近赤外光吸収色素化合物、近赤外光吸収膜形成材料、及びこれにより形成される近赤外光吸収膜
【解決手段】一般式(1)で示されるアニオンを有する近赤外光吸収色素化合物。
(A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【効果】本発明の近赤外光吸収色素化合物は、光学特性及び耐熱性に優れているほか、特に溶剤溶解性に優れているので、成膜工程において塗布性及び加工性に優れる。また、本発明の近赤外光吸収色素化合物はその構造中に重金属を含まず、従って半導体素子の製造プロセスにおいても好適に用いることができる。
(A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【効果】本発明の近赤外光吸収色素化合物は、光学特性及び耐熱性に優れているほか、特に溶剤溶解性に優れているので、成膜工程において塗布性及び加工性に優れる。また、本発明の近赤外光吸収色素化合物はその構造中に重金属を含まず、従って半導体素子の製造プロセスにおいても好適に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な近赤外光吸収色素化合物及びこれを用いた近赤外光吸収膜形成材料、更に該材料を用いて形成された近赤外光吸収膜に関する。更に詳述すると、本発明は、近赤外光吸収剤を用いた光学フィルター、また半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる近赤外光吸収色素化合物、該近赤外光吸収色素化合物を用いた近赤外光吸収膜形成材料に関し、更には該材料を用いて形成された近赤外光吸収膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近赤外光吸収色素化合物は電子材料を主として多くの用途に用いられており、その需要はますます拡大している。光学フィルターや熱線吸収フィルター等のフィルター染料、赤外線感応性塗膜を用いた画像形成材料やソルダーレジストへの応用、光重合又は光架橋反応の増感剤、光ディスク等への光記録材料等、その用途は様々であり、多くの分野で有用である。
【0003】
大型薄型テレビにおいて注目されているプラズマディスプレイパネルには、原理上電磁波や近赤外線が必然的に発生し、これを遮断するために電磁波シールドや近赤外線吸収フィルター等を必要としている。これらによって画像不備を改善し、赤外線によるリモコンの誤動作を防ぐ等の効果を得ている。特許文献1:特開2000−81511号公報には、このような光学フィルターとしての用途を目的として近赤外光吸収色素化合物に関して記載されている。
【0004】
CCDカメラに近赤外光吸収フィルターを光学フィルターとして用いることにより、入射する近赤外線を遮断し、その撮影素子の分光感度を視感度に近づけることができる。この目的における光学フィルターとしては、シアニン色素、フタロシアニン化合物、ジイモニウム塩化合物等の近赤外光吸収色素化合物が用いられている。CCDカメラに近赤外光吸収色素化合物を含有した光学フィルターに関しては、例えば特許文献2:特開平11−23837号公報に記載されている。
【0005】
近赤外光吸収色素化合物は不可視印刷用インクにも使用されている。即ち、可視光領域に吸収帯を持たないインクを印刷することによって、情報コードの目視での判別を困難にし、証券類の機密書類を偽造することを防止することができる。これについては、特許文献3:特開平10−60409号公報に記載されている。
【0006】
半導体素子の製造においても、近赤外光吸収色素が適用されている。光リソグラフィーによる微細加工プロセスにおいては、フォトレジスト膜を露光する際、ウエハー表面が投影光学系の最良像面と合致するように、即ちフォーカス合わせが行われるように、センサー近赤外光を用いた光オートフォーカスが行われている。この光オートフォーカスの精度を上げるため、近赤外光吸収色素を含むフォトレジスト膜を用いる方法が提案されている(特許文献4:特開平7−146551号公報)。また、近赤外光吸収色素を含む膜をフォトレジスト膜下へ導入する手法が提案されている(特許文献5:米国特許出願公開第2009/0208865号明細書)。
【0007】
以上のように種々の用途として有用な近赤外光吸収色素化合物であるが、共通の課題としては有機溶剤に対する溶解性が挙げられる。代表的な色素化合物としては、例えばシアニン色素、フタロシアニン系色素、ニッケル等の金属錯体、ジイモニウム塩系化合物等が挙げられるが、これらの材料の多くは一般的に有機溶剤への溶解性が悪い傾向がある。上記に述べた近赤外光吸収材料のほとんどは、近赤外光吸収色素化合物の他に、樹脂や添加剤など有機系をベースとした組成物であり、従って近赤外光吸収色素化合物の対有機溶剤低溶解性は実用性分野を制限することとなる。例えば、プラズマディスプレイパネル用赤外線フィルターには、アニオンとして六フッ化アンチモネートを有するシアニン化合物が使用されており、耐熱性に優れるという利点があるが、溶剤溶解性は高くない。また、近年電子材料分野では特に金属不純物の低減が望まれており、アンチモンのような重金属を含有しない化合物が求められている。特許文献6:国際公開第2006/006573号パンフレットには重金属を含有しない色素化合物についての記載がされているが、これらはメチルエチルケトン等の塗布溶媒に対する溶解性が不十分であった。特許文献7:特開平8−253705号公報にはフッ素化アルキルスルホニルアニオンを有する染料についての記載がなされているが、過フッ素化アルキル化合物はC−F結合に由来する安定性(非分解性)や疎水性、親油性に由来する生態濃縮性、蓄積性が問題となっており、使用は望ましくない。更に、特許文献8:特開2008−88426号公報には、アニオンとしてトリス(トリフルオロメタンアルキルスルホニル)メチドアニオンを用いて溶剤溶解性を改善することに関する記載がされているが、該アニオン材料は高価であり、工業的に実用的とはいえない。
【0008】
より極性の強い溶剤、例えばメタノールやジメチルスルホキシドを用いれば、多くの近赤外光吸収色素化合物を溶解させることは多くの場合において可能である。但し、このような極性の強い溶剤の使用は、時に不均一な成膜を引き起こしたり、あるいは乾燥被膜中に塩として結晶化する等、望ましくない副作用が生じることがある。更に、ジメチルスルホキシドの如き高沸点溶媒では、成膜にあたり溶媒を除去することが困難である。
【0009】
成膜プロセスにおいては、有機溶剤を用いずに近赤外光吸収色素化合物及び他の材料、例えば樹脂等を混練して膜を形成する手法もあるが、該手法では均一な膜を形成しづらい。一方、近赤外光吸収色素含有材料が有機溶剤に溶解すれば、スピンコート法等の成膜技術を用いることによって均一な膜を形成することが容易に可能となる。また、溶液状態で保管することもでき、その取り扱いも容易となることから、近赤外光吸収色素化合物が良好な溶剤溶解性を有することは、成膜プロセスにおいてに大きなアドバンテージとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−81511号公報
【特許文献2】特開平11−23837号公報
【特許文献3】特開平10−60409号公報
【特許文献4】特開平7−146551号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0208865号明細書
【特許文献6】国際公開第2006/006573号パンフレット
【特許文献7】特開平8−253705号公報
【特許文献8】特開2008−88426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、溶剤溶解性が高く、塗布性に優れた近赤外光吸収色素化合物を提供する。また、これを含んだ近赤外光吸収膜を形成するための材料、及びこの材料を用いて形成される近赤外光吸収膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定の構造で示される近赤外光吸収色素化合物を含有した材料が、成膜工程に当たって十分な有機溶剤溶解性及び塗布性を有することを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
即ち、本発明は、下記の近赤外光吸収色素化合物及びこれを含んだ近赤外光吸収膜形成材料、並びに近赤外光吸収膜を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で示されるアニオンを有する近赤外光吸収色素化合物。
【化1】
(式中、A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
請求項2:
下記一般式(2)で示される請求項1に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化2】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R2及びR22はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、R2及びR22は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。R3及びR33はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。A1、R0は上記と同様である。式中の部分構造
【化3】
及び
【化4】
は、それぞれ独立に炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。)
請求項3:
下記一般式(3)で示される請求項2に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化5】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、A1、R0は上記と同様である。R222は水素原子あるいは炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。rは1又は2である。式中の部分構造
【化6】
及び
【化7】
は、上記と同様である。
請求項4:
下記一般式(4)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化8】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
請求項5:
下記一般式(5)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化9】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
請求項6:
下記一般式(6)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化10】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
請求項7:
(A)請求項1乃至6のいずれか1項に記載の近赤外光吸収色素化合物1種以上、及び
(B)溶剤1種以上
を含有することを特徴とする近赤外光吸収膜形成材料。
請求項8:
高分子化合物を1種以上含有することを特徴とする請求項7に記載の近赤外光吸収膜形成材料。
請求項9:
酸発生剤、架橋剤、界面活性剤から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の近赤外光吸収膜形成材料。
請求項10:
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の近赤外光吸収膜形成材料を塗布後、溶剤を蒸発させることにより形成される近赤外光吸収膜。
【発明の効果】
【0014】
本発明の近赤外光吸収色素化合物は、光学特性及び耐熱性に優れているほか、特に溶剤溶解性に優れているので、成膜工程において塗布性及び加工性に優れる。また、本発明の近赤外光吸収色素化合物はその構造中に重金属を含まず、従って半導体素子の製造プロセスにおいても好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】合成例1−1のDye−Aの1H−NMR/DMSO−d6をした図である。
【図2】合成例1−1のDye−Aの19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図3】合成例1−2のDye−Bの1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図4】合成例1−2のDye−Bの19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図5】合成例1−3のDye−Cの1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図6】合成例1−3のDye−Cの19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図7】合成例1−4のDye−Dの1H−NMR/CDCl3をした図である。
【図8】合成例1−4のDye−Dの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図9】合成例1−5のDye−Eの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図10】合成例1−5のDye−Eの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図11】合成例1−6のDye−Fの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図12】合成例1−6のDye−Fの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図13】合成例1−7のDye−Gの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図14】合成例1−7のDye−Gの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図15】合成例1−8のDye−Hの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図16】合成例1−8のDye−Hの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図17】合成例1−9のDye−Iの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図18】合成例1−9のDye−Iの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図19】合成例1−10のDye−Rの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図20】合成例1−10のDye−Rの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(A)近赤外光吸収色素化合物
本発明の近赤外光吸収色素化合物は、下記一般式(1)で示されるアニオンを有することを特徴とする。
【化11】
(式中、A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0017】
上記一般式(1)中、R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の1価炭化水素基を示す。
【0018】
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ステロイド構造含有基、イソプロペニル基、ビニル基等のアルキル基、アルケニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、10−アントラニル基、2−フラニル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。
【0019】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の特徴の一つとして、上記一般式(1)中のR0を種々振ってアニオン部の構造を容易に改変できることが挙げられる。例えば、R0に鎖状あるいは分岐状アルキル基を導入することにより、成膜時の溶剤溶解性をより向上させることができる。R0に環状の置換基を導入して剛直な構造とすることにより、溶剤溶解性を維持しつつ結晶性に優れた色素化合物とすることができる。R0に芳香族置換基を導入することにより、近赤外光吸収膜のn/k値を調整して、リソグラフィー工程に好適な反射防止膜を得ることができる。R0が水酸基であり、かつ他の近赤外光吸収材料に架橋剤が含有されていれば、成膜工程において硬化性に優れた近赤外光吸収膜を得ることができる。
【0020】
上記例示中、アニオン構造としては、R0が水酸基の場合、あるいはR0が−OC(=O)−R’でR’がn−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、アダマンチル基の場合が、製造、コストの点から特に好ましい。
【0021】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の具体的なアニオン部の構造としては、下記に示すものが例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化12】
【0022】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の好ましい構造としては、下記一般式(2)で示されるものが挙げられる。
【化13】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R2及びR22はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、R2及びR22は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。R3及びR33はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。A1、R0は上記と同様である。式中の部分構造
【化14】
及び
【化15】
は、それぞれ独立に炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。)
【0023】
上記一般式(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。
【0024】
R1として具体的には、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基が挙げられ、直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、5−メチルへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。ヘテロ原子が含まれる炭化水素基として、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、あるいはこれらのアルコキシ基やアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、カルボニル基を置換基として有する上記炭化水素基、水酸基を置換基として有する上記炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルオキシカルボニル基、あるいはこれらのエステル結合含有置換基を有する上記炭化水素基、カルボキシル基を置換基として有する上記炭化水素基、スルホン酸を置換基として有する上記炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有する上記炭化水素基、フェニルスルホニル基、あるいはこれを置換基として有する上記炭化水素基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアルキルアミノ基、アリールアミノ基、あるいはこれらを置換基として有する上記炭化水素基、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオフェノキシ基、あるいはこれらのチオアルコキシ基やチオアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、更には、前記例示のうち二以上の置換基を組み合わせてなる炭化水素基等が挙げられる。
【0025】
R2及びR22はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、R2及びR22は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環、特に非芳香環を形成してもよい。
【0026】
R2及びR22として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、R2及びR22が相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成する場合には、5員環あるいは6員環を形成する場合が特に好ましい。また、その際に形成された環構造中の水素原子の一部が直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基で置換されていてもよい。
【0027】
R3及びR33はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。
【0028】
R3及びR33として具体的には、直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、5−メチルへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。ヘテロ原子が含まれる炭化水素基として、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基やアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、カルボニル基を置換基として有する上記炭化水素基、水酸基を置換基として有する上記炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルオキシカルボニル基等のエステル結合含有置換基を有する上記炭化水素基、カルボキシル基を置換基として有する上記炭化水素基、スルホン酸を置換基として有する上記炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有する上記炭化水素基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基を置換基として有する上記炭化水素基、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオフェノキシ基等のチオアルコキシ基やチオアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、更には、前記例示のうち二以上の置換基を組み合わせてなる炭化水素基等が挙げられる。
【0029】
a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。これらが変わる、即ち共役系の長さが変わることで、近赤外光吸収色素化合物の吸収波長に影響する。本発明の用途に好適な波長及び原料入手容易性の観点から、好ましいa1及びa2としては0〜2、より好ましくは1あるいは2が特に望ましい。
【0030】
上記一般式(2)中の部分構造
【化16】
は、炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。
【0031】
上記部分構造は、具体的には下記一般式(7)〜(11)のいずれか一種の部分構造で示される。
【化17】
(式中、R4はハロゲン原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、又は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基を示す。pは0〜4の整数を示す。Zは酸素原子、硫黄原子、又は−C(RZ)2−を示し、RZは水素原子又は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基を示す。)
【0032】
R4として具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ニトロ基、炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0033】
pは0〜4の整数を示す。原料入手性からpは0〜2、より好ましくは0あるいは1である。
【0034】
RZとして具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0035】
上記一般式(2)中の部分構造
【化18】
は、炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。
【0036】
上記部分構造は、具体的には下記一般式(7’)〜(11’)のいずれか一種の部分構造で示される。
【化19】
(式中、R4、p、Zは上記と同様である。)
【0037】
本発明の近赤外光吸収色素化合物としてより好ましくは、下記一般式(3)で示される。
【化20】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、A1、R0は上記と同様である。R222は水素原子あるいは炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。rは1又は2である。式中の部分構造
【化21】
及び
【化22】
は、上記と同様である。
【0038】
上記一般式(3)中、R222は水素原子あるいは炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。上記1価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、t−アミル基、シクロペンチル基等を挙げることができ、好ましくは水素原子、メチル基あるいはエチル基である。
【0039】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の更に好ましい構造としては、下記一般式(4)〜(6)のいずれか一種で示される。
【化23】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
【0040】
上記一般式(4)〜(6)で示される近赤外光吸収色素化合物は、優れた耐熱性、耐光性を有し、また光学フィルターや半導体素子といった本発明の用途において適度な吸収領域を有するため、特に好ましい。
【0041】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の具体的なカチオン部の構造としては、下記に示すものが例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化24】
【0042】
【化25】
【0043】
【化26】
【0044】
【化27】
【0045】
【化28】
【0046】
上記に例示したカチオン部及び前述したアニオン部の組み合わせが、本発明の近赤外光吸収色素化合物として特に好ましい。
【0047】
次に、本発明の近赤外光吸収色素化合物の合成法について説明する。
本発明の近赤外光吸収色素化合物は、例えば下記Scheme1及び2に従って合成される。但し、本発明の近赤外光吸収色素化合物の合成法はこれに限定されるものではない。
【化29】
(式中、R1、R2、R22、R3、A1、R0は前記と同様である。X1-は無機あるいは有機アニオンを示す。M+はカチオンを示す。部分構造
【化30】
及び
【化31】
は、上記と同様である。)
【0048】
上記Scheme1における一段階目の工程は、カチオン部を合成する方法の一例である。これは、例えばJournal of Organic Chemistry 1995,60,2391を参考にすることができる。R1については、市販の原料を使用することもできるし、あるいはR1がクロライド等のハロゲン原子であれば、Scheme1の工程後に種々の有機化学的手法、例えば求核置換反応や、カップリング反応等を駆使して別の置換基に変換することもできる。
【0049】
X1-として具体的には塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハライドイオン、メシレート、トシレート等のスルホン酸の共役塩基、BF4-、PF6-、ClO4-、NO3-、SbF6-等の無機酸の共役塩基が例示される。
【0050】
本発明の近赤外光吸収色素前駆体は、Scheme1に従って調製することも可能であるが、市販品として入手することも可能である。
【0051】
次に、上記Scheme2に従って、本発明の近赤外光吸収色素前駆体をCompound Aと反応させることでアニオンを交換し、本発明のアニオン構造を有する近赤外光吸収色素化合物へと導くことができる。イオン交換反応に当たって、M+はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである方が合成上好ましい。イオン交換反応については、例えば特開2007−145797号公報などに詳しい。Compound Aの合成法については、例えば特開2007−145797号公報や特開2009−258695号公報を参考にすることができる。例えば、A1がトリフルオロメチル基の場合には、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールといった比較的安価な材料を用いて、簡便な有機化学的手法により合成することができるため、実用的である。
【0052】
本発明において使用される近赤外光吸収膜形成材料は、本発明の構造に該当する近赤外光吸収色素化合物を2種以上加えてもよいし、他の近赤外光吸収色素化合物を1種以上加えてもよい。
【0053】
本発明の構造以外で示される近赤外光吸収色素化合物としては、波長500〜1,200nmの光を吸収するものであればいずれのものでもよい。かかる近赤外光吸収色素化合物として下記一般式(12)〜(14)で示される構造を例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化32】
上記一般式(12)〜(14)中、Xa-は陰イオンであればよく、具体的には、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロプロピルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のメチド酸、BF4-、PF6-、ClO4-、NO3-、SbF6-等の無機酸の共役塩基が例示される。好ましいXa-としては、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸の共役塩基、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド酸の共役塩基が挙げられる。R44、R55、R66はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−O2CR1a、−CO2R1a、−N(R1a)2を示す。c1、c2、c3はそれぞれ独立に0〜5の整数である。R77、R88、R99、R110はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−O2CR1a、−CO2R1a、−N(R1a)2を示す。d1、d2、d3、d4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。R111、R112、R113、R114はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−O2CR1a、−CO2R1a、−N(R1a)2を示す。f1、f2、f3、f4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。eは1又は2である。R1aはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基やフッ素原子、シアノ基、水酸基置換アルキル基等の1価炭化水素基である。
【0054】
上記一般式(12)〜(14)で示される近赤外光吸収色素化合物の陽イオンの構造として具体的には下記の構造を例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化33】
【0055】
【化34】
【0056】
近赤外光吸収色素化合物は、市販のものをそのまま使用することができる。また、それらを前駆体とした誘導体を用いることができるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0057】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料における近赤外光吸収色素化合物の配合量は、固形分全体100部(質量部、以下同じ)に対して20〜100部が好ましく、特に40〜100部とすることが望ましい。
【0058】
(B)溶剤
本発明の近赤外光吸収膜形成材料には溶剤1種以上が含まれるが、使用可能な有機溶剤としては、前記の近赤外光吸収色素化合物、高分子化合物、熱酸発生剤、架橋剤、界面活性剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。その具体例を列挙すると、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル及びラクトン類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できるが、これらに限定されるものではない。本発明の近赤外光吸収膜形成材料においては、これら有機溶剤の中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0059】
有機溶剤の配合量は、全固形分100部に対して900〜20,000部が好ましく、特に1,000〜15,000部とすることが好ましい。
【0060】
(C)高分子化合物
光学フィルターの作製、半導体素子の製造における光オートフォーカスの精度向上用反射防止膜、近赤外光感応性インクなどを始めとして、本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、多くの場合高分子化合物1種以上が含まれる。用いる高分子化合物としては種々の高分子化合物が使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリアセチレン、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリフッ化ビニル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン等のポリビニル化合物、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素を含む樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリペプチド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。更に、これらの樹脂はその構造中種々の官能基を有していてもよく、例えば、p−ヒドロキシスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロロスチレン、p−カルボキシスチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の置換スチレン化合物の重合体、p−アセトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−メトキシメトキシスチレン、p−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン等のp−ヒドロキシスチレン水酸基置換化合物の重合体、p−メトキシカルボニルスチレン、p−t−ブトキシカルボニルスチレン等のp−カルボキシルスチレンカルボン酸基置換化合物の重合体、インデン、アセナフチレン、ビニルナフタレン、ヒドロキシビニルナフタレン、メトキシビニルナフタレン等の芳香族基含有ビニル化合物の重合体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステルの重合体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、9−ヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、11−ヒドロキシウンデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシドデシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの重合体、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル(メタ)アクリレート、アダマンタン−1−イル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの重合体、パントイルラクトン(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類含有(メタ)アクリル酸エステルの重合体、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルメタクリレート等の不飽和モノカルボン酸化合物の重合体、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸化合物あるいはそれらの無水物の重合体、5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の多環式不飽和カルボン酸化合物の重合体、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の多環式不飽和ジカルボン酸化合物あるいはその無水物の重合体、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等のオキシラニル基含有(メタ)アクリル酸エステルの重合体、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル等のオキシラニル基含有α−アルキルアクリル酸エステル化合物の重合体、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物の重合体、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、2−エチル−3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−メチル−2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−メチル−2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、4−メチル−2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−3−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−メチルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−4−メチルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−3−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−4−フェニルオキセタン等のオキセタニル基含有(メタ)アクリル酸エステルの重合体等が挙げられ、また上記例を組み合わせた共重合体も挙げられる。
【0061】
エポキシ樹脂としては、種々の市販品が扱える。例えば、エピコート1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート807(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピコート152、同154、同157S65(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、EOCN102、同103S、同104S、1020、1025、1027(以上、日本化薬(株)製)、エピコート180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピコート1032H60、同XY−4000(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)等のポリフェノール型エポキシ樹脂、CY−175、同177、同179、アラルダイトCY−182、同192、184(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ERL−4234、4299、4221、4206(以上、U.C.C社製)、ショーダイン509(昭和電工(株)製)、エピクロン200、同400(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、エピコート871、同872(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、同5662(以上、セラニーズコーティング社製)等の環状脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0062】
上記(C)の高分子化合物において、各繰り返し単位の好ましい含有割合としては、例えば、下記<1>〜<3>に示すようにそれぞれ含有できるが、この範囲に限定されるものではない。
<1>芳香環を含む繰り返し単位を合計で10〜100モル%、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%。
<2>架橋反応を起こす繰り返し単位を合計で0〜90モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜60モル%。
<3>その他の繰り返し単位を合計で0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%。
なお、これら<1>〜<3>の合計は100モル%である。
【0063】
本発明で使用される高分子化合物のもととなる単量体は、市販のものをそのまま使用できるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0064】
本発明で使用される高分子化合物を製造する重合反応は種々例示することができるが、好ましくはラジカル重合である。
【0065】
ラジカル重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤を1種以上用い、(イ)重合開始剤としては公知のラジカル重合開始剤、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を1種以上用い、(ウ)分子量調整の必要に応じてラジカル連鎖移動剤、例えば1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、4−メルカプト−1−ブタノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、1−チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸等のチオール化合物を1種以上用い、(エ)反応温度を0〜140℃程度に保ち、(オ)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、これらの範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0066】
なお、本発明で使用される高分子化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定した場合、1,000〜200,000、好ましくは2,000〜180,000である。分子量が高すぎる場合には、溶剤にポリマーが溶けない、あるいは溶剤に溶けた場合でも成膜性が悪く、ウエハー全面に均一な厚さの膜を形成することができないことがある。また、パターン形成された基板上に成膜する際、パターンを空隙無く満たすことができないという問題が発生する場合がある。一方、分子量が低すぎる場合、形成した膜の直上に他の膜を成膜する際に膜の一部が洗い流され膜厚が減ることがある。
【0067】
ここで、本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、
(A)上記一般式(1)で示される近赤外光吸収色素化合物、
(B)溶剤、
(C)高分子化合物
を含有し、必要により
(D)酸発生剤、
(E)架橋剤、
更に必要により
(F)界面活性剤
を含有する。
【0068】
(D)酸発生剤
本発明の近赤外光吸収膜形成材料には、熱などによる架橋反応を更に促進させ、硬化性に優れた膜を形成するために酸発生剤を添加してもよい。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するもの(熱酸発生剤)や、光照射によって酸を発生するもの(光酸発生剤)があり、いずれのものも添加することができるが、特に熱酸発生剤が好ましい。
【0069】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料で使用される酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾメタン類などが挙げられるが、種々用いることができる。これらの酸発生剤については、例えば特開2008−83668号公報などに詳しい。
【0070】
特に、ノナフルオロブタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−メトキシフェニルメチル)ジメチルフェニルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等、α位がフルオロ置換されたスルホネートを陰イオンとするオニウム塩が好ましく用いられる。
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
酸発生剤の添加量は、近赤外光吸収膜形成材料固形分の合計を100部として好ましくは0.1〜50部、より好ましくは0.5〜40部である。0.1部以上であれば酸発生量が十分で、十分な架橋反応が起こり、50部以下であれば膜外への酸が溶出するおそれが少ない。
【0072】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、架橋性基を有する樹脂、架橋剤及び酸発生剤を含んでもよく、これはベーク時の架橋反応により硬化膜を形成させることを目的としているが、その際により架橋能を向上させるために酸発生剤のアニオン部としては強酸の共役塩基が好ましく用いられる。従って近赤外光吸収色素化合物のアニオンが弱酸の共役塩基、例えば塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、トシレート等であった場合には、酸発生剤のアニオンと交換反応を起こしてしまい、酸発生剤が所望の機能を発現しない可能性がある。これは、強酸の共役塩基がオニウムカチオンとイオン対を形成し易いという現象に起因する。ゆえに近赤外光吸収色素化合物のアニオンは、本発明のα,α−ジフルオロスルホネートアニオンのように、使用する酸発生剤と同程度かあるいはそれ以上となる強酸の共役塩基であることが好ましい。
【0073】
ここで、本発明の近赤外光吸収色素化合物のアニオン構造は、スルホネートのα位がフルオロ置換されており、即ちこれは強酸の共役塩基であることを示している。従って、本発明の近赤外光吸収色素化合物は酸発生剤のアニオンと交換反応を起こすことはなく、酸発生剤の機能を低下させることはない。
また、ヘキサフルオロアンチモネートや、テトラフルオロボレートといった無機アニオンも強酸の共役塩基であるが、これらをアニオンとして有した近赤外光吸収色素化合物は、該アニオン由来の金属不純物が半導体製造工程の途中において性能に影響を及ぼす可能性が考えられるために好ましくない。更に、ノナフルオロブタンスルホネートのような過フッ素化アルキル化合物は、強酸性アニオンであるものの、C−F結合に由来する安定性(非分解性)や疎水性、親油性に由来する生態濃縮性、蓄積性が問題となっており、使用は望ましくない。ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸の共役塩基は、本発明の近赤外光吸収色素化合物が有するアニオン以上の強酸の共役塩基であるが、これらは溶剤溶解性が不足しており、実使用に耐えない。一方、本発明の近赤外光吸収色素化合物は溶剤溶解性が良好でかつこれを用いた近赤外光吸収膜形成材料は、膜形成後に十分な硬化性を得ることができる。従って、本発明の近赤外光吸収色素化合物は光学フィルターや半導体素子製造プロセスにおける光オートフォーカス精度向上用反射防止膜など、様々な用途で適用可能となる。また、本発明の近赤外光吸収色素化合物はそのアニオン構造にフッ素原子を有しているが、上記一般式(1)におけるR0が水酸基である場合には、低分子量で低蓄積性のフッ素化合物であるため、人体及び環境への悪影響は少ないと考えられる。また、R0がOC(=O)−R’である場合においても、アルカリ加水分解によってR0が水酸基である場合と同一の化合物となり、同様の理由で人体及び環境への悪影響は少ないと考えられる。また、これらの分解物は燃焼による廃棄の際もフッ素置換率が低いため、燃焼性が高い。
【0074】
(E)架橋剤
本発明の近赤外光吸収膜形成材料には、架橋剤を添加することが好ましい。本発明の材料を用いて、例えば半導体素子製造プロセスにおける光オートフォーカス精度向上用反射防止膜として適用する場合、他の積層膜、例えばレジスト上層膜とのインターミキシングがないこと、低分子成分の拡散がないこと、成膜後のリンス処理工程に対する耐性を有すること等が挙げられる。これらの目的を達成するために、本発明の近赤外光吸収膜をスピンコート法などで基板に形成後、ベークで熱架橋し、硬化膜を作製するという方法が適用できる。そのため、近赤外光吸収膜形成用材料の成分として架橋剤を添加する方法及びポリマーに架橋性の置換基を導入する方法がある。
【0075】
本発明で使用可能な添加型の架橋剤の具体例を列挙すると、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物等を挙げることができる。また、酸無水物、オキサゾリン化合物、複数のヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。具体的には、特開2009−98639号公報で挙げられている架橋剤を挙げることができる。
特に、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がメトキシメチル化した化合物、又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が好ましく用いられる。
【0076】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料における架橋剤の配合量は、全固形分100部に対して0〜50部が好ましく、特に1〜40部が好ましい。架橋剤は膜の硬化に有効ではあるが、50部を超えると成膜時に膜外にアウトガスとして放出されて露光装置を汚染するおそれがある。なお、上記架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
(F)界面活性剤
本発明の近赤外光吸収膜形成材料には、界面活性剤を添加することができる。本発明で使用される(F)成分の界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352((株)ジェムコ製)、メガファックF171,F172,F173,R08,R30(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−430,FC−431,FC−4430,FC−4432(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子(株)製)、サーフィノールE1004(日信化学工業(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業(株)製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)が挙げられ、また、下記(surf−1)の部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤も好ましく用いられる。
【化35】
上記(surf−1)中、Rは2〜4価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には2価のものとしてエチレン、1,4−ブチレン、1,2−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,5−ペンチレンが挙げられ、3又は4価のものとしては、下記のものが挙げられる。
【化36】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又はペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)これらの中で好ましく用いられるのは、1,4−ブチレン又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレンである。
Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。m’は0〜3の整数、n’は1〜4の整数であり、m’とn’の和はRの価数を示し、2〜4の整数である。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくはBは4〜20の整数を示し、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5650483号明細書などに詳しい。
上記界面活性剤の中でもFC−4430、サーフロンS−381、サーフィノールE1004、KH−20、KH−30、及び上記構造式にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0078】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料中の界面活性剤の添加量としては、全固形分100部に対して2部以下、好ましくは1部以下である。配合する場合は0.01部以上が好ましい。
【0079】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料を塗布することにより形成される膜は、波長500〜1,200nm、特に800〜1,200nmの光を吸収する色素を含有し、該波長領域の近赤外光を吸収する膜として機能する。
【0080】
本発明の近赤外光吸収膜の形成方法について説明する。本発明の近赤外光吸収膜は、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法で基板上に形成することが可能であり、特にスピンコート法は、均一かつ簡便に成膜できることから好ましい。スピンコート法は、例えば半導体製造プロセスにおいて使用されるフォトレジスト膜の成膜法として汎用に用いられている。本発明の近赤外光吸収膜形成材料は溶剤溶解性に優れているため、スピンコート法による成膜によって均一な膜を形成することが可能である。
【実施例】
【0081】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0082】
[合成例1−1]3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−A)
【化37】
3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=ヘキサフルオロアンチモネート5.0g(5ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム2.5g(7.5ミリモル)、水40g、メチルイソブチルケトン40gの混合溶液を室温で7時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層に1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム0.8g(2.5ミリモル)、水40gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶5.1g(収率95%)]。
【0083】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図1及び図2に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm-1)
2961、2931、1757、1532、1500、1460、1441、1430、1416、1386、1350、1271、1224、1162、1093、1010、958、914、889、830、784、746、722、677、638、588cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+759(C51H55N2O2S相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0084】
[合成例1−2]2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートの合成(Dye−B)
【化38】
2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=ブロミド1.7g(2ミリモル)、ベンジルトリメチルアンモニウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート1.1g(3.0ミリモル)、水25g、メチルイソブチルケトン30gの混合溶液を室温で6時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層にベンジルトリメチルアンモニウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート0.8g(2.0ミリモル)、水30gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートを得た[茶色結晶1.4g(収率64%)]。
【0085】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図3及び図4に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
1536、1514、1452、1441、1429、1385、1356、1238、1140、1121、1099、1061、1010、916、875、859、825、783、748、723、674、640、556cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+749(C47H47N2O4S相当)
NEGATIVE M-228(C3H2F5O4S相当)
【0086】
[合成例1−3]2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートの合成(Dye−C)
【化39】
2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=ブロミド1.7g(2ミリモル)、2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホン酸水溶液4.8g(3ミリモル)、水30g、メチルイソブチルケトン30gの混合溶液を室温で8時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層に2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホン酸水溶液1.6g(1ミリモル)、水30gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートを得た[茶色結晶2.2g(収率92%)]。
【0087】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図5及び図6に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2905、1754、1536、1515、1441、1429、1384、1356、1238、1141、1124、1100、1063、1011、916、878、861、828、786、750、724、675、641、558cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+749(C47H47N2O4S相当)
NEGATIVE M-390(C14H16F5O5S相当)
【0088】
[合成例1−4]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートの合成(Dye−D)
【化40】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=クロリド0.75g(1ミリモル)、ベンジルトリメチルアンモニウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート0.57g(1.5ミリモル)、水15g、メチルイソブチルケトン15gの混合溶液を室温で8時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層にベンジルトリメチルアンモニウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート0.19g(0.5ミリモル)、水15gを加えて7時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートを得た[茶色結晶0.92g(収率98%)]。
【0089】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図7及び図8に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2954、2871、1579、1537、1508、1489、1457、1441、1426、1389、1365、1235、1226、1198、1174、1125、1064、1035、983、951、910、858、818、801、762、735、688、637、554cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+711(C51H55N2O相当)
NEGATIVE M-228(C3H2F5O4S相当)
【0090】
[合成例1−5]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートの合成(Dye−E)
【化41】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=ヘキサフルオロアンチモネート9.5g(10ミリモル)、2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液24.2g(15ミリモル)、水250g、メチルイソブチルケトン250gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層に2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液8.1g(5ミリモル)、水250gを加えて9時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートを得た[茶色結晶11.3g(収率99%)]。
【0091】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図9及び図10に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2906、1753、1578、1540、1508、1489、1456、1425、1387、1365、1335、1266、1199、1175、1127、1073、1034、982、950、907、860、818、801、763、734、685、639、553cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+711(C51H55N2O相当)
NEGATIVE M-390(C14H16F5O5S相当)
【0092】
[合成例1−6]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−F)
【化42】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=ヘキサフルオロアンチモネート4.7g(5ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液15.3g(7.5ミリモル)、水100g、メチルイソブチルケトン100gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層に1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液5.1g(2.5ミリモル)、水100gを加えて5時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶4.6g(収率90%)]。
【0093】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図11及び図12に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2958、2872、1758、1579、1539、1508、1489、1458、1425、1387、1363、1336、1318、1226、1199、1176、1125、1076、1036、983、950、911、861、819、802、765、736、687、640、554cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+711(C51H55N2O相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0094】
[合成例1−7]1−ブチル−2−[7−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)へプタ−1,3,5−トリエン−1−イル]−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−G)
【化43】
1−ブチル−2−[7−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)へプタ−1,3,5−トリエン−1−イル]−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=パークロレート1.2g(2ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液6.1g(3ミリモル)、水10g、塩化メチレン25gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、メチルイソブチルケトンを加えて減圧濃縮を行った。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った後、減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−[7−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)へプタ−1,3,5−トリエン−1−イル]−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶2.0g(収率93%)]。
【0095】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図13及び図14に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2959、2872、1758、1580、1510、1490、1444、1417、1397、1367、1343、1303、1268、1251、1230、1191、1121、1062、1034、950、912、819、802、767、699、640cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+509(C37H37N2相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0096】
[合成例1−8]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(N,N−ジフェニルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−H)
【化44】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(N,N−ジフェニルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=パークロレート0.80g(1ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液3.1g(1.5ミリモル)、水16g、メチルイソブチルケトン16gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(N,N−ジフェニルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶0.88g(収率86%)]。
【0097】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図15及び図16に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3474、1758、1581、1546、1507、1489、1455、1434、1377、1334、1253、1227、1193、1164、1133、1075、1036、891、831、801、763、696、674、640cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+702(C51H48N3相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0098】
[合成例1−9]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−フェニルシクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−I)
【化45】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−フェニルシクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=テトラフルオロボレート2.1g(3ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液9.1g(4.5ミリモル)、水20g、塩化メチレン50gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、メチルイソブチルケトンを加えて減圧濃縮を行い、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−フェニルシクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶2.6g(収率93%)]。
【0099】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図17及び図18に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3441、2933、1758、1633、1578、1540、1490、1443、1428、1388、1361、1336、1252、1228、1214、1126、1081、1063、1034、952、910、859、819、801、762、709、686、640、545cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+625(C46H45N2相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0100】
[合成例1−10]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−4−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−R)
【化46】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−4−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=テトラフルオロボレート1.1g(2ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液6.1g(3ミリモル)、水15g、メチルイソブチルケトン20gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−4−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶1.2g(収率59%)]。
【0101】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図19及び図20に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3437、2959、2873、1759、1634、1579、1540、1509、1490、1458、1437、1390、1363、1337、1253、1231、1191、1135、1076、1033、945、914、898、853、819、802、765、732、687、641、551cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+711(C51H55N2O相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0102】
比較例に使用した近赤外光吸収色素化合物(Dye−J〜Q)を、市販のものを入手あるいは上記合成例と同様の手法にて合成した。各化合物の構造を下記に示す。
【化47】
【0103】
[合成例2−1]高分子化合物1の合成(Polymer1)
窒素雰囲気としたフラスコに13.07gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチル=メタクリレート、6.93gのスチレン、0.920gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液1を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液1を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA16.67gで希釈し、この溶液を撹拌した32gの水/288gのメタノールの混合溶媒に滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物1)を18.07g得た。収率は90%であった。得られた高分子化合物の溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いたGPCによる重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で14,300、分散度(Mw/Mn)は2.73であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル=メタクリレート由来の単位/スチレン由来の単位=52/48モル%であった。
【0104】
[合成例2−2]高分子化合物2の合成(Polymer2)
窒素雰囲気としたフラスコに、11.26gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、8.74gのアセナフチレン、0.793gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液2を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液2を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA30.00gで希釈し、この溶液を撹拌した320gのメタノールに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物2)を18.16g得た。収率は91%であった。得られた高分子化合物の溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いたGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で12,300、分散度(Mw/Mn)は2.01であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート由来の単位/アセナフチレン由来の単位=51/49モル%であった。
【0105】
高分子化合物3(Polymer3)として、シグマアルドリッチよりポリヒドロキシスチレンポリマーを購入した。GPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で11,000であった。
【0106】
[実施例及び比較例]
近赤外光吸収膜形成材料の調製:
本発明及び比較例用の近赤外光吸収色素化合物、高分子化合物、酸発生剤、架橋剤、界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)及び溶剤を混合して塗布液を調製した後、195℃で60秒間ベークして塗布膜を形成した。各組成及び成膜性の結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1中、略号で示した酸発生剤、架橋剤、溶剤は下記の通りである。
AG1:トリエチルアンモニウムノナフレート
XL1:1,3,4,6−テトラメトキシメチルグリコールウリル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0109】
表1中、比較例で示される組成はいずれも溶剤溶解性が低く、成膜不良、即ち膜中に不溶分が存在し、均一に成膜することができなかった。一方、実施例1−1〜1−11では、近赤外光吸収膜形成材料の溶剤溶解性が十分であり、均一に成膜することができた。
【0110】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の新規近赤外光吸収色素化合物を用いた近赤外光吸収膜は、プラズマディスプレイパネル向け等の近赤外光吸収剤を用いた光学フィルターや、赤外線感応性印刷版の開発などに好適である。また、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる近赤外光吸収膜としても有用であると考えられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な近赤外光吸収色素化合物及びこれを用いた近赤外光吸収膜形成材料、更に該材料を用いて形成された近赤外光吸収膜に関する。更に詳述すると、本発明は、近赤外光吸収剤を用いた光学フィルター、また半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる近赤外光吸収色素化合物、該近赤外光吸収色素化合物を用いた近赤外光吸収膜形成材料に関し、更には該材料を用いて形成された近赤外光吸収膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近赤外光吸収色素化合物は電子材料を主として多くの用途に用いられており、その需要はますます拡大している。光学フィルターや熱線吸収フィルター等のフィルター染料、赤外線感応性塗膜を用いた画像形成材料やソルダーレジストへの応用、光重合又は光架橋反応の増感剤、光ディスク等への光記録材料等、その用途は様々であり、多くの分野で有用である。
【0003】
大型薄型テレビにおいて注目されているプラズマディスプレイパネルには、原理上電磁波や近赤外線が必然的に発生し、これを遮断するために電磁波シールドや近赤外線吸収フィルター等を必要としている。これらによって画像不備を改善し、赤外線によるリモコンの誤動作を防ぐ等の効果を得ている。特許文献1:特開2000−81511号公報には、このような光学フィルターとしての用途を目的として近赤外光吸収色素化合物に関して記載されている。
【0004】
CCDカメラに近赤外光吸収フィルターを光学フィルターとして用いることにより、入射する近赤外線を遮断し、その撮影素子の分光感度を視感度に近づけることができる。この目的における光学フィルターとしては、シアニン色素、フタロシアニン化合物、ジイモニウム塩化合物等の近赤外光吸収色素化合物が用いられている。CCDカメラに近赤外光吸収色素化合物を含有した光学フィルターに関しては、例えば特許文献2:特開平11−23837号公報に記載されている。
【0005】
近赤外光吸収色素化合物は不可視印刷用インクにも使用されている。即ち、可視光領域に吸収帯を持たないインクを印刷することによって、情報コードの目視での判別を困難にし、証券類の機密書類を偽造することを防止することができる。これについては、特許文献3:特開平10−60409号公報に記載されている。
【0006】
半導体素子の製造においても、近赤外光吸収色素が適用されている。光リソグラフィーによる微細加工プロセスにおいては、フォトレジスト膜を露光する際、ウエハー表面が投影光学系の最良像面と合致するように、即ちフォーカス合わせが行われるように、センサー近赤外光を用いた光オートフォーカスが行われている。この光オートフォーカスの精度を上げるため、近赤外光吸収色素を含むフォトレジスト膜を用いる方法が提案されている(特許文献4:特開平7−146551号公報)。また、近赤外光吸収色素を含む膜をフォトレジスト膜下へ導入する手法が提案されている(特許文献5:米国特許出願公開第2009/0208865号明細書)。
【0007】
以上のように種々の用途として有用な近赤外光吸収色素化合物であるが、共通の課題としては有機溶剤に対する溶解性が挙げられる。代表的な色素化合物としては、例えばシアニン色素、フタロシアニン系色素、ニッケル等の金属錯体、ジイモニウム塩系化合物等が挙げられるが、これらの材料の多くは一般的に有機溶剤への溶解性が悪い傾向がある。上記に述べた近赤外光吸収材料のほとんどは、近赤外光吸収色素化合物の他に、樹脂や添加剤など有機系をベースとした組成物であり、従って近赤外光吸収色素化合物の対有機溶剤低溶解性は実用性分野を制限することとなる。例えば、プラズマディスプレイパネル用赤外線フィルターには、アニオンとして六フッ化アンチモネートを有するシアニン化合物が使用されており、耐熱性に優れるという利点があるが、溶剤溶解性は高くない。また、近年電子材料分野では特に金属不純物の低減が望まれており、アンチモンのような重金属を含有しない化合物が求められている。特許文献6:国際公開第2006/006573号パンフレットには重金属を含有しない色素化合物についての記載がされているが、これらはメチルエチルケトン等の塗布溶媒に対する溶解性が不十分であった。特許文献7:特開平8−253705号公報にはフッ素化アルキルスルホニルアニオンを有する染料についての記載がなされているが、過フッ素化アルキル化合物はC−F結合に由来する安定性(非分解性)や疎水性、親油性に由来する生態濃縮性、蓄積性が問題となっており、使用は望ましくない。更に、特許文献8:特開2008−88426号公報には、アニオンとしてトリス(トリフルオロメタンアルキルスルホニル)メチドアニオンを用いて溶剤溶解性を改善することに関する記載がされているが、該アニオン材料は高価であり、工業的に実用的とはいえない。
【0008】
より極性の強い溶剤、例えばメタノールやジメチルスルホキシドを用いれば、多くの近赤外光吸収色素化合物を溶解させることは多くの場合において可能である。但し、このような極性の強い溶剤の使用は、時に不均一な成膜を引き起こしたり、あるいは乾燥被膜中に塩として結晶化する等、望ましくない副作用が生じることがある。更に、ジメチルスルホキシドの如き高沸点溶媒では、成膜にあたり溶媒を除去することが困難である。
【0009】
成膜プロセスにおいては、有機溶剤を用いずに近赤外光吸収色素化合物及び他の材料、例えば樹脂等を混練して膜を形成する手法もあるが、該手法では均一な膜を形成しづらい。一方、近赤外光吸収色素含有材料が有機溶剤に溶解すれば、スピンコート法等の成膜技術を用いることによって均一な膜を形成することが容易に可能となる。また、溶液状態で保管することもでき、その取り扱いも容易となることから、近赤外光吸収色素化合物が良好な溶剤溶解性を有することは、成膜プロセスにおいてに大きなアドバンテージとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−81511号公報
【特許文献2】特開平11−23837号公報
【特許文献3】特開平10−60409号公報
【特許文献4】特開平7−146551号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0208865号明細書
【特許文献6】国際公開第2006/006573号パンフレット
【特許文献7】特開平8−253705号公報
【特許文献8】特開2008−88426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、溶剤溶解性が高く、塗布性に優れた近赤外光吸収色素化合物を提供する。また、これを含んだ近赤外光吸収膜を形成するための材料、及びこの材料を用いて形成される近赤外光吸収膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定の構造で示される近赤外光吸収色素化合物を含有した材料が、成膜工程に当たって十分な有機溶剤溶解性及び塗布性を有することを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
即ち、本発明は、下記の近赤外光吸収色素化合物及びこれを含んだ近赤外光吸収膜形成材料、並びに近赤外光吸収膜を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で示されるアニオンを有する近赤外光吸収色素化合物。
【化1】
(式中、A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
請求項2:
下記一般式(2)で示される請求項1に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化2】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R2及びR22はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、R2及びR22は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。R3及びR33はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。A1、R0は上記と同様である。式中の部分構造
【化3】
及び
【化4】
は、それぞれ独立に炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。)
請求項3:
下記一般式(3)で示される請求項2に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化5】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、A1、R0は上記と同様である。R222は水素原子あるいは炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。rは1又は2である。式中の部分構造
【化6】
及び
【化7】
は、上記と同様である。
請求項4:
下記一般式(4)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化8】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
請求項5:
下記一般式(5)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化9】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
請求項6:
下記一般式(6)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化10】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
請求項7:
(A)請求項1乃至6のいずれか1項に記載の近赤外光吸収色素化合物1種以上、及び
(B)溶剤1種以上
を含有することを特徴とする近赤外光吸収膜形成材料。
請求項8:
高分子化合物を1種以上含有することを特徴とする請求項7に記載の近赤外光吸収膜形成材料。
請求項9:
酸発生剤、架橋剤、界面活性剤から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の近赤外光吸収膜形成材料。
請求項10:
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の近赤外光吸収膜形成材料を塗布後、溶剤を蒸発させることにより形成される近赤外光吸収膜。
【発明の効果】
【0014】
本発明の近赤外光吸収色素化合物は、光学特性及び耐熱性に優れているほか、特に溶剤溶解性に優れているので、成膜工程において塗布性及び加工性に優れる。また、本発明の近赤外光吸収色素化合物はその構造中に重金属を含まず、従って半導体素子の製造プロセスにおいても好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】合成例1−1のDye−Aの1H−NMR/DMSO−d6をした図である。
【図2】合成例1−1のDye−Aの19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図3】合成例1−2のDye−Bの1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図4】合成例1−2のDye−Bの19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図5】合成例1−3のDye−Cの1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図6】合成例1−3のDye−Cの19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図7】合成例1−4のDye−Dの1H−NMR/CDCl3をした図である。
【図8】合成例1−4のDye−Dの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図9】合成例1−5のDye−Eの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図10】合成例1−5のDye−Eの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図11】合成例1−6のDye−Fの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図12】合成例1−6のDye−Fの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図13】合成例1−7のDye−Gの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図14】合成例1−7のDye−Gの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図15】合成例1−8のDye−Hの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図16】合成例1−8のDye−Hの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図17】合成例1−9のDye−Iの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図18】合成例1−9のDye−Iの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【図19】合成例1−10のDye−Rの1H−NMR/CDCl3を示した図である。
【図20】合成例1−10のDye−Rの19F−NMR/CDCl3を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(A)近赤外光吸収色素化合物
本発明の近赤外光吸収色素化合物は、下記一般式(1)で示されるアニオンを有することを特徴とする。
【化11】
(式中、A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0017】
上記一般式(1)中、R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の1価炭化水素基を示す。
【0018】
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ステロイド構造含有基、イソプロペニル基、ビニル基等のアルキル基、アルケニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、10−アントラニル基、2−フラニル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。
【0019】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の特徴の一つとして、上記一般式(1)中のR0を種々振ってアニオン部の構造を容易に改変できることが挙げられる。例えば、R0に鎖状あるいは分岐状アルキル基を導入することにより、成膜時の溶剤溶解性をより向上させることができる。R0に環状の置換基を導入して剛直な構造とすることにより、溶剤溶解性を維持しつつ結晶性に優れた色素化合物とすることができる。R0に芳香族置換基を導入することにより、近赤外光吸収膜のn/k値を調整して、リソグラフィー工程に好適な反射防止膜を得ることができる。R0が水酸基であり、かつ他の近赤外光吸収材料に架橋剤が含有されていれば、成膜工程において硬化性に優れた近赤外光吸収膜を得ることができる。
【0020】
上記例示中、アニオン構造としては、R0が水酸基の場合、あるいはR0が−OC(=O)−R’でR’がn−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、アダマンチル基の場合が、製造、コストの点から特に好ましい。
【0021】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の具体的なアニオン部の構造としては、下記に示すものが例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化12】
【0022】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の好ましい構造としては、下記一般式(2)で示されるものが挙げられる。
【化13】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R2及びR22はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、R2及びR22は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。R3及びR33はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。A1、R0は上記と同様である。式中の部分構造
【化14】
及び
【化15】
は、それぞれ独立に炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。)
【0023】
上記一般式(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。
【0024】
R1として具体的には、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基が挙げられ、直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、5−メチルへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。ヘテロ原子が含まれる炭化水素基として、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、あるいはこれらのアルコキシ基やアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、カルボニル基を置換基として有する上記炭化水素基、水酸基を置換基として有する上記炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルオキシカルボニル基、あるいはこれらのエステル結合含有置換基を有する上記炭化水素基、カルボキシル基を置換基として有する上記炭化水素基、スルホン酸を置換基として有する上記炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有する上記炭化水素基、フェニルスルホニル基、あるいはこれを置換基として有する上記炭化水素基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアルキルアミノ基、アリールアミノ基、あるいはこれらを置換基として有する上記炭化水素基、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオフェノキシ基、あるいはこれらのチオアルコキシ基やチオアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、更には、前記例示のうち二以上の置換基を組み合わせてなる炭化水素基等が挙げられる。
【0025】
R2及びR22はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、R2及びR22は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環、特に非芳香環を形成してもよい。
【0026】
R2及びR22として具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、R2及びR22が相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成する場合には、5員環あるいは6員環を形成する場合が特に好ましい。また、その際に形成された環構造中の水素原子の一部が直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基で置換されていてもよい。
【0027】
R3及びR33はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。
【0028】
R3及びR33として具体的には、直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、5−メチルへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。ヘテロ原子が含まれる炭化水素基として、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基やアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、カルボニル基を置換基として有する上記炭化水素基、水酸基を置換基として有する上記炭化水素基、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルオキシカルボニル基等のエステル結合含有置換基を有する上記炭化水素基、カルボキシル基を置換基として有する上記炭化水素基、スルホン酸を置換基として有する上記炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有する上記炭化水素基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基を置換基として有する上記炭化水素基、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオフェノキシ基等のチオアルコキシ基やチオアリールオキシ基を置換基として有する上記炭化水素基、更には、前記例示のうち二以上の置換基を組み合わせてなる炭化水素基等が挙げられる。
【0029】
a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。これらが変わる、即ち共役系の長さが変わることで、近赤外光吸収色素化合物の吸収波長に影響する。本発明の用途に好適な波長及び原料入手容易性の観点から、好ましいa1及びa2としては0〜2、より好ましくは1あるいは2が特に望ましい。
【0030】
上記一般式(2)中の部分構造
【化16】
は、炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。
【0031】
上記部分構造は、具体的には下記一般式(7)〜(11)のいずれか一種の部分構造で示される。
【化17】
(式中、R4はハロゲン原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、又は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基を示す。pは0〜4の整数を示す。Zは酸素原子、硫黄原子、又は−C(RZ)2−を示し、RZは水素原子又は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基を示す。)
【0032】
R4として具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ニトロ基、炭素数1〜10の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0033】
pは0〜4の整数を示す。原料入手性からpは0〜2、より好ましくは0あるいは1である。
【0034】
RZとして具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0035】
上記一般式(2)中の部分構造
【化18】
は、炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。
【0036】
上記部分構造は、具体的には下記一般式(7’)〜(11’)のいずれか一種の部分構造で示される。
【化19】
(式中、R4、p、Zは上記と同様である。)
【0037】
本発明の近赤外光吸収色素化合物としてより好ましくは、下記一般式(3)で示される。
【化20】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、A1、R0は上記と同様である。R222は水素原子あるいは炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。rは1又は2である。式中の部分構造
【化21】
及び
【化22】
は、上記と同様である。
【0038】
上記一般式(3)中、R222は水素原子あるいは炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。上記1価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、t−アミル基、シクロペンチル基等を挙げることができ、好ましくは水素原子、メチル基あるいはエチル基である。
【0039】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の更に好ましい構造としては、下記一般式(4)〜(6)のいずれか一種で示される。
【化23】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
【0040】
上記一般式(4)〜(6)で示される近赤外光吸収色素化合物は、優れた耐熱性、耐光性を有し、また光学フィルターや半導体素子といった本発明の用途において適度な吸収領域を有するため、特に好ましい。
【0041】
本発明の近赤外光吸収色素化合物の具体的なカチオン部の構造としては、下記に示すものが例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化24】
【0042】
【化25】
【0043】
【化26】
【0044】
【化27】
【0045】
【化28】
【0046】
上記に例示したカチオン部及び前述したアニオン部の組み合わせが、本発明の近赤外光吸収色素化合物として特に好ましい。
【0047】
次に、本発明の近赤外光吸収色素化合物の合成法について説明する。
本発明の近赤外光吸収色素化合物は、例えば下記Scheme1及び2に従って合成される。但し、本発明の近赤外光吸収色素化合物の合成法はこれに限定されるものではない。
【化29】
(式中、R1、R2、R22、R3、A1、R0は前記と同様である。X1-は無機あるいは有機アニオンを示す。M+はカチオンを示す。部分構造
【化30】
及び
【化31】
は、上記と同様である。)
【0048】
上記Scheme1における一段階目の工程は、カチオン部を合成する方法の一例である。これは、例えばJournal of Organic Chemistry 1995,60,2391を参考にすることができる。R1については、市販の原料を使用することもできるし、あるいはR1がクロライド等のハロゲン原子であれば、Scheme1の工程後に種々の有機化学的手法、例えば求核置換反応や、カップリング反応等を駆使して別の置換基に変換することもできる。
【0049】
X1-として具体的には塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハライドイオン、メシレート、トシレート等のスルホン酸の共役塩基、BF4-、PF6-、ClO4-、NO3-、SbF6-等の無機酸の共役塩基が例示される。
【0050】
本発明の近赤外光吸収色素前駆体は、Scheme1に従って調製することも可能であるが、市販品として入手することも可能である。
【0051】
次に、上記Scheme2に従って、本発明の近赤外光吸収色素前駆体をCompound Aと反応させることでアニオンを交換し、本発明のアニオン構造を有する近赤外光吸収色素化合物へと導くことができる。イオン交換反応に当たって、M+はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである方が合成上好ましい。イオン交換反応については、例えば特開2007−145797号公報などに詳しい。Compound Aの合成法については、例えば特開2007−145797号公報や特開2009−258695号公報を参考にすることができる。例えば、A1がトリフルオロメチル基の場合には、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールといった比較的安価な材料を用いて、簡便な有機化学的手法により合成することができるため、実用的である。
【0052】
本発明において使用される近赤外光吸収膜形成材料は、本発明の構造に該当する近赤外光吸収色素化合物を2種以上加えてもよいし、他の近赤外光吸収色素化合物を1種以上加えてもよい。
【0053】
本発明の構造以外で示される近赤外光吸収色素化合物としては、波長500〜1,200nmの光を吸収するものであればいずれのものでもよい。かかる近赤外光吸収色素化合物として下記一般式(12)〜(14)で示される構造を例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化32】
上記一般式(12)〜(14)中、Xa-は陰イオンであればよく、具体的には、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロプロピルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のメチド酸、BF4-、PF6-、ClO4-、NO3-、SbF6-等の無機酸の共役塩基が例示される。好ましいXa-としては、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸の共役塩基、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド酸の共役塩基が挙げられる。R44、R55、R66はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−O2CR1a、−CO2R1a、−N(R1a)2を示す。c1、c2、c3はそれぞれ独立に0〜5の整数である。R77、R88、R99、R110はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−O2CR1a、−CO2R1a、−N(R1a)2を示す。d1、d2、d3、d4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。R111、R112、R113、R114はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、−R1a、−OR1a、−SR1a、−O2CR1a、−CO2R1a、−N(R1a)2を示す。f1、f2、f3、f4はそれぞれ独立に0〜5の整数である。eは1又は2である。R1aはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基やフッ素原子、シアノ基、水酸基置換アルキル基等の1価炭化水素基である。
【0054】
上記一般式(12)〜(14)で示される近赤外光吸収色素化合物の陽イオンの構造として具体的には下記の構造を例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化33】
【0055】
【化34】
【0056】
近赤外光吸収色素化合物は、市販のものをそのまま使用することができる。また、それらを前駆体とした誘導体を用いることができるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0057】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料における近赤外光吸収色素化合物の配合量は、固形分全体100部(質量部、以下同じ)に対して20〜100部が好ましく、特に40〜100部とすることが望ましい。
【0058】
(B)溶剤
本発明の近赤外光吸収膜形成材料には溶剤1種以上が含まれるが、使用可能な有機溶剤としては、前記の近赤外光吸収色素化合物、高分子化合物、熱酸発生剤、架橋剤、界面活性剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。その具体例を列挙すると、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル及びラクトン類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できるが、これらに限定されるものではない。本発明の近赤外光吸収膜形成材料においては、これら有機溶剤の中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0059】
有機溶剤の配合量は、全固形分100部に対して900〜20,000部が好ましく、特に1,000〜15,000部とすることが好ましい。
【0060】
(C)高分子化合物
光学フィルターの作製、半導体素子の製造における光オートフォーカスの精度向上用反射防止膜、近赤外光感応性インクなどを始めとして、本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、多くの場合高分子化合物1種以上が含まれる。用いる高分子化合物としては種々の高分子化合物が使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリアセチレン、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリフッ化ビニル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン等のポリビニル化合物、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素を含む樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリペプチド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。更に、これらの樹脂はその構造中種々の官能基を有していてもよく、例えば、p−ヒドロキシスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロロスチレン、p−カルボキシスチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の置換スチレン化合物の重合体、p−アセトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−メトキシメトキシスチレン、p−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン等のp−ヒドロキシスチレン水酸基置換化合物の重合体、p−メトキシカルボニルスチレン、p−t−ブトキシカルボニルスチレン等のp−カルボキシルスチレンカルボン酸基置換化合物の重合体、インデン、アセナフチレン、ビニルナフタレン、ヒドロキシビニルナフタレン、メトキシビニルナフタレン等の芳香族基含有ビニル化合物の重合体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステルの重合体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、9−ヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、11−ヒドロキシウンデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシドデシル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの重合体、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル(メタ)アクリレート、アダマンタン−1−イル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有ポリ(メタ)アクリル酸エステルの重合体、パントイルラクトン(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類含有(メタ)アクリル酸エステルの重合体、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルメタクリレート等の不飽和モノカルボン酸化合物の重合体、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸化合物あるいはそれらの無水物の重合体、5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の多環式不飽和カルボン酸化合物の重合体、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等の多環式不飽和ジカルボン酸化合物あるいはその無水物の重合体、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等のオキシラニル基含有(メタ)アクリル酸エステルの重合体、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル等のオキシラニル基含有α−アルキルアクリル酸エステル化合物の重合体、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物の重合体、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、2−エチル−3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−メチル−2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−メチル−2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、4−メチル−2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−3−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−メチルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−4−メチルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−3−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−4−フェニルオキセタン等のオキセタニル基含有(メタ)アクリル酸エステルの重合体等が挙げられ、また上記例を組み合わせた共重合体も挙げられる。
【0061】
エポキシ樹脂としては、種々の市販品が扱える。例えば、エピコート1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート807(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピコート152、同154、同157S65(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、EOCN102、同103S、同104S、1020、1025、1027(以上、日本化薬(株)製)、エピコート180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピコート1032H60、同XY−4000(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)等のポリフェノール型エポキシ樹脂、CY−175、同177、同179、アラルダイトCY−182、同192、184(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ERL−4234、4299、4221、4206(以上、U.C.C社製)、ショーダイン509(昭和電工(株)製)、エピクロン200、同400(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、エピコート871、同872(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、同5662(以上、セラニーズコーティング社製)等の環状脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0062】
上記(C)の高分子化合物において、各繰り返し単位の好ましい含有割合としては、例えば、下記<1>〜<3>に示すようにそれぞれ含有できるが、この範囲に限定されるものではない。
<1>芳香環を含む繰り返し単位を合計で10〜100モル%、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%。
<2>架橋反応を起こす繰り返し単位を合計で0〜90モル%、好ましくは0〜70モル%、より好ましくは0〜60モル%。
<3>その他の繰り返し単位を合計で0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%。
なお、これら<1>〜<3>の合計は100モル%である。
【0063】
本発明で使用される高分子化合物のもととなる単量体は、市販のものをそのまま使用できるほか、公知の有機化学的手法を用いて種々製造することができる。
【0064】
本発明で使用される高分子化合物を製造する重合反応は種々例示することができるが、好ましくはラジカル重合である。
【0065】
ラジカル重合反応の反応条件は、(ア)溶剤としてベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤を1種以上用い、(イ)重合開始剤としては公知のラジカル重合開始剤、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物を1種以上用い、(ウ)分子量調整の必要に応じてラジカル連鎖移動剤、例えば1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、4−メルカプト−1−ブタノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、1−チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸等のチオール化合物を1種以上用い、(エ)反応温度を0〜140℃程度に保ち、(オ)反応時間を0.5〜48時間程度とするのが好ましいが、これらの範囲を外れる場合を排除するものではない。
【0066】
なお、本発明で使用される高分子化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定した場合、1,000〜200,000、好ましくは2,000〜180,000である。分子量が高すぎる場合には、溶剤にポリマーが溶けない、あるいは溶剤に溶けた場合でも成膜性が悪く、ウエハー全面に均一な厚さの膜を形成することができないことがある。また、パターン形成された基板上に成膜する際、パターンを空隙無く満たすことができないという問題が発生する場合がある。一方、分子量が低すぎる場合、形成した膜の直上に他の膜を成膜する際に膜の一部が洗い流され膜厚が減ることがある。
【0067】
ここで、本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、
(A)上記一般式(1)で示される近赤外光吸収色素化合物、
(B)溶剤、
(C)高分子化合物
を含有し、必要により
(D)酸発生剤、
(E)架橋剤、
更に必要により
(F)界面活性剤
を含有する。
【0068】
(D)酸発生剤
本発明の近赤外光吸収膜形成材料には、熱などによる架橋反応を更に促進させ、硬化性に優れた膜を形成するために酸発生剤を添加してもよい。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するもの(熱酸発生剤)や、光照射によって酸を発生するもの(光酸発生剤)があり、いずれのものも添加することができるが、特に熱酸発生剤が好ましい。
【0069】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料で使用される酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾメタン類などが挙げられるが、種々用いることができる。これらの酸発生剤については、例えば特開2008−83668号公報などに詳しい。
【0070】
特に、ノナフルオロブタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−メトキシフェニルメチル)ジメチルフェニルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等、α位がフルオロ置換されたスルホネートを陰イオンとするオニウム塩が好ましく用いられる。
なお、上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
酸発生剤の添加量は、近赤外光吸収膜形成材料固形分の合計を100部として好ましくは0.1〜50部、より好ましくは0.5〜40部である。0.1部以上であれば酸発生量が十分で、十分な架橋反応が起こり、50部以下であれば膜外への酸が溶出するおそれが少ない。
【0072】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料は、架橋性基を有する樹脂、架橋剤及び酸発生剤を含んでもよく、これはベーク時の架橋反応により硬化膜を形成させることを目的としているが、その際により架橋能を向上させるために酸発生剤のアニオン部としては強酸の共役塩基が好ましく用いられる。従って近赤外光吸収色素化合物のアニオンが弱酸の共役塩基、例えば塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、トシレート等であった場合には、酸発生剤のアニオンと交換反応を起こしてしまい、酸発生剤が所望の機能を発現しない可能性がある。これは、強酸の共役塩基がオニウムカチオンとイオン対を形成し易いという現象に起因する。ゆえに近赤外光吸収色素化合物のアニオンは、本発明のα,α−ジフルオロスルホネートアニオンのように、使用する酸発生剤と同程度かあるいはそれ以上となる強酸の共役塩基であることが好ましい。
【0073】
ここで、本発明の近赤外光吸収色素化合物のアニオン構造は、スルホネートのα位がフルオロ置換されており、即ちこれは強酸の共役塩基であることを示している。従って、本発明の近赤外光吸収色素化合物は酸発生剤のアニオンと交換反応を起こすことはなく、酸発生剤の機能を低下させることはない。
また、ヘキサフルオロアンチモネートや、テトラフルオロボレートといった無機アニオンも強酸の共役塩基であるが、これらをアニオンとして有した近赤外光吸収色素化合物は、該アニオン由来の金属不純物が半導体製造工程の途中において性能に影響を及ぼす可能性が考えられるために好ましくない。更に、ノナフルオロブタンスルホネートのような過フッ素化アルキル化合物は、強酸性アニオンであるものの、C−F結合に由来する安定性(非分解性)や疎水性、親油性に由来する生態濃縮性、蓄積性が問題となっており、使用は望ましくない。ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸の共役塩基は、本発明の近赤外光吸収色素化合物が有するアニオン以上の強酸の共役塩基であるが、これらは溶剤溶解性が不足しており、実使用に耐えない。一方、本発明の近赤外光吸収色素化合物は溶剤溶解性が良好でかつこれを用いた近赤外光吸収膜形成材料は、膜形成後に十分な硬化性を得ることができる。従って、本発明の近赤外光吸収色素化合物は光学フィルターや半導体素子製造プロセスにおける光オートフォーカス精度向上用反射防止膜など、様々な用途で適用可能となる。また、本発明の近赤外光吸収色素化合物はそのアニオン構造にフッ素原子を有しているが、上記一般式(1)におけるR0が水酸基である場合には、低分子量で低蓄積性のフッ素化合物であるため、人体及び環境への悪影響は少ないと考えられる。また、R0がOC(=O)−R’である場合においても、アルカリ加水分解によってR0が水酸基である場合と同一の化合物となり、同様の理由で人体及び環境への悪影響は少ないと考えられる。また、これらの分解物は燃焼による廃棄の際もフッ素置換率が低いため、燃焼性が高い。
【0074】
(E)架橋剤
本発明の近赤外光吸収膜形成材料には、架橋剤を添加することが好ましい。本発明の材料を用いて、例えば半導体素子製造プロセスにおける光オートフォーカス精度向上用反射防止膜として適用する場合、他の積層膜、例えばレジスト上層膜とのインターミキシングがないこと、低分子成分の拡散がないこと、成膜後のリンス処理工程に対する耐性を有すること等が挙げられる。これらの目的を達成するために、本発明の近赤外光吸収膜をスピンコート法などで基板に形成後、ベークで熱架橋し、硬化膜を作製するという方法が適用できる。そのため、近赤外光吸収膜形成用材料の成分として架橋剤を添加する方法及びポリマーに架橋性の置換基を導入する方法がある。
【0075】
本発明で使用可能な添加型の架橋剤の具体例を列挙すると、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基等の2重結合を含む化合物等を挙げることができる。また、酸無水物、オキサゾリン化合物、複数のヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。具体的には、特開2009−98639号公報で挙げられている架橋剤を挙げることができる。
特に、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がメトキシメチル化した化合物、又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1〜4個がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が好ましく用いられる。
【0076】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料における架橋剤の配合量は、全固形分100部に対して0〜50部が好ましく、特に1〜40部が好ましい。架橋剤は膜の硬化に有効ではあるが、50部を超えると成膜時に膜外にアウトガスとして放出されて露光装置を汚染するおそれがある。なお、上記架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
(F)界面活性剤
本発明の近赤外光吸収膜形成材料には、界面活性剤を添加することができる。本発明で使用される(F)成分の界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352((株)ジェムコ製)、メガファックF171,F172,F173,R08,R30(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−430,FC−431,FC−4430,FC−4432(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子(株)製)、サーフィノールE1004(日信化学工業(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業(株)製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)が挙げられ、また、下記(surf−1)の部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤も好ましく用いられる。
【化35】
上記(surf−1)中、Rは2〜4価の炭素数2〜5の脂肪族基を示し、具体的には2価のものとしてエチレン、1,4−ブチレン、1,2−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,5−ペンチレンが挙げられ、3又は4価のものとしては、下記のものが挙げられる。
【化36】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又はペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)これらの中で好ましく用いられるのは、1,4−ブチレン又は2,2−ジメチル−1,3−プロピレンである。
Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。m’は0〜3の整数、n’は1〜4の整数であり、m’とn’の和はRの価数を示し、2〜4の整数である。Aは1、Bは2〜25の整数、Cは0〜10の整数を示す。好ましくはBは4〜20の整数を示し、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5650483号明細書などに詳しい。
上記界面活性剤の中でもFC−4430、サーフロンS−381、サーフィノールE1004、KH−20、KH−30、及び上記構造式にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0078】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料中の界面活性剤の添加量としては、全固形分100部に対して2部以下、好ましくは1部以下である。配合する場合は0.01部以上が好ましい。
【0079】
本発明の近赤外光吸収膜形成材料を塗布することにより形成される膜は、波長500〜1,200nm、特に800〜1,200nmの光を吸収する色素を含有し、該波長領域の近赤外光を吸収する膜として機能する。
【0080】
本発明の近赤外光吸収膜の形成方法について説明する。本発明の近赤外光吸収膜は、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法で基板上に形成することが可能であり、特にスピンコート法は、均一かつ簡便に成膜できることから好ましい。スピンコート法は、例えば半導体製造プロセスにおいて使用されるフォトレジスト膜の成膜法として汎用に用いられている。本発明の近赤外光吸収膜形成材料は溶剤溶解性に優れているため、スピンコート法による成膜によって均一な膜を形成することが可能である。
【実施例】
【0081】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0082】
[合成例1−1]3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−A)
【化37】
3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=ヘキサフルオロアンチモネート5.0g(5ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム2.5g(7.5ミリモル)、水40g、メチルイソブチルケトン40gの混合溶液を室温で7時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層に1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム0.8g(2.5ミリモル)、水40gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である3−ブチル−2−(2−{3−[2−(3−ブチル−1,1−ジメチル−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶5.1g(収率95%)]。
【0083】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図1及び図2に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(D−ATR);cm-1)
2961、2931、1757、1532、1500、1460、1441、1430、1416、1386、1350、1271、1224、1162、1093、1010、958、914、889、830、784、746、722、677、638、588cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+759(C51H55N2O2S相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0084】
[合成例1−2]2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートの合成(Dye−B)
【化38】
2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=ブロミド1.7g(2ミリモル)、ベンジルトリメチルアンモニウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート1.1g(3.0ミリモル)、水25g、メチルイソブチルケトン30gの混合溶液を室温で6時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層にベンジルトリメチルアンモニウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート0.8g(2.0ミリモル)、水30gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートを得た[茶色結晶1.4g(収率64%)]。
【0085】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図3及び図4に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
1536、1514、1452、1441、1429、1385、1356、1238、1140、1121、1099、1061、1010、916、875、859、825、783、748、723、674、640、556cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+749(C47H47N2O4S相当)
NEGATIVE M-228(C3H2F5O4S相当)
【0086】
[合成例1−3]2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートの合成(Dye−C)
【化39】
2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=ブロミド1.7g(2ミリモル)、2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホン酸水溶液4.8g(3ミリモル)、水30g、メチルイソブチルケトン30gの混合溶液を室温で8時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層に2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホン酸水溶液1.6g(1ミリモル)、水30gを加えて一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である2−(2−{3−[2−(1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジヒドロベンゾ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(フェニルスルホニル)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−1,1−ジメチル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1H−ベンゾ[e]インドール−1−イウム=2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートを得た[茶色結晶2.2g(収率92%)]。
【0087】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図5及び図6に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2905、1754、1536、1515、1441、1429、1384、1356、1238、1141、1124、1100、1063、1011、916、878、861、828、786、750、724、675、641、558cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+749(C47H47N2O4S相当)
NEGATIVE M-390(C14H16F5O5S相当)
【0088】
[合成例1−4]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートの合成(Dye−D)
【化40】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=クロリド0.75g(1ミリモル)、ベンジルトリメチルアンモニウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート0.57g(1.5ミリモル)、水15g、メチルイソブチルケトン15gの混合溶液を室温で8時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層にベンジルトリメチルアンモニウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート0.19g(0.5ミリモル)、水15gを加えて7時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=2−ヒドロキシ−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートを得た[茶色結晶0.92g(収率98%)]。
【0089】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図7及び図8に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2954、2871、1579、1537、1508、1489、1457、1441、1426、1389、1365、1235、1226、1198、1174、1125、1064、1035、983、951、910、858、818、801、762、735、688、637、554cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+711(C51H55N2O相当)
NEGATIVE M-228(C3H2F5O4S相当)
【0090】
[合成例1−5]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートの合成(Dye−E)
【化41】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=ヘキサフルオロアンチモネート9.5g(10ミリモル)、2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液24.2g(15ミリモル)、水250g、メチルイソブチルケトン250gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層に2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液8.1g(5ミリモル)、水250gを加えて9時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネートを得た[茶色結晶11.3g(収率99%)]。
【0091】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図9及び図10に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2906、1753、1578、1540、1508、1489、1456、1425、1387、1365、1335、1266、1199、1175、1127、1073、1034、982、950、907、860、818、801、763、734、685、639、553cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+711(C51H55N2O相当)
NEGATIVE M-390(C14H16F5O5S相当)
【0092】
[合成例1−6]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−F)
【化42】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=ヘキサフルオロアンチモネート4.7g(5ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液15.3g(7.5ミリモル)、水100g、メチルイソブチルケトン100gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層に1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液5.1g(2.5ミリモル)、水100gを加えて5時間撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−5−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶4.6g(収率90%)]。
【0093】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図11及び図12に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2958、2872、1758、1579、1539、1508、1489、1458、1425、1387、1363、1336、1318、1226、1199、1176、1125、1076、1036、983、950、911、861、819、802、765、736、687、640、554cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+711(C51H55N2O相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0094】
[合成例1−7]1−ブチル−2−[7−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)へプタ−1,3,5−トリエン−1−イル]−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−G)
【化43】
1−ブチル−2−[7−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)へプタ−1,3,5−トリエン−1−イル]−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=パークロレート1.2g(2ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液6.1g(3ミリモル)、水10g、塩化メチレン25gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、メチルイソブチルケトンを加えて減圧濃縮を行った。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った後、減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−[7−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)へプタ−1,3,5−トリエン−1−イル]−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶2.0g(収率93%)]。
【0095】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図13及び図14に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(メチルイソブチルケトン、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
2959、2872、1758、1580、1510、1490、1444、1417、1397、1367、1343、1303、1268、1251、1230、1191、1121、1062、1034、950、912、819、802、767、699、640cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+509(C37H37N2相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0096】
[合成例1−8]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(N,N−ジフェニルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−H)
【化44】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(N,N−ジフェニルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=パークロレート0.80g(1ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液3.1g(1.5ミリモル)、水16g、メチルイソブチルケトン16gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(N,N−ジフェニルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶0.88g(収率86%)]。
【0097】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図15及び図16に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、水)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3474、1758、1581、1546、1507、1489、1455、1434、1377、1334、1253、1227、1193、1164、1133、1075、1036、891、831、801、763、696、674、640cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+702(C51H48N3相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0098】
[合成例1−9]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−フェニルシクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−I)
【化45】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−フェニルシクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=テトラフルオロボレート2.1g(3ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液9.1g(4.5ミリモル)、水20g、塩化メチレン50gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、メチルイソブチルケトンを加えて減圧濃縮を行い、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−フェニルシクロヘキサ−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶2.6g(収率93%)]。
【0099】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図17及び図18に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3441、2933、1758、1633、1578、1540、1490、1443、1428、1388、1361、1336、1252、1228、1214、1126、1081、1063、1034、952、910、859、819、801、762、709、686、640、545cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+625(C46H45N2相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0100】
[合成例1−10]1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−4−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成(Dye−R)
【化46】
1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−4−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=テトラフルオロボレート1.1g(2ミリモル)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液6.1g(3ミリモル)、水15g、メチルイソブチルケトン20gの混合溶液を室温で一晩撹拌し、有機層を分取した。分取した有機層を水洗し、減圧濃縮した後、得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶を行った。得られた結晶を回収し、その後減圧乾燥させることで、目的物である1−ブチル−2−(2−{3−[2−(1−ブチル−1H−ベンゾ[cd]インドール−2−イリデン)エチリデン]−2−(4−ブトキシフェニル)シクロヘキサ−4−メチル−1−エン−1−イル}エテニル)−ベンゾ[cd]インドール−1−イウム=1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートを得た[茶色結晶1.2g(収率59%)]。
【0101】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/CDCl3)の結果を図19及び図20に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の水が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1)
3437、2959、2873、1759、1634、1579、1540、1509、1490、1458、1437、1390、1363、1337、1253、1231、1191、1135、1076、1033、945、914、898、853、819、802、765、732、687、641、551cm-1
飛行時間型質量分析(TOFMS;MALDI)
POSITIVE M+711(C51H55N2O相当)
NEGATIVE M-312(C8F5O5S相当)
【0102】
比較例に使用した近赤外光吸収色素化合物(Dye−J〜Q)を、市販のものを入手あるいは上記合成例と同様の手法にて合成した。各化合物の構造を下記に示す。
【化47】
【0103】
[合成例2−1]高分子化合物1の合成(Polymer1)
窒素雰囲気としたフラスコに13.07gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチル=メタクリレート、6.93gのスチレン、0.920gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液1を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液1を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA16.67gで希釈し、この溶液を撹拌した32gの水/288gのメタノールの混合溶媒に滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物1)を18.07g得た。収率は90%であった。得られた高分子化合物の溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いたGPCによる重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で14,300、分散度(Mw/Mn)は2.73であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル=メタクリレート由来の単位/スチレン由来の単位=52/48モル%であった。
【0104】
[合成例2−2]高分子化合物2の合成(Polymer2)
窒素雰囲気としたフラスコに、11.26gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、8.74gのアセナフチレン、0.793gのMAIB(ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)、20.00gのPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)をとり、モノマー溶液2を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに10.00gのPGMEAをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記モノマー溶液2を2時間かけて滴下した。次いで、重合液の温度を80℃に保ち6時間撹拌を続けた後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた重合液をPGMEA30.00gで希釈し、この溶液を撹拌した320gのメタノールに滴下し、析出した高分子化合物を濾別した。得られた高分子化合物を120gのメタノールで2回洗浄し、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状の高分子化合物(高分子化合物2)を18.16g得た。収率は91%であった。得られた高分子化合物の溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いたGPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で12,300、分散度(Mw/Mn)は2.01であった。1H−NMRで分析したところ、共重合組成比は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート由来の単位/アセナフチレン由来の単位=51/49モル%であった。
【0105】
高分子化合物3(Polymer3)として、シグマアルドリッチよりポリヒドロキシスチレンポリマーを購入した。GPCによる重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で11,000であった。
【0106】
[実施例及び比較例]
近赤外光吸収膜形成材料の調製:
本発明及び比較例用の近赤外光吸収色素化合物、高分子化合物、酸発生剤、架橋剤、界面活性剤FC−4430(住友スリーエム(株)製)及び溶剤を混合して塗布液を調製した後、195℃で60秒間ベークして塗布膜を形成した。各組成及び成膜性の結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1中、略号で示した酸発生剤、架橋剤、溶剤は下記の通りである。
AG1:トリエチルアンモニウムノナフレート
XL1:1,3,4,6−テトラメトキシメチルグリコールウリル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0109】
表1中、比較例で示される組成はいずれも溶剤溶解性が低く、成膜不良、即ち膜中に不溶分が存在し、均一に成膜することができなかった。一方、実施例1−1〜1−11では、近赤外光吸収膜形成材料の溶剤溶解性が十分であり、均一に成膜することができた。
【0110】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の新規近赤外光吸収色素化合物を用いた近赤外光吸収膜は、プラズマディスプレイパネル向け等の近赤外光吸収剤を用いた光学フィルターや、赤外線感応性印刷版の開発などに好適である。また、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる近赤外光吸収膜としても有用であると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアニオンを有する近赤外光吸収色素化合物。
【化1】
(式中、A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示される請求項1に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化2】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R2及びR22はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、R2及びR22は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。R3及びR33はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。A1、R0は上記と同様である。式中の部分構造
【化3】
及び
【化4】
は、それぞれ独立に炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。)
【請求項3】
下記一般式(3)で示される請求項2に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化5】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、A1、R0は上記と同様である。R222は水素原子あるいは炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。rは1又は2である。式中の部分構造
【化6】
及び
【化7】
は、上記と同様である。
【請求項4】
下記一般式(4)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化8】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
【請求項5】
下記一般式(5)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化9】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
【請求項6】
下記一般式(6)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化10】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
【請求項7】
(A)請求項1乃至6のいずれか1項に記載の近赤外光吸収色素化合物1種以上、及び
(B)溶剤1種以上
を含有することを特徴とする近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項8】
高分子化合物を1種以上含有することを特徴とする請求項7に記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項9】
酸発生剤、架橋剤、界面活性剤から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の近赤外光吸収膜形成材料を塗布後、溶剤を蒸発させることにより形成される近赤外光吸収膜。
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアニオンを有する近赤外光吸収色素化合物。
【化1】
(式中、A1は水素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R0は水酸基又は−OC(=O)−R’を示す。R’はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示される請求項1に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化2】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。R2及びR22はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の1価炭化水素基を示し、R2及びR22は相互に結合してこれらが結合する炭素原子とそれらの間の炭素原子と共に環を形成してもよい。R3及びR33はそれぞれ独立してヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。a1及びa2はそれぞれ独立に0〜5の整数である。A1、R0は上記と同様である。式中の部分構造
【化3】
及び
【化4】
は、それぞれ独立に炭素数4〜15のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族又は芳香族の含窒素複素環化合物を示す。)
【請求項3】
下記一般式(3)で示される請求項2に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化5】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、A1、R0は上記と同様である。R222は水素原子あるいは炭素数1〜5の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。rは1又は2である。式中の部分構造
【化6】
及び
【化7】
は、上記と同様である。
【請求項4】
下記一般式(4)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化8】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
【請求項5】
下記一般式(5)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化9】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
【請求項6】
下記一般式(6)で示される請求項3に記載の近赤外光吸収色素化合物。
【化10】
(式中、R1、R3、R33、a1、a2、R222、r、A1、R0は上記と同様である。)
【請求項7】
(A)請求項1乃至6のいずれか1項に記載の近赤外光吸収色素化合物1種以上、及び
(B)溶剤1種以上
を含有することを特徴とする近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項8】
高分子化合物を1種以上含有することを特徴とする請求項7に記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項9】
酸発生剤、架橋剤、界面活性剤から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の近赤外光吸収膜形成材料。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の近赤外光吸収膜形成材料を塗布後、溶剤を蒸発させることにより形成される近赤外光吸収膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−117030(P2012−117030A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88134(P2011−88134)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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