのプログラム機能によって読み出し自在に有している限り、その格納態様は任意であり、本実施の形態のように、ゲームプログラムGPRのプログラムと共にゲームプログラムメモリ6中に格納するほかに、ゲーム機1とは独立したサーバーなどの外部のメモリ手段に格納しておき、ゲームプログラムGPR中に設けられた読み出しプログラムによって、インターネットなどの通信媒介手段を介してゲームプログラムメモリ6などのメモリにダウンロードするように構成してもよい。
【0024】
ゲーム機1においては、所定の初期化操作(例えば電源の投入操作)が行われると、主制御部2がゲームプログラムメモリ6に格納された、ゲームプログラムGPRの読み込みを開始し、そのプログラムに従ってゲーム処理を開始する。プレーヤが入力手段であるコントローラ11を操作して所定のゲーム開始操作を行うと、主制御部2はゲームプログラムGPRの手順に従ってゲームの実行に必要な種々の制御を開始する。プレイヤはコントローラ11を操作することでプレイヤキャラクタを、ゲームプログラムGPRによりゲーム装置1が図示しないメモリ内に生成した仮想空間VS内で、ゲームプログラムGPRに従って自由に移動させることが出来る。
【0025】
ゲーム中には、例えば、図4(a)に示すように、コンピュータのメモリ空間内に形成された仮想空間VSにおいて、プレイヤキャラクタPCや仮想カメラVCが配置されている位置(ここではゲーム視点位置VPと称する)に対して、音源が設定された鳥、怪獣、飛行機などの移動物体MOが接近離反するシーンがよく生じる。なお、この移動物体MOのオブジェクトは、ゲームプログラムGPRに基づいて、図示しない物体移動制御部がその移動態様を制御している。通常、移動物体MOの音源に対しては、ゲームプログラムGPR内に、当該音源Sに対応する音声データが、当該ゲームプログラムPGRが想定している音場を構成するスピーカーの数に対応した数の音声チャンネルとして設定され、それぞれに音声トラックデータが格納されている。図1の場合、ゲームプログラムGPRは、図4の移動物体MOの音源に対して、音場を構成する4個のスピーカー11から構成されるサラウンドシステムに応じて、フロント右スピーカー11A用のFR音声チャンネル、フロント左スピーカー11B用のFL音声チャンネル、リア右スピーカー11D用のLR音声チャンネル及びリア左スピーカー11C用のLL音声チャンネルの、4個の音声チャンネルが準備され、各音声チャンネルには、それぞれのスピーカーから出力されるべき音声トラックデータが格納されている。即ち、移動物体MOの音源に設定されている各音声チャンネルは、各スピーカー配置に応じてデフォルトで割り当てられている。
【0026】
従って、こうしたシーンがディスプレイ16に表示されると、主制御部2は、ゲームプログラムGPRに格納された音場生成プログラム基づいて、音響制御部10に対して、移動物体MOの音声データを各音声チャンネルに対応する各スピーカーで再生させる。この際、音響制御部10は、ゲーム視点位置VPに対する移動物体MOの方向に応じて各スピーカーから再生される音量やバランスを調整して、移動物体MOから発せられる音が、仮想空間VS内のゲーム視点位置VPから移動物体MOに向いた方角からあたかもこえるように、再生制御する。こうした手法は、すでに公知なので、くわしい説明は省略する。
【0027】
また、ゲーム視点位置VPに対して、音源が設定された移動物体MOが接近離反するシーンがディスプレイ16に表示されると、主制御部2は、ゲームプログラムGPRの一部である近接通過音発生プログラムPSGに基づいて、移動物体MOがゲーム視点位置VPに対して所定の位置関係となったときに、移動物体MOの音源として格納された各音声チャンネルの音声データの再生とは別個の、「近接通過音」の生成・再生を行うようにオブジェクト接近判定部7及び効果音生成部9に対して指令する。
【0028】
これを受けて、オブジェクト接近判定部7は、図5に示す、近接通過音発生プログラムPSGのステップS1で、移動物体MOとゲーム視点位置VPとの距離Lを測定し、当該距離Lが所定値以下、即ち移動物体MOがプレイヤキャラクタPCや仮想カメラ位置VCに接近した状態になっているか否かを検出判定する。オブジェクト接近判定部7は、近接通過音発生プログラムPSGに基づいて、仮想空間VS内のゲーム視点位置VP周辺を移動する移動物体MOを検出し、当該移動物体MOとゲーム視点位置VPとの距離Lを測定しているので、この判定は容易に行うことができる。
【0029】
ステップS1で、移動物体MOとゲーム視点位置VPとの間の距離Lが所定値以下、即ち移動物体MOがプレイヤキャラクタPCや仮想カメラ位置VCに接近した状態になっていると判定された場合には、オブジェクト接近判定部7は、近接通過音発生プログラムPSGのステップS2に入り、接近しつつある移動物体MOに付されたオブジェクトIDを取得して、当該接近状態にある移動物体MOを特定する。ゲームプログラムGPRでは、仮想空間VS内に配置される可能性のある移動物体MOには、それぞれの固体を識別するためのオブジェクトIDが付されており、オブジェクト接近判定部7は、シナリオ進行制御部5に対して、現在ゲーム視点位置VPに接近している移動物体MOのオブジェクトIDを通知するように要求する。同時に複数の移動物体MOがゲーム視点位置VPに接近しているものと判定された場合には、当該複数の移動物体MOについてオブジェクトIDをそれぞれ取得するようにする。
【0030】
現在仮想空間VS内の移動物体MOは、すべてシナリオ進行制御部5が移動制御しているので、それら移動物体MOのオブジェクトIDは直ちに判明して、オブジェクト接近判定部7に通知される。次に、オブジェクト接近判定部7は、近接通過音発生プログラムPSGのステップS3に入り、取得した移動物体MOのオブジェクトIDに基づいて、当該移動物体MOの仮想質量をゲームプログラムGPRのデータから読み出して求める。
【0031】
こうして求められた仮想質量から、ゲーム視点位置VPに設定されたプレイヤキャラクタPCの仮想質量との比を、次式、
仮想質量比=移動物体MOの仮想質量/ゲーム視点位置VPの仮想質量
から、仮想質量比として演算する。通常、ゲーム視点位置VPにはプレイヤキャラクタPCが配置されているので、ここではプレイヤキャラクタPCの仮想質量(ゲームプログラムGPRにより設定されている)から仮想質量比を求めるが、ゲーム視点位置VPの仮想質量は、プレイヤキャラクタPCの仮想質量でなくとも、ゲーム視点位置VPに適宜に設定された仮想質量でもよい。
【0032】
即ち、ゲームプログラムGPRにおいては、仮想空間VSに配置される、移動物体MOやプレイヤキャラクタPCを含む全てのオブジェクトに関して、仮想的な質量が仮想質量として設定されており、それらは例えば、図2に示すように、オブジェクトパラメータテーブルPTLとして格納されている。従って、移動物体MOのオブジェクトIDが判明すると、その仮想質量はオブジェクトパラメータテーブルPTLを参照することで直ちに求められる。
【0033】
この仮想質量比は、現在ゲーム視点位置VPに接近しつつある移動物体MOが、ゲーム視点位置VPに設定されている仮想質量に対してどれくらい大きいかを示すパラメータである。ついで、オブジェクト接近判定部7は、近接通過音発生プログラムPSGのステップS4に入り、求められた仮想質量比から、ゲームプログラムGPRの一部としてゲームプログラムメモリ6に格納された音源ID格納テーブルIDTを参照して、再生使用する音源の種類を決定する。即ち、音源ID格納テーブルIDTには、図3に示すように、仮想質量比に応じて「近接通過音」として使用する音源が設定されており、図3の場合、音源SC1〜SC5の5種類が設定されている。これは、ゲーム視点位置VPに配置されているプレイヤキャラクタPCに対して、接近し通過する移動物体MOの大きさがどの程度大きいのかで、プレイヤキャラクタPCが聞くであろう「近接通過音」の大きさや音色が当然異なってくることから、ゲーム視点位置VPに設定されている仮想質量に対する比で、「近接通過音」の種類を決定する。例えば、仮想質量比が0.05未満の場合の「近接通過音」は、「ぴゅー」といったかすかな音圧の少ない音源SC1であり、仮想質量比が10.0を超える場合には、「近接通過音」は、「ゴゴゴ〜」といった、大きな音圧の音源SC5である。
【0034】
オブジェクト接近判定部7は、近接通過音発生プログラムPSGのステップS2〜S4の処理と並行して、ステップS5でゲーム視点位置VPに接近しつつある移動物体MOの接触半径Rの接触判定領域ARAが視点位置VPの接触半径rの接触判定領域araと接触したか否かを監視する。各移動物体MO及びゲーム視点位置VPには、ゲームプログラムGPRによりシナリオ進行制御部5が、図4に示すように、相互の接触を判定するための接触半径R、rを有する接触判定領域ARA,araを設定している。ゲーム視点位置VPに設定されている接触判定領域araの接触半径rは、例えばプレイヤキャラクタPCの仮想質量に対応した所定の値に設定され、各移動物体MOに設定されている接触判定領域ARAの接触半径Rは、例えばぞれそれのオブジェクトの仮想質量を反映してそれぞれ固有の値にゲームプログラムGPRにより設定され、図2に示すように、前述のオブジェクトパラメータテーブルPTLに、仮想質量と共に格納されている。
【0035】
シナリオ進行制御部5は、ゲーム視点位置VPを設定する際、及び移動物体MOの各オブジェクトを仮想空間VSに配置する際には、既に述べたようにゲームプログラムGPRに基づいて図4に示すように、それぞれに接触半径R、rの球状の接触判定領域ARA、araを移動物体MOの中心CT及びゲーム視点位置VPを中心に設定している。そこで、オブジェクト接近判定部7は、近接通過音発生プログラムPSGのステップS5に基づき、それら設定された移動物体MOとゲーム視点位置VPの接触判定領域ARA、araが、図4(b)及び(c)に示すように、相互に接触している(交差している場合も含む)か否かを所定のサンプリング間隔で判定する。なお、仮想空間VSが2次元の場合には、移動物体MO及びゲーム視点位置VPを中心に設定される接触判定領域ARA、araは、2次元的な円形となる。
【0036】
近接通過音発生プログラムPSGのステップS5で、図4(b)及び(c)に示すように、移動物体MOとゲーム視点位置VPの接触判定領域ARA、araが相互に接触していると判定された場合には、ステップS6に入り、主制御部2はオブジェクト接近判定部7に対して、移動物体MOとゲーム視点位置VPの接触判定領域ARA、araが相互に接触していると判定された時点の両者の相対速度を演算し、相対速度が所定値以上であるか否かを判定する。オブジェクト接近判定部7は、常に所定のサンプリング間隔で移動物体MOとゲーム視点位置VPの仮想空間VS内での位置を演算しているので、移動物体MOとゲーム視点位置VPの接触判定領域ARA、araが相互に接触していると判定された時点およびその直前のサンプリング時点の移動物体MOとゲーム視点位置VPの位置、及びサンプリング時間間隔から、両者の相対速度の演算は容易に行うことが出来る。
【0037】
即ち、移動物体MOとゲーム視点位置VPとの相対速度が、所定値以上にならないと、風切り音などの「近接通過音」は生じないので、こうした判定を行い、不自然な「近接通過音」の発生を防止するように制御する。したがって、ステップS6で移動物体MOとゲーム視点位置VPとの相対速度が、所定値以下と判定された場合には、ステップS7に入り、「近接通過音」の生成及び再生は行わない。また、ステップS6で移動物体MOとゲーム視点位置VPとの相対速度が、所定値以上と判定された場合には、ステップS8に入り、オブジェクト接近判定部7は、ステップS5で判定された接触が、移動物体MOの接触判定領域ARAがゲーム視点位置VPの接触判定領域araに突入した際の最新のものか否かの、タイミング判定を行う。即ち、ステップS5で判定された接触の、直前のサンプリング時点では、移動物体MOとゲーム視点位置VPの接触判定領域ARA、araの接触は検出されていないことを確認する。
【0038】
これは、「近接通過音」の発生(再生)タイミングを、移動物体MOがゲーム視点位置VP(プレイヤキャラクタPC)に対して、図4(b)に示すように、遠方から所定の位置まで接近して来る、接近の初期段階で発生(再生開始)させることが自然であり、図4(c)に示すように、両者がより接近してきて、接触判定領域ARA,araが互いに重なり合い、これら離脱に向かおうとする状態や、図4(d)に示すように、ゲーム視点位置VPに対して離脱する際に発生(再生開始)させても、プレイヤに違和感を生じさせることとなるからである。なお、図中矢印ARは、移動物体MOのゲーム視点位置VPに対する相対的な移動方向を示す。
【0039】
ステップS8で、ステップS5で判定された接触が、移動物体MOの接触判定領域ARAがゲーム視点位置VPの接触判定領域araに突入した際の最新のもと判定された場合には、ステップS9に入るが、そうでない場合にはステップS7に入り、「近接通過音」の生成・再生は行わない。ステップS9では、ステップS5の接触の検出時より、所定時間さかのぼる時間範囲(例えば、接触検出時から0.3秒前までの間。この時間範囲は任意に設定可能)で、既に当該移動物体MOについて「近接通過音」の生成・再生が行われているかどうかを判定する。これは、移動物体MOのゲーム視点位置VPに対する同一の接近動作で、重複して「近接通過音」が再生され、プレイヤに違和感を生じさせることを防止するための制御である。移動物体MOの動きは、ゲームプログラムGPRにより制御されているが、その移動態様は移動物体MOが具体的にどのようなものであるかによって大幅に相違し、複雑な動きを示す移動物体MOにおていは、ごく短時間の間にその接触判定領域ARAがゲーム視点位置VPの接触判定領域araと複数回接触する可能性がある。その際、いちいち「近接通過音」を生成することは、プレイヤにとって1回の通過にしか認識できない移動物体MOの接近通過に対して、複数回の「近接通過音」を生成することとなり、プレイヤに違和感を生じさせる原因となるのである。
【0040】
ステップS9で、既に当該移動物体MOについて「近接通過音」の生成・再生が行われている場合には、ステップS7に入り、「近接通過音」の生成・再生は行わない。ステップS9で、いまだ当該移動物体MOについて「近接通過音」の生成・再生が行われていない場合には、主制御部2は、効果音生成部9に対して「近接通過音」の音声データを生成するように指令する。これを受けて、効果音生成部9は、ステップS4で決定された「近接通過音」に使用する音源の種類を示す音源IDから、「近接通過音」の音声データを生成して音響制御部10に出力する。
【0041】
音響制御部10は、これを受けて効果音生成部9から入力された「近接通過音」の音声データを、ゲーム視点位置VPから見た移動物体MO(音源)の方向を考慮して、リスニング位置PLにいるプレイヤ15から、当該方向から「近接通過音」が聞こえるように各スピーカー11に対して音声データを分配する。音源の方向に対応させて複数のスピーカー11に対して音声データを分配する方法は公知であるのでここでは、その詳細な説明は省略する。
【0042】
これにより、移動物体MOがゲーム視点位置VPの近接位置を通過した際には、その時点の移動物体MOの位置に応じた方向から「近接通過音」が、スピーカー11を介して再生されることとなる。なお、この際、各スピーカー11からは、移動物体MOの音源Sが有する各音声チャンネルに基づく移動物体MO本来の音、例えば、鳥の鳴き声や、飛行機のエンジン音なども同時に再生される。
【符号の説明】
【0043】
1……ゲーム装置
5……接触判定領域設定手段(シナリオ進行制御部)
7……接近検知手段、音源決定手段、速度判定手段、仮想質量比演算手段、接触判定手段、突入タイミング判定手段(オブジェクト接近判定部)
9……近接通過音再生手段(効果音生成部)
10……近接通過音再生手段(音響制御部)
11、11A、11B、11C、11D……近接通過音再生手段(スピーカー)
L……距離
MO……移動物体
VP……ゲーム視点位置
SC1,SC2,SC3,SC4、SC5……音源
ARA、are……接触判定領域
PTL……オブジェクトパラメータテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のゲーム視点位置が設定された仮想空間を生成し、該仮想空間内に、1個以上の移動物体を前記ゲーム視点位置に対して接近離反させる形で移動制御することのできるゲーム装置において、
前記移動物体とゲーム視点位置の間の距離を測定し、該距離が所定値以下となって、該移動物体がゲーム視点位置に接近した状態になったことを検出判定する接近検知手段、
前記接近した状態となった移動物体を特定し、当該移動物体に対応した近接通過音に使用する音源を決定する音源決定手段、
前記移動物体のゲーム視点位置に対する相対速度を演算し、当該相対速度が所定値以上であるか否かを判定する速度判定手段、
前記相対速度が所定値以上の場合に、前記決定された音源を用いて近接通過音の音声データを生成し、再生する近接通過音再生手段、
を有するゲーム装置における近接通過音発生装置。
【請求項2】
前記移動物体の仮想質量を格納するオブジェクトパラメータテーブル、及び、
前記ゲーム視点位置に接近した状態となった移動物体の仮想質量を前記オブジェクトパラメータテーブルを参照して求め、前記ゲーム視点位置に設定された仮想質量との比を、仮想質量比として演算する仮想質量比演算手段を有し、
前記音源決定手段は、複数の音源から、前記演算された仮想質量比に対応した音源を決定することを特徴とする、
請求項1記載のゲーム装置における近接通過音発生装置。
【請求項3】
前記移動物体とゲーム視点位置の周囲に相互の接触を判定するための接触判定領域をそれぞれ設定する接触判定領域設定手段、
前記接近検知手段で、ゲーム視点位置に接近した状態となった移動物体の前記接触判定領域と前記ゲーム視点位置の接触判定領域が接触したか否かを判定する接触判定手段、を有し、
前記近接通過音再生手段は、前記相対速度が所定値以上であることに加えて、接触判定手段が前記移動物体の接触判定領域と前記ゲーム視点位置の接触判定領域が接触したと判定した場合に、前記近接通過音の音声データを生成し、再生する、
ことを特徴とする、請求項1記載のゲーム装置における近接通過音発生装置。
【請求項4】
前記接触判定手段は、前記移動物体の接触判定領域と前記ゲーム視点位置の接触判定領域の接触が、移動物体の接触判定領域がゲーム視点位置の接触判定領域に突入した際の最新のものか否かを判定する突入タイミング判定手段を有し、
前記近接通過音再生手段は、前記突入タイミング判定手段が、前記接触が、移動物体の接触判定領域がゲーム視点位置の接触判定領域に突入した際の最新のものと判定した場合にのみ、前記近接通過音の音声データを生成し、再生する、
ことを特徴とする、請求項3記載のゲーム装置における近接通過音発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−12811(P2013−12811A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142616(P2011−142616)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(308033283)株式会社スクウェア・エニックス (173)
【Fターム(参考)】